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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K |
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管理番号 | 1320873 |
審判番号 | 不服2015-8789 |
総通号数 | 204 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-05-12 |
確定日 | 2016-10-26 |
事件の表示 | 特願2011-112581「ギヤモータのシリーズ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月10日出願公開、特開2012-244775〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成23年5月19日の出願であって、平成27年1月30日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成27年2月17日)、これに対し、平成27年5月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審により平成28年2月9日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成28年2月16日)、これに対し、平成28年4月13日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2.特許請求の範囲 平成28年4月13日付手続補正で、特許請求の範囲は以下のように補正された。 「【請求項1】 ギヤとモータを連結したギヤモータを複数有するギヤモータのシリーズであって、 モータの効率が低い第1基本シリーズと、該第1基本シリーズよりもモータの効率が高い第2基本シリーズを含み、 前記第1基本シリーズは、第1枠番のギヤと第1枠番のモータを連結した第1枠番のギヤモータと、前記第1枠番のギヤよりも許容トルクまたは容量が大きい第2枠番のギヤと前記第1枠番のモータよりも発生トルクまたは容量が大きい第2枠番のモータを連結した第2枠番のギヤモータと、を含み、 前記第2基本シリーズは、第1枠番のギヤと第1枠番のモータを連結した第1枠番のギヤモータと、前記第1枠番のギヤよりも許容トルクまたは容量が大きい第2枠番のギヤと前記第1枠番のモータよりも発生トルクまたは容量が大きい第2枠番のモータを連結した第2枠番のギヤモータと、を含み、 前記第1基本シリーズにおける第1枠番のギヤと前記第2基本シリーズにおける第1枠番のギヤは同一構成であり、前記第1基本シリーズにおける第2枠番のギヤと前記第2基本シリーズにおける第2枠番のギヤは同一構成であり、 前記第1基本シリーズにおける第1枠番のモータと前記第2基本シリーズにおける第1枠番のモータはハード系の構成要素が異なり、前記第1基本シリーズにおける第2枠番のモータと前記第2基本シリーズにおける第2枠番のモータはハード系の構成要素が異なり、 前記第1基本シリーズにおける第2枠番のモータと前記第2基本シリーズにおける第1枠番のモータはハード系の構成要素が同一であり、 前記第2基本シリーズにおける第1枠番のモータは、前記第1基本シリーズにおける第2枠番のモータよりも小さい電流が流されることにより、前記第1基本シリーズにおける第2枠番のモータよりも小さい前記第1枠番に対応する容量または発生トルクのモータとして使用されるとともに、前記第2基本シリーズのモータとしての効率を満足することを特徴とするギヤモータのシリーズ。 【請求項2】 請求項1において、 前記第2基本シリーズにおける第1枠番のモータには、当該第1枠番に対応する容量が識別可能に表示されることを特徴とするギヤモータのシリーズ。」 3.拒絶の理由 平成28年2月9日付の当審の拒絶の理由で以下の事項を通知した。 「I この出願の下記の請求項に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。 記 ・請求項1-5 ・備考 この出願は、複数種のモータと複数種のギアの組み合わせを、人為的取り決めに基づいて決定しているので、全体として自然法則を利用していない。 II この出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。 記 (1)請求項末尾に「シリーズ」とあるが、この出願が、物に係るものか方法に係るものか、特定できず不明である。シリーズとは、連続性を持つ一連のものであるから、物に係る出願であると推測できるが、別個に存在する複数の物を1つの対象として請求項に記載することはできず、また、シリーズとして用いることはできない(用いる際は1つのギヤモータが選択される。物としてのシリーズの作用効果はない。)から、シリーズにどの様な意味があるのか不明(例えば、通信システムは、送信機と受信機があって、送信機から受信機に向かって情報が送信されるが、この出願のシリーズは、シリーズの全てのギヤモータが用いられるわけではない。)である。仮に、図1の、枠番1、シリーズIE1の、ギヤモータが1つのみが存在する場合、当該ギヤモータは物であるにもかかわらず、請求項1の範囲に含まれるのか含まれないのか判別がつかないが、どの様に判別するのか不明である。 更に、請求項1に、「許容トルクまたは容量に依存して設定される枠番」とあるが、そもそも枠番とはどの様な定義であるのか何ら開示が無く不明であり、枠番が異なる(図1には、枠番1、枠番2、枠番3がある。)と、何が異なるのか何ら開示が無く不明(許容トルクまたは容量と枠番の関係性も不明)である。 更に、請求項1に、「枠番が異なる複数種のギヤ」、「枠番が異なる複数種のモータ」とあり、枠番が異なればどの様に異なっても良い(枠番が、1、10、100でも、枠番が異なることに該当する。)こととなるが、何故この様な選択でギヤモータが駆動可能か不明である。 更に、請求項1に、「選択された特定の枠番のギヤとモータとを連結」とあるが、ギヤモータを使用するときに所望のギヤとモータを選択・連結し、使用が終了したら当該連結を解除するものと考えられるが、この点不明である。 更に、請求項1に、「モータの効率が低い第1基本シリーズと、該第1基本シリーズよりもモータの効率が高い第2基本シリーズを含み」とあり、効率が異なればどの様に異なっても良い(効率が何十%異なるものも該当する)こととなるが、何故この様な選択でギヤモータが駆動可能か不明である。 更に、請求項1に、「前記第1基本シリーズの前記特定の枠番のモータが、前記第2基本シリーズの前記特定の枠番よりも小さい枠番のギヤと連結されるときは、当該モータが、前記第1基本シリーズで用いられるときの定格容量よりも小さい定格容量のモータとして使用される」とあるが、通常モータの定格容量はモータが完成した時点で決定しており、仮に【0036】に記載されるように、電流値を変えた場合、定格容量が小さくなるのではなく、単に入力が小さくなっただけと考えるがこの点不明[なお、【0036】の(1)?(3)の手法は、一旦採用すれば完成品の場合変更することはできない。]であり、【0037】に記載があるように過剰品質である場合は、所望の定格容量ではないこととなるが、この点不明である。」 4.拒絶の理由Iに対する当審の判断 (1)特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たすためには、特許請求の範囲に記載された事項が所謂「発明」でなければならない。 請求項1のギヤモータのシリーズは、第1基本シリーズの第1枠番のギヤモータと、第1基本シリーズの第2枠番のギヤモータと、第2基本シリーズの第1枠番のギヤモータと、第2基本シリーズの第2枠番のギヤモータの4種類のギヤモータがあり、各枠番のモータのハード系の構成要素を特定し、各枠番のギヤの許容トルクまたは容量を特定し、各枠番のモータのハード系の構成要素が同一の場合のモータに流す電流値を特定したものである。 請求項1のギヤモータのシリーズが奏する作用効果は、【0037】に記載があるように、シリーズ全体での製造コスト・在庫コストの削減であって、シリーズ全体として用いた場合の作用効果は示されていない。 請求項1のギヤモータのシリーズは、請求項1のギヤモータのシリーズ全体として用いるものではなく、仮に請求項1のギヤモータのシリーズ全体を用いても、各枠番のギヤモータが個別に用いられるだけであって、各枠番のギヤモータが相互に作用を及ぼすような所謂物の発明を構成するものではなく(例えば、物の発明の「システム」であれば、システムを構成する各要素が相互に影響を及ぼし、全体として1つのシステムとして動作する。)、方法の発明でもない。 そうすると、請求項1に記載されたギヤモータのシリーズは、製造コスト・在庫コストの削減のために、各枠番のモータのハード系の構成要素を特定し、各枠番のギヤの許容トルクまたは容量を特定し、各枠番のモータのハード系の構成要素が同一の場合のモータに流す電流値を特定した人為的取り決めであって、請求項1全体として自然法則を利用していない。請求項2も同様である。 なお、請求人は、平成28年4月13日付意見書において、「今回の補正により、本願発明が全体として自然法則を利用している点が明確になりました。例えば、「前記第2基本シリーズにおける第1枠番のモータは、前記第1基本シリーズにおける第2枠番のモータよりも小さい電流が流されることにより、前記第1基本シリーズにおける第2枠番のモータよりも小さい前記第1枠番に対応する容量または発生トルクのモータとして使用されるとともに、前記第2基本シリーズのモータとしての効率を満足する」との構成により、「モータに流す電流を小さくすると、モータの容量または発生トルクが小さくなるとともに、効率が向上する」という自然法則を利用していることは明らかです。」と主張するが、発明特定事項に自然法則を利用する部分があっても、全体として上述したように自然法則を利用していないから、請求項1に記載されたギヤモータのシリーズは自然法則を利用していないものであり、請求人の上記主張は採用できない。 したがって、請求項1-2に記載された事項は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。 5.拒絶の理由IIに対する当審の判断 (1)平成28年4月13日付意見書に記載があるように、「ギヤモータのシリーズ」は物の発明であると仮定する。物の発明であれば、その物が物として使用できなければならない。 請求項1のギヤモータのシリーズは、請求項1のギヤモータのシリーズ全体として用いるものではなく、発明特定事項である各枠番のギヤモータを必要箇所に個別に用いるものであり、仮に請求項1のギヤモータのシリーズ全体を用いても、発明特定事項である各枠番のギヤモータが個別に用いられるだけであり、発明特定事項である各枠番のギヤモータが物の発明であるギヤモータのシリーズにおいて何ら働き(役割)をせず、しかもどの様な働き(役割)をするのか何ら開示が無いから、発明特定事項である各枠番のギヤモータが働き(役割)をして相互に作用を及ぼすような所謂物の発明を構成するものではなく、方法の発明でもない。請求項2も同様である。 更に、請求項1のギヤモータのシリーズのギヤモータは、別々の場所で用いられることが想定され、例えば、第1基本シリーズの第1枠番のギヤモータが札幌で用いられ、第1基本シリーズの第2枠番のギヤモータが東京で用いられ、第2基本シリーズの第1枠番のギヤモータが大阪で用いられ、第2基本シリーズの第2枠番のギヤモータが那覇で用いられた場合、各枠番のギヤモータは単独で用いられることとなるが、この場合、請求項1の技術範囲に含まれるのか否か判別がつかず、どの様に判別するのか不明である。請求項2も同様である。 なお、請求人は、平成28年4月13日付意見書において、「また、審判官殿は、『仮に、図1の、枠番1、シリーズIE1の、ギヤモータが1つのみが存在する場合、当該ギヤモータは物であるにもかかわらず、請求項1の範囲に含まれるのか含まれないのか判別がつかないが、どの様に判別するのか不明である』と認定されています。しかし、今回の補正により、本願のギヤモータのシリーズは、複数のギヤモータを有することが明確化されたため、ギヤモータが1つのみ存在する場合には、請求項1の範囲に含まれないことが明確になりました。」と主張するが、当該主張に基づけば、ギヤモータのシリーズのギヤモータが別々の場所で用いられる上記した場合は請求項1の技術範囲に含まれないこととなり、どの様な場合に請求項1のギヤモータのシリーズに該当するのか不明のため、発明の構成を特定できず不明である。 したがって、この出願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1-2に記載された発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、又、請求項1-2の記載は、発明の詳細な説明を参照しても明確ではないから、請求項1-2の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 6.むすび したがって、請求項1-2に記載された事項は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、また、請求項1-2の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-08-01 |
結審通知日 | 2016-08-09 |
審決日 | 2016-08-25 |
出願番号 | 特願2011-112581(P2011-112581) |
審決分類 |
P
1
8・
1-
WZ
(H02K)
P 1 8・ 537- WZ (H02K) P 1 8・ 536- WZ (H02K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 重幸 |
特許庁審判長 |
藤井 昇 |
特許庁審判官 |
堀川 一郎 前田 浩 |
発明の名称 | ギヤモータのシリーズ |
代理人 | 小島 誠 |