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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1320934
審判番号 不服2014-25547  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-12 
確定日 2016-11-15 
事件の表示 特願2012-515090「ポリフッ化ビニリデンでコーティングされた耐候性基板」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月16日国際公開、WO2010/144520、平成24年11月22日国内公表、特表2012-529774、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の概要
本願は、2010年6月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年6月10日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年12月5日付けで拒絶理由が通知され、平成26年6月01日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月1日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされた。
本件は、これに対して、平成26年12月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成27年1月20日付けで前置報告がなされた。
さらに、その後、当審において、平成27年11月10日付けで拒絶理由(以下、「当審拒理(1)」という。)が通知され、平成28年2月17日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年3月10日付けで拒絶理由(以下、「当審拒理(2)」という。)が通知され、同年9月14日付けで意見書及び手続補正書が提出された。


第2 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は、平成28年9月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
a)外部透明グレージング材料と;
b)封入された相互接続太陽電池と;
c)環境に曝露された面または両面が、非官能化ポリフッ化ビニリデンホモポリマーまたはコポリマーと非官能化アクリル樹脂ポリマーの混合物を含む分散フルオロポリマー組成物でコーティングされた支持基板を含むバックシートと、
を含む、太陽光電池モジュールの製造方法であって、
前記方法は:
前記分散フルオロポリマー組成物を分散させた溶媒分散物を前記支持基板に塗布する工程と、
前記分散フルオロポリマー組成物を170℃?200℃の範囲の温度で硬化させる工程とを含み、
前記溶媒は、前記分散フルオロポリマー組成物を硬化させる温度よりも低い沸点を有する疎水性溶媒、又は前記疎水性溶媒を含む溶媒混合物であり、
前記疎水性溶媒は、25℃で10重量%未満の水中溶解度を有する、太陽光電池モジュールの製造方法。」


第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
(1)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(2)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1:国際公開第2008/157159号

本願発明は、引用文献1に記載された発明と同一であるか、または、当該発明から当業者が容易に想到し得るものである。

2 原査定の理由の判断
(1)引用文献の記載事項
ア 引用文献1には、以下の事項が記載されている。(日本語訳は、ファミリー文献である特表2010-530140号公報を参考にして、当審が作成した。)

(ア)「Summary of the invention

The invention relates to a photovoltaic module or solar power generation unit,
comprising:
a) an outer transparent glazing material;
b) encapsulated interconnected solar cells; and
c) a back sheet comprising a polyvinylidene fluoride (PVDF) composition,
wherein polyvinylidene fluoride comprises the outermost back layer.
The PVDF layer can be present as a film that is coextruded, laminated or adhered,
or as a solvent or aqueous coating. The PVDF can be functionalized for increased adhesion, or can be used with a tie layer.

Detailed description of the Invention

By "photovoltaic modules", as used herein is meant a construction of photovoltaic cell circuits sealed in an environmentally protective laminate.
Photovoltaic modules may be combined to form photovoltaic panels that are prewired, field-installable units. A photovoltaic array is the complete power-generating unit, consisting of any number of PV modules and panels.
The backsheet of the invention will contain one or more polyvinylidene fluoride (PVDF) or PVDF copolymer layers, with a polyvinylidene fluoride composition being the outermost sheet exposed to the environment.」(第2頁第15行?第3頁第3行)

(日本語訳)
「発明の要約

本発明は、
a)外側透明グレージング材料と、
b)カプセル封入相互接続太陽電池と、
c)最外背面層を含むポリフッ化ビニリデン(PVDF)組成物を含む背面シートと
を含む光起電モジュールまたは太陽光発電装置に関する。
PVDF層は、共押出し、積層または接着したフィルムとして、あるいは溶剤または水性コーティングとして存在し得る。PVDFは接着力を高めるために官能化させる、またはタイ層と共に用いることができる。

発明の詳細な説明

「光起電モジュール」とは、本明細書において使用される際、環境保護積層体に密閉された光起電電池回路の構造を意味する。光起電モジュールを組み合わせて、予め配線された現場据え付け可能な装置である光起電パネルを形成してもよい。光起電アレイは、任意の数のPVモジュールとパネルとからなる完成した発電装置である。
本発明の背面シートは、1枚以上のポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはPVDFコポリマー層を含み、ポリフッ化ビニリデン組成物は、環境に曝露される最外シートである。」

(イ)「In a preferred embodiment, the fluoropolymer is functionalized. One or more functional fluoropolymer layers may be combined with at least one layer having even better moisture vapor barrier properties. The functional fluoropolymer could be a functionalized polyvinylidene fluoride polymer, such as for example a maleic anhydride functional PVDF (including KYNAR ADX from Arkema). The functional fluoropolymer could also be a functional ETFE or EFEP, as known in the art. Useful barrier layers include aluminum, PET, PEN, and EVOH. In one embodiment, the aluminum is in the form of aluminum foil.
The fluoropolymer contains functional groups or is blended with a functional (preferably compatible) co-functional co-resin (such as a functional acrylic type resin). The melting point of this fluoropolymer is preferably compatible for co- extrusion with a functional tie-layer resin (such as LOTADER AX8900 or AX8840 or ADX 1200) that can chemically bond with the functionality in the fluoropolymer layer. This layer may be formulated with other functional and non-functional resins to optimize overall performance such as moisture resistance, dielectric strength, thermal resistance, and other properties.」(第4頁第23行?第5頁第4行)

(日本語訳)
「好ましい実施形態において、フルオロポリマーは官能化されている。1枚以上の官能化フルオロポリマー層を、さらに良い水蒸気バリア特性を有する少なくとも1枚の層と組み合わせてもよい。官能化フルオロポリマーは、官能化ポリフッ化ビニリデンポリマー、例えば、無水マレイン酸官能化PVDF(Arkema製KYNAR ADX等)とすることができる。官能化フルオロポリマーはまた、当該技術分野において公知の官能化ETFEまたはEFEPとすることもできる。有用なバリア層としては、アルミニウム、PET、PENおよびEVOHが挙げられる。一実施形態において、アルミニウムは、アルミニウムホイルの形態にある。
フルオロポリマーは、官能基を含有するか、または官能化(好ましくは相溶性)共官能化共樹脂(官能化アクリルタイプ樹脂等)とブレンドされている。このフルオロポリマーの融点は、フルオロポリマー層の官能基と化学的に結合し得る官能化タイ層樹脂(LOTADER AX8900またはAX8840またはADX1200)と共押出しするために適合するのが好ましい。この層は、他の官能化または非官能化樹脂と配合して、耐湿性、絶縁耐力、耐熱性およびその他特性等の全体の性能を最適化してもよい。」

(ウ)「The backsheet is preferably formed in a coextrusion or blown film process, then applied to the back of the photovoltaic module - but extrusion lamination is also possible.
A backsheet may be formed by extrusion lamination of a functional polyvinylidene fluoride-based formulation or a polyvinylidene fluoride-based formulation containing a compatible functional co-resin onto a PET or other substrate. The substrate may be pretreated (coated with adhesive for example) so that the surface contains functional groups that can chemically react or bond with those in the VF2 based formulation and the PET. The bonding may occur during the extrusion lamination or during a thermal post-treatment of the structure.
Extrusion coating of a UV opaque PVDF composition onto treated PET or polyethylene napthalate (PEN) can be used to produce a useful backsheet.
A blend of PVDF with up to 50 percent acrylic, 0- 30 percent mineral pigment filler, and 0-5 UV absorber, by weight can be extrusion laminated onto PET to form a backsheet.」(第5頁第8?22行)

(日本語訳)
「背面シートは、好ましくは、共押出しまたはブローンフィルムプロセスで形成されて、光起電モジュールの背面に適用されるが、押出し積層も可能である。
背面シートは、相溶性官能化共樹脂を含有する官能化ポリフッ化ビニリデン系配合物またはポリフッ化ビニリデン系配合物を、PETまたは他の基板上で押出し積層することにより形成される。基板は前処理(例えば、接着剤でコート)して、VF2系配合物およびPETにあるような、化学的に反応または結合可能な官能基を表面が有するようにしてもよい。結合は、押出し積層中または構造の熱後処理中になされ得る。
UV不透明PVDF組成物の処理済みPETまたはポリエチレンナフタレート(PEN)への押出しコーティングを用いて、有用な背面シートを生成することができる。
PVDFと、50重量パーセントまでのアクリル、0?30重量パーセントの無機顔料充填剤および0?5重量パーセントのUV吸収剤とのブレンドを、PETに押出し積層して、背面シートを形成することができる。」

(エ)「EXAMPLES

Example 1:(solution coating example)

A solution coating formulation was prepared using the formulation shown in Table 1. This formulation was mixed by shaking for 30 minutes the contents with 125 grams of 4 mm glass beads on a paint shaker. This coating is not crosslinked. This coating was coated onto a 5 mil PET available from SKC Films known at SH-22 (this is chemically treated to improve adhesion) using a 5 mil blade. It was allowed to flash in air for 5 minutes and then oven cured for 3 minutes at 35O 0 F in a forced air oven. The dry coating thickness is approximately 1 mil. The coated film was immersed into water at 85 0 C for 72 hours, dried and cross-hatch adhesion was tested using the general procedure defined in ASTM D3359. The adhesion I reported as a percent retained after the tape has been applied and removed. A value of 100% means that all of the squares are still adhered to the substrate. A value of 50% means that 50% of the squares are retained on the substrate.
In this example the sample adhesion was noted at 100% - which shows excellent adhesion.


(第8頁第24行?第9頁第8行)

(日本語訳)
「実施例
実施例1:(溶液コーティングの実施例)
表1に示す配合物を用いて、溶液コーティング配合物を調製した。この配合物を、ペイントシェーカーで125グラムの4mmガラスビーズと共に中身を30分間振とうすることにより混合した。このコーティングは架橋しない。このコーティングを、SKCフィルムよりSH-22として入手可能な(これは、接着力を改善するために化学処理されている)5ミルのPETに、5ミルのブレードを用いて、コートした。空気中で5分間流してから、3分間、350°Fで、強制空気オーブンにおいてオーブン硬化した。乾燥コーティング厚さは、約1ミルである。コートしたフィルムを、水に85℃で72時間浸漬し、乾燥し、ASTM D3359に定義された一般手順を用いて、クロスハッチ接着力を試験した。接着力Iを、テープを適用し、除去した後に保持されたパーセントで記録した。100%の値は、平方の全てが基板にまだ接着したままであることを意味している。50%の値は、平方の50%が基板に保持されていることを意味している。
本実施例において、試料の接着力は100%で、優れた接着力を示している。



すると、上記引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。(なお、表1中の「KYNAR ADS PVDF樹脂」は、「KYNAR ADX PVDF樹脂」の誤記であると認められる。)

「a)外側透明グレージング材料と、
b)カプセル封入相互接続太陽電池と、
c)最外背面層を含むポリフッ化ビニリデン(PVDF)組成物を含む背面シートとを含む光起電モジュールの製造方法であって、
KYNAR ADX PVDF樹脂:15.9g、PARALOID B44アクリル:6.8g、酢酸 t-ブチル:55.3g、NMP:9.7g、R-960-TiO2:12.3gを用いて、溶液コーティング配合物を調製して、
この配合物を、ペイントシェーカーで125グラムの4mmガラスビーズと共に中身を30分間振とうすることにより混合し、このコーティングを、SKCフィルムよりSH-22として入手可能な(これは、接着力を改善するために化学処理されている)5ミルのPETに、5ミルのブレードを用いて、コートして、空気中で5分間流してから、3分間、350°Fで、強制空気オーブンにおいてオーブン硬化する方法である、光起電モジュールの製造方法。」

(2)対比
ア 本願発明と引用発明を対比する。

(ア)引用発明の「SKCフィルムよりSH-22として入手可能な(これは、接着力を改善するために化学処理されている)5ミルのPET」は、本願発明の「支持基板」に相当する。

(イ)引用発明の「KYNAR ADX PVDF樹脂」は、官能化ポリフッ化ビニリデンポリマーであるから、引用発明の「KYNAR ADX PVDF樹脂」と本願発明の「非官能化ポリフッ化ビニリデンホモポリマーまたはコポリマー」は、「ポリフッ化ビニリデンホモポリマーまたはコポリマー」で一致する。

(ウ)引用発明の「PARALOID B44アクリル」は、非官能化アクリル樹脂であることは明らかであるから、本願発明の「非官能化アクリル樹脂ポリマー」に相当する。

(エ)引用発明の「溶液コーティング配合物」を「硬化する」温度である「380°F」は176.7℃であるから、引用発明の「この配合物を、」「3分間、350°Fで、強制空気オーブンにおいてオーブン硬化する方法」は、本願発明の「前記分散フルオロポリマー組成物を170℃?200℃の範囲の温度で硬化させる工程」に相当する。

(オ)「酢酸 t-ブチル」の沸点は98℃程度、水中溶解度は22℃で0.8重量%程度であり、「NMP」(N-メチルピロリドン)の沸点は202℃程度、水中溶解度は20℃で10重量%程度以上であるから、引用発明の「酢酸 t-ブチル」は、本願発明の「前記分散フルオロポリマー組成物を硬化させる温度よりも低い沸点を有する疎水性溶媒」であり、「25℃で10重量%未満の水中溶解度を有する」「前記疎水性溶媒」に相当する。すると、引用発明の「酢酸 t-ブチル:55.3g、NMP:9.7g」は、本願発明の「前記疎水性溶媒を含む溶媒混合物であ」る「前記溶媒」に相当する。

イ 一致点
すると、両者は、
「a)外部透明グレージング材料と;
b)封入された相互接続太陽電池と;
c)環境に曝露された面または両面が、ポリフッ化ビニリデンホモポリマーまたはコポリマーと非官能化アクリル樹脂ポリマーの混合物を含む分散フルオロポリマー組成物でコーティングされた支持基板を含むバックシートと、
を含む、太陽光電池モジュールの製造方法であって、
前記方法は:
前記分散フルオロポリマー組成物を分散させた溶媒分散物を前記支持基板に塗布する工程と、
前記分散フルオロポリマー組成物を170℃?200℃の範囲の温度で硬化させる工程とを含み、
前記溶媒は、前記分散フルオロポリマー組成物を硬化させる温度よりも低い沸点を有する疎水性溶媒、又は前記疎水性溶媒を含む溶媒混合物であり、
前記疎水性溶媒は、25℃で10重量%未満の水中溶解度を有する、太陽光電池モジュールの製造方法。」
で一致し、次の点で相違する。

ウ 相違点
「ポリフッ化ビニリデンホモポリマーまたはコポリマー」が、本願発明では、「非官能化ポリフッ化ビニリデンホモポリマーまたはコポリマー」であるのに対して、引用発明では、官能化ポリフッ化ビニリデンポリマーである「KYNAR ADX PVDF樹脂」である点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
引用文献1には、官能化ポリフッ化ビニリデンポリマーが好ましいという技術事項が記載されているから、引用発明において、官能化ポリフッ化ビニリデンポリマーである「KYNAR ADX PVDF樹脂」に変えて、「非官能化ポリフッ化ビニリデンホモポリマーまたはコポリマー」を使用する動機付けはない。
すると、上記相違点は、引用発明から当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

また、他に、上記相違点に係る構成が公知であることを示す証拠もない。

そして、本願発明は、上記相違点に係る構成を備えることにより、本願明細書に記載された効果を奏する。

よって、本願発明は、上記相違点により、引用発明と相違し、さらに、引用発明から当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

(4)小括
したがって、本願発明は、引用発明と同一である、また、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、本願の請求項2?10に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様に、引用発明と同一である、また、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。

よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。


第4 当審拒絶理由について
1 当審拒理(1)について
(1)当審拒理(1)の概要
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



・請求項1の「硬化温度」が明確でない。
・請求項5、6、10は、「太陽光電池モジュール」という物の発明であるが、当該請求項にはその物の製造方法が記載されており、明確でない。

(2)当審拒理(1)の判断
平成28年2月17日付けの手続補正により、「前記分散フルオロポリマー組成物の硬化温度」と補正されるとともに、請求項5、6、10は削除された。
よって、当審拒理(1)は解消した。

2 当審拒理(2)について
(1)当審拒理(2)の概要
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1、2号に規定する要件を満たしていない。



・本願明細書には、特定の製造方法により課題を解決することが記載されているから、各請求項に係る発明は、課題を解決する手段が反映されていない。
・請求項1の「分散フルオロポリマー組成物の」「硬化温度は150℃?200℃の範囲であ」ることは、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえず、かつ、明確でない。
・請求項1の「疎水性溶媒又は複数の溶媒は、25℃で10%未満の水中溶解度」、請求項2の「前記PVDF含有量が10%であるアクリル変性フルオロポリマー」は、本願明細書の【0013】、【0025】の記載に対応していない。
・請求項1の「水性組成物」及び請求項2、4の「アクリル変性フルオロポリマー」(実施例2、17の水性組成物中のポリマー)は、疎水性溶媒との関係が不明確である。
また、「溶媒混合物」という記載では、「疎水性溶媒」が含まれることが明確でない。・請求項2の「前記PVDF組成物」について、請求項2が引用する請求項1には「PVDF組成物」との記載がなく、「前記PVDF組成物」が何を示しているのか不明確である。

(2)当審拒理(2)の判断
平成28年9月14日付けの手続補正により、各請求項は「製造方法」に係る発明に補正され、硬化温度は「170℃?200℃」に補正され、請求項1の「10%」は「10重量%」に補正され、請求項2の「前記PVDF含有量が10%であるアクリル変性フルオロポリマー」、請求項1の「水性組成物」及び請求項2、4の「アクリル変性フルオロポリマー」(実施例2、17の水性組成物中のポリマー)は削除され、請求項1の「溶媒混合物」が「疎水性溶媒」を含むことが明確化され、請求項2の「前記PVDF組成物」は「前記分散フルオロポリマー組成物」と補正された。
よって、当審拒理(2)は解消した。

(3)小括
したがって、当審拒理(1)及び当審拒理(2)で通知した拒絶理由は解消した。
そうすると、もはや、当審拒理(1)及び当審拒理(2)で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。


第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-11-01 
出願番号 特願2012-515090(P2012-515090)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 113- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小濱 健太  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 伊藤 昌哉
森林 克郎
発明の名称 ポリフッ化ビニリデンでコーティングされた耐候性基板  
代理人 アクシス国際特許業務法人  

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