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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
管理番号 1320943
審判番号 不服2015-2253  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-05 
確定日 2016-10-27 
事件の表示 特願2013-133178「携帯電話機」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月19日出願公開、特開2013-253978〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件に係る出願(以下、「本願」という。)は、
平成20年3月17日に出願した特願2008-67882号(以下、「原出願」という。)の一部を平成22年6月4日に新たな特許出願(特願2010-128541号)とし、その一部を平成25年6月25日に新たな特許出願としたものであって、
平成26年10月29日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成26年11月11日)、
これに対し、平成27年2月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
一方、当審において、平成27年10月30日付けで拒絶理由を通知し(発送日:平成27年11月10日)、
これに対し、平成28年1月12日付けで意見書及び手続補正書が提出され、
当審において、平成28年3月2日付けで最後の拒絶理由を通知し(発送日:平成28年3月8日)、
これに対し、平成28年4月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたところである。


第2.平成28年4月8日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年4月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由I]
1.補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲は、以下のとおりである。
「【請求項1】
現在位置を取得する位置取得手段と、
前記現在位置を含む地図情報を表示する表示手段と、
目的地点を設定する目的地点設定手段と、
出発地点を設定する出発地点設定手段と、
地図情報に含まれる施設情報のうちから前記出発地点から前記目的地点までの経路の周辺に位置する施設の施設情報を抽出する施設抽出手段と、を有し、
前記表示手段が、非表示状態から表示状態に変化した後、
前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、前記表示手段は、前記現在位置と、経路の一部と、前記経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する前記特定の施設を含むような地図を表示でき、
前記経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、前記表示手段は前記特定の施設を表示できる、携帯電話。」

(2)これに対し、本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。
「【請求項1】
現在位置を取得する位置取得手段と、
前記現在位置を含む地図情報を表示する表示手段と、
目的地点を設定する目的地点設定手段と、
出発地点を設定する出発地点設定手段と、
地図情報に含まれる施設情報のうちから前記出発地点から前記目的地点までの経路の周辺に位置する施設の施設情報を抽出する施設抽出手段と、を有し、
前記表示手段が、非表示状態から表示状態に変化した後、
前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、前記表示手段は、前記現在位置と、経路の一部と、前記経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する前記特定の施設を含むような地図を表示でき、
前記経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、前記表示手段は前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合とは異なる拡大表示態様にて前記特定の施設を表示できる、携帯電話。」
(当審にて、補正箇所に下線を付与。)

2.新規事項について
(1)本件補正後の請求項1に「前記表示手段が、非表示状態から表示状態に変化した後、前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、前記表示手段は、前記現在位置と、経路の一部と、前記経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する前記特定の施設を含むような地図を表示でき、前記経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、前記表示手段は前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合とは異なる拡大表示態様にて前記特定の施設を表示できる」との記載があり、本件補正後の請求項1の表示手段は、非表示状態から表示状態に変化した後、表示領域内に施設が存在しなくても、経路の周辺に特定の施設が存在する場合に、経路の周辺に特定の施設が存在しない場合とは異なる拡大表示態様にて、特定の施設を表示できることとなる。
そこで、当該補正が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否かを検討する。

(2)請求人は、平成28年4月8日付けの意見書において、以下のように主張している。
「(2)本願請求項の補正
……
同日付で提出した手続補正書の補正内容について、以下に示します。
補正後の請求項1は、元の請求項1を本願明細書段落番号[0078]等に記載のような『?拡大表示したり、?』の内容にもとづき補正したものであり、補正後の請求項1の内容は、表示に関する内容を減縮したものにすぎず特許請求の範囲の限定的減縮に該当します。
以上のように、本手続補正書における請求項の補正は新規事項の追加には該当しません。

(3)拒絶理由に対する反論
本願請求項1にかかる携帯電話(以下、本願発明1)は、『前記表示手段が、非表示状態から表示状態に変化した後、前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、前記表示手段は、前記現在位置と、経路の一部と、前記経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する前記特定の施設を含むような地図を表示でき、前記経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、前記表示手段は前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合とは異なる拡大表示態様にて前記特定の施設を表示できる』という構成を有しています。この構成中で特に重要なポイントは、『非表示状態から表示状態に変化した後、前記経路の周辺に特定の施設が存在する場合としない場合とで、拡大表示をともなった表示態様に変更すること』です。
本願発明1が上記ポイントを有することで、消費電力を低減しながら、表示が非表示から表示に変化したときに、施設が経路周辺に特定の施設があったとしても、また、なかったとしても、必ず特定の施設の位置をすぐに認識できるようになるという効果を奏します(本願明細書段落番号[0077]参照)。」

上記主張によれば、本件補正後の請求項1に記載の発明は、「非表示状態から表示状態に変化した後、前記経路の周辺に特定の施設が存在する場合としない場合とで、拡大表示をともなった表示態様に変更すること」により、「表示が非表示から表示に変化したときに、施設が経路周辺に特定の施設があったとしても、また、なかったとしても、必ず特定の施設の位置をすぐに認識できるようになる」ものである。

(3)当初明細書等には、表示手段の構成及び動作に関し、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
現在位置を取得する位置取得手段と、
前記現在位置を含む地図情報を表示する表示手段と、
目的地点を設定する目的地点設定手段と、
出発地点を設定する出発地点設定手段と、
地図情報に含まれる施設情報のうちから前記出発地点から前記目的地点までの経路の周辺に位置する施設の施設情報を抽出する施設抽出手段と、を有し、
前記表示手段が非表示状態から表示状態に変化したときに前記経路の周辺に前記特定の施設が存在しない場合には、ユーザ入力にもとづいて前記表示手段は前記現在位置と特定の施設とを含むような地図を表示する、携帯電話機。
【請求項2】
前記現在位置から一定領域内に特定の施設が存在すれば、通常の前記地図情報とは異なる表示態様にて前記施設を表示する、
請求項1記載の携帯電話機。
【請求項3】
前記異なる表示態様は、サーバよりダウンロードした前記特定の施設の写真である請求項2記載の携帯電話機。」
「【0050】
表示制御部121は、LCD15を制御し、LCD15に画像を表示させる。表示制御部121は、表示領域抽出部113から表示領域が入力されると、入力される表示領域をLCD15に出力し、表示させる。表示領域抽出部113は、現在位置取得部101から現在位置が入力されるごとに表示領域を抽出し、表示制御部121に出力するので、LCD15には、所定の時間間隔で表示領域が表示される。このため、ユーザが携帯電話機1を携帯して移動する場合、その移動に伴ってユーザの位置を中心とした地図がLCD15に表示される。
【0051】
また、表示制御部121は、明示部123を含む。明示部123は、表示領域内に存在する施設が配置される位置に予め定められた印を付す。LCD15に表示される表示領域の画像に予め定められた印が付されるので、LCD15に表示された地図の画像を見るユーザは、現在位置を中心とした所定の範囲内に施設が存在することを知ることができる。」
「【0053】
表示制御部121は、状態検出部125により携帯電話機1の状態がクローズスタイルであることが検出されると、LCD15の駆動を停止し、状態検出部125により携帯電話機1の状態がオープンスタイルであることが検出されると、LCD15を駆動させる。換言すれば、携帯電話機1がオープンスタイルのときにLCD15に表示領域が表示され、携帯電話機1がクローズスタイルのときにはLCD15に地図が表示されない。このため、LCD15により消費される電力を低減することができる。また、携帯電話機1がクローズスタイルからオープンスタイルに状態が変化すると、LCD15に表示領域の地図が表示されるので、ユーザは、特別な操作をすることなく、携帯電話機1の状態をオープンスタイルに変化させる操作をするだけで地図を見ることができる。」
「【0057】
表示制御部121は、状態検出部125により携帯電話機1の状態がクローズスタイルからオープンスタイルに状態が変化したことが検出されると、LCD15に表示領域を表示するが、発光制御部119によりマルチカラーLED35が発光(点滅)していれば、換言すると、表示領域内に施設が存在すれば、表示領域の表示態様を通常とは異なる表示態様にする。例えば、表示領域を立体表示したり、表示領域に含まれる施設の位置の周辺を拡大表示したりする。さらに、施設を撮影した写真をサーバよりダウンロードし、その写真を表示する。表示領域内に施設が存在する場合に、携帯電話機1がクローズスタイルからオープンスタイルに変化すると、施設の周辺の地図が立体表示、拡大表示される、または施設を撮影した写真が表示されるので、それらを参考にして現実の施設を容易に見つけることができる。」
「【0059】
判定部115は、表示領域内に施設が存在しないと判断する場合であって、指示受付部127から検索指示を受け付けると、施設抽出部109から施設情報が入力されているか否かを判断する。施設抽出部109から施設情報が入力されていれば、発光制御部119に発光指示を出力するが、施設情報が入力されていなければ、発光制御部119に発光指示を出力しない。表示領域内に施設が存在しない場合、LCD15に施設を示す印が表示されない。この場合、ユーザが操作キー14を操作して検索指示を入力すれば、目的地点までの間に施設が存在するか否かが判断される。そして、目的地点までの間に施設が存在するならば、マルチカラーLED35が施設までの距離に応じて定まる間隔で点滅する。このため、ユーザはLCD15に表示されている地図内に施設が存在しない場合であっても、目的地までの間に施設が存在することを知ることができる。ユーザは、必要に応じてLCD15に表示させる地図を変更させることにより、目的地までの間に存在する施設の位置を地図で確認することができる。」
「【0061】
施設取得部129は、判定部115から探索指示が入力されると、現在位置取得部101により取得された現在位置から最も近い施設を取得する。具体的には、現在位置と施設の種類とを含む探索要求をサーバに送信する。サーバにおいては、探索指示を受信すると、現在位置から最も近い施設を検索し、現在位置と検索により抽出された施設の位置とを含む地図と、現在位置から施設までの経路とを含む地図情報を返信する。施設取得部129は、サーバが送信する地図情報を取得する。施設取得部129は、サーバから取得した地図情報を表示制御部121に出力する。表示制御部121においては、施設取得部129から地図情報が入力されると、地図情報に含まれる地図と経路とを含む画像をLCD15に表示させる。これにより、ユーザは、LCD15に表示された地図の画像を見て現在地から最も近い施設の位置とその施設までの経路を確認することができる。
【0062】
図5は、地図情報に含まれる地図と表示領域との関係を説明するための図である。図5を参照して、地図情報は、出発地点213と目的地点221とを含む地図201と、出発地点213から目的地点221までの経路230と、施設217に関する施設情報と、を含む。まず、現在位置が出発地点213の場合、表示領域211が設定され、LCD15には表示領域211が表示される。表示領域211には施設217が存在しないので、マルチカラーLED35は発光しない。ユーザが経路230に沿って進行し、位置215に到達したとき表示領域211Aが設定され、LCD15には表示領域211Aが表示される。表示領域211Aには施設217が存在するので、マルチカラーLED35が現在位置215と施設217の位置との間の距離によって定まる間隔で点滅する。また、LCD15には、施設を示す印として*印が表示される。このため、ユーザは、*印を見ることによって施設の存在を直ちに知ることができる。*印を、赤色などの予め定められた色で表示するようにすれば、地図内の施設を容易に見つけ出すことができる。」
「【0068】
ステップS15においては、携帯電話機1の状態を検出する。携帯電話機1の状態がオープンスタイルで開いた状態であれば処理をステップS16に進め、携帯電話機1の状態がクローズスタイルで閉じた状態であれば処理をステップS17に進める。ステップS16においては、ステップS10において抽出された表示領域をLCD15に表示し、処理をステップS18に進める。この場合、マルチカラーLED35が発光(点滅)していなければ、表示領域をそのまま表示し、マルチカラーLED35が発光(点滅)していれば、換言すると、表示領域内に施設が存在すれば、表示領域の表示態様を通常とは異なる表示態様にする。通常とは異なる表示態様は、表示領域中の施設の位置に*印を重畳して表示する。また、表示領域を立体表示してもよいし、表示領域に含まれる施設の位置の周辺を拡大表示してもよいし、さらに、施設を撮影した写真をサーバよりダウンロードし、その写真を表示するようにしてもよい。表示領域内に施設が存在する場合に、携帯電話機1がクローズスタイルからオープンスタイルに変化すると、施設の周辺の地図が立体表示、拡大表示される、または施設を撮影した写真が表示されるので、ユーザに施設が存在することを分かり易く報知することができる。このため、ユーザはLCD15に表示される画像を参考にして現実の施設を容易に見つけることができる。一方、ステップS17においては、LCD15の表示を中止し、処理をステップS18に進める。」
「【0072】
一方、ステップS24においては、サーバに探索要求を送信する。探索要求は、現在位置と施設の種類とを含む。サーバにおいては、探索要求を受信すると、現在位置から最も近い施設を検索し、現在位置と施設の位置とを含む地図と、現在位置から施設までの経路とを含む地図情報を返信する。ステップS25においては,サーバが送信する地図情報を受信する。そして、サーバから受信した地図情報の地図をLCD15に表示させ(ステップS26)、処理を終了する。この場合、施設を明示する*印と、施設までの経路とが地図に重畳して表示される。」
「【0077】
さらに、出発地点から目的地点までの経路の周辺に施設が存在しない場合であっても、ユーザが探索指示を携帯電話機1に入力すると、現在位置の周辺に位置する施設を含む地図情報が取得され、地図が表示される。このため、ユーザは、目的地とは関係なく、現在位置の周辺に存在する施設を知ることができる。
【0078】
さらに、ユーザが、携帯電話機1をクローズスタイルからオープンスタイルに状態を変化させる簡単な操作をすれば、表示領域の地図の画像がLCD15に表示されるので、特別な操作をする必要がなく、操作を簡略にすることができる。また、クローズスタイルのとき、LCD15の駆動が停止されるので、消費電力を低減することができる。また、携帯電話機1は、表示領域をLCD15に表示する際、マルチカラーLED35が発光(点滅)していなければ、目的地までの経路を含む表示領域を表示し、マルチカラーLED35が発光(点滅)していれば、換言すると、表示領域内に施設が存在すれば、表示領域の表示態様を通常とは異なる表示態様にする。通常とは異なる表示態様は、表示領域中の施設の位置に*印を重畳して表示する。また、二次元表示ではなく、立体表示にしたり、表示領域に含まれる施設の位置の周辺を拡大表示したり、さらに、施設を撮影した写真をサーバよりダウンロードし、その写真を表示するようにしてもよい。このため、ユーザに施設が存在することを分かり易く報知することができる。さらに、ユーザに対して、施設の位置を容易に把握させることができるので、ユーザは、現実の施設を容易に見つけ出すことができる。」
「【0081】
<付記>
(1) 前記表示制御手段は、前記開いた状態において前記取得された現在位置に基づき定まる領域を所定の表示態様で表示する、請求項7に記載のナビゲーション装置。
(2) 前記所定の表示態様は、立体表示、拡大表示、写真を含む、(1)に記載のナビゲーション装置。
(3) 前記報知手段は、光を発する発光手段と、
前記取得された現在位置と、前記施設抽出手段により抽出された前記施設情報で定まる施設との間の距離に基づいて定まる間隔で前記発光手段を点滅させる発光制御手段と、を含む請求項2または5に記載のナビゲーション装置。
(4) 前記報知手段は、前記表示手段とは別に設けられ、複数色の光を発することが可能な発光手段と、
前記施設抽出手段により抽出された前記施設情報で定まる施設の種類に対して予め定められた色で前記発光手段を発光させる発光制御手段と、を含む請求項2または5に記載のナビゲーション装置。
(5) 前記取得された現在位置と、前記施設抽出手段により抽出された前記施設情報で定まる施設との間の距離に基づいて定まる間隔で前記発光手段を点滅させる発光制御手段と、を含む(4)に記載のナビゲーション装置。
(4) 前記取得された現在位置に基づき定まる領域を表示する表示制御手段をさらに備え、
前記発光手段は、前記表示手段とは別に設けられる、(3)または(4)に記載のナビゲーション装置。
(6) 前記所定の条件は、前記出発地点または前記目的地点のいずれかから所定の範囲に位置することである、請求項4に記載に記載のナビゲーション装置。
(7) 前記表示制御手段は、前記少なくとも1つの施設を明示する明示手段を含む、請求項7に記載のナビゲーション装置。」
(当審にて、「拡大表示」との記載箇所に下線を付与。)

(4)当初明細書等の表示手段の構成及び動作に関する記載事項は上記のとおりであり、表示制御部121は、携帯電話機1の状態がクローズスタイルからオープンスタイルに状態が変化したことが検出されると、表示領域内に施設が存在すれば、表示領域の表示態様を通常とは異なる表示態様、すなわち、表示領域に含まれる施設の位置の周辺を拡大表示する表示態様とするものは記載されているが、非表示状態から表示状態に変化した後、表示領域内に施設が存在しなくても、(表示領域外の)経路の周辺に特定の施設が存在する場合に、拡大表示態様にて特定の施設を表示できるものは、図面を参照しても記載されておらず、自明であるともいえない。
また、当初明細書等に記載される表示制御部121は、表示領域内に施設が存在しなければ、(表示領域外の)経路の周辺に特定の施設が存在しても、通常とは異なる表示態様とするものではないから、出願人が平成28年4月8日付けの意見書で主張するような「非表示状態から表示状態に変化した後、前記経路の周辺に特定の施設が存在する場合としない場合とで、拡大表示をともなった表示態様に変更すること」により、「表示が非表示から表示に変化したときに、施設が経路周辺に特定の施設があったとしても、また、なかったとしても、必ず特定の施設の位置をすぐに認識できるようになる」ものともいえない。
さらに、当初明細書に記載されている「拡大」は、「表示領域内に施設が存在すれば…」と対で使用されているものに限られている。
よって、表示手段は、非表示状態から表示状態に変化した後、表示領域内に施設が存在しなくても、経路の周辺に特定の施設が存在する場合に、経路の周辺に特定の施設が存在しない場合とは異なる拡大表示態様にて、特定の施設を表示できること、すなわち、「前記表示手段が、非表示状態から表示状態に変化した後、前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、前記表示手段は、前記現在位置と、経路の一部と、前記経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する前記特定の施設を含むような地図を表示でき、前記経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、前記表示手段は前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合とは異なる拡大表示態様にて前記特定の施設を表示できる」ことは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではなく、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

3.むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[理由II]
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるが、仮に本件補正が、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか)についても以下に予備的に検討する。

1.特許法第36条第4項第1号について
上記「[理由I]2.(1)」に示したように、本願補正発明の表示手段は、非表示状態から表示状態に変化した後、表示領域内に施設が存在しなくても、経路の周辺に特定の施設が存在する場合に、経路の周辺に特定の施設が存在しない場合とは異なる拡大表示態様にて、特定の施設を表示できるもの、すなわち、「前記表示手段が、非表示状態から表示状態に変化した後、前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、前記表示手段は、前記現在位置と、経路の一部と、前記経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する前記特定の施設を含むような地図を表示でき、前記経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、前記表示手段は前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合とは異なる拡大表示態様にて前記特定の施設を表示できる」ものである。
一方、発明の詳細な説明には、表示手段の構成及び動作に関し、上記「[理由I]2.(3)」に示した事項が記載されているが、それらの記載を見ても、どのようにして、表示手段は、非表示状態から表示状態に変化した後、表示領域内に施設が存在しなくても、経路の周辺に特定の施設が存在する場合に、拡大表示態様にて特定の施設を表示できるのか不明である。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願補正発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2.特許法第36条第6項第1号について
上記「[理由I]2.」の「(2)」?(4)」に示したように、発明の詳細な説明には、表示手段が、非表示状態から表示状態に変化した後、表示領域内に施設が存在しなくても、経路の周辺に特定の施設が存在する場合に、拡大表示態様にて特定の施設を表示できること、すなわち、「前記表示手段が、非表示状態から表示状態に変化した後、前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、前記表示手段は、前記現在位置と、経路の一部と、前記経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する前記特定の施設を含むような地図を表示でき、前記経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、前記表示手段は前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合とは異なる拡大表示態様にて前記特定の施設を表示できる」ことは開示されておらず、出願時の技術常識に照らしても、本件補正後の請求項1に記載された発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
したがって、本件補正後の請求項1の発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件補正後の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定される要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.特許法第36条第6項第2号について
本件補正後の請求項1に「拡大表示態様」との記載があるが、その「拡大」の基準が特定されておらず、「前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、前記表示手段は、前記現在位置と、経路の一部と、前記経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する前記特定の施設を含むような地図」の表示、または、「前記経路の周辺に特定の施設が存在しない」かつ「現在位置の周辺」に特定の施設が存在しない場合の表示、または、それ以外の表示、の何れの表示に比べて「拡大」される表示態様であるのか不明である。
したがって、本件補正後の請求項1の発明は明確ではないから、本件補正後の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.特許法第29条第2項について
(1)引用例
ア.当審の平成28年3月2日付けで通知した拒絶理由に引用された特開2008-39619号公報(以下、「引用例1」という。)には、「歩行者用の経路案内装置及び携帯電話機」に関し、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア-1)「【0038】
本例の携帯電話機1は、図2及び図3に示すごとく、折り畳み可能であって、折り畳んだときに液晶ディスプレイ14及び操作部15が内側に収容される折り畳み式のものである。携帯電話機1は、データ通信用のアンテナを含み、データの変復調を行う送受信部111と、データの送受信を制御する通信制御部11と、表示用の液晶ディスプレイ14と、データ通信等を実施するのに必要な各種演算を行うCPU2と、各種データを記憶するメモリー部31、32(以下、適宜ROM31、RAM32と記載する。)とを有する。また、ユーザI/Fとしては、テンキーボタン150を含む操作部15と、音声通話用のマイク及びスピーカ16と、着信お知らせ用のスピーカ12及びバイブレータ13等とを備えている。
【0039】
本例の携帯電話機1は、図1?図3に示すごとく、経路案内(ナビゲーション機能)を実施するための構成として、上記のごとく、目標到達地点設定手段27と、3基の磁気センシング手段62と、3基の加速度センシング手段63と、鉛直方向検出手段22と、方位検出手段21と、第1及び第2の加速度検出手段231、232と、進行方向検出手段24と、歩数検出手段26と、歩行速度算出手段25と、現在地点測位手段28と、経路情報計算手段29と、経路案内手段20とを備えている。さらに、本例の携帯電話機1は、地図データを記憶する地図データ記憶手段(本例では、ROM31。)と、当該地図データに基づく地図を表示する地図表示手段(本例では、液晶ディスプレイ14。)とを備えている。
……
【0041】
地図表示手段(液晶ディスプレイ14)は、図3及び図4に示すごとく、地図データ(描画データ)に基づいて視認可能な地図を表示する手段である。地図表示手段は、地図データ記憶手段(ROM31)が記憶する地図データを読み出し、当該地図データに基づく地図を表示する。……」
(ア-2)「【0050】
現在地点測位手段28は、図1?図3に示すごとく、自律航法による測位と、GPSによる測位とを選択的に切り替えて現在地点の位置情報であるPOS位置情報を算出する手段である。……」
(ア-3)「【0087】
……
さらに、本例の携帯電話機1によれば、使用者は、該携帯電話機1を手にして液晶ディスプレイ14を見ながら経路案内を受けることもできる。本例の携帯電話機1によれば、歩行進行方位を検出可能であるため、使用者が手にする携帯電話機1の向きに関わらず、前進方向を液晶ディスプレイ14の上側にして地図を表示する、いわゆるヘディングアップ表示を実施可能である。」
(ア-4)「【0090】
(実施例2)
本例は、実施例1の携帯電話機を基にして、経路計算手段を追加した例である。この内容について、図12を用いて説明する。
本例の携帯電話機1では、上記経路計算手段を追加するに当たって、経路計算に必要な道路接続データをROM31(図2参照。)格納すると共に、目標到達地点設定手段の構成を変更してある。そして、本例の地点入力手段は、経路案内を開始する原出発地点と、最終目的地点を入力するように構成してある。
……
【0096】
以上のように、本例の携帯電話機1は、最終目的地へ到達するための最適な経路を誘導する経路案内機能を有している。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例1と同様である。」
(ア-5)記載事項(ア-4)の「携帯電話機1」は、「実施例1の携帯電話機を基にして」るもの(段落0090)であり、その「実施例1の携帯電話機」は、記載事項(ア-1)の「携帯電話機1」であって、「折り畳み式のもの」(段落0038)であり、「液晶ディスプレイ14」と、「現在地点測位手段28」と、を備えるものである。
また、記載事項(ア-4)の「携帯電話機1」は、「地点入力手段」を備えるものである。
そうすると、記載事項(ア-4)の「携帯電話機1」は、「現在地点測位手段28と、液晶ディスプレイ14と、地点入力手段と、を備える折り畳み式の携帯電話機1」といえる。
(ア-6)記載事項(ア-1)の「現在地点測位手段28」は、記載事項(ア-2)の「現在地点の位置情報であるPOS位置情報を算出する」ものであるから、「現在地点の位置情報であるPOS位置情報を算出する現在地点測位手段28」といえる。
(ア-7)記載事項(ア-1)の「液晶ディスプレイ14」は、「地図データに基づく地図を表示する」ものであるから、「地図データに基づく地図を表示する液晶ディスプレイ14」といえる。
(ア-8)記載事項(ア-4)の「地点入力手段」は、「経路案内を開始する原出発地点と、最終目的地点を入力するように構成してある」ものであるから、「経路案内を開始する原出発地点と、最終目的地点を入力するように構成してある地点入力手段」といえる。
(ア-9)記載事項(ア-4)の「携帯電話機1」は、「その他の構成及び作用効果については実施例1と同様」のものであり、記載事項(ア-3)に「本例の携帯電話機1によれば、使用者は、該携帯電話機1を手にして液晶ディスプレイ14を見ながら経路案内を受けることもできる。本例の携帯電話機1によれば、……前進方向を液晶ディスプレイ14の上側にして地図を表示する、いわゆるヘディングアップ表示を実施可能である。」とあり、液晶ディスプレイ14に経路案内するための地図を表示することがわかるから、「液晶ディスプレイ14に経路案内するための地図を表示する、携帯電話機1」といえる。

上記記載事項からみて、引用例1には、次の発明が記載されている(以下、この発明を「引用発明」という。)。
「現在地点の位置情報であるPOS位置情報を算出する現在地点測位手段28と、
地図データに基づく地図を表示する液晶ディスプレイ14と、
経路案内を開始する原出発地点と、最終目的地点を入力するように構成してある地点入力手段と、を備え、
液晶ディスプレイ14に経路案内するための地図を表示する、折り畳み式の携帯電話機1。」

イ.当審の平成28年3月2日付けで通知した拒絶理由に引用された米国特許出願公開第2008/0065326号明細書(以下、「引用例2」という。また、訳において、ファミリー文献である特開2008-70176号公報の記載を参酌した。)には、「Mobile terminal device and program」(訳:携帯端末装置及びプログラム)に関し、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(イ-1)「[0005] …… Another problem is about increase of power consumption caused by the image processing for displaying guidance images.
[0006] To solve such the problems, some devices employ a technique for automatically turning off the guidance display after an elapse of a predetermined time. ……」
(訳:他の問題は、案内画像を表示するための画像処理による消費電力の増加がある。
このような問題を解決するために、いくつかの装置は、所定の時間が経過した後に案内表示を自動的にオフとする技術を使用する。)
(イ-2)「[0024] FIG. 2A is a perspective view of the exterior of a folding-type (clamshell type) mobile phone 100 being in “open style” in which a first casing 100A and a second casing 100B, each constituting the body of folding-type mobile phone 100, are open;
[0025] FIG. 2B is another perspective view of the exterior of the folding-type mobile phone 100 being in “closed style” in which a first casing 100A and a second casing 100B, each constituting the body of folding-type mobile phone 100, are closed;」
(訳:図2Aは、折り畳み自在な開閉型(クラムシェル型)携帯電話装置100の外観斜視図であり、装置本体を構成する第1の筐体100Aと第2の筐体100Bとを開いた状態のオープンスタイルを示す図である。
図2Bは、折り畳み自在な開閉型携帯電話装置100の別の外観斜視図であり、装置本体を構成する第1の筐体100Aと第2の筐体100Bとを閉じた状態のクローズスタイルを示す図である。)
(イ-3)「[0028] FIG. 5 is an illustration exemplifying a detailed navigation screen (route display screen) that is displayed on a main display 100D;
(訳:図5は、メイン表示部100Dに表示される詳細なナビゲーション画面(ルート画面)の一例を示す図である。)
(イ-4)「[0031] FIG. 7 is a flowchart for explaining the navigation process according to an embodiment of the present invention, which is executed to realize a navigation function of the mobile phone 100; and
[0032] FIG. 8 is another flowchart showing the following steps of the navigation process shown in FIG. 7.」
(訳:図7は、本発明の一実施形態における、ナビゲーション処理を説明するためのフローチャートであり、それは、携帯電話装置100の携帯電話装置100のナビゲーション機能を実現するために実行される。
図8は、図7に示すナビゲーション処理の次のステップを示す別のフローチャートである。)
(イ-5)「[0042] For example, as shown in FIG. 2A, a function keys including a power button and a menu button, and keypads for entering numbers and characters, are located on the surface of the first casing 100A. Additionally, as shown in FIG. 2A, a main display 100D which is viewable in the open style, is provided on the surface of the second casing 100B. The main display 100D may be comprised of, for example, a liquid crystal display panel or an EL display panel, or the like.」
(訳:図2Aに示すように、例えば、電源ボタン及びメニューボタンを含む機能キー、数字や文字を入力するためのキーパッドが、第1の筐体100Aの表面に配置されている。さらに、図2Aに示すように、オープンスタイルで視認可能であるメイン表示部100Dが、第2の筐体100Bの表面に設けられ、そのメイン表示部100Dは、例えば、液晶表示パネルやEL表示パネル等で構成することができる。)
(イ-6)「[0087] FIG. 5 exemplifies the detailed navigation screen displayed on the main display 100D. As shown in FIG. 5, the detailed navigation screen indicates the current position and destination on the map, while showing a route guidance image indicating the route from the current position to the destination with a bold line.」
(訳:図5は、メイン表示部100Dに表示される詳細なナビゲーション画面を例示している。図5に示すように、詳細なナビゲーション画面では、地図上に現在位置と目的地を明示し、太線で現在位置から目的地までの経路を案内する経路案内画像を示す。)
(イ-7)「[0097] In this case, the style detector 113 determines that the “open style” has been changed to the “closed style”, based on the detection signals from the open/close sensor 160 (Step S11: Yes). In this case, the style detector 113 notifies it to the output controller 115 and the positioning processor 112.
[0098] The output unit 115 controls the display controller 140 to turn off the main display 100D by, for example, stopping the power supply thereto (Step S14), which leads to the end of navigation display using the main display 100D.」
(訳:この場合、スタイル検出部113は、開閉センサ160からの検出信号に基づき、「オープンスタイル」が「クローズスタイル」に変更されたと判定する(ステップS11:Yes)。この場合、スタイル検出部113は、出力制御部115と測位処理部112に通知する。
出力制御部115は、表示制御部140を制御し、例えば、電源供給を停止することによりメイン表示部100Dを消灯し(ステップS14)、メイン表示部100Dを用いたナビゲーション表示を終了させる。)
(イ-8)「[126] On the other hand, if it determined that the style of the mobile phone 100 has been changed from the “closed style” to the “open style” (Step S28: Yes), the style detector 113 notifies it to the output controller 115. In this case, the output controller 115 executes operations at Step S7 shown in FIG. 7 after turning off the sub display 100E by, for example, stopping the power supply thereto (Step S29).
[127] In this case, if the current position is newly obtained in Step S7, the server device 3 will be requested to provide the navigation screen based on the obtained current position, so new map information showing the route from the updated current position to the destination will be downloaded from the server device 3. Such detailed navigation screen is displayed on the main display 100D, so in the case that the style of the mobile phone 100 is changed from the closed style to the open style during the execution of the navigation function, the display of the navigation screen is switched from the sub display 100E to the main display 100D.」
(訳:一方、携帯電話装置100のスタイルが「クローズスタイル」から「オープンスタイル」に変更されたと判定された場合(ステップS28:Yes)、スタイル検出部113は、出力制御部115に通知する。この場合、出力制御部115は、例えば、電源供給を停止することによりサブ表示部100Eを消灯した後、図7に示すステップS7の動作を実行する(ステップS29)。
この場合、ステップS7で現在位置が新たに取得されると、サーバ装置3は、取得した現在位置に基づいてナビゲーション画面を提供するように要求され、その更新された現在位置からのルートを示す新たな地図情報がサーバ装置3からダウンロードされる。詳細なナビゲーション画面がメイン表示部100Dに表示されるので、携帯電話装置100のスタイルが、ナビゲーション機能の実行中にクローズスタイルからオープンスタイルに変更される場合、ナビゲーション画面の表示は、サブ表示部100Eからメイン表示部100Dに切り替えられる。)
(イ-9)記載事項(イ-2)、「FIG. 2A」及び「FIG. 2B」の「折り畳み自在な開閉型携帯電話装置100」は、「第2の筐体100B」を備えるものであり、その「第2の筐体100B」は、記載事項(イ-5)の「メイン表示部100D」を備えるものであるから、「メイン表示部100Dを備える折り畳み自在な開閉型携帯電話装置100」といえる。
(イ-10)記載事項(イ-2)の「畳み自在な開閉型携帯電話装置100」は、「第1の筐体100Aと第2の筐体100Bとを開いた状態のオープンスタイル」及び「第1の筐体100Aと第2の筐体100Bとを閉じた状態のクローズスタイル」を有するものである。
(イ-11)記載事項(イ-5)の「メイン表示部100D」は、記載事項(イ-3)、(イ-6)及び「FIG. 5」の「詳細なナビゲーション画面」を表示するものであり、その「詳細なナビゲーション画面」は、記載事項(イ-6)の「地図上に現在位置と目的地を明示し、太線で現在位置から目的地までの経路を案内する経路案内画像を示す」ものである。
(イ-12)記載事項(イ-5)の「メイン表示部100D」は、記載事項(イ-4)、(イ-7)及び「FIG. 7」の記載から、「オープンスタイル」から「クローズスタイル」に変更されたときに、電源供給が停止されるものであり、記載事項(イ-4)、(イ-8)、「FIG. 7」及び「FIG. 8」の記載から、「クローズスタイル」から「オープンスタイル」に変更されたときに、「詳細なナビゲーション画面」が表示されるものである。
上記「メイン表示部100D」の電源供給が停止される構成は、記載事項(イ-1)の「案内表示を自動的にオフとする技術」と同等のものであり、「案内画像を表示するための画像処理による消費電力の増加」を防止するものと理解できる。

上記記載事項からみて、引用例2には、次の発明が記載されている(以下、この発明を「引用例2に記載された発明」という。)。
「メイン表示部100Dを備え、
メイン表示部100Dは、案内画像を表示するための画像処理による消費電力の増加を防止するために、オープンスタイルからクローズスタイルに変更されたときに、電源供給が停止され、また、クローズスタイルからオープンスタイルに変更されたときに、地図上に現在位置と目的地を明示し、太線で現在位置から目的地までの経路を案内する経路案内画像を示す詳細なナビゲーション画面を表示する、折り畳み自在な開閉型の携帯電話装置100。」

ウ.当審の平成28年3月2日付けで通知した拒絶理由に引用された特開2005-321224号公報(以下、「引用例3」という。)には、「周辺施設検索装置」に関し、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ウ-1)「【0002】
従来、ガソリンスタンド、コンビニエンスストア、レストランといったジャンルを指定してルート沿いの施設を検索する「ルート周辺検索機能」と、ルート沿いの施設に限定せず、例えば自車の現在位置といった特定地点を中心に所定距離範囲にある施設を、上述したジャンルを指定して検索する「周辺検索機能」を備えたナビゲーションシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
……
【0005】
しかしながら、上述した従来のナビゲーションシステムにおいては、ルート周辺検索によってルート沿いの施設を検索した結果、所望の施設を検索できなかった場合は、しばらく走行して、再度ルート周辺検索を行なうか、ユーザの必要の度合いによっては通常の周辺施設検索を行なう必要がある。これらの場合、検索条件の設定等の操作をやり直す必要があり、操作が煩わしいという問題がある。」
(ウ-2)「【0010】
この周辺施設検索装置は、ナビゲーションECU(以下、「ナビECU」と略する)1、地図ディスク2、センサ群3、FM多重レシーバ4、ビーコンレシーバ5、オーディオユニット6、操作部7、スピーカ8およびディスプレイ9から構成されている。
【0011】
ナビECU1は、例えばマイクロコンピュータから構成されており、車両用ナビゲーション装置としての機能を含む周辺施設検索装置の全体を制御する。このナビECU1の詳細な構成および動作は後に説明する。
【0012】
地図ディスク2は、例えばハードディスク装置(HDD)から構成されており、地図データおよび施設データを記憶する。地図データは、地図をディスプレイ9に表示したり、センサ群3から得られるセンサデータと相俟って車両の現在位置を判断するために使用される。……」
(ウ-3)「【0018】
次に、上記のように構成される周辺施設検索装置の概略の動作を説明する。ナビECU1は、センサ群3からセンサデータを取得し、このセンサデータに基づいて自車の現在位置を算出する。そして、地図ディスク2から地図データを読み出し、この地図データ上に自車の現在位置を表すマークを重ねた描画データを生成する。この描画データは、オーディオユニット6を経由してディスプレイ9に送られる。これにより、図3に示すような、自車位置マーク91および地図92がディスプレイ9の画面に表示される。
……
【0020】
図3では、地図92上の特定地点までの経路93(白抜きの三角マークが付された線)上に自車位置マーク91が描かれることにより自車の現在位置が示されている。……
【0021】
次に、ナビECU1の詳細を説明する。図4は、ナビECU1の機能的な構成を示すブロック図である。このナビECU1は、現在地検出手段10、経路設定手段11、経路計算手段12、経路案内手段13、地図表示情報生成手段14、施設検索条件設定手段15、施設検索条件判定手段16、周辺施設検索手段17、ルート周辺施設検索手段18および表示手段19から構成されている。」
(ウ-4)「【0028】
図5は、施設検索条件設定に使用される画面の例を示す。この画面の上段には、複数の施設ジャンルグループ21が表示される。ユーザは、操作部7のジョイスティック71を左右に操作して、複数の施設ジャンルグループ21の中から1つの施設ジャンルグループを選択する。これにより、選択された施設ジャンルグループに属する複数の施設ジャンル22が、画面の中段に表示される。ユーザは、操作部7のジョイスティック71を上下に操作して、複数の施設ジャンル22の中から1つの施設ジャンルを選択する。この選択された施設ジャンルが施設検索の対象になる。また、画面の下段には、複数の施設検索モード23が表示される。ユーザは、操作部7のファンクションスイッチ72を押して、複数の施設検索モード23の中から1つを選択する。このようにしてユーザによる操作部7の操作に応答して施設検索条件設定手段15で生成された施設検索条件データは、施設検索条件判定手段16に送られる。
(ウ-5)「【0031】
周辺施設検索手段17は、施設検索条件判定手段16からの指示に基づき、ガソリンスタンド、コンビニエンスストア、レストラン等といった指定されたジャンルの施設を、例えば自車の現在位置等の特定地点を中心とした所定距離範囲から検索する。この周辺施設検索手段17で検索された施設を表すデータは、表示手段19に送られる。
【0032】
ルート周辺施設検索手段18は、施設検索条件判定手段16の指示に基づき、ガソリンスタンド、コンビニエンスストア、レストラン等といった指定されたジャンルの施設を、経路計算手段12で計算された経路(ルート)沿いの所定距離範囲から検索する。このルート周辺施設検索手段18で検索された施設を表すデータは、表示手段19に送られる。ルート周辺施設検索の結果、指定のジャンルに属する施設が所定距離範囲内に見つからなかった場合は、その旨が施設検索条件判定手段16に通知される。
【0033】
表示手段19は、地図表示情報生成手段14から送られてくる地図表示データに、現在地検出手段10から送られてくる現在位置データ、経路計算手段12から送られてくる経路データ、経路案内手段13から送られてくる経路案内データ、周辺施設検索手段17またはルート周辺施設検索手段18から送られてくる施設検索結果を表すデータ、およびアイコン情報などを重畳して描画データを生成する。この描画データは、オーディオユニット6を経由してディスプレイ9に送られることにより、図7に示すような画像がディスプレイ9の画面に表示される。」
(ウ-6)「【0062】
次に、ルート周辺施設検索手段18は、上記のようにして求めたルート周辺施設検索の抽出対象領域を含むメッシュ座標の施設データ内で施設データアドレステーブルから、指定ジャンルの施設データリストを参照する。ルート周辺施設検索においては、ルートの左右について、所定幅(例えば100m)内の施設を検索する必要があるため、施設データリストの座標を矩形領域座標に変換して、ルート周辺施設検索の抽出対象領域内の矩形領域座標と一致するものを抽出する。
【0063】
また、指定されたジャンルの施設がルート周辺施設検索の抽出対象領域内で検索できた場合は、抽出できた施設のリストと合わせて、ルート周辺施設検索の抽出対象領域を地図画面上に表示するように表示手段19に指示および必要なデータの通知を行なう。」
(ウ-7)図3には、ディスプレイが、自車位置マーク91、地図92、経路93の一部、を表示することが図示されている。
(ウ-8)記載事項(ウ-2)の「周辺施設検索装置」は、「ナビゲーションECU(以下、「ナビECU」と略する)1」と、「ディスプレイ9」と、を備えるものであり、「車両用ナビゲーション装置としての機能を含む」ものであるから、「ディスプレイ9と、ナビECU1と、を備え、車両用ナビゲーション装置としての機能を含む周辺施設検索装置」といえる。
(ウ-9)記載事項(ウ-2)の「ディスプレイ9」は、記載事項(ウ-7)及び図3の「自車位置マーク91、地図92、経路93の一部」を表示するものであり、その「自車位置マーク91」及び「地図92」は、記載事項(ウ-3)の「地図データ上に自車の現在位置を表すマークを重ねた描画データ」として生成されるものであり、その「地図データ」は、「地図ディスク2」から読み出されるものであり、その「地図ディスク2」は、記載事項(ウ-2)の「地図データおよび施設データを記憶する」ものである。
そうすると、記載事項(ウ-2)の「ディスプレイ9」は、「地図データおよび施設データを記憶する地図ディスク2から読み出された地図データ上に、現在位置を表すマークを重ねた描画データとして生成された、自車位置マーク91、地図92、経路93の一部、を表示するディスプレイ9」といえる。
(ウ-10)記載事項(ウ-3)の「ナビECU1」は、「周辺施設検索手段17」と、「ルート周辺施設検索手段18」と、「表示手段19」と、を備えるものであるから、「周辺施設検索手段17と、ルート周辺施設検索手段18と、表示手段19と、を備えるナビECU1」といえる。
(ウ-11)記載事項(ウ-3)の「ルート周辺施設検索手段18」は、記載事項(ウ-6)の「ルート周辺施設検索の抽出対象領域を含むメッシュ座標の施設データ内で施設データアドレステーブルから、指定ジャンルの施設データリストを参照する」ものであり、「ルート周辺施設検索においては、ルートの左右について、所定幅(例えば100m)内の施設を検索する必要があるため、施設データリストの座標を矩形領域座標に変換して、ルート周辺施設検索の抽出対象領域内の矩形領域座標と一致するものを抽出する」ものであり、「指定されたジャンルの施設がルート周辺施設検索の抽出対象領域内で検索できた場合は、抽出できた施設のリストと合わせて、ルート周辺施設検索の抽出対象領域を地図画面上に表示するように表示手段19に指示および必要なデータの通知を行なう」ものである。
そうすると、記載事項(ウ-3)の「ルート周辺施設検索手段18」は、「ルート周辺施設検索の抽出対象領域を含むメッシュ座標の施設データ内で施設データアドレステーブルから、指定ジャンルの施設データリストを参照し、指定されたジャンルの施設がルート周辺施設検索の抽出対象領域内で検索できた場合は、抽出できた施設のリストと合わせて、ルート周辺施設検索の抽出対象領域を地図画面上に表示するように表示手段19に指示および必要なデータの通知を行うもの」といえる。
(ウ-12)記載事項(ウ-5)の「周辺施設検索手段17」は、「指定されたジャンルの施設を、例えば自車の現在位置等の特定地点を中心とした所定距離範囲から検索」し、「この周辺施設検索手段17で検索された施設を表すデータは、表示手段19に送られる」ものである。
(ウ-13)記載事項(ウ-5)の「表示手段19」は、「地図表示データに、」「現在位置データ」、「経路データ」、「周辺施設検索手段17またはルート周辺施設検索手段18から送られてくる施設検索結果を表すデータ、およびアイコン情報などを重畳して描画データを生成する」ものであり、「この描画データは、オーディオユニット6を経由してディスプレイ9に送られることにより、」「画像がディスプレイ9の画面に表示される」ものである。
(ウ-14)記載事項(ウ-4)の「周辺施設検索装置」は、「画面の下段には、複数の施設検索モード23が表示され」、「ユーザは、操作部7のファンクションスイッチ72を押して、複数の施設検索モード23の中から1つを選択」し、「ユーザによる操作部7の操作に応答して施設検索条件設定手段15で生成された施設検索条件データは、施設検索条件判定手段16に送られる」ものであるから、ユーザが、操作部7のファンクションスイッチ72を押して、複数の施設検索モード23の中から1つを選択することによって、周辺施設検索を行うものであることがわかる。
また、記載事項(ウ-1)の「従来のナビゲーションシステム」において、「ルート周辺検索によってルート沿いの施設を検索した結果、所望の施設を検索できなかった場合は、」「ユーザの必要の度合いによっては通常の周辺施設検索を行なう」ことは、記載事項(ウ-2)の「周辺施設検索装置」においても行えることと考えられる。
そうすると、記載事項(ウ-2)の「周辺施設検索装置」は、「ルート周辺検索によってルート沿いの施設を検索した結果、所望の施設を検索できなかった場合は、ユーザが、操作部7のファンクションスイッチ72を押して、複数の施設検索モード23の中から1つを選択することによって、周辺施設検索を行う、周辺施設検索装置」といえる。

上記記載事項からみて、引用例3には、次の発明が記載されている(以下、この発明を「引用例3に記載された発明」という。)。
「地図データおよび施設データを記憶する地図ディスク2から読み出された地図データ上に、現在位置を表すマークを重ねた描画データとして生成された、自車位置マーク91、地図92、経路93の一部、を表示するディスプレイ9と、
周辺施設検索手段17と、ルート周辺施設検索手段18と、表示手段19と、を備えるナビECU1と、を備え、
ルート周辺施設検索手段18は、ルート周辺施設検索の抽出対象領域を含むメッシュ座標の施設データ内で施設データアドレステーブルから、指定ジャンルの施設データリストを参照し、指定されたジャンルの施設がルート周辺施設検索の抽出対象領域内で検索できた場合は、抽出できた施設のリストと合わせて、ルート周辺施設検索の抽出対象領域を地図画面上に表示するように表示手段19に指示および必要なデータの通知を行うものであり、
周辺施設検索手段17は、指定されたジャンルの施設を、例えば自車の現在位置等の特定地点を中心とした所定距離範囲から検索し、この周辺施設検索手段17で検索された施設を表すデータは、表示手段19に送られるものであり、
表示手段19は、地図表示データに、現在位置データ、経路データ、周辺施設検索手段17またはルート周辺施設検索手段18から送られてくる施設検索結果を表すデータ、およびアイコン情報などを重畳して描画データを生成するものであり、この描画データは、オーディオユニット6を経由してディスプレイ9に送られることにより、画像がディスプレイ9の画面に表示されるものであり、
ルート周辺検索によってルート沿いの施設を検索した結果、所望の施設を検索できなかった場合は、ユーザが、操作部7のファンクションスイッチ72を押して、複数の施設検索モード23の中から1つを選択することによって、周辺施設検索を行う、車両用ナビゲーション装置としての機能を含む周辺施設検索装置。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「現在地点の位置情報であるPOS位置情報を算出する現在地点測位手段28」は、本願補正発明の「現在位置を取得する位置取得手段」に、
引用発明の「経路案内を開始する原出発地点と、最終目的地点を入力するように構成してある地点入力手段」は、本願補正発明の「目的地点を設定する目的地点設定手段」及び「出発地点を設定する出発地点設定手段」に、
引用発明の「携帯電話機1」は、本願補正発明の「携帯電話」にそれぞれ相当する。
引用発明の「地図データに基づく地図を表示する液晶ディスプレイ14」と、本願補正発明の「前記現在位置を含む地図情報を表示する表示手段」とは、「地図情報を表示する表示手段」である点で一致している。

以上を踏まえると、本願補正発明と引用発明とは、
「現在位置を取得する位置取得手段と、
地図情報を表示する表示手段と、
目的地点を設定する目的地点設定手段と、
出発地点を設定する出発地点設定手段と、を備える、携帯電話。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
表示手段の表示に関し、本願補正発明は「現在位置を含む地図情報を表示する」のに対して、引用発明は「地図データに基づく地図を表示」しているものの、現在位置を含むものか不明な点。

[相違点2]
本願補正発明は、「地図情報に含まれる施設情報のうちから前記出発地点から前記目的地点までの経路の周辺に位置する施設の施設情報を抽出する施設抽出手段」を備えるものであるのに対して、引用発明は、そのような構成を備えるものではない点。

[相違点3]
本願補正発明は、「前記表示手段が、非表示状態から表示状態に変化した後、前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、前記表示手段は、前記現在位置と、経路の一部と、前記経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する前記特定の施設を含むような地図を表示でき、前記経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、前記表示手段は前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合とは異なる拡大表示態様にて前記特定の施設を表示できる」ものであるのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。

(3)判断
ア.相違点1について
引用例2に記載された発明の「メイン表示部100Dは……地図上に現在位置と目的地を明示し、太線で現在位置から目的地までの経路を案内する経路案内画像を示す詳細なナビゲーション画面を表示する」における「メイン表示部100D」の「地図上に現在位置と目的地を明示」する「詳細なナビゲーション画面を表示する」態様は、本願補正発明の「表示部」の「前記現在位置を含む地図情報を表示する」態様に相当する。
引用発明の「携帯電話機1」と引用例2に記載された発明の「携帯電話装置100」とは、ともに経路案内するための地図を表示する折り畳み式の携帯電話装置という同一の技術分野に属するものであり、引用発明の「液晶ディスプレイ14」の「地図データに基づく地図を表示する」態様として、引用例2に記載された発明の「メイン表示部100D」の「地図上に現在位置と目的地を明示」する「詳細なナビゲーション画面を表示する」態様を採用して、本願補正発明の相違点1に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

イ.相違点2について
(a)本願補正発明と引用例3に記載された発明との対応関係
(a1)引用例3に記載された発明の「地図データおよび施設データを記憶する地図ディスク2から読み出された地図データ上に、現在位置を表すマークを重ねた描画データとして生成された、自車位置マーク91、地図92、経路93の一部、を表示するディスプレイ9」は、本願補正発明の「現在位置を含む地図情報を表示する表示手段」に相当する。
(a2)引用例3に記載された発明の「ルート周辺施設検索の抽出対象領域を含むメッシュ座標の施設データ内で施設データアドレステーブルから、指定ジャンルの施設データリストを参照し、指定されたジャンルの施設がルート周辺施設検索の抽出対象領域内で検索できた場合は、抽出できた施設のリストと合わせて、ルート周辺施設検索の抽出対象領域を地図画面上に表示するように表示手段19に指示および必要なデータの通知を行うもの」である「ルート周辺施設検索手段18」は、本願補正発明の「地図情報に含まれる施設情報のうちから前記出発地点から前記目的地点までの経路の周辺に位置する施設の施設情報を抽出する施設抽出手段」に相当する。
(a3)引用例3に記載された発明の「ルート周辺施設検索手段18は、ルート周辺施設検索の抽出対象領域を含むメッシュ座標の施設データ内で施設データアドレステーブルから、指定ジャンルの施設データリストを参照し、指定されたジャンルの施設がルート周辺施設検索の抽出対象領域内で検索できた場合は、抽出できた施設のリストと合わせて、ルート周辺施設検索の抽出対象領域を地図画面上に表示するように表示手段19に指示および必要なデータの通知を行う」構成と、本願補正発明の「前記経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、前記表示手段は前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合とは異なる拡大表示態様にて前記特定の施設を表示できる」構成とは、「経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、前記特定の施設を表示できる」点で共通する。
(a4)引用例3に記載された発明の「周辺施設検索装置」と、本願補正発明の「携帯電話」とは、装置である点で共通する。
(b)また、
(b1)引用例3に記載された発明の「地図データおよび施設データを記憶する地図ディスク2から読み出された地図データ上に、現在位置を表すマークを重ねた描画データとして生成された、自車位置マーク91、地図92、経路93の一部、を表示するディスプレイ9」「周辺施設検索手段17は、指定されたジャンルの施設を、例えば自車の現在位置等の特定地点を中心とした所定距離範囲から検索し、この周辺施設検索手段17で検索された施設を表すデータは、表示手段19に送られるものであり」「表示手段19は、地図表示データに、現在位置データ、経路データ、周辺施設検索手段17またはルート周辺施設検索手段18から送られてくる施設検索結果を表すデータ、およびアイコン情報などを重畳して描画データを生成するものであり、この描画データは、オーディオユニット6を経由してディスプレイ9に送られることにより、画像がディスプレイ9の画面に表示されるものであり」「ルート周辺検索によってルート沿いの施設を検索した結果、所望の施設を検索できなかった場合は、ユーザが、操作部7のファンクションスイッチ72を押して、複数の施設検索モード23の中から1つを選択することによって、周辺施設検索を行う」「周辺施設検索装置」を、
(b2)本願補正発明の記載の順に倣って整理すると、
「ルート周辺検索によってルート沿いの施設を検索した結果、所望の施設を検索できなかった場合は、ユーザが、操作部7のファンクションスイッチ72を押して、複数の施設検索モード23の中から1つを選択することによって、周辺施設検索を行う」と、「周辺施設検索手段17は、指定されたジャンルの施設を、例えば自車の現在位置等の特定地点を中心とした所定距離範囲から検索し、この周辺施設検索手段17で検索された施設を表すデータは、表示手段19に送られ」、「表示手段19は、地図表示データに、現在位置データ、経路データ、周辺施設検索手段17またはルート周辺施設検索手段18から送られてくる施設検索結果を表すデータ、およびアイコン情報などを重畳して描画データを生成するものであり、この描画データは、オーディオユニット6を経由してディスプレイ9に送られることにより、画像がディスプレイ9の画面に表示され」、「ディスプレイ9」は「地図データおよび施設データを記憶する地図ディスク2から読み出された地図データ上に、現在位置を表すマークを重ねた描画データとして生成された、自車位置マーク91、地図92、経路93の一部、を表示する」「周辺施設検索装置」となる。
(b3)そして、上記(b2)の構成は、本願補正発明の「前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、前記表示手段は、前記現在位置と、経路の一部と、前記経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する前記特定の施設を含むような地図を表示でき」る構成に相当する。
(c)そうすると、引用例3に記載された発明を本願補正発明の表現に倣って整理すると、以下のとおりとなる。
「現在位置を含む地図情報を表示する表示手段と、
地図情報に含まれる施設情報のうちから出発地点から目的地点までの経路の周辺に位置する施設の施設情報を抽出する施設抽出手段と、を有し、
前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、前記表示手段は、現在位置と、経路の一部と、前記経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する特定の施設を含むような地図を表示でき、
前記経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、前記特定の施設を表示できる、装置。」
(d)そして、引用発明の「液晶ディスプレイ14に経路案内するための地図を表示する、折り畳み式の携帯電話機1」と引用例3に記載された発明の「周辺施設検索装置」とは、ともに経路案内するための地図を表示する経路案内装置である点で同一の技術分野に属するものであり、さらに、引用例3の記載事項(ウ-1)に記載されているように、経路案内装置において、ルート周辺検索機能を備えることが本願出願日前から従来技術として認識されていたものであることを考慮しても、引用発明の「携帯電話装置1」の経路案内に、ルート周辺検索機能として、引用例3に記載された発明の上記(c)の「地図情報に含まれる施設情報のうちから出発地点から目的地点までの経路の周辺に位置する施設の施設情報を抽出する施設抽出手段と、を有し、
前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、前記表示手段は、現在位置と、経路の一部と、前記経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する特定の施設を含むような地図を表示でき、
前記経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、前記特定の施設を表示できる」構成を採用して、本願補正発明の相違点2に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

ウ.相違点3について
(ア)「前記表示手段が、非表示状態から表示状態に変化した後、……地図を表示でき、……前記特定の施設を表示できる」ことに関して
(a)引用例2に記載された発明の「メイン表示部100D」の「クローズスタイルからオープンスタイルに変更されたとき」の動作は、「オープンスタイルからクローズスタイルに変更されたときに、電源供給が停止され」るのとは逆に、電源供給が開始され、非表示状態から表示状態に変化する動作と考えるのが通常である。
そして、引用例2に記載された発明の「クローズスタイルからオープンスタイルに変更されたとき」は、本願補正発明の「前記表示手段が、非表示状態から表示状態に変化した後」に相当するものである。
そうすると、引用例2に記載された発明の「メイン表示部100Dは、案内画像を表示するための画像処理による消費電力の増加を防止するために、オープンスタイルからクローズスタイルに変更されたときに、電源供給が停止され、また、クローズスタイルからオープンスタイルに変更されたときに、地図上に現在位置と目的地を明示し、太線で現在位置から目的地までの経路を案内する経路案内画像を示す詳細なナビゲーション画面を表示する」動作は、本願補正発明の「前記表示手段が、非表示状態から表示状態に変化した後」に「表示」できる動作に相当する。
(b)引用発明の「携帯電話機1」と引用例2に記載された発明の「携帯電話装置100」とは、ともに経路案内するための地図を表示する折り畳み式の携帯電話装置という同一の技術分野に属するものであり、引用例2に記載された発明の「案内画像を表示するための画像処理による消費電力の増加を防止する」ことは、引用発明においても望ましいことであるから、引用発明の「液晶ディスプレイ14に経路案内するための地図を表示する」手法として、引用例2に記載された発明の「オープンスタイルからクローズスタイルに変更されたときに、電源供給が停止され、また、クローズスタイルからオープンスタイルに変更されたときに、地図上に現在位置と目的地を明示し、太線で現在位置から目的地までの経路を案内する経路案内画像を示す詳細なナビゲーション画面を表示する」手法を採用して、液晶ディスプレイ14が、非表示状態から表示状態に変化した後、経路案内するための地図を表示する構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(イ)「前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、前記表示手段は、前記現在位置と、経路の一部と、前記経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する前記特定の施設を含むような地図を表示でき」に関して
(a)引用例3に記載された発明は、本願補正発明の表現に倣って整理すると、上記「イ.(c)」で整理されたものととなる。
(b)そして、上記「イ.(d)」で検討したのと同様に、引用発明の「携帯電話装置1」に、周辺検索機能として、引用例3に記載された発明の上記「イ.(c)」の「前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、前記表示手段は、現在位置と、経路の一部と、前記経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する特定の施設を含むような地図を表示でき、
前記経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、前記特定の施設を表示できる」構成も採用して、液晶ディスプレイ14が、
経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、表示手段は、現在位置と、経路の一部と、経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する特定の施設を含むような地図を表示でき、
経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、特定の施設を表示できる構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(c)なお、本願補正発明の「前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、前記表示手段は、前記現在位置と、経路の一部と、前記経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する前記特定の施設を含むような地図を表示でき」は、「表示でき」(「表示し」ではない)と記載されており、本願明細書の「さらに、出発地点から目的地点までの経路の周辺に施設が存在しない場合であっても、ユーザが探索指示を携帯電話機1に入力すると、現在位置の周辺に位置する施設を含む地図情報が取得され、地図が表示される。」(段落0077)との記載を参酌すると、本願補正発明は、ユーザの操作を受けて「経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する特定の施設を含むような地図を表示でき」るものも含むと解すべきものである。

(ウ)「前記経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、経路の周辺に特定の施設が存在しない場合とは異なる拡大表示態様にて前記特定の施設を表示できる」に関して
(a)経路案内装置において、ユーザの操作を受けて表示部が任意の地点を表示した後、地図の縮尺を変更し拡大表示態様にて表示するものは、従来周知慣用のもの(例えば、特開2001-317949号公報の段落0011に「ナビゲーション装置において基本的に備えられている操作手段、例えば、電子地図の表示範囲(尺度)を変更する『広域・詳細切り替えスイッチ』や、電子地図の表示範囲をスクロールさせる『スクロールボタン』や『ジョイスティック』等」、段落0033に「このようなナビゲーション装置では、基本的には、演算処理部1に備えられた地図表示回路(地図データ出力手段)21により、従来と同様、図示しないCD-ROM、DVD-ROM等の記憶媒体に格納された電子情報からなる地図データ(他のデータ)を読み出し、リモートコントローラ3のジョイスティック32や広域・詳細ボタン33等で選択された範囲の電子地図Eの地図データを出力する。」とある。)であり、その表示部は拡大表示態様にて任意の地点を表示できるものといえる。
(b)そして、引用発明の「液晶ディスプレイ14に経路案内するための地図を表示する、折り畳み式の携帯電話機1」、さらに、引用例3に記載された発明の「車両用ナビゲーション装置としての機能を含む周辺施設検索装置」の何れも、上記(a)の周知慣用の構成とすることに特段の困難性が存在するものではない。
(c)そうすると、上記「イ.」及び「ウ.(イ)」に記載した、引用発明の「携帯電話装置1」の経路案内にルート周辺検索機能として、引用例3に記載された発明の上記「イ.(c)」の構成を採用して、「経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、前記特定の施設を表示できる」構成とすることとともに、表示部を上記(a)の任意の地点を表示した後、地図の縮尺を変更し拡大表示態様にて表示する従来周知慣用のものとして構成して、「経路の周辺に特定の施設が存在しない場合とは異なる拡大表示態様にて前記特定の施設を表示できる」構成とすることも、当業者が適宜なし得たことである。
(d)なお、本願補正発明の「前記経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、前記表示手段は前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合とは異なる拡大表示態様にて前記特定の施設を表示できる」は、「表示できる」(「表示する」ではない)と記載されているので、本願補正発明は、(ユーザの操作を受けることなく)すぐに「拡大表示態様にて前記特定の施設を表示」するもの(上記「[理由I]2.(2)を参照。)だけでなく、上記(a)の従来周知慣用の「ユーザの操作を受けて表示部が任意の地点を表示した後、地図の縮尺を変更し拡大表示態様にて表示するもの」も含むと解するのが相当である。

(エ)相違点3についてのまとめ
上記「(ア)」?「(ウ)」を総合すると、引用例2に記載された発明、及び、引用例3に記載された発明、並びに周知技術を引用発明に採用して、液晶ディスプレイ14が、非表示状態から表示状態に変化した後、経路案内するための地図を表示し、経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、液晶ディスプレイ14は、現在位置と、経路の一部と、前記経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する前記特定の施設を含むような地図を表示でき、ルート周辺施設検索手段18によって特定の施設(所望の施設)を検索できた場合には、液晶ディスプレイ14は前記特定の施設を検索できなかった場合とは異なる拡大表示態様にて前記特定の施設を表示できるものとして、本願補正発明の相違点3に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

(4)小括
そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用例2に記載された発明、引用例3に記載された発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2に記載された発明、引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、「第2.[理由I]1.(1)」に本件補正前の請求項1(平成28年1月12日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1)に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2.引用例
平成28年3月2日付けの拒絶理由に引用された引用例1、引用例2、引用例3及び、その記載事項は、上記「第2.[理由II]4.(1)」に記載したとおりである。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「現在地点の位置情報であるPOS位置情報を算出する現在地点測位手段28」は、本願発明の「現在位置を取得する位置取得手段」に、
引用発明の「経路案内を開始する原出発地点と、最終目的地点を入力するように構成してある地点入力手段」は、本願発明の「目的地点を設定する目的地点設定手段」及び「出発地点を設定する出発地点設定手段」に、
引用発明の「携帯電話機1」は、本願発明の「携帯電話」にそれぞれ相当する。
引用発明の「地図データに基づく地図を表示する液晶ディスプレイ14」と、本願発明の「前記現在位置を含む地図情報を表示する表示手段」とは、「地図情報を表示する表示手段」である点で一致している。

以上を踏まえると、本願発明と引用発明とは、
「現在位置を取得する位置取得手段と、
地図情報を表示する表示手段と、
目的地点を設定する目的地点設定手段と、
出発地点を設定する出発地点設定手段と、を備える、携帯電話。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
表示手段の表示に関し、本願発明は「現在位置を含む地図情報を表示する」のに対して、引用発明は「地図データに基づく地図を表示」しているものの、現在位置を含むものか不明な点。

[相違点2]
本願発明は、「地図情報に含まれる施設情報のうちから前記出発地点から前記目的地点までの経路の周辺に位置する施設の施設情報を抽出する施設抽出手段」を備えるものであるのに対して、引用発明は、そのような構成を備えるものではない点。

[相違点3’]
本願発明は、「前記表示手段が、非表示状態から表示状態に変化した後、前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、前記表示手段は、前記現在位置と、経路の一部と、前記経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する前記特定の施設を含むような地図を表示でき、前記経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、前記表示手段は前記特定の施設を表示できる」ものであるのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。

4.判断
ア.相違点1,2について
本願補正発明の相違点1,2についてと同様の理由により、本願発明の相違点1,2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たものである(上記「第2.[理由II]4.(3)」の「ア.」及び「イ.」を参照。)。

イ.相違点3’について
(ア)上記「第2.[理由II]4.(3)ウ.(ア)」に記載したのと同様に、引用発明の「液晶ディスプレイ14に経路案内するための地図を表示する」手法として、引用例2に記載された発明の「オープンスタイルからクローズスタイルに変更されたときに、電源供給が停止され、また、クローズスタイルからオープンスタイルに変更されたときに、地図上に現在位置と目的地を明示し、太線で現在位置から目的地までの経路を案内する経路案内画像を示す詳細なナビゲーション画面を表示する」手法を採用して、液晶ディスプレイ14が、非表示状態から表示状態に変化した後、経路案内するための地図を表示する構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(イ)上記「第2.[理由II]4.(3)ウ.(イ)」に記載したのと同様に、引用発明の「携帯電話装置1」に、周辺検索機能として、引用例3に記載された発明の上記「第2.[理由II]4.(3)イ.(c)」の「前記経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、前記表示手段は、現在位置と、経路の一部と、前記経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する特定の施設を含むような地図を表示でき、
前記経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、前記特定の施設を表示できる」構成を採用して、液晶ディスプレイ14が、
経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、表示手段は、現在位置と、経路の一部と、経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する特定の施設を含むような地図を表示でき、
経路の周辺に特定の施設が存在する場合には、特定の施設を表示できる構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(ウ)上記「(ア)」及び「(イ)」を総合すると、引用例2に記載された発明、及び、引用例3に記載された発明を引用発明に採用して、液晶ディスプレイ14が、非表示状態から表示状態に変化した後、経路案内するための地図を表示し、経路の周辺に特定の施設が存在しない場合には、液晶ディスプレイ14は、現在位置と、経路の一部と、前記経路の周辺に存在しないが現在位置の周辺に位置する前記特定の施設を含むような地図を表示でき、ルート周辺施設検索手段18によって特定の施設(所望の施設)を検索できた場合には、液晶ディスプレイ14は前記特定の施設を表示できるものとして、本願発明の相違点3’に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明、引用例2に記載された発明及び引用例3に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された発明及び引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
本願発明は、引用発明、引用例2に記載された発明及び引用例3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-22 
結審通知日 2016-08-23 
審決日 2016-09-08 
出願番号 特願2013-133178(P2013-133178)
審決分類 P 1 8・ 561- WZ (G01C)
P 1 8・ 536- WZ (G01C)
P 1 8・ 537- WZ (G01C)
P 1 8・ 575- WZ (G01C)
P 1 8・ 121- WZ (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上野 力  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 前田 浩
藤井 昇
発明の名称 携帯電話機  

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