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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B
管理番号 1320956
審判番号 不服2015-16371  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-04 
確定日 2016-10-27 
事件の表示 特願2014- 53855「空気調和装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月10日出願公開、特開2014-130003〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2011年11月10日(優先権主張2010年11月24日、日本国)を国際出願日とする特願2012-545602号の一部を平成26年3月17日に新たな特許出願としたものであって、平成26年11月11日付けで拒絶理由が通知され、これに応答して平成26年12月25日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成27年6月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年9月4日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

2.平成27年9月4日付け手続補正についての補正却下の決定
<補正却下の決定の結論>
平成27年9月4日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

<理由>
2-1.本件補正
本件補正は、補正前の請求項1に、
「圧縮機、第1熱交換器、第1絞り装置、第2熱交換器の冷媒側流路を冷媒配管で接続して熱源側冷媒を循環させる冷媒循環回路と、
ポンプ、前記第2熱交換器の熱媒体側流路、冷却した熱媒体または加熱した熱媒体のいずれかを選択的に通過可能にする熱媒体流路切替装置を熱媒体配管で接続して熱媒体を循環させる熱媒体循環回路と、を有し、
前記第2熱交換器において前記熱源側冷媒と前記熱媒体とが熱交換する空気調和装置であって、
前記第2熱交換器の熱媒体側流路における前記熱媒体の流れ方向を切替可能な熱媒体流路反転装置を前記熱媒体循環回路に設け、
前記熱媒体流路反転装置は、
モーターと、円筒形の回転筒と、前記回転筒の側面に設けられ回転筒の内部と外部とで熱媒体が流動可能な孔と、が備えられ、前記モーターの作用により、前記回転筒を回転させて、前記回転筒の側面の孔の位置を周方向で変化できるようになっている複数の三方弁で構成され、該複数の三方弁が2つの組に分けられており、
前記熱媒体循環回路を循環する熱媒体は、
前記第2熱交換器において前記熱媒体が冷却される場合及び前記第2熱交換器において前記熱媒体が加熱される場合の双方において、一方の組の熱媒体流路反転装置の回転筒の端部から流入し、他方の組の熱媒体流路反転装置の回転筒の端部から流出する
空気調和装置。」
とあるのを、
「圧縮機、第1熱交換器、第1絞り装置、第2熱交換器の冷媒側流路を冷媒配管で接続して熱源側冷媒を循環させる冷媒循環回路と、
ポンプ、前記第2熱交換器の熱媒体側流路、冷却した熱媒体または加熱した熱媒体のいずれかを選択的に通過可能にする熱媒体流路切替装置を熱媒体配管で接続して熱媒体を循環させる熱媒体循環回路と、を有し、
前記第2熱交換器において前記熱源側冷媒と前記熱媒体とが熱交換する空気調和装置であって、
前記第2熱交換器の熱媒体側流路における前記熱媒体の流れ方向を切替可能な熱媒体流路反転装置を前記熱媒体循環回路に設け、
前記熱媒体流路反転装置は、
モーターと、円筒形の回転筒と、前記回転筒の側面に設けられ回転筒の内部と外部とで熱媒体が流動可能な孔と、が備えられ、前記モーターの作用により、前記回転筒を回転させて、前記回転筒の側面の孔の位置を周方向で変化できるようになっている複数の三方弁で構成され、該複数の三方弁が2つの組に分けられており、
起動時においては、前記ポンプ及び前記圧縮機の起動前に現在設定されている運転モードに対応した位置に切り替えられるように制御され、
停止時においては、前記ポンプ及び前記圧縮機の停止前に運転中の位置から変化させないように制御されるように構成されており、
前記熱媒体循環回路を循環する熱媒体は、
前記第2熱交換器において前記熱媒体が冷却される場合及び前記第2熱交換器において前記熱媒体が加熱される場合の双方において、一方の組の熱媒体流路反転装置の回転筒の端部から流入し、他方の組の熱媒体流路反転装置の回転筒の端部から流出する
空気調和装置。」
とする補正を含むものである。

この補正は、補正前の請求項1の記載において、特許請求の範囲に記載した発明を特定するために必要な事項である熱媒体流路反転装置について、「起動時においては、前記ポンプ及び前記圧縮機の起動前に現在設定されている運転モードに対応した位置に切り替えられるように制御され、停止時においては、前記ポンプ及び前記圧縮機の停止前に運転中の位置から変化させないように制御されるように構成され」るものであるという限定を付加するものである。また、この補正により、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでないことも明らかである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

2-2.本願補正発明
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)は、特許請求の範囲の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正後の請求項1参照。)により特定されたとおりのものと認める。

2-3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原出願の優先日前に頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例である、国際公開2010/131378号(以下「引用例1」という。)、特開平8-86477号公報(以下「引用例2」という。)、及び国際公開2010/119555号(以下「引用例3」という。)には、以下の各事項が記載されている。
<引用例1>
(1a)「【0013】
図1に示すように、空気調和装置100は、圧縮機1、四方弁2、室外熱交換器(熱源側熱交換器)3、室外ファン3-a、絞り装置4、中間熱交換器5、ポンプ11、室内熱交換器(利用側熱交換器)12、及び、室内ファン12-a、を有している。そして、圧縮機1、四方弁2、室外熱交換器3、絞り装置4、及び、中間熱交換器5が、順に配管接続され、一次側熱伝達媒体を循環させる冷凍サイクルとしての一次側サイクルを構成している。また、ポンプ11、室内熱交換器12、及び、中間熱交換器5が、順に配管接続され、二次側熱伝達媒体(以下、ブラインと称す)を循環させる冷凍サイクルとしての二次側サイクルを構成している。」

(1b)「【0017】
室外ファン3-aは、室外熱交換器3の近傍に設けられ、この室外熱交換器3に空気を供給するものである。絞り装置4は、減圧弁や膨張弁としての機能を有し、冷媒を減圧して膨張させるものである。この絞り装置4は、開度が可変に制御可能なもの、たとえば電子式膨張弁などで構成するとよい。中間熱交換器5は、たとえば二重管熱交換器やプレート式熱交換器、マイクロチャネル式水熱交換器等で構成されており、一次側サイクルを循環する冷媒と二次側サイクルを循環するブラインとで熱交換を行ない、一次側サイクルで生成される冷熱や温熱を室内熱交換器12に熱輸送するものである。」

(1c)「【0062】
実施の形態3.
図12は、本発明の実施の形態3に係る空気調和装置200の冷媒回路構成を示す冷媒回路図である。図12に基づいて、空気調和装置200の回路構成及び動作について説明する。この空気調和装置200は、複数台の室内熱交換器を備え、冷媒(一次側熱伝達媒体及び二次側熱伝達媒体)を循環させる冷凍サイクル(一次側サイクル及び二次側サイクル)を利用することで冷房及び暖房を同時に行なえるものである。なお、実施の形態3では実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略するものとする。」

(1d)「【0064】
室外ユニットAと分流コントローラBとは、2本の冷媒配管を介して接続されており、分流コントローラBと各室内ユニットCとも、2本のブライン配管を介して接続されている。なお、図12において、分流コントローラBの冷媒入口をPH と、分流コントローラBの冷媒出口をPL と、第1絞り装置6と絞り装置4-2とを接続している配管の分岐点をPCと、それぞれ称して図示している。」

(1e)「【0065】
[室外ユニットA]
室外ユニットAには、圧縮機1と、四方弁2と、室外熱交換器3と、が冷媒配管で直列に接続されて搭載されている。」

(1f)「【0068】
[分流コントローラB]
分流コントローラBには、第1絞り装置6と、第2絞り装置7と、2台の中間熱交換器5(第1中間熱交換器5-1、第2中間熱交換器5-2)と、2つの絞り装置(絞り装置4-1、絞り装置4-2)と、2つの熱源側三方弁8(熱源側三方弁8-1、熱源側三方弁8-2)と、2台のポンプ11(第1ポンプ11-1、第2ポンプ11-2)と、3つの第1利用側三方弁13(紙面上側から利用側三方弁13-1、利用側三方弁13-2、利用側三方弁13-3)と、3つの第2利用側三方弁15(紙面上側から利用側三方弁15-1、利用側三方弁15-2、利用側三方弁15-3)と、3つの二方弁14(紙面上側から二方弁14-1、二方弁14-2、二方弁14-3)と、が搭載されている。」

(1g)「【0080】
[室内ユニットC]
室内ユニットCには、3台の室内熱交換器12(紙面上側から室内熱交換器12-1、室内熱交換器12-2、室内熱交換器12-3)及び3台の室内ファン12-a(紙面上側から室内ファン12-1a、室内ファン12-2a、室内ファン12-3a)が搭載されている。この室内熱交換器12は、分流コントローラBに設けられている二方弁14及び第2利用側三方弁15と接続するようになっている。

(1h)「【0084】
[冷房運転]
図14は、実施の形態3に係る空気調和装置200の冷房運転時の冷媒、ブラインの流れを示す図である。
まず、冷媒の流れについて説明する。冷房運転時には、圧縮機1から吐出された冷媒を室外熱交換器3に流入させるように四方弁2を切り替えている。圧縮機1に吸入された冷媒は圧縮機1で昇圧され、室外熱交換器3で外気と熱交換し凝縮する。この凝縮した液冷媒は、絞り装置6を通り、二経路の冷媒回路に分配されて絞り装置4-1、絞り装置4-2で減圧されて低温低圧の二相冷媒になり、中間熱交換器5-1、中間熱交換器5-2で冷房するための水と熱交換し、低温低圧のガス冷媒となり、圧縮機1に戻る。」

(1i)「 【0085】
次に、水の流れについて説明する。冷房運転時には、中間熱交換器5-1および5-2でともに冷水が精製される。そのため、行きの三方弁13および戻りの三方弁15は両方とも半分ずつ開き、各水路の水が混合するようにすればよい。中間熱交換器5-1、中間熱交換器5-2で生成される冷水は、三方弁13を通り、室内熱交換器12に送られる。なお、中間熱交換器5-1、中間熱交換器5-2は、室内ユニットCの冷房負荷に合わせて異なる温度帯の水を作り、室内ユニットCの負荷状況に合わせて三方弁13および三方弁15を制御して流路を切り替えてもよい。このとき、水熱交換器(中間熱交換器)で冷却された冷水はポンプ11で昇圧され、三方弁13で流路の選択が行われ、二方弁14で室内熱交換器12前後の温度差(第3ブライン温度検出器29と第4ブライン温度検出器30の温度差)が所定値になるように流量調整され、室内熱交換器12で室内の空気と熱交換して室内の空気を冷却し、三方弁15で元の中間熱交換器にブラインが流入されるように流路の選択が行われ、中間熱交換器5-1、または中間熱交換器5-2に戻る。」

(1j)「 【0086】
[暖房運転]
図15は、実施の形態3に係る空気調和装置200の暖房運転時の冷媒、ブラインの流れを示す図である。
まず、冷媒の流れについて説明する。暖房運転時には、図15に示すように、圧縮機1から吐出された冷媒を逆止弁ブロック10に流入させるように四方弁2を切り替えている。圧縮機1に吸入された冷媒は圧縮機1で昇圧され、分流コントローラBで二経路の冷媒回路に分配されて中間熱交換器5-1、中間熱交換器5-2で暖房するためのブラインと熱交換し、凝縮する。凝縮した液冷媒は、絞り装置4-1、絞り装置4-2、絞り装置7で減圧されて低温低圧の二相冷媒になり、室外熱交換器3で外気と熱交換し、低温低圧のガス冷媒となり圧縮機1に戻る。

(1k)「 【0087】
次に、水の流れについて説明する。暖房運転時には、中間熱交換器5-1および5-2でともに温水が精製される。そのため、行きの三方弁13および戻りの三方弁15は両方とも半分ずつ開き、各水路の水が混合するようにすればよい。中間熱交換器5-1、中間熱交換器5-2で生成される温水は、三方弁13を通り、室内熱交換器12に送られる。なお、中間熱交換器5-1、中間熱交換器5-2は室内ユニットCの暖房負荷に合わせて異なる温度帯の水を作り、室内ユニットCの負荷状況に合わせて三方弁13および三方弁15を制御して流路を切り替えてもよい。このとき、水熱交換器で加熱された温水はポンプ11で昇圧され、三方弁13で流路の選択が行われ、二方弁14で室内熱交換器12前後の温度差(第3ブライン温度検出器29と第4ブライン温度検出器30の温度差)が所定値になるように流量調整されて、室内熱交換器12で室内の空気と熱交換して室内の空気を加熱し、三方弁15で元の中間熱交換器にブラインが流入されるように流路の選択が行われ、中間熱交換器5-1、または中間熱交換器5-2に戻る。」

(1l)「 【0088】
[冷房主体運転]
図16は、実施の形態3に係る空気調和装置200の冷房主体運転時の冷媒、ブラインの流れを示す図である
まず、冷媒の流れについて説明する。冷房主体運転時の四方弁2の接続は、冷房運転と同じである。圧縮機1に吸入された冷媒は、圧縮機1で昇圧され、加熱能力の余剰分を室外熱交換器3で放熱し、さらに中間熱交換器5-2で水を加熱する。その後、中間熱交換器5-1の水を冷却して圧縮機1に戻る。」

(1m)「 【0089】
次に、水の流れについて説明する。室内熱交換器12の暖房、冷房の選択は三方弁13、三方弁15で行ない、暖房を行なう室内熱交換器12は暖房用の中間熱交換器5-2と、冷房を行なう室内熱交換器12は冷房用の中間熱交換器5-1と接続される。それぞれの水熱交換器で生成された冷水、温水は、ポンプ11で昇圧され、三方弁13で流路の選択が行われ、二方弁14により室内熱交換器12前後の温度差(第3ブライン温度検出器29と第4ブライン温度検出器30の温度差)が所定値になるように流量制御されながら、室内熱交換器12に送られ、冷房と暖房を行ない、三方弁15で元の中間熱交換器にブラインが流入されるように流路の選択が行われ、中間熱交換器5-1、または中間熱交換器5-2に戻る。」

(1n)「 【0090】
[暖房主体運転]
図17は、実施の形態3に係る空気調和装置200の暖房主体運転時の冷媒、ブラインの流れを示す図である。
まず、冷媒の流れについて説明する。暖房主体運転時の四方弁2の接続は、暖房運転と同じである。圧縮機1に吸入された冷媒は、圧縮機1で昇圧され、暖房用の中間熱交換器5-2で暖房するための水と熱交換し、凝縮する。凝縮した液冷媒は、絞り装置4-2、絞り装置4-1で減圧されて温度低下して冷房用の中間熱交換器5-1に流入し、冷房するための水と熱交換する。その後、室外熱交換器3で外気と熱交換して圧縮機1に戻る。」

(1o)「 【0091】
次に、水の流れについて説明する。室内熱交換器12の暖房、冷房の選択は三方弁13、三方弁15で行ない、暖房を行なう室内熱交換器12は暖房用の中間熱交換器5-2と、冷房を行なう室内熱交換器12は冷房用の中間熱交換器5-1と接続される。それぞれの水熱交換器で生成された冷水、温水はポンプ11で昇圧され、三方弁13で流路の選択が行われ、二方弁14により室内熱交換器12前後の温度差(第3ブライン温度検出器29と第4ブライン温度検出器30の温度差)が所定値になるように流量制御されながら、室内熱交換器12に送られ、冷房と暖房を行ない、三方弁15で元の中間熱交換器にブラインが流入されるように流路の選択が行われ、中間熱交換器5-1、または中間熱交換器5-2に戻る。」

(1h)ないし(1o)には[冷房運転]、[暖房運転]、[冷房主体運転]、[暖房主体運転]のそれぞれについて、冷媒とブラインの流れが記載されており、これらを総合的にみると、第1、第2中間熱交換器5-1、5-2のそれぞれは、冷房に用いる場合には冷媒とブラインとが対向流となり、暖房に用いる場合には冷媒とブラインとが並行流となることが記載されている。

以上の記載によると、引用例1の特に実施の形態3には、
「圧縮機1、四方弁2、室外熱交換器3、2つの絞り装置(4-1、4-2)、第1絞り装置6、第2絞り装置7、及び、2台のプレート式中間熱交換器(第1、第2中間熱交換器5-1、5-2)が、配管接続され、一次側熱伝達媒体(冷媒)を循環させる冷凍サイクルとしての一次側サイクルを構成し、
2台のポンプ(第1、第2ポンプ11-1、11-2)、3つの第1利用側三方弁(13-1、13-2、13-3)、3つの第2利用側三方弁(15-1、15-2,15-3)、3つの室内熱交換器(12-1、12-2、12-3)、及び、2台のプレート式中間熱交換器(第1、第2中間熱交換器5-1、5-2)が、配管接続され、二次側熱伝達媒体(ブライン)を循環させる冷凍サイクルとしての二次側サイクルを構成し、
2台のプレート式中間熱交換器(第1、第2中間熱交換器5-1、5-2)は、一次側サイクルを循環する冷媒と二次側サイクルを循環するブラインとで熱交換を行ない、
2台のプレート式中間熱交換器(第1、第2中間熱交換器5-1、5-2)はそれぞれ、冷房に用いる場合には冷媒とブラインとが対向流となり、暖房に用いる場合には冷媒とブラインとが並行流となる、
空気調和装置200。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用例2>
(2a)「【請求項1】圧縮機と外部流体と冷媒の熱交換を行う第一の熱交換器と減圧機構と、密閉された複数枚の金属プレートの間を前記冷媒と被冷却流体若しくは被加熱流体が交互に流れることにより熱交換を行うプレート式熱交換器と前記冷媒の流れ方向を切り換える四方弁から成る冷凍サイクルを含むヒートポンプ空気調和機において、前記プレート式熱交換器の前記冷媒と前記被冷却流体が常に対向流となるように、前記冷凍サイクルの前記四方弁の切り換えの動きに同調して、前記プレート式熱交換器を流れる前記被冷却流体の流れ方向を逆方向とすることを特徴とするヒートポンプ空気調和機。」

(2b) 【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の技術において、被冷却(加熱)流体用熱交換器としてプレート式熱交換器を使用した場合、冷媒側四方弁を、例えば、冷却運転から加熱運転に切り換えたとき、プレート式熱交換器を通過する冷媒の向きは冷却運転時下から上へ流れていたのが加熱運転時上から下へ逆方向へ流れるようになる。従来の技術では、被冷却流体の流れの方向が一定のため、プレート式熱交換器を使用した場合には上から下もしくは下から上の一定方向の流れとなる。従って、冷却運転若しくは加熱運転のどちらかで、冷媒と被冷却流体の流れが、対向流ではなく並流となり、特に、プレート式熱交換器の場合、完成に並流となるため、流体出入口温度差の確保ができなくなるという問題と、これに伴い伝熱面積不足の原因になるという問題があった。」

(2c)「【0005】本発明の目的は、冷却運転,加熱運転いずれの場合にも、熱交換器の性能を確保することにある。」

(2d)【0015】次に図2に請求項3の一実施例である冷凍サイクルの系統図を示す。図2は図1における流体回路中の四方弁8の代わりに二つの三方弁9a,9bを用いた例である。冷却運転と加熱運転を切り換える四方弁5の動きに同調して、二つの三方弁9a,9bにより流体の流路も切り換える。これにより、冷却運転の際も、加熱運転の際も、冷媒と被冷却(加熱)流体が、常に対向流となり、流体間の出入口温度差の確保が容易となる。

以上の記載によると、引用例2には、
「被冷却(加熱)流体用熱交換器としてプレート式熱交換器を使用した場合に、冷却運転,加熱運転いずれの場合にも、熱交換器の性能を確保するために、二つの三方弁9a,9bを用い、冷却運転と加熱運転を切り換える四方弁5の動きに同調して、二つの三方弁9a,9bにより被冷却(加熱)流体の流路も切り換え、これにより、冷却運転の際も、加熱運転の際も、冷媒と被冷却(加熱)流体を、常に対向流とする」という技術的事項が記載されている。

<引用例3>
(3a)「【0065】
熱媒体流路切替装置23は、弁体回転手段309と、弁体304bと、これらを接続する弁棒312と、で構成されている。弁体回転手段309は、弁体304bを図示省略の回転軸を中心として回転させるためのものである。弁体回転手段309の回転は、弁棒312を介して弁体304bに伝わるようになっている。」

(3b)「 【0066】
弁体回転手段309、弁体回転手段310、及び、弁体回転手段311としては、たとえばステッピングモータを用い、図示省略の制御手段によってパルス信号を与えることによって駆動させることができる。なお、ステッピングモータではなく、ギアドモータ等の他のモータで弁体回転手段309、弁体回転手段310、及び、弁体回転手段311を構成してもよい。また、弁体304a及び弁体304bについては図6で、弁体303については図7で、それぞれ詳細に説明するものとする。」

(3c)「【0069】
弁体304は、円柱形状に構成されている。この弁体304には、楕円形状(開口部304aaを正面視した状態における形状)の開口部304aaが形成されている。この開口部304aaを側面視すると、弁体304の中心軸方向に向かって縮径するテーパー形状になっている。この開口部304aaの形成位置における弁体304の内部が中空状になっており、開口部304aaと連通する流路304abが形成されている。」

(3d)図5及び図6には、熱媒体流路切替装置23は三方弁として機能すること、弁体304bは円筒形であること、開口部304aaは弁体304bの側面に設けられ弁体304bの内部と外部とを熱媒体を流動可能とするものであること、及び、弁体304bを回転させて開口部304aaの位置が周方向で変化できることが記載されている。

以上の記載によると、引用例3には、
「ステッピングモータである弁体回転手段309と、円筒形の弁体304bとから構成され、弁体304bの側面には開口部304aaが設けられ弁体304bの内部と外部とを熱媒体が流動可能であり、弁体回転手段309は弁体304bを回転軸を中心として回転させて開口部304aaの位置が周方向で変化できる、三方弁」が記載されている。

2-4.対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「圧縮機1」は本願補正発明の「圧縮機」に相当し、以下同様に、「室外熱交換器3」は「第1熱交換器」に、「2つの絞り装置(4-1、4-2)」又は「第1絞り装置6」及び「第2絞り装置7」は「第1絞り装置」に、「2台のプレート式中間熱交換器(第1、第2中間熱交換器5-1、5-2)」は「第2熱交換器」に、「一次側サイクル」は「冷媒循環回路」に、「冷媒」は「熱源側冷媒」に、「2台のプレート式中間熱交換器(第1、第2中間熱交換器5-1、5-2)」内の一次側サイクルの流路は「(第2熱交換器の)冷媒側流路」に、「(一次側サイクルの)配管」は「冷媒配管」に相当する。
また、引用発明の「2台のポンプ(第1、第2ポンプ11-1、11-2)」は本願補正発明の「ポンプ」に相当し、以下同様に、「ブライン」は「熱媒体」に、「3つの第1利用側三方弁(13-1、13-2、13-3)」及び「3つの第2利用側三方弁(15-1、15-2、15-3)」は「冷却した熱媒体または加熱した熱媒体のいずれかを選択的に通過可能にする熱媒体流路切替装置」に、「二次側サイクル」は「熱媒体循環回路」に、「2台のプレート式中間熱交換器(第1、第2中間熱交換器5-1、5-2)」内の二次側サイクルの流路は「(第2熱交換器の)熱媒体流路」に、「(二次側サイクルの)配管」は「熱媒体配管」に、「空気調和装置200」は「空気調和装置」に相当する。

よって、両者は、
「圧縮機、第1熱交換器、第1絞り装置、第2熱交換器の冷媒側流路を冷媒配管で接続して熱源側冷媒を循環させる冷媒循環回路と、
ポンプ、前記第2熱交換器の熱媒体側流路、冷却した熱媒体または加熱した熱媒体のいずれかを選択的に通過可能にする熱媒体流路切替装置を熱媒体配管で接続して熱媒体を循環させる熱媒体循環回路と、を有し、
前記第2熱交換器において前記熱源側冷媒と前記熱媒体とが熱交換する
空気調和装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点A]
本願補正発明では、
(ア)第2熱交換器の熱媒体側流路における熱媒体の流れ方向を切替可能な熱媒体流路反転装置を熱媒体循環回路に設け、
(イ)熱媒体流路反転装置は、モーターと、円筒形の回転筒と、回転筒の側面に設けられ回転筒の内部と外部とで熱媒体が流動可能な孔と、が備えられ、モーターの作用により、回転筒を回転させて、回転筒の側面の孔の位置を周方向で変化できるようになっている複数の三方弁で構成され、該複数の三方弁が2つの組に分けられており、
(ウ)起動時においては、ポンプ及び圧縮機の起動前に現在設定されている運転モードに対応した位置に切り替えられるように制御され、
(エ)停止時においては、ポンプ及び圧縮機の停止前に運転中の位置から変化させないように制御されるように構成されており、
(オ)熱媒体循環回路を循環する熱媒体は、第2熱交換器において熱媒体が冷却される場合及び第2熱交換器において熱媒体が加熱される場合の双方において、一方の組の熱媒体流路反転装置の回転筒の端部から流入し、他方の組の熱媒体流路反転装置の回転筒の端部から流出するのに対して、
引用発明では、熱媒体流路反転装置を備えず、2台の中間熱交換器(第1、第2中間熱交換器5-1、5-2)のそれぞれは、冷房に用いる場合には冷媒とブラインとが対向流となり、暖房に用いる場合には冷媒とブラインとが並行流となる点。

2-5.判断
上記相違点Aについて検討する。
(ア)について
上記「2-3.引用例<引用例2>」で示したように、引用例2には、「被冷却(加熱)流体用熱交換器としてプレート式熱交換器を使用した場合に、冷却運転,加熱運転いずれの場合にも、熱交換器の性能を確保するために、二つの三方弁9a,9bを用い、冷却運転と加熱運転を切り換える四方弁5の動きに同調して、二つの三方弁9a,9bにより被冷却(加熱)流体の流路も切り換え、これにより、冷却運転の際も、加熱運転の際も、冷媒と被冷却(加熱)流体を、常に対向流とする」という技術的事項が記載されている。ここで、引用例2の「被冷却(加熱)流体の流路」は本願補正発明の「熱媒体循環回路」に相当するから、引用例2の上記「二つの三方弁9a,9bにより被冷却(加熱)流体の流路も切り換え、これにより、冷却運転の際も、加熱運転の際も、冷媒と被冷却(加熱)流体を、常に対向流とする」ことは、本願補正発明の「第2熱交換器の熱媒体側流路における熱媒体の流れ方向を切替可能な熱媒体流路反転装置を熱媒体循環回路に設け」ることに相当するといえる。
そして、引用発明はプレート式熱交換器を用いるものであり、暖房に用いる場合に冷媒とブラインとが並行流となることで熱交換の性能が低下することは明らかであるから、これに対処すべく、引用発明に上記技術的事項を適用することは当業者であれば容易に想起し得たことである。

(イ)と(オ)について
引用発明に上記技術的事項を適用するにあたって、「二つの三方弁」としてどのような構造のものを選択するかは当業者が適宜決定し得ることである。そして、引用例3記載の三方弁の「ステッピングモータである弁体回転手段309」、「円筒形の弁体304b」、「開口部304aa」はそれぞれ、本願補正発明の三方弁の「モータ-」、「円筒形の回転筒」、「回転筒の側面に設けられ回転筒の内部と外部とで熱媒体が流動可能な孔」に相当するものであり、引用例3には上記(イ)の三方弁と同じ構造のものが記載されていると認められ、また、これが三方弁として格別な構造のものとも認められない。
さらに、適用した三方弁における熱媒体の流入及び流出の態様をどのように定めるかは設計的事項にすぎない。

(ウ)と(エ)について
流体回路を備える装置において、ポンプや圧縮機のような駆動手段が起動される前に、運転に必要な流路を確保すべく弁手段を切り替えておくことは、機械設計上いわば当然のことであり、また、停止時において次回の運転に備えて弁手段をそのままの状態に維持しておくことも、ごく普通に行われることである。(必要ならば、前者については国際公開2010/050004号の[0110]?[0111]を、後者については特開昭62-293056号公報の3頁左上欄6-13行を参照のこと。)

以上より、引用発明に引用例2、3記載の上記技術的事項及び上記周知技術を適用し、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。また、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用例2、3記載の上記技術的事項及び上記周知技術の奏する作用効果からみて、格別なものとは認められない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2、3記載の技術的事項、及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-6.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するもので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成27年9月4日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年12月25日付け手続補正で補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正前の請求項1参照。)により特定されるとおりのものである。

4.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、その記載事項及び引用発明は、上記「2-3.引用例」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、上記「2-2.本願補正発明」で検討した本願補正発明から、熱媒体流路反転装置について「起動時においては、前記ポンプ及び前記圧縮機の起動前に現在設定されている運転モードに対応した位置に切り替えられるように制御され、停止時においては、前記ポンプ及び前記圧縮機の停止前に運転中の位置から変化させないように制御されるように構成されており」という限定を除いたものである。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
「圧縮機、第1熱交換器、第1絞り装置、第2熱交換器の冷媒側流路を冷媒配管で接続して熱源側冷媒を循環させる冷媒循環回路と、
ポンプ、前記第2熱交換器の熱媒体側流路、冷却した熱媒体または加熱した熱媒体のいずれかを選択的に通過可能にする熱媒体流路切替装置を熱媒体配管で接続して熱媒体を循環させる熱媒体循環回路と、を有し、
前記第2熱交換器において前記熱源側冷媒と前記熱媒体とが熱交換する
空気調和装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点B]
本願発明では、
(カ)第2熱交換器の熱媒体側流路における熱媒体の流れ方向を切替可能な熱媒体流路反転装置を熱媒体循環回路に設け、
(キ)熱媒体流路反転装置は、モーターと、円筒形の回転筒と、回転筒の側面に設けられ回転筒の内部と外部とで熱媒体が流動可能な孔と、が備えられ、モーターの作用により、回転筒を回転させて、回転筒の側面の孔の位置を周方向で変化できるようになっている複数の三方弁で構成され、該複数の三方弁が2つの組に分けられており、
(ク)熱媒体循環回路を循環する熱媒体は、第2熱交換器において熱媒体が冷却される場合及び第2熱交換器において熱媒体が加熱される場合の双方において、一方の組の熱媒体流路反転装置の回転筒の端部から流入し、他方の組の熱媒体流路反転装置の回転筒の端部から流出するのに対して、
引用発明は、熱媒体流路反転装置を備えず、2台の中間熱交換器(第1、第2中間熱交換器5-1、5-2)のそれぞれは、冷房に用いる場合には冷媒とブラインとが対向流となり、暖房に用いる場合には冷媒とブラインとが並行流となる点。

ここで、上記相違点Bの(カ)、(キ)、(ク)は、上記「2-5.判断」の(ア)、(イ)、(オ)としてすでに検討済みである。
よって、本願発明も上記「2-5.判断」と同様の理由により、引用発明及び引用例2、3記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-24 
結審通知日 2016-08-30 
審決日 2016-09-14 
出願番号 特願2014-53855(P2014-53855)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25B)
P 1 8・ 575- Z (F25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 充  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 中村 則夫
佐々木 正章
発明の名称 空気調和装置  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  

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