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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B |
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管理番号 | 1320987 |
審判番号 | 不服2015-16234 |
総通号数 | 204 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-09-02 |
確定日 | 2016-11-15 |
事件の表示 | 特願2011-132024「液晶表示装置用回折構造体、偏光板、及び液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月 7日出願公開、特開2013- 3241、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年6月14日の出願であって、平成27年3月2日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月11日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年5月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月2日付けで拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において平成28年6月17日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年8月10日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1-7に係る発明は、平成28年8月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。 そのうち、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「液晶表示装置に配置されて入射面の法線方向に対して半値角度が0°?15°の範囲内で入射した光を所定の範囲に拡散して出射する回折構造体であって、 前記液晶表示装置が鉛直に立てられた姿勢で、正面、水平面内方向、及び垂直面内方向にのみ輝度分布を生じる回折構造を有する、 液晶表示装置用回折構造体。」 第3 原査定の理由について 1 原査定の理由の概要 平成27年5月11日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用例1:特開2007-304436号公報 引用例2:特開2007-264428号公報 引用例3:特開2003-337335号公報 引用例1及び2には、液晶表示装置に配置されて入射した光を所定の範囲に拡散して射出する拡散素子であって、前記拡散が上下方向及び左右方向である拡散素子が記載されている。 一方、所望の拡散作用を有するものとして、回折構造は周知技術(例.引用例3参照。)であるので、引用例1及び2に記載の拡散素子として、前記周知の回折構造を採用して、平成27年5月11日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に係る発明を導きだすことは、当業者が容易に想到し得たことである。 2 原査定の理由の判断 (1)引用例の記載事項 ア 引用例1について 引用例1には、次の事項が図とともに記載されている。 (ア)「【0001】 本発明は、表示装置、偏光素子、防眩性フィルム、及び、その製造方法に関し、更に詳しくは、外光の写り込みによる眩しさや表示の視認性の低下を抑える防眩層を備える表示装置、並びに、そのような表示装置に用いる偏光素子、防眩性フィルム、及び、その製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 一般に、液晶表示装置(LCD)は、薄型軽量で低消費電力であるといった特長を有する。種々の液晶表示装置の中でも、特に、縦横のマトリックス状に配列した個々の画素を能動素子によって駆動するアクティブマトリックス型液晶表示装置(AM-LCD)は、高画質のフラットパネルディスプレイとして認知されている。AM-LCDとしては、個々の画素をスイッチングする能動素子に薄膜トランジスタ(TFT)を用いた薄膜トランジスタ型液晶表示装置(TFT-LCD)が広く普及している。また、近年では、LCDの用途の拡大に伴い、画素の高精細化が進んでいる。」 (イ)「【発明が解決しようとする課題】 【0012】 ここで、図14を詳細に観察すると、液晶表示装置を観察する方位に依存して、視野角に対するコントラスト比の変化が違うことがわかる。具体的には、偏光層の光吸収軸又は光透過軸に平行な方向である0°(180°)方向及び90°(270°)方向では、視野角の変化に対するコントラスト比の低下は少なく、光吸収軸又は光透過軸から45°ずれた45°(225°)方向及び135°(315°)方向では、視野角の変化に対するコントラスト比の低下は大きい。これは、光吸収軸又は光透過軸と平行な方位では、視野角を変化させても、黒表示状態での光漏れの量は大きく変化しないが、45°ずれた方位では、視野角を変化させると、光漏れの量の変化が急激に増大することを意味している。 ・・・略・・・ 【0014】 本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、斜め視野での黒表示状態での光漏れが観察方位に依存して変化する表示装置について、外光の写り込みによる眩しさや表示の視認性の低下を抑えるための防眩層を備えながらも、高コントラスト比を実現できる表示装置を提供することを目的とする。 【0015】 また、本発明は、上記表示装置で用いることができる偏光素子、防眩性フィルム、及び、その製造方法を提供する。」 (ウ)「【課題を解決するための手段】 【0016】 上記目的を達成するために、本発明の表示装置は、特定の方位から視角を傾けて観察した際の黒表示状態での光漏れが、他の方位から視角を傾けて観察した際の光漏れよりも少ない表示部と、入射光を散乱して出射する防眩性フィルムであって、所定の方位で傾いた方向から入射した光に対する散乱性が、他の方位で傾いた方向から入射した光に対する散乱性よりも高い光散乱特性を有する防眩性フィルムとを備え、前記表示部での黒表示状態での光漏れが少ない特定の方位と、前記防眩性フィルムの光散乱性が高い所定の方位とがほぼ一致することを特徴とする。 【0017】 本発明の表示装置では、外光の写り込みによる眩しさや表示の視認性の低下を抑えるための防眩性フィルムが、斜め方向に傾いて入射する入射光の方位に対して、光散乱特性に異方性を有しており、防眩性フィルムにおける光散乱性が高い方位と、表示部の黒表示状態における斜め視野での光漏れが少ない方位とがほぼ一致する構成を採用する。このようにすることで、防眩性フィルムが方位に対して異方性を有しない場合に比して、黒表示状態で、防眩性フィルムに光漏れが多い方位から入射した光が、正面方向にその向きを変えられることを抑制することができ、正面コントラストの低下を抑制して、高コントラスト比で視認性に優れた表示装置を提供することができる。 【0018】 本発明の表示装置では、前記表示部が、液晶セル及び偏光フィルムを含み、前記防眩性フィルムの光散乱性が高い所定の方位と、前記偏光フィルムの光透過軸又は光吸収軸の方位とが一致する構成を採用することができる。一般に、液晶セル及び偏光フィルムを用いた液晶表示部では、偏光フィルムの光透過軸又は光吸収軸に平行な方向が、黒表示状態で最も光漏れが少ない方位となる。従って、表示部を液晶表示部として構成する場合には、防眩性フィルムにおける光散乱が強い方位を、偏光フィルムの光吸収軸又は光透過軸に平行な方位とすればよい。」 (エ)「【発明の効果】 【0037】 本発明の表示装置では、防眩性フィルムが、斜め方向に傾いて入射する入射光の方位に対して、光散乱特性に異方性を有しており、防眩性フィルムにおける光散乱性が高い方位と、表示部の黒表示状態における斜め視野での光漏れが少ない方位とがほぼ一致する構成を採用する。このようにすることで、黒表示状態で、防眩性フィルムに光漏れが多い方位から入射した光が、正面方向にその向きを変えられることを抑制することができ、正面コントラストの低下を抑制して、高コントラスト比で視認性に優れた表示装置を提供することができる。」 (オ)「【発明を実施するための最良の形態】 【0038】 以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態の表示装置を斜視図で示している。表示装置100は、画像表示を行う表示部110と、外光の写り込みによる眩しさや視認性の低下を抑えるための防眩性フィルム120とを有する。防眩性フィルム120は、表示部110に表示画面に対応して、その最表面側に貼り付けられる。以下では、表示部110の表示画面の長辺方向をx方向とし、短辺方向をy方向として説明する。また、便宜上、表示部110と防眩性フィルム120とに構成要素を分けて説明するが、防眩性フィルム120は、必ずしも表示部110と別構成で表示部110に貼り付けられている必要はなく、表示部110の最表面側に直接に防眩処理を施し、表示部110と一体となった構成とすることもできる。 【0039】 表示部110の表示特性は、視野角に対する依存性を有し、特に、視角方向を正面(表示面の法線方向)から斜めに傾けて観察する際に、どの方位から観察するかによって、光漏れの量が変化する。防眩性フィルム120は、表示部110から出射した光を、観察者側に透過させる。防眩性フィルム120は、光散乱特性を有し、その光散乱特性について、光の入射方向に対する依存性を有する。特に、斜め方向に入射した光について、入射光の方位に依存して、散乱の度合が変化する。本実施形態では、表示部110の斜め視野での光漏れが少ない方位と、防眩性フィルム120の光散乱性が強い方位とが一致するように、表示部110と防眩性フィルム120とを重ね合わせる。 【0040】 図2及び図3は、それぞれ表示部110を示し、(a)は、斜めから見た状態を、(b)は、上から平面的に見た状態をそれぞれ示している。また、図4及び図5は、それぞれ防眩性フィルム120を示し、(a)は斜めから見た状態を、(b)は上から平面的に見た状態をそれぞれ示している。例えば、表示部110を斜め視野から観察した際に、黒表示状態における光漏れが少ない方位を、図2に示す、矩形状の表示面の長辺方向及び短辺方向にそれぞれ平行な方位(x方向、y方向)とする。また、表示部110を斜め視野から観察した際に、黒表示状態における光漏れが多い方位を、図3に示す、矩形状の表示面の長辺方向及び短辺方向から45°ずれた方位(対角線方向)とする。この場合には、防眩性フィルム120における散乱特性が強い方位が、表示面の長辺方向及び短辺方向にそれぞれ平行な方位に一致するように防眩性フィルム120を配置し(図4)、表示部110における斜め視野での黒表示状態の光漏れが多い45°ずれた方位(図3)と、防眩性フィルム120における散乱特性が弱い方位(図5)とを一致させる。 ・・・略・・・ 【0042】 本実施形態では、表示部110における光漏れが多い方位と、防眩性フィルム120における光散乱特性が弱い方位とを一致させている。このようにすることで、表示部110における光漏れが多い方位から、防眩性フィルム120に斜めに入射した光のうちで、正面方向にその方向が変えられる光の量を少なくできる。これにより、防眩性フィルム120を用いて外光の写り込みによる眩しさや視認性の低下を抑えつつ、正面視野でのコントラスト比の低下を抑制することができ、高コントラスト比で視認性に優れた表示装置を提供することができる。」 (カ)「【0044】 実施例1 図6は、第1実施例の表示装置を斜視図で示している。本実施例の表示装置100aは、液晶表示装置として構成される。表示部110は、液晶セル230と、液晶セル230を外側から挟み込む一対の偏光フィルム220、240と、液晶セル230に、偏光フィルム220を介して背面側からバックライト光を照射するバックライト210とを有する。防眩性フィルム120aは、散乱制御フィルム250、260と、表面散乱フィルム270とを有する。 ・・・略・・・ 【0047】 表面散乱フィルム270には、特許文献1や特許文献2に記載されるような、表面に凹凸形状を有する防眩層が透明な基材上に形成されたものを用いた。散乱制御フィルム250、260には、住友化学(株)が製造販売する「ルミスティー」を応用して用いた。ルミスティーは、見る角度に応じて透明に見えたり、すりガラス状に見えたりする機能を持つフィルムである。ルミスティーは、例えば窓ガラスに貼り付けることによって、視界制御フィルムとして用いられるものである。ルミスティーについては、液晶表示装置の視野角特性の改善などへの応用例も報告されている。 【0048】 ルミスティーには、現時点では、4種類のタイプ、すなわち、正面不透明タイプ、2種類の一方向不透明タイプ、両方向不透明タイプが用意されているが、散乱制御フィルム250、260には、これらのタイプのうち、正面不透明タイプであるMFX-1515を用いた。このタイプは、例えば視界制御機能をタテ方向に使った場合には、上下方向にそれぞれ15°以上の方向は透明に見え、正面から上下15°以内および左右方向の全視界はすりガラス状になって向こう側が見えなくなるタイプである。後の説明のために、このように用いた場合の左右方向(向こう側が見えなくなる方向)を、便宜的に「散乱軸」と定義する。 【0049】 図7は、図6に示す表示装置100aを展開斜視図で示している。同図では、偏光フィルム220、240の光吸収軸221、241、液晶セル230における液晶層の初期配向方位231、散乱制御フィルム250、260の散乱軸251、261を併せて図示している。一対の偏光フィルム220、240は、光吸収軸221、241が互いに直交する向きに配置される。光吸収軸221、241のうちの一方(図7では光吸収軸221)は、表示面の長辺に沿った方向、すなわちx方向に平行な向きに配置され、他方(図7では光吸収軸241)は、表示面の短辺、すなわちy方向に平行な向きに配置される。 【0050】 液晶セル230における液晶層の初期配向方位231は、一対の偏光フィルム220、240の光吸収軸221、241の一方と平行な向きに設定され、図7では、光吸収軸241と平行な向き(y方向)に設定される。散乱制御フィルム250、260の散乱軸251、261は、表示部110における斜めから観察した際の黒表示状態での光漏れが少ない方向に対応しており、散乱制御フィルム250、260のうちの一方の散乱軸(図7では散乱軸251)は、y方向に平行な向きに配置される。また、散乱軸の他方(図7では散乱軸261)は、x方向に平行な向きに配置される。 【0051】 図8及び図9は、それぞれ、散乱制御フィルム250、260の散乱の様子を模式的に示している。散乱制御フィルム250の散乱軸251は、y方向に平行であるため、散乱制御フィルム250は、図8に示すように、背面側から入射した光のうちの、正面(表示面の法線方向)及びy方向に傾いた光に対しては大きな散乱性を示し、x方向に傾いた光に対しては小さな散乱性を示す。また、散乱制御フィルム260の散乱軸261は、表示面のx方向に平行であるため、散乱制御フィルム260は、図9に示すように、背面側から入射した光のうちの、正面及びx方向に傾いた光に対しては大きな散乱性を示し、y方向に傾いた光に対しては小さな散乱性を示す。 【0052】 本実施例では、表示部110に、薄膜トランジスタによって各画素を駆動する液晶セル230を用い、液晶セル230における液晶方式として、横電界方式を用いているため、表示装置100aとしては、比較的良好な視野角特性を有している。また、液晶セル230と偏光フィルム220、240の偏光層との間に、光学補償層を設けて、視野角特性を更に向上させる構成とすることもできる。しかしながら、表示部110は、それでもなお、表示面の対角方向に相当する方位に視角を傾けた場合の黒表示状態での光漏れが、表示面の長辺方向及び短辺方向に相当する方位に視角を傾けた場合よりも多いという特性を有している。 【0053】 一方、防眩性フィルム120aは、散乱軸がそれぞれx方向及びy方向に平行に配置された2枚の散乱制御フィルム250、260と、表面散乱フィルム270とが積層された構成を有する。これにより、防眩性フィルム120a全体としては、表面散乱フィルム270の効果により、窓や室内照明機器等からの外光の写り込みによる眩しさや表示の視認性の低下を抑えるという十分な防眩効果を有し、かつ、散乱制御フィルム250、260の散乱性の効果により、表示面の正面方向と、x及びyの各方位に傾いた方向とから入射する光に対して、十分な散乱性を有している。このため、表示部110が高精細の画像を表示する場合についても、シンチレーションの発生を抑えることができる。 【0054】 また、防眩性フィルム120aの最も重要な特徴として、表示部110における黒表示状態の斜め視野での光漏れが最も多い方位である、表示面の対角方向に相当する方位から入射する光に対する散乱性が、表示面の長辺方向及び短辺方向に相当する方位から入射する光に対する散乱性よりも低い。このようにすることで、黒表示状態で、表示部110を通過した対角方向の方位の光漏れによる光が、防眩性フィルム120aによって正面方向にその方向を変えられることを抑制することができ、高コントラスト比で視認性に優れた表示装置を提供することができる。」 (キ)「【図2】 ![]() 」 (ク)「【図4】 ![]() 」 (ケ)「【図7】 ![]() 」 (コ)「【図8】 ![]() 」 (サ)「【図9】 ![]() 」 (シ)実施例1(上記(カ))は、上記(ア)ないし(オ)に記載された事項を前提にするものであるから、上記(ア)ないし(サ)から、引用例1には次の発明(以下、「引用発明1」という。なお、段落番号は発明を認定するために引用した箇所を示すため、参照として併記する。)が記載されているものと認められる。 「【0044】液晶表示装置として構成される表示装置100aに設けられた、散乱制御フィルム250、260と、表面散乱フィルム270とを有する防眩性フィルム120aであって、 【0038】表示部110の表示画面の長辺方向をx方向とし、短辺方向をy方向とし、 【0051】散乱制御フィルム250は、背面側から入射した光のうちの、正面(表示面の法線方向)及びy方向に傾いた光に対しては大きな散乱性を示し、散乱制御フィルム260は、背面側から入射した光のうちの、正面及びx方向に傾いた光に対しては大きな散乱性を示し、 【0054】表示面の対角方向に相当する方位から入射する光に対する散乱性が、表示面の長辺方向及び短辺方向に相当する方位から入射する光に対する散乱性よりも低い、 防眩性フィルム120a。」 イ 引用例2について 引用例2には、次の事項が図とともに記載されている。 (ア)「【0001】 この発明は、立体的な三次元画像を表示する液晶表示装置に関する。 ・・・略・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 この発明は、従来とは異なる新規な方式で三次元画像を表示し、しかもその三次元画像を、観察方向に対して上下に傾いた方向からも観察させることができる液晶表示装置を提供することを目的としたものである。」 (イ)「【課題を解決するための手段】 【0004】 この発明の液晶表示装置は、 光の透過を制御する複数の画素がマトリックス状に配列した画面エリアを有し、前記複数の画素に画像データが書込まれ、その画像データに応じた画像を表示する液晶表示パネルと、 前記液晶表示パネルの複数の画素に三次元画像を表示するための左眼用画像データと右眼用画像データとを選択的に書込む表示パネル駆動手段と、 前記液晶表示パネルの観察側とは反対側の面に対向させて配置され、前記液晶表示パネルに向けて、前記液晶表示パネルの画面の中央位置から表示観察者の左右の眼間の中央位置に向かう観察方向基準線に対して前記観察者の左眼方向に傾いた方向に出射光強度のピークが存在する指向性をもった左眼光と、前記観察者の右眼方向に傾いた方向に出射光強度のピークが存在する指向性をもった右眼光とを照射する照明手段と、 前記液晶表示パネルの観察側に設けられ、前記左眼光と右眼光を前記画面の上下方向に沿った方向に散乱する上下方向拡散手段とを備えたことを特徴とする。 【0005】 この液晶表示装置において、前記照明手段は、光を出射する面光源と、前記面光源からの出射光を、前記表示観察者の左眼方向と左眼方向とに向けて集光する集光レンズとを備えているのが好ましい。 【0006】 また、前記上下方向拡散手段は、前記左眼光と右眼光を、前記液晶表示パネルの画面の左右方向と平行で、且つ前記観察方向基準線を含む横方向基準面に対して前記画面の上下方向に傾いた予め定めた角度範囲の方向に散乱する異方性拡散板またはレンチキュラーレンズが好ましい。 【0007】 さらに、この液晶表示装置は、前記液晶表示パネルの観察側に設けられ、前記左眼光を、前記液晶表示パネルの画面の上下方向と平行で、且つ前記観察方向基準線を含む縦方向基準面に対して前記表示観察者の左眼方向に傾いた予め定めた角度範囲の方向に散乱し、前記右眼光を、前記縦方向基準面に対して前記観察者の右眼方向に傾いた予め定めた角度範囲の方向に散乱する左右方向拡散手段を備えているのが望ましい。」 (ウ)「【0013】 (第1の実施形態) 図1?図7はこの発明の第1の実施例を示しており、図1は液晶表示装置の斜視図、図2は前記液晶表示装置の平面図である。 ・・・略・・・ 【0041】 次に、前記液晶表示パネル1の観察側に設けられた上下方向拡散手段16について説明すると、この上下方向拡散手段16は、前記左眼光Lと右眼光Rを前記液晶表示パネル1の画面の上下方向に沿った方向に散乱する特性を有する光拡散部材からなっている。 【0042】 このような特性を有する光拡散部材には、微細な凹凸を光の拡散方向に指向性をもたせて形成した指向性拡散板、複数の細長レンズ部を互いに平行に形成したレンチキュラーレンズ、或いは住友化学製のルミスティー(商品名)のような、内部に光学的な異方層を設けたフィルムからなり、予め定めた方向の或る角度範囲内で光散乱効果を示し、且つその散乱角度範囲を任意に設定できる異方性拡散板がある。 【0043】 この実施例では、前記上下方向拡散手段16として、前記照明手段7から照射され、前記液晶表示パネル1を透過して観察側に出射した前記左眼光Lと右眼光Rを、前記液晶表示パネル1の画面の左右方向と平行で、且つ前記観察方向基準線(液晶表示パネル1の法線)Oを含む横方向基準面(図示せず)に対して前記画面の上下方向に傾いた予め定めた角度範囲θの方向に拡散する異方性拡散板を備えている。 ・・・略・・・ 【0050】 この液晶表示装置は、前記左眼光Lと右眼光Rを、前記液晶表示パネル1の観察側に設けた上下方向拡散手段16により前記画面の上下方向に沿った方向に散乱して観察側に出射するようにしているため、前記上下方向における高強度の光の出射角度範囲を図4?図7の(a)のように広くし、前記三次元画像を、前記観察方向に対して上下に傾いた方向からも観察させることができる。 (エ)「【0054】 (第2の実施形態) 図8はこの発明の第2の実施例を示す液晶表示装置の斜視図、図9は前記液晶表示装置の画面の左右方向における左眼光Lと右眼光Rの強度分布図であり、図9において、正の角度は、前記観察方向基準線(液晶表示パネル1の法線)Oに対する上方向への傾き角、負の角度は、前記観察方向基準線Oに対する下方向への傾き角である。 【0055】 この実施例の液晶表示装置は、図8のように、前記液晶表示パネル1の観察側に、前記左眼光Lと右眼光Rを前記液晶表示パネル1の画面の上下方向に沿った方向に散乱する上下方向拡散手段17と、前記左眼光Lを、前記画面の上下方向と平行で、且つ前記観察方向基準線(この実施例では液晶表示パネル1の法線)Oを含む縦方向基準面(図示せず)に対して前記表示観察者Aの左眼方向に傾いた予め定めた角度範囲φ1の方向に散乱し、前記右眼光Rを、前記縦方向基準面に対して前記観察者Aの右眼方向に傾いた予め定めた角度範囲φ2の方向に散乱する左右方向拡散手段18とを配置したものであり、他の構成は上述した第1の実施例と同じである。 【0056】 この液晶表示装置において、前記上下方向拡散手段17は、レンチキュラーレンズ、前記左右方向拡散手段18は、散乱角度範囲を任意に設定できる異方性拡散板であり、この上下方向拡散手段17と左右方向拡散手段18は、前記液晶表示パネル1の液晶セル2と観察側偏光板4との間に、互いに対向させて配置されている。 ・・・略・・・ 【0058】 この液晶表示装置は、前記液晶表示パネル1の観察側に、前記上下方向拡散手段17と左右方向拡散手段18とを配置しているため、前記三次元画像を、前記観察方向に対して上下に傾いた方向からも観察させることができるとともに、前記三次元画像の観察方向(観察方向及びその方向に対して上下に傾いた方向よりも左右に傾いた観察方向)よりも左右に傾いた方向に、前記左眼用画像と右眼用画像のいずれかの二次元画像を表示することができる。」 (オ)「【図8】 ![]() 」 (カ)「【図9】 ![]() 」 (キ)第2の実施形態(上記(エ))は、上記(ア)ないし(ウ)に記載された事項を前提にするものであるから、上記(ア)ないし(カ)から、引用例2には次の発明(以下、「引用発明2」という。なお、段落番号は発明を認定するために引用した箇所を示すため、参照として併記する。)が記載されているものと認められる。 「【0055】液晶表示パネル1の観察側に配置された、左眼光Lと右眼光Rを前記液晶表示パネル1の画面の上下方向に沿った方向に散乱する上下方向拡散手段17、 左眼光Lを、画面の上下方向と平行で、観察方向基準線(液晶表示パネル1の法線)Oを含む縦方向基準面に対して表示観察者Aの左眼方向に傾いた予め定めた角度範囲φ1の方向に散乱し、右眼光Rを、前記縦方向基準面に対して前記観察者Aの右眼方向に傾いた予め定めた角度範囲φ2の方向に散乱する左右方向拡散手段18とを有し、 【0056】上下方向拡散手段17は、レンチキュラーレンズ、前記左右方向拡散手段18は、散乱角度範囲を任意に設定できる異方性拡散板からなる、 液晶表示装置」 ウ 引用例3について 引用例3には、次の事項が図とともに記載されている。 (ア)「【0033】 【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置の主要部の概略構成を示す縦断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置10は、バックライト1と、バックライト1から入射された光を平行光化して出射するための平行光化手段2と、平行光化手段2から出射された光を透過させる液晶セル3と、液晶セル3を透過した光を拡散して視野角を拡大する視野角拡大手段4とを備えている。 【0034】バックライト1は、例えば、3波長冷陰極管の他、発光ダイオード、エレクトロルミネッセンス素子等の輝線スペクトルを有する光源とされており、平行光化手段2に対して面状に光を出射するように構成されている。なお、バックライト1としては、図1に示すようないわゆる直下型の他、光源を側方に配置し、導光体を介して面状に出射するように構成したいわゆるサイドライト型とすることも可能である。 ・・・略・・・ 【0043】視野角拡大手段4は、平行光化手段2によって得られた正面近傍の良好な表示特性の光を液晶セル3透過後に拡散し、全視野角内で均一で良好な表示品位を得るために設けられる。視野角拡大手段4としては、光を拡散させる機能を有する拡散板であれば種々の形態のものを適用可能であるが、特開2000-347006号公報や特開2000-347007号公報に開示されているような実質的に後方散乱を生じさせない拡散板(拡散粘着層)を用いるのが好ましい。実質的に後方散乱を生じさせない拡散板を使用すれば、視野角拡大手段4による透過率の低下を防止できると共に、液晶セル3の表示面側から侵入した外光(室内照明や日光)が当該拡散板で後方に(つまり表示面側に)散乱することなく、コントラストの低下を抑制できるという利点を有する。斯かる特性を有する液晶表示装置10は、液晶表示装置10の向きを変え、表示画面の縦横方向を変えて視認することが多いDTP(デスクトップパブリッシング)用途の他、デジタルカメラやビデオカメラ等の液晶表示装置として好適である。 ・・・略・・・ 【0046】なお、視野角拡大手段4として、ホログラム材料のような光拡散性に異方性を有する材料から形成した拡散板を用いた液晶表示装置10の場合には、上下左右の視野角特性を選択的に改善できるので、例えば、横長画面のテレビの液晶表示装置として好適である。」 (イ)「【図1】 ![]() 」 (2)対比及び判断 ア 本願発明と引用発明1との対比及び判断 (ア)対比 本願発明と引用発明1を対比すると、 「液晶表示装置に配置されて入射した光を拡散して出射する構造体である、 液晶表示装置用構造体。」 で一致し、以下の点で相違する。 相違点1: 本願発明では、「液晶表示装置に配置され」た「回折構造体」であるのに対し、 引用発明1では、液晶表示装置に配置された「散乱制御フィルム250、260と、表面散乱フィルム270とを有する防眩性フィルム120a」である点。 相違点2: 本願発明では、「回折構造体」が、「入射面の法線方向に対して半値角度が0°?15°の範囲内で入射した光を所定の範囲に拡散して出射する」ものであって、その輝度分布は「液晶表示装置が鉛直に立てられた姿勢で、正面、水平面内方向、及び垂直面内方向にのみ輝度分布を生じる」のに対し、 引用発明1では、「防眩フィルム120a」が、背面側から入射した光のうち、正面方向、及び、表示画面の長辺方向であるx方向または表示画面の短辺方向であるy方向に傾いた方向から入射した光の散乱性が大きいものの、具体的な入射光の半値角度の条件が明らかでなく、かつ、出射する光の輝度分布についても明らかでない点。 (イ)判断 相違点2について判断する。 a 引用発明1の背面側の正面方向から入射した光は、本願発明の「入射面の法線方向に対して半値角度が0°」に相当し、さらに引用発明1の長辺方向であるx方向または短辺方向であるy方向に傾いた方向から入射した光の、入射制限角度、すなわち半値角度は、当業者が必要に応じて適宜選択し得るものである。 b しかしながら、引用発明1はそもそも「黒表示状態で、防眩性フィルムに光漏れが多い方位から入射した光が、正面方向にその向きを変えられることを抑制する」(段落【0017】)ために「防眩性フィルム120a」を設けて、表示装置の長辺方向または短辺方向から斜めに傾いた方向から背面側に入射してくる光の散乱を抑制するものであるところ、出射光の輝度分布については記載されていない。 c さらに、液晶表示装置においては視野角の拡大が一般的な課題であるところ、出射する光を「正面、水平面内方向、及び垂直面内方向にのみ」輝度分布が生じるようにすることは、視野角の拡大という液晶表示装置における一般的な課題からみて、当業者にとって自明のことでもない。 d そして、上記第3の2ウに示した引用例3にも、出射する光を「正面、水平面内方向、及び垂直面内方向にのみ」輝度分布が生じるようにすることについて記載されておらず、上記上記aないしcも踏まえると、引用発明1及び引用例3から、上記相違点2に係る構成を導きだすことは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 e したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明は、当業者が引用発明1及び引用例3に基づいて容易に発明することができたものでもない。 イ 本願発明と引用発明2との対比及び判断 (ア)対比 本願発明と引用発明2を対比すると、 「液晶表示装置に配置されて入射した光を所定の範囲に拡散して出射する構造体である、 液晶表示装置用構造体。」 で一致し、以下の点で相違する。 相違点1: 本願発明では、「液晶表示装置」に「回折構造体」が配置されているのに対し、 引用発明2では、液晶表示装置に「レンチキュラーレンズからなる上下方向拡散手段17」及び「異方性拡散板からなる左右方向拡散手段18」が配置されている点。 相違点2: 本願発明では、「回折構造体」が、「入射面の法線方向に対して半値角度が0°?15°の範囲内で入射した光を所定の範囲に拡散して出射する」ものであって、その輝度分布は「液晶表示装置が鉛直に立てられた姿勢で、正面、水平面内方向、及び垂直面内方向にのみ輝度分布を生じる」のに対し、 引用発明2では、「レンチキュラーレンズからなる上下方向拡散手段17」が、液晶表示パネルから入射した光を上下方向に沿った方向に散乱し、「異方性拡散板からなる左右方向拡散手段18」が左眼光及び右眼光をそれぞれ予め定めた角度範囲の方向に散乱するものであるものの、具体的な入射光の半値角度の条件が明らかでなく、かつ、出射する光の輝度分布が正面、水平面内方向、及び垂直面内方向のみであることについて記載されていない点。 (イ)判断 相違点2について判断する。 a 引用発明2は、そもそも「三次元画像を、前記観察方向に対して上下に傾いた方向からも観察させることができるとともに、前記三次元画像の観察方向(観察方向及びその方向に対して上下に傾いた方向よりも左右に傾いた観察方向)よりも左右に傾いた方向に、前記左眼用画像と右眼用画像のいずれかの二次元画像を表示する」(段落【0058】)ために「レンチキュラーレンズからなる上下方向拡散手段17」及び「異方性拡散板からなる左右方向拡散手段18」を設けて、液晶表示装置の水平方向及び垂直方向に視野角を拡大するものであり、出射光の輝度分布について「正面、水平面内方向、及び垂直面内方向にのみ」とすることについては記載されていない。 b さらに、液晶表示装置においては視野角の拡大が一般的な課題であるところ、出射する光を「正面、水平面内方向、及び垂直面内方向にのみ」輝度分布が生じるようにすることは、視野角の拡大という液晶表示装置における一般的な課題からみて、当業者にとって自明のことでもない。 c そして、上記第3の2ウに示した引用例3にも、出射する光を「正面、水平面内方向、及び垂直面内方向にのみ」輝度分布が生じるようにすることについて記載されておらず、上記a及びbも踏まえると、引用発明2及び引用例3から、上記相違点2に係る構成を導きだすことは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 d したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明は、当業者が引用発明2及び引用例3に基づいて容易に発明することができたものでもない。 (3)小括 したがって、本願発明は、当業者が引用例1ないし引用例3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。また、本願の請求項2ないし7に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、同様に、当業者が引用例1ないし3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由の概要 本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 発明の詳細な説明には、「【0007】 そこで本発明は、・・・略・・・液晶表示装置の液晶層よりも観察者側に配置されることにより、該液晶表示装置としての特性に適合した視野角拡大特性を発揮するとともに、外光によるコントラスト低下及び像のボケを防止する回折構造体を提供することを課題とする」と記載されているように、液晶表示装置の視野角を拡大する拡散手段における外光によるコントラスト低下、像ぼけを防止することが、発明が解決しようとする課題として記載され、当該課題を解決する手段として、前記拡散手段として回折構造体を用いると共に、前記液晶表示装置に用いる回折構造体の回折構造について記載されている。 しかしながら、請求項1は単に「回折構造体」としか記載されておらず、液晶表示装置以外に用いる際に、どのような課題を有し、その課題をどのように解決するのか、発明の詳細な説明には記載されておらず、この点は当業者にとって自明でもなく、液晶表示装置に用いる回折構造体以外の回折構造体は、発明の詳細な説明には記載されていない。 したがって、請求項1及び請求項1の記載を引用する請求項2ないし5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 2 当審拒絶理由の判断 (1)平成28年8月10日付け手続補正書によって、本願の請求項1は「・・・略・・・回折構造を有する、液晶表示装置用回折構造体。」と補正された。このことにより、請求項1及び請求項1の記載を引用する請求項2ないし5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。 よって、上記1で示した当審拒絶理由は解消した。 (2)小括 そうすると、もはや、当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-10-28 |
出願番号 | 特願2011-132024(P2011-132024) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G02B)
P 1 8・ 537- WY (G02B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 吉川 陽吾 |
特許庁審判長 |
鉄 豊郎 |
特許庁審判官 |
渡邉 勇 河原 正 |
発明の名称 | 液晶表示装置用回折構造体、偏光板、及び液晶表示装置 |
代理人 | 山本 典輝 |