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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1321057
審判番号 不服2015-17313  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-24 
確定日 2016-11-04 
事件の表示 特願2011- 12326「動画伝送システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月16日出願公開、特開2012-156650〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成23年1月24日の出願であって、平成26年7月4日付けで拒絶の理由が通知され、それに応答して平成26年9月8日付けで手続補正がなされ、平成27年3月6日付けで最後の拒絶の理由が通知され、それに応答して平成27年5月18日付けで手続補正がなされたが、平成27年6月18日付けで、平成27年5月18日付け手続補正に対する補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成27年9月24日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたが、その後当審において、平成28年5月27日付けで最初の拒絶理由が通知され、それに応答して平成28年8月1日付けで意見書が提出されたものである。

第2.本願発明
本願の請求項に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年9月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
なお、本願発明の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成(A)、構成(B)などと称する。

(本願発明)
(A)動画データを互いに送受信する送信装置及び受信装置を備え、
(B)前記送信装置は、基準ピクチャに圧縮した圧縮フレームデータを一度送信した後は、直前のフレームデータと取得したフレームデータとの差分より得られる差分ピクチャに圧縮した圧縮フレームデータを送信し、
(C)前記受信装置は、前記圧縮フレームデータを解析して動画像の品質を評価するためのパラメータを求め、当該パラメータが閾値を下回ると、基準ピクチャに圧縮した圧縮フレームデータを再度送信するように前記送信装置に指令信号を送信し、
(D)前記送信装置は、
(D-1)動画データを得るための入力部と、
(D-2)前記入力部で得られた動画データに含まれる時系列順の複数のフレームデータそれぞれを圧縮することで動画データの圧縮を行う圧縮部と、
(D-3)前記圧縮部で圧縮された前記圧縮フレームデータを時系列順に前記受信装置に送信するとともに、前記受信装置から送信される前記指令信号を受信する送受信部とを有し、
(E)前記受信装置は、
(E-1)前記送信装置から送信される前記圧縮フレームデータを受信するとともに、前記送信装置に前記指令信号を送信する送受信部と、
(E-2)前記圧縮フレームデータを伸長することで圧縮された前記動画データの伸長を行う伸長部と、
(E-3)伸長された前記動画データを表示する表示部と、
(E-4)前記圧縮フレームデータを解析して動画像の品質を評価するためのパラメータを求める解析部とを有し、
(F)前記圧縮部は、前記複数のフレームデータのうち最初のフレームデータを、他のフレームデータとの依存関係がなく単独で伸長可能な前記基準ピクチャに圧縮する第1の圧縮処理と、前記複数のフレームデータのうち残りのフレームデータを、他のフレームデータとの差分よりなる前記差分ピクチャに圧縮する第2の圧縮処理とを実行し、
(G)前記解析部は、前記パラメータが閾値を下回ると、前記基準ピクチャに圧縮した圧縮フレームデータを再度送信するように前記送信装置に前記指令信号を送信し、
(H)前記送信装置は、前記指令信号を受信すると次回のフレームデータに対して第1の圧縮処理を実行し、
(I)前記解析部は、前記圧縮フレームデータを伸長したフレームデータの色情報に基づいて解析する
(J)ことを特徴とする動画伝送システム。

第3.当審の判断
1.引用文献の記載
(1)当審における、平成28年5月27日付けの拒絶理由に引用された引用文献1である特表2008-504767号公報には、「予測および非予測データフレームを伝送するための方法および装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

【0001】
本発明は、一般の通信システムに関する。具体的には、本発明は、デジタルビデオ放送(DVB)技術等のようなデジタルブロードバンドシステムおよびこのシステムに適用するビデオ符号化に関する。

【0013】
図5は、標準化されたMPEG-2ストリームを出力として生成するMPEG-2準拠のエンコーダ504を用いて、オーディオ/ビデオ信号502を符号化する一般的な手順を示している。オーディオ/ビデオサーバ506は、符号化されたデータストリームを受信して格納し、つぎに、該データストリームを伝送ネットワーク508を介して、たとえば、テレビに接続されたDVBセットトップボックスまたはカードがインストールされたDVB IRD(Integrated Receiver Decoder)等のレシーバ510に伝送する。レシーバ510は、データストリームを利用するための復号化に必要なソフトウェア/ハードウェア手段を有している。

【0025】
本発明の目的は、ユーザの観点からの相互サービスの伝送遅延に関して、従来技術において生じる問題を軽減することである。この目的は、"完全な"、一時的な非予測データフレームの伝送を変化させることにより達成される。これらにおいて特に重要な完全なデータフレームは、画像を構築するのに必要なすべてのデータ、または、要求に基づくための先行フレームまたはその先のフレームに用いる予測成分がない受信装置における他のデータ要素を十分に含んでいる。たとえば、ユーザがサービスデータの受信を開始するサービス開始時に、1つの非予測フレームが、デコーダを初期化し、履歴情報がなくても復号化を首尾良くおこなうために、受取人に伝送される。さらに、非予測フレームの伝送に対する類似の必要性は、様々なエラー状況の場合に発生し得る。すなわち、受信機が伝送エラーまたはバッファエラー等のため受信端でデータを適切に再生できない場合である。本発明の基本概念によれば、受信機は、受信されたサービスデータストリームを分析し、前記のエラー状況が発生した場合には、ゲームサーバのようなデータプロバイダに、リターンチャネルを介して新たな非予測フレームの受信が必要であることを通知する。

【0035】
図8-1は、連続したMPEG-2ビデオ画像フレームの配列を含む本発明の方法をさらに容易に理解するためのシナリオを示している。図8-1においては、MPEG-2ビデオ画像フレームのいくつかは非予測的Iフレーム802、806であり、残りの参照番号804は、予測Pフレームを示している。データストリームは、3つのPフレームからなる各ブロックの後に、1つのIフレームを挿入することによって形成される。Iフレームは、ユーザ装置による明示的な受信要求に対する応答として送信される。図8-1においては、Pフレームの異なる性質を表す矢印を含んでいる。すなわち、現在のビデオ画像フレームと、先行のビデオ画像フレームと、の差分が検出され、パラメータ化され、Pフレームとして配信ネットワークを介して伝送される。受信機は、履歴情報を含んでおり、たとえば、ステートマシンであり、これを使用することにより伝送段階において、データの欠損がない場合やデータに伝送エラーが入り込まない場合、ディスプレイ上に可視化するために、パラメータ化された差分フレームを復号化し、再び有効なビデオ画像フレームに変換することができる。しかし、Iフレームの伝送がいずれの方法においても調整できず、Iフレームが自動的に、たとえば、周期的に伝送される場合、このシナリオは、平均伝送遅延を低減するという利点を有しない。これは、たとえば、サービスデータストリームの監視機能と、Iフレーム伝送の要求をデータソースに供給する機能と、を有していてもそうである。なぜなら、規則的に伝送されるIフレームは、連続的に伝送(および受信)処理を遅くするからである。一例として、IフレームおよびPフレームのサイズを、対応するフレームの図の下方に示す。伝送遅延は、フレームサイズとともに増大する。

【0037】
付加的なバッファリングの不利な作用、または受信側での連続的に変化するフレームレートは、受信フレームのサイズが急激な変化を克服するために、図8-2は、本発明の他の実施例を示している。この実施例では、大きなIフレーム812は、破線の垂直線810で示したトリガとなる事象が発生した場合、換言すると「要求に応じた」場合のみ伝送される。他の時間は、サイズの比較的小さい予測フレーム808が伝送される。
【0038】
図9は、テレビセット916に外付け、または一体化されているセットトップボックス906が、波線矢印918で示した入力されるサービスデータストリームを、ソフトウェアおよび/またはハードウェアによって検証および分析するための手段を有する本発明の実施例を示している。この検証および分析は、サービスデータストリームを適切に復号化することができるか否か、またはこれが回復不能なエラーを含んでいるか否か、またはPフレームのようにいくつかの必要な部分を完全に損失しているか否か、についておこなわれる。エラーまたは損失したフレームに続くPフレームは、一般的に、もはやうまく復号化されることができない。前記検証は、受信データから検証フレーム構造を直接考察することによって、および受信データに含まれる所定のパラメータ(タイムコードまたは他のインデクス情報)を任意に再調査することによって実行することができる。所定のパラメータは、それ自体として受信データに含まれるか、または受信データに基づいて計算されるかする。また、前記検証は、局所的に生じたチェックサムデータを、受信され埋め込まれた値と比較/検出することにより実行することができる。さらに、受信バッファの検査でも新たな非予測的Iフレームに対する要求の必要性を指示することができる。たとえば、受信バッファにおけるバッファアンダーフローは、ネットワーク904を介してIフレーム要求922を、データソースとして動作するサーバ902に送信するためのトリガとして使用することができる。ネットワーク904は、たとえば、ワイヤレス、ケーブル、またはIPネットワークである。さらに、データ受信タイマの満了は、伝送経路におけるデータ損失を示すことができる。プロセシングユニット912は、セットトップボックス906の動作全体を制御することができる。一方、デコーダ回路/ソフトウェア914は、受信ストリームを分析し、データのさらなる受信およびIフレーム要求の伝送などのために必要な情報920を、プロセシングユニット912に供給する。
【0039】
一方、サーバ902は、ソフトウェアおよび/またはハードウェアによってIフレーム要求またはその指示を受信するための手段と、引き続きIフレームをセットトップボックスに伝送するための手段と、を有する。対話型アプリケーション908は、サーバ902自体に常駐するか、または少なくともサーバに接続されており、符号化され(910)、セットトップボックス906に配信されたデータをプロセシングユニットに供給する。相応にして、データの符号化は、サーバ902に接続された外部符号化装置においておこなうこともできる。新たなIフレームの伝送が必要であるとの指示922の受信に基づき、このようなフレームがデータから計算され、所要のネットワーク伝送ユニットでカプセル化され、セットトップボックス906に送信される(924)。

(2)同じく、当審における拒絶の理由に引用された引用文献2である特開2009-171023号公報には、「画質評価装置、画質評価方法、画質評価用プログラム、及び映像受信端末」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

【0002】
映像の画質を客観的に評価する方法は、大きく3種類に分類される(例えば、非特許文献1参照)。一つ目の方法は、原画像と劣化画像とを直接比較し画質を評価する方法(Full Reference法)である。二つ目の方法は、原画像の特徴量のみを伝送し、この特徴量と劣化画像から画質を評価する方法(Reduced Reference法)である。三つ目の方法は、劣化画像のみから画質を評価する方法(No Reference法)である。
【0003】
映像の伝送を伴うアプリケーションでは、伝送路帯域に上限があり、原画像の伝送が困難であるため、受信端末上でFull Reference法を用いることは適当でない。また、Reduced Reference法では、原画像の特徴量を多重化もしくは別の伝送路経由で伝送する必要がある。従って、Reduced Reference法を導入するためには、送信装置や伝送路を含むすべてのシステムを置換する必要が生じるので、新規運用が難しいという問題がある。一方、No Reference法では、原画像の情報を一切必要とせず、導入のために受信装置の置換のみが必要となるだけであるので、新規運用が容易であるという利点がある。

【0009】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、受信した映像のみから主観評価により近い画質劣化度を算出し得る画質評価装置、画質評価方法、画質評価用プログラム、及び映像受信端末を提供することを目的とする。

【0019】
このとき、伝送エラーや遅延により例えば、図2に203で示すパケットが欠落した場合、入力データ生成部130は、この欠落したパケットの前後のパケットの画像符号化データd3、d5をつなげたデータを生成して入力データバッファ140に供給するため、入力データバッファ140に格納されたデータには、欠落したパケット203の画像符号化データd4が存在せず、データの不連続点204が存在する。同様に、受信したデータのうち、あるビットが伝送の途中で誤った値となった場合には、その誤った値の画像符号化データ部分は不連続点となる。

【0025】
劣化領域検出部172は、復号処理されたデータが不連続点を含むと判定した場合に、この不連続点から次の復号処理同期位置までの間の入力データを特定し、復号処理の結果、この不連続点の影響により画質が劣化した画像領域に関する情報を劣化領域情報として生成し、劣化領域重要度算出部173に出力する。
【0026】
ここで、上記の劣化領域情報は、具体的には正しく復号できなかった画素やマクロブロックなどの個数などにより表現される劣化領域サイズ、前記画素やマクロブロックの画像フレーム上の座標位置などにより表現される位置情報、前記画素やマクロブロックの色情報、前記マクロブロックに対応する動きベクトルの大きさなどの情報から構成される情報である。
【0027】
また、復号処理部171は、データの不連続点の影響により正しく復号できなかった画素やマクロブロックを予測信号として後続の画像フレームの復号処理を行うことがある。このとき、正しく復号できなかった画素やマクロブロックを予測信号として復号された画像領域も画質が劣化する。劣化領域検出部172は、さらに、このような画像領域も劣化領域とみなしてもよい。
【0028】
劣化領域重要度算出部173は、劣化領域検出部172から受け取った劣化領域情報から劣化領域の画像フレーム上での重要度を算出し、劣化領域情報及び重要度を画質劣化度算出部174に通知する。この重要度は、劣化領域のある画像フレーム上で、その劣化領域がどの程度目立ち易いかの割合を示す。
【0029】
一例として、劣化領域の位置をもとに劣化領域の重要度を算出する方法を以下に説明する。
【0030】
劣化領域重要度算出部173は、データの不連続により正しく復号できなかったマクロブロックの数及び各マクロブロックの画像フレーム上の座標情報を劣化領域情報として劣化領域検出部172から受け取る。劣化領域重要度算出部173は、各マクロブロックの位置情報から劣化領域の重心の座標位置を算出し、その重心の座標位置が画面中央からの距離が近いほど重要度が高く、画面中央からの距離が遠いほど重要度が低くなるよう重要度の重み付けを行う。これは、画面中央部に劣化があった場合、画面の周辺部に劣化があった場合よりも画質の劣化が目立つことから、劣化領域の重要度を高くするためである。

【0033】
また、劣化領域の位置のほかに、肌色部分や目立つ色の特定の色の画素やマクロブロックが劣化領域に含まれる場合、動きベクトルの大きさがより大きい値をもつマクロブロックが劣化領域に含まれる場合、周辺の画素やマクロブロックと比較して色が大きく色が異なる画素やマクロブロックが劣化領域に含まれる場合、重要度をより高い値で算出することも可能である。
【0034】
図1に示す画質劣化度算出部174は、劣化領域検出部172で検出された各劣化領域に対して、劣化領域情報及び劣化領域重要度算出部173で算出された劣化領域の重要度をもとに劣化領域による画質劣化の目立ち易さの指標を示す画質劣化度を算出し、その画質劣化度を外部に出力する。

2.引用発明
上記引用文献1に記載された発明を認定する。

(1)デジタルビデオ放送(DVB)システム
引用文献1の段落0001,0013の記載によれば、引用文献1には、オーディオ/ビデオ信号を符号化してMPEG-2のデータストリームを出力するエンコーダと、符号化されたデータストリームをレシーバに伝送するオーディオ/ビデオサーバを有するデジタルビデオ放送(DVB)システムが記載されており、レシーバは、テレビに接続されたDVBセットトップボックスであり、伝送されるデータストリームを受信し、データストリームを利用するための復号化手段を有している。
また、段落0025の記載によれば、受信機は、受信されたサービスデータストリームを分析し、伝送エラー等のエラー状況が発生した場合には、ゲームサーバのようなデータプロバイダに、新たな非予測フレームの受信が必要であることを通知する。
すなわち、引用文献1には、『オーディオ/ビデオ信号を符号化してMPEG-2のデータストリームを出力するエンコーダと、符号化されたデータストリームをレシーバに伝送するオーディオ/ビデオサーバと、テレビに接続されたDVBセットトップボックスであり、伝送されるデータストリームを受信するレシーバを備えるデジタルビデオ放送(DVB)システム』に関する発明が記載されている。
そして、『レシーバは、データストリームを利用するための復号化手段を備え、さらに、受信されたデータストリームを分析し、伝送エラー等のエラー状況が発生した場合には、オーディオ/ビデオサーバに新たな非予測フレームの受信が必要であることを通知する機能を有する』ものである。

(2)MPEG-2ビデオ画像フレームの伝送
引用文献1の段落0035,0037の記載によれば、引用文献1には、連続したMPEG-2ビデオ画像フレームは、非予測的Iフレームか、現在のビデオ画像フレームと先行のビデオ画像フレームとの差分を表す予測Pフレームであり、データストリームはPフレームとIフレームで形成されることが記載されている。
ここで、予測Pフレームが参照する先行のビデオ画像フレームとしては、図8-1及び図8-2を参照すると、直前のビデオ画像フレームが想定されているものといえる。
そして、Iフレームはユーザ装置による明示的な受信要求がある場合にのみ伝送され、他の時間は予測フレームが伝送される。
また、段落0039の記載によれば、サーバは、Iフレーム要求またはその指示を受信するための手段と、それに続いてIフレームをセットトップボックスに伝送するための手段とを有する。

すなわち、引用文献1の『MPEG-2のデータストリーム』は、『非予測Iフレームと、現在のビデオ画像フレームと直前のビデオ画像フレームとの差分を表す予測Pフレームから構成される連続したMPEG-2ビデオ画像フレームからなる』ものである。
また、引用文献1の『レシーバ』は、Iフレームの『受信要求』を送信する。
さらに、引用文献1の『オーディオ/ビデオサーバ』は、『レシーバからの非予測Iフレームの受信要求を受信する手段を有し、受信要求がある場合にのみ非予測Iフレームを伝送し、他の時間は予測Pフレームを伝送する』ものである。

(3)検証および分析するための手段
引用文献1の段落0038の記載によれば、テレビセットに外付け、または一体化されているセットトップボックスは、データストリームを検証および分析するための手段を有し、この検証および分析は、データストリームを適切に復号化できるか否かについて行われる。
すなわち、引用文献1の『レシーバ』は、『テレビセットと一体化されているセットトップボックス』でもあり、『データストリームを適切に復号化できるか否かについて検証および分析するための手段』を備えている。

(4)まとめ
以上によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。

(引用発明)
(a)オーディオ/ビデオ信号を符号化してMPEG-2のデータストリームを出力するエンコーダと、符号化されたデータストリームをレシーバに伝送するオーディオ/ビデオサーバと、テレビセットと一体化されているセットトップボックスであり、伝送されるデータストリームを受信するレシーバを備えるデジタルビデオ放送(DVB)システムであって、
(b)MPEG-2のデータストリームは、非予測Iフレームと、現在のビデオ画像フレームと直前のビデオ画像フレームとの差分を表す予測Pフレームから構成される連続したMPEG-2ビデオ画像フレームからなり、
(c)オーディオ/ビデオサーバは、レシーバからの非予測Iフレームの受信要求を受信する手段を有し、受信要求がある場合にのみ非予測Iフレームを伝送し、他の時間は予測Pフレームを伝送し、
(d)レシーバは、データストリームを利用するための復号化手段を備え、さらに、受信されたデータストリームを適切に復号化できるか否かについて検証および分析するための手段を備え、検証および分析の結果、伝送エラー等のエラー状況が発生した場合には、オーディオ/ビデオサーバに新たな非予測Iフレームの受信が必要であることを通知する受信要求を送信する機能を有する、
(e)デジタルビデオ放送(DVB)システム。

3.対比
(1)本願発明の構成(A)および(J)と引用発明の(a)との対比
まず、本願発明の構成(A)の「動画データを互いに送受信する送信装置及び受信装置」について確認すると、本願の明細書には、段落0016ないし0018,0025,0027等の記載によれば、撮像装置(送信装置)が動画データを表示装置(受信装置)に送信すること、表示装置(受信装置)が撮像装置(送信装置)から送信された動画データを受信して表示することは記載されているが、本願明細書には、受信装置から送信装置へ動画データを送信し、送信装置が動画データを受信することは記載されていない。
したがって、本願発明の上記構成は、「動画データを送信する送信装置及び動画データを受信する受信装置」を意味するものと認める。
一方、引用発明は、エンコーダおよびオーディオ/ビデオサーバが、オーディオ/ビデオ信号を符号化してレシーバに伝送し、レシーバが伝送されるオーディオ/ビデオ信号を符号化したMPEG-2のデータストリームを受信するものである。
そして、引用発明の「オーディオ/ビデオ信号」、「エンコーダおよびオーディオ/ビデオサーバ」、及び「レシーバ」は、それぞれ、本願発明の「動画データ」、「送信装置」、及び「受信装置」に相当するものといえる。
以上のことから、引用発明は、送信装置が動画データを受信装置に送信し、受信装置が動画データを受信するものであり、本願発明の構成(A)の「動画データを互いに送受信する送信装置及び受信装置」を備えているものといえる。

さらに、引用発明の「デジタルビデオ放送(DVB)システム」は、動画データを伝送するシステムといえるから、本願発明の構成(J)の「動画伝送システム」に相当するものといえる。

(2)本願発明の構成(B)と引用発明の(b)及び(c)との対比
引用発明は、送信装置を構成するオーディオ/ビデオサーバが、受信要求に従い非予測Iフレームを送信した後は、現在のビデオ画像フレームと直前のビデオ画像フレームとの差分を表す予測Pフレームを送信する。
ここで、非予測Iフレームは、他のフレームデータとの依存関係がなく単独で伸長可能な基準ピクチャであり、予測Pフレームは、直前のフレームデータとの差分よりなる前記差分ピクチャである。
また、引用発明の非予測Iフレーム及び予測Pフレームは、オーディオ/ビデオ信号を符号化したMPEG-2のデータストリームを構成するフレームデータであり、オーディオ/ビデオ信号を圧縮した圧縮フレームデータといえる。
さらに、「受信要求に従い非予測Iフレームを送信した後」ということは、「非予測Iフレームを一度送信した後」ということである。

以上のことから、引用発明は、本願発明の構成(B)の「前記送信装置は、基準ピクチャに圧縮した圧縮フレームデータを一度送信した後は、直前のフレームデータと取得したフレームデータとの差分より得られる差分ピクチャに圧縮した圧縮フレームデータを送信し、」を備えているものといえる。

(3)本願発明の構成(C)と引用発明の(d)との対比
引用発明のレシーバは、受信されたデータストリームを適切に復号化できるか否かについて検証および分析するための手段を備え、検証および分析の結果、伝送エラー等のエラー状況が発生した場合には、オーディオ/ビデオサーバに新たな非予測Iフレームの受信が必要であることを通知する受信要求を送信する機能を有している。
ここで、上記(2)において検討したように、データストリームは圧縮した圧縮フレームデータから構成されるものであるから、引用発明の受信されたデータストリームを適切に復号化できるか否かについて検証および分析することは、本願発明の圧縮フレームデータを解析することに相当する。
また、新たな非予測Iフレームの受信が必要であることを通知する受信要求は、非予測Iフレームを再度送信することを要求する指令信号といえ、非予測Iフレームは、上記(2)において検討したように、基準ピクチャに圧縮した圧縮フレームデータに相当するものであるから、引用発明のオーディオ/ビデオサーバに新たな非予測Iフレームの受信が必要であることを通知する受信要求を送信することは、本願発明の「基準ピクチャに圧縮した圧縮フレームデータを再度送信するように前記送信装置に指令信号を送信」することに相当する。

そうすると、引用発明は、本願発明の構成(C)と「前記受信装置は、前記圧縮フレームデータを解析して、基準ピクチャに圧縮した圧縮フレームデータを再度送信するように前記送信装置に指令信号を送信し」というものである点で一致する。
ただし、受信装置の機能に関して、本願発明は、圧縮フレームデータを解析して、「動画像の品質を評価するためのパラメータを求め、当該パラメータが閾値を下回ると」、指令信号を送信するものであるのに対し、引用発明は、圧縮フレームデータを解析して、「適切に復号化できるか否かについて検証および分析を行い、検証および分析の結果、伝送エラー等のエラー状況が発生した場合に」、指令信号を送信するものである点において相違する。

(4)本願発明の構成(D)と引用発明の(a)及び(c)との対比
引用発明は、送信装置を構成するエンコーダおよびオーディオ/ビデオサーバを有し、エンコーダは、オーディオ/ビデオ信号を符号化してMPEG-2のデータストリームを出力するものである。
ここで、オーディオ/ビデオ信号は、本願発明の「動画データ」に相当するものであり、オーディオ/ビデオ信号を符号化することは、オーディオ/ビデオ信号の時系列的に連続する各フレームを圧縮することであるから、引用発明のエンコーダは、本願発明の構成(D-2)と「前記動画データに含まれる時系列順の複数のフレームデータそれぞれを圧縮することで動画データの圧縮を行う圧縮部」である点で一致するものである。
ただし、送信装置に関し、本願発明は、構成(D-1)の「動画データを得るための入力部」を備え、圧縮部が「入力部で得られた」動画データを圧縮するものであるのに対し、引用発明は、「動画データを得るための入力部」を備えているものであるか特定されておらず、そのため、圧縮部が「入力部で得られた」動画データを圧縮するものであるとは特定されていない点で、両者は相違する。

また、引用発明のオーディオ/ビデオサーバは、エンコーダで符号化したMPEG-2のデータストリームをレシーバに伝送するものであり、そのような送信を行う手段を有しているといえる。さらに、オーディオ/ビデオサーバは、レシーバからの非予測Iフレームの受信要求を受信する手段を有する。
ここで、MPEG-2のデータストリームをレシーバに伝送することは、圧縮フレームデータを時系列順に送信することといえ、非予測Iフレームの受信要求は、上記(3)において検討したように、指令信号に相当するものである。
したがって、引用発明は、本願発明の構成(D-3)の「前記圧縮部で圧縮された前記圧縮フレームデータを時系列順に前記受信装置に送信するとともに、前記受信装置から送信される前記指令信号を受信する送受信部」を備えているといえる。

(5)本願発明の構成(E)と引用発明の(a)及び(d)との対比
引用発明のレシーバは、オーディオ/ビデオサーバから伝送されるMPEG-2のデータストリームを受信し、オーディオ/ビデオサーバに新たな非予測Iフレームの受信要求を送信するものであり、そのような送受信を行う手段を有しているものといえるから、本願発明の構成(E-1)の「前記送信装置から送信される前記圧縮フレームデータを受信するとともに、前記送信装置に前記指令信号を送信する送受信部」を備えているといえる。
また、レシーバが備える、データストリームを利用するための復号化手段は、本願発明の構成(E-2)の「前記圧縮フレームデータを伸長することで圧縮された前記動画データの伸長を行う伸長部」に相当するものである。
そして、レシーバはテレビセットと一体化されているセットトップボックスであるから、復号した画像を表示する手段を有しているといえ、本願発明の構成(E-3)の「伸長された前記動画データを表示する表示部」を備えているものといえる。

さらに、上記(3)において検討したように、引用発明の受信されたデータストリームを適切に復号化できるか否かについて検証および分析することは、本願発明の圧縮フレームデータを解析することに相当するから、引用発明の検証および分析する手段は、本願発明の構成(E-4)と「前記圧縮フレームデータを解析する解析部」というものである点で一致する。
ただし、解析部の機能に関し、上記(3)の検討と同様に、本願発明は、圧縮フレームデータを解析して「動画像の品質を評価するためのパラメータを求める」ものであるのに対し、引用発明は、そのようなものではない点において相違する。

(6)本願発明の構成(F)と引用発明の(a)ないし(c)との対比
引用発明のエンコーダは、非予測Iフレームと、現在のビデオ画像フレームと直前のビデオ画像フレームとの差分を表す予測Pフレームから構成される連続したMPEG-2ビデオ画像フレームからなるMPEG-2のデータストリームを出力する。そして、このMPEG-2のデータストリームは、オーディオ/ビデオ信号を符号化、すなわち圧縮したものである。
ここで、非予測Iフレームは単独で圧縮伸張可能なフレームであり、予測Pフレームは他のフレームを用いて圧縮伸張するフレームであって、引用発明は、オーディオ/ビデオサーバが、受信要求がある場合にのみ非予測Iフレームを伝送し、他の時間は予測Pフレームを伝送することから、引用発明のエンコーダが生成するMPEG-2のデータストリームは、オーディオ/ビデオ信号のフレームデータの1つを非予測Iフレームに圧縮した後は、それに続くオーディオ/ビデオ信号のフレームデータを、他のフレームを用いて予測Pフレームに圧縮したものといえる。
すなわち、引用発明のエンコーダは、オーディオ/ビデオ信号のうち最初のフレームデータを非予測Iフレームに圧縮する第1の圧縮処理と、オーディオ/ビデオ信号のフレームデータのうち残りのフレームデータを予測Pフレームに圧縮する第2の圧縮処理とを実行するものといえる。
そして、上記(2)で言及したように、非予測Iフレームは、他のフレームデータとの依存関係がなく単独で伸長可能な前記基準ピクチャといえ、予測Pフレームは、他のフレームデータとの差分よりなる前記差分ピクチャといえるので、引用発明のエンコーダは、オーディオ/ビデオ信号の複数のフレームデータのうち最初のフレームデータを、他のフレームデータとの依存関係がなく単独で伸長可能な前記基準ピクチャに圧縮する第1の圧縮処理と、オーディオ/ビデオ信号の複数のフレームデータのうち残りのフレームデータを、他のフレームデータとの差分よりなる前記差分ピクチャに圧縮する第2の圧縮処理とを実行するものであり、本願発明の構成(F)の圧縮部と相違しない。

(7)本願発明の構成(G)と引用発明の(d)との対比
上記(3)及び(5)の検討によれば、引用発明の検証および分析するための手段は、本願発明の「解析部」に相当し、「基準ピクチャに圧縮した圧縮フレームデータを再度送信するように前記送信装置に指令信号を送信」するものに相当する。
よって、引用発明の検証および分析する手段は、本願発明の構成(G)と「前記解析部は、前記基準ピクチャに圧縮した圧縮フレームデータを再度送信するように前記送信装置に前記指令信号を送信し」というものである点で一致する。
ただし、解析部の機能に関し、上記(3)の検討と同様に、本願発明は、「前記パラメータが閾値を下回ると」、指令信号を送信するものであるのに対し、引用発明は、そのようなものはない点において相違する。

(8)本願発明の構成(H)と引用発明の(c)との対比
上記(2)ないし(4)及び(6)の検討によれば、引用発明の送信装置を構成するオーディオ/ビデオサーバは、指令信号に従って非予測Iフレームを送信するものであり、非予測Iフレームは、送信装置を構成するエンコーダが、オーディオ/ビデオ信号のフレームデータに対して第1の圧縮処理を実行して生成する。
したがって、引用発明の送信装置を構成するエンコーダ及びオーディオ/ビデオサーバは、指令信号を受信すると次回のフレームデータに対して第1の圧縮処理を実行するものといえ、本願発明の構成(H)の圧縮部と相違しない。

(9)本願発明の構成(I)と引用発明の(d)との対比
上記(3)、(5)及び(7)に検討したように、本願発明の解析部に相当する引用発明の検証および分析するための手段は、受信されたデータストリームを適切に復号化できるか否かについて検証および分析するものであって、本願発明の構成(I)のような「前記圧縮フレームデータを伸長したフレームデータの色情報に基づいて解析する」ものではない点で相違する。
すなわち、解析部に関して、本願発明は、「前記圧縮フレームデータを伸長したフレームデータの色情報に基づいて解析する」ものであるのに対し、引用発明は、そのようなものではない点で、両者は相違する。

4.一致点・相違点
上記3.の(1)ないし(9)の対比結果を踏まえると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次の通りである。

[一致点]
動画データを互いに送受信する送信装置及び受信装置を備え、
前記送信装置は、基準ピクチャに圧縮した圧縮フレームデータを一度送信した後は、直前のフレームデータと取得したフレームデータとの差分より得られる差分ピクチャに圧縮した圧縮フレームデータを送信し、
前記受信装置は、前記圧縮フレームデータを解析して、基準ピクチャに圧縮した圧縮フレームデータを再度送信するように前記送信装置に指令信号を送信し、
前記送信装置は、
前記動画データに含まれる時系列順の複数のフレームデータそれぞれを圧縮することで動画データの圧縮を行う圧縮部と、
前記圧縮部で圧縮された前記圧縮フレームデータを時系列順に前記受信装置に送信するとともに、前記受信装置から送信される前記指令信号を受信する送受信部とを有し、
前記受信装置は、
前記送信装置から送信される前記圧縮フレームデータを受信するとともに、前記送信装置に前記指令信号を送信する送受信部と、
前記圧縮フレームデータを伸長することで圧縮された前記動画データの伸長を行う伸長部と、
伸長された前記動画データを表示する表示部と、
前記圧縮フレームデータを解析する解析部とを有し、
前記圧縮部は、前記複数のフレームデータのうち最初のフレームデータを、他のフレームデータとの依存関係がなく単独で伸長可能な前記基準ピクチャに圧縮する第1の圧縮処理と、前記複数のフレームデータのうち残りのフレームデータを、他のフレームデータとの差分よりなる前記差分ピクチャに圧縮する第2の圧縮処理とを実行し、
前記解析部は、前記基準ピクチャに圧縮した圧縮フレームデータを再度送信するように前記送信装置に前記指令信号を送信し、
前記送信装置は、前記指令信号を受信すると次回のフレームデータに対して第1の圧縮処理を実行する、
ことを特徴とする動画伝送システム。

[相違点1]
受信装置の解析部の機能に関して、本願発明は、圧縮フレームデータを解析して、「動画像の品質を評価するためのパラメータを求め、当該パラメータが閾値を下回ると」、指令信号を送信するものであるのに対し、引用発明は、圧縮フレームデータを解析して、「適切に復号化できるか否かについて検証および分析を行い、検証および分析の結果、伝送エラー等のエラー状況が発生した場合に」、指令信号を送信するものである点。

[相違点2]
送信装置に関し、本願発明は、「動画データを得るための入力部」を備え、圧縮部が「入力部で得られた」動画データを圧縮するものであるのに対し、引用発明は、「動画データを得るための入力部」を備えているものであるか特定されておらず、そのため、圧縮部が「入力部で得られた」動画データを圧縮するものであるとは特定されていない点。

[相違点3]
解析部に関して、本願発明は、「前記圧縮フレームデータを伸長したフレームデータの色情報に基づいて解析する」ものであるのに対し、引用発明は、そのようなものではない点。

5.判断
(1)相違点1及び相違点3について
引用文献2には、映像の伝送を伴うアプリケーションにおける、受信した映像から画質劣化度を算出し得る画質評価の技術に関して記載されており(段落0002,0003,0009)、受信データにおいて伝送エラー等によるデータの不連続点を検出し(段落0019)、不連続点の影響により画質が劣化した領域に関する劣化領域情報(正しく復号できなかった画素やブロックの領域サイズ、位置情報、色情報、動きベクトルの大きさ等)を生成し(段落0025?0027)、劣化領域情報の劣化領域の位置や劣化領域に含まれる色情報に基づいて、劣化領域の画像フレーム上で、その劣化領域がどの程度目立ち易いかの割合を示す重要度を算出し、さらに、劣化領域情報及び劣化領域の重要度をもとに劣化領域による画質劣化の目立ち易さの指標を示す画質劣化度を算出する(段落0028?0030,0033,0034)技術が記載されている。
すなわち、引用文献2には、映像を伝送する際の受信データの画質の劣化を評価する技術において、伝送エラー等による受信データの不連続点を検出し、不連続点の位置や色情報に基づいて、画質劣化度という画質の劣化を評価するため指標すなわちパラメータを算出する技術が記載されている。

ここで、本願発明を確認すると、相違点1及び相違点3に摘示したように、解析部が「前記圧縮フレームデータを伸長したフレームデータの色情報に基づいて解析」し、「動画像の品質を評価するためのパラメータを求め、当該パラメータが閾値を下回ると」、指令信号を送信するものであるという特定がされているのみであり、色情報を具体的にどのように解析するのかということや、色情報のみに基づいて解析を行うということは規定されているものではない。

一方、引用発明は、構成(d)にあるように、受信されたデータストリームを検証および分析し、伝送エラー等のエラー状況が発生したことのみにより非予測Iフレームの受信要求を送信するものであるが、同じ画像伝送に係る技術分野の引用文献2記載の技術を適用して、受信要求を送信する条件を得るための分析をより高度な分析を行うものとし、伝送エラー等の発生の検出に加え、その伝送エラーが発生した位置における色情報等に基づく画質の劣化を評価するためのパラメータを求め、そのパラメータを受信要求を送信する条件とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
さらに、その際の受信要求を送信する条件について、パラメータと閾値の比較において判断を行うものとすることは当業者の慣用手段であり、また、色情報を分析するためには圧縮されたフレームデータを伸張したフレームデータを利用しているものといえる。
すなわち、引用発明において、データストリームの伝送エラー等の発生の検出に加え、伝送エラーが発生した位置において、圧縮されたフレームデータを伸張したフレームデータにおける色情報等に基づく画質の劣化を評価するためのパラメータを求め、そのパラメータを閾値と比較した結果により受信要求を送信する条件とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、伝送エラー等の発生の検出に加え、伝送エラーが発生した位置において、色情報等に基づいてデータストリームの画質の劣化を評価することは、「色情報に基づいて」データストリームを解析していることに他ならず、この点において本願発明と何ら変わるものではない。

以上のことから、引用発明において、引用文献2記載の技術を適用し、上記相違点1及び相違点3に係る、解析部が「前記圧縮フレームデータを伸長したフレームデータの色情報に基づいて解析」し、「動画像の品質を評価するためのパラメータを求め、当該パラメータが閾値を下回ると」、指令信号を送信するものとすることは、当業者が容易になし得ることである。

(2)相違点2について
伝送システムにおける動画データの送信側である送信装置において、撮像装置のような「動画データを得るための入力部」を備えた送信装置の構成は周知のものである(例えば、原審において提示された特開平8-205159号公報(段落0017)、特開2006-333367号公報(段落0013)、特開2003-189301号公報(段落0012)等)。
そして、引用発明のデジタルビデオ放送(DVB)システムにおいて、上記周知技術を適用し、送信側の送信装置を「動画データを得るための入力部」を備えたものとすることは当業者が容易に想到し得ることであり、その際に、引用発明のエンコーダが「入力部で得られた」動画データを圧縮するものとすることも、容易に想到し得る。
よって、引用発明において上記相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得ることである。

(3)効果等について
本願発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える格別顕著なものがあるとは認められない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は引用発明、引用文献2に記載される技術、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のように、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載される技術、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-01 
結審通知日 2016-09-06 
審決日 2016-09-20 
出願番号 特願2011-12326(P2011-12326)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅本 達雄後藤 嘉宏山▲崎▼ 雄介  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 戸次 一夫
清水 正一
発明の名称 動画伝送システム  
代理人 仲石 晴樹  
代理人 北出 英敏  
代理人 坂口 武  
代理人 西川 惠清  

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