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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F04B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F04B
管理番号 1321060
審判番号 不服2015-18309  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-07 
確定日 2016-11-04 
事件の表示 特願2011- 90009「圧縮機」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月12日出願公開、特開2012-219800〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成23年4月14日の特許出願であって,平成26年11月14日付けで拒絶理由が通知され(発送日:同年11月18日),平成27年1月19日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年6月30日付けで拒絶査定(発送日:同年7月7日)がなされ,これに対して,同年10月7日に本件審判が請求されると同時に手続補正がなされた。
当審において平成28年5月25日付けで最後の拒絶理由が通知され(発送日:同年5月31日),同年7月22日にテレビ面接を実施した後,同年8月1日に意見書が提出されると共に手続補正がなされた。

第2 平成28年8月1日付けの手続補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年8月1日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正前の平成27年10月7日付け手続補正書に記載された特許請求の範囲は,以下のとおりである。
「【請求項1】
モータ(11)を有する圧縮機構(15)と,
電源から延びる電線(39)に設けられている電源側端子(39a)と接続され,前記モータへと電気を流す給電端子(26a)と,
前記電源側端子と前記給電端子とを接続させるための雄ネジ部材(40,140)および雌ネジ部材(31)と,
を備え,
前記雄ネジ部材は,頭部(41,141)と,非ネジ形成円柱部(43,143)と,外周面に雄ネジが形成された雄ネジ形成円柱部(42,142)と,を有しており,
前記雌ネジ部材は,非ネジ形成内周面(53)と,雌ネジが形成された雌ネジ形成内周面(52)と,を有し,前記雌ネジ形成内周面(52)のみが,前記雄ネジ部材と螺合する前に前記非ネジ形成円柱部(43,143)と対向することで前記雄ネジ部材と前記雌ネジ部材との相対傾斜角度を所定範囲に入れる受け部(54,154)となり,
前記受け部(54,154)は,前記雄ネジ部材と螺合する前に前記非ネジ形成円柱部(43,143)と対向することで,前記雄ネジ部材と前記雌ネジ部材との相対傾斜角度を,前記所定範囲である5°以下の範囲に入れる,
圧縮機。」

これに対し,本件補正により,特許請求の範囲は,以下のように補正された。
「【請求項1】
モータ(11)を有する圧縮機構(15)と,
電源から延びる3本の電線(39)それぞれに設けられている電源側端子(39a)と接続され,前記モータへと電気を流す3つの給電端子(26a)と,
前記電源側端子と前記給電端子とを接続させるための雄ネジ部材(40,140)および雌ネジ部材(31)と,
取出口(20a)を有し,前記雄ネジ部材,前記雌ネジ部材,前記3本の電線の前記電源側端子,および前記3つの給電端子を収容し,前記取出口から前記3本の電線が束ねられた状態で外側へ引き出される,端子箱(20)と,
を備え,
前記雄ネジ部材は,頭部(41,141)と,非ネジ形成円柱部(43,143)と,外周面に雄ネジが形成された雄ネジ形成円柱部(42,142)と,を有しており,
前記雌ネジ部材は,非ネジ形成内周面(53)と,雌ネジが形成された雌ネジ形成内周面(52)と,を有し,前記雌ネジ形成内周面(52)のみが,前記雄ネジ部材と螺合する前に前記非ネジ形成円柱部(43,143)と対向することで前記雄ネジ部材と前記雌ネジ部材との相対傾斜角度を所定範囲に入れる受け部(54,154)となり,
前記受け部(54,154)は,前記雄ネジ部材と螺合する前に前記非ネジ形成円柱部(43,143)と対向することで,前記雄ネジ部材と前記雌ネジ部材との相対傾斜角度を,前記所定範囲である5°以下の範囲に入れ,前記雄ネジ部材と前記雌ネジ部材との締結作業が自動ドライバーを用いて行われる際に作業姿勢あるいは前記電線の張力の影響で前記雌ネジに対して前記雄ネジが傾いた状態で締結が為されてしまうことを防ぎ,前記電源側端子と前記給電端子との接続状態の不良率を低下させる,
圧縮機。」

2.目的要件について
(1)本件補正が,特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
本件補正は,「圧縮機」について「取出口(20a)を有し,前記雄ネジ部材,前記雌ネジ部材,前記3本の電線の前記電源側端子,および前記3つの給電端子を収容し,前記取出口から前記3本の電線が束ねられた状態で外側へ引き出される,端子箱(20)と」を備えるものと限定することを含むものである。
しかしながら,上記補正は,本件補正前の発明(以下,「補正前発明」という。)の発明特定事項とは別の「端子箱(20)」なる発明特定事項を外的(枠外)に付加したものであるから,上記補正が補正前発明の発明特定事項を限定するものに該当しないため,請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の解決しようとする課題が同一である「特許請求の範囲の減縮」には該当しない。
したがって,本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とは認められない。
また,本件補正が,請求項の削除,誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。
よって,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。

(2)まとめ
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

3.独立特許要件について
仮に,本件補正が,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるとして,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)についても以下に検討する。

(1)引用例とその記載事項
ア.当審の拒絶の理由に引用された特開2008-169755号公報(以下,「引用例1」という。)には,「圧縮機」に関し,次の事項が図面とともに記載されている(当審により下線を付与した。)。

・「【請求項1】
給電用ターミナル(21)の複数の端子(23)のそれぞれにリード線(31)を一本ずつ接続するためのコネクタ(41)を備えた圧縮機であって,
上記コネクタ(41)は,上記端子(23)と上記リード線(31)とをそれぞれ接続固定するための複数の接続部(51,52,53)を備えているとともに,該各接続部(51,52,53)が分離可能なように分割されていることを特徴とする圧縮機。」

・「【技術分野】
【0001】
本発明は,給電用のターミナルとリード線とを接続固定するコネクタを備えた圧縮機に関し,特に,該ターミナルでのスパーク再発防止に係るものである。」

・「【0035】
<実施形態1>
-全体構成-
図1に示すように,本発明の実施形態に係る圧縮機(1)は,いわゆる全密閉型に構成されている。特に図示しないが,上記圧縮機(1)のケーシング内部には,電動機,駆動軸,圧縮機構,軸受などが収納されている。すなわち,上記圧縮機(1)は,電動機に電力を供給すると,該電動機のロータと同軸に設けられた駆動軸が回転するように構成されている。そして,該駆動軸の一端は,圧縮機構に係合しており,該駆動軸を介して電動機から圧縮機構に動力を伝達する。これにより,上記圧縮機構は,低圧のガス冷媒を吸入し,その吸入したガス冷媒を圧縮して吐出するようになっている。
【0036】
-端子箱の構成-
図1に示すように,上記圧縮機(1)のケーシング(2)(圧縮機ケーシング)の外側で且つ上下方向のほぼ中心付近には,端子箱(3)が取り付けられている。この端子箱(3)は,図2にも示すように,正面視で略長方形状の箱体であって,上記ケーシング(2)の外側に取り付け固定されるベース部材(11)と該ベース部材(11)を覆う上蓋(16)とを備えている。そして,上記端子箱(3)内には,上記圧縮機(1)のケーシング(2)を貫通するように設けられている給電用のターミナル(21)(給電用ターミナル)や,該ターミナル(21)と電源(図示省略)から延びるリード線(31)とを繋ぐコネクタ(41)などが配置されている。」

・「【0040】
上記図2に示すように,上記端子箱(3)の下面,すなわち,該端子箱(3)をケーシング(2)に取り付けた状態で下側に位側する上記ベース部材(11)及び上蓋(16)の側壁部(13,17)には,図示しない電源に繋がるリード線(31)の取出し口(3a)が形成されている。この取出し口(3a)は,上記ベース部材(11)及び上蓋(16)の側壁部(13,17)にそれぞれ形成された切欠部(13b,17b)によって構成されている。なお,本実施形態では,上記取出し口(3a)を上記端子箱(3)の下面に設けているが,この限りではなく,上面や側面など,どの面に設けても良い。
【0041】
上記リード線(31)は,電源側とは反対側の一端が上記端子箱(3)内に位置付けられていて,該一端には,ボルトによってコネクタ(41)に固定可能なように,円盤状の端子片(32)が一体的に設けられている。なお,上記図2では,リード線(31)が1本のみ記載されているが,実際には,3本のリード線が上記コネクタ(41)にそれぞれ接続されていて,それらのリード線は束ねられた状態で上記取出し口(3a)から外側へ引き出されている。
【0042】
上記コネクタ(41)は,詳しくは後述するように3つの厚肉板状の接続部材(51,52,53)(接続部)からなり,それぞれの部材の表面には,上記各リード線(31)の端子片(32)をボルトによって固定するためのボルト穴(42,42,42)が形成されている。そして,上記接続部材(51,52,53)のボルト穴(42)周辺には,上記各リード線(31)の端部をガイドするための案内溝(43,44,45),後述するターミナル(21)の端子片(24)が挿通するスリット穴(46,46,46)及び該各スリット穴(46)から上記各ボルト穴(42)まで延びるように上記端子片(24)の接触部(47)が形成されている。
【0043】
また,上記コネクタ(41)の接続部材(51,52,53)は,上記図2(A)に示すように,上記各案内溝(43,44,45)と端子片接続部(47)とのなす角度がそれぞれ異なるように形成されている。具体的には,120°間隔で放射状に延びる上記各端子片接続部(47)に対して,上記端子箱(3)のリード線の取出し口(3a)にもっとも近い案内溝(43)は約120°,次に近い案内溝(44)は約90°,取出し口(3a)から最も離れている案内溝(45)は約60°の角度をなしている。
【0044】
さらに,上記図2(A)に示すように,上記接続部材(51,52,53)は,それぞれの部材に形成されたスリット穴(46,46,46)が約120°間隔で並ぶように,且つ上記端子箱(3)のリード線の取り出し口(3a)に2番目に近い接続部材(52)の案内溝(44)が該端子箱(3a)の長手方向に沿うように,配設される。
【0045】
すなわち,上記案内溝(43,44,45)が上記端子箱(3)の取出し口(3a)に向かって延びるように,上記コネクタ(41)は構成されている。
【0046】
上述のようなコネクタ(41)の構成により,上記各リード線(31)は,ほとんど蛇行することなく取出し口(3a)に向かって伸長される。つまり,上記各リード線(31)は,きつく屈曲されることなく上記取出し口(3a)へ案内される。そのため,上記各リード線(31)同士が干渉し合ったり,リード線(31)が端子箱(3)の内面に接触したりすることもない。
【0047】
上記ターミナル(21)は,図2(B)に示すように,盆状に形成された基部(22)を有していて,この基部(22)が,ケーシング(2)に形成された孔に対し,ケーシング外方に底面が向くように嵌め込まれた状態で溶接固定されている。上記基部(22)には,3本の端子ピン(23,23,23)が底面を貫通するように設けられている。これらの端子ピン(23,23,23)は,同一ピッチ円上に120°間隔で配置されている。また,上記各端子ピン(23)は,上記基部(22)よりもケーシング外側の基端部分をガラス製の絶縁材(25)によって覆われている。
【0048】
上記ターミナル(21)の各端子ピン(23)は,図示しないが,ケーシング(2)内側の端部が圧縮機(1)内の電動機に対して電気的に接続されている。一方,上記各端子ピン(23)のケーシング(2)外側の端部には,端子片(24)が一体的に設けられている(図2参照)。この端子片(24)は,真鍮など金属製の板状の部材であって,その先端部にはボルト孔が形成されている。そして,図2(B)に示すように,上記端子片(24)は,上記コネクタ(41)に形成されたスリット穴(46)を挿通した状態で,該コネクタ(41)表面に形成された端子片接触部(47)に沿うように折り曲げられて,上記ボルト穴(42)に挿通されるボルト(48)によって該コネクタ(41)に固定されている。なお,上記図2(B)に示すように,上記コネクタ(41)の接続部材(51,52,53)には,スリット穴(46)に連通するように穴部(54)が形成されていて,この穴部(54)内に,上記ターミナル(21)の端子ピン(23)の先端が挿入されるようになっている。
【0049】
すなわち,上記コネクタ(41)の表面上に,上記ターミナル(21)の端子片(24)と,上記リード線(31)の端子片(32)とが電気的に接続されるように固定されている。なお,上記図2(A)には,リード線(31),端子片(32)及び端子ピン(23)の端子片(24)を一つずつのみ記載しているが,当然のことながら,これらはすべて3つずつ設けられているものとする。」

・段落【0036】,【0042】,【0048】,【0049】の記載事項と図2(A)の図示内容からみて,電源から延びる3本のリード線31各々に設けられた端子片32が理解できる。

・段落【0041】,【0042】,【0048】,【0049】の記載事項からみて,端子片32と端子片24とを電気的に接続させるためのボルト48と,端子片32と端子片24とを電気的に接続させるためのボルト穴42が形成されたコネクタ41の接続部材51,52,53が理解できる。

・段落【0036】,【0040】?【0042】,【0048】,【0049】の記載事項と図2(A),図2(B)の図示内容からみて,端子箱3が,ボルト48,ボルト穴42が形成されたコネクタ41の接続部材51,52,53,3本のリード線31の端子片32及び3つの端子片24を収容していることが理解できる。

・図2(B)の図示内容と技術常識を考慮すると,ボルト48は,頭部と,外周面に雄ネジが形成された雄ネジ形成部とを有していることが理解できる。

・段落【0048】の「この端子片(24)は,・・・その先端部にはボルト孔が形成されている。・・・上記端子片(24)は,・・・上記ボルト穴(42)に挿通されるボルト(48)によって該コネクタ(41)に固定されている。」という記載からみて,ボルト穴42に挿通されるボルト48によって端子片24がコネクタ41に固定されることから,技術常識を考慮すると,ボルト穴42にボルト48が螺合されるものであり,ボルト穴42は,雌ネジが形成された雌ネジ形成内周面を有することが理解できる。。

そうすると,これらの事項に基づいて,本願補正発明の表現に倣って整理すると,引用例1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電動機と,駆動軸と,電動機から駆動軸を介して動力を伝達される圧縮機構と,
電源から延びる3本のリード線各々に設けられている端子片32と電気的に接続され,前記電動機に対して電気的に接続されている3つの端子ピン23と,当該端子ピン23に一体的に設けられている3つの端子片24と,
前記端子片32と前記端子片24とを電気的に接続させるためのボルト48と,
前記端子片32と前記端子片24とを電気的に接続させるためのボルト穴42が形成されたコネクタ41の接続部材51,52,53と,
取出し口3aを設け,前記ボルト48,前記ボルト穴42が形成されたコネクタ41の接続部材51,52,53,前記3本のリード線31の前記端子片32及び前記3つの端子片24を収容し,3本のリード線31は束ねられた状態で前記取出し口3aから外側に引き出されている,端子箱3と,
を備え,
前記ボルト部材48は,頭部と,外周面に雄ネジが形成された雄ネジ形成部とを有しており,
前記ボルト穴42は,雌ネジが形成された雌ネジ形成内周面を有する,
圧縮機。」

イ.当審の拒絶の理由に引用された実願昭47-45824号(実開昭49-2958号)のマイクロフィルム(以下,「引用例2」という。)には,「予備装着部分付ネジ」に関し,次の事項が図面とともに記載されている。
・「2.実用新案登録請求の範囲
予備装着部分をもつたネジ」

・「この考案は,装着を容易にするための部分をもつたネジに関するものである。
即ち オネジの場合には第1図,メネジの場合には第2図の様に その端部の一部にネジを切つてない部分1および2を設ける
これによつて 不安定な状態でのとりつけや手さぐりでのネジしめの場合に装着が容易となる。」(明細書第1ページ7?14行。)

・第1図には,オネジはネジを切つてない部分1と外周面にオネジが形成された部分とを有することが示されている。

・第2図には,メネジはネジを切つてない部分2と内周面にメネジが形成された部分とを有することが示されている。

ウ.当審の拒絶の理由に引用された特開昭56-80516号公報(以下,「引用例3」という。)には,「ねじとナツトから成るネジ結合部材」に関し,次の事項が図面とともに記載されている。

・「本発明はねじとナツトとから成るねじ結合部材に関する。このばあいねじとは,ヘッドの有無にかかわらずねじ山を備えたねじ軸部を意味しており,すなわち隔てボルト,点火栓あるいは類似のもののねじも示している。ナツトは,ねじ軸部をねじ込まれるようになっている機械部分あるいは装置部分のねじ山孔も意味している。
ナツトにねじ嵌められるばあいあるいは固定されたナツトにねじをねじ込むさいに雌ねじと雄ねじとが迅速にかつぴったりと嵌合されるかどうかは常に熟練度が問題になる。経験を積んだ技術者に対して素人は,たとえば修理あるいは遊びにおいて外したねじ結合部材を再びねじ嵌めしなければならないばあいにしばしば困難を感じる。自動車を持っている人なら判るが,点火栓を交換するばあいに点火栓が斜めに設置されると機関の軽金属シリンダヘッドに切込まれたナツトねじ山が傷つく危険がある。このような困難は,ねじ結合部材を有するおもちや,たとえば組み木などでもしばしば生じる。
このような困難が生じないために本発明では,ねじ軸部が端部において心部直径と同じ直径のねじ山なしの心定めピンを有しており,あるいはナツトがねじ山の呼び直径に等しいねじ山なしの心定め孔を有しており,このばあい心定めピンあるいは心定め孔の長さかねじ山のピッチより長いようにした。このことによって,ねじとナツトとを嵌め合わせるばあいに,ねじ結合部材の一方の部材あるいは他方の部材を回動することによってねじ山が嵌合される以前に,強制的に中心軸線が共通の一列に心定めされる。最初に嵌め合わされたねじ山が,即座には気づかないが第1のねじ山を損傷するような傾斜状態で切込まれることはない。」(公報第1ページ右下欄第4行?第2ページ左上欄第18行)

・「以下に図示の実施例につき本発明を説明する。第1図において,ねじ山なしの心定めピン2の直径d1が心部直径d1と等しい。心定めピンの長さはピッチhより長い。第2図に示すナツト4のねじ山なしの心定め孔6の直径dは内ねじ山5の呼び直径に等しい。
前述のような直径の一致は文字どおりではない。なぜならば有利な心定め効果を得ようとするために,心定めピン2ができる限り遊びなしにナツトの内ねじ山に適合されなければならないのでわずかな直径の差が必要であるからである。同様にねじ軸部1のねじ山路端部3はできる限り遊びなしにナツト4の心定め孔6に適合されなげばならない。
第1図によるねじと第2図によるナツトとが結合されることも可能である。しかしながらこのことによって不必要なねじ山なしの長さが与えられる。これはねじあるいはナツトのどちらかがねじ山なしの心定め長さを備えていれば十分であるからである。」(公報第2ページ右上欄第16行?左下欄第16行)

・第1図には,ねじは頭部と雄ネジが形成されない心定めピン2と外周部に雄ネジが形成された部分と頭部に隣接する外周部に雄ネジが形成されたいない部分とを有することが示されている。

・第2図には,ナツトは雌ネジの形成されない心定め孔6と内ねじ山5の部分とを有することが示されている。

エ.当審の拒絶の理由に周知例として示された実願昭54-178348号(実開昭56-95609号)のマイクロフィルム(以下,「引用例4」という。)には,「ナツト」に関し,次の事項が図面とともに記載されている。
・「尚,前記ナツト孔(3)の螺条溝(4)は締結目的によつては第2図示の如く孔(3)内の中間部に附設する場合もある。」(明細書第2ページ第13?15行)

・「また本考案の応用例としてナツト孔(3)に未螺条溝孔(5)を形設することなく従来のナツト用としてボールト(2)の先端部を径小とし,未螺条溝(5)’部分を形成することも一考で前記と同一の効果を期待できるのである。」(明細書第2ページ第16?20行,以下,「第3図の説明」という。)

・「第2図は他の実施態様を示す同上図,
第3図は本考案の応用例を示す同上図である。」(明細書第3ページ第3?4行)

オ.当審の拒絶の理由に周知例として示された実願昭57-43221号(実開昭58-146114号)のマイクロフィルム(以下,「引用例5」という。)には,「特殊形状部を有するネジ部品」に関し,次の事項が図面とともに記載されている。

・「第4図は,本考案によるネジ部品1を位置決めピン,兼締付けネジとして使用する状態を示す断面図で,部材9のメネジ部に本考案のネジ部品1のオネジ部を円柱部5が出張る迄ねじ込み,出張った円柱部5をピンとし,部材11のメネジ谷径をピン穴として使用する。」(明細書第2ページ第12?17行)

・第4図には,部材11のメネジの内周面のみが,ネジ部品1と螺合する前に出張った円柱部5とと対向することが示されている。

(2)発明の対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると,後者の「電動機」は前者の「モータ」に相当し,以下同様に,「リード線」は「電線」に,「各々」は「それぞれ」に,「端子片32」は「電源側端子」に,「端子片24」は「給電端子」に,「ボルト48」は「雄ネジ部材」に,「ボルト穴42が形成されたコネクタ41の接続部材51,52,53」はその「ボルト穴42」が雌ネジが形成された雌ネジ形成内周面を有するから「雌ネジ部材」に,「取出し口3a」は「取出口」に,「端子箱3」は「端子箱」に,それぞれ相当する。
前者では,圧縮機10のケーシングの内部10aにはモータ11や駆動軸12を含む圧縮機構15が収納されており(本願明細書の段落【0027】を参照。),圧縮機構15がモータ11や駆動軸12を含むものとなっているから,後者の「電動機と,駆動軸と,電動機から駆動軸を介して動力を伝達される圧縮機構」は,前者の「モータを有する圧縮機構」に相当する。
後者の「電源から延びる3本のリード線各々に設けられている端子片32と電気的に接続され,前記電動機に対して電気的に接続されている3つの端子ピン23と,当該端子ピン23に一体的に設けられている3つの端子片24」は前者の「電源から延びる3本の電線それぞれに設けられている電源側端子と接続され,前記モータへと電気を流す3つの給電端子」に相当する。
後者の「前記端子片32と前記端子片24とを電気的に接続させるためのボルト48と,前記端子片32と前記端子片24とを電気的に接続させるためのボルト穴42が形成されたコネクタ41の接続部材51,52,53」は前者の「前記電源側端子と前記給電側端子とを接続させるための雄ネジ部材および雌ネジ部材」に相当する。
後者の「取出し口3aを設け,前記ボルト48,前記ボルト穴42が形成されたコネクタ41の接続部材51,52,53,前記3本のリード線31の前記端子片32及び前記3つの端子片24を収容し,3本のリード線31は束ねられた状態で前記取出し口3aから外側に引き出されている,端子箱3」は,前者の「取出口を有し,前記雄ネジ部材,前記雌ネジ部材,前記3本の電線の前記電源側端子及び前記3つの給電端子を収容し,前記取出口から3本の電線が束ねられた状態で外側に引き出される,端子箱」に相当する。
後者の「前記ボルト部材48は,頭部と,外周面に雄ネジが形成された雄ネジ形成部とを有しており,前記ボルト穴42は,雌ネジが形成された雌ネジ形成内周面を有する」態様と,前者の「前記雄ネジ部材は,頭部と,非ネジ形成円柱部と,外周面に雄ネジが形成された雄ネジ形成円柱部と,を有しており,前記雌ネジ部材は,非ネジ形成内周面と,雌ネジが形成された雌ネジ形成内周面と,を有」する態様とは,「前記雄ネジ部材は,頭部と,外周面に雄ネジが形成された雄ネジ形成円柱部と,を有しており,前記雌ネジ部材は,雌ネジが形成された雌ネジ形成内周面,を有」する点で共通する。
そうすると,両者は,
「モータを有する圧縮機構と,
電源から延びる3本の電線それぞれに設けられている電源側端子と接続され,前記モータへと電気を流す3つの給電端子と,
前記電源側端子と前記給電側端子とを接続させるための雄ネジ部材および雌ネジ部材と,
取出口を有し,前記雄ネジ部材,前記雌ネジ部材,前記3本の電線の前記電源側端子及び前記3つの給電端子を収容し,前記取出口から3本の電線が束ねられた状態で外側に引き出される,端子箱と,
を備え,
前記雄ネジ部材は,頭部と,外周面に雄ネジが形成された雄ネジ形成円柱部と,を有しており,
前記雌ネジ部材は,雌ネジが形成された雌ネジ形成内周面,を有する,
圧縮機。」
の点で一致し,以下の点で相違すると認められる。
<相違点>
本願補正発明では,「前記雄ネジ部材は,頭部と,非ネジ形成円柱部と,外周面に雄ネジが形成された雄ネジ形成円柱部と,を有しており,前記雌ネジ部材は,非ネジ形成内周面と,雌ネジが形成された雌ネジ形成内周面と,を有し,前記雌ネジ形成内周面のみが,前記雄ネジ部材と螺合する前に前記非ネジ形成円柱部と対向することで前記雄ネジ部材と前記雌ネジ部材との相対傾斜角度を所定範囲に入れる受け部となり,前記受け部は,前記雄ネジ部材と螺合する前に前記非ネジ形成円柱部と対向することで,前記雄ネジ部材と前記雌ネジ部材との相対傾斜角度を,前記所定範囲である5°以下の範囲に入れ,前記雄ネジ部材と前記雌ネジ部材との締結作業が自動ドライバーを用いて行われる際に作業姿勢あるいは前記電線の張力の影響で前記雌ネジに対して前記雄ネジが傾いた状態で締結が為されてしまうことを防ぎ,前記電源側端子と前記給電端子との接続状態の不良率を低下させる」のに対して,引用発明では,ボルト部材48は,頭部と,外周面に雄ネジが形成された雄ネジ形成部とを有しており,コネクタ41の接続部材51,52,53に形成されたボルト穴42は,雌ネジが形成された雌ネジ形成内周面を有するものの,それ以上の特定ははない点。

(3)相違点の検討
引用例2には,「不安定な状態でのとりつけや手さぐりでのネジしめの場合に装着が容易」(明細書第1ページ第12?14行)とすることと関連して「オネジ(本願補正発明の「雄ネジ部材」に相当するもの。以下同様。)はネジを切ってない部分1(「非ネジ形成円柱部」)と外周面に雄ネジが形成された部分(「雄ネジ形成円柱部」)とを有する」構成及び「メネジ(「雌ネジ部材」)はネジを切つてない部分2(「非ネジ形成内周面」)と内周面にメネジが形成された部分(「メネジ形成内周面」)とを有する」構成が記載されており,通常,オネジ(「雄ネジ部材」)は,メネジ(「雌ネジ部材」)に装着されるものである。
引用例3には,「ねじとナツトを嵌め合わせるばあいに,ねじ結合部材の一方の部材あるいは他方の部材を回動することによってねじ山が嵌合される以前に強制的に中心軸線が共通の一列に心定めされる」(公報第2ページ左上欄第11?15行)ことと関連して,「ねじ(「雄ネジ部材」)は頭部と雄ネジが形成されない心定めピン2(「非ネジ形成円柱部」)と外周部に雄ネジが形成された部分(「雄ネジ形成円柱部」)とを有する」構成,「ナツト(「雌ネジ部材」)は雌ネジの形成されない心定め孔6(「非ネジ形成内周面」)と内ねじ山5の部分(「雌ネジが形成された雌ネジ形成内周面」)とを有する」構成が記載されているとともに,「第1図によるねじと第2図によるナツトとが結合されることも可能である。しかしながらこのことによって不必要なねじ山なしの長さが与えられる。ねじあるいはナットのどちらかにねじ山なしの心定め長さを備えていれば十分であるからである。」(公報第2ページ左下欄第11?16行)との記載があることから,第1図のねじにナツトを結合する際のナツトにはねじ山なしの部分を設けなくてもよいことが示唆されている。
また,雌ねじ形成内周面のみが,雄ネジ部材と螺合する前に非ネジ形成円柱部と対向することで雄ネジ部材と雄ネジ部材との相対傾斜角度を所定範囲に入れる受け部となることは,出願前周知の事項である(必要があれば,引用例3の上記示唆,引用例4の「第3図の説明」,引用例5の第4図及びその説明を参照のこと。引用例3の上記示唆における「ねじ」,「ナツト」,「内ねじ山5の部分」はそれぞれ本願補正発明の「雄ネジ部材」,「雌ネジ部材」,「雌ねじ形成内周面」に相当。引用例4の「第3図の説明」の「ボールト2」,「ナツト」,「ナツト孔3の未螺条溝孔5を形成することない」部分,「未螺条溝5’」はそれぞれ本願補正発明の「雄ネジ部材」,「雌ネジ部材」,「雌ねじ形成内周面」,「非ネジ形成円柱部」に相当。引用例5の第4図の「ネジ部品1」,「部材11」,「部材11のメネジ」,「出張った円柱部5」はそれぞれ「雄ネジ部材」,「雌ネジ部材」,「メネジ形成内周面」,「非ネジ形成円柱部」に相当。)。
さらに,雄ネジ部材と雌ネジ部材との相対傾斜角度を5°以下の範囲に入れることも,例えば,引用例3では,強制的に両者の中心軸線が共通の一列に心定めされるように(つまり可及的に相対傾斜角度を無くすように)していることから,当業者が適宜選択し得た設計的事項にすぎない。
また,雌ネジ部材の雄ネジ部材を挿入する側の反対側に雌ネジのない部分を設けることも周知の事項であるから(必要があれば,引用例4の「ナツト孔(3)の螺条溝(4)は締結目的によつては第2図示の如く孔(3)内の中間部に附設する場合もある。」という記載事項を第2図とともに参照のこと。),引用発明のボルト穴42が形成された接続部材51,52,53に雄ネジ部材を挿入する側の反対側に雌ネジのない部分を設けることにより,受け部となる雌ネジ形成内周面とは雌ネジ部材の別部位に雌ネジのない部分を採用することも当業者が適宜選択し得た設計的事項である。
ボルトとナットの装着において,その装着を容易にしようとする,一般的な課題(例えば,引用例2の不安定な状態によるとりつけやネジしめの場合の装着を容易にするという課題や引用例3のねじとナットを共通の一列に心定めしようとする課題等を参照のこと。)を解決するために,引用発明のボルト48のボルト穴42への装着に関して,課題解決手段である,引用例2,3に記載された事項及び周知の事項を適用して,「前記雄ネジ部材は,頭部と,非ネジ形成円柱部と,外周面に雄ネジが形成された雄ネジ形成円柱部と,を有しており,前記雌ネジ部材は,非ネジ形成内周面と,雌ネジが形成された雌ネジ形成内周面と,を有し,前記雌ネジ形成内周面のみが,前記雄ネジ部材と螺合する前に前記非ネジ形成円柱部と対向することで前記雄ネジ部材と前記雌ネジ部材との相対傾斜角度を所定範囲に入れる受け部となり,前記受け部は,前記雄ネジ部材と螺合する前に前記非ネジ形成円柱部と対向することで,前記雄ネジ部材と前記雌ネジ部材との相対傾斜角度を,前記所定範囲である5°以下の範囲に入れ」るように構成することは,当業者が容易に想到し得たものである。
そして,引用発明におけるボルト48とボルト穴42に,上記引用例2,3に記載された事項及び上記周知の事項を適用したものは,本願補正発明と同様の「前記雄ネジ部材と前記雌ネジ部材との締結作業が自動ドライバーを用いて行われる際に作業姿勢あるいは前記電線の張力の影響で前記雌ネジに対して前記雄ネジが傾いた状態で締結が為されてしまうことを防ぎ,前記電源側端子と前記給電端子との接続状態の不良率を低下させる」という機能・作用を奏するものである(なお,上記機能・作用は,本願補正発明の「モータ(11)を有する圧縮機構(15)と,電源から延びる3本の電線(39)それぞれに設けられている電源側端子(39a)と接続され,前記モータへと電気を流す3つの給電端子(26a)と,前記電源側端子と前記給電端子とを接続させるための雄ネジ部材(40,140)および雌ネジ部材(31)と,取出口(20a)を有し,前記雄ネジ部材,前記雌ネジ部材,前記3本の電線の前記電源側端子,および前記3つの給電端子を収容し,前記取出口から前記3本の電線が束ねられた状態で外側へ引き出される,端子箱(20)と,を備え,前記雄ネジ部材は,頭部(41,141)と,非ネジ形成円柱部(43,143)と,外周面に雄ネジが形成された雄ネジ形成円柱部(42,142)と,を有しており,前記雌ネジ部材は,非ネジ形成内周面(53)と,雌ネジが形成された雌ネジ形成内周面(52)と,を有し,前記雌ネジ形成内周面(52)のみが,前記雄ネジ部材と螺合する前に前記非ネジ形成円柱部(43,143)と対向することで前記雄ネジ部材と前記雌ネジ部材との相対傾斜角度を所定範囲に入れる受け部(54,154)となり,前記受け部(54,154)は,前記雄ネジ部材と螺合する前に前記非ネジ形成円柱部(43,143)と対向することで,前記雄ネジ部材と前記雌ネジ部材との相対傾斜角度を,前記所定範囲である5°以下の範囲に入れ」ることにより生じる機能・作用であると認められる。)。
したがって,本願補正発明は,引用発明,引用例2,3の記載事項,上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,この出願は,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)まとめ
したがって,仮に上記1.の補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしても,本件補正は,同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成28年8月1日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成27年10月7日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,「第2 1.」の補正前発明に記載されたとおりのものと認められる(以下,補正前発明を「本願発明」という。)。

2.引用例とその記載事項
当審の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項及び引用発明は前記第2.3.(1)ア.?オ.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると,後者の「電源から延びる3本のリード線各々に設けられている端子片32と電気的に接続され,前記電動機に対して電気的に接続されている3つの端子ピン23と,当該端子ピン23に一体的に設けられている3つの端子片24」は前者の「電源から延びる電線に設けられている電源側端子と接続され,前記モータへと電気を流す給電端子」に相当し,後者の「前記端子片32と前記端子片24とを接続させるためのボルト48と,前記端子片32と前記端子片24とを接続させるためのボルト穴42が形成されたコネクタ41の接続部材51,52,53」は前者の「前記電源側端子と前記給電側端子とを接続させるための雄ネジ部材および雌ネジ部材」に相当し,その余の点は,前記第2.3.(2)で検討した対比と同様であるから,両者は,
「モータを有する圧縮機構と,
電源から延びる電線に設けられている電源側端子と接続され,前記モータへと電気を流す給電端子と,
前記電源側端子と前記給電側端子とを接続させるための雄ネジ部材および雌ネジ部材と,
を備え,
前記雄ネジ部材は,頭部と,外周面に雄ネジが形成された雄ネジ形成円柱部と,を有しており,
前記雌ネジ部材は,雌ネジが形成された雌ネジ形成内周面,を有する,
圧縮機。」
の点で一致し,以下の点で相違すると認められる。
<相違点’>
本願発明では,「前記雄ネジ部材は,頭部と,非ネジ形成円柱部と,外周面に雄ネジが形成された雄ネジ形成円柱部と,を有しており,前記雌ネジ部材は,非ネジ形成内周面と,雌ネジが形成された雌ネジ形成内周面と,を有し,前記雌ネジ形成内周面のみが,前記雄ネジ部材と螺合する前に前記非ネジ形成円柱部と対向することで前記雄ネジ部材と前記雌ネジ部材との相対傾斜角度を所定範囲に入れる受け部となり,前記受け部は,前記雄ネジ部材と螺合する前に前記非ネジ形成円柱部と対向することで,前記雄ネジ部材と前記雌ネジ部材との相対傾斜角度を,前記所定範囲である5°以下の範囲に入れ」るのに対して,引用発明では,ボルト部材48は,頭部と,外周面に雄ネジが形成された雄ネジ形成部とを有しており,コネクタ41の接続部材51,52,53に形成されたボルト穴42は,雌ネジが形成された雌ネジ形成内周面を有するものの,それ以上の特定はない点。

上記<相違点’>について検討する。
上記<相違点’>は,本願補正発明と引用発明の<相違点>から「前記雄ネジ部材と前記雌ネジ部材との締結作業が自動ドライバーを用いて行われる際に作業姿勢あるいは前記電線の張力の影響で前記雌ネジに対して前記雄ネジが傾いた状態で締結が為されてしまうことを防ぎ,前記電源側端子と前記給電端子との接続状態の不良率を低下させる」という本願補正発明の機能・作用の部分を除いたものである。
そうすると,上記<相違点>に係る本願補正発明の構成が,上記第2.3.(3)において検討した理由に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたのであるから,上記<相違点’>に係る本願発明の構成も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用例2,3に記載された事項及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,本願は,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-01 
結審通知日 2016-09-06 
審決日 2016-09-20 
出願番号 特願2011-90009(P2011-90009)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (F04B)
P 1 8・ 121- WZ (F04B)
P 1 8・ 572- WZ (F04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 尾崎 和寛  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 前田 浩
藤井 昇
発明の名称 圧縮機  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  

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