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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1321063
審判番号 不服2015-18929  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-21 
確定日 2016-11-04 
事件の表示 特願2011-245519「ショットキーバリアダイオード」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日出願公開、特開2013-102081〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成23年11月9日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年10月21日 審査請求
平成27年 2月 6日 拒絶理由通知
平成27年 4月13日 意見書
平成27年 7月14日 拒絶査定
平成27年10月21日 審判請求・手続補正
平成28年 7月29日 上申書

第2 補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年10月21日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正により,本件補正前の特許請求の範囲の請求項4のうち,請求項1を引用する請求項3を引用した部分は本件補正後の請求項1へ補正(以下,「補正事項1」という。)された。
2 補正の適否
本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の記載からみて,補正事項1は,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであることは明らかであるので,補正事項1は,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
そして,本件補正は本件補正前の請求項4について引用請求項を減少させるものであるから,特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかであり,また,同法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項)につき,更に検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は,本件補正後の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「n型の導電性を有するGa_(2)O_(3)系化合物半導体からなるn型半導体層と,前記n型半導体層に対してショットキー接触する電極層とを備え,
前記n型半導体層には,前記電極層にショットキー接触する第1の半導体層と,前記第1の半導体層よりも高い電子キャリア濃度を有する第2の半導体層とが形成されているショットキーバリアダイオードであって,
前記第1の半導体層における電子キャリア濃度が1×10^(17)cm^(-3)よりも低く,前記第2の半導体層における電子キャリア濃度が1×10^(18)cm^(-3)よりも高いショットキーバリアダイオード。」
(2)引用文献1の記載と引用発明
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2010-233406号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は当審において付加した。以下同じ。)
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は,スイッチング制御装置及びショットキーダイオードに関する。」
(イ)「【0018】
(ショットキーダイオードの構成)
図2は,本発明の実施の形態に係るショットキーダイオードの要部断面図である。このショットキーダイオード8は,一例として,寸法が10×10mmであり,図2に示すように,n型Ga_(2)O_(3)基板80と,オーミック電極81と,ショットキー電極82と,を備えて概略構成されている。
【0019】
n型Ga_(2)O_(3)基板80は,例えば,Ga_(2)O_(3)系の半導体基板から構成され,その厚さは,一例として,100μmである。
【0020】
このGa_(2)O_(3)系の半導体基板が,n型導電性を示すためには,半導体基板中のGaがn型ドーパントと置換されるか,半導体基板中の酸素がn型ドーパントと置換されるか,またはβ-Ga_(2)O_(3)単結晶中の酸素欠陥によらなければならない。Gaがn型ドーパントと置換されるガリウム置換型n型ドーパントとして,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Ru,Rh,Ir,C,Sn,Si,Ge,Pb,Mn,As,Sb及びBi等が挙げられる。酸素がn型ドーパントと置換される酸素置換型n型ドーパントとして,F,Cl,Br,I等が挙げられる。
【0021】
また,n型Ga_(2)O_(3)基板80は,室温におけるバンドギャップがおよそ4.8eVであり,Siのバンドギャップ(およそ1.1eV),SiC(4H)のバンドギャップ(およそ3.0eV),及びGaNのバンドギャップ(およそ3.4eV)に比べて大きいバンドギャップを有することが知られている。
【0022】
バンドギャップは,ショットキーダイオードの動作温度に関係し,バンドギャップが大きいほど,動作温度は高くなる。また,バンドギャップは,ショットキーダイオードの絶縁破壊電解強度に関係し,バンドギャップが大きいほど,絶縁破壊強度が大きくなる。よって,本実施の形態におけるショットキーダイオード8は,SiC(4H)及びGaNから作られるショットキーダイオードに比べて高温動作が可能で,かつ,高耐圧であるので,このショットキーダイオード8を含むスイッチング回路部10は,高温動作が可能で,かつ,高耐圧である。
【0023】
オーミック電極81は,n型Ga_(2)O_(3)基板80の下面に形成された第1の膜83と,第1の膜83上に形成された第2の膜84と,を有して概略構成される。
・・・
【0027】
ショットキー電極82は,n型Ga_(2)O_(3)基板80の上面に形成される。また,ショットキー電極82は,例えば,スパッタ法によって形成されたAu膜である。なお,ショットキー電極82は,n型Ga_(2)O_(3)基板80との間でショットキー接触する限りAuに限定されず,Pd,Pt,Ni,Mo,W,Ta,Nb,Cr,Ag,In及びAlの群から選択された少なくとも1つを含んで形成されても良い。」
(ウ)図2には,層状の「n型Ga_(2)O_(3)基板80」と層状の「ショットキー電極82」が記載されている。
イ 前記アより,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「n型Ga_(2)O_(3)基板と,前記n型Ga_(2)O_(3)基板との間でショットキー接触するショットキー電極と,を備えたショットキーダイオード。」
(3)周知例の記載及び周知技術
ア 周知例1
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2007-042997号公報(以下,「周知例1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
「【0003】
パワーデバイスとしての半導体装置(たとえば整流素子)には,大きく分類してpn接合ダイオードとショットキーバリアダイオード(SBD)とがある。pn接合ダイオードは,電流通電時に半導体内部に蓄積される少数キャリアによってターンオフ過渡時に大きな逆電流が流れる性質がある。このため,スイッチング素子のターンオン時に過大な損失を発生させるだけでなく,過大なノイズの発生源となっており,整流素子の高速化を阻害する主要な要因になっている。一方,SBDでは,半導体内部で電流を運ぶ担体が多数キャリアのみであり,電流通電時においても少数キャリアの注入や蓄積がないので,ターンオフ時の逆電流を極めて小さくすることができる。このため,一般に,pn接合ダイオードと比較してSBDは高周波領域で動作することができる。
【0004】
以上により,ワイドバンドギャップ半導体を用いたSBDは,高耐圧,高温動作,および高周波動作を実現し得る整流素子として期待されている。
【0005】
図52は,従来のSiC-SBD(整流素子)の構成を示す断面模式図である。図52を参照して,整流素子110は,n型のSiC基板101と,SiC基板101の主表面上に形成され,SiC基板101よりも不純物濃度の低いn型のドリフト層102と,ドリフト層102の表面上に形成されたアノード電極103と,SiC基板101の裏面上に形成されたカソード電極104とを有している。整流素子110においては,アノード電極103とドリフト層102とによってショットキー障壁が構成され,この障壁によって整流特性が実現される。」
イ 周知例2
原査定で引用された,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2009-016875号公報(以下,「周知例2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
「【0013】
この新しいGaNショットキーダイオードは一般に,基板上にn+ GaN層を含み,基板の反対側のn+ GaN層上にn- GaN層を含む。n+ GaN層上に金属オーミックコンタクトが含まれ,n- GaN層から分離され,n- GaN層上にショットキー金属層が含まれる。整流すべき信号が,ダイオードのショットキー金属コンタクトと金属オーミックコンタクトの両端間に印加される。ショットキー金属がn- GaN層上に蒸着しているとき,その2つの間で前記n- GaNの表面で障壁ポテンシャルが形成される。ショットキー金属層は仕事関数を有し,その仕事関数によって障壁ポテンシャルの高さが決定される。」
ウ 周知技術
前記ア及びイより,次の事項は本願の出願前に周知技術であったと認められる。
「ショットキーダイオードにおいて,高濃度不純物半導体層側にオーミック接触した電極を形成し,低濃度不純物半導体層側にショットキー接合した電極を形成したショットキーダイオード。」
(4)本願補正発明と引用発明との対比
引用発明の「n型Ga_(2)O_(3)基板」及び「n型Ga_(2)O_(3)基板との間でショットキー接触するショットキー電極」は,それぞれ層状のものである(前記(2)ア(ウ))から,それぞれ本願補正発明の「n型の導電性を有するGa_(2)O_(3)系化合物半導体からなるn型半導体層」及び「前記n型半導体層に対してショットキー接触する電極層」に相当すると認められる。
引用発明の「ショットキーダイオード」は,下記相違点を除いて,本願補正発明の「ショットキーバリアダイオード」に相当すると認められる。
してみると,本願補正発明と引用発明を対比すると,下記アの点で一致し,下記イの点で相違すると認められる。
ア 一致点
「n型の導電性を有するGa_(2)O_(3)系化合物半導体からなるn型半導体層と,前記n型半導体層に対してショットキー接触する電極層とを備える
ショットキーバリアダイオード。」
イ 相違点
本願補正発明の「前記n型半導体層には,前記電極層にショットキー接触する第1の半導体層と,前記第1の半導体層よりも高い電子キャリア濃度を有する第2の半導体層とが形成されて」おり,「前記第1の半導体層における電子キャリア濃度が1×10^(17)cm^(-3)よりも低く,前記第2の半導体層における電子キャリア濃度が1×10^(18)cm^(-3)よりも高い」のに対し,引用発明の「n型半導体層」は「n型Ga_(2)O_(3)基板」であり,電子キャリア濃度について開示がない点。
(5)相違点についての検討
ア 引用文献1の段落【0023】には,n型Ga_(2)O_(3)基板80の下面にオーミック電極81を形成することが記載されているので,引用発明はオーミック電極を備えたショットキーダイオードの態様も含まれるところ,前記(3)ウで認定したとおり,ショットキーダイオードにおいて,高濃度不純物半導体層側にオーミック接触した電極を形成し,低濃度不純物半導体層側にショットキー接合した電極を形成することは,周知技術であるから,引用発明のオーミック電極とショットキー電極を,前記周知技術を採用することで実現することは,当業者が容易になし得ることである。
イ そして,前記周知技術の採用により,高濃度不純物半導体層と低濃度不純物半導体層を導入する際に,それぞれの層の不純物濃度をどの程度にするかは,求められる逆方向耐圧や順方向電圧,オーミックコンタクト抵抗に基づいて当業者が適宜設計すべき事項にすぎない。
ウ 以上のとおりであるから,引用発明に前記周知技術を採用して,高濃度不純物半導体層と低濃度不純物半導体層を導入し,それぞれの半導体層の電子キャリア濃度について適宜の数値範囲を設定することは当業者が容易になし得ることである。
(6)本願補正発明の効果について
本願補正発明の効果(本願明細書段落【0011】参照。)は,バンドギャップの大きいGa_(2)O_(3)基板を採用した引用発明の構成及び高濃度不純物半導体層上にオーミック接触した電極を開示する周知技術から,当業者が予測できるものであり,格別のものではない。
(7)まとめ
よって,本願補正発明は,引用発明及び周知例1,2にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 むすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明の特許性の有無について
1 本願発明について
平成27年10月21日にされた手続補正は前記のとおり却下された。
そして,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,特許請求の範囲の請求項1に記載された,次のとおりのものと認める。
「n型の導電性を有するGa_(2)O_(3)系化合物半導体からなるn型半導体層と,前記n型半導体層に対してショットキー接触する電極層とを備え,
前記n型半導体層には,前記電極層にショットキー接触する第1の半導体層と,前記第1の半導体層よりも高い電子キャリア濃度を有する第2の半導体層とが形成されているショットキーバリアダイオード。」
2 判断
前記第2の1のとおり,本願発明は,本願補正発明の一部の発明特定事項からなる部分を請求項1として記載したものであり,本願発明にさらに発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が,前記第2の2(7)のとおり,引用発明及び周知例1,2にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により引用発明及び周知例1,2にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,引用文献1に記載された発明及び周知例1,2にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

第4 結言
したがって,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-25 
結審通知日 2016-08-30 
審決日 2016-09-15 
出願番号 特願2011-245519(P2011-245519)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須原 宏光  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 須藤 竜也
深沢 正志
発明の名称 ショットキーバリアダイオード  
代理人 伊藤 浩行  
代理人 平田 忠雄  
代理人 遠藤 和光  
代理人 岩永 勇二  

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