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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E04F
管理番号 1321096
審判番号 不服2015-21685  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-07 
確定日 2016-11-22 
事件の表示 特願2012- 26331「壁構造体およびその壁構造体の構築方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月22日出願公開、特開2013-163899、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年2月9日の出願であって、平成27年9月2日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年12月7日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。


第2 平成27年12月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否

1 補正の内容
(1)請求項1について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「下地材の表面に間隔をおいて配置、固定される複数のマグネットシートと、この各マグネットシートに背面部を吸着させて着脱自在に支持するとともに、フラットに形成された端面同士を相互に突き合わせて大面積になる仕上げ面を形成する複数の金属製板材とを備え、
各金属製板材は、0.5mm以下の厚みを有するものであり、
前記マグネットシートの相互間に、前記金属製板材の背面部と前記下地材との間に形成される隙間を埋める厚さを有し、前記金属製板材を平滑に保持する嵩上げ材を配置し、
前記マグネットシートは、前記金属製板材の自重で発生するマグネットシートと該金属製板材との間のせん断強度の20倍以下の吸着力を有することを特徴とする壁構造体。」とする補正(以下「補正事項1」という。また、下線部は補正箇所を示す。以下同様。)を含んでいる。

(2)請求項6について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項6を、
「下地材の表面に複数枚の金属製板材を着脱自在に取り付け、該板材の外表面を仕上げ面とする壁構造体を構築する方法において、
各金属製板材は、0.3?0.5mmの厚みを有するものであり、
前記下地材の表面に、複数枚のマグネットシートを間隔をおいて配置、固定して該マグネットシートの吸着力を、該金属製板材の自重で発生するマグネットシートと該金属製板材との間のせん断強度の20倍以下に設定するとともに、前記マグネットシートの相互間に嵩上げ材を設置し、次いで、前記金属製板材の端面同士を相互に突き合わせる突き合わせ配列にしてその背面部を前記マグネットシートに吸着させることを特徴とする壁構造体の構築方法。」とする補正(以下「補正事項2」という。)を含んでいる。


2 補正の適否
(1)補正事項1について
本件補正の補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数の金属製板材」について、「各金属製板材は、0.5mm以下の厚みを有するものであり」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「補正発明1」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。


ア 刊行物の記載事項
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された実願昭62-155883号(実開平1-61336号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同様。)。

a 「2.実用新案登録請求の範囲
(1) 大型陶板の裏面に磁気吸着性を有する補強用金属板を固着すると共に、躯体(注:原文では「躯」の異体字が使われている。以下同様。)に設けられたシート状磁石に該金属板を磁気吸着することにより大型陶板を躯体に固定したことを特徴とする大型陶板の施工構造。」(明細書第1頁第4--9行目)

b 「[産業上の利用分野]
本考案は大型陶板の強度向上と、大型陶板の着脱自在な取付けとが可能となる大型陶板の施工構造に関する。」(明細書第1頁第11-14行目)

c 「[問題点を解決するための手段]
本考案の大型陶板の施工構造は、大型陶板の裏面に磁気吸着性を有する補強用金属板を固着すると共に、躯体に設けられたシート状磁石に該金属板を磁気吸着することにより大型陶板を躯体に固定したことを特徴とするものである。」(明細書第3頁第6-11行目)

d 「 第2図は本考案の別の実施例構造を示す縦断面図である。本実施例では、躯体壁面を構成するフレーム5にシート状磁石4が固着され、該シート状磁石4と金属板2とが磁気吸着することにより大型陶板1が壁面に施工されている。」(明細書第6頁第20行目-第7頁第4行目)

e 第2図は、本考案の実施例構造を示す断面図であって、上記dで摘記した事項を踏まえると、第2図からは、複数のシート状磁石4は、躯体の表面に間隔をおいて配置、固定されること、及び、複数の大型陶板1は、フラットに形成された端面同士を相互に突き合わせて仕上げ面を形成することが看取できる。

f 躯体壁面という記載及び技術常識を踏まえると、躯体、シート状磁石4、補強用金属板及び大型陶板からなる構造は、壁構造体といえる。

上記のaないしdで摘記した事項及び第2図(上記e参照。)並びに上記fから、刊行物1には、「躯体の表面に間隔をおいて配置、固定される複数のシート状磁石4と、裏面に磁気吸着性を有する補強用金属板が固着された複数の大型陶板1とを備え、複数の大型陶板1は、各シート状磁石4に裏面の補強用金属板を磁気吸着させて着脱自在に取付けるとともに、フラットに形成された端面同士を相互に突き合わせて仕上げ面を形成するようにした壁構造体。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

(イ)原査定の拒絶の理由に引用された特開昭55-4421号公報(以下「刊行物2」という。)には、「本発明は上記の問題点を解決するためのものであって磁化された硬磁性材料を含有する合成樹脂シート、ゴムシートにより被覆された壁下地に、強磁性および装飾性を有する板を磁力により貼着してなる装飾的壁体である。図面よりその構成を説明すると第1図においてコンクリートまたは合成樹脂等の壁材(1)の表面に接着剤層(2)を介して磁化された硬磁性材料を含有する合成樹脂シート、ゴムシート(3)が被着されて壁下地となつている。上記シート(3)の表面には着色あるいは模様付け等により装飾性を持たせた強磁性の薄板(4)が磁力により着脱自在に貼着される。」(第1頁右下欄第8-20行目)、「上記シート(3)の表面に貼着する強磁性を有する薄板(4)はシート(3)と同じくフエライト等を含有する合成樹脂、ゴムの板でもよく、鉄板、ニツケル板等のように磁化されたシート(3)に磁力により保持しうる金属板であってもよい。」(第2頁右上欄第5-10行目)、「厚さ1mmの鉄板(20cm×20cm)を25枚用意してこの表面に種々の着色塗装を行い、下地の表面にモザイク的に磁力により貼着させた」(第3頁左上欄第19行目-第3頁右上欄第3行目)と記載されている。
そして、第1及び2図から、シート(3)に薄板(4)の背面部を貼着させること、及び、フラットに形成された端面同士を相互に突き合わせて大面積になる仕上げ面を形成することが看取できる。

(ウ)原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-285650号公報(以下「刊行物3」という。)には、「本発明は、内装材を撤去することなく内装をリフォームするための内装構造および内装施工方法に関する。」(段落【0001】)、「住宅の内装材は、一般に、石膏ボードや構造用合板等のような内装下地材と、壁紙等のような内装仕上げ材とによって構成されている。そして、従来、内装をリフォームする際には、既存の内装仕上げ材を剥がし、内装下地材の不陸をシーラー等で平滑化した後、内装下地材の表面に新たな内装仕上げ材を貼り付けるようにしていた。」(段落【0002】)、「壁面を構成する内装材12、内装材12の表面に所定間隔を隔てて固定された複数の長尺板状部材22、長尺板状部材22のそれぞれに接着体24を介して取り付けられた壁板材28、および長尺板状部材22間に配置され、内装材12と壁板材28との間に生じたスペースを保持するスペーサ26を備える、内装構造10」(段落【0009】)、「ここで、既存の内装材12は、柱14や横架材16等に釘やネジ等で固定された内装下地材18と、内装下地材18の表面に貼り付けられた内装仕上げ材20とによって構成されている。そして、内装構造10においては、内装材12の表面に長尺板状部材22,接着体24およびスペーサ26を介して壁板材28が取り付けられる。」(段落【0018】)、「壁板材28は、既存の内装材12に代わる新たな内装材となるものであり、接着体24を介して長尺板状部材22に取り付けられる。壁板材28の種類は特に限定されるものではなく、たとえば、石膏ボード,ケイ酸カルシウム板,スラグ石膏板,ダイライト(商品名:大建工業株式会社製),火山性ガラス質複層板,木質繊維板,ロックウール繊維板,挽材,合板,木質繊維板(IB,MDF等),木削片板(パーティクルボード,ストランドボード,OSB等),集成材,単板積層材等を用いることができる。」(段落【0026】)、「また、壁板材28の表面には、鏡面化粧や着色を施してもよく、また、柄模様印刷を施してもよい。さらに、壁板材28の表面には、塩化ビニル壁紙,オレフィン壁紙,紙壁紙,絹や麻や綿等の天然素材を原料とした壁紙,珪藻土を原料とした壁紙等を貼り付けてもよい。」(段落【0027】)と記載されている。

(エ)原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-200589号公報(以下「刊行物4」という。)には、「図面中、1は建築物の壁面を構成するための乾式のサイディング材であり、樋状の金属板の樋内に合成樹脂発泡体が充填されており必要に応じて裏面にアルミニウムをラミネートされた紙や金属板等の裏面材により被覆されている金属サイディング材や、セメント,コンクリート等より成形されている窯業サイディング材等、従来より一般に使用されている乾式のサイディング材を使用することができる。この乾式のサイディング材1には、通常、長手方向と平行な両側の幅方向端縁部1b,1bのうち、一方の幅方向端縁部1bに凹部が形成された雌型の係合部1cが、また他方の幅方向端縁部1bに該係合部1cに係合する雄型の係合部1dがそれぞれ形成されており、更にこれら係合部1c又は1dのいずれか一方の端縁側が外方に突出せしめられて固定部1eが形成されている(図3に示す実施例の場合には、一方の幅方向端縁部1bに雌型の係合部1cが形成されていると共にこの係合部1cの更に端縁側に固定部1eが延設されており、他方の幅方向端縁部1bに雄型の係合部1dが形成されている)。」(段落【0012】)、「このような作業において、サイディング材1の幅方向への接続は、幅方向端縁部1b,1bに形成されている係合部1c,1dの形状によって種々の態様があり、例えば幅方向端縁部1b,1b同士を当接した状態に単に突き合わせた態様や、また幅方向端縁部1b,1b同士を間隔を隔てた状態に突き合わせてこの隙間にコーキング材を充填した態様を挙げることができる他、施工効率を考慮してコーキング材の代わりに以下に説明する如き目地材を使用した態様を示すこともできる。」(段落【0022】)と記載されている。

(オ)原査定に引用された特開2004-68316号公報(以下「刊行物5」という。)には、「化粧板を、金属製躯体に接合する際、磁性シートを介して接合することを特徴とする化粧板の取り付け方法」(段落【0005】)と記載されている。

(カ)原査定に引用された特開平11-217919号公報(以下「刊行物6」という。)には、「磁石は垂直方向の引張り強度が大であるが、水平方向の剪断応力が小であるという特性を有する。このため、天井の端部をなす仕上げパネル3を固定することによりパネル全体を固定(本止め)すると、磁石11による仕上げパネル3の把持力は大となり、地震等による横揺れにも対処し得るのである。一方水平方向の剪断応力は小であるため、天井の端部をなす仕上げパネル3を固定するまでは仮止めであるから、小なる力でも簡単に水平方向にずらすことができ、微調整が容易となり、位置合せを容易にすることができるのである。」(段落【0011】)と記載されている。

(キ)前置報告書に引用された実願平5-42104号(実開平7-11389号)のCD-ROM(以下「刊行物7」という。)には、以下の事項が記載されている。

a 「【請求項1】 地板の表面にシート状の永久磁石を取り付け、このシート状の永久磁石に対して、その表面に黒板面が形成された鋼板を、この鋼板と前記シート状の永久磁石との間に作用する磁力により着脱自在に取り付けたことを特徴とする黒板。」

b 「図2は、黒板本体1の表面部分を拡大して示す部分拡大断面図である。地板3の表面全面にわたって、たとえば、厚みが0.5?1mm程度の薄板状のマグネットシート4が釘止め,ねじ止め或いは接着剤により取り付けられている。なお、地板3の表面全面にではなく、地板3の表面に部分的に複数のマグネットシート4を取り付けるようにしてもよい。このマネットシートとしては、ゴム磁石と呼ばれる可撓性を有するシート状の永久磁石を使用することができる。マグネットシート4の表面には、シート状の被着磁性体、たとえば、厚みが0.27?0.5mm程度の鋼板5が、マグネットシート4と鋼板5との間に作用する磁力により付着される。鋼板5の表面には、下塗り塗装を施し焼付けを行った後に更に、エポキシ,ウレタン等の樹脂を主剤とし、各種顔料,つや消し剤,硬化剤等を配合した鋼製焼付け黒板用塗料を塗布して焼付けを行うことにより形成された黒板面6が形成されている。鋼板5と黒板面6が一体となって取り替え可能な表面部材7を構成している。なお、鋼板5の代わりにほうろう鋼板或いはアルミメッキ鋼板等が使用される場合もある。地板3、マグネットシート4及び表面部材7を合わせた厚みは、たとえば6mmであり、したがって、黒板本体1全体の厚みは30mmとなる。」(段落【0018】)

c 上記段落【0018】の「地板3の表面に部分的に複数のマグネットシート4を取り付ける」との記載から、地板3の表面に複数のマグネットシート4が間隔をおいて配置、固定されることは明らかである。

d 上記段落【0018】の「マグネットシート4の表面には、シート状の被着磁性体、たとえば、厚みが0.27?0.5mm程度の鋼板5が、マグネットシート4と鋼板5との間に作用する磁力により付着される。」という記載及び図1(b)から、マグネットシート4に鋼板5の背面部を付着させることが読み取れる。

上記aないしbで摘記した事項と上記cないしdから、刊行物7には、「地板3の表面に間隔をおいて配置、固定される複数のマグネットシート4と、この各マグネットシート4に背面部を付着させて着脱自在に取り付けるとともに、黒板面6を形成する鋼板5とを備え、鋼板5は、0.27?0.5mm以下の厚みを有するものである黒板。」の発明(以下「引用発明7」)が記載されていると認められる。


イ 対比
(ア)補正発明1と引用発明1とを対比する。引用発明1の「躯体」は、補正発明1の「下地材」に相当し、以下同様に、「シート状磁石4」は「マグネットシート」に、「裏面の補強用金属板を磁気吸着させ」ることが「背面部を吸着させ」ることに、「着脱自在に取付ける」ことが「着脱自在に支持する」ことに相当する。
(イ)補正発明1の「仕上げ面を形成する複数の金属製板材」と、引用発明1の「仕上げ面を形成する複数の大型陶板」とは、「仕上げ面を形成する仕上げ材」で共通する。
(ウ)したがって、補正発明1と引用発明1は、「下地材の表面に間隔をおいて配置、固定される複数のマグネットシートと、この各マグネットシートに背面部を吸着させて着脱自在に支持するとともに、フラットに形成された端面同士を相互に突き合わせて大面積になる仕上げ面を形成する複数の仕上げ材とを備えた壁構造体。」の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
仕上げ材について、
補正発明1では「金属製板材」であって、「各金属製板材は、0.5mm以下の厚みを有するものである」のに対して、
引用発明1では「大型陶板」である点。

[相違点2]
相違点1に関連して、
補正発明1は、「前記マグネットシートの相互間に、前記金属製板材の背面部と前記下地材との間に形成される隙間を埋める厚さを有し、前記金属製板材を平滑に保持する嵩上げ材を配置」するのに対し、
引用発明1にそのような特定がない点。

[相違点3]
相違点1に関連して、
補正発明1は「前記マグネットシートは、前記金属製板材の自重で発生するマグネットシートと該金属製板材との間のせん断強度の20倍以下の吸着力を有する」のに対し、
引用発明1にそのような特定がない点。

ウ 判断
(ア)相違点1について
a 刊行物2には、上記ア(イ)で摘記したように、壁下地に、仕上げ材としての厚さ1mmの鉄板(補正発明1の「金属製板材」に相当する。)を、磁力により貼着する技術事項が記載されている。
b そこで、引用発明1に刊行物2の記載の上記技術事項を適用することについて検討する。
引用発明1は、「大型陶板の強度向上と、大型陶板の着脱自在な取付けとが可能となる大型陶板の施工構造に関する」(刊行物1の[産業上の利用分野]を参照。)ものであって、仕上げ材として「金属製板材」を使用することは何ら記載されていないから、当業者であっても引用発明1の「大型陶板」に代えて刊行物2に記載の「鉄板」を適用することは容易に着想し得るとはいえない。
また、刊行物2の「鉄板」の厚みは1mmであるので、適用したとしても補正発明1の0.5mm以下の厚みを満たすものではない。
c 次に、他の刊行物について検討する。
刊行物3には、上記ア(ウ)で摘記したように、スペーサ26(補正発明1の「嵩上げ材」に相当する。)について、刊行物4には、上記ア(エ)で摘記したように、建築物の壁面を構成するための乾式のサイディング材(壁パネル材)の突き合わせ部位について、さらに、刊行物5及び6には、上記ア(オ)及び(カ)で摘記したように、仕上げ材(化粧板、仕上げパネル)を磁力により下地材に吸着させることについてそれぞれ記載されているが、刊行物3ないし6のいずれにも、仕上げ材を金属製板材とし、壁下地に磁力により吸着させることは記載されていないから、補正発明1の相違点1に係る構成とすることが当業者にとって容易想到であることの根拠とならない。
また、刊行物7には、上記ア(キ)のとおり引用発明7が記載されていると認められるが、引用発明7は「黒板」に関するものであって、引用発明1の壁構造体とは技術分野が大きく異なるから、適用することが当業者にとって容易に着想し得ることとはいえず、適用したとしても、補正発明1に到達しない。
d 以上のとおりであるから、引用発明1に刊行物2ないし7に記載の技術事項を適用して、補正発明1の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(イ)相違点2について
a 刊行物3には、上記ア(ウ)で摘記したように、「内装材を撤去することなく内装をリフォームするための内装構造および内装施工方法に関する」(段落【0001】)ものであって、内装下地材18と、内装下地材18の表面に貼り付けられた内装仕上げ材20とによって構成されている、既存の壁面を構成する内装材12と、内装材12の表面に所定間隔を隔てて固定された複数の長尺板状部材22と、長尺板状部材22のそれぞれに接着体24を介して取り付けられた新たな内装材となる壁板材28と、長尺板状部材22間に配置され、内装材12と壁板材28との間に生じたスペースを保持するスペーサ26とを備える技術事項が記載されている。
b しかしながら、刊行物3の「スペーサ26」は、内装材12と壁板材28との間に生じたスペースを保持するものであるから、補正発明1の「嵩上げ材」に相当するといえるが、その取り付け位置は、「既存の壁面を構成する内装材12」と「新たな内装材となる壁部材28」との間で長尺板状部材22間に配置されるものであるから、補正発明1の「前記マグネットシートの相互間に、前記金属製板材の背面部と前記下地材との間に形成される隙間を埋める厚さを有し、前記金属製板材を平滑に保持する嵩上げ材を配置」することが記載されているとはいえない。
c 引用発明1において仕上げ材は「大型陶板」(すなわちタイル)であり、補正発明1の「金属製板材」とは材質が異なるため、「永久磁石の配置間隔によっては、その相互間に位置する板材が局所的に凹あるいは凸状に変位することがあり、仕上げ面の平滑精度が劣化するのが避けられない不具合がある。」(本願明細書の段落【0007】)という課題自体が成立し得ない。
d また、刊行物2、4ないし7のいずれにも、金属製板材を平滑に保持する嵩上げ材を配置することは記載されていない。
e 以上のとおりであるから、引用発明1に刊行物2ないし7に記載の技術事項を適用して、補正発明1の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(相違点1及び2についての予備的検討)
仮に、引用発明1において、刊行物2に記載の技術事項を適用して、仕上げ材を鉄板(金属製板材)とすることが容易に想到し得ることであるとしても、引用発明1において、大型陶板を鉄板(金属製板材)に代えて、さらに、マグネットシートの相互間に、嵩上げ材を配置することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(ウ)相違点3について
a 刊行物5には、上記ア(オ)で摘記したように、「化粧板を、金属製躯体に接合する際、磁性シートを介して接合することを特徴とする化粧板の取り付け方法」(段落【0005】)が、また、刊行物6には、上記ア(カ)で摘記したように、「磁石は垂直方向の引張り強度が大であるが、水平方向の剪断応力が小であるという特性を有する。」及び「水平方向の剪断応力は小であるため、天井の端部をなす仕上げパネル3を固定するまでは仮止めであるから、小なる力でも簡単に水平方向にずらすことができ、微調整が容易となり、位置合せを容易にすることができる」(段落【0011】)と記載されているが、刊行物5及び6のいずれにも、「前記金属製板材の自重で発生するマグネットシートと該金属製板材との間のせん断強度」と「前記マグネットシートの吸着力」とを比較する記載が存在しておらず、補正発明1の「前記マグネットシートは、前記金属製板材の自重で発生するマグネットシートと該金属製板材との間のせん断強度の20倍以下の吸着力を有する」ことが記載されているとはいえない。
b また、刊行物2、3、4、7のいずれにも、補正発明1の「前記マグネットシートは、前記金属製板材の自重で発生するマグネットシートと該金属製板材との間のせん断強度の20倍以下の吸着力を有する」ことは記載されていない。
c 以上のとおりであるから、引用発明1に刊行物2ないし7に記載の技術事項を適用して、補正発明1の相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)から、補正発明1は、引用発明1及び刊行物2ないし7の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 予備的検討(刊行物7を主引例とする進歩性の検討)
引用発明7は黒板であり、引用発明1の壁構造体とは技術分野が大きく異なるから、引用発明7の黒板の構造を引用発明1の壁構造体に適用することは当業者が容易に着想し得ることではない。
また、刊行物2ないし6には、上記ウで述べたような技術事項が記載されているが、これらの技術事項を引用発明7に適用したとしても、引用発明7の鋼板5(金属製板材)の数を複数にして、さらに、マグネットシート4の相互間に、嵩上げ材を配置することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、補正発明1は、引用発明7及び刊行物1ないし6の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ したがって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

カ 本件補正後の請求項2ないし5について
本件補正後の請求項2ないし5に記載した発明(以下「補正発明2」ないし「補正発明5」という。)は、本件補正後の前記請求項1に記載した発明(補正発明1)を直接又は間接に引用するものであるから、実質的に特許請求の範囲を減縮する補正がなされたといえる。
そこで、補正発明2ないし5が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討すると、補正発明2ないし5は、補正発明1を引用するものであって、補正発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、補正発明1と同様に、刊行物1ないし7の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。


(2)補正事項2について
本件補正の補正事項2は、請求項6に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数の金属製板材」について、「各金属製板材は、0.5mm以下の厚みを有するものであり」との限定を付加するものであって、補正前の請求項6に記載された発明と補正後の請求項6に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項6に記載された発明(以下「補正発明6」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討すると、補正発明6は、補正発明1に対応する「下地材の表面に複数枚の金属製板材を着脱自在に取り付け、該板材の外表面を仕上げ面とする壁構造体を構築する方法」の発明であるから、補正発明1と同様に、刊行物1ないし7の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、本件補正の補正事項2は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。


3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。



第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし6に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものである。

そして、本件補正後の請求項1ないし6に係る発明(補正発明1ないし6)は、上記第2の2のとおり、当業者が刊行物1ないし7の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-11-09 
出願番号 特願2012-26331(P2012-26331)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (E04F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 瓦井 秀憲蔵野 いづみ  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 藤田 都志行
赤木 啓二
発明の名称 壁構造体およびその壁構造体の構築方法  
代理人 特許業務法人銀座マロニエ特許事務所  
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