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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04M |
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管理番号 | 1321148 |
審判番号 | 不服2015-10361 |
総通号数 | 204 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-03 |
確定日 | 2016-11-22 |
事件の表示 | 特願2011- 64780「住宅情報盤および集合住宅用インターホンシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月22日出願公開、特開2012-204867、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成23年3月23日の特許出願であって、平成26年7月31日付けで拒絶理由が通知され、平成27年2月25日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年6月3日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において、平成28年2月1日付けで拒絶理由が通知され、同年3月24日付けで手続補正がされ、同年6月29日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年9月2日付けで手続補正がされたものである。 2.本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、平成28年9月2日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 画像表示機能を有した住宅情報盤において、 生活環境情報を情報配信装置から受信して記憶部に記憶させる情報受信部と、 記憶部に記憶させている生活環境情報に対する表示開始、終了指令を情報配信装置から受信すると、その生活環境情報の表示を開始又は終了させる表示制御部と、 表示終了させている生活環境情報に対する表示開始指令を情報配信装置から所定時間以上受信しなかったときに、その生活環境情報を自動的に消去させる記憶制御部とを備えた住宅情報盤。 【請求項2】 請求項1において、 記憶制御部は、記憶部に記憶させている生活環境情報に対する消去指令を情報配信装置から受信すると、その生活環境情報を消去させる住宅情報盤。 【請求項3】 請求項1又は2において、 表示制御部は、表示時間帯の設定操作を受付け、生活環境情報を、表示すべき表示時間帯に制限して表示させる住宅情報盤。 【請求項4】 請求項1?3のいずれかに記載の住宅情報盤を各住戸に備えた集合住宅用インターホンシステムであって、 住宅情報盤は、ロビーインターホンと通信するためのインターホン回線を通じて、生活環境情報と、生活環境情報に対する制御指令とを受信する集合住宅用インターホンシステム。 【請求項5】 請求項4において、 インターホン回線には、住宅情報盤とロビーインターホンとの呼出、通話を制御する通信制御装置が設けられており、 住宅情報盤は、その通信制御装置を介して、情報配信装置と通信する集合住宅用インターホンシステム。 【請求項6】 請求項5において、 通信制御装置は、広域ネットワークに接続されており、 情報配信装置は、その広域ネットワーク上に設けられている集合住宅用インターホンシステム。」 3.当審拒絶理由通知についての当審の判断 (1)当審拒絶理由の概要 当審における平成28年6月29日付けの最後の拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は以下のとおりである。 「 <<<< 最 後 >>>> 理 由 1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) (1)請求項1について、 引用文献1、2、10、11 引用文献1(段落【0001】?【0004】、【0019】?【0022】、【0030】、【0031】、【0037】?【0039】、【0041】、【0044】?【0047】、【0056】)には、 「画像表示機能を有した住戸端末において、 掲示板情報を管理端末から受信して記憶させる記憶部と、 記憶部に記憶されている掲示板情報を、表示手段に表示を開始した後、表示中止ボタンが押されると、掲示板情報を記憶したままで表示を中止する制御手段とを備えた住戸端末。」 が記載されている。 請求項1に係る発明が、表示終了指令を情報配信装置から受信するとその表示を終了させるのに対して、引用文献1に記載された発明は、表示中止ボタンが押されると、その表示を終了するものである点で相違する。 しかしながら、引用文献1(段落【0056】)において表示を中止する別の態様として、管理端末から配信された「属性情報」、すなわち管理端末からの指示に基づいてその表示を中止することも記載されているところ、「情報の配信元から配信された情報を表示した後に、その情報に対する表示終了指令を情報の配信元から受信してその表示を終了すること。」は、表示制御にかかる周知技術(例えば、引用文献2(段落【0001】、【0004】、【0006】、【0019】?【0038】【0081】)、引用文献10(段落【0077】)、引用文献11(段落【0068】))である。 引用文献1に記載された発明に上記周知技術を適用して「表示を開始した後」に、「その掲示板情報に対する表示終了指令を管理端末から受信すること」の構成を付加することは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2)請求項2について 引用文献1、2、10、11、12 上記(1)の検討に加えて、 引用文献1(段落【0044】)には、操作手段で掲示板情報を選択し「掲示板情報の表示指示」を行う点が記載されているところ、引用文献1(【0031】)において表示を開始する別の態様として、管理端末から取得された「属性情報」、すなわち管理端末からの情報に基づいてその表示を開始することも記載されているところ、「表示開始の指令を情報の配信元から受信して表示を開始すること。」は、表示制御にかかる周知技術(例えば、引用文献12(3頁左上段、画面情報がある場合のs30))である。 引用文献1に記載された発明に上記周知技術を適用して「掲示板情報に対する表示開始指令を管理端末から受信すること」との構成を付加することは、当業者が容易に想到し得たことである。 (3)請求項3について 引用文献1、2、10、11、12、3、4 請求項1、2の検討に加えて、 「所定期間以上使用されていないデータを、記憶手段から自動的に選択し消去すること」は周知技術(例えば、引用文献3(段落【0023】)、引用文献4(段落【0005】))である。 引用文献1に記載された発明に、上記周知技術を適用して、記録部に記録されている所定期間以上表示されていない掲示板情報を自動的に選択して消去することは、当業者が容易に想到し得たことである。 (4)請求項4について ・・・(中略)・・・ (5)請求項5について ・・・(中略)・・・ (6)請求項6、7について ・・・(中略)・・・ (7)請求項8について ・・・(中略)・・・ 引用文献一覧 1.特開2002-14900号公報 2.特開2001-345767号公報 3.特開平8-242278号公報 4.特開2003-219016号公報 ・・・(中略)・・・ 10.特開2003-316999号公報(今回当審で追加した周知技術文献) 11.特開2009-153328号公報( 同上 ) 12.特開平2-39319号公報 ( 同上 ) 」 4.当審拒絶理由についての当審の判断 (1)引用文献1 当審拒絶理由で引用した、特開2002-14900号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「情報提示システム」(発明の名称)に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア.「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、情報配信装置から複数の個別端末装置に情報を配信し、個別端末装置を介して情報を提示する情報提示システムに関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、集合住宅に設置された情報提示システムは、各住戸にそれぞれ設置された複数の住戸端末(個別端末装置)と、管理室に設置され、各住戸端末に情報を配信する管理端末(情報配信装置)と、住戸端末および管理端末間を接続するシステム制御装置を備え、各住戸端末は管理端末から配信された情報を順次表示するようになっていた。このような情報提示システムにおいて、管理人は、管理端末を操作して、提示する必要が生じた情報から順次配信し、各住戸の住人は、住戸端末が有する操作手段を操作して、配信された順に情報を閲覧するようになっていた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の情報提示システムでは、管理人側から一方的に情報を送りつけるだけであり、各住戸の住人は閲覧する必要のない情報まで閲覧させられるという問題があった。また、提示すべき時間に情報が出力されないため、各住戸の住人はタイムリーに情報を閲覧することができないという問題があった。また、前もって情報を配信することができないため、管理人の勤務時間外には情報を提示することができないという問題があった。また、定期的に繰り返し提示すべき情報があった場合、管理人は繰り返し配信操作をしなければならないという問題があった。また、必要がなくなった情報が消去されないまま住戸端末に放置され、新たな情報を配信できなくなるという問題があった。また、誤って情報を消去してしまい、重要な情報を閲覧することができなくなるという問題があった。 【0004】本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、各住戸の住人が提示情報を効率よく閲覧することができる情報提示システムを提供するものである。」(2頁右欄?3頁左欄) イ.「【0020】図1は本発明に係わる情報提示システムの一実施形態を示すブロック図である。図1において、情報提示システムは、集合住宅に適用されており、集合住宅の各住戸に設置された複数の住戸端末(個別端末装置)10と、複数の住戸を管理する管理事務室に設置されて住戸端末に情報を配信する管理端末(情報配信装置)20と、伝送路1を介して各端末間の接続を制御するシステム制御装置30と、を備え、住戸端末10を介して各住戸に情報を提示するようになっている。なお、住戸端末10のそれぞれには、互いに異なる住戸番号が設定されており、管理端末20において所望の住戸番号が選択されると、システム制御装置30により、管理端末20は選択した住戸端末10と接続されるようになっている。 【0021】管理端末20は、所定の通信プロトコルを実行する送信手段21と、ディスプレイからなる表示手段22と、情報記録媒体から情報を読み込む読込手段(情報入力手段)23と、ディスク等からなる記録手段24と、CPUからなる制御手段25と、操作を行う操作手段(情報入力手段)26とを有している。住戸端末10に配信する掲示板情報(提示情報)は、操作手段26または読込手段23から入力され、一旦、記録手段24に記録されるようになっている。また、各掲示板情報の属性を示す属性情報は、操作手段26からの操作に基づいて、制御手段25が設定し、掲示板情報に対応付けられて記録手段24に記録されるようになっている。また、掲示板情報および属性情報は、表示手段22に表示し、配信する前に確認することができるようになっている。また、掲示板情報は属性情報とともに記録手段24から読み出されて、送信手段21により送信されるようになっている。 【0022】住戸端末10は、所定の通信プロトコルを実行する受信手段11と、ディスプレイからなる表示手段(情報出力手段)12と、報知音を鳴動(出力)する報知手段13と、ディスク等からなる記録手段14と、CPUからなる制御手段15と、タッチパネルを備えた操作手段16を有している。管理端末20から配信された掲示板情報および属性情報は、一旦、記録手段14に記録されるようになっている。制御手段15は、属性情報に基づいて掲示板情報を出力するか否か判定し、必要に応じて、表示手段12が掲示板情報を表示(出力)するようになっている。また、制御手段15は、属性情報に基づいて報知音を鳴動(出力)するか否か判定し、必要に応じて、報知手段13が報知音を鳴動するようになっている。また、制御手段15は、属性情報に基づいて掲示板情報を消去するか否か判定し、不要な掲示板情報および属性情報を記録手段14から消去するようになっている。また、操作手段16は、掲示板情報を選択するときに押す選択ボタン、掲示板情報を保存するときに押す保存ボタン、掲示板情報を消去するときに押す消去ボタン、掲示板情報の表示を中止するときに押す表示中止ボタンを有している。」(4頁左欄?4頁右欄) ウ.「【0030】また、自動表示・自動消去フィールド42は、図4に示すように、受信時自動的に表示するか否か示す情報42a、期日が来たら自動的に表示するか否か示す情報42b、定期表示コマンド受信で表示するか否かを示すとともに、どの定期表示コマンドを受信した場合に表示するかを示す情報(定期表示分類)42c、および、期日が来たら自動で消すか否か示す情報42dを有している。 【0031】なお、42bに「1:期日が来たら自動的に表示」を設定して掲示板情報を配信する場合には、図2の表示日時フィールド45に掲示板情報を表示する日時(出力日時)を設定する。また、42cに「1」以上(定期表示分類)を設定した場合、管理端末20は、定期表示コマンドを送信する際、42cに設定した定期表示分類を定期表示コマンドに付属させる。また、42dに「1:期日が来たら自動で消す」を設定して掲示板情報を配信する場合には、図2の消去日時フィールド46に掲示板情報を消去する日時を設定する。」(5頁右欄) エ.「【0037】図8および図9は本発明に係わる情報提示システムの一実施形態における受信時表示を示すフローチャートである。図1?図9を用いて受信時表示について説明する。 【0038】まず、図8において、管理端末が掲示板情報および属性情報を送信する(S11)。送信する掲示板情報は、図1の管理端末20において、操作手段26または読込手段23から予め入力され、記録手段24に記録されている。また、属性情報は、管理端末20において、操作手段26からの操作に基づいて、制御手段25が設定し、掲示板情報に対応付けられて記録手段24に記録されている。例えば、集合住宅の管理人が、各住戸に知らせる画像を読込手段23から入力し、画像に添付するメッセージを操作手段26から入力するとともに、操作手段26を操作して属性情報を設定させておく。また、管理人は、表示手段22で掲示板情報の内容を確認した後、操作手段26を操作して配信を指示する。記録手段24から掲示板情報および属性情報が読み出され、送信手段21が住戸端末10宛に掲示板情報および属性情報を送信する。なお、管理端末20と住戸端末10との接続はシステム制御装置30が行う。 【0039】次に、住戸端末10の受信手段11が掲示板情報および属性情報を受信する(S12)。次に、制御手段15が情報認識を行い(S13)、掲示板情報および属性情報を一旦記録手段14に記録し(S14)、属性情報の確認を行う(S15)。」(6頁左欄) オ.「【0041】また、制御手段15は、受信時表示するか否か判定する(S19)。具体的には、図4に示す42aの欄に「1:受信時自動的に表示」が設定されていた場合、図9において、制御手段15は掲示板情報の表示指示を行い(S31)、記録手段14から該当する掲示板情報を読み出し(S32)、表示手段12は掲示板情報を表示する(S33)。」(6頁左欄) カ.「【0045】また、操作手段16が操作され(S34)、表示中止ボタンが押された場合には、制御手段15は表示中止指示を行い(S38)、表示手段12は表示を中止する(S39)。」(6頁右欄) キ.「【0056】次に、住戸端末10の制御手段15は、自動消去する掲示板情報があるか否か判定する(S63)。具体的には、図4に示す42dの欄に「1:期日が来たら自動で消す」が設定され、かつ、受信した時刻情報と図2に示す消去日時46が適合する属性の掲示板情報がある場合、制御手段15は、掲示板情報の消去指示を行い(S65)、記録手段14から該当する掲示板情報を消去する(S66)。ここで、消去とは、掲示板情報のデータ全てを消去する必要はなく、必要が無くなった掲示板情報を表示しないように設定するとともに、上書き可に設定して新しく配信される情報を記録できるようにすればよい。」(7頁左欄) 引用文献1の摘記事項ア.?キ.の各記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、 a.摘記事項イ.の【0022】の「住戸端末10は、・・(中略)・・、ディスプレイからなる表示手段(情報出力手段)12と、・・(中略)・・を有している。」の記載から、引用文献1には、「表示手段を有した住戸端末」が記載されているといえる。 b.摘記事項イ.の【0022】の「管理端末20から配信された掲示板情報および属性情報は、一旦、記録手段14に記録されるようになっている。制御手段15は、属性情報に基づいて掲示板情報を出力するか否か判定し、必要に応じて、表示手段12が掲示板情報を表示(出力)するようになっている。」と、摘記事項オ.の【0041】の「「1:受信時自動的に表示」が設定されていた場合、図9において、制御手段15は掲示板情報の表示指示を行い(S31)、記録手段14から該当する掲示板情報を読み出し(S32)、表示手段12は掲示板情報を表示する(S33)。」と、摘記事項キ.の【0056】の「「1:期日が来たら自動で消す」が設定され、かつ、受信した時刻情報と図2に示す消去日時46が適合する属性の掲示板情報がある場合、制御手段15は、掲示板情報の消去指示を行い(S65)、記録手段14から該当する掲示板情報を消去する(S66)。ここで、消去とは、掲示板情報のデータ全てを消去する必要はなく、必要が無くなった掲示板情報を表示しないように設定するとともに、上書き可に設定して新しく配信される情報を記録できるようにすればよい。」の各記載より、引用文献1に記載された「住戸端末」は、「掲示板情報および属性情報を管理端末から受信して記録手段に記録させ、前記記録手段に記録されている前記掲示板情報と、前記属性情報の表示日時に基づいて前記掲示板情報を表示し、又は、表示しないようにさせ、、表示が終了した前記掲示板情報は上書き可に設定する制御手段とを備えた」といえる。 以上a.?b.を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 (引用発明1) 「表示手段を有した住戸端末において、 掲示板情報および属性情報を管理端末から受信して記録手段に記録させ、 前記記録手段に記録されている前記掲示板情報と、前記属性情報の表示日時又は消去日時に基づいて前記掲示板情報を表示し、又は、表示しないようにさせ、表示が終了した前記掲示板情報は上書き可に設定する制御手段とを備えた住戸端末。」 (2)引用文献2 当審拒絶理由で通知した特開2001-345767号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「情報表示システム及び表示端末」(発明の名称)に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。 ク.「【0006】そこで、本発明の目的は、複数の表示端末に表示されている広告等の情報を簡単な制御で消去できる情報表示システムを提供することにある。」(3頁左欄) ケ.「【0060】(表示の消去、図13?18参照)前記電子会議システムにおいては、所定条件が発生すると表示端末の表示を消去すると同時に送信されたデータをも画像メモリ73から消去する処理を実行する。送信情報が会議主催者が秘密にしたい情報であるとき、このような処理が行われる。以下の説明において、「表示消去」とはデータ自体をも消去することを意味する。 【0061】表示消去処理は、例えば、サーバ52から消去指示が送信されたとき、データの送信から所定時間が経過したり、所定時刻が経過したとき、表示端末60が通信部72’(図12参照)から分離されたとき、表示端末60の電源が遮断されたとき、あるいは、電源74の電力残量が少なくなったときに実行される。以下、第1?5の消去処理の手順について説明する。 【0062】(第1の消去処理、図13参照)第1の消去処理では、サーバ52からの指示に基づいて消去を実行する。即ち、オペレータは消去処理のタイミングであると判断すると、サーバ52に消去指示を入力する。そして、サーバ52の送信処理において、図13(A)に示すように、ステップS1で送信情報が表示データか消去指示かを判定する。表示データであればステップS2で該表示データを各表示端末60に送信する。一方、消去指示であればステップS3で消去指示を各表示端末60に送信する。 【0063】各表示端末60においては、図13(B)に示すように、受信のルーチンで、まず、ステップS5で受信情報が表示データか消去指示かを判定する。表示データであればステップS6で表示パネル61の表示を更新する。一方、消去指示であればステップS7で表示を消去する。」(6頁左欄?6頁右欄) 引用文献2の摘記事項ク.?ケ.の各記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。 (引用発明2) 「情報表示システムで用いられる表示端末において、サーバから配信された広告情報を表示した後に、消去すべき広告情報が特定された消去指令をサーバから受信すると、表示している広告情報の表示消去処理を行うこと。」 (3)周知技術1 特開2003-316999号公報(以下、「引用文献10」という。)(段落【0077】)、特開2009-153328号公報(以下、「引用文献11」という。)(段落【0068】)に記載されるように、「情報の配信元から配信された情報を表示した後に、その情報に対する表示終了指令を情報の配信元から受信してその表示を終了すること。」(以下、「周知技技術1」という。)は、表示制御にかかる周知技術である。 (4)周知技術2 特開平2-39319号公報(以下、「引用文献12」という。)(3頁左上段)に記載されるように、「表示開始の指令を情報の配信元から受信して表示を開始すること。」(以下、「周知技術2」という。)は、表示制御にかかる周知技術である。 (5)周知技術3 特開平8-242278号公報(以下、「引用文献3」という。)(段落【0023】)、特開2003-219016号(以下、「引用文献4」という。)(段落【0005】)に記載されるように、「所定期間以上使用されていないデータを、記憶手段から自動的に選択し消去すること」(以下、「周知技術3」という。)は、データの消去に関する周知技術である。 (6)対比・判断 本願発明1と引用発明1とを対比する。 f.本願発明1の「生活環境情報」に関し、本願明細書段落【0017】の「生活環境情報は、・・・(中略)・・・、具体的には、掲示板情報や、地域ニュースなどである。」の記載より、引用発明1の「掲示板情報」は、本願発明1の「生活環境情報」に含まれる。 また、引用発明1の「表示手段」は、摘記事項エ.の【0038】の「例えば、集合住宅の管理人が、各住戸に知らせる画像を読込手段23から入力し、」の記載から、「表示手段」が、画像表示機能を有することは明らかである。 よって、引用発明1の「表示手段を有す住戸端末」は、本願発明1の「画像表示機能を有する住宅情報盤」に相当する。 また、引用発明1の「管理端末」は、管理室に配置され、各住戸端末に掲示板情報を配信するものなので、本願発明1の「情報配信装置」に相当する。 g.引用発明1の「掲示板情報および属性情報を管理端末から受信して記録手段に記録させ」る「制御手段」は、本願発明1の「生活環境情報を情報配信装置から受信して記憶部に記憶させる情報受信部」に相当する。 h.上記fを参酌すると、引用発明1の「属性情報の表示日時又は消去日時」と、本願発明1の「表示開始、終了指令を情報記憶装置から受信する」とは、「情報配信装置から受信する表示制御命令又は表示終了命令」である点で共通する。 したがって、引用発明1の「記録手段に記録されている掲示板情報と、属性情報の表示日時又は消去日時に基づいてその掲示板情報を表示し、又は、表示しないようにさせ」る「制御手段」と本願発明1の「記憶部に記憶させている生活環境情報に対する表示開始、終了指令を情報配信装置から受信すると、その生活環境情報の表示を開始又は終了させる表示制御部」は、「記憶部に記憶されている生活環境情報に対する、情報配信装置から受信する表示制御命令又は表示終了命令に基づいて、その生活環境情報の表示を開始又は終了させる表示制御手段」という点で共通する。 i.引用発明1の「表示が終了した掲示板情報は上書き可に設定する制御手段」と、本願発明1の「表示終了させている生活環境情報に対する表示開始指令を情報配信装置から所定時間以上受信しなかったときに、その生活環境情報を自動的に消去させる記憶制御部」とは、「表示終了させている生活環境情報について処理する記憶制御手段」という点で共通する。 したがって、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で一致し、相違する。 (一致点) 「画像表示機能を有した住宅情報盤において、 生活環境情報を情報配信装置から受信して記憶部に記憶させる情報受信部と、 記憶部に記憶されている生活環境情報に対する、情報配信装置から受信する表示制御命令又は表示終了命令に基づいて、その生活環境情報の表示を開始又は終了させる表示制御手段と、 表示終了させている生活環境情報について処理する記憶制御手段とを備えた住宅情報盤。」 (相違点1)一致点の「記憶部に記憶されている生活環境情報に対する、情報配信装置から受信する表示制御命令又は表示終了命令に基づいて、その生活環境情報の表示を開始または終了させる表示制御手段」について、本願発明1が、「記憶部に記憶させている生活環境情報に対する表示開始、終了指令を情報配信装置から受信すると、その生活環境情報の表示を開始又は終了させる」のに対して、引用発明1が、「記録手段に記録されている掲示板情報と、属性情報の表示日時又は消去日時に基づいてその掲示板情報を表示し、又は、表示しないようにさせ、」る点。 (相違点2)一致点の「表示終了させている生活環境情報について処理する記憶制御手段」について、本願発明1が、「表示終了させている生活環境情報に対する表示開始指令を情報配信装置から所定時間以上受信しなかったときに、その生活環境情報を自動的に消去させる記憶制御部」であるのに対して、引用発明1では、「表示が終了した掲示板は上書き可に設定する制御手段」である点。 事案に鑑み(相違点2)について検討する。 上記「(5) 周知技術3」に記載した「所定期間以上使用されていないデータを、記憶手段から自動的に選択し消去すること。」は、データの消去に関する周知技術である。しかしながら、引用発明1に周知技術3を適用したとしても、「表示終了させている生活環境情報に対する表示開始指令を、情報配信装置から所定時間以上受信しなかったときにその生活環境情報を自動的に消去させる」点までを、当業者が容易に想到し得たということはできない。また、当審拒絶理由で引用した引用発明2、周知技術1、周知技術2にもその点は記載も示唆もされておらず、本願出願時の技術常識でもなく、当業者に自明のものでもない。 よって、本願発明1は、引用文献1および引用文献2に基づいて、周知技術1?周知技術3を参酌することにより、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 また、さらに、本願発明1の発明特定事項を含み、さらに限定したものである本願発明2ないし本願発明6についても、引用文献1および引用文献2に基づいて、周知技術1?周知技術3を参酌することにより、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (7)小括 本願発明1ないし本願発明6は、当審拒絶理由によって特許を受けることができないとはいえない。 5.原審拒絶理由 (1)原審拒絶理由の概要 平成26年7月31日付けの拒絶理由(以下、「原審拒絶理由」という。)の概要は、以下のとおりである。 「【理由1】この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項1-2,4,6-8 ・引用文献1-3 ・備考 引用文献1には、表示手段を有する住戸端末(本願発明の「住宅情報盤」に相当)において、掲示板情報及び属性情報(本願発明の「生活環境情報」に相当)を管理端末(本願発明の「情報配信装置」に相当)から受信して記録手段に記録し、定期表示コマンドの受信により該掲示板情報を表示し、所定のタイミングで消去する旨記載されている(特に、【0055】-【0065】を参照)。 引用文献2には、公開日及び非公開日等の情報表示期間を設定した生活情報盤で表示される情報が記載されており(特に、【0034】を参照)、引用文献1に記載された発明において引用文献2に記載の技術を採用し、掲示板情報に情報表示期間を設けることは当業者が容易になし得たことである。その際に、情報表示期間に応じて表示・非表示を制御することは適宜なし得たことである。 また、引用文献3には、管理端末が所定日時を検出し、管理端末から住戸端末に指示コマンドを送信することで掲示板情報に所定操作をさせる技術が記載されており(特に、【0014】-【0020】を参照)、引用文献1に記載された発明において引用文献3に記載された技術を採用し、管理端末が所定日時を検出し、管理端末から住戸端末に指示コマンドを送信することで掲示板情報に所定操作をさせることは、当業者が容易になし得たことである。 してみれば、請求項1-2,4,6-8に係る発明は引用文献1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・請求項3 ・引用文献1-5 ・備考 所定期間以上使用されていない情報を消去することは、本願出願時に周知の事項である(例えば、引用文献4の【0023】、引用文献5の【0005】を参照)。 ・請求項5 ・引用文献1-6 ・備考 ・・・(中略)・・・ 拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開2002-014900号公報 2.特開2004-128624号公報 3.特開2002-016624号公報 4.特開平8-242278号公報 5.特開2003-219016号公報 ・・・(中略)・・・ 」 (2)原審の拒絶査定の備考 原審の拒絶査定の備考の概要は以下のとおりである。 「備考 平成26年10月20日付け手続補正書においては明細書に対する補正のみを行っている。以下、先の拒絶理由通知時における請求項1-8に係る発明について検討する。 <第29条第2項(理由1)について> 出願人は、平成26年10月20日付け意見書において、引用文献1-3には、情報配信装置から表示終了指令を送信して生活環境情報の表示を終了させる構成が教示されておらず、本願発明は特許性を有する旨主張している。 しかしながら、引用文献3には、「送信された掲示版情報については、管理手段17が消去日時になったことを検出し、通信手段11が消去指示コマンドを送信する」ことが記載されている。 してみれば、先の拒絶理由通知で説示したとおり、請求項1-8に係る発明は引用文献1-6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、上記主張は採用することができない。 以上のとおり、出願人の主張についても検討したが、本願発明は特許を受けることができないものである。 引用文献等一覧 ・・・(中略)・・・ 」 6.当審における原審拒絶理由についての判断 (1)引用文献 原審の拒絶理由における「引用文献1」、「引用文献4」、「引用文献5」は、それぞれ、当審拒絶理由の「引用文献1」、「引用文献3」、「引用文献4」と対応するものであり、「4.当審拒絶理由についての当審の判断」の項中の「(6)対比・判断」の項中の「(1)引用文献1」「(5)周知技術3」で認定したとおりである。 さらに、原審の拒絶理由で通知した特開2004-128624号公報(以下、「原審引用文献2」という。)(段落【0034】、【0046】)には、「情報サーバに保存された各種情報について、生活情報盤への公開日/非公開日を設定することにより、情報表示有効期間を設定し、集合住宅内外からのサービス情報の登録・削除が行える集合住宅インターホンシステム。」が記載されている。 さらに、原審の拒絶理由で通知した特開2002-016624号公報(以下、「原審引用文献3」という。)(段落【0014】、【0015】【0020】)には、「住戸端末において記憶されている掲示板情報について、管理手段が消去日時になったことを検出し、住戸端末に消去指示コマンドを送信することによって、該掲示板情報を消去する情報提示システム。」が記載されている。 (2)対比・判断 本願発明1と引用発明1との対比は、「3.当審拒絶理由通知についての当審の判断」の項中の「(6)対比・判断」の項で検討したとおりである。 本願発明1の(相違点2)に相当する発明特定事項については、原審の拒絶理由で通知されたいずれの文献にも記載も示唆もされておらず、本願出願時の技術常識でも、当業者に自明の事項でもない。 したがって、本願発明1ないし本願発明6は、原審拒絶理由で通知された引用文献に基づいて、当業者が容易に想到し得たものといえない。 7.むすび 以上のとおり、原審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することができない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-11-08 |
出願番号 | 特願2011-64780(P2011-64780) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04M)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 岩田 淳 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
山中 実 林 毅 |
発明の名称 | 住宅情報盤および集合住宅用インターホンシステム |
代理人 | 中井 宏行 |
代理人 | 奥村 公敏 |
代理人 | 沖本 周子 |