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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1321164
審判番号 不服2015-15190  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-13 
確定日 2016-11-02 
事件の表示 特願2013-518368「自己較正リモートイメージング及びデータ処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月 4日国際公開、WO2012/134419、平成26年 5月12日国内公表、特表2014-511155〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯及び本願発明
1 手続の経緯
本件出願は、2011年(平成23年)3月31日を国際出願日とする出願であって、平成26年3月12日付けで手続補正がなされ、平成26年12月3日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対し、平成27年3月24日付けで手続補正がなされたが、平成27年4月10日付け(発送日同年4月14日)で拒絶査定がなされた。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成27年8月13日付けで請求された拒絶査定不服審判であり、請求と同時に手続補正がなされた。

2 本願発明
平成27年8月13日付け手続補正は、請求項を削除する補正である。
本願の請求項1?15に係る発明は、平成27年8月13日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?15に記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項4に係る発明は、次のとおりのものである(この発明を以下「本願発明」という。)。

(本願発明)
(A)ターゲット領域に対して配置された移動体に固定された剛性取付プレートと、
(B)取付プレートに固定され、内部に少なくとも2つの画像センサが配置された第1剛性取付ユニットと、
を備えており、
(C)第1画像センサと第2画像センサの各々は、第1取付ユニット及び取付プレートのアパーチャを通る焦点軸を有し、第1画像センサと第2画像センサの各々は、ピクセルの第1データアレイを生成し、ピクセルのデータアレイの各々は、少なくとも2次元であり、第1画像センサと第2画像センサは、ターゲット領域において第1画像重なり領域を有するようにオフセットされており、第1画像センサの画像データは、第1画像重なり領域において第2画像センサの画像データを両断し、
(D)第1取付ユニット内に配置される第3画像センサをさらに備えており、第3画像センサは、第1取付ユニット及び取付プレートのアパーチャを通る焦点軸を有し、第3画像センサは、ピクセルの第2データアレイを生成し、ピクセルの第2データアレイは少なくとも2次元であり、
(E)第1取付ユニット内に配置される第4画像センサをさらに備えており、第4画像センサは、第1取付ユニット及び取付プレートのアパーチャを通る焦点軸を有し、第4画像センサは、ピクセルの第3データアレイを生成し、ピクセルの第3データアレイは少なくとも2次元であり、第3画像センサと第4画像センサは、ターゲット領域において第2画像重なり領域を有するようにオフセットされており、第3画像センサの画像データは、第2画像重なり領域において第4画像センサの画像データを両断する
(F)画像センサシステム。

((A)?(F)は、当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件A」等という。)

第2 引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明
1 引用文献1の記載事項
原査定における拒絶の理由に引用された特表2006-507483号公報(以下「引用文献1」という。)には、「移動体によるデータの収集及び処理システム」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。
(下線は当審が付与した。)

「【0013】
移動体(vehicle)によるデータ収集及び処理システム(100)を図1に示している。本発明の追加の態様と実施例を図2及び図18に示している。システム(100)は、1又は2以上のコンピュータコンソール(102)を含んでいる。コンピュータコンソールは、移動体とシステムの両方の操作を制御するための1又は2以上のコンピュータ(104)を含んでいる。コンピュータコンソールの機能の例として、データ収集及び処理システムに連繋可能な制御用デジタルカラーセンサシステムがあり、ディスプレイデータの操縦者への提供、衛星が生成したGPSの毎秒パルス数(pulse-per-second; PPS)事象トリガー(例えば20PPS以上)の調整、データロギング、センサーの制御及び調整、エラー事象の調査及び警告、写真の記録及びインデックス、移動体のナビゲーションを自動化する飛行計画能力に関するデータの格納及び処理、関連情報のリアルタイムディスプレイの提供が行われる。制御コンピュータコンソールと移動体の自動操縦制御部との間の通信インターフェースは、移動体の移動経路をリアルタイムで実際に制御する能力を付与する。この結果、移動体の経路の制御は、人間が成し得る制御よりも正確である。これらの機能はすべて、GPS PPSシグナルと同期され、測定装置の様々な電気レイテンシ(electrical latencies)を考慮した様々なコンピュータプログラムを用いて達成されることができる。
【0014】
1又は2以上の差動型衛星利用測位システム(DGPS)(106)は、システム(100)に組み入れられている。衛星利用測位システム(106)は、移動体及びシステムの動作中、正確な飛行経路をナビゲートし決定するために使用される。これを実行するために、衛星利用測位システム(106)は、該システムからの情報が、飛行を中断することなく、獲得及び処理されるように、コンピュータコンソール(102)に連繋されている。ゼロ又は1以上のGPSユニットは、GPSの衛星に起因する1秒以下のエラーを記録し、システム(100)の精度を後で修正(back correct)できるように、既知の監視位置に配置される。地上の制御位置を不要にするため、GPS及び/又は地上ベースの測位手段を用いることもできる。この技術により、データ収集用移動体の位置精度は、1秒以下の単位で大幅に向上する。
【0015】
1又は2以上のAMU(108)もコンピュータコンソール(102)に通信可能に連繋され、リアルタイムでヨー(yaw)、ピッチ及びロールの情報を提供し、この情報は、データの獲得時にビークルの姿勢を正確に決定するために使用される。この姿勢測定装置(AMU)(例えばApplanix POS AV)は、3つの高性能光ファイバージャイロを使用しており、1つのジャイロは、各々がヨー、ピッチ及びロールを測定するために用いられる。他の製造業者のAMU、他の慣性計測装置を使用したAMUもまた、同じように使用することができる。さらに、AMUは、移動体の瞬間姿勢を求めるために用いられ、システムには、AMUリーディング時の統計誤差に対して故障許容力(fault-tolerance)がもたらされる。1又は2以上の多周波DGPSレシーバ(110)を、AMUに接続することもできる。多周波DGPSレシーバ(110)は、三次元空間で遠隔センサープラットフォームの位置をより正確に求めることができるように、AMUのヨー、ピッチ及びロールの姿勢のデータと一体化されることができる。さらに、測地系の北方向は、連続DGPS位置によって作成されたベクターによって決定され、GPS SS信号と同期する形で記録される。
【0016】
アパーチャから観察される標的の画像を生成するための1又は2以上のカメラアレイアセンブリ(112)も、1又は2以上のコンピュータコンソール(102)に通信可能に接続されている。カメラアレイアセンブリ(112)は、以下に詳述するが、データ収集及び処理システムに対し、高解像度、高精度プログレッシブスキャン又はラインスキャンによるカラーデジタル写真を獲得能力付与する。
【0017】
システムはまた、DC電源と調節装置(114)を含んでおり、前記調節装置は、DC電力を調節すると共に、DC電力をシステムに電力を供給するためのAC電力に変換する。システムは、ナビゲーションディスプレイ(116)をさらに含んでおり、該ディスプレイは、移動体を操縦(機内或いは遠隔)することにより、使用される飛行計画に対するビークル位置を映像表示し、水平面及び垂直面内で精密な飛行経路が可能となる。システムはまた、LIDAR、SAR(118)又は三次元高さ/起伏(elevation/relief)データを獲得するための前方及び後方傾斜カメラを具えるEMUモジュールを含んでいる。EMUモジュール(118)は、レーザーユニット(120)、EMU制御装置(122)及びEMU制御コンピュータ(124)を含むことができる。また、システムに適した熱的環境を提供するために、例えば、固体(solid state)冷却モジュールのような温度調節装置を、必要に応じて配備することもできる。
【0018】
システムはまた、コンピュータコンソール(102)に収容されたモザイク作成モジュール(mosaicing module)(図示せず)を含んでいる。モザイク作成モジュールは、以下で詳述するが、衛星利用測位システム(106)、AMU(108)及びカメラシステム(112)によって獲得されたデータを収集し、そのデータを使用可能なオルソマップ(orthomap)に処理する能力をシステムに提供する。」

「【0021】
図2は、本発明の他の実施例を示している。図2は、カメラアレイアセンブリ(112)を、より詳細に示している。図示のように、カメラアレイアセンブリ(112)は、画像を、後方傾斜、前方傾斜及び鉛直(nadir)位置から取得することができる。図3は、本発明のカメラアレイアセンブリをより詳細に示している。図3は、標的(302)(例えば地形)の上の空中にカメラアレイアセンブリ(300)を配備している。例示であるため、アセンブリ(300)の相対的なサイズ並びに該アセンブリと地形(302)との相対的距離は、縮尺どおり示されていない。カメラアレイアセンブリ(300)は、ハウジング(304)を具えており、ハウジング内には、イメージングセンサー(306)(308)(310)(312)(314)が、凹状湾曲軸(316)に沿って配置されている。軸(316)の曲率半径は、大幅な変更が可能であって、軸(316)の屈曲度を非常に小さくすることもできるし、非常に大きくすることもできる。或いはまた、軸(316)は、完全な線形で、屈曲は全く無くてもよい。イメージングセンサー(306)(308)(310)(312)(314)は、取付部材(318)により、ハウジング(304)へ直接又は間接的に取り付けられる。取付部材(318)は、固定又は可動式で、永久的又は一時的な幾つかの接続装置を含んでいる。例えば、部材(318)は、単純な溶接でよいし、取外し可能なクランプ装置でもよいし、電気機械的に制御されたユニバーサルジョイントでもよい。」

「【0026】
図3に示されるように、ハウジング(304)は、単純形状の筺体であって、その内部にイメージングセンサー(306)(308)(310)(312)(314)が配置される。図3は、カメラが5つのアレイを示しているが、システムは、カメラのセンサー数が1から任意の数に至るまで、等しく機能することができる。センサー(306)?(314)は、取付部材(318)により、ハウジング(304)の対向する壁の間に配置された1本の横断部材にまとめて取り付けられるか、又は複数の横断部材に個々に取り付けられる。他の実施例として、ハウジング(304)自体が、凹状に屈曲した支持用横断部材を構成するようになし、イメージングセンサー(306)?(314)は、部材(318)を介して前記横断部材に取り付けられることもできる。さらに他の実施例として、ハウジング(304)を、筐体と支持用横断部材の複合的な組合せとすることもできる。ハウジング(304)は、イメージングセンサーと標的(302)との間の表面に、アパーチャ(aperture)(320)がさらに形成されている。航空機の具体的型式によっては、アパーチャ(320)は、空隙だけでもよいし、ハウジング(304)内の環境的完全性を維持するために、保護用スクリーン又は窓を含むこともできる。保護用の透明プレートがセンサーに用いられる場合、センサーデータの質を向上させるために、前記プレートには特別なコーティングを施すことができる。所望により、アパーチャ(320)には、センサーによって記録された画像の性質を向上又は変更するために、レンズ又はその他の光学デバイスを含むこともできる。アパーチャ(320)は、センサー(306)?(314)が、地形(302)上の標的領域(322)に対して適切な視線を有することができるサイズ及び形状に形成される。
【0027】
イメージングセンサー(306)?(314)は、全てのセンサーの焦点軸が、アパーチャ(320)が境界をなす交差領域の中で集束し互いに交わるように、ハウジング(304)の内部にハウジングに沿って配置される。収集される画像データの種類、使用される具体的なイメージングセンサー、使用される他の光学要素又は機器によっては、交差領域又は収束位置をアパーチャ(320)の上か下に変位させることが必要となることもあるし、又、それが望ましいこともある。イメージングセンサー(306)?(314)は、望ましくは等しい角度間隔で互いに離れている。イメージングセンサー間の正確な角度は、使用されるセンサーの数及び収集される画像データの種類によって大きく異なる。必要に応じて、所望の画像の位置をずらしたり整列できるように、イメージングセンサー間の角度間隔を等しくないようにすることもできる。使用されるセンサーの数及びアレイの特定の形状に応じて、全てのセンサーの焦点軸は、全て同じ位置で交差することもできるし、或いは複数の位置で交差することもできる。なお、全てのセンサーは互いに非常に近接し、アパーチャ(320)によって規定される交差領域の中にある。
【0028】
図3に示すように、イメージングセンサー(310)は、ハウジング(304)内で軸(316)に沿って中央に配置されている。イメージングセンサー(310)の焦点軸(324)は、センサーの視線が領域(322)の画像領域(326)と揃うように、ハウジング(304)と直交している。イメージングセンサー(308)は、ハウジング(304)内で、軸(316)に沿ってイメージングセンサー(310)の隣りに配置されている。イメージングセンサー(308)の配置は、その視線が領域(322)の画像領域(328)と一致するように、また、その焦点軸(330)が集束し、アパーチャ(320)が境界をなす領域内で軸(324)と交差するように調整されている。イメージングセンサー(312)は、ハウジング(304)内で、イメージングセンサー(310)の隣りでセンサー(308)とは反対側に軸(316)に沿って配置される。イメージングセンサー(312)の配置は、その視線が領域(322)の画像領域(332)と一致するように、さらにその焦点軸(334)が集束し、アパーチャ(320)が境界をなす領域内で軸(324)(330)と交差するように調整されている。イメージングセンサー(306)は、ハウジング(304)内で、軸(316)に沿ってセンサー(308)の隣りに配置されている。イメージングセンサー(306)の配置は、その視線が領域(322)の画像領域(336)と一致するように、また、その焦点軸(338)が集束し、アパーチャ(320)が境界をなす領域内で他の焦点軸と交差するように調整されている。イメージングセンサー(314)は、ハウジング(304)内で、センサー(312)の隣りでセンサー(306)とは反対側に軸(316)に沿って配置される。イメージングセンサー(314)の配置は、その視線が領域(322)の画像領域(340)と一致するように、さらにその焦点軸(344)が集束し、アパーチャ(320)が境界をなす領域内で他の焦点軸と交差するように調整されている。
【0029】
イメージングセンサ(306)?(314)は、例えば、個別領域スキャンカメラ、ラインスキャンカメラ、赤外線センサー、高スペクトルセンサー及び/又は地震感知器を含む数多くのデジタルイメージングデバイスを含むことができる。各センサーは、個別のイメージングデバイスを含むこともできるし、センサー自体がイメージングアレイを含むこともできる。イメージングセンサー(306)?(314)は、全てが同じ性質であることが望ましいが、様々なイメージングデバイスの組合せでもよい。以下の説明では、便宜上、イメージングセンサ(306)?(314)は、夫々、カメラ(306)?(314)として記載する。
【0030】
大型フィルム又はデジタルカメラでは、作像上の典型的な問題の原因は、レンズの歪みである。個別レンズの各々は、歪み率を決定するために、注意深く較正されなければならない。本発明の一実施例では、レンズの角度幅が17度よりも小さなデジタルカメラを使用した。これは、歪みの問題を効率的且つ安価に解決する。
【0031】
カメラ(306)?(314)は、各カメラの焦点軸が、アパーチャ(308)に集束し、焦点軸(324)と交差し、その視野がアレイの夫々の位置と対向する標的位置と同一線上に揃うように、ハウジング(302)の中で軸(316)に沿って配置され、カメラと作像すべき標的との間で「斜視(cross-eyed)」の網膜的関係を生ずる。カメラのアレイアッセンブリ(300)は、画像領域(326)(328)(332)(336)(340)の隣り合う境界が若干重なるように構成されている。
【0032】
取付部材(318)が永久的に固定されている(例えば溶接)場合、アパーチャ(320)、カメラとそれらの視線との空間的関係は、画像領域(326)(328)(332)(336)(340)の空間的関係と同様、固定されたままである。そのような構造は、例えば衛星監視のように、カメラアレイアセンブリ(300)が、領域(322)から本質的に一定の距離に維持される用途に好ましい。カメラの位置と調整は、領域(326)(328)(332)(336)(340)が、領域(322)の全体をイメージングできるように設定される。取付部材(318)が一時的な固定又は調節可能である場合、画像領域(326)(328)(332)(336)(340)が狭く又は広くなるように移動できるように、カメラの位置又は配列を、手操作又は遠隔からの自動操作により選択的に調節できることが好ましく、これによって、カメラアレイアセンブリ(300)によって収集された画像の質を向上させたり、変えることができる。
【0033】
カメラ(310)は、主カメラとして表される。カメラ(310)の画像面(326)は、基準面(plane of reference)となる。他のカメラ(306)(308)(312)(314)の向きは、基準面に関して測定される。各カメラの相対的な向きは、カメラの画像面が基準面と平行になるように回転させるのに必要なヨー、ピッチ及びロールの角度に関して測定される。回転の順序は、ロール、ピッチ、そしてヨーである。
【0034】
図2[審決注:「図4」の誤記]は、カメラ(306)?(314)によって夫々撮影される領域(326)(328)(332)(336)(340)の画像を上から見た図である。この場合も先と同様、「斜視(cross-eyed)」の配置であるため、領域(336)の画像はカメラ(306)によって撮影され、領域(340)の画像はカメラ(314)によって撮影されるという具合である。本発明の一実施例において、中央のカメラ(310)によって撮影された画像以外の画像は、透視変換(perspective transformation)した後は台形でなる。カメラ(306)?(314)は、軸(316)に沿ってアレイを形成し、この軸は、殆どの場合が垂直で下向きである。他の実施例において、カメラの第2アレイは、カメラ(306)?(314)のアレイと同じ様に構成され、カメラの第1アレイに対して斜めから見た図、「ヘッドアップ(heads-up)」斜視図となるように揃えられる。「ヘッドアップ」カメラアレイアセンブリの水平軸からの傾斜角度は、ミッションの目的及びパラメータによって異なるが、25?45度の角度が一般的である。その他の実施例は、カメラアレイの実装は様々であるが、同じ様に本発明に含まれる。そのような実施例において、カメラの相対的な位置と姿勢は、本発明に基づく画像処理を容易にするために、測定及び較正が正確に行われる。」

「【0072】
本発明は、出力品質を向上させるために、側方向をある程度オーバーサンプリングする。図11は、本発明の特定の実施例に基づくもので、移動体から見た側方向オーバーサンプリングのパターン(1100)で、最小の側方向オーバーサンプリング(lateral oversampling)を示している。この実施例では、中央カメラに割り当てられた中央鉛直領域(1102)は、鉛直領域左側(1104)及び鉛直領域右側(1106)とほんの僅かだけ重なり、重なり部は最小である。図12は、本発明の特定の実施例に基づくもので、移動体から見た側方向オーバーサンプリングのパターン(1200)で、より大きな側方向オーバーサンプリングを示している。中央カメラに割り当てられた中央鉛直領域(1202)は、鉛直領域左側(1204)及び鉛直領域右側(1206)とかなり重なっている。
【0073】
図11及び図12に示される側方向オーバーサンプリングを使用することに加えて、本発明はまた、フライトラインのオーバーサンプリングも同様に採用する。図13は、本発明の特定の実施例に基づくもので、移動体から見たフライトラインのオーバーサンプリングパターン(1300)の例示であって、フライトラインのある程度のオーバーラインで、最小の側方向オーバーサンプリングを示している。中央の鉛直領域(1302)及び(1304)は、フライトラインに沿って互いに重なるが、鉛直領域の左側領域(1306)(1308)又は鉛直領域の右側領域(1310)(1312)とは、側方向で重ならない。
【0074】
図14は、本発明の特定の実施例に基づくもので、移動体から見たフライトラインのオーバーサンプリングを例示したもので、大きなフライトラインのオーバーサンプリングと、大きな側方向オーバーサンプリングを示している。中央の鉛直領域(1402)?(1406)の各々は、鉛直領域の左側領域(1408)?(1412)及び鉛直領域の右側領域(1414)?(1418)と、互いに大きく重なっていることがわかる。鉛直領域の左側領域(1408)?(1412)は、鉛直領域の右側領域(1414)?(1418)と同じように、互いに重なっている。それゆえ、表面上の各位置は、少なくとも2回以上、場合によっては4回もサンプリングされる。この技術では、異なるカメラセンサーによって2回又はそれ以上覆われる画像の領域において、全体で解像度を4倍にするために、側方向(経路を横切る方向)と、フライトラインの方向(経路に沿う方向)の両方向で、画像の解像度を倍増させることが可能である。実際には、画像/センサーの解像度の向上は、各寸法において2倍より幾分少なく、各寸法でおよそ40%であり、1.4×1.4=約2倍である。これは、サブピクセルの排列/配向の統計的変動によるものである。事実上、ピクセルのグリッドは、上に重ねられたピクセルグリッドから正確に等距離であることは殆どない。非常に精密な側方向カメラセンサーの配列が、サブピクセルレベルで行われた場合、画像解像度の4倍増が実現される。
【0075】
図15は、本発明の特定の実施例に基づくもので、移動体から見た累進的拡大パターン(progressive magnification pattern)(1500)を示している。中央の鉛直領域(1502)は、その左縁部と右縁部が、夫々、鉛直領域左の内側領域(1504)及び鉛直領域右の内側領域(1506)と境界を有している。鉛直領域左の内側領域(1504)は、その左縁部が鉛直領域左の外側領域(1508)と境界を有する一方、鉛直領域右の内側領域(1506)は、その右縁部が鉛直領域右の外側領域(1510)と境界を有している。なお、これらの領域は、重なりとオーバーサンプリングの程度が互いに最小であることを示していることに留意されるべきである。
【0076】
図16は、本発明の特定の実施例に基づくもので、移動体から見た累進的拡大パターン(1600)を示している。中央の鉛直領域(1602)は、その左縁部と右縁部が、夫々、鉛直領域左の内側領域(1604)及び鉛直領域右の内側領域(1606)と境界を有している。鉛直領域左の内側領域(1604)は、その左縁部が鉛直領域左の外側領域(1608)と境界を有する一方、鉛直領域右の内側領域(1606)は、その右縁部が鉛直領域右の外側領域(1610)と境界を有している。上記の如く、これらの領域は、重なりとオーバーサンプリングの程度が互いに最小であることを示していることに留意されるべきである。鉛直領域(1604)?(1610)の各々はその内部に、グレーで陰影を付けて示された中央画像領域(1614)?(1620)がある。」

「【図1】



「【図3】



「【図4】



2 引用文献1に記載された発明
引用文献1の段落【0013】?【0017】には、「移動体(vehicle)によるデータ収集及び処理システム(100)」が記載され、当該システムは、「アパーチャから観察される標的の画像を生成するための1又は2以上のカメラアレイアセンブリ(112)」(段落【0016】)を備えている。
図3は、カメラアレイアセンブリの詳細であり(段落【0021】)、『ハウジング内部にイメージングセンサーが配置されている』(段落【0026】)。
「図3は、カメラが5つのアレイを示しているが、システムは、カメラのセンサー数が1から任意の数に至るまで、等しく機能することができる」(段落【0026】)から、引用文献1に記載された発明として、『隣り合う4つのセンサが配置されているカメラアレイアセンブリ』として認定する。4つのセンサは、第1、第2、第3、第4センサといえる。
ハウジング(304)は、イメージングセンサーと標的(302)との間の表面に、アパーチャ(320)が形成され(段落【0026】)、アパーチャ(320)は、センサー(306)?(314)が、地形(302)上の標的領域(322)に対して適切な視線を有することができるサイズ及び形状に形成され(段落【0026】)、イメージングセンサーは、全てのセンサーの焦点軸が、アパーチャ(320)が境界をなす交差領域の中で集束し互いに交わるように、ハウジング(304)の内部にハウジングに沿って配置される(段落【0027】)から、「第1、第2、第3、第4イメージングセンサーは、ハウジングのアパーチャを通る焦点軸を有する」(以下「構成A」という。)。
図1をみると、タイトルとして「LIDARを有する機内搭載捕獲構造」と記載され、「LIDAR制御ユニット」の下に「航空機DC電源」が記載されているから、図1の「カメラアレイ」は、移動体といえる航空機内にある。そして、図1をみると、「カメラアレイ(112)」は「レーザユニット(120)」とともに横長の長方形上に設置されていることがみとれる。
横長の長方形のものは『プレート』といえ、図には明記されていないが、『移動体(航空機)に固定されている』ことは明らかであり、そして、『移動体は、地形上の標的領域に対して配置される』ものである(段落【0026】)。
また、図1における「カメラアレイ」は、上記「プレート」の下から、図3に示されているような視線が記載されているから、上記「プレート」にも「アパーチャがある」ことがみとれる。
そうすると、ハウジング及びプレートにアパーチャがあるから、上記構成Aは、『第1、第2、第3、第4イメージングセンサーは、ハウジング及びプレートのアパーチャを通る焦点軸を有する』といい得る。
カメラアレイセンブリは、画像領域の隣り合う境界が重なるように構成されている(段落【0031】、【0034】、図4)から、『各インメージングセンサーは、2次元のピクセルアレイを有し、画像領域の隣り合う境界が重なるように構成されている』。

以上まとめると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
(a)カメラアセンブリは、地形上の標的領域に対して配置された移動体に固定されたプレートに固定され、
(b)カメラアレイアセンブリは、ハウジング内部に隣り合う4つのイメージングセンサーが配置され、
(c)第1、第2、第3、第4イメージングセンサーは、ハウジング及びプレートのアパーチャを通る焦点軸を有し、
(d)第1、第2、第3、第4イメージングセンサーは、2次元のピクセルアレイを有し、画像領域の隣り合う境界が重なるように構成されている
(e)カメラアレイアセンブリ。

なお、(a)?(e)は、構成を識別するために付与した。以下各構成を「構成a」等という。

第3 対比
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)構成要件Aと構成aとを対比する。
構成aの「プレート」は「カメラアセンブリ」を固定するものであるから、「剛性取付プレート」といえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「ターゲット領域に対して配置された移動体に固定された剛性取付プレート」を備える点で一致する。

(2)構成要件Bと構成bとを対比する。
構成bの「ハウジング」は、「剛性取付ユニット」といえ、「第1剛性取付ユニット」といい得る。そして、構成bの「ハウジング」は、4つのイメージングセンサが配置されるから、本願発明と引用発明とは、「取付プレートに固定され、内部に少なくとも2つの画像センサが配置された第1剛性取付ユニット」を備える点で一致する。

(3)構成要件Cと構成c、dとを対比する。
構成c、dは、第1、第2、第3、第4イメージングセンサーに関する構成であり、そのうち第1と第2イメージングセンサーについて検討する。
「イメージングセンサー」は、「画像センサ」といえ、「第1取付ユニット及び取付プレートのアパーチャを通る焦点軸を有し」ている。第1と第2イメージングセンサーは、2次元ピクセルアレイを有しているから、「ピクセルのデータアレイを生成」するといえ、当該「データアレイ」は「第1データアレイ」といい得る。
また、第1、第2イメージングセンサーは、画像領域の隣り合う境界が重なるように構成されており、その画像領域は、ターゲット領域といえる地形上の標的領域におけるものであり、重なり領域を有するようにオフセットされているといえる。また、その重なり領域を第1画像重なり領域といい得る。
したがって、本願発明と引用発明とは、「第1画像センサと第2画像センサの各々は、第1取付ユニット及び取付プレートのアパーチャを通る焦点軸を有し、第1画像センサと第2画像センサの各々は、ピクセルの第1データアレイを生成し、ピクセルのデータアレイの各々は、少なくとも2次元であり、第1画像センサと第2画像センサは、ターゲット領域において第1画像重なり領域を有するようにオフセットされて」いる点で共通する。
しかしながら、本願発明は「第1画像センサの画像データは、第1画像重なり領域において第2画像センサの画像データを両断」するのに対し、引用発明は、「第1画像センサの画像データは、第1画像重なり領域において第2画像センサの画像データを両断」するものではない点で相違する。

(4)構成要件D、Eと構成c、dとを対比する。
構成要件D、Eは、第3画像センサ、第4画像センサに関するものであり、構成c、dにおける「第3イメージングセンサー」、「第4イメージングセンサー」に対応する。
「第3イメージングセンサー」は、2次元ピクセルアレイを有しているから、「ピクセルのデータアレイを生成」するといえ、当該「データアレイ」は「第2データアレイ」といい得、「第4イメージングセンサー」は、2次元ピクセルアレイを有しているから、「ピクセルのデータアレイを生成」するといえ、当該「データアレイ」は「第3データアレイ」といい得る。
また、第3、第4イメージングセンサーは、画像領域の隣り合う境界が重なるように構成されており、その画像領域は、ターゲット領域といえる地形上の標的領域におけるものであり、重なり領域を有するようにオフセットされているといえる。また、その重なり領域を第2画像重なり領域といい得る。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「第1取付ユニット内に配置される第3画像センサをさらに備えており、第3画像センサは、第1取付ユニット及び取付プレートのアパーチャを通る焦点軸を有し、第3画像センサは、ピクセルの第2データアレイを生成し、ピクセルの第2データアレイは少なくとも2次元であり、
第1取付ユニット内に配置される第4画像センサをさらに備えており、第4画像センサは、第1取付ユニット及び取付プレートのアパーチャを通る焦点軸を有し、第4画像センサは、ピクセルの第3データアレイを生成し、ピクセルの第3データアレイは少なくとも2次元であり、第3画像センサと第4画像センサは、ターゲット領域において第2画像重なり領域を有するようにオフセットされて」いる点で共通する。
しかしながら、本願発明は「第3画像センサの画像データは、第2画像重なり領域において第4画像センサの画像データを両断する」のに対し、引用発明は、「第3画像センサの画像データは、第2画像重なり領域において第4画像センサの画像データを両断する」ものではない点で相違する。

さらに、引用発明においては、第2、第3画像センサにそれぞれ対応する「第2イメージングセンサー」、「第3イメージングセンサー」におけるターゲット領域において画像重なり領域を有するようにオフセットされているのに対し、本願発明においては、そのように特定されていない点で相違する。

(5)構成要件Fと構成eとを対比する。
構成eの「カメラアレイアセンブリ」は、構成要件Fの「画像センサシステム」に相当する。

2 一致点、相違点
以上より、本願発明と刊行物1発明との一致点、相違点は、次のとおりである。

(一致点)
ターゲット領域に対して配置された移動体に固定された剛性取付プレートと、
取付プレートに固定され、内部に少なくとも2つの画像センサが配置された第1剛性取付ユニットと、
を備えており、
第1画像センサと第2画像センサの各々は、第1取付ユニット及び取付プレートのアパーチャを通る焦点軸を有し、第1画像センサと第2画像センサの各々は、ピクセルの第1データアレイを生成し、ピクセルのデータアレイの各々は、少なくとも2次元であり、第1画像センサと第2画像センサは、ターゲット領域において第1画像重なり領域を有するようにオフセットされ、
第1取付ユニット内に配置される第3画像センサをさらに備えており、第3画像センサは、第1取付ユニット及び取付プレートのアパーチャを通る焦点軸を有し、第3画像センサは、ピクセルの第2データアレイを生成し、ピクセルの第2データアレイは少なくとも2次元であり、
第1取付ユニット内に配置される第4画像センサをさらに備えており、第4画像センサは、第1取付ユニット及び取付プレートのアパーチャを通る焦点軸を有し、第4画像センサは、ピクセルの第3データアレイを生成し、ピクセルの第3データアレイは少なくとも2次元であり、第3画像センサと第4画像センサは、ターゲット領域において第2画像重なり領域を有するようにオフセットされている
画像センサシステム。

(相違点1)
本願発明は「第1画像センサの画像データは、第1画像重なり領域において第2画像センサの画像データを両断」するのに対し、引用発明は、「第1画像センサの画像データは、第1画像重なり領域において第2画像センサの画像データを両断」するものではない点

(相違点2)
本願発明は「第3画像センサの画像データは、第2画像重なり領域において第4画像センサの画像データを両断する」のに対し、引用発明は、「第3画像センサの画像データは、第2画像重なり領域において第4画像センサの画像データを両断する」ものではない点

(相違点3)
引用発明においては、第2、第3画像センサにそれぞれ対応する「第2イメージングセンサー」、「第3イメージングセンサー」におけるターゲット領域において画像重なり領域を有するようにオフセットされているのに対し、本願発明においては、そのように特定されていない点

第4 判断
1 相違点について
はじめに、相違点1における「第1画像センサの画像データは、第1画像重なり領域において第2画像センサの画像データを両断する」について検討する。
本願明細書の段落【0019】には、
「図19において、A/B及びB/Cサイドラップが付されたハッチング領域は夫々、画像重なり領域(1904)(1908)を表している。左側画像重なり領域(1904)は、右側カメラAが中央/天底カメラBとオーバーラップしている領域であり、右側画像重なり領域(1908)は、左側カメラCが中央/天底カメラBとオーバーラップしている領域である。これらサイドラップ領域(1904)(1908)において、カメラセンサのグリッドは、重なり領域(1904)(1908)の各ピクセルを両断(bisect)し、これにより、コマウントされ、コレジスタされたオーバーサンプリングの機構を介して、これら領域(1904)(1908)の画像解像度が事実上4倍になる。実際には、画像/センサ解像度は、各次元において2倍、即ち2×2=4倍向上する。この画像解像度の4倍増の向上により、隣接するカメラ間のアライメント精度も4倍向上する。」(下線は、当審が付与した。)
と記載されている。この記載から「第1画像センサの画像データは、第1画像重なり領域において第2画像センサの画像データを両断する」は、画素ずらしにより、重なり領域の解像度を向上させることを意味していると理解できる。
このことは、相違点2の「第3画像センサの画像データは、第2画像重なり領域において第4画像センサの画像データを両断する」についても、同様である。

領域を重なるように撮像し、解像度を上げることは、引用文献1の段落【0072】?【0074】に記載されており、特に、段落【0074】には、「非常に精密な側方向カメラセンサーの配列が、サブピクセルレベルで行われた場合に、画像解像度の4倍増が実現される。」と記載されているから、引用文献1には、画素ずらしにより、重なり領域の解像度を向上させることが示唆されている。
さらに、画素をずらして撮像し、解像度を上げることは周知技術(原査定における拒絶の理由に引用された特開2008-109477号公報の段落【0038】、同特開2005-333336号公報の段落【0032】、【0036】等参照)である。

そうすると、引用発明において、画像解像度を上げるために、上記周知技術を適用し、重なり領域において、画素ずらしを行うことは当業者が容易に着想することであり、引用発明において、
「第1画像センサの画像データは、第1画像重なり領域において第2画像センサの画像データを両断」し(相違点1)、
「第3画像センサの画像データは、第2画像重なり領域において第4画像センサの画像データを両断する」(相違点2)
ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

引用発明における「重なり領域」において、画素ずらしを行うと、
(あ)「第1イメージングセンサー」、「第2イメージングセンサー」におけるターゲット領域
(い)「第2イメージングセンサー」、「第3イメージングセンサー」におけるターゲット領域
(う)「第3イメージングセンサー」、「第4イメージングセンサー」におけるターゲット領域
において、画素ずらしを行うことになる。上記(あ)、(う)の領域については、上記のとおりである。本願発明は、上記(い)の領域についての特定はないから、引用発明に周知技術を適用した発明は、本願発明に含まれるものとなる(相違点3)。

2 効果について
本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項4に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-02 
結審通知日 2016-06-07 
審決日 2016-06-20 
出願番号 特願2013-518368(P2013-518368)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐田 宏史  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 清水 正一
小池 正彦
発明の名称 自己較正リモートイメージング及びデータ処理システム  
代理人 特許業務法人 丸山国際特許事務所  

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