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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G11B
管理番号 1321170
審判番号 不服2015-21190  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-30 
確定日 2016-11-22 
事件の表示 特願2011-119158「ディスク装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月13日出願公開、特開2012-248251、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年5月27日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年8月15日付け 拒絶理由の通知
平成26年10月3日 意見書、手続補正書の提出
平成27年2月13日付け 拒絶理由の通知
平成27年4月17日 意見書、手続補正書の提出
平成27年8月24日付け 拒絶査定(謄本送達日平成27年9月1日)
平成27年11月30日 審判請求書の提出
平成28年8月18日付け 当審における拒絶理由の通知
平成28年9月29日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成28年9月29日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)。
なお、平成28年9月29日付けの手続補正により、補正前の請求項2は削除され、補正前の請求項3が補正後の請求項2となった。

「 【請求項1】
ディスクの挿排口を設けたシャーシと、当該シャーシに弾性部材を介して保持されるフローティング部とからなり、
前記フローティング部は、
回転により、ディスクを前記挿排口から再生位置までの搬送経路に沿って搬送する搬送ローラと、 前記搬送ローラを前記挿排口に対して前記再生位置側で回転自在に支持し、前記ディスクを再生する場合は前記搬送ローラを前記搬送経路から退避させ、前記ディスクを搬送する場合は前記搬送ローラを前記搬送経路へ移動させる可動部材と、
前記可動部材の前記挿排口側に突設され、前記可動部材による前記搬送ローラの退避動作に連動して前記搬送経路内に移動させられ、新たなディスクの挿入を阻止するディスク挿入防止突部と、
前記再生位置に搬送された前記ディスクを再生する再生部とを有するディスク装置において、
前記ディスク挿入防止突部は、当該ディスク挿入防止突部の挿排口側に形成され、前記シャーシ天面側に向かうにつれ前記挿排口側へ傾斜するテーパ形状であり、前記搬送経路の方向に対して傾いた状態で挿入される前記新たなディスクが当接し、該当接による押圧力により前記フローティング部を遊動させる受け部を備え、前記フローティング部が前記シャーシの天面側へ遊動して前記フローティング部と前記シャーシの天面との隙間を閉じることを特徴とするディスク装置。

【請求項2】
ディスクの挿排口を設けたシャーシと、当該シャーシに弾性部材を介して保持されるフローティング部とからなり、
前記フローティング部は、
回転により、ディスクを前記挿排口から再生位置までの搬送経路に沿って搬送する搬送ローラと、
前記搬送ローラを前記挿排口に対して前記再生位置側で回転自在に支持し、前記ディスクを再生する場合は前記搬送ローラを前記搬送経路から退避させ、前記ディスクを搬送する場合は前記搬送ローラを前記搬送経路へ移動させる可動部材と、
前記可動部材の前記挿排口側に突設され、前記可動部材による前記搬送ローラの退避動作に連動して前記搬送経路内に移動させられ、新たなディスクの挿入を阻止するディスク挿入防止突部と、
前記再生位置に搬送された前記ディスクを再生する再生部とを有するディスク装置において、
前記ディスク挿入防止突部は、板金製の前記可動部材を内角が鈍角をなすよう前記シャーシ天面側へ折り曲げてなり、当該折り曲げ部分の挿排口側を向く面であって、前記搬送経路の方向に対して傾いた状態で挿入される前記新たなディスクが当接し、該当接による押圧力により前記フローティング部を遊動させる受け部を備え、前記フローティング部が前記シャーシの天面側へ遊動して前記フローティング部と前記シャーシの天面との隙間を閉じることを特徴とするディスク装置。」

第3 当審における拒絶理由及び原査定の理由の概要
1 当審における拒絶理由の概要
当審における拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
(1)本件出願の請求項2に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された特開平11-86399号公報に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)本件出願の請求項2に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された特開平11-86399号公報に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、この出願の請求項1-3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された特開2002-260316号公報及び特開平11-86399号公報に記載された発明並びに周知慣用技術(例えば、特開平11-66673号公報、特開2003-16768号公報、実願平5-60119号(実開平7-32732号)のCD-ROM等参照)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

第4 当審の判断
1 当審における拒絶理由について
平成28年9月29日付けの手続補正により、補正前の請求項2が削除され、当審における拒絶理由は解消した。

2 原査定の理由について
(1)引用例の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された特開2002-260316号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審において付したものである。)。

(ア)「【0007】このように、従来のディスク誤挿入防止装置は、所定のディスク1-1を収納した後にアーム部材80を回動させて挿入口に誤挿入防止突起84を突出させることで、新たなディスク1-2が誤挿入しないように防止していた。しかしながら、従来のディスク誤挿入防止装置では、図8(c)に示すように、アーム部材80を支持する移動シャシ70が固定シャシ60内に浮動(フローティング)状態で支持されているため、ディスク1-1を収納した後にアーム部材80とディスクガイド62との間に新たなディスク1-2を差し込むことで、このディスク1-2が移動シャシ70とともにアーム部材80を押し下げて固定シャシ60内に誤挿入してしまうことがあった。」

(イ)「【0011】図1に示すように、本発明によるディスク誤挿入防止装置の実施の形態は、図7に示した従来技術と同様に、CD、DVDなどのディスクを記録再生するディスク記録再生装置の本体(図示せず)内に収納されており、この本体内の挿入口(図示せず)に配置されてディスク1を収納する固定シャシ10と、この固定シャシ10内に浮動状態に支持されてターンテーブル26などの記録再生部品を備えてディスク1を設置(ローディング)して記録再生する移動シャシ20と、この移動シャシ20に回動可能に支持されてディスク1を引き込むローラ32または第2誤挿入防止突起34のいずれかを回動により出没させるアーム部材30とを備えている。
【0012】ここで、移動シャシ20は、図7に示した従来技術とは異なり、側面21及び上面22を備えて内部にターンテーブル26などの記録再生部品を設けている。また、固定シャシ10は、本体内の挿入口に第1誤挿入防止突起12を一体に(図1では2箇所)形成し、この第1誤挿入防止突起12が移動シャシ20の上面22を貫通して挿通するように設けている。この固定シャシ10は、例えば、樹脂成形により第1誤挿入防止突起12を一体に形成している。そして、移動シャシ20は、上面22に前述した第1誤挿入防止突起12が貫通して挿通するように切り欠き部22aを設けている。また、移動シャシ20は、内部の上面22にディスク1を円滑に案内するディスクガイド28(図3(a)参照)を備えている。そして、この移動シャシ20は、従来技術と同様に、固定シャシ10内にダンパ24を介して浮動(フローティング)状態に支持されており、ディスク1の記録再生時に外部からの振動や衝撃を吸収できるように形成している。
【0013】また、アーム部材30は、図7に示した従来技術と同様に、移動シャシ20の軸30aに回動可能に軸支されており、この軸30aを支点にして一端側にディスク1を引き込むローラ32と、他端側にディスク1-1の収納後に新たなディスク1-2の誤挿入(二重入れ:図4参照)を防止する第2誤挿入防止突起34とを各々設けている。ここで、ローラ32は、軸30aを支点に回動して移動シャシ20の上面22に向かって上昇し、ディスクガイド28(図3(a)参照)とともにディスク1を挟んでターンテーブル26に搬送するように形成している。また、第2誤挿入防止突起34は、軸30aを支点に回動し、図2に示すように、ディスク1の誤挿入を防止する挿入口の開口位置に突出して停止するように形成している。この際、第2誤挿入防止突起34は、挿入口に突出する先端が移動シャシ20の上面22まで延在して重なるように形成している。従って、ディスク1を無理に差し込んだ場合、図8(c)に示した従来技術とは異なり、第1誤挿入防止突起12と移動シャシ20の上面22との間にディスク1を差し込めないため(図4参照)、このディスク1が移動シャシ20を押し下げて誤挿入することを確実に防止することができる。また同様に、第2誤挿入防止突起34と移動シャシ20の上面22との間にもディスク1を差し込みできない。」

ここで、図1、図4は、以下のとおりである。

図1



図4



したがって、引用例1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「CD、DVDなどのディスクを記録再生するディスク記録再生装置の本体(図示せず)内に収納されており、この本体内の挿入口に配置されてディスク1を収納する固定シャシ10と、
この固定シャシ10内にダンパ24を介して浮動(フローティング)状態に支持されてターンテーブル26などの記録再生部品を備えてディスク1を設置(ローディング)して記録再生する移動シャシ20とからなり、
固定シャシ10は、本体内の挿入口に第1誤挿入防止突起12を一体に形成し、この第1誤挿入防止突起12が移動シャシ20の上面22を貫通して挿通するように設けられ、上面22に前述した第1誤挿入防止突起12が貫通して挿通するように切り欠き部22aが設けられ、
移動シャーシ20は、内部の上面22にディスク1を円滑に案内するディスクガイド28を備え、
この移動シャシ20に回動可能に支持されてディスク1を引き込むローラ32と、
該ローラ32または第2誤挿入防止突起34のいずれかを回動により出没させるアーム部材30とを備え、
アーム部材30は、移動シャシ20の軸30aに回動可能に軸支されており、この軸30aを支点にして一端側にディスク1を引き込むローラ32と、他端側にディスク1-1の収納後に新たなディスク1-2の誤挿入を防止する第2誤挿入防止突起34とが各々設けられ、ここで、ローラ32は、軸30aを支点に回動して移動シャシ20の上面22に向かって上昇し、ディスクガイド28(図3(a)参照)とともにディスク1を挟んでターンテーブル26に搬送するように形成され、
第2誤挿入防止突起34は、軸30aを支点に回動し、ディスク1の誤挿入を防止する挿入口の開口位置に突出して停止するように形成され、この際、第2誤挿入防止突起34は、挿入口に突出する先端が移動シャシ20の上面22まで延在して重なるように形成され、従って、ディスク1を無理に差し込んだ場合、第1誤挿入防止突起12と移動シャシ20の上面22との間にディスク1を差し込めないため、このディスク1が移動シャシ20を押し下げて誤挿入することを確実に防止することができ、また同様に、第2誤挿入防止突起34と移動シャシ20の上面22との間にもディスク1を差し込みできない、ディスク記録再生装置。」

イ 原査定の拒絶の理由で引用された特開平11-86399号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は、当審において付したものである。)。

(ア)「【0002】
【従来の技術】従来のCDプレーヤの挿入口ドアの構造の例を図2に示す。フローティングシャーシは図示していないが、図に示すディスクモータ1、クランパホルダ2およびその昇降機構(図示していない)、ディスクガイド6およびゴムローラアーム4およびその回動機構(図示していない)、図示していない光ピックアップおよびその送り機構を支持しており、ディスク8がクランプされた再生時にはばねおよびダンパーで構成される減衰機構により本体シャーシに浮動状態に支持される。なお、ディスクアンクランプ時にはフローティングシャーシはロック機構により本体シャーシにロックされる。
【0003】ディスクモータ1はフローティングャーシに固定されており、その回転軸にはターンテーブル1aが固着されている。クランパホルダ2はクランパ3を載置しており、昇降機構により昇降される。ディスクガイド6はフローティングシャーシに固定されている。ゴムローラアーム4はゴムローラ5を回転自在に支持しており、軸7を介してフローティングシャーシに回動自在に支持され回動機構により回動される。ゴムローラアーム4にはディスク挿入口を開閉するドア4aが固着されている。」

(イ)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来のCDプレーヤでは、ディスク再生時にドア4aがディスク挿入口を塞いでいるが、ドア4aはフローティングシャーシに支持されているため、ドア4aを動かすことができる。従って、図に示す2枚目のディスクでドア4aを押し下げでディスクをディスクガイド6の下に押し込むことができる。このような動作によりディスクに傷をつけまた装置を壊す恐れがあった。また、ドア4aの高さを高くしてディスクの誤挿入を防止するようにすると、ゴムローラアーム4の回動角が大きくなり、装置の高さが高くなるという問題があった。」

(ウ)「【0008】
【課題を解決するための手段】この発明の光ディスク再生装置は、光ディスク挿入口を開閉するドアが閉じているときの前記ドアと挿入口との隙間から光ディスクが挿入されるのを防止する突起を前記ドアに設けたものである。」

(エ)「【0009】また、前記光ディスク再生装置において、前記ドアが送りローラ支持アームに取付けられ、送りローラ支持アームが送りローラを光ディスクに圧接する位置に回動されたときに、前記ドアが光ディスク挿入口を開き、送りローラ支持アームが送りローラを光ディスクから離す位置に回動されたときに、前記ドアが光ディスク挿入口を閉じるように構成したものである。
【0010】
【発明の実施の形態】この発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1(a)はこの発明の実施例であるCDプレーヤのディスクアンクランプ状態を示し、図1(b)は同CDプレーヤのディスククランプ状態を示している。図において、従来例で示したものと同様の機能を有する部分は同一の符号が付されており、その詳細な説明を省略する。
【0011】実施例のCDプレーヤのドア4aの上部には外側に向けて突起4bが設けられている。そのために図1(b)に示すディスククランプ状態において、2枚目のディスク先端を上に傾けても突起4bに引っ掛かってディスクガイドの下に挿入することができずディスクの誤挿入が防止される。」

ここで、図1は、以下のとおりである。

図1



したがって、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「本体シャーシと、ディスク8がクランプされた再生時にはばねおよびダンパーで構成される減衰機構により本体シャーシに浮動状態に支持され、ディスクモータ1、クランパホルダ2およびその昇降機構、ディスクガイド6およびゴムローラアーム4およびその回動機構、光ピックアップおよびその送り機構を支持するフローティングシャーシを有し、
前記ディスクガイド6はフローティングシャーシに固定され、
ゴムローラアーム4はゴムローラ5を回転自在に支持しており、軸7を介してフローティングシャーシに回動自在に支持され回動機構により回動され、
ゴムローラアーム4にはディスク挿入口を開閉するドア4aが固着され、前記ドアが送りローラ支持アームに取付けられ、送りローラ支持アームが送りローラを光ディスクに圧接する位置に回動されたときに、前記ドアが光ディスク挿入口を開き、送りローラ支持アームが送りローラを光ディスクから離す位置に回動されたときに、前記ドアが光ディスク挿入口を閉じるように構成され、
ドア4aの上部には外側に向けて突起4bが設けられ、ディスククランプ状態において、2枚目のディスク先端を上に傾けても突起4bに引っ掛かってディスクガイドの下に挿入することができずディスクの誤挿入が防止される、光ディスク再生装置」

ウ 原査定の拒絶の理由で引用された特開平11-66673号公報(以下「引用例3」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は、当審において付したものである。)。

(ア)「【課題を解決するための手段】この発明のディスク装置のディスク挿入口構造は、記録再生部が設けられたフローティング部に固定されたディスクガイドとシャーシの間を前記ディスクガイドに取付けられたフレキシブルシートにより塞いだものである。
【0007】また、前記ディスク装置のディスク挿入口構造において、前記フレキシブルシートのディスクガイドに接する側の一部に突出部を形成し、前記フローティング部がシャーシに対して移動したときに前記突出部が突入する穴を前記シャーシに設けたものである。」

ここで、図1は、以下のとおりである。

図1



したがって、引用例3には、次の技術事項(以下、「技術事項3」という。)が記載されている。

「フローティング部に固定されたディスクガイドにフレキシブルシートを取り付け、該フレキシブルシートのディスクガイドに接する側の一部に突出部を形成したディスク装置」

エ 原査定の拒絶の理由で引用された特開2003-16768号公報(以下「引用例4」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は、当審において付したものである。)。

(ア)「【0002】
【従来の技術】従来から、例えば、車載用の音響機器(再生装置)には、情報記録媒体としてのCD-ROMを再生するものが知られている。このような音響機器には、図7に示すように、筐体状の再生機器1と操作パネル2とからなる再生装置本体3を備えている。また、操作パネル2の裏面には、ネジ4を介してシャッタベース5が固定され、このシャッタベース5にはシャッタ6が回動可能に装着されている。」

(イ)「【0018】図1において、CDオートチェンジャー10は、再生装置本体の一部を構成する操作パネル11と、操作パネル11の裏面にネジ12を介して固定されたシャッタベース13と、シャッタベース13に回動可能に装着されたシャッタ14とを備えている。」

(ウ)「【0023】また、シャッタ本体14bの表面には、その幅方向中央付近に所定の幅を備え且つ上部寄りに位置する溝14dが形成されている。」

ここで、図1及び図7は、以下のとおりである。

図1



図7



したがって、引用例4には、次の技術事項(以下、「技術事項4」という。)が記載されている。

「筐体状の再生機器と操作パネルとからなる再生装置本体3を備えた車載用の音響機器において、操作パネル11の裏面にネジ12を介して固定されたシャッタベース13と、シャッタベース13に回動可能に装着されたシャッタ14とを備え、シャッタ本体14bの表面には、その幅方向中央付近に所定の幅を備え且つ上部寄りに位置する溝14dが形成されている、車載用の音響機器。」

オ 原査定の拒絶の理由で引用された実願平5-60119号(実開平7-32732号)のCD-ROM(以下「引用例5」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は、当審において付したものである。)。

(ア)「【0002】
【従来の技術】
図8は、従来から用いられているコンパクトディスク再生装置1の正面図である。このコンパクトディスク再生装置1では、前面板2に扉部材3が設けられ、この扉部材3は、円板状の記録媒体であるコンパクトディスクを挿入し、また排出するための挿入口4を開閉することができる。図8では、扉部材3は挿入口4を開いた状態を示している。」

(イ)「【0004】
扉部材3がピン5のまわりに時計方向に角変位されることによって、図10に示されるように挿入口4が閉じられる。したがって図10の状態でコンパクトディスク再生装置2内に装着されているコンパクトディスクは再生演奏され、このとき扉部材3が挿入口4を閉じているので、新たなコンパクトディスクが挿入口4から挿入されることが防がれ、既に挿入されているコンパクトディスクとの接触損傷およびそれによる故障などが防がれている。」

ここで、図10は、以下のとおりである。

図10



したがって、引用例5には、次の技術事項(以下、「技術事項5」という。)が記載されている。

「前面板2に扉部材3が設けられ、扉部材3がピン5のまわりに時計方向に角変位されることによって挿入口4が閉じ、新たなコンパクトディスクが挿入口4から挿入されることを防ぐ、コンパクトディスク再生装置。」

(2)本願発明1と引用発明1の対比
引用発明1の「固定シャシ10」、「移動シャシ20」、「ローラ32」、「アーム部材30」は、それぞれ本願発明1の「シャーシ」、「フローティング部」、「搬送ローラ」、「可動部材」に相当する。
引用発明1の「第2誤挿入防止突起34」は、軸30aを支点に回動し、ディスク1の誤挿入を防止する挿入口の開口位置に突出して停止するように形成され、第2誤挿入防止突起34と移動シャシ20の上面22との間にディスク1を差し込めなくするものであるから、本願発明1にいう「ディスク挿入阻止突部」に対応するものといる。

そうすると、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「ディスクの挿排口を設けたシャーシと、当該シャーシに弾性部材を介して保持されるフローティング部とからなり、
前記フローティング部は、
回転により、ディスクを前記挿排口から再生位置までの搬送経路に沿って搬送する搬送ローラと、
前記搬送ローラを前記挿排口に対して前記再生位置側で回転自在に支持し、前記ディスクを再生する場合は前記搬送ローラを前記搬送経路から退避させ、前記ディスクを搬送する場合は前記搬送ローラを前記搬送経路へ移動させる可動部材と、
前記可動部材の前記挿排口側に突設され、前記可動部材による前記搬送ローラの退避動作に連動して前記搬送経路内に移動させられ、新たなディスクの挿入を阻止するディスク挿入防止突部と、
前記再生位置に搬送された前記ディスクを再生する再生部とを有するディスク装置。」

[相違点]
「ディスク挿入防止突部」が、本願発明1では、「当該ディスク挿入防止突部の挿排口側に形成され、前記シャーシ天面側に向かうにつれ前記挿排口側へ傾斜するテーパ形状であり、前記搬送経路の方向に対して傾いた状態で挿入される前記新たなディスクが当接し、該当接による押圧力により前記フローティング部を遊動させる受け部を備え、前記フローティング部が前記シャーシの天面側へ遊動して前記フローティング部と前記シャーシの天面との隙間を閉じる」のに対し、引用発明1は、そのような受け部を備えていない点。

(3)相違点に対する判断
引用発明2は、ドア4a(本願発明1の「ディスク挿入阻止突部」に対応。)の上部に、外側に向けて「突起4b」を設け、2枚目のディスクを挿入するべく該ディスクの先端を上に傾けても、ディスクが「突起4b」に引っ掛かって、フローティングシャーシに固定された「ディスクガイド6」の下に誤挿入されるのを防止するものであって、引用例2には、本願発明1の課題である「フローティング部100とシャーシ102の隙間への2枚目のディスク106の誤挿入」を防止することについては記載も示唆もない。

また、引用発明2の「突起4b」は、本体シャーシの天面側に向かうにつれディスク挿入口側へ傾斜する「テーパ形状」とはいえず、かつ、引用例2には、フローティングシャーシ及び本体シャーシの光ディスク挿入口付近の具体的な構造についても記載がないから、上記「突起4b」が本願発明1にいう「前記フローティング部が前記シャーシの天面側へ遊動して前記フローティング部と前記シャーシの天面との隙間を閉じる」機能を有するものかどうかも定かでない。

してみれば、引用発明1の「第1誤挿入防止突起12」に代えて、引用発明1の「第2誤挿入防止突起34」に引用発明2の「突起4b」を設けたとしても、相違点2に係る構成には至らないし、テーパ形状の部材でディスクの進路を誘導すること自体が周知慣用技術であったとしても、上記「突起4b」を、さらに「前記フローティング部が前記シャーシの天面側へ遊動して前記フローティング部と前記シャーシの天面との隙間を閉じる」機能を有する「テーパ形状」の「受け部」に置換して、相違点2の構成とする動機付けがあるとはいえない。

ところで、技術事項3の「突出部」は、シャーシ天面側に向かうにつれディスク挿入口側へ傾斜する「テーパ形状」とはいい得るものの、「フローティング部に固定されたディスクガイドに取り付けられたフレキシブルシート」の一部であって、本願発明1にいう「可動部材の挿排口側に突設」された「ディスク挿入阻止突部」に設けたものではない。

また、技術事項4の「溝14d」は、「再生装置本体3」(本願発明1にいう「シャーシ」に相当。)の「操作パネル11の裏面にネジ12を介して固定されたシャッタベース13」に「回動可能に装着されたシャッタ14」の表面に形成されたものであるから、本願発明にいう「可動部材の挿排口側に突設」された「ディスク挿入阻止突部」に設けたものではない。また、技術事項4の「溝14d」は、そもそも「フローティング部」に設けられたものではないから、本願発明1にいう「前記フローティング部が前記シャーシの天面側へ遊動して前記フローティング部と前記シャーシの天面との隙間を閉じる」機能を有するものでないことも明らかである。

そうすると、仮に、引用発明1に技術事項3又は技術事項4を適用したとしても、相違点2に係る構成に至らないことは明らかである。

また、技術事項5の「扇部材3」に関し、引用例5の図10によれば、一見、天面側に向かうにつれ挿排口側へ傾斜しているものの、その角度や機能については記載も示唆もない。さらに、考案の詳細な説明及び図面の記載からみて、技術事項5は、「フローティング部」を持たない据置型のコンパクトディスク装置に関するものと認められるから、技術事項5の「扇部材3」が、本願発明1にいう「前記フローティング部が前記シャーシの天面側へ遊動して前記フローティング部と前記シャーシの天面との隙間を閉じる」機能を有するものでないことも明らかである。

したがって、引用発明1に技術事項5を適用して相違点2に係る構成とする動機付けがあるとはいえない。

(4)小括
以上より、本願発明1は、当業者が引用発明1ないし2及び技術事項3-5に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

(5)本願発明2と引用発明1との相違点、判断
本願発明2と引用発明1とは、以下の点で相違する(上記(1)、(2)参照)。

[相違点]
「ディスク挿入防止突部」に関し、本願発明2は、「板金製の前記可動部材を内角が鈍角をなすよう前記シャーシ天面側へ折り曲げてなり、当該折り曲げ部分の挿排口側を向く面であって、前記搬送経路の方向に対して傾いた状態で挿入される前記新たなディスクが当接し、該当接による押圧力により前記フローティング部を遊動させる受け部を備え、前記フローティング部が前記シャーシの天面側へ遊動して前記フローティング部と前記シャーシの天面との隙間を閉じる」のに対し、引用発明1は、そのような受け部を有していない点。

そして、本願発明2についても、本願発明1と同様の理由で、当業者が引用発明1ないし2及び技術事項3-5に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1及び2に係る発明は、いずれも、当業者が引用発明1ないし2及び技術事項3-5に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-11-08 
出願番号 特願2011-119158(P2011-119158)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G11B)
P 1 8・ 121- WY (G11B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 深沢 正志臼井 卓巳  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 北岡 浩
山本 章裕
発明の名称 ディスク装置  
代理人 坂元 辰哉  
代理人 河村 秀央  
代理人 濱田 初音  
代理人 辻岡 将昭  
代理人 田澤 英昭  
代理人 中島 成  

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