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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1321193
審判番号 不服2016-3055  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-29 
確定日 2016-11-22 
事件の表示 特願2014-535946「ダウンリンク送信のサイマルキャストおよびデサイマルキャストを円滑にするための、ワイヤレス通信の分散アンテナシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月18日国際公開、WO2013/056111、平成26年12月 4日国内公表、特表2014-532376、請求項の数(24)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)10月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年10月14日 アメリカ合衆国、2011年12月16日 アメリカ合衆国、2012年5月1日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年 6月16日 翻訳文、手続補正書、上申書の提出
平成27年 2月26日付け 拒絶理由の通知
平成27年 6月 2日 意見書、手続補正書の提出
平成27年10月23日付け 拒絶査定
(謄本送達日平成27年10月27日)
平成28年 2月29日 審判請求書の提出
平成28年 9月 1日付け 当審における拒絶理由の通知
平成28年 9月16日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願の請求項1、11、19及び23
平成28年9月16日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1、11、19及び23の記載は以下のとおりである(下線は、平成28年9月16日付け手続補正書で審判請求人により付されたものである。)。
なお、補正前の請求項20及び25は、平成28年9月16日付けの手続補正により、補正後の請求項19及び23となった。

「【請求項1】
各アンテナポートが、それぞれの遠隔アンテナユニットに通信可能に結合されるように適合された複数のアンテナポートと、
各基地局セクタコントローラが、前記複数のアンテナポートのうちの少なくとも1つのアンテナポートに通信可能に結合された受信インターフェースと、送信インターフェースとを備える、複数の基地局セクタコントローラと、
前記複数のアンテナポートの各々と結合され、かつ前記複数の基地局セクタコントローラの各々の前記送信インターフェースと結合された基地局サイマルキャストコントローラモジュールとを備え、前記基地局サイマルキャストコントローラモジュールが、
前記アンテナポートに通信可能に結合された複数の遠隔アンテナユニットを介してダウンリンク送信を送信することであって、少なくとも2つの遠隔アンテナユニットが、サイマルキャストグループとしてダウンリンク送信をサイマルキャストするために利用される、送信することと、
1つまたは複数のネットワークトラフィックパラメータを取得することと、
前記1つまたは複数のネットワークトラフィックパラメータに応じて、ダウンリンク送信をサイマルキャストするための少なくとも1つの異なる遠隔アンテナユニットを含むように、前記サイマルキャストグループを修正することと
を行うように適合された、基地局。」、

「【請求項11】
基地局上で動作可能な方法であって、
それぞれの送信信号を、複数の基地局セクタコントローラの各々から基地局サイマルキャストコントローラモジュールに伝えることと、
前記送信信号を、前記基地局サイマルキャストコントローラモジュールから、それぞれの遠隔アンテナユニットに通信可能に結合された複数のアンテナポートに与えることであって、少なくとも2つの遠隔アンテナユニットが、サイマルキャストグループとしてダウンリンク送信をサイマルキャストするために利用される、与えることと、
2つ以上の遠隔アンテナユニットからのアップリンク送信を、前記アップリンク送信を前記基地局サイマルキャストコントローラモジュールに通すことなく、それぞれのアンテナポートを介して、それぞれの基地局セクタコントローラにおいて受信することであって、前記アップリンク送信が、デサイマルキャストされ、特定のセクタ識別(ID)の1つまたは複数のアップリンクダイバーシティブランチに関連付けられる、受信することと
1つまたは複数のネットワークトラフィックパラメータを取得することと、
前記1つまたは複数のネットワークトラフィックパラメータに応じて、ダウンリンク送信をサイマルキャストするための少なくとも1つの異なる遠隔アンテナユニットを含むように、前記サイマルキャストグループを修正することと、
を備え、
前記基地局サイマルキャストコントローラモジュールは、前記ネットワークトラフィックパラメータを取得することと、前記サイマルキャストグループを修正することとを行うように適合される、方法。」、

「【請求項19】
それぞれの送信信号を、複数の基地局セクタコントローラの各々から基地局サイマルキャストコントローラモジュールに伝えるための手段と、
前記送信信号を、前記基地局サイマルキャストコントローラモジュールから、それぞれの遠隔アンテナユニットに通信可能に結合された複数のアンテナポートに与えるための手段であって、少なくとも2つの遠隔アンテナユニットが、サイマルキャストグループとしてダウンリンク送信をサイマルキャストするために利用される、手段と、
ダウンリンク送信をサイマルキャストするために利用される2つ以上の遠隔アンテナユニットからのアップリンク送信を、前記アップリンク送信を前記基地局サイマルキャストコントローラモジュールに通すことなく、それぞれのアンテナポートを介して、それぞれの基地局セクタコントローラにおいて受信するための手段であって、前記アップリンク送信が、デサイマルキャストされ、特定のセクタ識別(ID)の1つまたは複数のアップリンクダイバーシティブランチに関連付けられる、手段と
1つまたは複数のネットワークトラフィックパラメータを取得する手段と、
前記1つまたは複数のネットワークトラフィックパラメータに応じて、ダウンリンク送信をサイマルキャストするための少なくとも1つの異なる遠隔アンテナユニットを含むように、前記サイマルキャストグループを修正する手段と、
を備え、
前記基地局サイマルキャストコントローラモジュールは、前記ネットワークトラフィックパラメータを取得する手段と、前記サイマルキャストグループを修正する手段とを含む、
基地局装置。」、

「【請求項23】
基地局上で動作可能な命令を備える機械可読媒体であって、前記命令が、プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
それぞれの送信信号を、複数の基地局セクタコントローラの各々から基地局サイマルキャストコントローラモジュールに伝えることと、
前記送信信号を、前記基地局サイマルキャストコントローラモジュールから、それぞれの遠隔アンテナユニットに通信可能に結合された複数のアンテナポートに与えることであって、少なくとも2つの遠隔アンテナユニットが、サイマルキャストグループとしてダウンリンク送信をサイマルキャストするために利用される、与えることと、
2つ以上の遠隔アンテナユニットからのアップリンク送信を、前記アップリンク送信を前記基地局サイマルキャストコントローラモジュールに通すことなく、それぞれのアンテナポートを介して、それぞれの基地局セクタコントローラにおいて受信することであって、前記アップリンク送信が、デサイマルキャストされ、特定のセクタ識別(ID)の1つまたは複数のアップリンクダイバーシティブランチに関連付けられる、受信することと、
前記基地局サイマルキャストコントローラモジュールを制御して1つまたは複数のネットワークトラフィックパラメータを取得することと、
前記基地局サイマルキャストコントローラモジュールを制御して前記1つまたは複数のネットワークトラフィックパラメータに応じて、ダウンリンク送信をサイマルキャストするための少なくとも1つの異なる遠隔アンテナユニットを含むように、前記サイマルキャストグループを修正することと
を行わせる、機械可読媒体。」

第3 当審における拒絶理由及び原査定の理由の概要
1 当審における拒絶理由の概要
当審における拒絶理由の概要は、本件出願は、特許請求の範囲の請求項11、14、16、20及び25記載が不明瞭であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないというものである。

2 原査定の理由の概要
原査定の理由となった平成27年2月26日付けの拒絶理由の概要は以下のとおりである。

「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項:1-27
・引用文献等:1,2
・備考
引用文献1(特に段落[0011]-[0012],[0043]-[0051],Fig.6参照)には、サイマルキャストを実施する機能を備えた基地局装置であって、当該基地局装置が、複数のRTU110(本願の「遠隔アンテナユニット」に相当)と、各RTU110に結合されたホストユニット230(本願の「アンテナポート」に相当)と、ホストユニット230の各々と結合されたマトリックススイッチ(本願の「基地局サイマルキャストコントローラ」に相当)とを備えること、当該マトリックススイッチが、複数のRTUを介してダウンリンク信号をサイマルキャストすること、サイマルキャストグループをトラフィックメトリック(本願の「ネットワークトラフィックパラメータ」に相当)に応じて設定することが記載されている。
ここで、引用文献1に記載の発明は、アンテナポートに対して送信インタフェースと受信インタフェースとで接続された基地局セクタコントローラが明記されていない点で、本願発明とは一応相違するものの、引用文献2(特に段落[0032]-[0036]参照)には、E/O107及びO/E108(本願の「アンテナポート」に相当)に対して合波器105及び分波器115(本願の「基地局セクタコントローラ」に相当)が、それぞれ送信インタフェースと受信インタフェースとで接続された構成を備える基地局装置が記載されており、引用文献1に記載の発明においても、アンテナポートに対して送信インタフェースと受信インタフェースとで接続された基地局セクタコントローラを設けることに困難性は認められない。
また、同じく引用文献2には、上り方向の信号に対して合成サイトダイバーシチ、すなわち、デサイマルキャストを行うことも記載されており、引用文献1に記載の発明においても、引用文献2に記載の発明のように、デサイマルキャストを行う構成とすることは当業者が容易になしえたことである。

〈引用文献等一覧〉
1.米国特許出願公開第2010/0128676号明細書
2.特開2009-206735号公報 」

第4 当審の判断
1 当審における拒絶理由について
平成28年9月16日付け手続補正により、補正後の請求項11、14、16、19及び23(補正前の請求項11、14、16、20及び25に対応)は明確になり、当審における拒絶理由は解消した。

本願の請求項1-24に係る発明は、平成28年9月16日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-24に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1、11、19及び23に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」という。)は上記第2に記載したとおりである。

2 原査定の理由について
(1)引用例の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された米国特許出願公開第2010/0128676号明細書(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審において付したものである。)。

(ア)「[0012] RTUs can be configured to distribute the carrier channels many different ways. In some embodiments, RTUs can be configured into a simulcast configuration where a host unit distributes the same carrier channels to multiple RTUs.」
(当審訳:「[0012]RTUは、キャリアチャネルを多くの異なる方法で分配するように設定されることができる。いくつかの実施態様において、RTUは、ホストユニットが同じキャリアチャネルを複数のRTUに分配する場合にサイマルキャスト構成に設定され得る。」)

(イ)「[0030] In FIG.1, carrier channel distribution system 100 is deployed in an environment where cellular regions 120 require wireless coverage. A base transceiver station (BTS) 140 communicatively couples to one or more remote cell regions 120 via one or more host units 130 using physical communication links 115. In a preferred embodiment, a BTS 140 is adapted to transmit and receive digitized signals from carrier channels within one or more bands through a multi-band wireless transceiver. Host units 130 relay digitized signals between BTS 140 and remote transceiver units (RTUs) 110 within the remote cell regions 120 using the physical links 115, preferably fiber optic links. Distribution system 100 can support technologies or protocols including GSM, EDGE, CDMA, TDMA, FDMA, WCDMA, WiMAX, or other wireless technologies.」
(当審訳:「[0030] 図1において、キャリアチャネル分配システム100は、セルラー領域120がワイヤレス受信可能範囲を必要とする環境に配備される。基地送受信局(BTS)140は、物理的な通信リンク115を用いて1以上のホストユニット130を経由して1以上の遠隔セル領域120に通信可能に結合する。好適な実施例では、BTS140は、マルチバンドワイヤレス送受信機を通じて1以上のバンドのキャリアチャネルからデジタル化された信号を送受信するように適合される。ホストユニット130は、物理リンク115、好ましくは、光ファイバーリンクを用いて、BTS140と遠隔セル領域120内の遠隔送受信ユニット(RTU)110との間でデジタル化された信号をリレーする。分配システム100は、GSM, EDGE, CDMA, TDMA, FDMA, WCDMA, WiMAXその他のワイヤレス技術を含む技術又はプロトコルをサポートすることができる。」)

(ウ)「[0034] In FIG.2, BTS 240 is presented in more detail as a schematic of an exemplary embodiment of one aspect of the inventive subject matter. BTS 240 can include multi-band transceiver 260, which is configured to receive a plurality of frequency bands.」
(当審訳:「図2において、発明の一態様の実施例の図として、BTS240の詳細が示されている。BTS240は、複数の周波数帯を受信するように設定されたマルチバンド送受信器260を含むことができる。」)

(エ)「[0035] Multi-band transceiver 260 is preferably configured to receiver or to transmit wireless signals within a plurality of frequency bands as represented by bands 263A, 263B, through 263N, collectively referred to as bands 263.」
(当審訳:「マルチバンド送受信器260は、好ましくは、バンド263A、263B・・・263Nによって表され、バンド263として集合的に参照される複数の周波数帯の中のワイヤレス信号を受信又は送信するように設定される。」)

(オ)「[0038] Received channels 1 - 12 from bands 263 are forwarded to matrix switch 250. Matrix switch 250 can operate as a combiner/splitter, preferably an analog combiner/splitter, where bands 263 can have their individual channels 1 - 12 split into individual channels or groups of channels (e.g., 1 - 4, 5 - 6, 7 - 9, etc.). In a preferred embodiment, matrix switch 250 routes analog channels 270 to an appropriate host unit 230 according to a policy 255 for distribution to remote regions or RTUs. Host units 230 further distribute the channels to RTUs over links 215. 」
(当審訳:「[0038] バンド263からの受信チャネル1-12は、マトリックススイッチ250に送られる。マトリックススイッチ250は、結合器/分配器、好ましくは、アナログ結合器/分配器、として動作することができ、バンド263は、その個々のチャネル1-12を個々のチャネル又はチャネルのグループ(例えば、1-4、5-6、7-9等)に分配することができる。好適な実施例では、マトリックススイッチ250は、遠隔領域又はRTUに分配するためのポリシー255にしたがって、アナログチャネル270を適切なホストユニット230にルートする。ホストユニット230は、さらにリンク215を介してチャネルをRTUに分配する。」)

(カ)[0039] As an example, switch 250 could route channel 1 from band 263 A to a first host unit 230 while routing channel 2 from band 263 A to a second host unit where both channel 1 and 2 originate from the same band. It is contemplated that different carrier channels 270 from different bands 263 can also be treated separately and routed as desired. Such an approach provides for allocating carrier channels 270 to various remote regions to ensure proper coverage given various conditions. Contemplated conditions that could affect coverage include usage, load, weather, events, or other circumstances that could affect how channels are used.
[0040] Routing policy 255 can comprises one or more rules that govern behavior of switch 250 with respect to how analog channels 270 should be routed to host units 230 for further distribution to RTUs. Policy 255 is considered to include programmatic instructions stored on a computer readable memory 251 that can be executed within processor 253 that configures switch 250 to properly route the channels.
[0041] The rules of policy 255 can operate as functions of one or more metrics available to switch 250. Metrics can be considered to be measures of circumstances associated with matrix switch 250 or its environment, local or global. The rules of policy 255 can include one or more criterion representing a trigger for an action that should be taken when the metrics satisfy the criteria of the rules. When the criteria are met, matrix switch 250 can take appropriate routing action.」
(当審訳:「[0039] 例として、スイッチ250は、バンド263Aからのチャネル1を第1のホストユニットにルートすると同時に、バンド263Aからのチャネル2を第2のホストユニットにルートすることができる。ここで、チャネル1及び2は、同じバンドに由来する。異なるバンド263からの異なるキャリアチャネルは、別個に扱われ、所望のとおり分配されることもできる。そのようなアプローチにより、キャリアチャネルを様々な遠隔領域に割り当て、様々な状況で適切なカバレッジを確保する。カバレッジに影響すると予期される状態には、使用量、負荷、天候、イベント、又は、チャネルの使われ方に影響するその他の状況を含む。
[0040] ルーティングポリシー255は、アナログチャネル270をさらにRTUに分配するためにどのようにホストユニット230に送られるべきかに関し、スイッチ250の振る舞いに影響を与える1以上のルールからなる。ポリシー255は、スイッチ250を適切にチャネルにルートするよう設定するプロセッサ253で実行される、コンピュータ読み取り可能なメモリ251に格納されたプログラムを含むと考えられる。
[0041] ポリシー255のルールは、スイッチ250で使用可能な1以上のメトリクスの関数として実行することができる。メトリクスは、マトリックススイッチ250又はそのローカル又はグローバルな環境に関連付けられた状態の尺度であると考えられる。ポリシー255のルールは、メトリクスがルールの基準を満たすときに、取られるべき行動のトリガーを表す1以上の基準を含む。基準が満たされない場合、マトリックススイッチ250は、適切なルーティングを行う。」)

(キ)「[0043] As an example, consider a policy 255 that has rules governing the use of bandwidth allocated to different remote regions. A first region might have a significant number of commercial businesses that require additional bandwidth during business hours. The first region could be allocated a large number of channels during the business hours while a residential region might have a smaller number of channels during the same time frame. In such an embodiment, channels 270 can be routed, distributed, or allocated based on time-based metrics using simple rules.」
(当審訳:「一例として、異なる遠隔領域に分配された帯域幅の使用を管理するルールを持つポリシー255を考える。第1の領域は、ビジネスアワーの間、追加の帯域幅を要する多くの営利事業を有する。当該第1の領域は、ビジネスアワーの間、多くのチャネルを分配されることができ、同時に、居住領域は、同時間帯の間、少ない数のチャネルを有する。このような実施例において、チャネル270は、簡単なルールを用いた時間ベースのメトリクスに基づいて、転送され、分配され、割り当てられる。」)

(ク)「[0046] Yet another example includes a policy 255 that distributes or allocates channels to remote regions based on events. An event can include weather events, political events, trade shows, sporting events, government or police requests, emergencies, or other types of events outside the scope of BTS 240. Allocating channels to remote regions based on events ensures that sufficient service coverage is available as conditions change. For example, if a weather disaster occurs, switch 250 can be instructed to allocate more channels to a victim region to increase the bandwidth available to victims or aid workers. Such an embodiment can be achieved through setting values to metrics (e.g., flags, Booleans, etc.) that indicate an event is taking place. It is also contemplated that allocating channels based on event could be achieved through a scheduled time as would be possible in a sporting event scenario.」
(当審訳:「他の例では、イベントに基づいてチャネルを遠隔領域に分配又は割り当てるポリシー255を含む。イベントには、天候、政治的イベント、トレードショウ、スポーツイベント、政府や警察の要請、緊急又はBTS240の範囲外のその他のイベントのタイプを含むことができる。イベントに基づく遠隔領域へのチャネルの割当ては、状況の変化に対して十分なサービス範囲を利用可能にする。例えば、気象災害が発生した場合、スイッチ250は、被害者や救援従事者が利用可能な帯域幅を増加させるよう被災地に更なるチャネルを割り当てることを指示され得る。そのような実施例は、イベントが発生したことを示すメトリクス(例えば、フラグ、ブール等)に値をセットすることで達成される。それはまた、イベントに基づくチャネル分配が、スポーツイベントの計画において可能なように、スケジュールされた時間によって達成し得ることも期待される。」)

(ケ)「[0051] In FIG.4, RTUs 410 are arranged into different carrier channel distribution configurations. BTS 440 comprises two of host unit 430, which route carrier channels to one or more of RTUs 410. Configurations can include one-to-one couplings, one-to-many couplings, or even many-to-many couplings if an applications calls for such a configuration. Unicast configuration 491 represents a configuration where a single host unit 430 couples to a single RTU 410 at a remote location. Such a configuration represents a one-to-one configuration. Simulcast configuration 493 represents a configuration where a single host unit 430 couples to more than one RTU 410 in a one-to-many configuration. A single host unit 430 can duplicate serialized carrier channels as necessary and send the serialized data over more than one fiber optic link to multiple RTUs 410. One should note that in a simulcast configuration 493, multiple RTUs 410 could be in the same remote region or in different remote regions.」
(当審訳:「図4において、RTU410は、異なるキャリアチャネル分配構成にアレンジされる。BTS440は、2つのホストユニット430を含み、キャリアチャネルを1以上のRTU410にルートする。構成は、アプリケーションが要求する場合には、1対1結合、1対多結合、又は多対多結合さえも含みうる。ユニキャスト構成491は、遠隔領域において単一のホストユニット430を単一のRTU410に結合する構成をとる。そのような構成は、1対1構成となる。サイマルキャスト構成493は、1対多構成において単一のホストユニット430を1より多いRTU410に結合する構成をとる。単一のホストユニット430は、必要に応じてシリアルキャリアチャネルを複製して、シリアルデータを1以上の光ファイバリンクで複数のRTU410に送ることができる。サイマルキャスト構成493において、複数のRTU410は、同じ遠隔領域又は異なる遠隔領域にあって良い。」)

ここで、図1及び図2は、以下のとおりである。

図1


図2


したがって、引用例1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「 物理的な通信リンク115を用いて1以上のホストユニット130を経由して1以上の遠隔セル領域120に通信可能に結合される基地送受信局(BTS)140であって、
2つのホストユニット430を含み、ホストユニット130は、物理リンク115、好ましくは、光ファイバーリンクを用いて、BTS140と遠隔セル領域120内の遠隔送受信ユニット(RTU)110との間でデジタル化された信号をリレーし、
ホストユニットが同じキャリアチャネルを複数のRTUに分配する場合に、サイマルキャスト構成を設定するものであって、サイマルキャスト構成493は、1対多構成において単一のホストユニット430を1より多いRTU410に結合し、単一のホストユニット430は、必要に応じてシリアルキャリアチャネルを複製して、シリアルデータを1以上の光ファイバリンクで複数のRTU410に送ることができ、
複数の周波数帯を受信するように設定されたマルチバンド送受信器260を含み、
マルチバンド送受信器260は、好ましくは、バンド263A、263B・・・263Nによって表され、バンド263として集合的に参照される複数の周波数帯の中のワイヤレス信号を受信又は送信するように設定され、
バンド263からの受信チャネル1-12は、マトリックススイッチ250に送られ、
マトリックススイッチ250は、結合器/分配器、好ましくは、アナログ結合器/分配器、として動作することができ、バンド263は、その個々のチャネル1-12を個々のチャネル又はチャネルのグループに分配することができ、
マトリックススイッチ250は、遠隔領域又はRTUに分配するためのポリシー255にしたがって、アナログチャネル270を適切なホストユニット230にルートし、キャリアチャネルを様々な遠隔領域に割り当て、様々な状況で適切なカバレッジを確保し、
カバレッジに影響すると予期される状態には、使用量、負荷、天候、イベント、又は、チャネルの使われ方に影響するその他の状況を含み、
ルーティングポリシー255は、アナログチャネル270をさらにRTUに分配するためにどのようにホストユニット230に送られるべきかに関し、スイッチ250の振る舞いに影響を与える1以上のルールからなり、
メトリクスは、マトリックススイッチ250又はそのローカル又はグローバルな環境に関連付けられた状態の尺度であり、
ポリシー255のルールは、メトリクスがルールの基準を満たすときに、取られるべき行動のトリガーを表す1以上の基準を含み、
異なる遠隔領域に分配された帯域幅の使用を管理するルールを持つポリシー255では、ビジネスアワーの間、多くの営利事業を有する第1の領域は、多くのチャネルを分配されることができ、同時に、居住領域は、同時間帯の間、少ない数のチャネルを有するように、チャネル270は、簡単なルールを用いた時間ベースのメトリクスに基づいて、転送され、分配され、割り当てられ、
イベントに基づいてチャネルを遠隔領域に分配又は割り当てるポリシー255では、気象災害が発生した場合、スイッチ250は、被害者や救援従事者が利用可能な帯域幅を増加させるよう被災地に更なるチャネルを割り当てることを指示され得る、基地送受信局(BTS)140」

イ 原査定の拒絶の理由で引用された特開2009-206735号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審において付したものである。)。

(ア)「【0032】
(本発明の無線通信システムの実施形態)
図2は、本発明の無線通信システムの実施形態を示す。ここでは、集中基地局100、遠隔基地局200Aおよび200B、無線端末局30において、サイトダイバーシチ処理を想定した構成に限定して示しており、図5に示すように集中基地局100と無線端末局31,32がそれぞれ対応する遠隔基地局200A,200Bを介して接続するための構成は省略されている。
【0033】
図2において、集中基地局100と遠隔基地局200Aは光ファイバ11、12を介して接続され、集中基地局100と遠隔基地局200Bは光ファイバ13、14を介して接続される。無線端末局30は遠隔基地局200A、200Bの双方と通信可能な位置にあるものとする。集中基地局100にはバックボーンネットワーク20が接続される。
【0034】
集中基地局100を構成するデータバッファ部101、フレーム構築部102A、制御部103、データ信号用の変調器104A、合波器105A、105B、制御信号用の変調器106A、106B、E/O107A、107B、O/E108A、108B、復調器109A、109Bは、図5に示す従来のものと同様の構成である。ただし、ここでは送信ダイバーシチを行うためにフレーム構築部102Aおよび変調器104Aのみ記載し、変調器104Aから出力するデータ信号をそれぞれ遠隔基地局200A、200Bに送信する構成とし、遠隔基地局200Bへ独立に送信するデータ信号を処理するフレーム構築部102Bおよび変調器104Bは省略している。
【0035】
遠隔基地局200Aおよび200Bを構成するO/E201、SW204、アンテナ205、復調器206、増幅器207、E/O208は、図5に示す従来のものと同様の構成である。
【0036】
本実施形態では、以上の構成に加えて遠隔基地局間同期のために、集中基地局100に符号発生器111A、111B、相関検波器112A、112B、下り方向に挿入する遅延線113A、113B、上り方向に挿入する遅延線114A、114B、分波器115A、115Bを備え、遠隔基地局200Aおよび200Bに分波器211および合波器213を備える。さらに、遠隔基地局200Aおよび200Bに増幅・減衰器212を備え、無線端末局30でダイバーシチ合成するための信号レベルを調整する。また、集中基地局100に復調器109A、109Bの各出力を合成する合成器116を備える。なお、集中基地局100において、復調器109A、109Bでそれぞれ復調されたデータ信号がダイバーシチ合成の対象でなければその一方を破棄するか、双方のデータ信号を個別にデータバッファ分波器101に出力する(図面ではその経路は省略)。」

ここで、図2は、以下のとおりである。

図2



したがって、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「 遠隔基地局200Aと光ファイバ11、12を介して接続され、遠隔基地局200Bと光ファイバ13、14を介して接続され、バックボーンネットワーク20が接続され、
データバッファ部101、フレーム構築部102A、制御部103、データ信号用の変調器104A、合波器105A、105B、制御信号用の変調器106A、106B、E/O107A、107B、O/E108A、108B、復調器109A,109Bで構成され、
送信ダイバーシチを行うためにフレーム構築部102Aおよび変調器104Aを備え、変調器104Aから出力するデータ信号をそれぞれ遠隔基地局200A、200Bに送信し、
符号発生器111A、111B、相関検波器112A、112B、下り方向に挿入する遅延線113A、113B、上り方向に挿入する遅延線114A、114B、分波器115A、115Bを備え、
復調器109A、109Bの各出力を合成する合成器116を備え、復調器109A、109Bでそれぞれ復調されたデータ信号がダイバーシチ合成の対象でなければその一方を破棄するか、双方のデータ信号を個別にデータバッファ分波器101に出力する、集中基地局。」

(2)本願発明1と引用発明1との対比
ア 引用発明1の「2つのホストユニット」は、それぞれ物理リンク115を用いて遠隔セル領域内の複数の「RTU」と通信可能に結合され、該「RTU」にキャリアチャネルを分配しているから、引用発明1の「RTU」は、本願発明にいう「遠隔アンテナユニット」に相当し、引用発明1の「ホストユニット」は、本願発明1にいう「各アンテナポートが、それぞれの遠隔アンテナユニットに通信可能に結合されるように適合された複数のアンテナポート」といえる。

イ 引用発明1のBTSは、複数の周波数帯を受信するように設定されたマルチバンド送受信器260を含み、マルチバンド送受信器260は、バンド263中のワイヤレス信号を受信又は送信するように設定され、マトリックススイッチ250は、結合器/分配器として動作することができ、アナログチャネル270を適切なホストユニット230にルートしていることから、引用発明1も「受信インターフェース」及び「送信インターフェース」を備えることが認められる。

ウ 引用発明1の「マトリックススイッチ」は、遠隔領域又はRTUに分配するためのポリシー255にしたがって、バンド263からのアナログチャネル270を適切なホストユニット230にルートし、ホストユニットが同じキャリアチャネルを複数のRTUに分配することでサイマルキャスト構成を設定している。
ここで、サイマルキャスト構成は、1対多構成において単一のホストユニット430を1より多いRTU410に結合したものであり、単一のホストユニット430は、シリアルキャリアチャネルを複製して複数のRTU410に送ることから、上記1対多構成でホストユニットに接続される複数のRTUは、「サイマルキャストグループとしてダウンリンク送信をサイマルキャストするために利用される」ものといえる。
そして、ポリシー255は、アナログチャネル270をさらにRTUに分配するためにどのようにホストユニット230に送られるべきかに関し、スイッチ250の振る舞いに影響を与える1以上のルールからなり、
メトリクスは、マトリックススイッチ250又はそのローカル又はグローバルな環境に関連付けられた状態の尺度であり、
ポリシー255のルールは、メトリクスがルールの基準を満たすときに、取られるべき行動のトリガーを表す1以上の基準を含んでいることから、引用発明1においても、「1つまたは複数のネットワークトラフィックパラメータを取得」し、「前記1つまたは複数のネットワークトラフィックパラメータに応じて」ダウンリンク送信を制御しているといえる。
そうすると、引用発明1の「マトリックススイッチ」は、本願発明1にいう「複数のアンテナポートの各々と結合され」、「送信インターフェースと結合された」「基地局サイマルキャストコントローラモジュール」に対応するものであって、「前記アンテナポートに通信可能に結合された複数の遠隔アンテナユニットを介してダウンリンク送信を送信することであって、少なくとも2つの遠隔アンテナユニットが、サイマルキャストグループとしてダウンリンク送信をサイマルキャストするために利用される、送信することと」、「1つまたは複数のネットワークトラフィックパラメータを取得することと」、「前記1つまたは複数のネットワークトラフィックパラメータに応じて」ダウンリンク送信を制御することと、を行うことが認められる。

したがって、本願発明1と引用発明1の一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「 各アンテナポートが、それぞれの遠隔アンテナユニットに通信可能に結合されるように適合された複数のアンテナポートと、
受信インターフェースと、送信インターフェースと、
前記複数のアンテナポートの各々と結合され、かつ送信インターフェースと結合された基地局サイマルキャストコントローラモジュールとを備え、前記基地局サイマルキャストコントローラモジュールが、
前記アンテナポートに通信可能に結合された複数の遠隔アンテナユニットを介してダウンリンク送信を送信することであって、少なくとも2つの遠隔アンテナユニットが、サイマルキャストグループとしてダウンリンク送信をサイマルキャストするために利用される、送信することと、
1つまたは複数のネットワークトラフィックパラメータを取得することと、
前記1つまたは複数のネットワークトラフィックパラメータに応じて、ダウンリンク送信を制御することと
を行うように適合された、基地局。」

[相違点1]
本願発明1は、「各基地局セクタコントローラが、複数のアンテナポートのうちの少なくとも1つのアンテナポートに通信可能に結合された受信インターフェースと、送信インターフェースとを備える、複数の基地局セクタコントローラ」を備えるのに対し、引用発明1では、「複数の基地局セクタコントローラ」を有するかどうか定かでなく、「受信インターフェースと、送信インターフェースと」は、いずれも基地局サイマルキャストコントローラモジュールを介して「複数のアンテナポートのうちの少なくとも1つのアンテナポートに通信可能に結合」されている点。

[相違点2]
「基地局サイマルキャストコントローラモジュール」がネットワークトラフィックパラメータに応じて行う制御が、本願発明1では、「ダウンリンク送信をサイマルキャストするための少なくとも1つの異なる遠隔アンテナユニットを含むように、前記サイマルキャストグループを修正する」ものであるのに対し、引用発明1では、遠隔アンテナユニットに分配するチャネルの量を制御するものである点。

(3)判断
相違点2について検討するに、引用発明1は、ネットワークトラフィックパラメータに応じて遠隔アンテナユニットに分配するチャネルを増減するものであり、複数の遠隔アンテナユニットをサイマルキャスト構成とすることも想定しているものの、引用例1及び2には、ダウンリンク送信をサイマルキャストするための少なくとも1つの異なる遠隔アンテナユニットを含むように、サイマルキャストグループそのものを修正することについては記載も示唆もなく、相違点2に係る構成が、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

そして、本願発明1は、上記相違点2に係る構成を有することで、サイマルキャスト配信構成およびワイヤレス通信のための関連方法を動的に構成することができ、例えば、スポーツ大会、コンサート、または他の催し物が特定の会場で計画され、集団が概してグループになって一緒に移動し、その会場の中およびその周辺に集中する場合には、集団におけるこの移動を識別することができ、集中した集団向けのネットワーク性能を向上させるために会場周辺のエリアにとって利用可能なセクタの数を増やすために、どの遠隔アンテナユニットがサイマルキャストするかを変更することができるという効果を奏するものである。

したがって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者が引用発明1及び2に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)請求項11、19及び23に係る発明について
請求項11、19及び23に係る発明は、上記(2)の相違点2に係る構成と同様の構成を備えた発明であるから、請求項1に係る発明と同様の理由により、当業者が引用発明1及び2に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

(5)請求項2-10、請求項12-18、請求項20-22、請求項24について
上記(1)-(4)のとおりであるから、請求項1、11、19又は23を引用する請求項2-10、請求項12-18、請求項20-22、請求項24に係る発明も、当業者が引用発明1及び2に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1-24に係る発明は、いずれも、当業者が引用発明1及び2に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-11-08 
出願番号 特願2014-535946(P2014-535946)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石田 紀之  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 佐藤 智康
北岡 浩
発明の名称 ダウンリンク送信のサイマルキャストおよびデサイマルキャストを円滑にするための、ワイヤレス通信の分散アンテナシステムおよび方法  
代理人 奥村 元宏  
代理人 福原 淑弘  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  

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