• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C22C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C22C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C22C
管理番号 1321212
異議申立番号 異議2015-700167  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-11-10 
確定日 2016-08-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5728836号発明「耐硫化物応力割れ性に優れた油井用高強度継目無鋼管の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5728836号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?13〕について訂正することを認める。 特許第5728836号の請求項3ないし13に係る特許を維持する。 特許第5728836号の請求項1?2に係る特許についての申立てを却下する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第5728836号の請求項1?13に係る特許についての出願は、平成22年 6月22日に特許出願され、平成27年 4月17日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人大坪隆司により特許異議の申立てがなされ、当審において平成28年 1月25日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年 3月28日付けで本件特許権者より意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされ、平成28年 5月 6日付けで特許異議申立人より意見書が提出されたものである。

第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のア?スのとおりである。

ア 特許請求の範囲の請求項1を削除する。

イ 特許請求の範囲の請求項2を削除する。

ウ 特許請求の範囲の請求項3に「前記焼入れ処理の焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃であることを特徴とする請求項2に記載の油井用継目無鋼管の製造方法。」と記載されているのを、
「mass%で、
C:0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P:0.015%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N:0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V:0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B:0.0005?0.003%、
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm≦10000000√(60Dt)≦150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)」に訂正する(請求項3を引用する請求項4、請求項5、請求項7も同様に訂正する)。

ここで、上記ウの訂正は、次の訂正事項(ウ-a)?(ウ-c)からなっている。
(ウ-a)
訂正前の請求項3が訂正前の請求項2の記載を引用する記載であり、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、訂正前の請求項1、2の内容を書き下して、訂正後の請求項3(独立項)とする事項

(ウ-b)
鋼管素材の合金組成における、Si含有量の上限について、「1.0%」から「0.30%」とする事項
(ウ-c)
鋼管素材の合金組成における、Al含有量の上限について、「0.1%」から「0.05%」とする事項

エ 特許請求の範囲の請求項4に「前記組成に加えてさらに、mass%で、Cu:1.0%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の油井用継目無鋼管の製造方法。」と記載されているのを、
「前記組成に加えてさらに、mass%で、Cu:1.0%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項3に記載の油井用継目無鋼管の製造方法。」に訂正する(請求項4を引用する請求項5、請求項7も同様に訂正する)。

オ 特許請求の範囲の請求項5に「前記組成に加えてさらに、mass%で、Ni:1.0%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の油井用継目無鋼管の製造方法。」と記載されているのを、
「前記組成に加えてさらに、mass%で、Ni:1.0%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項3または4に記載の油井用継目無鋼管の製造方法。」に訂正する(請求項5を引用する請求項7も同様に訂正する)。

カ 特許請求の範囲の請求項6に「前記組成に加えてさらに、mass%で、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか
に記載の油井用継目無鋼管の製造方法。」と記載されているのを、
「mass%で、
C:0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P:0.015%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N:0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V:0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B:0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm≦10000000√(60Dt)≦150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)」に訂正する(請求項6を引用する請求項7も同様に訂正する)。

ここで、上記カの訂正は、次の訂正事項(カ-a)?(カ-c)からなっている。
(カ-a)
訂正前の請求項6が訂正前の請求項1?5のいずれかを引用する記載であったものを、訂正前の請求項3の内容を書き下して、訂正後の請求項6(独立項)とする事項
(カ-b)
鋼管素材の合金組成における、Si含有量の上限について、「1.0%」から「0.30%」とする事項
(カ-c)
鋼管素材の合金組成における、Al含有量の上限について、「0.1%」から「0.05%」とする事項

キ 特許請求の範囲の請求項7に「前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.001?0.005%を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の油井用継目無鋼管の製造方法。」と記載されているのを、
「前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.001?0.005%を含有する組成とすることを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載の油井用継目無鋼管の製造方法。」に訂正する。

ク 特許請求の範囲の請求項6に「前記組成に加えてさらに、mass%で、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか
に記載の油井用継目無鋼管の製造方法。」と記載されているのを、
「mass%で、
C:0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P:0.015%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N:0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V:0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B:0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種、さらに、Cu:1.0%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm≦10000000√(60Dt)≦150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)」に訂正し、新たに請求項8とする。

ここで、上記クの訂正は、次の訂正事項(ク-a)?(ク-c)からなっている。
(ク-a)
訂正前の請求項6が訂正前の請求項1?5のいずれかを引用する記載であったものを、訂正前の請求項3、4の内容を直列的に書き下して、訂正後の請求項8(独立項)とする事項
(ク-b)
鋼管素材の合金組成における、Si含有量の上限について、「1.0%」から「0.30%」とする事項
(ク-c)
鋼管素材の合金組成における、Al含有量の上限について、「0.1%」から「0.05%」とする事項

ケ 特許請求の範囲の請求項6に「前記組成に加えてさらに、mass%で、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか
に記載の油井用継目無鋼管の製造方法。」と記載されているのを、
「mass%で、
C:0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P:0.015%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N:0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V:0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B:0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種、さらに、Ni:1.0%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm≦10000000√(60Dt)≦150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)」に訂正し、新たに請求項9とする。

ここで、上記ケの訂正は、次の訂正事項(ケ-a)?(ケ-c)からなっている。
(ケ-a)
訂正前の請求項6が訂正前の請求項1?5のいずれかを引用する記載であったものを、訂正前の請求項3、5の内容を直列的に書き下して、訂正後の請求項9(独立項)とする事項
(ケ-b)
鋼管素材の合金組成における、Si含有量の上限について、「1.0%」から「0.30%」とする事項
(ケ-c)
鋼管素材の合金組成における、Al含有量の上限について、「0.1%」から「0.05%」とする事項

コ 特許請求の範囲の請求項6に「前記組成に加えてさらに、mass%で、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか
に記載の油井用継目無鋼管の製造方法。」と記載されているのを、
「mass%で、
C:0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P:0.015%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N:0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V:0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B:0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種、さらに、Ni:1.0%以下およびCu:1.0%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm≦10000000√(60Dt)≦150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)」に訂正し、新たに請求項10とする。

ここで、上記コの訂正は、次の訂正事項(コ-a)?(コ-c)からなっている。
(コ-a)
訂正前の請求項6が訂正前の請求項1?5のいずれかを引用する記載であったものを、訂正前の請求項3、4、5の内容を直列的に書き下して、訂正後の請求項10(独立項)とする事項
(コ-b)
鋼管素材の合金組成における、Si含有量の上限について、「1.0%」から「0.30%」とする事項
(コ-c)
鋼管素材の合金組成における、Al含有量の上限について、「0.1%」から「0.05%」とする事項

サ 特許請求の範囲の請求項7に「前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.001?0.005%を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の油井用継目無鋼管の製造方法。」と記載されているのを、
「mass%で、
C:0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P:0.015%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N:0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V:0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B:0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種、さらに、Cu:1.0%以下、Ca:0.001?0.005%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm≦10000000√(60Dt)≦150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)」に訂正し、新たに請求項11とする。

ここで、上記サの訂正は、次の訂正事項(サ-a)?(サ-c)からなっている。
(サ-a)
訂正前の請求項7が訂正前の請求項1ないし6のいずれかを引用する記載であったものを、訂正前の請求項3、4、6の内容を直列的に書き下して、訂正後の請求項11(独立項)とする事項
(サ-b)
鋼管素材の合金組成における、Si含有量の上限について、「1.0%」から「0.30%」とする事項
(サ-c)
鋼管素材の合金組成における、Al含有量の上限について、「0.1%」から「0.05%」とする事項

シ 特許請求の範囲の請求項7に「前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.001?0.005%を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の油井用継目無鋼管の製造方法。」と記載されているのを、
「mass%で、
C:0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P:0.015%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N:0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V:0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B:0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種、さらに、Ni:1.0%以下、Ca:0.001?0.005%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm≦10000000√(60Dt)≦150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)」 に訂正し、新たに請求項12とする。

ここで、上記シの訂正は、次の訂正事項(シ-a)?(シ-c)からなっている。
(シ-a)
訂正前の請求項7が訂正前の請求項1ないし6のいずれかを引用する記載であったものを、訂正前の請求項3、5、6の内容を直列的に書き下して、訂正後の請求項12(独立項)とする事項
(シ-b)
鋼管素材の合金組成における、Si含有量の上限について、「1.0%」から「0.30%」とする事項
(シ-c)
鋼管素材の合金組成における、Al含有量の上限について、「0.1%」から「0.05%」とする事項

ス 特許請求の範囲の請求項7に「前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.001?0.005%を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の油井用継目無鋼管の製造方法。」と記載されているのを、
「mass%で、
C:0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P:0.015%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N:0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V:0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B:0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種、さらに、Ni:1.0%以下、Cu:1.0%以下、およびCa:0.001?0.005%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm≦10000000√(60Dt)≦150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)」に訂正し、新たに請求項13とする。

ここで、上記スの訂正は、次の訂正事項(ス-a)?(ス-c)からなっている。
(ス-a)
訂正前の請求項7が訂正前の請求項1ないし6のいずれかを引用する記載であったものを、訂正前の請求項3、4、5、6の内容を直列的に書き下して、訂正後の請求項13(独立項)とする事項
(ス-b)
鋼管素材の合金組成における、Si含有量の上限について、「1.0%」から「0.30%」とする事項
(ス-c)
鋼管素材の合金組成における、Al含有量の上限について、「0.1%」から「0.05%」とする事項

2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項ア、イについて
上記アの訂正は請求項1を、そして上記イの訂正は請求項2を、それぞれ削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項ウ、カ、ク?スについて
訂正事項(ウ-a)、(カ-a)、(ク-a)、(ケ-a)、(コ-a)、(サ-a)、(シ-a)、(ス-a)は、それぞれ他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

訂正事項(ウ-b)、(カ-b)、(ク-b)、(ケ-b)、(コ-b)、(サ-b)、(シ-b)、(ス-b)は、それぞれ特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、当該訂正は、訂正前の【0024】の記載に基づくものといえるので、願書に添付した明細書、及び、特許請求の範囲の範囲内においてしたものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

訂正事項(ウ-c)、(カ-c)、(ク-c)、(ケ-c)、(コ-c)、(サ-c)、(シ-c)、(ス-c)は、それぞれ特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、当該訂正は、訂正前の【表1】における鋼No.Cの記載に基づくものといえるので、願書に添付した明細書、及び、特許請求の範囲の範囲内においてしたものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項エ、オ、キについて
上記ア、イの訂正に伴い、上記エの訂正は訂正前の請求項4について、上記オの訂正は訂正前の請求項5について、そして上記キの訂正は訂正前の請求項7について、それぞれ訂正前の請求項1、2を引用しないものに訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

そして、訂正前の請求項2?7は、請求項1を引用する請求項であり、これら訂正は一群の請求項ごとに適法に請求されたものである。

3.むすび

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正を認める。

第3.本件発明について

上記「第2.訂正の適否についての判断」のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項3?13に係る発明(以下、「本件特許訂正発明3?13」という。)は、その特許請求の範囲の請求項3?13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「…(略)…
【請求項3】
mass%で、
C:0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P:0.015%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N:0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V:0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B:0.0005?0.003%、
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm≦10000000√(60Dt)≦150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)
【請求項4】
前記組成に加えてさらに、mass%で、Cu:1.0%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項3に記載の油井用継目無鋼管の製造方法。
【請求項5】
前記組成に加えてさらに、mass%で、Ni:1.0%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項3または4に記載の油井用継目無鋼管の製造方法。
【請求項6】
mass%で、
C:0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P:0.015%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N:0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V:0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B:0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm≦10000000√(60Dt)≦150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)
【請求項7】
前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.001?0.005%を含有する組成とすることを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載の油井用継目無鋼管の製造方法。
【請求項8】
mass%で、
C:0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P:0.015%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N:0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V:0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B:0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種、さらに、Cu:1.0%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm≦10000000√(60Dt)≦150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)
【請求項9】
mass%で、
C:0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P:0.015%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N:0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V:0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B:0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種、さらに、Ni:1.0%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm≦10000000√(60Dt)≦150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)
【請求項10】
mass%で、
C:0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P:0.015%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N:0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V:0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B:0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種、さらに、Ni:1.0%以下およびCu:1.0%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm≦10000000√(60Dt)≦150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)
【請求項11】
mass%で、
C:0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P:0.015%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N:0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V:0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B:0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種、さらに、Cu:1.0%以下、Ca:0.001?0.005%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm≦10000000√(60Dt)≦150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)
【請求項12】
mass%で、
C:0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P:0.015%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N:0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V:0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B:0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種、さらに、Ni:1.0%以下、Ca:0.001?0.005%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm≦10000000√(60Dt)≦150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)
【請求項13】
mass%で、
C:0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P:0.015%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N:0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V:0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B:0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種、さらに、Ni:1.0%以下、Cu:1.0%以下、およびCa:0.001?0.005%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm≦10000000√(60Dt)≦150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)」

第4.取消理由の概要

当審において平成28年 1月25日付けで通知した取消理由の概要は、以下の(1)?(5)に記載したとおりのものである。

(1)
本件特許発明1、及び本件特許発明4は、それぞれ甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定する発明に該当する。
本件特許発明6は、甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定する発明に該当する。
よって、本件特許発明1、本件特許発明4、及び本件特許発明6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(2)
本件特許発明2、3は、甲第1号証の記載、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。

(3)
本件特許発明6、7は、甲第1号証に記載された発明であるか、上記甲第1号証の記載、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明6、7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるか、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(4)
本件特許発明4は、甲第1号証、及び甲第5号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明5は、甲第1号証、及び甲第3号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明6は、甲第1号証、及び甲第8号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件特許発明4、本件特許発明5、及び本件特許発明6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(5)
請求項1?7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、その特許は特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものである。

甲第1号証:特開平07-197125号公報
甲第3号証:特開平06-116635号公報
甲第5号証:特開昭59-096216号公報
甲第6号証:田口整司、「鉄鋼材料のリサイクル」、軽金属、
社団法人軽金属学会、1996年、第46巻、第11号、
p.533-536
甲第7号証:「鉄鋼リサイクル白書」、社団法人日本鉄鋼協会、
1994年 3月25日、p.59-62
甲第8号証:特開平09-025518号公報

第5.特許異議申立人の主張の概要

本件訂正請求に対する平成28年 5月 6日付け意見書における、特許異議申立人の主張の概要は、以下のとおりである。

(6)本件特許訂正発明9は、甲第3号証に記載された発明であるか、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)本件特許訂正発明3?13は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、その特許は特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものである。

(8)本件特許訂正発明8?10、12は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、その特許は特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものである。

第6.当審の判断

1.甲第1号証の記載
甲第1号証には、以下の記載がある(下線部は当審にて付与した。以下同様)。

(1-1)
「下記の工程を備えた耐硫化物応力腐食割れ性に優れた高強度鋼管の製造方法(成分組成はwt%である)。
(a)主成分として、
C:0.15?0.4%、 Si:0.1?1%
Mn:0.3?1%、 Cr:0.1?1.5%、
Mo:0.1?1%、 B:0.0005?0.003%、
Al:0.01?0.1%、 N:0.003?0.01%
P:0.015%以下、 S:0.005%以下を含有し、
さらに、
V:0.01?0.05%、Nb:0.01?0.05%、
Ti:0.01?0.03%
のうち1種または2種以上を含有し、残部が実質的にFeからなるビレットを用意する工程と、
(b)前記ビレットを1250?1350℃の間に加熱した後、マンネスマン式シームレス圧延によって熱間穿孔する工程と、
(c)前記熱間穿孔されたビレットを、再結晶温度+50℃以上再結晶温度+100℃以下の温度域まで加速冷却する工程と、
(d)前記温度域に加速冷却されたビレットをマンドレル圧延により、30%以上の圧下を行い、再結晶温度以上再結晶温度+30℃以下で、かつAr3変態点以上の温度で圧延を終了してシームレス鋼管とする工程と、
(e)前記シームレス鋼管を直ちに水焼入れする工程と、
(f)水焼入れした前記シームレス鋼管をAc1変態点以下の温度で焼き戻す工程。」(【請求項1】)

(1-2)
「…さらに、Ca:0.0005?0.01%を含有し、…」(【請求項2】)

(1-3)
「【従来の技術】
【0004】

一方、油井あるいはガス井に用いられるシームレス鋼管(継ぎ目なし鋼管)は、近年省エネルギー、省コストの観点から、…熱間でのパイプ圧延後その保有する温度を利用してAc_(3)点以上の温度から水焼入れし、しかる後に焼戻しを行うことが行われている。この方法はいわゆる直接焼入れ法と呼ばれ、最近では多く利用されている。
【0005】
ところが、パイプ圧延後室温温度まで冷却し、再加熱によって所定の焼入れ温度まで昇温させ、続いて焼入れを行う従前のパイプ製造法に比べ、直接焼入れにより製造されたパイプは、オーステナイト→フェライト変態及びその逆方向の変態過程が省略されるため結晶粒が粗大化する傾向を示し、そのため耐SSCC性が劣化することは避けられなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】

従って、本発明は省エネルギーの観点から、1度の焼入れ焼き戻し熱処理によって『割れ限界比(σth/YS) 』で85%以上の耐SSCCと降伏強度75kgf/mm^(2)以上の高強度を両立させる細粒組織を有する高強度シームレス鋼管を製造することを目的とする。…」

(1-4)


」(【表1】、特に発明鋼Bを参照。)

(1-5)


」(【表1】、特に発明法Bの「焼戻し」温度(℃)を参照。)

2.甲第3号証の記載
甲第3号証には、以下の記載がある

(2-1)
「【産業上の利用分野】
本発明は油井用鋼材に係わり、特に硫化水素を含むいわゆるサワー環境の油井あるいはガス井に鋼管などとして使用するに適した耐硫化物応力腐食割れ性に優れた高強度低合金油井用鋼の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
硫化物応力腐食割れは、サワー油井やサワーガス井等の硫化水素を含む湿潤な環境下で使用される鋼材に応力が作用して生ずる現象であり、一般に材料強度が高くなるほど耐硫化物応力腐食割れ性は劣化することが知られている。
従来、上述のサワー環境で使用する高強度油井鋼管等には焼入れ、焼もどし熱処理を施した鋼が供されてきた。…
【0003】
しかし、これらの耐硫化物応力腐食割れ性が良好と判定される根拠はそのほとんどが、例えば、特開平4-21718号公報、特開平3-20443号公報に示されるように、NACE TM-0177、 Method Aや Method Bに規定される平滑丸棒引張試験片あるいは平滑曲げ試験片を用いた硫化物応力腐食割れ試験結果によるもので、潜在亀裂を想定した亀裂先端からの硫化物応力腐食割れの発生、伝播停止特性を含めた判定である場合は少ない。
【0004】
潜在亀裂からの硫化物応力腐食割れの発生、伝播停止特性の評価には応力拡大係数(普通はKで表す)が用いられ、硫化物環境中での下限界応力拡大係数としてK_(issc)値が用いられる。このK_(issc)値は、上述の平滑試験片を用いた試験における耐硫化物応力腐食割れ性が良好な場合でも、比較的低値であるのが実情である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この潜在亀裂からの硫化物応力腐食割れの発生、伝播停止特性もまた耐サワー材において重要な特性であり、本発明の目的は上記従来技術の問題点を解決し、降伏強度が 63kgf/mm^(2)(90ksi)?87kgf/mm^(2)(125ksi)と高強度を有し、しかもK_(issc)が35ksi√(inch)のごとき高K_(issc)値を有する耐硫化物応力腐食割れ性に優れた高強度低合金油井用鋼の製造方法を提供しようとするものである。なお、√(inch)はインチで表した潜在亀裂長さの平方根である。」

(2-2)
「…次に上記限定組成を有する本発明鋼の製造方法について説明する。
本発明鋼の製造方法は常法によって行えばよいので特に限定の要はないが例えば継目無鋼管を例として説明すると、次のごとく行うことが望ましい。すなわち、上記成分組成の鋼を溶製し、脱ガスを十分に行った後、ガス吸収を抑制して造塊し分塊圧延するか、もしくは連続鋳造によりブルームとし、さらに分塊圧延をし次いでマンネスマン方式による熱間圧延により所定の寸法の鋼管とする。

その後、該鋼管をA_(C3)変態点以上のオーステナイト結晶粒が粗大化しない範囲の温度に加熱して急冷する焼入れ処理を行う。この焼入れ処理によって得られた鋼管の組織は主としてマルテンサイト組織であり、非常に硬く脆く硫化物応力腐食割れにきわめて敏感であるので、A_(C3)変態点未満の適正な温度で焼もどしを行うことにより前記問題を解消する。この焼もどし温度は、600℃未満では耐硫化物応力腐食割れの回復はみられず、一方750℃を超えると一部にオーステナイトが発生し、冷却時に再びマルテンサイトまたはベイナイトに変態するため、耐硫化物応力腐食割れの回復は認められなくなる。したがって、焼もどしは600?750℃で行う必要がある。

この焼もどし処理により本発明鋼はいずれも引張強さ63?87kgf/mm^(2)を得ることができる。後記実施例で示すように、従来引張強さ63?87kgf/mm^(2)級鋼では達成困難とされていた高Kissc値が本発明鋼では可能となったもので本発明鋼の大きな特徴の一つである。」(【0015】?【0017】)

(2-3)
「【実施例】
表1にて示す如き成分を有する本発明の成分範囲内の供試材および範囲外の比較供試材を同1条件で溶製し、脱ガス処理後、ガス吸収を抑制して造塊、その後分塊圧延し、次いでマンネスマン方式による熱間圧延により外径88.9mm、、厚さ12.7mmの鋼管とした。」(【0018】)

(2-4)
「これらの各供試材は表2に示す条件によって焼入れ、焼もどしを行った後、引張試験によって機械的性質を調査した。次に耐硫化物応力腐食割れ性の評価をNACE TM-0177、 Method Dに規定されるDCB (Double Canti-lever Beam )試験によってK_(issc)値を求めることにより行った。…」(【0019】)

(2-5)


」(【表1】、特に供試材記号「F」、「G」を参照。)

(2-6)


」(【表2】、特に供試材記号「F」、「G」、及び「*:1時間」を参照。)

3.甲第5号証の記載
甲第5号証には、以下の記載がある。

(3-1)
「Cu成分には、鋼の水素吸収を抑えて耐硫化物割れ性を向上させる作用があるので、耐硫化物割れ性をより向上させたい場合に必要に応じて含有させるものであるが、…(略)…その含有量を010?0.50%と定めた。」(第5頁右上欄第4-11行目)

4.甲第6号証の記載
甲第6号証には、以下の記載がある。

(4-1)


」(表5)

5.甲第7号証の記載
甲第7号証には、以下の記載がある。

(5-1)


」(表1.3-6)

6.甲第8号証の記載
甲第8号証には、以下の記載がある。

(6-1)
「Wは焼入れ性を向上し高強度を確保するとともに、焼戻軟化抵抗を高めて耐硫化物応力割れ性を向上する元素である。そこで耐硫化物応力割れ性を損なわない範囲にMo添加量をとどめ、焼戻軟化抵抗の向上にWを利用することができる。…(略)…0.1%未満ではその効果が十分でなく、2%を超えると効果が飽和するだけでなく、偏析を起こしかえって耐硫化物応力割れ性を低下させるので、0.1?2.0%とした。」(【0029】?【0030】)

7.判断

前記第2.の1.のアの訂正により、請求項1が削除された。
前記第2.の1.のイの訂正により、請求項2が削除された。
前記第2.の1.のエの訂正により、請求項1、2のいずれかを引用する請求項4が削除された。
前記第2.の1.のオの訂正により、請求項1、2のいずれかを引用する請求項5、及び請求項1、2のいずれかを引用する請求項4を引用する請求項5が削除された。
前記第2.の1.のカ、ク?スの訂正により、請求項1、2のいずれかを引用する請求項6、及び請求項1、2のいずれかを引用する請求項4、5のいずれかを引用する請求項6が削除された。
前記第2.の1.のキの訂正により、請求項1、2のいずれかを引用する請求項7、及び請求項1、2のいずれかを引用する請求項4?6のいずれかを引用する請求項7が削除された。

これにより、

・取消理由(1)、(5)の対象であった、請求項1に記載された本件特許発明1に係る特許、
・取消理由(1)、(4)、(5)の対象であった、請求項1、2のいずれかを引用する請求項4に記載された本件特許発明4に係る特許、
・取消理由(2)の対象であった、請求項2に記載された本件特許発明2に係る特許、
・取消理由(3)、(4)、(5)の対象であった、請求項1、2のいずれかを引用する請求項6に記載された本件特許発明6に係る特許、請求項1、2のいずれかを引用する請求項4、5のいずれかを引用する請求項6に記載された本件特許発明6に係る特許、
・取消理由(3)、(5)の対象であった、請求項1、2のいずれかを引用する請求項7に記載された本件特許発明7に係る特許、及び請求項1、2のいずれかを引用する請求項4?6のいずれかを引用する請求項7に記載された本件特許発明7に係る特許、
・取消理由(4)、(5)の対象であった、請求項1、2のいずれかを引用する請求項5に記載された本件特許発明5に係る特許、及び請求項1、2のいずれかを引用する請求項4を引用する請求項5に記載された本件特許発明5に係る特許

が、存在しなくなった。

したがって、請求項1?2に係る特許に対する申立ては、その対象となる特許が存在しないから、結果的に、不適法なものとして却下する。

そこで、以下においては、本件特許訂正発明3?13に係る特許についてのみ、取消理由(1)?(5)、特許異議申立人の主張(6)?(8)、及び証拠により取り消すべきか否かを検討する。

(1)甲第1号証による、取消理由(1)?(4)について

(ア)本件特許訂正発明3についての検討
記載事項(1-1)、(1-4)?(1-5)の内容を本件特許訂正発明3の記載ぶりに則して整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「wt%で、
C:0.25%、 Si:0.25%、
Mn:0.60%、 P:0.012%、
S:0.002%、 Al:0.05%、
N:0.0070%、Cr:1.0%、
Mo:0.7%、 V:0.02%、
Nb:0.03%、 B:0.0020%、
を含有し、残部が実質的にFeからなるビレットを、1270℃に加熱した後、マンネスマン式シームレス圧延によって熱間穿孔を施し、前記熱間穿孔されたビレットを、1010℃までミスト冷却し、ミスト冷却されたビレットをマンドレル圧延により、40%の圧下を行い、960℃で圧延を終了してシームレス鋼管とし、前記シームレス鋼管に直ちに焼入れ開始温度が950℃である水焼入れを施し、ついで、水焼入れした前記シームレス鋼管を685℃で焼き戻す、耐硫化物応力割れ性に優れた油井用シームレス鋼管の製造方法。」

(イ)
本件特許訂正発明3と甲1発明とを対比する。

甲1発明の「wt%」は本件特許訂正発明3の「mass%」に相当し、甲1発明の「ビレット」は本件特許訂正発明3の「鋼管素材」に相当し、甲1発明の「油井用シームレス鋼管の製造方法」は本件特許訂正発明3の「油井用継目無鋼管の製造方法」に相当する。

また、甲1発明の「C:0.25%」は本件特許訂正発明3の「C:0.15?0.50%」に含まれ、甲1発明の「Si:0.25%」は本件特許訂正発明3の「Si:0.1?0.30%」に含まれ、甲1発明の「Mn:0.60%」は本件特許訂正発明3の「Mn:0.3?1.0%」に含まれ、甲1発明の「P:0.012%」は本件特許訂正発明3の「P:0.015%以下」に含まれ、甲1発明の「S:0.002%」は本件特許訂正発明3の「S:0.005%以下」に含まれ、甲1発明の「Al:0.05%」は本件特許訂正発明3の「Al:0.01?0.05%」に含まれ、甲1発明の「N:0.0070%」は本件特許訂正発明3の「N:0.01%以下」に含まれ、甲1発明の「Cr:1.0%」は本件特許訂正発明3の「Cr:0.1?1.7%」に含まれ、甲1発明の「Mo:0.7%」は本件特許訂正発明3の「Mo:0.40?1.1%」に含まれ、甲1発明の「V:0.02%」は本件特許訂正発明3の「V:0.01?0.12%」に含まれ、甲1発明の「Nb:0.03%」は本件特許訂正発明3の「Nb:0.01?0.08%」に含まれ、甲1発明の「B:0.0020%」は本件特許訂正発明3の「B:0.0005?0.003%」に含まれる。

そして、甲1発明の「1270℃」は本件特許訂正発明3の「1000?1350℃の範囲の温度」に含まれ、甲1発明の「焼入れ開始温度が950℃」は本件特許訂正発明3の「焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃」に含まれ、甲1発明の「685℃」は本件特許訂正発明3の「665?740℃の範囲の温度」に含まれる。

してみると、両者は、
「mass%で、
C:0.25%、 Si:0.25%、
Mn:0.60%、 P:0.012%、
S:0.002%、 Al:0.05%、
N:0.0070%、Cr:1.0%、
Mo:0.7%、 V:0.02%、
Nb:0.03%、 B:0.0020%、
を含む、鋼管素材を、1270℃に加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とした後に、急冷する焼入れ温度が、Ac_(3)変態点以上である950℃にて水焼入れ処理を施し、ついで、685℃で焼戻処理を施す、耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:本件特許訂正発明3においては、鋼管素材に熱間加工を施して得た「継目無鋼管」を、「空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱」してから「焼入れ処理」に供するのに対して、甲1発明はかかる事項を有していない点。

相違点2:本件特許訂正発明3においては、鋼管素材における残部が「Feおよび不可避的不純物」であるのに対して、甲1発明においては、残部が「実質的にFeからなる」点。

相違点3:本件特許訂正発明3においては、「該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係」が、
「70nm≦10000000√(60Dt)≦150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)」で表される(2)式を満足する処理とするのに対し、甲1発明はかかる事項を有していない点。

相違点4:本件特許訂正発明3においては、「継目無鋼管」が、「焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織」を有するのに対し、甲1発明はかかる事項を有していない点。

そこで、上記相違点について検討する。

(ウ)相違点1について
本件特許明細書には、【特許請求の範囲】に「【請求項3】…所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施す…」(下線部は当審にて付与した。)と記載され、本件特許明細書の発明の詳細な説明中の【背景技術】の欄に、「…サワー環境下にある厳しい腐食環境の油田やガス田等の開発が盛んになっている。このような環境下で使用される油井用鋼管には、高強度で、かつ優れた耐食性(耐サワー性)を兼ね備えた材質を有することが要求される。」(【0002】)との記載があり、【発明が解決しようとする課題】の欄に、「しかしながら、耐SCC性に及ぼす各種要因は極めて複雑であり、110ksi級の高強度鋼管において安定して、耐SSC性を確保するための条件は明確になっておらず、特許文献1、特許文献3、特許文献4、特許文献5に記載された技術によってもなお、厳しい腐食環境下で油井管として使用できる、耐SSC性に優れた油井用鋼管を安定して製造できるまでに至っていないのが実情である。…」(【0009】)、及び「本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、油井用として好適な、耐硫化物応力割れ性(耐SSC性)に優れた高強度継目無鋼管を提供することを目的とする。なお、ここでいう『耐硫化物応力割れ性(耐SSC性)に優れた』とは、NACE TM0177 Method Aの規定に準拠した、H_(2)Sが飽和した0.5%酢酸+5.0%食塩水溶液(液温:24℃)中での定荷重試験を実施し、降伏強さの85%の負荷応力で負荷時間:720時間を超えて、割れが生じない場合をいうものとする。」(【0010】)との記載があり、【課題を解決するための手段】の欄に、「(10)(9)において、前記空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ処理を施し、ついで、前記焼戻処理を施すことを特徴とする油井用継目無鋼管の製造方法。」(【0017】)、【発明の効果】の欄に、「本発明によれば、110ksi級の高強度と、さらに硫化水素を含む厳しい腐食環境下における優れた耐硫化物応力割れ性とを兼備する高強度継目無鋼管を容易に、しかも安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。…」(【0021】)、【発明を実施するための形態】の欄に、「多量の合金元素を含有することなく、比較的低い合金元素含有量で、110ksi級の高強度を確保するために、本発明鋼管では、マルテンサイト相組織とするが、所望の靭性、延性さらには耐硫化物応力割れ性の確保の観点から、これらマルテンサイト相を焼戻した焼戻マルテンサイト相を主相とする組織とする。…(略)…したがって、『焼戻マルテンサイト相を主相とする組織』とは、体積%で95%以上の焼戻マルテンサイト相を含む組織を意味する。」(【0041】)、及び「なお、造管後、好ましくは空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したままでは、95体積%以上のマルテンサイト組織が得られない場合には、焼入れ処理を省略することなく、再加熱し、急冷(水冷)する焼入れ処理を施したのち焼戻処理を行うことは言うまでもない。…」(【0052】)との記載がある。

(エ)
これらの記載によれば、本件特許訂正発明3は、造管後、室温まで冷却してから、再加熱し、急冷(水冷)する焼入れ処理を施したのち焼戻処理を行い、継目無鋼管の有する組織を、焼戻した焼戻マルテンサイト相を主相とする組織とすることで、110ksi級の高強度と、さらに硫化水素を含む厳しい腐食環境下における優れた耐硫化物応力割れ性とを兼備する高強度継目無鋼管を得るという効果を得ることができるものと認められる。

(オ)
これに対し、甲1発明においては、前記(1-3)に記載されているように、省エネルギーの観点から、造管後直接焼入れを行うことが特徴点である。

そうすると、相違点1は、実質的な相違点であって、しかも、甲1発明の上記特徴点に照らし、省エネルギーの観点から、甲1発明において、造管後、室温まで冷却してから、再加熱し、急冷(水冷)する焼入れ処理を採用することは、決して動機付けられるものではない、ということができる。

したがって、相違点1に係る構成は、甲1発明に基づき当業者が容易になし得るものではない。

(カ)
よって、相違点2?4を検討するまでもなく、本件特許訂正発明3は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(キ)本件特許訂正発明4?13についての検討
そして、本件特許訂正発明4?13は、本件特許訂正発明3の発明特定事項の全てを発明特定事項として含むものであるから、上記(1)の(ア)?(カ)で述べたものと同じ理由により、これら発明は、甲第1号証に記載された発明ではないし、甲第1号証、甲第3、5、8号証の記載、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)甲第3号証による、取消理由(1)、及び特許異議申立人の主張(6)について

(ア)
訂正前の本件特許発明6は、取消理由(1)において、甲第3号証に記載された発明である、とされている。

ここで、訂正前の本件特許発明6は、前記第2.の1.のカ、ク?コの訂正により、本件特許訂正発明6、8?10として書き下されている。

また、本件特許訂正発明9は、取消理由(6)において、甲第3号証に記載された発明であるか、甲第3号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである、とされている。

よって、以下においては、本件特許訂正発明6、8?10が、甲第3号証に記載された発明であるか否か、及び、本件特許訂正発明9が、甲第3号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるか否か、について、検討する。

(イ)本件特許訂正発明9について
本件特許訂正発明9においては「耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管」と特定されている。

ここで、本件特許明細書(【0010】)には「…『耐硫化物応力割れ性(耐SSC性)に優れた』とは、NACE TM0177 Method Aの規定に準拠した、H_(2)Sが飽和した0.5%酢酸+5.0%食塩水溶液(液温:24℃)中での定荷重試験」(当審註:以下、「A試験」という。)を実施し、降伏強さの85%の負荷応力で負荷時間:720時間を超えて、割れが生じない場合をいうものとする。」と記載されている。

そうすると、本件特許訂正発明9における「耐硫化物応力割れ性に優れた」という記載は、油井用継目無鋼管がA試験を実施し、「降伏強さの85%の負荷応力で負荷時間:720時間を超えて、割れが生じない」ことを意味することがわかる。

一方、前記2.の記載事項(2-1)から、甲第3号証における「耐硫化物応力割れ性に優れた」という記載は、油井用継目無鋼管の「硫化物環境中での下限界応力拡大係数」である「K_(issc)値」が高いことを意味すること、及び、当該「K_(issc)値」は、A試験による硫化物応力腐食割れ性が良好であっても「比較的低値である」ことがわかる。

そして、前記2.の記載事項(2-2)?(2-6)の内容を本件特許訂正発明9の記載ぶりに則して整理し、「マンネスマン方式による熱間圧延」に続く「焼入れ処理」を実施するにあたり「A_(C3)変態点以上のオーステナイト結晶粒が粗大化しない範囲の温度」である「900℃」に「加熱」していることからみて、この「加熱」は再加熱であると解されることを勘案すると、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。

「wt%で、
C:0.24%、 Si:0.61%、
Mn:0.41%、 P:0.010%、
S:0.003%、 Al:0.051%、
N:0.0037%、Cr:0.98%、
Mo:0.79%、 V:0.044%、
Nb:0.033%、 B:0.0025%、
を含有し、さらに、Ti:0.029%、さらに、Ni:0.76%を含有し、残部が実質的にFeからなる鋼を、マンネスマン方式による熱間圧延により鋼管とし、該鋼管を900℃に再加熱して急冷する焼入れ処理を行い、組織が主としてマルテンサイト組織である鋼管とし、当該鋼管を、690℃、1時間で焼き戻す、高K_(issc)値を有する高強度低合金油井用継目無鋼管の製造方法。」

(ウ)
本件特許訂正発明9と甲3発明とを対比する。

甲3発明の「wt%」は本件特許訂正発明9の「mass%」に相当し、甲3発明の「鋼」は本件特許訂正発明9の「鋼管素材」に相当し、甲3発明の「鋼を、マンネスマン方式による熱間圧延により鋼管とし」は本件特許訂正発明9の「該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし」に相当し、甲3発明の「高強度低合金油井用継目無鋼管の製造方法」は本件特許訂正発明9の「油井用継目無鋼管の製造方法」に相当する。

また、甲3発明の「C:0.24%」は本件特許訂正発明9の「C:0.15?0.50%」に含まれ、甲3発明の「Si:0.61%」は本件特許訂正発明9の「Si:0.1?0.30%」に含まれ、甲3発明の「Mn:0.41%」は本件特許訂正発明9の「Mn:0.3?1.0%」に含まれ、甲3発明の「P:0.010%」は本件特許訂正発明9の「P:0.015%以下」に含まれ、甲3発明の「S:0.003%」は本件特許訂正発明9の「S:0.005%以下」に含まれ、甲3発明の「N:0.0037%」は本件特許訂正発明9の「N:0.01%以下」に含まれ、甲3発明の「Cr:0.98%」は本件特許訂正発明9の「Cr:0.1?1.7%」に含まれ、甲3発明の「Mo:0.79%」は本件特許訂正発明9の「Mo:0.40?1.1%」に含まれ、甲3発明の「V:0.044%」は本件特許訂正発明9の「V:0.01?0.12%」に含まれ、甲3発明の「Nb:0.033%」は本件特許訂正発明9の「Nb:0.01?0.08%」に含まれ、甲3発明の「B:0.0025%」は本件特許訂正発明9の「B:0.0005?0.003%」に含まれ、甲3発明の「Ti:0.029%」は本件特許訂正発明9の「Ti:0.03%以下」に含まれ、甲3発明の「Ni:0.76%」は本件特許訂正発明9の「Ni:1.0%以下」に含まれる。

そして、甲3発明の「鋼管を900℃に再加熱して急冷する焼入れ処理」は本件特許訂正発明9の「再加熱し急冷する焼入れ温度がAc3変態点?1050℃である焼入れ処理」に含まれ、甲3発明の「690℃」は本件特許訂正発明9の「665?740℃の範囲の温度」に含まれる。

さらに、甲3発明の「690℃、1時間で焼き戻す」処理は、本件特許訂正発明9の(2)式を満足する焼戻処理である(T=690(℃)、t=1(時間)=60(min)を(2)式の中央値に代入するとおおよそ92.5(nm)となる。)。

してみると、両者は、
「mass%で、
C:0.24%、 Si:0.61%、
Mn:0.41%、 P:0.010%、
S:0.003%、
N:0.0037%、Cr:0.98%、
Mo:0.79%、 V:0.044%、
Nb:0.033%、 B:0.0025%、
を含有し、さらに、Ti:0.029%、さらに、Ni:0.76%を含有し、残部が実質的にFeからなる鋼管素材に、熱間圧延を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、900℃に再加熱して急冷する焼入れ処理を施し、ついで、690℃、1時間で焼戻処理を施す、油井用継目無鋼管の製造方法。」

である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点5:本件特許訂正発明9における「耐硫化物応力割れ性」は、A試験を実施し、「降伏強さの85%の負荷応力で負荷時間:720時間を超えて、割れが生じない」ことであるのに対し、甲3発明における「耐硫化物応力割れ性」は、油井用継目無鋼管の「硫化物環境中での下限界応力拡大係数」である「K_(issc)値」が高いことである点。

相違点6:本件特許訂正発明9は、「熱間加工を施」す前の鋼管素材に「1000?1350℃の範囲の温度」への再加熱を施しているのに対し、甲3発明は、「マンネスマン方式による熱間圧延」を施す前の鋼管素材について、かかる事項を有していない点。

相違点7:本件特許訂正発明9においては、「継目無鋼管」が、「焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織」を有するのに対し、甲3発明はかかる事項を有していない点。

相違点8: 本件特許訂正発明9に係る継目無鋼管のAl含有量は「0.01?0.05%」であるのに対し、甲3発明に係る継目無鋼管のAl含有量は「0.051%」である点。

そこで、上記相違点について検討する。

(エ)相違点5について
前記2.の記載事項(2-1)からみて、「K_(issc)値」は「NACE TM-0177、 Method A」に規定される試験による硫化物応力腐食割れ性の結果に依存しないことがわかる。

そうすると、継目無鋼管の「K_(issc)値」が高いことは、当該継目無鋼管がA試験を実施し、「降伏強さの85%の負荷応力で負荷時間:720時間を超え」た場合に「割れが生じない」ことを示唆するものではない。

してみると、相違点5に係る構成は、実質的な相違点であって、しかも、甲第3号証に基づいて導出することができるものでもない。

(オ)
よって、相違点6?8について検討するまでもなく、本件特許訂正発明9は、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(カ)本件特許訂正発明6、8、10について
上記(2)(ア)?(エ)の検討を踏まえ、本件特許訂正発明6と、甲3発明とを対比すると、両者は、上記(2)(ウ)と同じ点で一致し、相違点5?8と同じ相違点において相違するから、本件特許発明6も、甲第3号証に記載された発明ではないということができる。
また、本件特許訂正発明8、10についても、同様である。

(キ)
したがって、本件特許訂正発明6、8?10は、甲第3号証に記載された発明ではなく、本件特許訂正発明9は、甲第3号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)取消理由(5)、及び特許異議申立人の主張(7)について

(ア)
特許異議申立人は、特許異議申立書において、以下のとおり主張する。

「カ 特許法第36条第6項第1号について
…(略)…
(2)式の適合の有無のみを異ならせた実施例があるのは、鋼No.H(表3の鋼管No.17,18)だけである…(略)…この2点だけから、70≦10000000√(60Dt)という境界線を引くことができないことは明らかである。
…(略)…
また、(2)式の上限を外れた比較例は存在しないから、10000000√(60Dt)≦150という境界線を見いだすこともできない。
以上のとおり、本件明細書の発明の詳細な説明は、(2)式が示す範囲内であれば、所望の効果(性能)が得られると当業者において認識できる程度に、具体例を開示して記載されたものではない。」

(イ)
また、特許異議申立人は、平成28年 5月 6日付け意見書にて、主張(7)に関し以下のとおり主張する。

「(5)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
ア (2)式について
…(略)…
しかし、特許権者が作成した参考図(1)及び(2)には、(2)式以外の条件を満たさないことによって所期の特性が得られていないものが含まれている。
…(略)…
参考図(1)及び(2)からNo.12及びNo.14を除外すれば、(2)式の中央値が70nmという値に臨界的意義があるとは認められないどころか、(2)式の中央値と各特性との間に有意な相関があるかどうかさえも明確には認識できない。」

(ウ)
そこで、検討するに、本件特許明細書【0010】には、【発明が解決しようとする課題】について、
「本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、油井用として好適な、耐硫化物応力割れ性(耐SSC性)に優れた高強度継目無鋼管を提供することを目的とする。…」
と記載されている。

また、本件特許明細書【0012】には、【発明が解決するための手段】について、
「またさらに、本発明者らは、転位が水素のトラップサイトになることに鑑み、
(5)転位密度:6.0×10^(14)/m^(2)以下の組織とすること、
により、鋼管の耐硫化物応力割れ性が顕著に向上することを見出した。そして、鉄の拡散距離に基づく適正な関係式を満足するように、焼戻処理における焼戻温度と保持時間とを調整することにより、上記した転位密度まで安定して転位を減少することができることを見出した。」
と記載されている。

そして、本件特許明細書【0055】には、
「なお、本発明では、更なる耐硫化物応力割れ性向上のために、焼戻処理を調整し、好ましくは転位密度を6.0×10^(14)/m^(2)以下に低減する。転位密度を6.0×10^(14)/m^(2)以下に低減するには、焼戻温度T(℃)と該焼戻温度における保持時間t(min)を、次(2)式
70nm≦10000000√(60Dt)≦150nm ‥‥(2)
…(略)…を満足するように調整する。…」
と記載され、本件特許明細書【0056】には、
「(2)式の中央値(鉄原子の拡散距離)が、70nm未満では、転位密度を6.0×10^(14)/m^(2)以下とすることができない。一方、(2)式の中央値(鉄原子の拡散距離)が、150nmを超えて大きくなると、降伏強さYSが目標値である110ksi未満となる。(2)式を満足するように、焼戻温度と保持時間を選択して焼戻処理を施すことにより、優れた耐SCC性と、所望の高強度(YS:110ksi以上)とを兼備させることができる。」と記載されている。

(エ)
以上の記載から、本件特許訂正発明3においては、(2)式の中央値を70nm以上とすることで、継目無鋼管の転位密度を6.0×10^(14)/m^(2)以下とし、耐SSC性を向上できること、及び、(2)式の中央値を150nm以下とすることで、継目無鋼管の降伏強さYSを110ksi以上、すなわち758MPa以上とすることが読み取れる。

(オ)
そして、本件特許明細書の【表3】からは、本件特許訂正発明3における合金組成の規定を満足する「本発明例」である鋼管No.18は、(2)式の中央値が70nm以上150nm以下であって、A試験を実施し、降伏強さの85%の負荷応力で負荷時間:720時間を超えて割れが生じず、降伏強さが758MPa以上であることが実際に確認されている。

(カ)
そうすると、所定の合金組成を有する継目無鋼管を所定の手順にて製造するにあたり、(2)式の中央値が70nm以上150nm以下となる条件にて焼戻処理を実施することで、「110ksi級の高強度鋼管において安定して、耐SSC性を確保する」という課題を解決できることを当業者は認識できるといえ、この点に関し、特許異議申立人の取消理由(5)における主張、及び主張(7)を採用することはできない。

(4)特許異議申立人の主張(8)について

(ア)
特許異議申立人は、本件訂正請求に対する平成28年5月13日付けの意見書において、本件特許訂正発明8?10、12に関し、下記のとおり主張する。

「しかし、実施例には上記のような組成を持つ鋼は存在せず(表1参照)、上記の発明は、実施によって裏付けられていない。…(略)…すなわち、当業者は、訂正発明8-10及び12によって、発明の課題が解決できることを認識できない。」

(イ)
しかし、本件特許訂正発明の【発明が解決しようとする課題】は「耐硫化物応力割れ性(耐SSC性)に優れた高強度継目無鋼管を提供する」ことであり、ここでいう「耐硫化物応力割れ性(耐SSC性)に優れた」とは、A試験を実施した際に、「降伏強さの85%の負荷応力で負荷時間:720時間を超えて、割れが生じない」場合をいうものである。

(ウ)
また、【表1】の鋼No.Hは、Cu、Ni、Caのいずれも含有しない「適合例」であり、【表2】の鋼管No.18は上記鋼No.Hを用いた「実施例」であるところ、当該鋼管No.18は、A試験を実施した際に、降伏強さの85%の負荷応力で負荷時間:720時間を超えて、割れが生じないものであるから、「耐硫化物応力割れ性(耐SSC性)に優れた高強度継目無鋼管を提供する」という、本件特許訂正発明の【発明が解決しようとする課題】を解決できることがわかる。

(エ)
そして、本件特許明細書(【0035】)の「…Cuは、…(略)…とくに、厳しい耐硫化物応力割れ性が要求される場合には、極めて重要な元素となる。…」という記載から、Cuは継目無鋼管の耐硫化物応力割れ性を向上する効果を見込んで添加されるものであって、また、【表2】における鋼管No.2、3(鋼No.B、Cuなし)と鋼管No.20(鋼No.J、Cu添加)とを対比すれば、後者がより優れた「耐SSC性」を示すことから、継目無鋼管におけるCu添加の効果は裏付けられているといえる。

(オ)
そうすると、「耐硫化物応力割れ性(耐SSC性)に優れた高強度継目無鋼管を提供する」という課題を解決する、Cuを含有しない【表2】の鋼管No.18において、継目無鋼管に添加することで耐硫化物応力割れ性を向上する効果が見込めるCuを添加すると、やはり上記【発明が解決しようとする課題】を解決できることは、実施例による直接の裏付けがなくとも、当業者が認識できるものということができるから、本件特許訂正発明8が、本件特許の発明の詳細な説明に記載されていないとまではいえない。

(カ)
また、上記(ウ)で述べたとおり、Cu、Ni、Caのいずれも含有しない鋼管No.18は上記【発明が解決しようとする課題】を解決できるものであり、Caを含有しNiを含有しない鋼No.B、Fを用いた鋼管No.2、3、10も、A試験を実施した際に、降伏強さの85%の負荷応力で負荷時間:720時間を超えて、割れが生じないものであるから、上記【発明が解決しようとする課題】を解決できることがわかる。

(キ)
そして、本件特許明細書(【0036】)には「…Niは、鋼の強度を増加させるとともに、靭性、耐食性を向上させる作用を有する元素であり、…」と記載されているところ、Niの添加による上記の効果は、例えば特開平06-256852号公報の「Niは低温靱性の改善や耐食性に改善に有用で添加される…」(【0027】)や、特開昭58-019438号公報の「Cu,Ni,Cr,Mo,Nb,およびV成分は、いずれも強度上昇と靱性向上のために有効なものであるが、…Ni成分には低温靱性の向上…という効果も備えられている。」(第3頁左下欄第15?19行)と記載されているように、継目無鋼管において広く知られているものといえる。

(ク)
そうすると、「耐硫化物応力割れ性(耐SSC性)に優れた高強度継目無鋼管を提供する」という課題を解決する、Niを含有しない【表2】の鋼管No.2、3、10、18において、継目無鋼管に添加することで靭性、耐食性を向上させるを向上する効果が見込めるNiを添加するときにも上記【発明が解決しようとする課題】を解決できることは、実施例による直接の裏付けがなくとも、当業者が認識できるものであるから、本件特許訂正発明9、12が、本件特許の発明の詳細な説明に記載されていないとまではいえない。

(ケ)
そして、「耐硫化物応力割れ性(耐SSC性)に優れた高強度継目無鋼管を提供する」という課題を解決する、CuやNiを含有しない【表2】の鋼管No.10において、CuやNiを添加することで上記【発明が解決しようとする課題】を解決できることについても、実施例による直接の裏付けがなくとも、当業者が認識できるものであるから、本件特許訂正発明10が、本件特許の発明の詳細な説明に記載されていないとまではいえない。

(コ)
してみると、本件特許訂正発明8?10、12に係る特許が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとまではいえず、この点に関し、特許異議申立人の主張を採用することはできない。

第7.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項3?13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項3?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1?2に係る特許は存在しなくなったので、これらの特許に対しては、特許異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】
mass%で、
C :0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P :0.015%以下、
S :0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N :0.010%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V :0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B :0.0005?0.003%、
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm ≦ 10000000√(60D t) ≦ 150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)
【請求項4】
前記組成に加えてさらに、mass%で、Cu:1.0%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項3に記載の油井用継目無鋼管の製造方法。
【請求項5】
前記組成に加えてさらに、mass%で、Ni:1.0%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項3または4に記載の油井用継目無鋼管の製造方法。
【請求項6】
mass%で、
C :0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P :0.015%以下、
S :0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N :0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V :0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B :0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm ≦ 10000000√(60D t) ≦ 150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)
【請求項7】
前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.001?0.005%を含有する組成とすることを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載の油井用継目無鋼管の製造方法。
【請求項8】
mass%で、
C :0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P :0.015%以下、
S :0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N :0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V :0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B :0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種、さらに、Cu:1.0%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm ≦ 10000000√(60D t) ≦ 150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)
【請求項9】
mass%で、
C :0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P :0.015%以下、
S :0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N :0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V :0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B :0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種、さらに、Ni:1.0%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm ≦ 10000000√(60D t) ≦ 150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)
【請求項10】
mass%で、
C :0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P :0.015%以下、
S :0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N :0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V :0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B :0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種、さらに、Ni:1.0%以下およびCu:1.0%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm ≦ 10000000√(60D t) ≦ 150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)
【請求項11】
mass%で、
C :0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P :0.015%以下、
S :0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N :0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V :0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B :0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種、さらに、Cu:1.0%以下、Ca:0.001?0.005%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm ≦ 10000000√(60D t) ≦ 150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)
【請求項12】
mass%で、
C :0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P :0.015%以下、
S :0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N :0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V :0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B :0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種、さらに、Ni:1.0%以下、Ca:0.001?0.005%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm ≦ 10000000√(60D t) ≦ 150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)
【請求項13】
mass%で、
C :0.15?0.50%、 Si:0.1?0.30%、
Mn:0.3?1.0%、 P :0.015%以下、
S :0.005%以下、 Al:0.01?0.05%、
N :0.01%以下、 Cr:0.1?1.7%、
Mo:0.40?1.1%、 V :0.01?0.12%、
Nb:0.01?0.08%、 B :0.0005?0.003%、
を含み、さらに、Ti:0.03%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種、さらに、Ni:1.0%以下、Cu:1.0%以下、およびCa:0.001?0.005%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、1000?1350℃の範囲の温度に再加熱したのち、該鋼管素材に熱間加工を施し、所定形状の継目無鋼管とし、ついで、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却したのち、さらに再加熱し急冷する焼入れ温度がAc_(3)変態点?1050℃である焼入れ処理を施し、ついで、665?740℃の範囲の温度で焼戻処理を施すに当たり、
前記焼戻処理を、焼戻温度T(℃)が前記温度の範囲内で、かつ該焼戻温度T(℃)と保持時間t(min)との関係が下記(2)式を満足する処理とし、
前記継目無鋼管を、焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒が粒度番号で8.5以上で、略粒子状のM_(2)C型析出物が0.06mass%以上分散してなる組織を有する継目無鋼管とすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用継目無鋼管の製造方法。

70nm ≦ 10000000√(60D t) ≦ 150nm ‥‥(2)
ここで、D(cm^(2)/s)=4.8exp(-(63×4184)/(8.31(273+T))
T:焼戻温度(℃)、t:焼戻保持時間(min)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-07-27 
出願番号 特願2010-141870(P2010-141870)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C22C)
P 1 651・ 113- YAA (C22C)
P 1 651・ 537- YAA (C22C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 陽一  
特許庁審判長 鈴木正紀
特許庁審判官 板谷一弘
河野一夫
登録日 2015-04-17 
登録番号 特許第5728836号(P5728836)
権利者 JFEスチール株式会社
発明の名称 耐硫化物応力割れ性に優れた油井用高強度継目無鋼管の製造方法  
代理人 落合 憲一郎  
代理人 小林 英一  
代理人 落合 憲一郎  
代理人 小林 英一  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ