• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F16K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F16K
管理番号 1321215
異議申立番号 異議2016-700005  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-01-07 
確定日 2016-07-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5747068号発明「弁体撤去装置及び弁体撤去方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第5747068号の明細書,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書,特許請求の範囲及び図面のとおり,請求項1-7について訂正することを認める。 特許第5747068号の請求項1,3,4,6,7に係る特許を維持する。 特許第5747068号の請求項2,5に係る特許についての申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5747068号の請求項1?7に係る特許についての出願は,平成25年11月29日の特許出願であって,平成27年 5月15日にその特許権の設定登録がされた。その後,その特許について,特許異議申立人 小川鐵夫より本件特許異議の申立てがされ,平成28年 2月26日に取消理由が通知され,その指定期間内である平成28年 4月21日に意見書の提出及び訂正の請求があったものである。その後,特許異議申立人に期間を設定して意見書を提出する機会を与えたが,応答はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
平成28年 4月21日付けの訂正請求(以下,「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は,訂正事項1-17のとおりである。
1 請求項1-6に係る訂正
(1)訂正事項1-15
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「流体管に連結される管路部本体及び該管路部本体を閉塞可能な弁本体部を備える弁装置の前記弁本体部を撤去するための弁体撤去装置において,
前記弁体撤去装置は,前記弁装置の一部を密封状態に囲う作業用ケースと,前記作業用ケースの内部空間を仕切る作業弁と,前記弁本体部を前記作業用ケース内で移動を可能とする弁移動手段と,前記管路部本体に設けられた第1フランジ及び前記弁本体部に設けられた第2フランジを締結する締結部材と,を備え,
前記作業用ケースは,前記締結部材が挿通される前記第1フランジの挿通孔の径方向外側を封止する封止部を有する」
と記載されているのを,
「流体管に連結される管路部本体,及び該管路部本体を閉塞可能な弁本体部を備える弁装置の前記弁本体部を不断流状態で撤去するための弁体撤去装置において,
前記弁体撤去装置は,前記弁装置の一部を密封状態に囲う作業用ケ-スと,前記作業用ケースの内部空間を仕切る作業弁と,前記弁本体部を前記作業用ケース内で移動を可能とする弁移動手段と,前記管路部本体に設けられた第1フランジ及び前記弁本体部に設けられた第2フランジを締結する締結部材と,を備え,
前記作業用ケ-スは,第1分割体及び第2分割体から構成され,
前記第2分割体は,前記作業弁及び前記弁移動手段を収容し,
前記第1分割体は,前記第2フランジとの間に隙間を有するとともに周方向に分割される複数の分割片,及び前記分割片同士を締付けるボルト・ナットからなり,前記締結部材が挿通される前記第1フランジの挿通孔の径方向外側の前記第1フランジの外周面あるいは軸方向下端面を封止する封止部を有するとともに,前記第1フランジの挿通孔に挿通される前記締結部材の頭部位置まで延設して保持する支持部材を有する」
に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「長尺ナットを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の弁体撤去装置。」
と記載されているのを,
「長尺ナットを備えることを特徴とする請求項1に記載の弁体撤去装置。」
に訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「保持手段を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の弁体撤去装置。」
と記載されているのを,
「保持手段を備えることを特徴とする請求項1または3に記載の弁体撤去装置。」
に訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に
「前記第1分割体は,前記第1フランジの少なくとも短軸方向に沿って2分割されることを特徴とする請求項5に記載の弁体撤去装置。」
と記載されているのを,
「前記第1分割体は,前記第1フランジの少なくとも短軸方向に沿って2分割されることを特徴とする請求項1,3または4のいずれかに記載の弁体撤去装置。」
に訂正する。
キ 訂正事項7
願書に添付した明細書の段落0009に,
「前記課題を解決するために,本発明の弁体撤去装置は,
流体管に連結される管路部本体及び該管路部本体を閉塞可能な弁本体部を備える弁装置の前記弁本体部を撤去するための弁体撤去装置において,
前記弁体撤去装置は,前記弁装置の一部を密封状態に囲う作業用ケースと,前記作業用ケースの内部空間を仕切る作業弁と,前記弁本体部を前記作業用ケース内で移動を可能とする弁移動手段と,前記管路部本体に設けられた第1フランジ及び前記弁本体部に設けられた第2フランジを締結する締結部材と,を備え,
前記作業用ケースは,前記締結部材が挿通される前記第1フランジの挿通孔の径方向外側を封止する封止部を有することを特徴としている。
この特徴によれば,作業用ケースが,第1フランジの締結部材挿通孔の径方向外側を封止して,弁装置の一部を作業用ケースで密封状に囲うので,種々の弁装置に適用可能であるとともに,流体管よりも弁本体部側での作業のみで,弁装置から弁本体部を撤去することができる。」
と記載されているのを,
「前記課題を解決するために,本発明の弁体撤去装置は,流体管に連結される管路部本体,及び該管路部本体を閉塞可能な弁本体部を備える弁装置の前記弁本体部を不断流状態で撤去するための弁体撤去装置において,
前記弁体撤去装置は,前記弁装置の一部を密封状態に囲う作業用ケースと,前記作業用ケースの内部空間を仕切る作業弁と,前記弁本体部を前記作業用ケース内で移動を可能とする弁移動手段と,前記管路部本体に設けられた第1フランジ及び前記弁本体部に設けられた第2フランジを締結する締結部材と,を備え,
前記作業用ケースは,第1分割体及び第2分割体から構成され,
前記第2分割体は,前記作業弁及び前記弁移動手段を収容し,
前記第1分割体は,前記第2フランジとの間に隙間を有するとともに周方向に分割される複数の分割片,及び前記分割片同士を締付けるボルト・ナットからなり,前記締結部材が挿通される前記第1フランジの挿通孔の径方向外側の前記第1フランジの外周面あるいは軸方向下端面を封止する封止部を有するとともに,前記第1フランジの挿通孔に挿通される前記締結部材の頭部位置まで延設して保持する支持部材を有することを特徴としている。
この特徴によれば,作業用ケースが,第1フランジの締結部材挿通孔の径方向外側を封止して,弁装置の一部を作業用ケースで密封状に囲うので,種々の弁装置に適用可能であるとともに,流体管よりも弁本体部側での作業のみで,弁装置から弁本体部を撤去することができる。」
に訂正する。
ク 訂正事項8
願書に添付した明細書の段落0010の記載を削除する。
ケ 訂正事項9
願書に添付した明細書の段落0013の記載を削除する。
コ 訂正事項10
願書に添付した明細書の段落0016の図16の説明を削除する。
サ 訂正事項11
願書に添付した明細書の段落0024に,
「分割式取付部材31は,図2から図4(a)に示すように,封止部36は,管路部フランジ6の外周面に相対する位置で,分割式取付部材31の内周面に形成された環状の溝部37と,溝部37に嵌め込まれ,保持される密封部材38と,からなっている。また,密封部材38の厚さ寸法は,溝部37の深さより大きくして,密封部材38が適度に圧縮されるようにしている。本発明に係る密封部材として,断面が円形の丸ゴムパッキン,略C字状または方形状または,リップ付きのゴムパッキンを使用することができる。これにより,封止部36は,管路部フランジ6の外周面に接する密封部材38によって,流体管路よりも弁本体部側での作業のみで管路部を密封状に囲うことができる。図2から図4(a)においては,封止部36の密封部材38は,管路部フランジ6の外周面のみに接して密封しているが,管路部本体3の管路部フランジ6のボルト挿通孔24の径方向外側,すなわち管路部フランジ6の軸方向下端面のみを,または,前記管路部フランジ6の軸方向下端面と管路部フランジ6の外周面の両方を,密封部材によって封止することもできる。尚,密封部材は,止水性向上のため,第2フランジまで延設されるものであってもよい。」
とあるのを,
「分割式取付部材31は,図2から図4(a)に示すように,封止部36は,管路部フランジ6の外周面に相対する位置で,分割式取付部材31の内周面に形成された環状の溝部37と,溝部37に嵌め込まれ,保持される密封部材38と,からなっている。また,密封部材38の厚さ寸法は,溝部37の深さより大きくして,密封部材38が適度に圧縮されるようにしている。本発明に係る密封部材として,断面が円形の丸ゴムパッキン,略C字状または方形状または,リップ付きのゴムパッキンを使用することができる。これにより,封止部36は,管路部フランジ6の外周面に接する密封部材38によって,流体管路よりも弁本体部側での作業のみで管路部を密封状に囲うことができる。図2から図4(a)においては,封止部36の密封部材38は,管路部フランジ6の外周面のみに接して密封しているが,管路部本体3の管路部フランジ6のボルト挿通孔24の径方向外側,すなわち管路部フランジ6の軸方向下端面のみを,または,前記管路部フランジ6の軸方向下端面と管路部フランジ6の外周面の両方を,密封部材によって封止することもできる。」
に訂正する。
シ 訂正事項12
願書に添付した明細書の段落0031に,
「尚,分割式取付部材31の分割構造は,本実施例に限らず,例えば,管路部フランジ6の周方向に3分割以上の複数個の分割体に分割可能に構成してもよいし,管路部フランジ6の周方向に2分割に分割可能にするとともに首部5の管軸線方向にも複数個に分割可能に構成するようにしてもよい。さらに,分割せずに一体構造の第1分割体とすることもでき,種々の弁装置に適合して,作業用ケースを管路部に装着できる。」
とあるのを,
「尚,分割式取付部材31の分割構造は,本実施例に限らず,例えば,管路部フランジ6の周方向に3分割以上の複数個の分割体に分割可能に構成してもよいし,管路部フランジ6の周方向に2分割に分割可能にするとともに首部5の管軸線方向にも複数個に分割可能に構成するようにしてもよい。」
に訂正する。
ス 訂正事項13
願書に添付した明細書の段落0070の記載を削除する。
セ 訂正事項14
願書に添付した明細書の段落0073に
「1,1’ 流体管
2 仕切弁(弁装置)
3 管路部本体
4 管部
5 首部
6 管路部フランジ(第1フランジ)
11 弁本体部
13 弁蓋フランジ(第2フランジ)
22 既設ボルト・ナット
23,123 作業用ボルト(締結部材)
24 ボルト挿通孔(挿通孔)
25,124 作業用ナット(締結部材)
30,120 作業用ケース
31 分割式取付部材(第1分割体)
36,109 封止部
61 円筒部材(第2分割体)
71 上部カバー(第2分割体)
101,111 仕切弁
102,115 管路部フランジ(第1フランジ)
103,116 弁蓋フランジ(第2フランジ)
107,117 分割式取付部材(第1分割体)
120 作業用ケ-ス
121,142 分割式取付部材(第1分割体)
123 作業用ボルト(締結部材)
124 作業用ナット(締結部材)
141,151,161 仕切弁
145,153,166 管路部フランジ(第1フランジ)
146,154,167 弁蓋フランジ(第2フランジ)
152 分割式取付部材(第1分割体)
163 第1分割体」
と記載されているのを,
「1,1’ 流体管
2 仕切弁(弁装置)
3 管路部本体
4 管部
5 首部
6 管路部フランジ(第1フランジ)
11 弁本体部
13 弁蓋フランジ(第2フランジ)
22 既設ボルト・ナット
23,123 作業用ボルト(締結部材)
24 ボルト挿通孔(挿通孔)
25,124 作業用ナット(締結部材)
30,120 作業用ケ-ス
31 分割式取付部材(第1分割体)
36,109 封止部
61 円筒部材(第2分割体)
71 上部カバー(第2分割体)
101,111 仕切弁
102,115 管路部フランジ(第1フランジ)
103,116 弁蓋フランジ(第2フランジ)
107,117 分割式取付部材(第1分割体)
120 作業用ケース
121 分割式取付部材(第1分割体)
123 作業用ボルト(締結部材)
124 作業用ナット(締結部材)
151,161 仕切弁
153,166 管路部フランジ(第1フランジ)
154,167 弁蓋フランジ(第2フランジ)
152 分割式取付部材(第1分割体)
163 第1分割体」
に訂正する。
ソ 訂正事項15
願書に添付した図面の図16を削除する。
(2)訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・ 変更の存否
ア 訂正事項1について
(ア)訂正事項1は,請求項1の記載を,「流体管に連結される管路部本体,及び該管路部本体を閉塞可能な弁本体部を備える弁装置の前記弁本体部を不断流状態で撤去するための弁体撤去装置において」として弁本体部を不断流状態で撤去するための弁体撤去装置であることに限定し,かつ,「前記作業用ケ-スは,第1分割体及び第2分割体から構成され,前記第2分割体は,前記作業弁及び前記弁移動手段を収容し,前記第1分割体は,前記第2フランジとの間に隙間を有するとともに周方向に分割される複数の分割片,及び前記分割片同士を締付けるボルト・ナットからなり,前記締結部材が挿通される前記第1フランジの挿通孔の径方向外側の前記第1フランジの外周面あるいは軸方向下端面を封止する封止部を有するとともに,前記第1フランジの挿通孔に挿通される前記締結部材の頭部位置まで延設して保持する支持部材を有する」として作業用ケースの構成をさらに限定するとともに封止部が封止する部位を「前記締結部材が挿通される前記第1フランジの挿通孔の径方向外側」のうち「前記第1フランジの外周面あるいは軸方向下端面」に限定し,更に「前記第1フランジの挿通孔の径方向外側の前記第1フランジの外周面あるいは軸方向下端面を封止する封止部を有するとともに,前記第1フランジの挿通孔に挿通される前記締結部材の頭部位置まで延設して保持する支持部材を有する」ことを限定するものである。
したがって,上記訂正事項1は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)訂正事項1は,願書に添付した明細書の段落0004,段落0023,段落0024,段落0027,段落0028,段落0032,段落0040の記載からみて,願書に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面(以下,「本件特許明細書等」と言う。)に記載した範囲内の事項である。
したがって,上記訂正事項1は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
(ウ)訂正事項1は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当するとは言えず,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
イ 訂正事項2について
訂正事項2は,請求項2を削除するものであるから,特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2は,本件特許明細書等に記載した範囲内の事項であって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合する。
ウ 訂正事項3について
訂正事項3は,訂正前の請求項3が請求項1または2の記載を引用する記載であるところ,請求項2を引用しないものとしたものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3は,本件特許明細書等に記載した範囲内の事項であって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合する。
エ 訂正事項4について
訂正事項4は,訂正前の請求項4が請求項1ないし3のいずれかの記載を引用する記載であるところ,請求項2を引用しないものとしたものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4は,本件特許明細書等に記載した範囲内の事項であって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合する。
オ 訂正事項5について
訂正事項5は,請求項5を削除するものであるから,特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項5は,本件特許明細書等に記載した範囲内の事項であって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合する。
カ 訂正事項6について
訂正事項6は,上記訂正事項2及び5により請求項2及び5が削除されたのにともない,請求項1,3または4を引用するとしたものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項6は,本件特許明細書等に記載した範囲内の事項であって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合する。
キ 訂正事項7について
訂正事項7は,上記訂正事項1に係る訂正により記載表現が一致しなくなる願書に添付した明細書の段落0009の記載を,訂正後の請求項1の記載に整合させるための訂正であるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項7は,本件特許明細書等に記載した範囲内の事項であって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合する。
ク 訂正事項8について
訂正事項8は,上記訂正事項2に係る訂正により記載表現が一致しなくなる願書に添付した明細書の段落0010の記載を,訂正後の請求項2の記載に整合させるための訂正であるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項8は,本件特許明細書等に記載した範囲内の事項であって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合する。
ケ 訂正事項9について
訂正事項9は,上記訂正事項5に係る訂正により記載表現が一致しなくなる願書に添付した明細書の段落0013の記載を訂正後の請求項5の記載に整合させるために削除する訂正であるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項9は,本件特許明細書等に記載した範囲内の事項であって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合する。
コ 訂正事項10について
訂正事項10は,上記訂正事項1に係る訂正により記載表現が一致しなくなる願書に添付した明細書の段落0016の記載を訂正後の請求項1の記載に整合させるための訂正であるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項10は,本件特許明細書等に記載した範囲内の事項であって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合する。
サ 訂正事項11について
訂正事項11は,上記訂正事項1に係る訂正により記載表現が一致しなくなる願書に添付した明細書の段落0024の記載の一部を削除して訂正後の請求項1の記載に整合させるための訂正であるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項11は,本件特許明細書等に記載した範囲内の事項であって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合する。
シ 訂正事項12について
訂正事項12は,上記訂正事項1に係る訂正により記載表現が一致しなくなる願書に添付した明細書の段落0031の記載の一部を削除して訂正後の請求項1の記載に整合させるための訂正であるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項12は,本件特許明細書等に記載した範囲内の事項であって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合する。
ス 訂正事項13について
訂正事項13は,上記訂正事項1に係る訂正により記載表現が一致しなくなる願書に添付した明細書の段落0070の記載を削除して訂正後の請求項1の記載に整合させるための訂正であるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項13は,本件特許明細書等に記載した範囲内の事項であって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合する。
セ 訂正事項14について
訂正事項14は,上記訂正事項13に係る訂正により記載表現が一致しなくなる願書に添付した明細書の段落0073の記載の一部を削除して訂正後の請求項1の記載に整合させるための訂正であるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項14は,本件特許明細書等に記載した範囲内の事項であって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合する。
ソ 訂正事項15について
訂正事項15は,上記訂正事項1に係る訂正により記載表現が一致しなくなる願書に添付した図面の図16を削除して訂正後の請求項1の記載に整合させるための訂正であるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項15は,本件特許明細書等に記載した範囲内の事項であって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合する。
(3)訂正事項2,5は,請求項2,5を削除するものであり,訂正事項8,9は,それらの訂正事項に対応するものであって,上述したように,いずれの訂正事項による訂正は認められる。
また,訂正事項1,3,4,6による訂正後の請求項1,3,4及び6は,特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり,訂正事項7,10-15は,当該訂正事項1,3,4,6に対応するものであって,それらの訂正事項による訂正は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項に適合するものである。
そして,上述したように,訂正事項1,3,4,6,7,10-15による訂正は,いずれも訂正要件を満たしているのであるから,請求項1,3,4及び6からなる一群の請求項に係る訂正も認めることができる。
以上のとおりであるから,訂正事項1-15による訂正を認める。

2 請求項7に係る訂正
(1)訂正事項16-17
ア 訂正事項16
特許請求の範囲の請求項7に
「流体管に連結される管路部本体と該管路部本体を閉塞可能な弁本体部を備える弁装置の前記弁本体部を撤去するための弁体撤去方法において,
前記管路部本体に設けられた第1フランジ及び前記弁本体部に設けられた第2フランジを接続するボルト,ナットを作業用ボルト,ナットに交換する工程と,
前記第1フランジの外周面の一部を封止するとともに,前記弁装置の一部を作業用ケ-スで密封状態に囲う工程と,
前記作業用ケース内で前記管路部本体から前記弁本体部を取り外す工程と,
前記作業用ケース内に備えられた作業弁によって,前記作業用ケース内における前記弁本体部よりも前記管路部本体側を密封状態に閉塞する工程と,
前記弁本体部を取り出す工程と,
を備える」
とあるのを,
「流体管に連結される管路部本体と該管路部本体を閉塞可能な弁本体部を備える弁装置の一部を第1分割体及び第2分割体からなる作業用ケースで密封状態に囲み,前記弁本体部を不断流状態で撤去するための弁体撤去方法において,
前記管路部本体に設けられた第1フランジ及び前記弁本体部に設けられた第2フランジを接続するボルト,ナットを作業用ボルト,ナットに交換する工程と,
周方向に分割される前記第1分割体の分割片同士をボルト,ナットにより締付け,前記第2フランジとの間に隙間を設けた状態で,前記第1フランジの外周面の一部あるいは軸方向下端面を封止し,前記作業用ボルトの頭部位置まで延設して保持するとともに,前記作業用ケースの第2分割体によって前記弁装置の一部を密封状態に囲う工程と,
前記作業用ケース内で前記管路部本体から前記弁本体部を取り外す工程と,
前記作業用ケース内に備えられた作業弁によって,前記作業用ケース内における前記弁本体部よりも前記管路部本体側を密封状態に閉塞する工程と,
前記弁本体部を取り出す工程と,
を備える」
に訂正する。
イ 訂正事項17
願書に添付した明細書の段落0015に,
「流体管に連結される管路部本体と該管路部本体を閉塞可能な弁本体部を備える弁装置の前記弁本体部を撤去するための弁体撤去方法において,
前記管路部本体に設けられた第1フランジ及び前記弁本体部に設けられた第2フランジを接続するボルト,ナットを作業用ボルト,ナットに交換する工程と,
前記第1フランジの外周面の一部を封止するとともに,前記弁装置の一部を作業用ケースで密封状態に囲う工程と,
前記作業用ケース内で前記管路部本体から前記弁本体部を取り外す工程と,
前記作業用ケース内に備えられた作業弁によって,前記作業用ケース内における前記弁本体部よりも前記管路部本体側を密封状態に閉塞する工程と,
前記弁本体部を取り出す工程と,
を備えることを特徴としている。
この特徴によれば,作業用ケースが,第1フランジの外周面の一部を封止するとともに,弁装置の一部を作業用ケースで密封状態に囲うので,種々の弁装置に適用可能であるとともに,流体管よりも弁本体部側での作業のみで,弁装置から弁本体部を撤去することができる。」
とあるのを,
「流体管に連結される管路部本体と該管路部本体を閉塞可能な弁本体部を備える弁装置の一部を第1分割体及び第2分割体からなる作業用ケースで密封状態に囲み,前記弁本体部を不断流状態で撤去するための弁体撤去方法において,
前記管路部本体に設けられた第1フランジ及び前記弁本体部に設けられた第2フランジを接続するボルト,ナットを作業用ボルト,ナットに交換する工程と,
周方向に分割される前記第1分割体の分割片同士をボルト,ナットにより締付け,前記第2フランジとの間に隙間を設けた状態で,前記第1フランジの外周面の一部あるいは軸方向下端面を封止し,前記作業用ボルトの頭部位置まで延設して保持するとともに,前記作業用ケースの第2分割体によって前記弁装置の一部を密封状態に囲う工程と,
前記作業用ケース内で前記管路部本体から前記弁本体部を取り外す工程と,
前記作業用ケース内に備えられた作業弁によって,前記作業用ケース内における前記弁本体部よりも前記管路部本体側を密封状態に閉塞する工程と,
前記弁本体部を取り出す工程と,
を備えることを特徴としている。
この特徴によれば,作業用ケースが,第1フランジの外周面の一部あるいは軸方向下端面を封止するとともに,弁装置の一部を作業用ケースで密封状態に囲うので,種々の弁装置に適用可能であるとともに,流体管よりも弁本体部側での作業のみで,弁装置から弁本体部を撤去することができる。」
に訂正する。
(2)訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・ 変更の存否
ア 訂正事項16について
(ア)訂正事項16は,請求項7の記載を,「流体管に連結される管路部本体と該管路部本体を閉塞可能な弁本体部を備える弁装置の一部を第1分割体及び第2分割体からなる作業用ケースで密封状態に囲み,前記弁本体部を不断流状態で撤去するための弁体撤去方法において」として作業用ケースが第1分割体及び第2分割体からなるごとを特定するとともに本体部を不断流状態で撤去するための弁体撤去装置であることに限定し,「周方向に分割される前記第1分割体の分割片同士をボルト,ナットにより締付け,前記第2フランジとの間に隙間を設けた状態で,前記第1フランジの外周面の一部あるいは軸方向下端面を封止し,前記作業用ボルトの頭部位置まで延設して保持するとともに,前記作業用ケースの第2分割体によって前記弁装置の一部を密封状態に囲う工程」として,作業用ケースの第1分割体の構成をさらに特定し,封止部が封止する部位を「前記第1フランジの外周面あるいは軸方向下端面」に限定し,さらに「前記作業用ボルトの頭部位置まで延設して保持する」に限定するものである。
したがって,上記訂正事項16は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)訂正事項16は,願書に添付した明細書の段落0023,段落0024,段落0027,段落0032,段落0040の記載からみて,本件特許明細書等に記載した範囲内の事項である。
したがって,上記訂正事項16は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
(ウ)訂正事項16は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当するとは言えず,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
イ 訂正事項17について
訂正事項17は,上記訂正事項16に係る訂正により記載表現が一致しなくなる願書に添付した明細書の段落0015の記載を訂正後の請求項7の記載に整合させるための訂正であるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項17は,本件特許明細書等に記載した範囲内の事項であって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合する。
(3)訂正事項16は,請求項7に係るものであり,訂正事項17は,当該訂正事項16に対応するものであって,上述したように,いずれの訂正事項による訂正も認められる。

3 小括
以上のとおりであるから,訂正事項1-17からなる本件訂正請求のとおりに訂正することを認める。

第3 取消理由について
1 本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項に係る発明は,次の事項により特定されるとおりのものである(なお,前述のとおり,請求項2,5は削除された。)。
【請求項1】
「流体管に連結される管路部本体,及び該管路部本体を閉塞可能な弁本体部を備える弁装置の前記弁本体部を不断流状態で撤去するための弁体撤去装置において,
前記弁体撤去装置は,前記弁装置の一部を密封状態に囲う作業用ケ-スと,前記作業用ケースの内部空間を仕切る作業弁と,前記弁本体部を前記作業用ケース内で移動を可能とする弁移動手段と,前記管路部本体に設けられた第1フランジ及び前記弁本体部に設けられた第2フランジを締結する締結部材と,を備え,
前記作業用ケ-スは,第1分割体及び第2分割体から構成され,
前記第2分割体は,前記作業弁及び前記弁移動手段を収容し,
前記第1分割体は,前記第2フランジとの間に隙間を有するとともに周方向に分割される複数の分割片,及び前記分割片同士を締付けるボルト・ナットからなり,前記締結部材が挿通される前記第1フランジの挿通孔の径方向外側の前記第1フランジの外周面あるいは軸方向下端面を封止する封止部を有するとともに,前記第1フランジの挿通孔に挿通される前記締結部材の頭部位置まで延設して保持する支持部材を有することを特徴とする弁体撤去装置。」
【請求項3】
「前記締結部材は、少なくとも前記第2フランジから前記作業弁の方向に突出する長尺ナットを備えることを特徴とする請求項1に記載の弁体撤去装置。」
【請求項4】
「前記作業用ケースは、該作業用ケースの外部から操作可能であるとともに前記第2フランジを前記第1フランジ側に保持する保持手段を備えることを特徴とする請求項1または3に記載の弁体撤去装置。」
【請求項6】
「前記第1分割体は、前記第1フランジの少なくとも短軸方向に沿って2分割されることを特徴とする請求項1,3,または4のいずれかに記載の弁体撤去装置。」
【請求項7】
「流体管に連結される管路部本体と該管路部本体を閉塞可能な弁本体部を備える弁装置の一部を第1分割体及び第2分割体からなる作業用ケースで密封状態に囲み,前記弁本体部を不断流状態で撤去するための弁体撤去方法において,
前記管路部本体に設けられた第1フランジ及び前記弁本体部に設けられた第2フランジを接続するボルト,ナットを作業用ボルト,ナットに交換する工程と,
周方向に分割される前記第1分割体の分割片同士をボルト,ナットにより締付け,前記第2フランジとの間に隙間を設けた状態で,前記第1フランジの外周面の一部あるいは軸方向下端面を封止し,前記作業用ボルトの頭部位置まで延設して保持するとともに,前記作業用ケースの第2分割体によって前記弁装置の一部を密封状態に囲う工程と,
前記作業用ケース内で前記管路部本体から前記弁本体部を取り外す工程と,
前記作業用ケース内に備えられた作業弁によって,前記作業用ケース内における前記弁本体部よりも前記管路部本体側を密封状態に閉塞する工程と,
前記弁本体部を取り出す工程と,
を備えることを特徴とする弁体撤去方法。」

2 取消理由の概要
本件訂正請求による訂正前の請求項1,3,5,6に係る特許に対して平成28年 2月26日に特許権者に通知した取消理由は,要旨次のとおりである。
(1)本件特許の請求項1に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記(引用例1)の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
(2)本件特許の請求項3,5,6に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記(引用例1?引用例3)の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用例1:特開平10-26237号公報 (特許異議申立人が提出した甲第1号証)
引用例2:特開2008-51231号公報(特許異議申立人が提出した甲第2号証)

3 引用発明
引用例1(特開平10-26237号公報)は,「不断水弁体離脱可能型仕切弁」に関し開示するものであって,その段落【0001】,【0008】?【0013】,【0015】,【0016】の記載事項や図面の記載内容を踏まえると,次の発明(以下,「引用発明」と言う。)を認めることができる。
「配管系(10)に連結される配管系(2),及び配管系(2)に設けた弁箱(4)の弁体着脱口(3)を閉塞可能な蓋(7),弁棒(9)及び弁体(5)を備える仕切弁を撤去するための不断水弁体離脱装置(12)において,
前記不断水弁体離脱装置(12)は,前記仕切弁の少なくとも蓋(7)を密封状態に囲う上体部(16),遮断部(15)及び下体部(14)と,
前記上体部(16),遮断部(15)及び下体部(14)の内部空間を仕切るディスク(15A)と,
前記仕切弁の蓋(7),弁棒(9),弁体(5)を上体部(16),遮断部(15)及び下体部(14)の内部で移動させるチャック(17)と,
前記弁箱(4)のフランジ部(11)及び前記蓋(7)のフランジ部を締結するボルト(6C)と,を備え,
前記下体部(14)は,前記蓋(7)のフランジ部との間に隙間を有し,前記ボルト(6C)が挿通される前記弁箱(4)のフランジ部(11)の挿通孔(7A)の径方向外側を封止する封止部を,前記弁箱(4)のフランジ部(11)と前記下体部(14)のフランジ部(13)との接合部で構成している不断水弁体離脱装置(12)。」

4 本件特許発明と引用発明の対比・判断
(1)本件特許の請求項1に係る発明(以下,「本件特許発明1」と言う。本件特許の請求項3,4,6,7に係る発明についても同様。)について
ア.本件特許発明1(以下,「前者」と言うことがある。)と引用発明(以下,「後者」と言うことがある。)を対比すると,引用発明の「配管系(10)」は,本件特許発明1の「流体管」に相当し、同様に,「配管系(2)」は「管路部本体」に,「配管系(2)に設けた弁箱(4)の弁体着脱口(3)を閉塞可能な」態様は「該管路部本体を閉塞可能な」態様に,「蓋(7),弁棒(9)及び弁体(5)」は「弁本体部」に,「仕切弁」は「弁装置」に,「不断水弁体離脱装置(12)」は「弁体撤去装置」に,「上体部(16),遮断部(15)及び下体部(14)」は「作業用ケース」に,「ディスク(15A)」は「作業弁」に,「チャック(17)」は「弁移動手段」に,「弁箱(4)のフランジ部(11)」は「第1フランジ」に,「蓋(7)のフランジ部」は「第2フランジ」に,「ボルト(6C)」は「締結部材」に,それぞれ相当する。
引用発明の「上体部(16)」及び「遮断部(15)」を一体の物として把握することも可能であり,その場合,「上体部(16)」及び「遮断部(15)」は,「ディスク(15A)」及び「チャック(17)」を収容すると言えるから,引用発明の「上体部(16)」及び「遮断部(15)」は,本件特許発明1の「第2分割体」に相当し,また,引用発明の「下体部(14)」は本件特許発明1の「第1分割体」に相当する。
引用発明の「フランジ部(11)の貫通孔(7A)」は,本件特許発明1の「第1フランジの貫通孔」に相当する。
引用発明の「弁箱(4)のフランジ部(11)と下体部(14)のフランジ部(13)との接合部」と本件特許発明1の「前記第1分割体」が有する「前記締結部材が挿通される前記第1フランジの挿通孔の径方向外側の前記第1フランジの外周面あるいは軸方向下端面を封止する封止部」は,「第1フランジと第1分割体との封止部」という点で一致する。
イ. 以上を踏まえると,両発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。
[一致点]「流体管に連結される管路部本体,及び該管路部本体を閉塞可能な弁本体部を備える弁装置の前記弁本体部を不断流状態で撤去するための弁体撤去装置において,
前記弁体撤去装置は,前記弁装置の一部を密封状態に囲う作業用ケ-スと,前記作業用ケースの内部空間を仕切る作業弁と,前記弁本体部を前記作業用ケース内で移動を可能とする弁移動手段と,前記管路部本体に設けられた第1フランジ及び前記弁本体部に設けられた第2フランジを締結する締結部材と,を備え,
前記作業用ケ-スは,第1分割体及び第2分割体から構成され,
前記第2分割体は,前記作業弁及び前記弁移動手段を収容し,
第1フランジと第1分割体との封止部を有する弁体撤去装置。」
[相違点1]第1分割体について,本件特許発明1では「第2フランジとの間に隙間を有するとともに周方向に分割される複数の分割片,及び前記分割片同士を締付けるボルト・ナットからなり」とされているのに対して,引用発明はそのように特定されるものではない点。
[相違点2]封止部について,本件特許発明1では「前記締結部材が挿通される前記第1フランジの挿通孔の径方向外側の前記第1フランジの外周面あるいは軸方向下端面を封止する」ものとされているのに対して,引用発明では「前記ボルト(6C)が挿通される前記弁箱(4)のフランジ部(11)の挿通孔(7A)の径方向外側を封止する」ものであって「前記弁箱(4)のフランジ部(11)と前記作業用ケース(14)のフランジ部(13)との接合部で構成している」とされている点。
[相違点3]本件特許発明1は,第1分割体について,「前記第1フランジの挿通孔に挿通される前記締結部材の頭部位置まで延設して保持する支持部材を有する」とされているのに対して,引用発明ではそれに対応する手段を有していない点。
ウ.上記相違点について検討する。
引用例2(特開2008-51231号公報)には,「弁装置(1)を弁収容部材(2),取付部材(3)に2分割し取付ボルト・ナット(4)で互いに締め付けた構成」も記載されているが(段落【0040】,【0041】,図13,図14等を参照。),これを考慮しても,引用発明において,相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項たる,「第2フランジとの間に隙間を有する」構成が導き出せることにはならない。
また,引用発明において,封止部を「ボルト(締結部材)が挿通される弁箱のフランジ部の挿通孔の径方向外側の前記弁箱のフランジ部の外周面あるいは軸方向下端面を封止する」ものに変更することは,当業者にとって適宜なし得るようなことではない。引用発明において,当業者にそのような変更を行わしめる契機はなく,また,引用例2及びその他の特許異議申立人が提示した証拠方法を見ても,そのような封止部を教示するものはない。
したがって,引用発明において,相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することも,当業者にとって容易になし得たことではない。
さらに,本件特許発明1における「支持部材」についても,当業者が引用発明において容易に採用し得たものではない。
エ.以上のとおりであるから,本件特許発明1の発明特定事項は,引用発明及び引用例2記載の構成に基づいて当業者が容易に案出し得たものではない。
本件特許発明1は,その全ての発明特定事項を備えたことにより,明細書に記載された効果を奏することができたものである。
よって,引用発明は,引用発明及び引用例2記載の構成に基づいて当業者が容易に発明し得たものとはできない。
(2)本件特許発明3,4及び6について
これらの発明は,本件特許発明に対して他の発明特定事項が直列的に付加されてなるものであるから,引用発明であるとは言えないし,また,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

第4 むすび
以上のとおりであるから,取消理由によっては,請求項1,3,4,6,7に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1,3,4,6,7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして,請求項2,5に係る特許は,訂正により,削除されたため,本件特許の請求項2,5に対する特許異議申立てについては,対象となる請求項が存在しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
弁体撤去装置及び弁体撤去方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設流体管に連結された弁装置の弁体を撤去する弁体撤去装置及び弁体撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道本管等の既設流体管には仕切弁等の弁装置が設けられており、既設流体管の流体管路を遮断できるようになっている。例えば、仕切弁は、その構造上、流体管路を遮断するための弁体やこの弁体を操作するための操作軸等からなる弁本体部が、流体管路に対して大きく突出するので、耐久年数に至って流体管路を遮断する能力が低下した場合や、仕切弁が流体管路に不要になった場合等に、作業用ケースで仕切弁を密封状に囲って、流体管路から仕切弁全体を撤去して流体管を配置したり、仕切弁を流体管路としてのみ使用するため、または将来、仕切弁として再利用するために管路部を残して弁本体部のみを撤去したりする撤去工事が行われている。
【0003】
作業用ケースで仕切弁全体を囲って管路部を残して弁体を取り除くことが可能な方法として、例えば、流体管路を挟み上部と下部とに分割された構造の作業用ケースで、仕切弁及び仕切弁近傍の流体管路を上下方向から挟むようにして、作業用ケースを仕切弁近傍の流体管路の外周に水密状に装着し、作業用ケースに備えられた弁本体部の脱着手段により、作業用ケース内で弁本体部を管路部から取り外した後に、作業用ケースに備えられた作業弁により、作業用ケース内において管路部側の空間を密封状に閉塞することで、弁本体部を作業用ケース外に取り出して、弁本体部内の弁体を新しいものに交換するようにしたものがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
また、別の方法として、例えば、仕切弁の弁体を不断流状態で取り外すことが可能な方法として、予め、仕切弁装置において弁本体部が着脱可能に接合される管路部側のフランジ部を、このフランジ部に接合される弁本体部側のフランジ部よりも半径方向外周側に大きく張出すような大型に製造しておき、仕切弁装置が流体管路網等で使用されて、流体管路を遮断する能力が低下した場合等には、管路部側のフランジ部に、キヤップ型の作業用ケースを備えた不断水弁体離脱装置を密封状に装着して、作業用ケース内で弁体を取り外し可能にしたものもある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-207719号公報(第6頁、第6図)
【特許文献2】特開2007-177945号公報(第6頁、第9図)
【特許文献3】特開平10-26237号公報(第3頁、第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2にあっては、流体管路を挟み上部と下部とに分割されて形成された作業用ケースによって、仕切弁を上下方向から仕切弁近傍の流体管路ごと水密状に覆うよう必要がある。大型の仕切弁を有する水道本管等において流体管路を下方から作業用ケースで覆うためには、埋設地盤を水道本管から大きく離間させるように掘削して、十分な作業スペースを確保する必要があり、掘削作業や埋戻作業に多大な時間を要し、作業効率が低下するという問題がある。
【0007】
また、特許文献3にあっては、管路部を流体管路ごと作業用ケースで囲わないので、大きな作業用スペースを掘削して確保する必要はないものの、仕切弁装置の製造時に予め管路部の外周部に特殊な大型のフランジ部を形成しておく必要があり、既設の一般的な弁装置に対応できず、実用に供さないという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、種々の弁装置に適用可能であるとともに、弁装置全体を囲う必要がなく、流体管路よりも弁本体部側での作業のみで管路部本体及び弁本体部を作業用ケースで密封状に囲うことのできる弁体撤去装置及び弁体撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の弁体撤去装置は、
流体管に連結される管路部本体、及び該管路部本体を閉塞可能な弁本体部を備える弁装置の前記弁本体部を不断流状態で撤去するための弁体撤去装置において、
前記弁体撤去装置は、前記弁装置の一部を密封状態に囲う作業用ケースと、前記作業用ケースの内部空間を仕切る作業弁と、前記弁本体部を前記作業用ケース内で移動を可能とする弁移動手段と、前記管路部本体に設けられた第1フランジ及び前記弁本体部に設けられた第2フランジを締結する締結部材と、を備え、
前記作業用ケースは、第1分割体及び第2分割体から構成され、
前記第2分割体は、前記作業弁及び前記弁移動手段を収容し、
前記第1分割体は、前記第2フランジとの間に隙間を有するとともに周方向に分割される複数の分割片、及び前記分割片同士を締付けるボルト・ナットからなり、前記締結部材が挿通される前記第1フランジの挿通孔の径方向外側の前記第1フランジの外周面あるいは軸方向下端面を封止する封止部を有するとともに、前記第1フランジの挿通孔に挿通される前記締結部材の頭部位置まで延設して保持する支持部材を有することを特徴としている。
この特徴によれば、作業用ケースが、第1フランジの締結部材挿通孔の径方向外側を封止して、弁装置の一部を作業用ケースで密封状に囲うので、種々の弁装置に適用可能であるとともに、流体管よりも弁本体部側での作業のみで、弁装置から弁本体部を撤去することができる。
【0010】(削除)
【0011】
本発明の弁体撤去装置は、
前記締結部材は、少なくとも前記第2フランジから前記作業弁の方向に突出する長尺ナットを備えることを特徴としている。
この特徴によれば、締結部材が、少なくとも第2フランジから作業弁の方向に突出する長尺ナットとなっているので、作業用ケースのスペースが狭くとも、ナットに容易にアクセスできるので、分解組立て作業が容易となり、流体管路よりも弁本体部側での作業のみで、弁装置から弁体を撤去することができる。
【0012】
本発明の弁体撤去装置は、
前記作業用ケースは、該作業用ケースの外部から操作可能であるとともに前記第2フランジを前記第1フランジ側に保持する保持手段を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、作業用ケースの外部から操作可能である保持手段を備えているので、弁装置の全体を作業用ケースで密封状に囲うことなく、種々の弁装置に適用可能であるとともに、弁装置全体を囲う必要がなく、流体管よりも弁本体部側での作業のみで、弁装置から弁本体部を撤去することができる。
【0013】(削除)
【0014】
本発明の弁体撤去装置は、
前記第1分割体は、前記第1フランジの少なくとも短軸方向に沿って2分割されることを特徴としている。
この特徴によれば、第1分割体は、第1フランジの少なくとも短軸方向に沿って2分割されているので、第1分割体を第1フランジの長軸方向に沿って組立てる際、第1フランジの外周面をガイドにしつつ、第1分割体と第1フランジとのクリアランスが徐々に狭くなり、第1分割体が傾くことなく第1フランジの外周部に密接させて確実に封止することができるとともに、種々の弁装置の第1フランジに確実に取付けることができる。
【0015】
流体管に連結される管路部本体と該管路部本体を閉塞可能な弁本体部を備える弁装置の一部を第1分割体及び第2分割体からなる作業用ケースで密封状態に囲み、前記弁本体部を不断流状態で撤去するための弁体撤去方法において、
前記管路部本体に設けられた第1フランジ及び前記弁本体部に設けられた第2フランジを接続するボルト、ナットを作業用ボルト、ナットに交換する工程と、
周方向に分割される前記第1分割体の分割片同士をボルト、ナットにより締付け、前記第2フランジとの間に隙間を設けた状態で、前記第1フランジの外周面の一部あるいは軸方向下端面を封止し、前記作業用ボルトの頭部位置まで延設して保持するとともに、前記作業用ケースの第2分割体によって前記弁装置の一部を密封状態に囲う工程と、
前記作業用ケース内で前記管路部本体から前記弁本体部を取り外す工程と、
前記作業用ケース内に備えられた作業弁によって、前記作業用ケース内における前記弁本体部よりも前記管路部本体側を密封状態に閉塞する工程と、
前記弁本体部を取り出す工程と、
を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、作業用ケースが、第1フランジの外周面の一部を封止するとともに、弁装置の一部を作業用ケースで密封状態に囲うので、種々の弁装置に適用可能であるとともに、流体管よりも弁本体部側での作業のみで、弁装置から弁本体部を撤去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は、実施例における仕切弁を示す平面図であり、(b)は、の側面図である。
【図2】仕切弁に装着された弁体撤去装置を示す一部断面の側面図である。
【図3】(a)は、図2のC-C矢視図であり、(b)は、図3(a)のJ-J矢視図である。
【図4】(a)は、封止部の詳細図であり、(b)は、図3(a)のH-H矢視図であり、(c)は、図3(a)のH-H矢視図の別の実施形態を示す図である。
【図5】(a)は、吊耳切断、(b)は、作業用ボルト、作業用ナットに交換する手順を示す図である。
【図6】(a)は、分割式取付部材の取付け手順、(b)はキャップの取外し、(c)は、分割式取付部材の取付けた後の状態を示す一部断面の側面図である。
【図7】(a)は、弁吊移動工具を取付けた状態を示す平面図、(b)は、一部断面の側面図、(c)は(a)のH-H矢視図である。
【図8】仕切弁に装着された弁体撤去装置を示す一部断面の側面図である。
【図9】弁本体部を引上げた状態を示す一部断面の側面図である。
【図10】(a)は、別のタイプの仕切弁に適合した分割式取付部材の実施形態の平面図、(b)は、管軸方向から見た一部断面図、(c)は、一部断面の側面図である。
【図11】(a)は、さらに別のタイプの仕切弁に適合した分割式取付部材の実施形態の平面図、(b)は、管軸方向から見た一部断面図、(c)は、一部断面の側面図である。
【図12】(a)は、保持手段を使用しない場合の実施形態の平面図、(b)は、管軸直角方向から見た一部断面の側面図、(c)は、管軸方向から見た図である。
【図13】保持手段を使用しない場合の弁体撤去方法の手順を示す一部断面の側面図である。
【図14】(a)は、作業用ナットを使用しない場合の実施形態の平面図、(b)は、一部断面の側面図、(c)は、作業用ボルトを支持する支持部材を示す平面図、(d)は、作業用ボルトを支持する支持部材を取付けた状態を示す一部断面の側面図である。
【図15】作業用ナットを使用しない分割式取付部材の別の実施形態を示す一部断面の側面図である。
【図16】(削除)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る弁体撤去装置及び弁体撤去方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0018】
実施例に係る弁体撤去装置について図1から図11を参照して説明する。図1に示すように、本実施例において、既設の流体管1、1’に流体管路を遮断可能な仕切弁2が連結されている。流体管1、1’及び仕切弁2の筐体は、例えば、地中に埋設される上水道用のダクタイル鋳鉄製であり、流体管1、1’は、断面視略円形状に形成され、内周面がモルタル層で被覆されている。尚、本発明に係る流体管及び弁装置は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいは石綿、コンクリート製、塩化ビニール、ポリエチレン若しくはポリオレフィン製等であってもよい。更に尚、流体管の内周面はモルタル層に限らず、例えばエポキシ樹脂等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。また、本実施例では流体管内の流体は上水であるが、本実施例の上水に限らず、例えば工業用水や農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施例での弁装置である仕切弁2は、管路部本体3と弁本体部11とから構成されている。管路部本体3は、流体管1、1’に連通する管部4と、管部4に一体に形成されたフランジ部7、7’と、管部4の管軸線A-Aと異なるB-B方向に突出された筒状の首部5と、本発明の第1フランジとしての管路部フランジ6と、から構成される。
【0020】
弁本体部11は、管路部本体3を閉塞可能な弁体12(図9参照)と、本発明の第2フランジとしての弁蓋フランジ13と、弁蓋フランジ13と一体に形成された弁蓋14と、弁蓋14の上面に突出され、仕切弁2を外部から開閉操作するための棒状の弁棒部16と、弁蓋14に設けられ弁棒部16の外周面をシールするためのパッキン(図示略)を内部に備える弁箱15と、から構成され、弁箱15は弁蓋14との間をシールするためのパッキン(図示略)を介して弁箱上部ネジ17により着脱可能に接合されている。また、管路部本体3と弁本体部11とは、管路部本体3の管路部フランジ6と弁蓋フランジ13とをシールするためのパッキン(図示略)を介して、ボルト・ナット22により着脱可能に接合されている。
【0021】
また、管路部本体3の管部4の両端部には、外径方向に突出するフランジ部7,7’が形成されており、このフランジ部7,7’は、流体管1,1’の端部のフランジ部8,8’にパッキン(図示略)を介して密封状に接合されるとともに、フランジ部7,7’,8,8’同士がボルト・ナット(図示せず)で締結されている。
【0022】
次に、図1、図2に示すように、本実施例の弁体撤去装置30は、仕切弁2の一部を密封状に囲う作業用ケース30と、作業用ケース30内に備えられるとともに作業用ケース30の外部からの操作により作業用ケース30の内部空間を空間Dと空間Eとに密封状に仕切ることが可能な作業弁26と、弁本体部11を作業用ケース30内で移動を可能とする本発明の弁移動手段としての弁吊移動工具91とから構成されている。
【0023】
図2に示すように、作業用ケース30は、本発明の第1分割体としての分割式取付部材31と、本発明の第2分割体としての円筒部材61及び上部カバー71とからなる。尚、第2分割体は本実施例では、円筒部材であるが、断面形状が略小判形、略楕円、略角形などの筒部材でもよい。分割式取付部材31は、管路部フランジ6と弁本体部11の一部を囲っている。また、円筒部材61は、分割式取付部材31に接続され、作業弁26及び弁本体部11を囲い、上部カバー71は、円筒部材61に接続されて円筒部材61の開口を閉塞するとともに弁吊移動工具91が載置されている。
【0024】
分割式取付部材31は、図2から図4(a)に示すように、封止部36は、管路部フランジ6の外周面に相対する位置で、分割式取付部材31の内周面に形成された環状の溝部37と、溝部37に嵌め込まれ、保持される密封部材38と、からなっている。また、密封部材38の厚さ寸法は、溝部37の深さより大きくして、密封部材38が適度に圧縮されるようにしている。本発明に係る密封部材として、断面が円形の丸ゴムパッキン、略C字状または方形状または、リップ付きのゴムパッキンを使用することができる。これにより、封止部36は、管路部フランジ6の外周面に接する密封部材38によって、流体管路よりも弁本体部側での作業のみで管路部を密封状に囲うことができる。図2から図4(a)においては、封止部36の密封部材38は、管路部フランジ6の外周面のみに接して密封しているが、管路部本体3の管路部フランジ6のボルト挿通孔24の径方向外側、すなわち管路部フランジ6の軸方向下端面のみを、または、前記管路部フランジ6の軸方向下端面と管路部フランジ6の外周面の両方を、密封部材によって封止することもできる。
【0025】
このように、少なくとも管路部フランジ6の外周面を封止部を有する第1分割体(分割式取付部材31)と、弁本体部の一部を囲う第2分割体(円筒部材61及び上部カバー71)とに分割されているので、第1分割体を管路部フランジ6の外周面に封止部を確実に取り付けた後に、第2分割体を取付けることができるので、作業用ケースで流体管部及び弁本体部を容易に覆うことができ、作業性を向上させることができる。
【0026】
図4(a)に示すように、分割式取付部材31には、封止部36の環状の溝部37の上部から拡径するように連続的に設けられるとともに、弁蓋フランジ13の外側周面よりも若干大径に形成され平面視で略小判形の筒状をなし、弁蓋フランジ13よりも上方側に延びる筒部40が設けられており、更に、筒部40の上端部から拡径されるように平面視で大径略円形の鍔状に形成された大径鍔部41が連続的に設けられている。
【0027】
このように、筒部40は、環状の溝部37の上部から拡径して弁蓋フランジ13との間に隙間を有するので、弁本体部11を取外す際に干渉せず、確実に弁本体部11を撤去することができ、また、本実施例の場合、分割式取付部材31を管路部フランジ6に取付けた後に、密封部材38の取付け状態を確認できるので、確実に封止部36を取付けることができる。尚、弁本体部11の撤去を妨げず、筒部40、弁本体部11への損傷を防ぐために前記隙間に弾性体・樹脂などを介在させてもよい。
【0028】
また、図3に示すように、分割式取付部材31は、管路部フランジ6の周方向に略均等に2分割構成されるとともに、管部4の管軸線A-A方向と略一致している。また、各分割片の分割面には、パッキン42が介在されて、ボルト・ナットにより密封状に接合されている。
【0029】
本実施例では、このように分割することで、分割式取付部材31は、小判形の管路部フランジ6の側面をガイドとして、分割式取付部材31が傾くことなく第1フランジの外周部に密接させて確実に封止することができる。また、管路部フランジ6の短径寸法と長径寸法の差が小さい場合には、管路部フランジ6の長軸方向、短軸方向の区別が困難となり、組立て方向を誤って組立てることがある。これに対し、分割式取付部材31は、管路部フランジ6の短軸方向に沿って、2分割されているので、管路部フランジ6に対し長径方向側から組立て可能となるので、組立て誤りを防止できる。さらに、分割式取付部材31を管路部フランジ6の長軸方向に沿って組立てる際、管路部フランジ6の外周面をガイドにしつつ、分割式取付部材31と管路部フランジ6とのクリアランスが徐々に狭くなるので、分割式取付部材31が傾くことなく管路部フランジ6の外周部に密接させて確実に封止することができるとともに、種々の弁装置の管路部フランジ6に確実に取付けることができる。
【0030】
分割式取付部材31を管路部フランジ6に取り付けることで、流体管路よりも弁本体部11側での作業のみで管路部本体3及び弁本体部11を作業用ケース30で密封状に囲うことができるので、流体管1や仕切弁2が地中に埋設されている場合でも、管路部本体3よりも深く掘削する必要がなく、掘削や埋戻し作業が容易になり、作業性を向上させることができる。
【0031】
尚、分割式取付部材31の分割構造は、本実施例に限らず、例えば、管路部フランジ6の周方向に3分割以上の複数個の分割体に分割可能に構成してもよいし、管路部フランジ6の周方向に2分割に分割可能にするとともに首部5の管軸線方向にも複数個に分割可能に構成するようにしてもよい。
【0032】
図4に示すように、分割式取付部材31の封止部36の下端には、管路部フランジ6と弁蓋フランジ13とを締付ける作業用ボルト23の頭を保持して、ボルトが抜けないように保持する支持部材43を有している。また、本発明の締結部材としての作業用ボルト23の外周面には、周方向に凹状の溝が形成され、この溝には、略環状のパッキンが嵌め込まれている。これらのパッキンにより、作業用ボルト23と挿通孔24との隙間が密封されて、作業ケース30内の流体が漏洩することが防止される。
【0033】
また、図3(a)の断面H-H及び図4(b)に示すように、筒部40の側周面において、弁蓋フランジ13の上面に対応する位置には、管路部本体3と弁本体部11とを接続する作業用ボルト23のほぼ中間位置に本発明の保持手段55が設けられている。保持手段55は、筒部40外周側から内周側に連通するネジ溝を有する連通孔51と、該連通孔51に挿入される固定ボルト52とから構成される。尚、この固定ボルト52のネジ山は、後述する傾斜部53と固定ボルト52の外周面に嵌め込まれたパッキンとの間の部位に設けられている。
【0034】
固定ボルト52は、図4に示すように、筒部40の内周側に突出される先端部に、先端側が漸次小径となるように形成され弁蓋フランジ13に当接可能な傾斜部53が設けられ、これにより、作業用ケース30の外部から固定ボルト52を回動させることで、ネジ作用により傾斜部53が進出されて、弁蓋フランジ13の上面に当接させることができる。また、ネジ作用により傾斜部53を後退させて、弁蓋フランジ13から離間させることができるようになっている。
【0035】
固定ボルト52の傾斜部53を、弁蓋フランジ13の上面に当接させて、傾斜部53により弁本体部11が管路部本体3側に保持、固定される。これにより、作業用ケース30の分割式取付部材31を管路部フランジ6に取り付けた後に、固定ボルト52により弁本体部11を管路部本体3に固定して、作業用ボルト23、作業用ナット25の締結を解除することができ、且つ、作業用ケース30で弁本体部11を密封状に囲った後であっても、作業用ケース30外側から固定ボルト52を回転操作して、弁本体部11と管路部本体3との固定を解除することができる。
【0036】
また、固定ボルト52の外周面には、周方向に凹状の溝が形成され、この溝には、略環状のOリング54が嵌め込まれている。これらのパッキン54により、固定ボルト52と筒部40の連通孔51との隙間が密封されて、作業ケース30内の流体が漏洩することが防止される。
【0037】
また、固定ボルト52と弁蓋フランジ13との接触面圧が大きい場合には、図4(c)のように、固定ボルト52が弁蓋フランジ13と接触する部分をあらかじめ斜めに面加工部18を設け、接触面積を大きくすることもできる。さらに、固定ボルト52、連通孔51の個数や設置位置は、本実施例に限らず、固定ボルト52自体の強度や、作業用ケース30の重量、管路部本体3の周方向長さなどに応じて、本実施例よりも多く形成したり、少なく形成したりしてもよい。これにより、固定ボルト52で弁本体部11を管路部本体3側に保持することができる。
【0038】
また、図2に示すように、上部カバー71の閉塞部74の中央部には、上面側から下面側に連通する挿入孔75が形成されている。この挿入孔75には、弁本体部11を管路部本体3から引き上げて取り外すためのスピンドル92を挿入可能になっている。そして、上部カバー71とスピンドル92との間には、シール材76が介在されることで、作業用ケース30内は密閉される。
【0039】
また、図2に示すように、弁吊移動工具91は、スピンドル92の上端に固定された支持板94と、上部カバー71の閉塞部74とを所定の距離を保つようにレバーホイスト95により固定されている。そして、弁蓋フランジ13を管路部本体3から取外すと、作業ケース内は流体で満たされ、スピンドルは水圧により上方に押し上げられ、支持板94はレバーホイスト95により所定の位置で固定される。この状態から、レバーホイスト95を緩めるように操作して、スピンドル92を徐々に移動させることができるようになっている。尚、水圧での押上げが不十分な場合、クレーンなどの引上げ装置を利用してもよい。また、スピンドル92の長さは、後述するように、作業用ケース30内に最も進出された際に、スピンドル92の先端が仕切弁2の弁棒部17の上端付近に達する一方で、スピンドル92で弁本体部11を管路部本体3から離間させるために最も後退された際に、弁本体部11の下端が作業弁26よりも上部に達するように調整されている。
【0040】
次に、本実施例の弁体撤去方法について図5から図11を参照して説明する。図5から図11において、弁体6がほぼ全開状態にされており、仕切弁2を介して流体管1,1’には、流体が流れている状態である。
【0041】
図5に示すように、仕切弁2の吊耳8が管路部フランジ6、弁蓋フランジ13の外周より飛び出している場合には、切断、除去する。そして、管路部フランジ6と弁蓋フランジ13とを接続している既設ボルト・ナット22を、作業用ボルト23、本発明の締結部材としての長尺の作業用ナット25に交換する。尚、所定の作業用ボルト23、作業用ナット25に交換する交換作業においては、既設ボルト・ナット23を一本ずつまたは所定本数ずつ交換することで、流体管1内の流体を漏洩させることなく、作業用ボルト23、作業用ナット25に交換することができる。尚、万力などで固定しながら、交換作業を行ってもよい。
【0042】
このように、長尺の作業用ナット25に交換することで、図6に示すように、分割式取付部材31の大径鍔部41から作業用ナット25が突出するので、作業スペースが狭くとも、ナットに容易にアクセスできるので、分解組立て作業が容易となる。なお、作業スペース内で作業用ナット25を取外すことができれば、作業用ナット25の長さは、分割式取付部材31の大径鍔部41から作業用ナット25を突出させる必要はない。
【0043】
次に、図6に示すように、分割式取付部材31の分割片の間に、分割式取付部材31と別体あるいは接着・加硫などにより一体化したパッキン42を介在させて、該分割片を流体管1の管軸A-Aに略直交する向きに管路部フランジ6に被せて、ボルト・ナット32により仮固定状態で接合して、分割式取付部材31を一体化する。ここで、サポート96によって高さ調整を行い、分割式取付部材31の大径鍔部41の面が略水平となるように調整し、分割式取付部材31を確実に支持させる。
【0044】
次に、図6、図7に示すように、分割式取付部材31の固定ボルト52を回転して、傾斜部53を弁蓋14と一体に形成された弁蓋フランジ13に軽く当接させる(図7(c))。この状態で、ボルト・ナット32を規定のトルクで締付け、分割式取付部材31を一体化する。さらにこの状態から、分割式取付部材31の固定ボルト52を規定のトルクで締付け、傾斜部53を弁蓋14と一体に形成された弁蓋フランジ13に強く当接させる。これにより、固定ボルト52によって、弁本体部11が管路部本体3側にしっかり保持されるので、管路部フランジ6と弁蓋フランジ13とを接続する作業用ボルト23、作業用ナット25を外しても、弁本体部11が管路部本体3から外れることを防止できる。また、固定ボルト52を軽く当接させて、水平を合わせた後に、サポート96によって、高さ調整及び支持を行うようにしても良い。
【0045】
さらに、図6(b)に示すように、仕切弁2の弁棒部16の上端部に被せられ、弁棒部16を回動操作するための操作ハンドル(図示略)に嵌合するための規定形状を有したキャップ18を取り外しておく。キャップ18を取外しておくことで、仕切弁の高さを低く抑えることができる。作業スペースに余裕がある場合には、キャップ18を取付けた状態で作業することもできる。
【0046】
次に、図7に示すように、管路部本体3と弁蓋14とを接続する作業用ボルト23から、作業用ナット25を取り外す。この際、図4(a)に示す棒状の回転止め治具44を使用して、作業用ボルト23の回転止めをする。作業用ケース30が、分割式取付部材31(第1分割体)と第2分割体80とに分割構造となっているので、仕切弁2全体を作業用ケース30で囲むことなく開放した状態で、弁本体部11と管路部本体3を接続する既設ボルト・ナット22及び作業用ボルト23、作業用ナット25を取り外すことがきるので、作業性を向上させることができる。
【0047】
さらに、図7(b)に示すように、スピンドル92の一端に取付けられた弁吊金具93を、仕切弁2の弁棒部16の上端部に被せ、弁蓋上部ねじ17を利用して、弁吊金具93と弁蓋14とを固定し、弁本体部11とスピンドル92とを接続する。
【0048】
次いで図8に示すように、分割式取付部材31の上部に円筒部材61を載せて、分割式取付部材31の大径鍔部41と、円筒部材61の下部フランジ62とをボルト・ナット64で締結して、分割式取付部材31と円筒部材61とを固定する。また、挿入孔75にスピンドル92を通した上部カバー71を円筒部材61の上部に載せて、円筒部材61の上部フランジ63と、上部カバー71のフランジ72とをボルト・ナット73で締結して、円筒部材61と上部カバー71とを固定する。さらに、スピンドル92の先端に支持板94を固定し、レバーホイスト95を取付け、適度な張力でチェーンを張っておく。尚、円筒部材61、上部カバー71及び弁吊移動工具91を予め組み立てて一体化させておき、分割式取付部材31の上部に円筒部材61等を一括して固定するようにしてもよい。これにより、作業現場での作業性を大きく向上させることができる。
【0049】
そして、作業ケース30の内部空間に、空気弁105で内部空間から空気を排出させながら水等の流体を導入して、作業用ケース30の各接続部分から流体の漏洩がないことを確認しつつ、作業用ケース30内の圧力を流体管1、1’の管路内の圧力と略同等に調整する。尚、前述した第2分割体80と分割式取付部材31との固定作業後の漏洩確認を省略して、作業用ケース30全体の接続を完了させた後にのみ各接続部分から流体の漏洩がないことを確認するようにしてもよい。
【0050】
次に、図9(b)に示すように、作業用ケース30外から固定ボルト52を所定量回転操作して、固定ボルト52の傾斜部53を弁蓋フランジ13から離間させる方向に移動させることで、管路部本体3と弁本体部11と密封状態を緩和させて、管路部本体3と弁本体部11との隙間から管路部本体3内の流体を作業用ケース30内に導く。これにより、管路部本体3内と作業用ケース30内の圧力が同等に調整される。
【0051】
そして、固定ボルト52を更に回転操作して、傾斜部53を弁蓋フランジ13から離間させる。その後、弁吊移動工具91のレバーホイスト95を操作してチェーンを徐々に緩めると、スピンドル92は水圧で押上げられて移動し、弁本体部11を作業弁26よりも上側の上部空間Dまで引き上げる。この際、弁本体部11と管路部本体3を密封するパッキンが残置される場合がある。そのパッキンの除去用として、特に図示しないが、分割式取付部材31の筒部40に密封された透明アクリル等製の窓を設け、また、密封状に棒状部材が、作業ケース30外から、作業ケース30内に挿入できるようにして、パッキンを取り外すようにしてもよい。
【0052】
また、作業弁26を円筒部材61内に進出させることで、作業用ケース30の内部空間を上部空間Dと下部空間Eとに分断し、下部空間Bを密封状に閉塞する。これにより、作業用ケース30の内部空間が上部空間Dと下部空間Eとに分断されることになり、下部空間Eを密封状に保ちつつ、上部空間Dを開放することができるようになる。
【0053】
そして、図示しない排出バルブを介して、上部空間D内の流体を作業用ケース30外部に排出する。その後、上部カバー71と円筒部材61とを接続するボルト・ナット73を外し、上部カバー71、弁吊移動工具91ともに、弁本体部11を撤去する。
【0054】
なお、実施例1の管路部フランジ6の形状は、小判形であったが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではない。たとえば、実施例1の分割式取付部材31の封止部36は、管路部フランジ6の形状に合わせて小判形としていたが、図10に示すように、楕円型の管路フランジ102、弁蓋フランジ103を有する仕切弁101の場合には、管路フランジ102、弁蓋フランジ103の形状に合わせて、分割式取付部材107の封止部109の形状も小判形に構成することができる。さらに、小判形、楕円形に限らず、図11の仕切弁111のような略矩形形のフランジ形状115、116にも適用することができる。
【0055】
また、図10のように首部104の長さが短い場合、すなわち管軸A-Aからの管路フランジ102の下面位置の寸法Mがフランジ108、108’の半径寸法Rより小さい場合には、分割式取付部材107は、管路部フランジ102の周方向に4分割の分割体に分割可能に構成することもできる。分割数は、偶数に限らず奇数の分割数にしてもよい。さらに、分割式取付部材107の封止部109の外壁の管軸方向(A-A方向)の幅寸法Nは、仕切弁に面する側のフランジ108とフランジ108’の面間寸法Lより小さく構成することで、首部の長さMが短い場合であっても、本発明の分割式取付部材を適用することができる。このように、分割式取付部材は、種々の弁装置の形状を適合させることができ、本発明の作業用ケースを種々の弁装置に装着することができる。
【実施例2】
【0056】
実施例2に係る弁体撤去装置及び弁体撤去方法につき、図12及び図13を参照して説明する。実施例2に係る弁体撤去装置及び弁体撤去方法は、図11の仕切弁111と同じ形状の仕切弁であるが、保持手段55を使用しない点で相違する。以下、実施例1の弁体撤去装置及び弁体撤去方法と重複する説明は省略する。
【0057】
図13に示すように、作業用ケース120は、本発明の第1分割体としての分割式取付部材121と、本発明の第2分割体としての円筒部材126、作業弁円筒部127及び上部カバー128とからなる。円筒部材126と作業弁円筒部127と上部カバー128とは一体に接続され、円筒部材126、作業弁円筒部127及び上部カバー128の内部には、連結部材130と弁撤去軸131とが組込まれている。さらに、上部カバーの上には、挿入機132が取付けられる。
【0058】
弁体撤去の手順について説明する。最初に、図12の仕切弁111において、本発明の第1分割体としての分割式取付部材121の分割片の間にパッキン122を介在させて、分割片を流体管1の管軸A-Aに略直交する向きに、管路部フランジ115の外径外側から被せて、ボルト・ナット125により締結する。次に、管路部フランジ部115と弁蓋フランジ116を接続している既設ボルト・ナットを一本ずつまたは所定本数ずつ作業用ボルト123、作業用ナット124に交換する。
【0059】
次いで、図12、図13に示すように、円筒部材126、作業弁円筒部127及び上部カバー128並びに連結部材130と弁撤去軸131とを一体に組立てたものを分割式取付部材121の上に設置し固定する。そして、円筒部材126の窓134から仕切弁111の弁棒部129と連結部材130を連結して、連結部材130を介して仕切弁111の弁蓋136を動かないように押し付ける。さらに、弁蓋136を管路部フランジ115に固定している作業用ナット124を取外す。作業用ナットを124は、長尺に形成されているので、作業者が窓130から作業用ナット124に容易にアクセスすることができ、容易に取外すことができる。
【0060】
次に、窓134を蓋135によって閉塞し、挿入機132を操作して、弁撤去軸131を引上げ、弁体(図示せず)を仕切弁111から撤去することができる。
【0061】
次いで、作業弁26によって、作業ケース120内を上部空間P及び下部空間Qに分離したのち、排出バルブ(図示せず)を介して、上部空間P内の流体を作業用ケース30外部に排出する。その後、上部カバー128と作業弁円筒部127とを接続するボルト・ナットを外し、上部カバー128、挿入機132ともに、弁本体部111を撤去する。
【0062】
このように、実施例2の弁体撤去装置及び弁体撤去方法は、保持手段55を使用しないので、作業を簡略できる。
【実施例3】
【0063】
実施例3に係る弁体撤去装置及び弁体撤去方法につき、図14を参照して説明する。実施例1及び実施例2に係る弁体撤去装置及び弁体撤去方法は、長尺の作業用ナットを使用するものであったが、実施例3に係る弁体撤去装置及び弁体撤去方法は、作業用ナットを使用しない点で、実施例1及び実施例2と相違する。以下、実施例1及び実施例2の弁体撤去装置及び弁体撤去方法と重複する説明は省略する。
【0064】
図14の仕切弁151において、分割式取付部材152の分割片を管路部フランジ153の径方向外側から被せて、ボルト・ナット(図示せず)により分割式取付部材152を一体に組立てる。次に、保持手段の固定ボルト159を回動させて、固定ボルト159を弁蓋フランジ154の上面に当接させて、弁蓋フランジ154を動かないように固定する。また、分割式取付部材152の下部には、管路部フランジ153の下面に接触し、固定する支持部材が設けてあるため、強固に固定される。
【0065】
次に、管路部フランジ部153と弁蓋フランジ154を接続している既設ボルト・ナット156を一本ずつまたは所定本数ずつ作業用ボルト157に交換する。さらに、管路部本体の首部160に2分割された略小判形の支持部材158を取付け、作用ボルト157の下端を支持する。
【0066】
次いで、実施例1の図8、図9と同じように、分割式取付部材152の上に円筒部材61、上部カバー71及び弁吊移動工具91を組立て、実施例1と同じ手順で、弁体を撤去できる。また、この場合、掘削の深さは、流体管半分ぐらいまでとして、支持部材158の底面を掘削地面の間にジャッキなどを入れて、水平を出し、確実に作業用ケースや水などの重量を支持させるようにしている。
【0067】
実施例3に係る弁体撤去装置及び弁体撤去方法は、作業用ナットを使用せずに弁体を撤去できるので、作業ケース内に設置された作業ナットの取付け、取外し等の手順を省略できるので、作業時間を短縮できる。
【0068】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0069】
たとえば、実施例3の図14においては、管路部本体の首部に2分割された外形小判形の支持部材158を取付け、作業用ボルト157の下端を支持するようにしている。しかし、これに限らず、図15のように、別体の支持部材164を複数、第1分割体163の下端にネジ等で固定してもよい。この場合、支持部材164は、ボルト挿通孔を密封する作業用軸169を併せ持っている。
【0070】(削除)
【0071】
また、本実施例では、密封部材として、パッキン等を使用しているが、これに限らず、液状パッキンを使用してもよい。
【0072】
また、本発明では弁装置は、仕切弁としているが、バタフライ弁、切換弁、ボールバルブ、プラグなどでも良い。
【符号の説明】
【0073】
1、1’ 流体管
2 仕切弁(弁装置)
3 管路部本体
4 管部
5 首部
6 管路部フランジ(第1フランジ)
11 弁本体部
13 弁蓋フランジ(第2フランジ)
22 既設ボルト・ナット
23、123 作業用ボルト(締結部材)
24 ボルト挿通孔(挿通孔)
25、124 作業用ナット(締結部材)
30、120 作業用ケース
31 分割式取付部材(第1分割体)
36、109 封止部
61 円筒部材(第2分割体)
71 上部カバー(第2分割体)
101、111 仕切弁
102、115 管路部フランジ(第1フランジ)
103、116 弁蓋フランジ(第2フランジ)
107、117 分割式取付部材(第1分割体)
120 作業用ケース
121 分割式取付部材(第1分割体)
123 作業用ボルト(締結部材)
124 作業用ナット(締結部材)
151、161 仕切弁
153、166 管路部フランジ(第1フランジ)
154、167 弁蓋フランジ(第2フランジ)
152 分割式取付部材(第1分割体)
163 第1分割体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管に連結される管路部本体、及び該管路部本体を閉塞可能な弁本体部を備える弁装置の前記弁本体部を不断流状態で撤去するための弁体撤去装置において、
前記弁体撤去装置は、前記弁装置の一部を密封状態に囲う作業用ケースと、前記作業用ケースの内部空間を仕切る作業弁と、前記弁本体部を前記作業用ケース内で移動を可能とする弁移動手段と、前記管路部本体に設けられた第1フランジ及び前記弁本体部に設けられた第2フランジを締結する締結部材と、を備え、
前記作業用ケースは、第1分割体及び第2分割体から構成され、
前記第2分割体は、前記作業弁及び前記弁移動手段を収容し、
前記第1分割体は、前記第2フランジとの間に隙間を有するとともに周方向に分割される複数の分割片、及び前記分割片同士を締付けるボルト・ナットからなり、前記締結部材が挿通される前記第1フランジの挿通孔の径方向外側の前記第1フランジの外周面あるいは軸方向下端面を封止する封止部を有するとともに、前記第1フランジの挿通孔に挿通される前記締結部材の頭部位置まで延設して保持する支持部材を有することを特徴とする弁体撤去装置。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記締結部材は、少なくとも前記第2フランジから前記作業弁の方向に突出する長尺ナットを備えることを特徴とする請求項1に記載の弁体撤去装置。
【請求項4】
前記作業用ケースは、該作業用ケースの外部から操作可能であるとともに前記第2フランジを前記第1フランジ側に保持する保持手段を備えることを特徴とする請求項1または3に記載の弁体撤去装置。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
前記第1分割体は、前記第1フランジの少なくとも短軸方向に沿って2分割されることを特徴とする請求項1、3または4のいずれかに記載の弁体撤去装置。
【請求項7】
流体管に連結される管路部本体と該管路部本体を閉塞可能な弁本体部を備える弁装置の一部を第1分割体及び第2分割体からなる作業用ケースで密封状態に囲み、前記弁本体部を不断流状態で撤去するための弁体撤去方法において、
前記管路部本体に設けられた第1フランジ及び前記弁本体部に設けられた第2フランジを接続するボルト、ナットを作業用ボルト、ナットに交換する工程と、
周方向に分割される前記第1分割体の分割片同士をボルト、ナットにより締付け、前記第2フランジとの間に隙間を設けた状態で、前記第1フランジの外周面の一部あるいは軸方向下端面を封止し、前記作業用ボルトの頭部位置まで延設して保持するとともに、前記作業用ケースの第2分割体によって前記弁装置の一部を密封状態に囲う工程と、
前記作業用ケース内で前記管路部本体から前記弁本体部を取り外す工程と、
前記作業用ケース内に備えられた作業弁によって、前記作業用ケース内における前記弁本体部よりも前記管路部本体側を密封状態に閉塞する工程と、
前記弁本体部を取り出す工程と、
を備えることを特徴とする弁体撤去方法。
【図面】
















 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-06-29 
出願番号 特願2013-248473(P2013-248473)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (F16K)
P 1 651・ 113- YAA (F16K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 柏原 郁昭  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 新海 岳
前田 浩
登録日 2015-05-15 
登録番号 特許第5747068号(P5747068)
権利者 コスモ工機株式会社
発明の名称 弁体撤去装置及び弁体撤去方法  
代理人 石川 好文  
代理人 天坂 康種  
代理人 重信 和男  
代理人 溝渕 良一  
代理人 林 道広  
代理人 秋庭 英樹  
代理人 天坂 康種  
代理人 堅田 多恵子  
代理人 重信 和男  
代理人 林 道広  
代理人 堅田 多恵子  
代理人 石川 好文  
代理人 秋庭 英樹  
代理人 溝渕 良一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ