現在、審決メルマガは配信を一時停止させていただいております。再開まで今暫くお待ち下さい。

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
管理番号 1321268
異議申立番号 異議2016-700296  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-11 
確定日 2016-11-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第5792920号発明「ワクチン」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5792920号の請求項1?12に係る特許を維持する。 
理由 [第1]手続の経緯
特許第5792920号の請求項1?12に係る特許についての出願は、平成18年12月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2005年12月22日 英国、外8)を国際出願日とする出願であって、平成27年8月14日にその特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、特許異議申立人山田宏基(以下、単に「申立人」ということがある)により特許異議の申立てがなされ、平成28年6月24日付で取消理由が通知され、その指定期間内に平成28年9月29日付の意見書の提出があったものである。

[第2]本件発明
特許第5792920号の請求項1?12の特許に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される、次のとおりのものである((以下、順に「本件発明1」?「本件発明12」ということがあり、また、これらをまとめて単に「本件発明」ということがある)。
『 【請求項1】 肺炎連鎖球菌感染により引き起こされる疾患の治療又は予防のための医薬の製造における、血清型1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F及び23Fと血清型22Fに由来する12種の莢膜糖類コンジュゲートを含む多価肺炎連鎖球菌ワクチンを含む幼児用免疫原性組成物の使用であって、上記疾患が、ヒト幼児の中耳炎、髄膜炎、菌血症、肺炎および/または結膜炎であり、上記22F糖類コンジュゲートがCRM197又はPhtDにコンジュゲートされており、残りの血清型がTT、DT、CRM197、TTの断片C、PhtD、PhtDE融合物、解毒されたニューモリシンおよびDタンパク質からなる群より独立に選択される担体タンパク質にコンジュゲートされている、上記使用。
【請求項2】 2種の異なる担体タンパク質を、少なくとも2種の異なる肺炎連鎖球菌莢膜糖類血清型に別々にコンジュゲートさせる、請求項1に記載の使用。
【請求項3】 免疫原性組成物が、リンカーを介して担体タンパク質にコンジュゲートさせた22F莢膜糖類を含む、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】 リンカーがADHである、請求項3に記載の使用。
【請求項5】 リンカーを、カルボジイミド化合物により担体タンパク質に結合させる、請求項3又は4に記載の使用。
【請求項6】 22F糖類を、CDAP化合物を用いて担体タンパク質又はリンカーにコンジュゲートさせる、請求項3?5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】 免疫原性組成物が、担体タンパク質と22F糖類の比率が5:1?1:5、4:1?1:1又は2:1?1:1(w/w)である22F糖類コンジュゲートを含む、請求項1?6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】 免疫原性組成物が、22F糖類の平均サイズが100kDaを超える22F糖類コンジュゲートを含む、請求項1?7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】 免疫原性組成物が、1種以上の非コンジュゲート化又はコンジュゲート化肺炎連鎖球菌タンパク質をさらに含む、請求項1?8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】 前記1種以上の肺炎連鎖球菌タンパク質が、ポリヒスチジントライアドファミリー(PhtX)、コリン結合タンパク質ファミリー(CbpX)、CbpXトランケート、LytXファミリー、LytXトランケート、CbpXトランケート-LytXトランケートキメラタンパク質、解毒されたニューモリシン(Ply)、PspA、PsaA、Sp128、Sp101、Sp130、Sp125及びSp133から選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】 免疫原性組成物がアジュバントをさらに含む、請求項1?10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】 肺炎連鎖球菌感染により引き起こされる疾患の治療又は予防のための医薬の製造における、請求項1?11のいずれか1項に記載されている免疫原性組成物と、製薬上許容し得る賦形剤とを含むワクチンの使用であって、上記疾患が、ヒト幼児の中耳炎、髄膜炎、菌血症、肺炎および/または結膜炎である、上記使用。 』

[第3]取消理由の概要

[3-1] 本件発明1?12に対し、平成28年6月24日付の取消理由通知書で特許権者に通知した取消理由は、次のとおりである。
『 (1) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2) 下記の請求項に係る本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(3) 下記の請求項に係る本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

[1]理由(1)について
・請求項:1?12
・引用文献等:1?8
取消理由の詳細については、本件特許異議申立人山田宏基が提出した特許異議申立書を参照のこと。引用文献1?8は、各々、同申立書中の甲第1?8号証として提出されたものである。

[2]理由(2)、(3)について
・請求項:1?12
・引用文献等:9?13
取消理由の詳細については、本件特許異議申立人山田宏基が提出した特許異議申立書を参照のこと。引用文献9?13は、各々、同申立書中の甲第9?13号証として提出されたものである。

引 用 文 献 等 一 覧

1.国際公開第02/00249号公報
2.国際公開第00/56360号公報
3.特表2005-516932号公報
4.米国特許出願公開第2003/0099672号明細書
5.特表平11-502820号公報
6.国際公開第2005/102384号公報
7.JAMA,(2005) 294(16) P.2043-2051
8.IDSA,第43回年次集会,口頭発表演題66,要旨,2005年10月6日発表(https://idsa.confex.com/idsa/2005/webprogram/Paper20882.html(検索日:2016年2月17日))
9.INFECTION AND IMMUNITY,(1998) 66(5) P.2093-2098
10.JAMA,(2005) 293(14) P.1751-1758
11.PEDIATR.INFECT.DIS.J.,(2001) 20(3) P.272-277
12.PEDIATR.INFECT.DIS.J.,(2002) 21(10) P.940-946
13.PEDIATR.INFECT.DIS.J.,(2000) 19(9) P.854-862 』

[3-2] 上の取消理由通知に対し、特許権者は、平成28年9月29日付で提出した意見書中で、以下の乙第1?6号証の写しを添付し引用すると共に、取消理由[1]、[2]はいずれも理由がなく、本件発明1?12はいずれも特許維持されるべきものであることを主張する。
・乙第1号証:特許第5749689号のフロントページ及び特許請求の範囲
・乙第2号証:欧州特許第1968631号のフロントページ、登録クレーム及びその部分翻訳(クレーム1)
・乙第3号証:欧州特許第1968631号の審査経過書類
・乙第4号証:Butler et al., The Journal of Infectious Diseases 第171巻 第885-889頁,1995年
・乙第5号証:Flamaing et al., Journal of Antimicrobial Chemotherapy 第50巻 第43-50頁,2002年
・乙第6号証:血清型22F糖類-CRMコンジュゲートの免疫原性を示す実験成績証明書

[第4]当審の判断

[4-1]引用文献の記載
引用文献1?13には、以下の記載がある。(引用文献1,2,4,6?13は英語のため、引用文献1,2,6は対応する日本語公報である特表2004-501873号公報、特表2002-540075号公報、特表2007-533729号公報の各記載に基づく日本語文にて、また、引用文献4,7?13は異議申立書(以下、単に「申立書」ということがある)中で申立人が付した部分訳に基づく日本語文にて、それぞれ記す。下線は当審による。)

(1)引用文献1([ ]内は、対応日本語公報中の記載箇所を示す。以下の(2)、(6)についても同様)
・1a.請求の範囲[【特許請求の範囲】]
『 1.担体タンパク質とインフルエンザ菌B型の莢膜多糖との複合体を含む多価免疫原性組成物であって、細菌による感染症に対する防御を宿主に付与することが可能な、該細菌に由来する2種以上の他の細菌性多糖をさらに含むものであり、該インフルエンザ菌B型の莢膜多糖の複合体はアルミニウムアジュバント塩に吸着されていないものである、上記多価免疫原性組成物。
2.7種より多い他の細菌性多糖を含むものである、請求項1記載の多価免疫原性組成物。
3.他の細菌性多糖が肺炎球菌の莢膜多糖である、請求項2記載の多価免疫原性組成物。
・・・
5.他の細菌性多糖が以下からなる群より選択されるものである、請求項1?4のいずれか1項に記載の多価免疫原性組成物:髄膜炎菌血清群Aの莢膜多糖、・・・、肺炎球菌血清型1の莢膜多糖、肺炎球菌血清型2の莢膜多糖、肺炎球菌血清型3の莢膜多糖、肺炎球菌血清型4の膜多糖、肺炎球菌血清型5の莢膜多糖、肺炎球菌血清型6Aの莢膜多糖、肺炎球菌血清型6Bの莢膜多糖、肺炎球菌血清型7Fの莢膜多糖、肺炎球菌血清型8の莢膜多糖、肺炎球菌血清型9Nの莢膜多糖、肺炎球菌血清型9Vの莢膜多糖、肺炎球菌血清型10Aの莢膜多糖、肺炎球菌血清型11Aの莢膜多糖、肺炎球菌血清型12Fの莢膜多糖、肺炎球菌血清型14の莢膜多糖、肺炎球菌血清型15Bの莢膜多糖、肺炎球菌血清型17Fの莢膜多糖、肺炎球菌血清型18Cの莢膜多糖、肺炎球菌血清型19Aの莢膜多糖、肺炎球菌血清型19Fの莢膜多糖、肺炎球菌血清型20の莢膜多糖、肺炎球菌血清型22Fの莢膜多糖、肺炎球菌血清型23Fの莢膜多糖、肺炎球菌血清型33Fの莢膜多糖、B群連鎖球菌群Iの莢膜多糖、・・・、黄色ブドウ球菌5型の莢膜多糖、・・・、およびインフルエンザ菌LPS。
6.他の細菌性多糖が担体タンパク質と複合体化されたものである、請求項1?5のいずれか1項に記載の多価免疫原性組成物。
7.使用する担体タンパク質が、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM197、組換えジフテリアトキシン、髄膜炎菌由来のOMPC、肺炎球菌由来のニューモリシンおよびインフルエンザ菌由来のプロテインDを含む群より選択されるものである、請求項1?6のいずれか1項に記載の多価免疫原性組成物。
・・・
9.インフルエンザ菌B型の莢膜多糖および他の多糖の全てがCRM197と複合体化されているわけではない、請求項8記載の多価免疫原性組成物。
・・・ 』
・1b.1頁3?21行[【0001】?【0003】]
『 本発明は新しい混合ワクチン製剤に関する。複数の病原体に対する防御を付与し、投与コストを下げ、並びに許容率及び達成範囲率を高めるために、必要とされる免疫処置回数を最小限にするためには、混合ワクチン(複数の病原体に対する防御を提供する)が非常に望ましい。文献によく記載されている抗原の競合(又は干渉)現象により、多成分系ワクチンの開発が複雑になっている。抗原の干渉とは、複数の抗原を投与すると、これらの抗原を個別に投与する場合に観察される免疫反応に比べて一定の抗原に対する反応がしばしば減少する、という観察結果を指す。
・・・
本発明は、そのワクチンを投与すると、百日咳菌、・・・による感染を予防又は治療することができる多価ワクチンであって、その多価ワクチンの成分がワクチン成分のいずれか1つの免疫学的機能を著しく干渉しないことを特徴とする、現在までに最も望まれている多価ワクチンの製造に関する。 』
・1c.8頁18行?9頁26行[【0040】?【0043】]
『 好ましくは、他の細菌性多糖は、髄膜炎菌血清群Aの莢膜多糖(MenA)、・・・、B群連鎖球菌群Iの莢膜多糖、・・・
特に好適な組合せは:1) Hib複合体、MenA複合体、及びMenC複合体;2) ・・・を含む、又はそれらからなる組成物である。・・・。好ましくは、MenA、MenC、及びMenYは、TT又はPDのいずれかとの複合体である。
また他の細菌性多糖は、血清型:1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F又は33F等の肺炎球菌に由来する莢膜多糖のいずれかから(好ましくは8種以上、より好ましくは11種以上、最も好ましくは13種以上)選択され得る。好ましくは、肺炎球菌多糖は複合体化させたものである(最も好ましくはPD複合体)。
例えば、少なくとも4つの血清型(例えば、6B、14、19F及び23Fを含む)に由来する、又は少なくとも7つの血清型(例えば、4、6B、9V、14、18C、19F、及び23Fを含む)に由来する肺炎球菌多糖が、上記リストから選択され得る。より好ましくは8種以上の血清型(例えば、少なくとも11種の血清型)に由来する多糖が組成物中に含まれる。例えば、一実施形態において、組成物は、血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23Fに由来する11種の莢膜多糖(好ましくは複合体化されている)を含む。本発明の好適な実施形態では、少なくとも13種の多糖抗原(好ましくは複合体化されている)が含まれるが、他の多糖抗原、例えば23価(血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F及び33F等)のものも本発明により想定される。 』
・1d.9頁27?31行[【0044】]
『 (例えば肺炎を予防するための)高齢者のワクチン接種の場合、上述の好ましい11価抗原性組成物に加えて血清型8及び12F(また、最も好ましくは血清型15及び22も)を含ませて13/15価ワクチンを生成することが有利であり、これに対して、(特に中耳炎が心配な)乳児又は幼児の場合、血清型6A及び19Aを含ませて13価ワクチンを生成するのが有利である。 』
・1e.18頁9?25行[【0069】?【0070】]
『 実施例4:Hib-11価肺炎双球菌複合体(Hib/Strep11V)ワクチンの調製
ラクトース[Hiberix(商品名)(スミスクライン・ビーチャム・バイオロジカルズ)]の存在下でpH6.1にて凍結乾燥した、インフルエンザ菌b型菌の莢膜多糖とTTとの複合体(用量あたり複合体中の多糖は10μg)を、11価の肺炎双球菌の莢膜多糖(血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23F)とPDとの複合体(用量あたり各複合体中の多糖は1μg)の溶液中に即時に(使用する日に)溶解した。肺炎双球菌ワクチンは、前もって0.5mgのAl^(3+)(AlPO_(4))に吸着させておいた。
実施例5:実施例4のワクチンに対する臨床試験
実施例4のワクチン及び対照ワクチンをドイツ人の乳児に3回に分けて(生後3、4及び5ヶ月のとき)投与した。 』

(2)引用文献2
・2a.請求の範囲[【特許請求の範囲】]
『 1.インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)からのプロテインDまたはそのプロテインD断片にコンジュゲートされた病原性細菌由来の多糖抗原を含む多糖複合体抗原。
2.前記多糖抗原が、腸チフス菌(Salmonella typhi)からのVi多糖、髄膜炎菌多糖、・・・、肺炎連鎖球菌からの多糖、・・・から成る群から選択される、請求項1記載の多糖複合体。
3.請求項1または2に記載の複数の多糖複合体抗原を含む免疫原性組成物。
4.少なくとも4つの肺炎連鎖球菌血清型からの肺炎連鎖球菌多糖抗原を含む、請求項3記載の免疫原性組成物。
5.少なくとも1つの肺炎連鎖球菌タンパク質抗原を付加的に含む、請求項3または4記載の免疫原性組成物。
・・・
8.前記タンパク質抗原またはその免疫学的機能等価物が、ニューモリジン、PspAまたはその膜貫通欠失変異体、PspCまたはその膜貫通欠失変異体、PsaAまたはその膜貫通欠失変異体、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼならびにCbpAまたはその膜貫通欠失変異体から成る群から選択される、請求項5?7の免疫原性組成物。
・・・
21.請求項3?19に記載の免疫原性組成物を含むワクチン。
22.病原性細菌に対する免疫原性組成物の製造方法であって、以下のステップ: 前記病原性細菌からの多糖抗原の単離、 前記多糖の活性化、および 前記多糖のタンパク質Dへのコンジュゲーションを含む前記方法。 』
・2b.1頁14?21行[【0003】]
『 発明の背景 肺炎連鎖球菌は、少なからぬ罹患率および死亡率(特に若年および老齢者における)に関与するグラム陽性細菌であって、侵襲性疾患、例えば肺炎、菌血症および髄膜炎、ならびに集落形成に関連した疾患、例えば急性中耳炎を引き起こす。60歳より上の人々に関する米国での肺炎球菌性肺炎率は、100,000人に3?8人であると見積もられる。症例の20%において、これは菌血症およびその他の症状発現、例えば髄膜炎を引き起こし、死亡率は、抗生物質治療を用いた場合でも30%近くである。 』
・2c.6頁21行?7頁28行[【0022】?【0028】]
『 ワクチン接種への多糖アプローチに関連した問題の1つは、多糖それ自体が貧免疫原性であるという事実である。免疫原性のこの欠如を克服するよう意図された戦略としては、大型高免疫原性タンパク質との多糖の連結が挙げられるが、これは、バイスタンダーT細胞援助を提供する。
多糖免疫原の産生のために今日一般に用いられるこれらの高免疫原性担体の例としては、ジフテリア毒素(CTまたはCRM197突然変異体)、破傷風毒素(TT)、カギアナカサガイヘモシアニン(KLH)およびツベルクリンの精製タンパク質誘導体(PPD)が挙げられる。
一般的に用いられる担体に関連した問題
・・・
これらの担体の一般的使用および抗多糖抗体応答の誘導におけるそれらの成功例にもかかわらず、それらはいくつかの欠点に関連する。例えば、抗原特異的免疫応答は、担体(この場合、破傷風毒素)に対して向けられる先在する抗体の存在により抑制され得る(エピトープ抑制)ということが知られている・・・
・・・
さらに、定期的追加免疫を要するワクチンに関しては、高免疫原性担体、例えばTTおよびDTの使用は、数回注射後の多糖抗体応答を抑制すると思われる。・・・
・・・
したがって、多糖ベースのワクチンのための担体タンパク質の選択は、すべての患者において作用する(広範なMHC認識)担体に対する必要性、高レベルの抗多糖抗体応答の誘導および担体に対する低抗体応答の間の平衡を必要とする。 』
・2d.11頁20行?12頁3行[【0048】]
『 本発明の肺炎連鎖球菌多糖抗原 典型的には、本発明の肺炎連鎖球菌ワクチンは、多糖抗原(好ましくは複合化)を含み、この場合、多糖は少なくとも4つの血清型の肺炎球菌から得られる。好ましくは、4つの血清型としては、6B、14、19Fおよび23Fが挙げられる。さらに好ましくは少なくとも7つの血清型、例えば4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23Fから得られるものが組成物中に含まれる。さらに好ましくは、少なくとも11の血清型が組成物に含まれ、例えば一実施態様における組成物は、血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19Fおよび23Fから得られる莢膜多糖(好ましくは複合化(conjugated))を含む。本発明の好ましい実施態様では、少なくとも13の多糖抗原(好ましくは複合化)が含まれるが、しかしさらなる多糖抗原、例えば23価(例えば血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23Fおよび33F)も本発明により意図される。 』
・2e.12頁4?14行[【0049】?【0050】]
『 老齢者予防接種(例えば、肺炎予防のための)に関しては、血清型8および12F(そして最も好ましくはさらに15および22)を前記の11価抗原性組成物に含入して、15価ワクチンを生成するのが有益であるが、一方、乳児または幼児用(中耳炎がより問題である)には、血清型6Aおよび19Aが含入されて、13価ワクチンを生成するのが有益である。
老齢者(+55歳)集団における肺炎ならびに乳児(18ヶ月まで)および幼児(典型的には18ヶ月?5歳)における中耳炎の予防/改善のためには、本明細書に記載したような多価肺炎連鎖球菌多糖を肺炎連鎖球菌タンパク質またはその免疫学的機能等価物と併用することが、本発明の好ましい実施態様である。 』
・2f.14頁12行?15頁3行[【0058】?【0061】]
『 前記のように、予防接種への多糖アプローチに関連した問題は、多糖それ自体が貧免疫原性であるという事実である。これを克服するために、多糖は、バイスタンダーT細胞援助を提供するタンパク質担体に連結され得る。したがって、本発明に利用される多糖はこのようなタンパク質担体に結合されるのが好ましい。・・・このような担体の例としては、ジフテリアおよび破傷風毒素(それぞれDT、DT CRM197およびTT)、カギアナカサガイヘモシアニン(KLH)、髄膜炎菌からのOMPC、ならびにツベルクリンの精製タンパク質誘導体(PPD)が挙げられる。
しかしながら多数の問題が、これらの一般的に用いられる担体の各々に関連している(前記の「一般的に用いられる担体に関連した問題」の節参照)。
本発明は、好ましい実施態様において、これらの欠点を蒙らない多糖ベースの免疫原構築物の調製に際して用いるための新規の担体を提供する。肺炎球菌多糖ベースの免疫原性組成物(またはワクチン)のための好ましい担体は、インフルエンザ菌からのプロテインD(EP 594610-B)またはその断片である。用いるのに適した断片としては、T-ヘルパーエピトープを包含する断片が挙げられる。特に、プロテインD断片は、好ましくはタンパク質のN末端1/3を含有する。
肺炎球菌多糖のためのさらに好ましい担体は、肺炎球菌タンパク質それ自体である・・・。 』
・2g.35頁5?24行[【0164】?【0168】]
『 実施例2-乳児ラットにおける11価肺炎球菌PS-PD複合体ワクチンの免疫原性に及ぼす先進アジュバントの作用の研究
0.1μgの各多糖の用量の11価肺炎球菌PS-PD複合体ワクチン(実施例1の方法にしたがって製造)で、以下のアジュバント処方物:なし、AlPO4、3D-MPL、AlPO4上の3D-MPLを用いて、乳児ラットを免疫感作した。
・・・
材料と方法 免疫感作プロトコール 乳児OFAラットを異なる母親に対して無作為化し、それらが初回免疫感作を施されたときは7日齢であった。それらには、14および28日後にさらに2回の免疫感作を施した。・・・
プロテインD上に以下の多糖血清型:1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、23Fを連結させたものを含む11価肺炎球菌複合ワクチンで、ラットを免疫感作した。 』

(3)引用文献3
・3a.特許請求の範囲
『 【請求項1】 2種以上のキャリアタンパク質にコンジュゲートした種々の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)血清型由来の11種以上の多糖類を含有する、改善された肺炎連鎖球菌ワクチンであって、血清型6B、19F及び23Fが第1のキャリアタンパク質にコンジュゲートし、残りの血清型が1種または2種の第2のキャリアタンパク質にコンジュゲートしており、該第2のキャリアタンパク質が該第1のキャリアタンパク質と異なるものである、上記ワクチン。
【請求項2】 2種以上のキャリアタンパク質にコンジュゲートした種々の肺炎連鎖球菌血清型由来の11種以上の多糖類を含有する、改善された肺炎連鎖球菌ワクチンであって、血清型6B及び23Fが第1のキャリアタンパク質にコンジュゲートし、残りの血清型が1種または2種の第2のキャリアタンパク質にコンジュゲートしており、該第2のキャリアタンパク質が該第1のキャリアタンパク質と異なるものである、上記ワクチン。
【請求項3】 2種以上のキャリアタンパク質にコンジュゲートした種々の肺炎連鎖球菌血清型由来の11種以上の多糖類を含有する、改善された肺炎連鎖球菌ワクチンであって、血清型6Bが第1のキャリアタンパク質にコンジュゲートし、残りの血清型が1種または2種の第2のキャリアタンパク質にコンジュゲートしており、該第2のキャリアタンパク質が該第1のキャリアタンパク質と異なるものである、上記ワクチン。
【請求項4】 第1のキャリアタンパク質がDT、crm197、TT、断片C、Ply、PhtA、PhtB、PhtD、PhtE、OmpC及びPorBからなる群から選択される、請求項1?3のいずれか1項記載のワクチン。
【請求項5】 第2のキャリアタンパク質がPD、DT、crm197、TT、断片C、Ply、PhtA、PhtB、PhtD、PhtE、OmpC及びPorBからなる群から選択される1種または2種のタンパク質を含む、請求項1?4のいずれか1項記載のワクチン。
・・・ 』
・3b.【0016】?【0017】
『 【0016】 第1のキャリアタンパク質は特定の実施形態に限定される必要はないが、DT(ジフテリアトキソイド)、TT(破傷風トキソイド)、DTcrm197(DT突然変異体)、他のDT点突然変異体(例えば位置Glu-148に関して、例えば米国特許第4,709,017号、WO93/25210号、WO95/33481号参照)、FragC(TTの断片)、Ply(ニューモリシン及びその突然変異体)、PhtA、PhtB、PhtD、PhtE(PhtA-Eについては以下でより詳細に記載する)、OmpC(N. meningitidis由来)、PorB(N. meningitidis由来)等のタンパク質またはその断片が挙げられる。好ましくは、DT、TT、またはcrm197である。より好ましくはDTである。
【0017】 第2のキャリアタンパク質も、PD(インフルエンザ菌のタンパク質D-例えばEP 0 594 610B参照)、DT、TT、DTcrm197、FragC、Ply、PhtA、PhtB、PhtD、PhtE、OmpC、PorB等からなる群から選択されるであろう。2種の異なる第2のキャリアタンパク質を使用することができるが、本発明において、好ましくは1種の第2のキャリアタンパク質を使用すべきであることが意図される。 』
・3c.【0018】?【0020】
『 【0018】 肺炎連鎖球菌多糖類の数は、11種の異なる血清型(若しくは「V」価)から23種の異なる血清型(23V)までにわたる。好ましくは、11、13または16種の異なる血清型である。本発明の別の実施形態において、ワクチンはコンジュゲートした肺炎連鎖球菌多糖類及びコンジュゲートしていない肺炎連鎖球菌多糖類を含有し得る。好ましくは、多糖類血清型の総数は23以下である。例えば、本発明は11種のコンジュゲートした血清型及び12種のコンジュゲートしていない多糖類を含み得る。同様に、ワクチンは13種または16種のコンジュゲートした多糖類及び10種または7種のコンジュゲートしていない多糖類をそれぞれ含み得る。
【0019】 好ましくは、本発明の多価肺炎球菌ワクチンは以下の血清型:1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F及び33Fから選択されるが、ワクチンを投与されるレシピエントの年齢やワクチンを投与する地理的位置に応じて1種または2種の他の血清型を代わりに用いることができることは認識される。例えば、11価のワクチンは血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23Fから構成され得る。13価の小児科用(乳幼児用)ワクチンは血清型6A及び19Aをも含むことができ、13価の高齢者用ワクチンは血清型8及び12Fを含むことができる。 』

(4)引用文献4
・4a.[0034]
『 [0034] 本発明による多糖類コンジュゲートの組成物は、また、Clostridium tetani及びCorynebacterium diphtheriaeに関する保護免疫を誘導するために、破傷風毒素にコンジュゲートした少なくとも2種の多糖類、及びジフテリア毒素にコンジュゲートした少なくとも2種の多糖類を含み得る。 』
・4b.[0040]
『 [0040] 多糖類とジフテリア毒素の結合は、以下のとおり行われた:エチルジメチルアミノプロピルカルボジイミド(EDAC)及びシアノ水素化ホウ素ナトリウムの存在下で(3型以外の全ての型について)、又は単にシアノ水素化ホウ素ナトリウムの存在下で(3型について)、多糖類と過剰のアジピン酸ジヒドラジド(ADH)とを反応させることにより、多糖類にヒドラジド基を導入する。したがって、得られる多糖類は、EDACの存在下で担体タンパク質と反応させられている。 』

(5)引用文献5
・5a.62頁1?12行
『 CDAP活性化肺炎球菌(Pneumococcal)14型(Pn14)へのヒドラジド誘導化ジフテリアトキソイド(DT)の結合 カルボキシル基上で誘導化されたDT:DTを下記のようにしてADHでカルボキシル基において誘導化した。0.5Mの1-メチルイミダゾール(pH6)中の6.95mgのDTに、0.5mlの同一緩衝液中の0.5Mのアジピン酸ジヒドラジド(ADH)を添加し、次いで混合しながら15mgの1-エチル-(3-ジメチルアミノプロピル)カーボジイミド塩酸塩(EDC)を添加した。一夜インキュベートした後、タンパク質を直列の2つのP-6カートリッジ(10mMの酢酸ナトリウム(pH5)と平衡化させた)上で脱塩し、セントリコン(Centricon)50装置で17.1mg/mlに濃縮した。TNBSアッセイはヒドラジドの存在を示した。この物質をDT/EDC/Hzと表示した。 』

(6)引用文献6
・6a.23頁28?32行[【0158】]
『 糖は、典型的に、結合の前に活性化されるか、または官能化される。例えば、活性化は、CDAP(例えば、1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジウムテトラフルオロボレート[216、217など])のようなシアン化試薬を含む。他の適した技術は、カルボジイミド、ヒドラジド、活性エステル、ノルボラン、p-ニトロ安息香酸、N-ヒドロキシスクシンイミド、S-NHS、EDC、TSTUを使用する;参考文献173への序論をまた参照のこと)。 』
・6b.23頁33行?24頁7行[【0159】]
『 リンカー基を介した連結は、任意の公知の手順(例えば、参考文献218および219に記載された手順)を利用して作られ得る。一つの型の連結は、多糖の還元的アミノ化、アジピン酸リンカー基の一端と、結果として生じるアミノ基とのカップリング、およびその後、アジピン酸リンカー基の他の一端へのタンパク質のカップリングを含む[171、220、221]。他のリンカーとしては、B-プロピオンアミド[222]、ニトロフェニル-エチルアミン[223]、ハロゲン化ハロアシル[224]、グリコシド結合[225]、6-アミノカプロン酸[226]、ADH[227]、C4?C12部分[228]などが挙げられる。リンカーの使用に代わる手段として、直接的結合が使用され得る。そのタンパク質への直接的結合は、例えば、参考文献229および参考文献230に記載されるような多糖の酸化とその後のタンパク質との還元的アミノ化を含み得る。 』

(7)引用文献7
・7a.2043頁要約「背景」、「結論」1?2行
『 背景 7種の肺炎球菌血清型を標的とするコンジュゲートワクチンは、2000年に、若い子供について認可された。成人で使用されていた23価の多糖類ワクチンとは対照的に、7価のコンジュゲートワクチンは、肺炎球菌の保護や伝播に影響を与える。導入後の初期において、侵襲性肺炎球菌疾患の事象は、肺炎球菌疾患に関して高リスク集団である高齢者の間で減少した。
・・・
結論 我々の知見は、子供におけるコンジュゲートワクチンの使用が実質的に高齢者において有益であることを示している。 』
・7b.2045頁左欄18?28行
『 ・・・。4つの年齢集団(50-64歳、65-74歳、75-84歳、及び85歳以上)の中で、侵襲性疾患の率は、高齢者で多かった(図)。これらの各々の年齢集団の中で、当該事象は、1998-1999年と2002-2003年との間に有意に減少した;50-64歳に関して-17%(95% CI、-24%から-11%)から、75-84歳に関して-35%(95% CI、-41%から-28%)までの減少。 』
・7c.2045頁中欄23?29行
『 50歳又はそれ以上の年齢の成人の中で、PCV-7血清型により引き起こされる侵襲性肺炎球菌疾患の事象は、1998-1999年と2002-2003年との間に、10万人あたり22.4ケースから10.2ケース(-55%;95% CI、-58%から-51%)まで減少した(表1)。・・・ 』
・7d.2050頁右欄7?10行
『 ・・・。米国では、子供へのPCV-7の使用は、高齢者の疾患を予防する有効な手段であった。 』

(8)引用文献8
・8a.「結果」1?3行、「結論」1行
『 結果: NVT(※申立人注:非ワクチン型)疾患の事象は、5歳未満の小児に関して18%まで(10万人あたり16.6?19.6ケース)、65歳以上の高齢者に関して13%まで(10万人あたり27.4?30.8ケース増加した(両方p<0.05)。我々は、5歳未満の小児(p<0.01)及び65歳以上の高齢者において、血清型19A、3、15、22F、33F、35の増加を観察した。
結論:PCV7は、侵襲性肺炎球菌疾患事象を有意に減少させたが、血清型置換が生じている。 』

(9)引用文献9
・9a.2093頁要約2?10行
『 我々は、同一のタンパク質成分(即ち、破傷風毒素(TT))を含むいつくつかの共投与されるワクチンの潜在的な免疫応答干渉について調べた。TT(PncT)にコンジュゲートした4価の肺炎球菌ワクチン及びジフテリア-破傷風-百日咳-ポリオウイルス-H.influenzae type b-破傷風コンジュゲートワクチンを同時に受ける幼児は、ジフテリア毒素にコンジュゲートした4価の肺炎球菌ワクチン又はプラセボを受けるよりも、有意に低い抗H.influenzae type b多糖類(ポリリボシルリビトールリン酸(PRP))抗体濃度を示した。用量範囲試験は、抗PRP抗体濃度が幼児に投与されるPncTワクチンのTT量に逆相関することを示した。免疫後の抗破傷風抗体濃度は、また、共投与されるワクチンのTT量が増加するにつれて、逆相関の影響を示した。 』

(10)引用文献10
・10a.1751頁要約「結論」
『 Pnc9-MenCコンビネーションワクチンを、年齢が2,3及び4ヶ月の幼児に投与したところ、MenCワクチンと比較して、グループC髄膜炎菌に対する免疫原性が減少することが証明された。Pnc9-MenCワクチンとDTwPワクチンとを同時に投与したときの免疫原性もまた減少した。Pnc9-MenCワクチンは、安全であり、かつ、肺炎球菌血清型の全てについて免疫原性を示す。減少したMenCの免疫原性は、Pnc9-MenCワクチンの開発を制限するかもしれない。 』
・10b.1752頁右欄27?43行
『 Pnc9-MenCワクチンは、単一用量バイアルで提供される凍結乾燥製剤であった。各々0.5mLの用量は、・・・約38.5μgの交差反応性物質197(CRM_(197))担体タンパク質(ジフテリア毒素の非毒性変異型)を含んでいた。MenCは、CRM_(197)にコンジュゲートした血清型C髄膜炎菌オリゴ糖類を含むコンジュゲートワクチンである。 』
・10c.1754頁左欄24行?中欄2行
『 Pnc9-MenCワクチンは、5ヶ月の年齢でSBA及びELISAにより決定されるとき、MenCワクチンと比較して、血清型C髄膜炎菌多糖類抗体の誘導において、弱い免疫原性を示す(SBA GMTに関して、Pnc9-MenCは、179[95%CI、133-243]であるのに対して、MenCは、808[95%CI、630-1037]である(P<.001)(表2)。 』
・10d.1755頁中欄9行?右欄10行
『 コンジュゲートワクチンの予期しない低免疫原性に関する以前の仮説は、免疫応答が担体タンパク質(ここでは、突然変異ジフテリア毒素CRM_(197))に向けられた結果、共有結合により結合した多糖類への応答を抑制するという、担体により誘導されるエピトープ抑制を含んでいた^(13)。Pnc9-MenC用量(38μg vs MenC10μg)において、増加した量の担体タンパク質は、この仮説に対するいくつかの支持を提供する。 』

(11)引用文献11
・11a.274頁左欄1?4行
『 肺炎球菌のPSの型3,6B,14及び18Cをジフテリア毒素にコンジュゲートし、PSの型1,4,5,7F,9V,19F及び23Fを破傷風毒素タンパク質にコンジュゲートした。 』
・11b.275頁右欄下から3行?276頁左欄8行
『 価数の増加は、担体により仲介される影響のために、免疫原性を減少させる可能性がある^(26-27)。この試験において、そのような影響は観察されなかった;・・・。この試験ワクチンは、2種の担体を最適な濃度で用いることにより、担体に関連する問題を回避するように設計されている。このアプローチは、11価の血清型についてはうまく機能しているようだが、価数をさらに増加させる場合には、さらなる最適化が必要になるかもしれない。 』

(12)引用文献12
・12a.941頁左下欄下から7行?右欄6行
『 肺炎球菌コンジュゲートワクチンは、凍結乾燥型で製剤し、2μgの血清型1,4,5,9V,14,19F及び23F肺炎球菌多糖類;2μgの18C血清型オリゴ糖類;及び4μgの6B血清型多糖類を含んでいた。各多糖類又はオリゴ糖類は、・・・CRM_(197)に独立して結合していた。TETRAMUNEは、・・・及び25μgのCRM_(197)にコンジュゲートした1μgのHibオリゴ糖類を含んでいた。 』
・12b.945頁右欄47行?946頁左欄2行
『 我々は、TETRAMUNEとの混合肺炎球菌コンジュゲートワクチンは、有害事象を増大させず、Hibポリリボシルリビトールリン酸に対する免疫応答を抑制しないか、又はTETRAMUNE免疫単独と比較して、DTPワクチンの成分のいずれかに対する免疫応答を有意に抑制しないと結論付ける。さらに、混合は、TETRAMUNEと肺炎球菌コンジュゲートワクチンとの別々ではあるが同時での免疫と比較して、肺炎球菌コンジュゲートワクチンの多糖類成分に対する免疫応答を抑制しない。 』

(13)引用文献13
・13a.856頁右欄35?38行
『 GMCは、血清型6B(P<0.01)、9V(P<0.01)、14(P<0.05)、19F(P<0.01)及び23F(P<0.001)に関して、生後5ヶ月で、組み合わせ投与群と比較して、個別投与群において有意に高かった。 』
・13b.855頁左欄22?35行
『 幼児は、以下の所定のワクチンを受けた:・・・、H.influenzae type b-CRM_(197)コンジュゲートワクチン・・・。さらに2つの処理群は、生後2ヶ月、3ヶ月及び4ヶ月で、2μgの血清型4、6B、9V、14、19F及び23F多糖類、2μgの血清型18Cオリゴ糖類、4μgの血清型6B多糖類、及びB20μgのCRM_(197)・・・を含む、7VPnC(7価肺炎球菌)コンジュゲートワクチン(0.5ml)を受け、対照群は、生後5ヶ月、6ヶ月及び7ヶ月で、7VPnCを受けた。 』
・13c.856頁 表1、856頁右欄35?38行
表1には、CRM_(197)を用いた7価(4,6B,9V,14,18C,19F,23F)の肺炎球菌ワクチン(PCV7-CRM_(197))と、同じくCRM_(197)を用いたHibワクチン(Hib-CRM_(197))との混合接種において(13b)、別々に異なる部位に接種した場合と比較して、抗肺炎球菌多糖抗体の誘導に対する免疫干渉が生じたことを示すデータが示されている(856頁右欄35?38行)。(表1略)。

[4-2]取消理由[1](進歩性違反)について
[3-1]の取消理由通知書において引用された、申立書に記載された取消理由[1]の要旨は、
(1) 本件発明1は引用文献1又は2に記載された発明に引用文献7及び8の記載を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものである;
(2) 本件発明2?12も、引用文献1又は2に記載された発明に引用文献7及び8の記載を組み合わせることにより、もしくは、さらに引用文献3?6のいずれか一又は複数の記載を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものである;
というものである。

1.本件発明1について
(ア)引用文献1を主引例とする場合
(i) 上の摘記1a?1cによれば、引用文献1には、Hib多糖-担体タンパク質複合体、及び2種以上の他の細菌性多糖-担体タンパク質複合体を含み、またその多価ワクチンの成分が著しい免疫干渉を生じない、それら細菌による感染症に対する防御性を付与し得るワクチンとして有用な免疫原性組成物について記載されており(1a請求項1,6?9、1b)、ここでいう他の細菌性多糖として、肺炎連鎖球菌由来の莢膜多糖であって、血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F又は33F等の肺炎球菌に由来する莢膜多糖のいずれかから好ましくは8種以上、より好ましくは11種以上、最も好ましくは13種以上を採用することも記載されており(1a請求項2?5,1c)、また、摘記1eによれば、そのような免疫原性組成物の例として、
「 Hib莢膜多糖とTTとの複合体、及び11価の肺炎双球菌の莢膜多糖(血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23F)とPDとの複合体を混合してなる免疫原性組成物を調製し、これを乳児へのワクチン接種のために使用すること 」(これを以下「引用発明1」ということがある)
が記載されている。

(ii) ここで、本件発明1と引用発明1とを対比するに、引用発明1における乳児の対象疾患が、肺炎連鎖球菌により引き起こされることが周知の例えば中耳炎であるとしても、両者は
「 肺炎連鎖球菌感染により引き起こされる疾患の治療又は予防のための医薬の製造における、血清型1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23Fの莢膜糖類コンジュゲートを含む多価肺炎連鎖球菌ワクチンを含む幼児用免疫原性組成物の使用であって、上記疾患が、ヒト幼児の中耳炎、髄膜炎、菌血症、肺炎および/または結膜炎であり、TT、DT、CRM197、TTの断片C、PhtD、PhtDE融合物、解毒されたニューモリシンおよびDタンパク質からなる群より独立に選択される担体タンパク質にコンジュゲートされている、上記使用。 」
の点で一致しているが、以下の1)及び2):
1) 肺炎連鎖球菌由来の19A糖類コンジュゲートと共に、同「22F糖類コンジュゲート」を含んでいない点(以下、相違点1という)
2) 1)の22F多糖コンジュゲートにおける担体タンパク質が「CRM197又はPhtD」でない点(以下、相違点2という)
において、引用発明1は本件発明1と相違する。

(iii) そして、上記相違点1に関し検討するに、引用文献1には、特に22F糖類コンジュゲート成分を追加成分として採用したものを、特に幼児用のワクチン組成物として用いることについて、特段の記載はない。
また、この点に関し、申立人は、申立書において、
(iii-1) 引用文献1には、多価ワクチン成分として22F糖類コンジュゲートを(19A糖類コンジュゲートと共に採用し得ることが示されている(1a請求項5、1c)こと;
(iii-2) 引用文献7には、小児がPCV-7ワクチン(血清型4,6B,9V,14,18C,19F,23Fの莢膜糖類の混合ワクチン)の接種を受けることで肺炎球菌の保因が低下し、以て高齢者における肺炎球菌疾患を予防し得ること(即ち、集団免疫の効果)が示されており(7a?7d)、また、同引用文献7では22F糖類の使用を妨げるような事実の開示もないこと;
(iii-3) 引用文献8には、PCV7(引用文献7のワクチンと同組成のものと認められる)ワクチン接種の導入後に、5歳未満の小児において、血清型22Fによる疾患が増加していることが記載されている(8a)ことからも、22F糖類を幼児用の免疫原性組成物の成分として追加することについては十分な動機付けが得られること;
を根拠としつつ、幼児へのワクチン接種用免疫原性組成物に22F糖類を追加成分とすることの容易想到性を主張する。しかしながら、
(iii-A) 引用文献1には、22型糖類を特に高齢者のワクチン接種における免疫原性組成物の追加成分とすることが有利である旨記載されているのであって(1d)、乳児又は幼児用には、19A型糖類を追加成分とすることが有利であることの記載はあるものの、特に22F糖類を幼児用免疫原性組成物の追加成分とすることが有利である旨の記載は見出せない(1d)。
(iii-B) また,引用文献7,8で使用されているPCV-7には、22F糖類がワクチン成分として含まれているものとは認められないし、引用文献8において当該PCV-7ワクチン接種に応じ5歳未満の小児において血清型22F肺炎球菌疾患の増加がみられたからといって、免疫応答性が十分でない幼児に対し22F糖類を安全かつ有効な追加ワクチン成分として採用し得ることまで、これら引用文献7,8から当業者が予期し得たものともいえない。
(iii-C) さらに、特許権者が提出した乙第4号証には、幼児及び小児における種々の血清型の肺炎球菌の有病率等について記載されているところ、2歳未満の幼児における22Fのレベルが低いことを示すデータ値が記載され(886頁表1中の「22F^(*)」の行中の「0.8」%)、同乙第5号証の要約欄中には「・・・。SGTs6,14,18及び19は、高齢者におけるよりも子供において有意により多くの菌血症を引き起こす。逆のことがSGTs3,7,8,9,11,12,15,20,22及び35について言える。」ことが記載されている(要約欄。特許権者による平成28年9月29日付意見書38頁中の部分訳による)ことからみても、特に幼児用のワクチンに22F糖類をワクチン成分として追加して用いることについて、本件特許出願の優先日当時から当業者にとり動機付けられていたとはいえない。
そして、これら(iii-A)?(iii-C)の点を併せ考慮すれば、上述の申立人の主張(iii-1)?(iii-3)は、いずれも確かな根拠に基づいた合理的な主張として採用され得るものではなく、よって、引用文献7及び8の記載を併せ考慮したとしても、引用発明1の免疫原性組成物においてさらに19A糖類コンジュゲートと共に22F糖類コンジュゲートを追加し、これを幼児へのワクチン接種に適用しようとすることについて、引用文献1の記載から当業者が動機付けられていたとはいえない。
また、そうであれば、22F糖類コンジュゲートをワクチン成分として含むことを前提とする相違点2についても、引用文献1、7,8から当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(iv) そして、本件発明1は、上記相違点1,2に係る要件を併せ具備する免疫原性組成物を特にヒトの幼児(集団)に適用することにより、当該幼児(集団)に22F血清型肺炎連鎖球菌に対する有効な免疫防御能を付与せしめ、以て、集団中の高齢者(集団)における22F血清型肺炎連鎖球菌感染及びそれに伴う肺炎球菌疾患を防止、又はその重篤度を低下させるという、本件特許明細書の【0013】?【0014】で説明されているような集団免疫の誘導において、有利な効果を奏するものである。

(v) したがって、本件発明1は、引用文献7及び8の記載を併せて考慮したとしても、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)引用文献2を主引例とする場合
(i) 上の摘記2a?2gによれば、引用文献2には、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)からのプロテインDまたはそのプロテインD断片にコンジュゲートされた病原性細菌由来の多糖抗原であって、当該多糖抗原として少なくとも4種の血清型肺炎球菌の多糖を含む、エピトープ抑制、即ち免疫干渉等に基づく問題が解決された(2c,2f)、中耳炎等の肺炎球菌感染に伴う疾患に対し防御性を付与し得るワクチンとして有用な免疫原性組成物について記載されており(2a?2f)、また、乳児ラットをモデル適用対象とした摘記2gによれば、そのような免疫原性組成物の例として、
「 プロテインDにそれぞれコンジュゲートされた以下の血清型:1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、及び23Fの肺炎球菌多糖抗原を含む11価の免疫原性組成物を調製し、これを乳児へのワクチン接種のために使用すること 」(これを以下「引用発明2」ということがある)
が記載されているといえる。

(ii) そうすると、本件発明1と引用発明2とを対比するに、(ア)(ii)で本件発明1-引用発明1間の対比について述べたのと同様、両者は
「 肺炎連鎖球菌感染により引き起こされる疾患の治療又は予防のための医薬の製造における、血清型1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23Fの莢膜糖類コンジュゲートを含む多価肺炎連鎖球菌ワクチンを含む幼児用免疫原性組成物の使用であって、上記疾患が、ヒト幼児の中耳炎、髄膜炎、菌血症、肺炎および/または結膜炎であり、TT、DT、CRM197、TTの断片C、PhtD、PhtDE融合物、解毒されたニューモリシンおよびDタンパク質からなる群より独立に選択される担体タンパク質にコンジュゲートされている、上記使用。 」
の点で一致している一方、引用発明2は(ア)(ii)の相違点1及び2の点で、本件発明1と相違している。

(iii) してみると、(ア)(iii)?(iv)で説示したのと同様の理由により、本件発明1は、引用文献7及び8の記載を併せて考慮したとしても、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本件発明2?11,12について
本件発明2?11は本件発明1をさらに減縮した発明であり、また、本件発明12は、本件発明1?11と同様の疾患の治療又は予防のための医薬の製造における、本件発明1?11に係るいずれかの免疫原性組成物及び賦形剤を含むワクチンの使用に係る発明であるから、それら本件発明2?11,12もまた、上の(ア)、(イ)で説示した本件発明1についての判断と同様の理由により、引用文献1又は2に記載された発明に引用文献7及び8の記載を組み合わせることにより当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、引用文献3?6のいずれか一又は複数の記載をさらに組み合わせることにより当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

3.小括
1.,2.での検討のとおりであるから、本件発明1?12はいずれも、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるとはいえない。

[4-3]取消理由[2](実施可能要件及びサポート要件違反)について
[3-1]の取消理由通知書において引用された、申立書に記載された取消理由[2]の要旨は、本件特許明細書(以下、単に「本件明細書」ということがある)は、以下の(1)?(3)の点:
(1) 本件明細書では、「特定の血清型の莢膜糖類を特定の担体タンパク質にコンジュゲートさせて混合した13価の免疫原性組成物」についてのみ免疫干渉に関する問題が解決されたことが確認できているところ、本件発明は、莢膜糖類と担体タンパク質とのコンジュゲーションに関して、引用文献9?13に記載されるような莢膜糖類と担体タンパク質の組合せにより生じ得る免疫干渉に関する問題について、その解決が確認されていない広範なコンジュゲーションの形態を含み得る記載となっている;
(2) 本件明細書には、「血清型22FがPhtD、PhtDE融合物及びPDにコンジュゲートした多価免疫原性組成物」に関する事項のみ記載されるところ、本件発明は、血清型22FがCRM197にコンジュゲートした組成物も含み得る記載となっている;
(3) 本件明細書には、「13価の血清型の莢膜糖類からなる多価免疫原性組成物」に関する事項のみ記載されるところ、本件発明は、12価の血清型の莢膜糖類を含む多価免疫原性組成物や13価を超える血清型の莢膜糖類を含む多価免疫原性組成物も含み得る記載となっている;
において不備であることから、請求項1?12に係る発明について、本件明細書の発明の詳細な説明には本件特許の請求項1?12に係る発明について当業者が理解かつ実施することができるといえる程度の明確かつ十分な記載がなされておらず、また、請求項1?12は、発明の詳細な説明に記載されたものではない、というものである。

1.そこで、まず、本件発明1に係る発明について、本件特許明細書の記載を参酌しつつ、上の(1)?(3)の主張の適否について以下検討する。

(ア)上の要旨(1)に関し、本件明細書には、
(i)2歳未満のヒト幼児(【0002】、【0154】)における多価多糖類ワクチンに対する低い免疫応答性(【0002】)や、単一の多価多糖類コンジュゲート混合ワクチンにおいて生じ得る免疫干渉の問題を踏まえつつ(【0003】?【0005】)、
(ii)本件発明が解決しようとする課題が、複数血清型の肺炎連鎖球菌多糖類コンジュゲートワクチンの改良された製剤を開発することであると記載されており(【0011】)、
(iii)当該課題が、異なる血清型に由来する2種以上(例えば、7、8、9、10、11、12、13、14、15)の莢膜糖類コンジュゲートを含む多価肺炎連鎖球菌ワクチンを含み、22F糖類コンジュゲートを含む、幼児のための免疫原性組成物を提供することにより解決されることが記載されている(【0012】)。
また、
(iv)本件明細書の実施例6には、22F糖類を含む4価dPlyコンジュゲート化PS(PSはPS8、PS12F、PS19及びPS22Fから構成される)が記載され、これを用いて免疫したところ各血清型について免疫原性が認められたことが示されており(【0259】?【0262】)、同実施例7には22F糖類を含む4価PhtDコンジュゲート化PS(PSは実施例6と同様)が記載され、これを用いて免疫したところ各血清型について免疫原性が認められたことが示されており(【0263】?【0266】)、
(v)実施例8、9には、22F糖類を含む13価ワクチン製剤が記載され(以下のコンジュゲート:PS1-PD、PS3-PD、PS4-PD、PS5-PD、PS6B-PD、PS7F-PD、PS9V-PD、PS14-PD、PS18C-TT、PS19F-DT、PS23F-PD、PS19A-dPly/DT及びPS22F-PhtD/PhtD_E/PDから構成される)を、高齢マウス(実施例8、表15)、若いマウス(実施例9、表16)にそれぞれ免疫接種したところ、いずれも22FPSに対し抗22F抗体力価誘導がみられ、特に若いマウスにおいて担体の種類によらず総じて高い免疫応答が得られ、かつ、他のPSに対し誘導された免疫応答が負の影響を受けなかった、即ち過度な免疫干渉がみられなかったことを示すデータが示されている(【0267】?【0270】)。
(vi)さらに、同実施例12には、22F糖類を含む、【0278】の「アジュバントC」を加えた13価PS製剤(PS1,3,4,5,6B,7F,9V,14,18C,19A,19F、22F及び23Fを含み、PS18CをTTに、19FをDTに、19AをdPlyに、22FをPhtDに、及び他のPSをPDにそれぞれコンジュゲートさせたもの)が記載され、これを用いて免役したところ、特に22F糖類をADHリンカーを介してコンジュゲート化してなるPS製剤において有効な抗22FIgG応答及び抗22Fオプソニン食作用力価応答が得られたことが示されており(【0279】?【0283】)、同実施例13には、22F糖類を含む、【0275】の「アジュバントA1」、「アジュバントA4」又は「アジュバントA5」を加えた13価PS製剤(PSの種類及び担体タンパク質の組合せについては実施例12と同様)が記載され、これを用いて免役したところ、AlPO_(4)アジュバントを用いた場合に比してさらに高い各種PSに対するIgG誘導応答がみられたことが記載されており(【0284】?【0288】)、
(vii)同実施例15には、22F糖類を含む1価22Fコンジュゲート(22F-PhtD又は22F-AH-PhtD)により誘導された4型肺炎球菌チャレンジに対する良好な防御応答がもたらされたことが示されている(【0293】?【0296)】)。

即ち、本件明細書には、異なる価数の様々な肺炎球菌血清型糖類コンジュゲート含有する多価混合ワクチン用免疫原性組成物において、22F糖類が良好な免疫原性を示し、かつ、他の糖類が過度な免疫干渉を受けないことが示されているといえる。

(イ) そして、上の要旨(2)に関し、本件明細書には、22F糖類をコンジュゲート化する際の担体タンパク質についても、実施例で採用されているPhtDやPhtDE融合物、PD等(上の(iv)?(vii)の他、例えば引用文献12の記載([4-1]の摘記12a参照)にみられるような周知の担体タンパク質であるCRM197や、その他の既知のCRMタンパク質等を採用し得ることも記載されている(【0030】、【0035】)。
してみると、当業者であれば、本件発明において、22Fならびにその他の肺炎球菌血清型糖類のコンジュゲートに用いる担体タンパク質として例えばCRM197を用いることは、本件明細書の記載に基づき理解しかつ実施することができるものといえ、またこの点、本件明細書の記載から裏付けられているものといえる。

(ウ) さらに、上の要旨(3)に関し、実施例11には、実施例8,9,12,13の13価製剤の各種血清型糖類に加え、さらに6A糖類コンジュゲートを混合してなる14価の混合ワクチン免疫原性組成物についても、その具体的な組成と共に記載されており(【0273】?【0274】)、これらの記載や上述の異なる価数の様々な肺炎球菌血清型糖類コンジュゲート含有する多価混合ワクチン用免疫原性組成物に関する記載((iv)?(vii))を併せ参酌すれば、例えば本件発明に規定されるもの以外の血清型糖類(例えば、実施例6,7のPS8やPS12F、もしくは実施例11の6A)を、過度な免疫干渉を生じないようなコンジュゲート化用担体タンパク質の種類や配合割合等の条件を検討しつつ、コンジュゲート化して追加配合することで、本件明細書の実施例の13価製剤を超える価数のものを調製しワクチン接種に使用し得ることもまた、本件明細書の記載から当業者にとり容易に理解かつ実施することができたものといえ、またこの点、本件明細書の記載から裏付けられているものといえる。

なお、申立人が提出した引用文献9?13は、いずれも、少なくとも肺炎球菌莢膜糖類の血清型の種類の組合せにおいて、本件発明1規定のそれとは全く異なる(そもそも、22F糖類コンジュゲートを含んですらいない)、特定組成の免疫原性組成物における免疫干渉の有無の試験結果について示すものに過ぎず、また、これらの試験結果を以て、本件発明1の規定を満たす成分組成のものであっても、本件実施例の態様以外の任意のものにおいては過度な免疫干渉が生じる蓋然性が高い、と判断するに足る合理的な根拠が提示されているとはいえない。
そして、本件発明1の規定を満たすものであっても、本件実施例の態様以外の組成の免疫原性組成物を用いた場合に、例えばワクチン接種した幼児において22F糖類に対する十分な免疫応答を誘導することができないとか、多価ワクチン組成物としての有効性を損なうような過度な免疫干渉が生じる、等といったような特段の事情が現実に存在することが示されているわけでもない。

(エ) したがって、本件明細書においては、申立人のいう上の(1)?(3)の不備が存在するとはいえず、よって、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1中の実施例の態様以外の任意の部分についてまで当業者が理解か

つ実施することができる程度の明確かつ十分な開示がなされていない、とまではいえないし、また、そうであれば、本件の請求項1の発明のうち、実施例の態様以外の任意の部分が発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものである、ともいえない。

2.本件発明2?11,12について
本件発明2?11は、含有せしめる担体タンパク質/肺炎連鎖球菌タンパク質(本件発明2,10,11)やコンジュゲートさせる際のリンカーの使用(本件発明3?6)、コンジュゲートにおける22F糖類:担体タンパク質の比率や平均サイズ(本件発明7,8)について、本件発明1を本件明細書の実施例等の具体的な記載に沿ってさらに減縮した発明であり、また、本件発明12は、本件発明1?11と同様の疾患の治療又は予防のための医薬の製造における、本件発明1?11に係るいずれかの免疫原性組成物及び賦形剤を含むワクチンの使用に係る発明である。
したがって、上の1.での検討内容を併せ踏まえれば、これら本件発明2?11,12についてもまた、本件明細書の発明の詳細な説明には実施例の態様以外の任意の部分について当業者が理解かつ実施することができる程度の明確かつ十分な開示がなされていない、とまではいえないし、また、これら請求項2?11,12に係る発明はいずれも、実施例の態様以外の任意の部分が発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものである、ともいえない。

3.小括
1.,2.での検討のとおりであるから、本件明細書及び本件特許請求の範囲の記載には、申立人が指摘するような記載上の不備はなく、本件特許が特許法第36条第4項第1号又は同法同条第6項第1号の規定に違反してなされたものであるとすることはできない。

[4-4]むすび
以上述べたとおり、取消理由[1]、[2]によっては、本件請求項1?12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-11-04 
出願番号 特願2008-546442(P2008-546442)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61K)
P 1 651・ 536- Y (A61K)
P 1 651・ 537- Y (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 安藤 公祐  
特許庁審判長 關 政立
特許庁審判官 大久保 元浩
齋藤 恵
登録日 2015-08-14 
登録番号 特許第5792920号(P5792920)
権利者 グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
発明の名称 ワクチン  
代理人 田中 夏夫  
代理人 平木 祐輔  
代理人 新井 栄一  
代理人 藤田 節  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ