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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  A61K
審判 一部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  A61K
審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 一部無効 1項3号刊行物記載  A61K
審判 一部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
管理番号 1321455
審判番号 無効2015-800162  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-08-10 
確定日 2016-07-11 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5173920号発明「多価肺炎球菌多糖類-タンパク質コンジュゲート組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5173920号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔25、26〕、27について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続等の経緯

特許第5173920号は、平成18年3月31日(パリ条約による優先権主張 2005年4月8日 米国(US))を国際出願日とする特願2008-505426号の一部を、平成21年4月24日に新たな特許出願として出願した特願2009-106688号に係るものであり、平成25年1月11日に特許権の設定登録がされたものであって、本件の特許無効審判の請求以後の手続等の経緯は以下のとおりである。

平成27年 8月10日付 審判請求書の提出
同 年11月24日付 答弁書及び訂正請求書の提出
同 年12月25日付 手続補正書(訂正請求書の補正)の提出
平成28年 2月 8日付 審理事項通知書(請求人)
同 年 2月 8日付 審理事項通知書(被請求人)
同 年 3月 8日付 口頭審理陳述要領書(請求人)及び
手続補正書(審判請求書の補正)の提出
同 年 3月11日付 手続補正書(審判請求書の補正)の提出
同 年 3月15日付 手続補正書(審判請求書の補正)の提出
同 年 3月22日付 口頭審理陳述要領書(被請求人)の提出
同 年 4月 5日 口頭審理

第2 訂正の適否

1 訂正請求の内容
本件訂正請求は、本件特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、一群の請求項である請求項25及び26、請求項27について訂正をすることを求めるものであって、その訂正事項は以下のとおりである。
(1)一群の請求項25及び26に係る訂正
(ア)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項25に
「13種類の異なる多糖類-タンパク質コンジュゲートを生理学的に許容できるビヒクルとともに含む多価免疫原性組成物の製法であって、各コンジュゲートは異なる莢膜多糖類CRM_(197)タンパク質コンジュゲートを含有し」とあるのを、
「多糖類-タンパク質コンジュゲートを生理学的に許容できるビヒクルとともに含む多価免疫原性組成物の製法であって、ここで前記多糖類-タンパク質コンジュゲートが13種類の異なる多糖類-タンパク質コンジュゲートからなり、各コンジュゲートは異なる莢膜多糖類CRM_(197)タンパク質コンジュゲートであり」に訂正する。
(イ)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項25に「化合」とあるのを、「混合」に訂正する。

(2)請求項27に係る訂正
(ア)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項27に
「13の異なる多糖類-タンパク質コンジュゲートを生理学的に許容できるビヒクルとともに含む多価免疫原性組成物の製法であって、そのコンジュゲートの各々はストレプトコッカスニューモニエの異なる血清型からの、キャリアタンパク質にコンジュゲートした莢膜多糖類を含み」とあるのを、
「多糖類-タンパク質コンジュゲートを生理学的に許容できるビヒクルとともに含む多価免疫原性組成物の製法であって、ここで前記多糖類-タンパク質コンジュゲートが13種類の異なる多糖類-タンパク質コンジュゲートからなり、そのコンジュゲートの各々はストレプトコッカスニューモニエの異なる血清型からの、キャリアタンパク質にコンジュゲートした莢膜多糖類であり」に訂正する。

(イ)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項27に「化合」とあるのを、「混合」に訂正する。

2 訂正の目的、新規事項追加の有無、特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無等
(1)請求項25に係る訂正について
(ア)訂正事項1について
(a)訂正の目的
訂正前の請求項25に係る発明では、多価免疫原性組成物にストレプトコッカスニューモニエの異なる13種類の血清型の莢膜多糖類とCRM_(197)がコンジュゲートした多糖類-タンパク質コンジュゲートが含まれることのみが特定されており、例えば、14種類以上の血清型の莢膜多糖類とCRM_(197)がコンジュゲートした多糖類-タンパク質コンジュゲートも含まれ得るものであったところ、訂正事項1は、請求項25に記載の多価免疫原性組成物に含まれる多糖類-タンパク質コンジュゲートについて、「前記多糖類-タンパク質コンジュゲートが13種類の異なる多糖類-タンパク質コンジュゲートからなり」と特定することにより、多糖類-タンパク質コンジュゲートとして、13種類の血清型の莢膜多糖類とCRM_(197)がコンジュゲートした多糖類-タンパク質コンジュゲートのみが含まれることに限定するものであり、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(b)新規事項追加の有無
本件特許の願書に添付した明細書中、段落【0007】には「莢膜多糖類がストレプトコッカスニューモニエの血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fからのものであり」との記載があり、また段落【0033】には、「莢膜多糖類は、ストレプトコッカスニューモニエの血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fから調製される」との記載があり、さらに、実施例1?16には、多糖類-タンパク質コンジュゲートとして、血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fから調製された13価の多糖類-タンパク質コンジュゲートを含む多価免疫原性組成物(ワクチン)の製造例及び使用例が記載されており、これらの記載から、訂正事項1が、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることは明らかである。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(c)特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
上記(a)で説示したとおり、訂正事項1は、多糖類-タンパク質コンジュゲートを13種類の血清型の莢膜多糖類とCRM_(197)とのコンジュゲートからなるものに限定する訂正であり、発明のカテゴリーや目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(イ)訂正事項2について
(a)訂正の目的
訂正事項2は、請求項25の「化合」との記載が、一般的な技術用語でなく、同項の記載を明瞭でないものとしているため、これを「混合」と訂正することにより、同項の記載を明瞭にしようとするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(b)新規事項追加の有無
本件訂正前の請求項25の記載と本件特許明細書の実施例1?15の記載との対応関係を検討する。
訂正前の請求項25には、
「13種類の異なる多糖類-タンパク質コンジュゲートを生理学的に許容できるビヒクルとともに含む多価免疫原性組成物の製法であって、各コンジュゲートは異なる莢膜多糖類CRM_(197)タンパク質コンジュゲートを含有し、ここで莢膜多糖類はストレプトコッカスニューモニエの血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fから調製され、各々の多糖類は遠心分離、沈殿、限外ろ過およびカラムクロマトグラフィーを通じて精製され、精製された多糖類はキャリアタンパク質CRM_(197)と反応することができるように化学的に活性化され、いったん活性化されると、各莢膜多糖類は別々にキャリアタンパク質CRM_(197)とコンジュゲートして複合糖質を形成し、各々の複合糖質は精製および化合され免疫原性組成物に調製される、製法。」と記載されている。
一方、実施例1?14には、血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F及び23Fのストレプトコッカス・ニューモニエの莢膜多糖類をそれぞれ調製し、遠心分離等を通じて精製し、化学的に活性化し、キャリアタンパク質であるCRM_(197)とコンジュゲートして、多糖類-CRM_(197)コンジュゲートを調製することが記載され、それらの実施例の記載に続き、実施例15(段落【0214】)には、
「【0214】
実施例15
多価肺炎球菌コンジュゲートワクチンの処方
13種類のコンジュゲートの最終バルク濃縮物は、・・・を含有する。タイプ3、6A、7F、および19Aのバルク濃縮物は、・・・も含有する。・・・0.85%の塩化ナトリウム(生理食塩水)80%および必要量のコハク酸塩緩衝液を、ラベル前の処方槽に添加した後、バルク濃縮物を添加した。次いで、・・・調製物を0.22μmの膜で滅菌ろ過して、・・・容器に入れた。・・・処方したバルクを、バルクのリン酸アルミニウムの添加中およびその後に、静かに混合した。・・・」と記載されている。
実施例1?14に記載の工程及び実施例15の滅菌ろ過の工程は、訂正前の請求項25の記載における「・・・各コンジュゲートは異なる莢膜多糖類CRM_(197)タンパク質コンジュゲートを含有し、ここで莢膜多糖類はストレプトコッカスニューモニエの血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fから調製され、各々の多糖類は・・・精製され、精製された多糖類はキャリアタンパク質CRM_(197)と反応することができるように化学的に活性化され、・・・多糖類は別々にキャリアタンパク質CRM_(197)とコンジュゲートして複合糖質を形成し、各々の複合糖質は精製・・・」との工程に対応するものと認められる。
そして、訂正前の請求項25には、上記の「・・・各々の複合糖質は精製」までの工程に続いて「(各々の複合糖質は)・・・化合され」と記載され、実施例15には、上記の滅菌ろ過までの工程に続いて「(処方したバルクを)・・・静かに混合した」と記載されているから、実施例15に記載の「混合」が訂正前の請求項25に記載の「化合」に相当するものと理解できる。
してみると、訂正前の請求項25に記載の「化合」が「混合」の意味であることは、本件特許明細書の記載から自明な事項といえる。
よって、訂正事項2に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲においてするものであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(c)特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無について
上記(b)のとおり、訂正事項2に係る訂正は、訂正前の「化合」との記載を、それと同義である「混合」とするだけのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
よって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
なお、請求人は、「そもそも「化合され」との用語は,本件発明の属する技術分野において一般的に使用される用語ではなく,本件明細書にも,「化合され」との用語について技術的な説明はなされていない。このため,「化合され」との用語は,当業者にとって,どのような技術的意味を有するものか理解できない。それゆえ,仮に本件明細書の段落〔0214〕に「混合すること」が記載されているとしても,当業者は,訂正前の用語「化合」につき,前記「混合」と同じ技術的意味を持つ用語であると理解できない。」と主張し、訂正事項2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を変更するものであると主張する。
確かに、請求人の主張するとおり、「化合され」との用語は、当該技術分野における一般的な用語ではない。しかし、上記のとおり、本件訂正前の請求項25の記載と本件特許明細書の実施例1?15の記載の対応関係からみて、「化合」が「混合」の意味であることは当業者に明らかであるから、請求人の主張は、採用できない。

(2)請求項26に係る訂正について
(ア)訂正事項1、2について
(a)訂正の目的、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
請求項26は、請求項25を引用するものであるから、訂正事項1、2における訂正の目的、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無についての判断は、請求項26においても同様である。
よって、請求項26に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とし、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(b)独立特許要件
請求項26に係る特許には、特許無効審判が請求されておらず、上記のとおり、請求項26に係る訂正(訂正事項1)は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるから、該訂正については、訂正後の請求項26に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものである、との要件を満たす必要がある。
そして、後記するとおり、本件訂正後の請求項25に係る発明は、無効理由がなく、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、本件訂正後の請求項25に係る発明をより限定したものである本件訂正後の請求項26に係る発明も、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
よって、請求項26に係る訂正は、特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合するものである。

(3)請求項27に係る訂正について
(ア)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項25についてする訂正事項1に係る訂正と同趣旨の訂正を請求項27についてしようとするものであるから、訂正の目的、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無についての判断は、訂正事項1の場合と同様である。
よって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、同法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(イ)訂正事項4について
(a)訂正の目的
訂正事項4は、請求項27の「化合」との記載が、一般的な技術用語でなく、同項の記載を明瞭でないものとしているため、これを「混合」と訂正することにより、同項の記載を明瞭にするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(b)新規事項追加の有無
本件訂正前の請求項27には、
「13の異なる多糖類-タンパク質コンジュゲートを生理学的に許容できるビヒクルとともに含む多価免疫原性組成物の製法であって、そのコンジュゲートの各々はストレプトコッカスニューモニエの異なる血清型からの、キャリアタンパク質にコンジュゲートした莢膜多糖類を含み、
莢膜多糖類は血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fから調製され、
ここで前記キャリアタンパク質はCRM_(197)であり、
ここで各々の複合糖質が精製されたのち化合され免疫原性組成物に調製される、
製法。」と記載されている。
上記した実施例1?14に記載の工程及び実施例15の滅菌ろ過の工程は、訂正前の請求項27の上記記載における「そのコンジュゲートの各々は・・・を含み、莢膜多糖類は・・・から調製され、ここで前記キャリアタンパク質はCRM_(197)であり、ここで各々の複合糖質が精製され」との工程に対応するものと認められる。
そして、訂正前の請求項27には、上記の「・・・各々の複合糖質は精製され」までの工程に続いて「(各々の複合糖質は)・・・化合され」と記載され、実施例15には、上記の滅菌ろ過までの工程に続いて「(処方したバルクを)・・・静かに混合した」と記載されているから、実施例15に記載の「混合」が訂正前の請求項27に記載の「化合」に相当するものと理解できる。
してみると、訂正前の請求項27に記載の「化合」が「混合」の意味であることは、本件特許明細書記載から自明な事項といえる。
よって、訂正事項4に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲においてするものであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(c)特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無について
上記(b)のとおり、訂正事項4に係る訂正は、訂正前の「化合」との記載を、それと同義である「混合」とするだけのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
よって、訂正事項4に係る訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

3 訂正についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、訂正の要件を全て満たすものであるから、これを認める。

第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項25及び27に係る発明は、平成27年11月24日付け訂正請求書に添付の訂正特許請求の範囲の請求項25及び27に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
なお、以下、本件訂正後の請求項25、27に係る発明を、それぞれ、「本件訂正発明25」、「本件訂正発明27」と記載する。

「【特許請求の範囲】

【請求項25】
多糖類-タンパク質コンジュゲートを生理学的に許容できるビヒクルとともに含む多価免疫原性組成物の製法であって、ここで前記多糖類-タンパク質コンジュゲートが13種類の異なる多糖類-タンパク質コンジュゲートからなり、各コンジュゲートは異なる莢膜多糖類CRM_(197)タンパク質コンジュゲートであり、ここで
莢膜多糖類はストレプトコッカスニューモニエの血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fから調製され、
各々の多糖類は遠心分離、沈殿、限外ろ過およびカラムクロマトグラフィーを通じて精製され、
精製された多糖類はキャリアタンパク質CRM_(197)と反応することができるように化学的に活性化され、
いったん活性化されると、各莢膜多糖類は別々にキャリアタンパク質CRM_(197)とコンジュゲートして複合糖質を形成し、
各々の複合糖質は精製および混合され免疫原性組成物に調製される、
製法。

【請求項27】
多糖類-タンパク質コンジュゲートを生理学的に許容できるビヒクルとともに含む多価免疫原性組成物の製法であって、ここで前記多糖類-タンパク質コンジュゲートが13種類の異なる多糖類-タンパク質コンジュゲートからなり、そのコンジュゲートの各々はストレプトコッカスニューモニエの異なる血清型からの、キャリアタンパク質にコンジュゲートした莢膜多糖類であり、
莢膜多糖類は血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fから調製され、
ここで前記キャリアタンパク質はCRM_(197)であり、
ここで各々の複合糖質が精製されたのち混合され免疫原性組成物に調製される、
製法。」

第4 当事者の主張

1 請求人の主張及び証拠方法
請求人は、概略以下の理由により、請求項25、27に係る特許を無効にすべき旨主張する。

無効理由1(新規性違反)
本件特許の請求項25及び27に係る発明は、甲第1?4号証に記載の発明と相違点がないから、これらの発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
よって、本件の請求項25及び27に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

無効理由2-1(進歩性違反)
本件特許の請求項25及び27に係る発明は、甲第1?4号証に記載の発明と相違点があるとしても、甲第1?4号証に記載の発明に、莢膜多糖類の精製技術についての周知・慣用技術を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものであり、その効果も当業者が予測可能なものに過ぎず、何ら有利な効果といえないものである。したがって、これらの発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件の請求項25及び27に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

無効理由2-2(進歩性違反)
本件特許の請求項25及び27に係る発明は、甲第5?7号証に記載の発明に甲第1?4号証、甲第8?9号証の1に記載の発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件の請求項25及び27に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

無効理由2-3(進歩性違反)
本件特許の請求項25及び27に係る発明は、甲第9号証の1に記載の発明に甲第1?8号証に記載の発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件の請求項25及び27に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

無効理由3-1(明確性要件違反)
本件特許の請求項25及び27に記載の「化合され」との用語は、本件発明の属する技術分野において一般的に使用される用語ではない。また、本件明細書にも、「化合され」との用語につき、技術的な説明はなされていない。このため、「化合され」との構成は、当業者にとって、どのような技術的意味を有するのか理解できない。
したがって、本件特許の請求項25及び27に係る発明は、明確に把握できるものではなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないものである。
よって、本件の請求項25及び27に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

無効理由3-2(実施可能要件違反及びサポート要件違反)
本件特許明細書には、「13価の血清型の莢膜多糖類からなる多価免疫原性組成物の製法」に関する事項のみ記載されるところ、本件特許の請求項25及び27に係る発明は、13価の血清型の莢膜多糖類以外の他の血清型の莢膜多糖類を含む多価免疫原性組成物も含み得る記載となっている。
このため、これらの発明は、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号に規定する要件を満たさないものである。
よって、本件の請求項25及び27に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

無効理由3-3(実施可能要件違反及びサポート要件違反)
本件特許の請求項25及び27に係る発明のキャリアタンパク質と莢膜多糖類とのコンジュゲーションの方法につき、本件特許明細書では「還元的アミノ化」によるものしか実証されていないところ、本件特許の請求項25及び27に係る発明は、キャリアタンパク質と莢膜多糖類とのコンジュゲーションの方法について何ら特定していない。
このため、これらの発明は、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号に規定する要件を満たさないものである。
よって、本件の請求項25及び27に特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

証拠方法:

甲第1号証 特表2004-508416号公報
甲第2号証 特表2002-539273号公報
甲第3号証 特表2002-540074号公報
甲第4号証 特表2002-542204号公報
甲第5号証 O'Brien, American Journal of Epidemiology, 2004;
159(7): 634-644
甲第6号証 Overturf, Seminars in Pediatric Infectious Diseases,
2002; 13(3): 155-164
甲第7号証 Reinert, Int. J. Medical Microbiology, 2004; 294:277
-294
甲第8号証 Hausdorff, Pediatr Infect Dis, 2002; 21(11): 1008
-1016
甲第9号証の1 C. de la Pena, Pediatrika 2004; 24(4): 147-155
甲第9号証の2 C. de la Pena, Pediatrika 2004; 24(4): 147-155の英語
翻訳文
甲第10号証 欧州特許公報EP0072513B1号公報
甲第11号証 生物化学実験法20 多糖の分離・精製法
1999年7月1日、学会出版センター発行
甲第12号証 Vaccines, Third Edition, 1999; 196?207, 584?591
甲第13号証 Clin Microbiol Infect, 2003; 9(2), 79-85
甲第14号証 INFECTION AND IMMUNITY, 1997; 65(1), 242-247
甲第15号証 FEMS Immunology and Medical Microbiology, 2004;
40, 193?199

2 被請求人の主張及び証拠方法
被請求人は、本件訂正は適法であり、本件訂正発明25及び本件訂正発明27には、請求人が主張するいずれの無効理由もない旨主張する。

証拠方法:

乙第1号証 Jorgen Henrichsen et al., Six Newly Recognized Types
of Streptococcus Pneumoniae, Journal of Clinical
Microbiology, Oct. 1995, Vol. 33, No. 10, p. 2759-2762
乙第2号証 J.D. Grabenstein et al., A century of Pneumococcal
vaccination research in humans, Clinical Microbiology
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乙第3号証 医薬品インタビューフォーム、ニューモバックス^((R))NP
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乙第4号証 Ron Dagan et al., Reduction of Antibody Response to an
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乙第5号証 S. R. Gatchalian et al., A randomized, placebo
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administered as primary vaccination to infants at 6,
10 and 14 weeks of age, 19^(th) Annual Meeting of
the Eur. Soc. Paed. Inf. Dis. (ESPID), poster number
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乙第6号証 Roman Prymula et al., 10-vallent pneumococcal
nontypeable Haemophilus influenzae PD conjugate
vaccine: Synflorix^(TM), Expert Rev. Vaccines 8(11),
1479-1500 (2009)
乙第7号証 医薬品インタビューフォーム、プレベナー13^((R))
水性懸濁注、ファイザー株式会社
乙第8号証 Ali Fattom et al., Epitopic overload at the site of
injection may result in suppression of the immune
response to combined capsular polysaccharide conjugate
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乙第9号証 Ron Dagan et al., Reduced Response to Multiple
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and Immunity, May 1998, Vol. 66, No. 5,p. 2093-2098
乙第10号証 Wuorimaa, Tomi MD et al., Tolerability and
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乙第11号証 Stephen K. Obaro et al., Safety and immunogenicity of
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乙第12号証 Jim P. Buttery et al., Immunogenicity and Safety of a
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乙第13号証 Ron Dagan et al., Glycoconjugate vaccines and immune
interference: A review, Vaccine 28(2010) 5513-5523
乙第14号証 Peter Paradiso博士の宣誓書、2015年11月19日作成
乙第15号証 Study Report: Immunogenicity of Free and Conjugated
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13-valent Pneumococcal/ 4-valent Meningococcal and
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乙第16号証 Clinical Review of Biologics License Application for
Prevnar 13(Pneumococcal 13-valent Conjugate Vaccine
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乙第17号証 Prymula et al., 9th International Symposium on
Pneumococcal and Pneumococcal Diseases (ISPPD),
2014, Hyderabad, India[the abstract and poster
disclosed on March 10, 2014]
乙第18号証 平成25年5月10日付審査報告書、独立行政法人医薬品医
療機器総合機構
乙第19号証 Kirsi Saukkonen et al., Experimental meningococcal
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乙第20号証 米国特許第4,372,945号明細書
乙第21号証 Joseph Kuo et al., Characterization of a Recombinant
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乙第22号証 Immunogenicity and reactogenicity of a pneumococcal
conjugate vaccine administered combined with a
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United Kingdom infants,Pediatr. Infect. Dis. J., 2000,
Vo. 19, No. 9, p.854-862
甲第5号証 追加抄訳(O'Brien, ,American Journal of Epidemiology,
2004;159(7):634-644)
甲第7号証 追加抄訳(Reinert, Int. J. Medical Microbiology, 2004;
294:277-294)
甲第12号証 追加抄訳(Vaccines, Third Edition, 1999; 196-207,
584-591)
甲第13号証 追加抄訳(Clin. Microbiol. Infect., 2003; 9(2),
79-85)
甲第15号証 追加抄訳(FEMS Immunology and Medical Microbiology,
2004;40, 193-199)

第5 証拠の記載事項

1 請求人が提出した証拠の記載事項
請求人が提出した甲第1?8号証、甲第9号証の1、甲第10?15号証には、それぞれ以下の事項が記載されている。なお、甲第5?10、12?15号証は、外国語で記載されているので、日本語による訳文にて表記する。

(1)甲第1号証の記載事項
(ア)摘記事項甲1-(1)
「【請求項1】
少なくとも1つのストレプトコッカス・ニューモニエ多糖体抗原と、PhtA、PhtD、PhtB、PhtE、SpsA、LytB、LytC、LytA、Sp125、Sp101、Sp128、Sp130およびSp133から成る群から選択される少なくとも1つのストレプトコッカス・ニューモニエ蛋白抗原またはその免疫学的機能等価物とを含んで成る免疫原性組成物。
【請求項2】
多糖体抗原が多糖体蛋白担体接合物の形態で提供される請求項1記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
担体蛋白がジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、CRM197、キーホール・リンペットヘモシアニン(KLH)、ツベルクリンの蛋白誘導体およびH.インフルエンザ由来の蛋白Dから選択される請求項2記載の免疫原性組成物。」(第2頁第2?13行)
(イ)摘記事項甲1-(2)
「【0013】
本発明のストレプトコッカス・ニューモニエ多糖体抗原
典型的には、本発明のストレプトコッカス・ニューモニエワクチンは多糖体抗原(好ましくは、担体蛋白に結合したもの)を含み、ここに多糖体は少なくとも4つの肺炎球菌の血清型から誘導される。好ましくは、4つの血清型は、6B、14、19Fおよび23Fを含む。より好ましくは、少なくとも7つの血清型、例えば血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23F由来のものが組成物に含まれる。さらにより好ましくは、少なくとも11の血清型が組成物に含まれ、例えば一の具体例における組成物は、1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19Fおよび23F(好ましくは、担体蛋白に結合したもの)由来の莢膜多糖体を含む。本発明の好ましい具体例において、・・・、少なくとも13の多糖体抗原(好ましくは、担体蛋白に結合したもの)が含まれる。
【0014】
高齢者のワクチン接取・・・に関しては、・・・を上記の11価の抗原性組成物に含み、15価ワクチンを形成することが有利であるのに対して、幼児または小児(中耳炎の不安がある)に関しては、有利には抗原型血清型6Aおよび19Aが13価ワクチンを形成するために含まれる。」(第5頁第48行?第6頁第17行)
(ウ)摘記事項甲1-(3)
「【0048】
実施例1
エス・ニューモニエ莢膜多糖体
11価の候補ワクチンは、実質的にEP72513に記載されているように調製した莢膜多糖体血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19Fおよび23Fを含む。各々の多糖体を活性化し、CDAP化学(WO98/08348)を用いて誘導体化し、蛋白担体に結合させる。
・・・
【0049】
蛋白担体:
選択した蛋白担体は分類不可能なヘモフィルス・インフルエンザから、イー・コリで発現した組換え蛋白D(PD)である。」(第15頁第26?37行)
(エ)摘記事項甲1-(4)
「【0059】
・・・
活性化およびカップリング化学:
活性化およびカップリング化学は各々の多糖体に固有のものである。・・・結合物を2MのNaClで平衡化したSephacryl 500HRゲル濾過カラムを用いてゲル濾過により精製した。」(第17頁第33?46行)
(オ)摘記事項甲1-(5)
「【0030】
上記したように、ワクチン接種への多糖体の用い方に関連した問題は、多糖体それ自体は免疫原性に乏しいという事実である。これを解決するため、多糖体をバイスタンダー細胞であるT細胞の助けを付与する蛋白キャリアに結合させてもよい。そのため、本発明で利用される多糖体はそのような蛋白キャリアに結合されていることが好ましい。現在、一般的に多糖体の免疫原性を生むために使われる、そのような蛋白の例として、ジフテリアとテターヌストキソイド(DT、DT CRM197、他のDT変異体)、キーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)、エヌ・メニンジティディス由来のOMPC、ツボクラリンの精製蛋白誘導体(PPD)が挙げられる。
【0031】
肺炎球菌多糖体を用いる免疫原性組成物(またはワクチン)のための他の担体は、ヘモフィルス・インフルエンザ(EP594610-B)由来の蛋白D、またはそのフラグメントである。使用に適したフラグメントはヘルパーT細胞エピトープを含むフラグメントである。・・・蛋白D担体は、意外にも、多肺炎球菌多糖体抗原が結合しているワクチンにおける担体として有用である。エピトープ抑制は、通常には、同様の担体が各々の多糖体に対して用いられる場合に生じやすい。意外にも、本発明者らは、蛋白Dが、特に、組合せワクチンにおける該エピトープ抑制効果を最小限にするのに適していることを見出した。組合せ中の1つまたはそれ以上の肺炎球菌多糖体は、蛋白D上に有利に結合でき、好ましくはすべての抗原は、該組合せワクチンにおいて蛋白Dに結合している。」(第10頁第7?26行)
(カ)摘記事項甲1-(6)
「【0071】
実施例2-本発明の1またはそれ以上の肺炎球菌蛋白+/-3D-MPLの添加の、マウスでの肺炎球菌肺コロニー形成に対するPD-接合した11-価の多糖体ワクチンの防御的効能における有益な効果
・・・
【0080】
実施例2B 本発明の蛋白+/-3D-MPLアジュバントを添加した、血清型2、4または6Bで鼻腔内攻撃したOF1マウスにおける肺炎球菌肺コロニー形成に対するPD-接合の11-価の多糖体ワクチンの防御作用に対する有利な効果
この実施例において、本発明者らは、古典的なAIPO4吸着の11-価の多糖体-蛋白D接合体処方と比べて、11-価の多糖体-蛋白D接合体、本発明の蛋白およびAIPO4+3D-MPLアジュバントを含有するワクチンの予防的効能を評価することができる。
一群12匹の雌の4週齢のOF1マウスを、・・・C:0.1μgのPS/PD-接合した11-価の多糖体ワクチンの血清型+10μgの本発明の蛋白+50μgのAIPO4+5μgの3D-MPL(Ribi Immunochemから購入)を含有する処方で0および14日目に皮下的に免疫処理する。攻撃を上記したように21日目に行う。
この方法から判るように、本発明の蛋白を補足し、AIPO4+MPLでアジュバント処理した11-価の多糖体接合体ワクチンで有意な防御が得られる。」(第20頁第35行?第22頁第43行)

(2)甲第2号証の記載事項
(ア)摘記事項甲2-(1)
「【請求項1】 3D-MPLでアジュバント化された1以上のストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)莢膜多糖コンジュゲートを含み、かつ、アルミニウム-ベースのアジュバントを実質的に欠く抗原性組成物であって、ここで、上記ストレプトコッカス・ニューモニエ多糖コンジュゲートの中の少なくとも1が、アルミニウム-ベースのアジュバントとともに3D-MPLを含む組成物に比較して、3D-MPLを含む組成物において有意により免疫原性である、前記抗原性組成物。
・・・
【請求項8】 前記ストレプトコッカス・ニューモニエ莢膜多糖が、以下の:
破傷風毒素;
ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)のOMPC;
ジフテリア毒素;
ストレプトコッカス・ニューモニエのニューモリジン(pneumolysin);又はCRM197
から成る群から選ばれるタンパク質にコンジュゲートされている、請求項1?7のいずれかに記載の抗原性組成物。
・・・
【請求項14】 ストレプトコッカス・ニューモニエ莢膜多糖血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、及び23Fのコンジュゲートを含む、請求項1又は7に記載の抗原性組成物。
・・・」(第2頁第2行?第3頁末行)
(イ)摘記事項甲2-(2)
「【0048】
本発明の肺炎連鎖球菌多糖抗原
典型的には、本発明の肺炎連鎖球菌ワクチンは、多糖抗原(好ましくは複合化)を含み、この場合、多糖は少なくとも4つの血清型の肺炎球菌から得られる。好ましくは、4つの血清型としては、6B、14、19Fおよび23Fが挙げられる。さらに好ましくは少なくとも7つの血清型、例えば4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23Fから得られるものが組成物中に含まれる。さらに好ましくは、少なくとも11の血清型が組成物に含まれ、例えば一実施態様における組成物は、血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19Fおよび23Fから得られる莢膜多糖(好ましくは複合化(conjugated))を含む。本発明の好ましい実施態様では、少なくとも13の多糖抗原(好ましくは複合化)が含まれるが、・・・も本発明により意図される。
【0049】
老齢者予防接種(例えば、肺炎予防のための)に関しては、・・・を前記の11価抗原性組成物に含入して、15価ワクチンを生成するのが有益であるが、一方、乳児または幼児用(中耳炎がより問題である)には、血清型6Aおよび19Aが含入されて、13価ワクチンを生成するのが有益である。」(第15頁下から第4行?第16頁第17行)
(ウ)摘記事項甲2-(3)
「【0134】
実施例1
肺炎連鎖球菌莢膜多糖:
11価候補ワクチンとしては、本質的にはEP72513に記載されたように作製された莢膜多糖血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19Fおよび23Fが挙げられる。各多糖は、CDAP化学作用を用いて活性化され、誘導されて・・・、タンパク質担体と連結される。・・・
【0135】
タンパク質担体
選択されるタンパク質担体は、・・・組換え体プロテインD(PD)である。」(第34頁第18行?第35頁第1行)
(エ)摘記事項甲2-(4)
「【0149】
・・・活性化およびカップリング条件は、各多糖に特異的である。・・・
【0150】
・・・CDAP(CDAP/PS比0.75 mg/mg PS)を多糖溶液に付加した。・・・多糖の活性化を実施した。プロテインD(量は初期PS/PD比によっている)を活性化多糖に付加し、特異的pHで1時間、カップリング反応を実施した。」(第38頁第19行?第39頁第1行)
(オ)摘記事項甲2-(5)
「【0151】
0.2 MNaClで平衡させたセファクリル500HRゲル濾過カラムを用いてゲル濾過により、複合体を精製した。」(第39頁第3?5行)
(カ)摘記事項甲2-(6)
「【0023】
多糖免疫原の産生のために今日一般に用いられるこれらの高免疫原性担体の例としては、ジフテリア毒素(CTまたはCRM197突然変異体)、破傷風毒素(TT)、カギアナカサガイヘモシアニン(KLH)およびツベルクリンの精製タンパク質誘導体(PPD)が挙げられる。
【0024】
一般的に用いられる担体に関連した問題
多数の問題が、例えばGMP複合体の産生におけるならびに複合体の免疫学的特徴における、これらの一般的に用いられる担体の各々に関連している。
【0025】
これらの担体の一般的使用および抗多糖抗体応答の誘導におけるそれらの成功例にもかかわらず、それらはいくつかの欠点に関連する。例えば、抗原特異的免疫応答は、担体(この場合、破傷風毒素)に対して向けられる先在する抗体の存在により抑制され得る(エピトープ抑制)ということが知られている・・・。
・・・
【0028】
したがって、多糖ベースのワクチンのための担体タンパク質の選択は、すべての患者において作用する(広範なMHC認識)担体に対する必要性、高レベルの抗多糖抗体応答の誘導および担体に対する低抗体応答の間の平衡を必要とする。
【0029】
したがって、多糖ベースのワクチンのために予め用いられる担体は、多数の欠点を有する。これは、種々の多糖抗原に関して同一担体が用いられる場合に、エピトープ抑制が特に問題となる組合せワクチンにおいて特にそうである。・・・
【0030】
本発明は、前記の欠点を蒙らない多糖/多ペプチドベースの免疫原性複合体の調製に際して用いるための新規の担体を提供する。
【0031】
本発明は、ワクチンを含めた多糖ベースの免疫原性組成物のための担体として、インフルエンザ菌からのプロテインD(EP 0 594 610 B1)またはその断片を提供する。この担体の使用は、組合せワクチンにおいて特に有益である。」(第11頁第2行?第12頁第20行)
(キ)摘記事項甲2-(7)
「【0164】
実施例2-乳児ラットにおける11価肺炎球菌PS-PD複合体ワクチンの免疫原性に及ぼす先進アジュバントの作用の研究
0.1μgの各多糖の用量の11価肺炎球菌PS-PD複合体ワクチン(実施例1の方法にしたがって製造)で、以下のアジュバント処方物:・・・、3D-MPL、・・・を用いて、乳児ラットを免疫感作した。
【0165】
3D-MPLのみを有する処方物は、11の抗原のうち5つに関して、他の処方物より統計学的に(そして意外にも)より免疫原性(最大GMC IgG)であった。」(第41頁第2?12行)
(ク)摘記事項甲2-(8)
「【0188】
実施例3-成体ラットにおけるPS4、PS6B、PS18C、PS19FおよびPS23F複合体の免疫原性に及ぼす組合せの作用の研究
別々に、または多価組成物(4-、5-、7-または10価物)中に併合した肺炎球菌多糖-プロテインD複合体ワクチンを用いて、成体ラットを免疫感作した。
・・・
【0190】
すべての試料に関して統計分析を実施して、組合せ時の抗体濃度の差が有意であるか否かを確定した。多価ワクチン中の血清型PS6B、PS18C、PS19FおよびPS23FプロテインD複合体の組合せはいずれも、それらの免疫原性を有意に変えなかった。」(第45頁第16行?第46頁第4行)
(ケ)摘記事項甲2-(9)
「【0203】
実施例4-マウスにおける肺炎球菌肺コロニー形成に対するPD-複合11価多糖ワクチンの防御的有効性に及ぼすニューモリジンおよび3D-MPLの付加の有益な影響
・・・
【0210】
実施例4B.血清型6Bを鼻腔内チャレンジさせたOF1マウスにおける肺炎球菌肺コロニー形成に対するPD-複合11価多糖ワクチンの防御的有効性に及ぼすニューモリジンおよび3D-MPLアジュバントの弱毒化突然変異体の付加の有益な影響
・・・
【0211】
0および14日目に、・・・C:0.1μgPS/血清型のPD複合11価多糖ワクチン+10μgのPdB・・・+50μgのAlPO_(4)+5μgの3D-MPL(・・・)を含有する処方物を用いて、12匹の雌4週齢OF1マウスの群を皮下免疫感作した。・・・
【0212】
・・・PdBを補充し、AlPO_(4)+MPLで活性調節した11価多糖複合ワクチンにより、非常に有意の防御(p<0.007)が付与された・・・。」(第56頁下から第4行?第60頁第14行)
(コ)摘記事項甲2-(10)
「【0246】
実施例6-3D-MPLで活性調節した11価肺炎球菌多糖プロテインD複合体ワクチンの1年齢Balb/Cマウスにおける免疫原性
・・・
【0248】
プロトコール:
1/10回のヒト投与量の肺炎球菌多糖プロテインD複合体ワクチン、・・・で、1年齢Balb/Cマウスを免疫感作した。・・・・・
・・・
【0255】
複合体ワクチンによる免疫感作は、23F以外の全血清型に対して高血清変換率でIgG抗体を誘導した。
【0256】
血清型7Fおよび19Fに関してのみ用量依存性応答(群4対群2)を観察したが、しかしこれらの観察は統計学的に有意でなかった。血清型3、6B、7Fおよび19FならびにPDに関して2回の投与後により大きい応答を観察し、これらの観察は、3つの処方物すべてを有する多くの場合に、統計学的に有意であった。
・・・
【0260】
結論:
ここに提示したデータは、11価肺炎球菌多糖プロテインD複合体ワクチンへの3D-MPLの付加が、試験したすべての血清型に対する老齢balb/cマウスにおける免疫応答を増大した、ということを実証する。」(第67頁第17行?第72頁第5行)

(3)甲第3号証の記載事項
(ア)摘記事項甲3-(1)
「【請求項1】 少なくとも1のストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)多糖抗原、及び少なくとも1のストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)タンパク質抗原又は免疫学的に機能性のその等価物を含む免疫原性組成物。
・・・
【請求項5】 前記多糖抗原が、多糖-タンパク質担体コンジュゲートの形態で提示される、請求項1?4のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項6】 前記担体タンパク質が、以下の:ジフテリア毒素(Diphtheria toxid)、破傷風毒素(Tetanus toxid)、CRM197、キーホール・リンペット・ヘモシアニン(Keyhole Limpet Haemocyanin (KLH))、ツベルクリン(Tuberculin)のタンパク質誘導体(PPD)、及びH.インフルエンザ(H. influenzae)由来のタンパク質から成る群から選ばれる、請求項5に記載の免疫原性組成物。」(第2頁第2?25行)
(イ)摘記事項甲3-(2)
「【0048】
本発明の肺炎連鎖球菌多糖抗原
典型的には、本発明の肺炎連鎖球菌ワクチンは、多糖抗原(好ましくは複合化)を含み、この場合、多糖は少なくとも4つの血清型の肺炎球菌から得られる。好ましくは、4つの血清型としては、6B、14、19Fおよび23Fが挙げられる。さらに好ましくは少なくとも7つの血清型、例えば4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23Fから得られるものが組成物中に含まれる。さらに好ましくは、少なくとも11の血清型が組成物に含まれ、例えば一実施態様における組成物は、血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19Fおよび23Fから得られる莢膜多糖(好ましくは複合化(conjugated))を含む。本発明の好ましい実施態様では、少なくとも13の多糖抗原(好ましくは複合化)が含まれるが、・・・も本発明により意図される。
【0049】
老齢者予防接種(例えば、肺炎予防のための)に関しては、・・・を前記の11価抗原性組成物に含入して、15価ワクチンを生成するのが有益であるが、一方、乳児または幼児用(中耳炎がより問題である)には、血清型6Aおよび19Aが含入されて、13価ワクチンを生成するのが有益である。」(第15頁下から第4行?第16頁第17行)
(ウ)摘記事項甲3-(3)
「【0134】
実施例1 肺炎連鎖球菌莢膜多糖:
11価候補ワクチンとしては、本質的にはEP72513に記載されたように作製された莢膜多糖血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19Fおよび23Fが挙げられる。各多糖は、CDAP化学作用を用いて活性化され、誘導されて・・・、タンパク質担体と連結される。・・・
【0135】
タンパク質担体
選択されるタンパク質担体は、・・・組換え体プロテインD(PD)である。」(第34頁第18行?第35頁第1行)
(エ)摘記事項甲3-(4)
「【0149】
・・・活性化およびカップリング条件は,各多糖に特異的である。・・・
【0150】
・・・CDAP(CDAP/PS比0.75mg/mgPS)を多糖溶液に付加した。・・・多糖の活性化を実施した。プロテインD(量は初期PS/PD比によっている)を活性化多糖に付加し、特異的pHで1時間、カップリング反応を実施した。」(第38頁第19行?第39頁第1行)
(オ)摘記事項甲3-(5)
「【0151】
0.2 MNaClで平衡させたセファクリル500HRゲル濾過カラムを用いてゲル濾過により、複合体を精製した。」(第39頁第3?5行)
(カ)摘記事項甲3-(6)
「【0023】
多糖免疫原の産生のために今日一般に用いられるこれらの高免疫原性担体の例としては、ジフテリア毒素(CTまたはCRM197突然変異体)、破傷風毒素(TT)、カギアナカサガイヘモシアニン(KLH)およびツベルクリンの精製タンパク質誘導体(PPD)が挙げられる。
【0024】
一般的に用いられる担体に関連した問題
多数の問題が、例えばGMP複合体の産生におけるならびに複合体の免疫学的特徴における、これらの一般的に用いられる担体の各々に関連している。
【0025】
これらの担体の一般的使用および抗多糖抗体応答の誘導におけるそれらの成功例にもかかわらず、それらはいくつかの欠点に関連する。例えば、抗原特異的免疫応答は、担体(この場合、破傷風毒素)に対して向けられる先在する抗体の存在により抑制され得る(エピトープ抑制)ということが知られている・・・。
・・・
【0028】
したがって、多糖ベースのワクチンのための担体タンパク質の選択は、すべての患者において作用する(広範なMHC認識)担体に対する必要性、高レベルの抗多糖抗体応答の誘導および担体に対する低抗体応答の間の平衡を必要とする。
【0029】
したがって、多糖ベースのワクチンのために予め用いられる担体は、多数の欠点を有する。これは、種々の多糖抗原に関して同一担体が用いられる場合に、エピトープ抑制が特に問題となる組合せワクチンにおいて特にそうである。・・・
【0030】
本発明は、前記の欠点を蒙らない多糖/多ペプチドベースの免疫原性複合体の調製に際して用いるための新規の担体を提供する。
【0031】
本発明は、ワクチンを含めた多糖ベースの免疫原性組成物のための担体として、インフルエンザ菌からのプロテインD(EP 0 594 610 B1)またはその断片を提供する。この担体の使用は、組合せワクチンにおいて特に有益である。」(第11頁第2行?第12頁第20行)
(キ)摘記事項甲3-(7)
「【0164】
実施例2-乳児ラットにおける11価肺炎球菌PS-PD複合体ワクチンの免疫原性に及ぼす先進アジュバントの作用の研究
0.1μgの各多糖の用量の11価肺炎球菌PS-PD複合体ワクチン(実施例1の方法にしたがって製造)で、以下のアジュバント処方物:・・・、3D-MPL、・・・を用いて、乳児ラットを免疫感作した。
【0165】
3D-MPLのみを有する処方物は、11の抗原のうち5つに関して、他の処方物より統計学的に(そして意外にも)より免疫原性(最大GMC IgG)であった。」(第41頁第2?12行)
(ク)摘記事項甲3-(8)
「【0188】
実施例3-成体ラットにおけるPS4、PS6B、PS18C、PS19FおよびPS23F複合体の免疫原性に及ぼす組合せの作用の研究
別々に、または多価組成物(4-、5-、7-または10価物)中に併合した肺炎球菌多糖-プロテインD複合体ワクチンを用いて、成体ラットを免疫感作した。
・・・
【0190】
すべての試料に関して統計分析を実施して、組合せ時の抗体濃度の差が有意であるか否かを確定した。多価ワクチン中の血清型PS6B、PS18C、PS19FおよびPS23FプロテインD複合体の組合せはいずれも、それらの免疫原性を有意に変えなかった。」(第45頁第16行?第46頁第4行)
(ケ)摘記事項甲3-(9)
「【0203】
実施例4-マウスにおける肺炎球菌肺コロニー形成に対するPD-複合11価多糖ワクチンの防御的有効性に及ぼすニューモリジンおよび3D-MPLの付加の有益な影響
・・・
【0210】
実施例4B.血清型6Bを鼻腔内チャレンジさせたOF1マウスにおける肺炎球菌肺コロニー形成に対するPD-複合11価多糖ワクチンの防御的有効性に及ぼすニューモリジンおよび3D-MPLアジュバントの弱毒化突然変異体の付加の有益な影響
・・・
【0211】
0および14日目に、・・・C:0.1μgPS/血清型のPD複合11価多糖ワクチン+10μgのPdB・・・+50μgのAlPO_(4)+5μgの3D-MPL(・・・)を含有する処方物を用いて、12匹の雌4週齢OF1マウスの群を皮下免疫感作した。・・・
【0212】
・・・PdBを補充し、AlPO_(4)+MPLで活性調節した11価多糖複合ワクチンにより、非常に有意の防御(p<0.007)が付与された・・・。」(第56頁下から第6行?第60頁第12行)
(コ)摘記事項甲3-(10)
「【0246】
実施例6-3D-MPLで活性調節した11価肺炎球菌多糖プロテインD複合体ワクチンの1年齢Balb/Cマウスにおける免疫原性
・・・
【0248】
プロトコール:
1/10回のヒト投与量の肺炎球菌多糖プロテインD複合体ワクチン、・・・で、1年齢Balb/Cマウスを免疫感作した。・・・・
・・・
【0255】
複合体ワクチンによる免疫感作は、23F以外の全血清型に対して高血清変換率でIgG抗体を誘導した。
【0256】
血清型7Fおよび19Fに関してのみ用量依存性応答(群4対群2)を観察したが、しかしこれらの観察は統計学的に有意でなかった。血清型3、6B、7Fおよび19FならびにPDに関して2回の投与後により大きい応答を観察し、これらの観察は、3つの処方物すべてを有する多くの場合に、統計学的に有意であった。
・・・
【0260】
結論:
ここに提示したデータは、11価肺炎球菌多糖プロテインD複合体ワクチンへの3D-MPLの付加が、試験したすべての血清型に対する老齢balb/cマウスにおける免疫応答を増大した、ということを実証する。」(第67頁第17行?第72頁第4行)

(4)甲第4号証の記載事項
(ア)摘記事項甲4-(1)
「【請求項1】
(a)タンパク質又はペプチドと複合しているか、あるいは複合していない、そのいずれかの1又は複数のストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)の多糖類;及び
(b)RSV抗原を、
Th1型応答の優先的な刺激因子であるアジュバントと共に含んで成る、ワクチン組成物。」(第2頁第2?7行)
(イ)摘記事項甲4-(2)
「【0024】
ストレプトコッカス・ニューモニエの多糖は、複合しているならばタンパク質又はペプチドのいずれかに複合する。多糖の抗原はいくつかのTヘルパータンパク質に複合されてきた。これらはTヘルパーのエピトープを提供する。代表的なタンパク質はジフテリア毒素、破傷風毒素、及びプロテインD又はヘモフィルス・インフルエンザB(Haemophilius influenza B)由来のその脂質化した誘導リポプロテインDを含む。他の適当なタンパク質担体は、ジフテリアCrm197及びインフルエンザ由来の主要な非構造性タンパク質、NS1(特にアミノ酸1-81)を含む。【0025】
プロテインDは本発明に従うワクチンの好ましい成分であり、これにストレプトコッカス・ニューモニエの多糖が複合される。」(第10頁第6?17行)
(ウ)摘記事項甲4-(3)
「【0028】
典型的に本発明のワクチンのストレプトコッカス・ニューモニエ成分は、多糖抗原を含んで成り(好ましくは複合したもの)、ここで前記の多糖は少なくとも4つの肺炎球菌の血清型に由来するだろう。好ましくは、前記の4つの血清型は6B,14,19F及び23Fを含む。更に好ましくは、少なくとも7つの血清型が前記組成物に含まれ、例えば血清4,6B,9V,14,18C,19F及び23Fに由来するものである。より更に好ましくは、少なくとも11の血清型が前記組成物に含まれ、例えば1つの態様における本組成物は、血清型1,3,4,5,6B,7F,9V,14,18C,19F及び23F(好ましくは複合したもの)に由来する莢膜多糖を含む。本発明の好ましい態様において、少なくとも13又は少なくとも15又は少なくとも17の多糖抗原(好ましくは複合したもの)が含まれるが、・・・もまた本発明によって考慮される。
【0029】
高齢者のワクチン接種(例えば肺炎の予防のため)にとって、・・・上述した11価の抗原性組成物に対する・・・を含めることは有利であり、一方幼児又はよちよち歩きの幼児にとって(より関心があるのが中耳炎である場合)、血清型6A及び19Aは13価のワクチンを形成するために有利に含まれる。」(第11頁第4?24行)
(エ)摘記事項甲4-(4)
「【0097】
例2-組み合わせたRSV+11価複合肺炎球菌ワクチンの評価
組み合わせのワクチンは、3D-MPL+ミョウバン、3D-MPL+QS21/コレステロール含有リポソーム、又はCpG含有オリゴヌクレオチド(ミョウバン有り又は無し)のいずれかで評価した。
・・・
【0098】
プロテインD(PD)担体に対するIgGの免疫応答への組み合わせのワクチンの衝撃も評価した。
・・・
【0100】
この例で使用した11価の候補ワクチンは、莢膜多糖の血清型1,3,4,5,6B,7F,9V,14,18C,19F及び23Fを含み、これらは本質的にEP 72513に記載されている様に調製した。各多糖はCDAP化学(WO95/08348)を用いて活性化され、そして誘導体化され、そして前記タンパク質の担体と複合される。・・・
・・・
【0119】
結果
1.群
14の群は、11価複合ワクチン又はFGのいずれか、あるいはミョウバン3D-MPL,CpG,Cpgミョウバン又はミョウバンと一緒に調製した両方の組み合わせを含む様々な製剤の2回の免疫感作を28日離して受けた。
・・・
【0124】
2.2.抗肺炎球菌多糖IgG
多糖3,6B,14,19F及び23Fに対する血清IgGの力価は、例1に記載されている様に測定した。類似の抗体応答が、11価のPS複合体/ミョウバン/3D-MPL製剤又はFG抗原を添加した同一のワクチンによる免疫感作で誘導された・・・。この結果は、肺炎球菌PS複合体及びRSV FG抗原をミョウバン3D-MPL製剤中で組み合わせることが、抗肺炎球菌免疫応答を低下又は変化させないことを証明した。」(第31頁19行?第40頁下から第6行)

(5)甲第5号証の記載事項
(ア)摘記事項甲5-(1)


」(第638頁表3)
(イ)摘記事項甲5-(2)
「・・・複数の肺炎球菌コンジュゲートワクチンが非臨床、臨床又は認可済の段階にあり、各ワクチンは異なるタンパク質キャリアを使用する(表3)。1つの肺炎球菌コンジュゲートワクチンとして、7価のワクチン(PnCRM-7)(Prevnar;ワイスワクチン、パールリバー、ニューヨーク)が米国及び約50か国にて認可されている。」(第638頁右欄下から第7?1行)

(6)甲第6号証の記載事項
(ア)摘記事項甲6-(1)


」(第158頁表4)
(イ)摘記事項甲6-(2)
「1つの肺炎球菌コンジュゲートワクチンとして、7価の製剤(Prevnar(商標))が現在、米国で認可されている。このワクチンは、7つの肺炎球菌の多糖抗原(血清型4,6B,9V,14,19F,23F及び多糖類18C)を、還元的アミノ化により、20μgのCRM_(197)とコンジュゲートしたものであり、PCV7と表される。血清型6Bを4μg含み、血清型6Bを除く各抗原を2μg含む0.5mLの使用が推奨される。リン酸アルミニウム(0.5mg)をアジュバントとして添加する。ただし、ワクチンは保存料又はチメロサールは含まない。・・・」(第158頁右欄下から第10?1行)

(7)甲第7号証の記載事項
(ア)摘記事項甲7-(1)
「9価(血清型1,4,5,6B,9V,14,18C,19F,23F;CRM_(197)コンジュゲート)・・・、11価ワクチン製剤(9価に血清型3及び7Fを追加)(・・・)は臨床開発中である。」(第283頁右欄第10?18行)

(8)甲第8号証の記載事項
(ア)摘記事項甲8-(1)
「・・・血清型4,6B,9V,14,18C,19F,23Fを含む7価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン(PCV-7);PCV-7に血清型1及び5を追加した9価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン(PCV-9);PCV-9に血清型3及び7Fを追加した11価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン(PCV-11)。」(第1009頁左欄第15?21行)
(イ)摘記事項甲8-(2)
「PCV-11で表される血清型に、6A及び19Aを追加することにより、各年代の集団において全ての主要な血清型が含まれると思われる。」(第1014頁右欄第12?15行)

(9)甲第9号証の1の記載事項
(ア)摘記事項甲9-(1)
「要約
・・・
現在、スペインでは、肺炎球菌防御のための2つのワクチンが存在する:23価の多糖類ワクチン(VNP-23v)と7価のコンジュゲートワクチン(VNC-7v)。
他のコンジュゲートワクチンとして、9価、11価、13価が開発中であるが、いまだ市場にはでていない。」(第147頁 要約)
(イ)摘記事項甲9-(2)
「7価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンは、ストレプトコッカス・ニューモニエの7つの血清型の莢膜抗原の精製した多糖類(4,6B,9V,14,18C,19F,及び23F)が別々にタンパク質、・・・CRM_(197)とコンジュゲートしたものを含む。」(第148頁右欄第33?39行)
(ウ)摘記事項甲9-(3)
「その他の肺炎球菌ワクチン
・・・7価のコンジュゲートワクチン(VNC-7v)・・・が利用可能なワクチンとして存在する。
・・・
-9価の血清型ワクチン(血清型1及び5追加)は、2歳未満の子供と2?5際の子供において、87%に至るまでカバレージを増加させる。
-11価の血清型ワクチン(血清型3及び7Fを追加)。・・・
-13価の血清型ワクチン(血清型6A及び19A追加)。」(第152頁右欄下から第19?1行)

(10)甲第10号証の記載事項
(ア)摘記事項甲10-(1)
「多糖類の抽出
・・・
濾液は、分子量100,000ダルトンのカットオフ値を持つカートリッジとして供給されるアミコンDCユニット30を用いた限外ろ過により、5リットルの容量まで濃縮される。
・・・
この多糖類は、溶液中に酢酸ナトリウム三水和物を40g溶解し、その後、3.5容積のエタノールを撹拌しながら添加することでタイプ1多糖を沈殿させ、濾過で分離することにより単離できる。
・・・
多糖類の精製
・・・
沈殿物は、5% (w / v) Cetavlon水溶液100 ml(容量E)が加えられた酢酸ナトリウム三水和物(濃度C)の水溶液10リットルで、クロマトグラフ的に洗浄された。
・・・
15分間撹拌した後、懸濁液を濾過し、ケーキを2リットルのクロマトグラフィー溶離液Fで洗浄する。
・・・
精製された多糖タイプ1は、3容量のエタノールを添加することによって溶液から沈殿させる。
沈降後、上澄み液を分離し、沈殿物をエタノール中で均質な粉末になるまで粉砕した後に濾過で回収して室温、減圧下で乾燥させる。得られた生成物は、タイプ1の精製肺炎球菌多糖である。

実施例47
沈殿状態の粗精製多糖類までの手順は、出発材料が肺炎連鎖球菌7 F型株である点を除き、実施例16の手法に従う。
この沈殿物は、0.005 Nトロメタモール/塩酸緩衝液(pH 7.1)に4 g/Lの量で再溶解される。この溶液は、3000gで10分間の遠心分離により清澄化された。
同じ緩衝液で処理したジエチルアミノエチル(DEAEセルロース)を溶液1リットル当たり20g、攪拌しながら添加し、pHを塩酸Nで7.1に調整した。撹拌を1時間継続した後、濾過による分離を行い、濾液の1リットル当たり240mlの同じ緩衝液を用いて洗浄した。
DEAEセルロースでの処理は、濾液に対して繰り返される。
濾液を集めた溶液は、それぞれ0.8 micronおよび0.45 micronの孔径を持つ2種の濾過膜を通される。酢酸ナトリウム三水和物が加えられ(終濃度8% w / v)、溶液は更に0.2 micronの孔径を持つ濾過膜を通される。
多糖類は、攪拌しながら3容量のエタノールを添加することによって沈殿させられる。
デカンテーションならびに濾過により回収された精製多糖類7Fの沈殿は、エタノールで洗浄され、最終的に室温、減圧下で乾燥される。」(第11欄第51行、第12欄第8?11行、第20?25行、第27行、第48?52行、第55?58行、第13欄第1?9行、第19欄実施例47)

(11)甲第11号証の記載事項
(ア)摘記事項甲11-(1)
「多糖の分画法としては、有機溶剤や塩類による分別沈殿法の他、4級アンモニウム塩などの選択的沈殿剤による分画、各種クロマトグラフィーやゲル濾過による分画、電気泳動、超遠心分離などの方法がある。
多糖の分画は1つの方法だけで成功することは少なく、純度の高い標品を得るためにはいくつかの方法を組み合わせて用いる必要がある。以下、主な方法について述べる。」(第47頁第11?16行)
(イ)摘記事項甲11-(2)
「〔実験例 VII-39〕 Penicillium citrinumのマロノガラクタン:P.citrinum 1131 VI-10-14株の培養菌体を4倍量の水で抽出後、・・・加熱する。これに0.04容(重量)の活性炭を加えて濾過し、濾液に・・・を加えて沈澱を得る.沈澱を水に溶解し、不溶物は遠心分離によって除去する.上清を・・・で平衡化したDEAE-セルロースカラムに充填し、・・・で溶出する.・・・再びDEAE-セルロースカラムを用いて精製する.最後に、多糖画分を透析、濃縮乾固に供する.・・・」(第152頁第5?15行)

(12)甲第12号証の記載事項
(ア)摘記事項甲12-(1)
「肺炎球菌コンジュゲートワクチンにおいては、各候補莢膜多糖は、天然型あるいはオリゴ糖として、キャリア蛋白に別々に結合される。最終的なワクチンは、これらの多糖-蛋白コンジュゲートまたはオリゴ糖-蛋白コンジュゲートの混合物である。」(第586頁左欄第10?14行)
(イ)摘記事項甲12-(2)
「4種のHibコンジュゲートワクチン(表11-5参照)について、ヒトでの詳細な評価が行われた。ワクチン(図11-7)は、全て同じハプテン(PRP)であっても、多糖のサイズ、キャリア蛋白の種類、結合のタイプが異なっており、誘導される免疫応答の型も異なる。」(第199頁左欄第12?17行)

(13)甲第13号証の記載事項
(ア)摘記事項甲13-(1)
「肺炎球菌コンジュゲートワクチンでは各血清型とキャリア蛋白の結合について個別のコンジュゲーションを行う必要がある。」(第82頁左欄第49?51行)

(14)甲第14号証の記載事項
(ア)摘記事項甲14-(1)
「ワクチン. 肺炎球菌コンジュゲートワクチン(交差反応物質-オリゴ糖[CRM-OS])は「Wyeth-Lederle Vaccines and Pediatrics、Henrietta、N.Y.」から得られたもので、血清型6B,14,19C,19F,23Fの肺炎球菌多糖由来のオリゴ糖を変異型のジフテリア毒素CRM_(197)に還元アミノ化法により結合させたものから成る(3)。各ワクチンは、CRM_(197)とオリゴ糖の重量比で0.5:1と1:1の間でコンジュゲートされた各肺炎球菌の血清型に対して10μgのオリゴ糖を含み、投与量当たりのCRM_(197)の総蛋白含量は50μg以下となる。」(第243頁左欄第8?15行)

(15)甲第15号証の記載事項
(ア)摘記事項甲15-(1)
「血清の殺菌活性を調べた結果、我々は、いずれの群も陽性の血清であったが、CCPS-P64k_(R)群(審決注:還元アミノ化法でコンジュゲーションしたワクチン)においては殺菌活性の幾何平均力価(GMT)が他の群(審決注:カルボジイミド法でコンジュゲーションしたワクチンを含む)よりも3倍高いことを見出した(表1)。」(第196頁左欄第11?15行)
(イ)摘記事項甲15-(2)
「CCPS-P64k_(R)で免疫した群のプール血清のみで、対照群と統計的な有意差をもってコロニー形成単位が低下し、防御効果が認められた(P<0.01、Dunnett多重比較検定)。」(第196頁右欄第10?13行)

2 被請求人が提出した証拠の記載事項

被請求人が提出した乙第8?12及び21号証には、以下の事項が記載されている。なお、乙第8?12及び21号証は、いずれも外国語で記載されているので、日本語による訳文にて表記する。

(1)乙第8号証の記載事項
(ア)摘記事項乙8-(1)
「要旨
様々な細菌感染を標的とする莢膜多糖(CP)コンジュゲートワクチンは、近年開発および臨床評価が行われている。単回投与において、混合した複数のCP血清型を含有することは、評価すべき重要な方策である。単回の多価投与におけるCPコンジュゲートワクチンの組み合わせは、異なる成分間での競合に繋がり、個々のコンジュゲートの免疫応答に不利に影響するかもしれない。12価の大腸菌(E.coli)リポ多糖コンジュゲートワクチンの免疫原性を、別々に評価した各1価のワクチンの免疫原性と比較したとき、マウスにおいて、いくつかの血清型に対する抗体応答が30-90%減少することが観察された。黄色ブドウ球菌(S.aureus)8型rEPAコンジュゲートを、5型rEPAコンジュゲートと混合したとき、8型CP抗体の30%減少が観察された。黄色ブドウ球菌5型あるいは8型rEPAコンジュゲートを、100μgのrEPA(相同)あるいはジフテリア毒素(DT)(非相同)キャリアタンパク質と混合し、rEPAあるいはDTで初期免疫したマウスで評価した。相同タンパク質の付与は、5型CP抗体の64%減少をもたらした。非相同タンパク質は、5型の免疫原性に影響しなかった。我々は、結合していないタンパク質が、コンジュゲートと競合し、rEPAで初期免疫されたT細胞の殆どを回収したと、仮定している。DTコンジュゲートの場合、DTはT細胞の異なる集団を標的とする、このため、干渉は観察されなかった。これらのデータは、投与の場において、抗原処理より、エピトープ処理が、コンジュゲートの免疫原性減少を引き起こしていることを、示唆する。同じキャリアタンパク質にコンジュゲートした多価CPワクチンの個々の成分が、特定のキャリアタンパク質で初期免疫された限られた数のT細胞に対して競合すると、理論化する。これは、一つ以上の成分が、十分な免疫応答を起こすのに役立たないということをもたらす。多価コンジュゲートワクチンを単回投与製剤とするときは、干渉を減少させるための方策として、複数キャリアタンパク質の使用を検討するべきである。」(第126頁第1?19行、要約)

(2)乙第9号証の記載事項
(ア)摘記事項乙9-(1)
「多くの新たに発見されたワクチンは、将来において、多数のワクチンが乳児に同時に投与されなければならないことを、意味する。同じタンパク質成分、すなわち、破傷風毒素(TT)を含む、いくつかの共に投与されたワクチンの免疫応答干渉の可能性を調べた。TTへコンジュゲートした4価肺炎球菌ワクチン(PncT)およびジフテリア-破傷風-百日咳-ポリオウイルス-インフルエンザ菌b型-破傷風コンジュゲートワクチンを同時に受けた乳児は、ジフテリア毒素にコンジュゲートした4価肺炎球菌ワクチンあるいはプラシーボを受けた乳児より、著しく低い、抗インフルエンザ菌b型多糖(多リボシルリビトールリン酸(PRP))抗体濃度を示した。投与用量の範囲の研究は、抗PRP抗体濃度は、乳児に投与されたPncTワクチンのTT濃度と、逆行して関係することを示した。共に投与したワクチンのTT成分が増えるにつれて、免疫後の抗破傷風抗体濃度もまた、逆の影響を受けた。共通のキャリアタンパク質よる干渉によると考えられるこの現象は、複数のコンジュゲートワクチンを含む予防接種プログラムの導入を検討する際に、考慮されるべきことである。」(第2093頁第1?12行、要約)
(イ)摘記事項乙9-(2)
「いくつかのメカニズムを提案できる。第1に、抗PRP抗体応答は、フリー体またはコンジュゲートタンパク質にて注入されたTTの量に関係しているようである:抗PRP抗体応答における最大の減少は、PncTコンジュゲートの最も高い用量に伴い観察された。抗PRP抗体と抗破傷風抗体濃度との相関が見られたことから、注入されたTTの量は抗破傷風抗体応答にも同様に影響するようである(言い換えると、より低い抗PRP抗体レベルを持つ傾向を有するワクチン非接種者は、より低い抗破傷風抗体レベルも有していた)。
第2に、先行研究はキャリアに対する免疫応答は糖-タンパク質ワクチンに対する応答と干渉しうることを示している(3-5,13,23)。タンパク質キャリアによる事前の免疫化は、キャリアとHib多糖エピトープに対する抗体応答を低減しうる(5)。このような現象は、最初に2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸ハプテン(TNP)または2,4,6-ジニトロフェニルハプテン(DNP)(15、16)またはペプチドエピトープ(26)にて報告されたエピトープ抑制と関連しうる。この抑制は、キャリアエピトープに特異的なB細胞のクローン優位により媒介される(20、27)。これらの結論はキャリア刺激された動物で得られたが、我々は今や類似のメカニズムが同時接種コンジュゲートに対する応答を制御していることを提案できる。」(第2096頁右欄下から第6行?第2097頁左欄第18行)

(3)乙第10号証の記載事項
(ア)摘記事項乙10-(1)
「背景. 肺炎球菌コンジュゲートワクチンの血清型の保護範囲を増加する必要性が存在する。単一キャリアタンパク質の使用はキャリアの過重量を起こし、十分なキャリア特異的Tヘルパー細胞のサポートを供給できないことにより、免疫応答を低減させるかもしれない。破傷風およびジフテリアコンジュゲート多糖の混合からなるワクチンは、この問題に対する、潜在的解決策である。
目的. この研究の目的は、キャリアとして破傷風およびジフテリアの両方をキャリアとして用いた11価肺炎球菌コンジュゲートワクチンの健康幼児における忍耐性および免疫原性を調べる事であった。アルミニウムアジュバンドの安全性の効果および免疫原性を、アジュバンドの有無によるワクチンを比較して調べた。
方法. 20人のフィンランド人および23人のイスラエル人の幼児が、アルミニウムアジュバンド有りあるいは無しのコンジュゲートワクチンを受けた。ワクチンの投与後、5日間、安全性のデータを記録した。免疫前および免疫後28日に、血清を採取した。11価の血清型多糖(PSs)に対するIgG抗体は、酵素免疫アッセイで決定した。
結果. 深刻な有害事象は生じなかった。アジュバンド製剤は局部では殆ど何も誘導しない傾向であったが、アジュバンドを含まない製剤より、全身性の反応を誘導した。両製剤とも、ワクチン特異的PSsに対する特異的IgGの増加を誘導した。3型および7F型は最も免疫原性があった、抗体は全ての対象で1μg/mlに達した。6B、14および23Fのコンジュゲートは、最も弱い免疫原性であった、それぞれ、ノンアジュバンドグループで対象の36、27および32%で、アジュバンドグループで53、38および53%で、抗体は1μg/mlに達した。
結論. 11価の混合キャリア肺炎球菌コンジュゲートワクチンは、幼児において、安全であり免疫原性を有する。アジュバンドの使用は、意義のある優位性を提供しないようである。」(要約)

(4)乙第11号証の記載事項
(ア)摘記事項乙11-(1)
「背景 肺炎球菌多糖/タンパク質コンジュゲートワクチン(PnCV)は免疫原性であり、乳児に有効である。しかしながら、アフリカの小児の生後1年間における9つの現在推奨されるワクチン接種への追加は、PnCVプログラムへの参加を妨害することになるかもしれない。それゆえ、われわれはジフテリア、破傷風トキソイド、百日咳細胞およびインフルエンザ菌b型(TETRAMUNE)と混合した9価PnCV(Wyeth Lederle Pediatrics and Vaccines)の安全性と免疫原性を評価した。
方法 健康なガンビアにおける乳幼児は、生後2か月齢にて無作為化され、1月間隔で3回投与を(1)TETRAMUNE中に再構成された偽薬を右大腿部に(対照群)、または(2)PnCVを左大腿部、TETRAMUNEを右大腿部に(分離群)、または(3)TETRAMUNE中に再構成されたPnCVを右大腿部に単一回投与として(結合群)、行った。ワクチンはルーチンの、「Expanded Program on Immunization」ワクチンと併せて投与された。接種後の副反応を記録し、および抗体濃度を酵素結合免疫吸着測定法により測定した。
結果 各回投与後、局部的なしこりと圧痛が、TETRAMUNEの注射部位にて、PnCVとともに接種した部位と比較して、より共通して観察された。注射部位における膨張は、PnCVと比較し、TETRAMUNEの接種部位においてより頻繁に遭遇した(1回投与および2回投与についてP<0.00001および3回投与についてP<0.0009)。PnCVと混合したTETRAMUNEの接種部位における膨張は、TETRAMUNE単独について観察されたものと同等であった。ほとんどの母親は各回接種後24時間で乳児を「熱いと感じた」と報告したが、発熱反応(体温38℃以上)は頻回ではなく、解熱剤で解決された。抗ポリリボシルリビトールリン酸抗体の幾何平均力価は、対照群において11.6μg/ml[95%信頼限界(95%CI),9.2,14.6]であり、結合群においては13.3μg/ml(95% CI 11.0 ,16.0)と同等であり、分離群においては17.9μg/ml(95% CI 14.7,21.9;P=0.01)と有意に高かった。血清型特異的な肺炎球菌抗体の幾何平均濃度は、9つ全ての血清型について、結合群は分離群よりも高かった。全ての群で、ジフテリアおよび百日咳抗原に対する抗体反応は類似していた。抗破傷風トキソイド抗体濃度は、結合群において最も低かった(対照群においては、6.66IU/ml,95%CI5.77,7.68;結合群においては、5.15IU/ml,95%CI4.39,6.03;P=0.02)。しかしながら、全てのワクチンが、防御する抗体値を達成した。
結論 TETRAMUNEとPnCVは安全で免疫原性である。」(第940頁左欄第1?27行、右欄第1行?第32行)
(イ)摘記事項乙11-(2)
「ワクチン 本研究に用いられる肺炎球菌コンジュゲートワクチンはWyeth-Lederle Pediatrics and Vaccineが製造した。2μgの1、4、5、9V、14、19Fおよび23F型の肺炎球菌多糖;2μgの18C型のオリゴ糖;および4μgの6B型多糖を含有し凍結乾燥状態に調製された。各多糖またはオリゴ糖は独立してジフテリア毒素の非毒性変異体であるCRM197に結合され、1回投与量あたり?20μgのCRM_(197)となった。TETRAMUNEは各0.5ml投与量においてジフテリアトキソイド?12.5凝集単位(Lf)、破傷風トキソイド5Lf、百日咳全細胞ワクチンがマウス防御アッセイにおいて4防御単位および25μgのCRM_(197)にコンジュゲートしたHibオリゴ糖1μgを含有したものであった。偽薬は物理的に肺炎球菌コンジュゲートワクチンから区別不能であり、NaCl-ショ糖溶液を含む再構成が必要である単回量凍結乾燥バイアルで供給された。TETRAMUNEは偽薬およびPnCVの希釈剤として用いられた。分離して投与される際の肺炎球菌コンジュゲートワクチンの希釈剤は、リン酸アルミニウムを含む生理食塩水が用いられた。全てのワクチンは、投与の直前に再構成された。」(第941頁左欄第47行?右欄第14行)
(ウ)摘記事項乙11-(3)
「我々は、肺炎球菌コンジュゲートワクチンのTETRAMUNEとの混合は、TETRAMUNE単独による免疫化と比較して、副反応の事象を増加させず、Hibポリリボシルリビトールリン酸への免疫応答を抑制せず、DTPワクチンのいずれの構成成分に対しても有意に抑制しないと結論する。さらに、混合は、TETRAMUNEと肺炎球菌コンジュゲートワクチンとの、分離しかし同時免疫化と比較して、肺炎球菌コンジュゲートワクチンの多糖成分に対する免疫応答も抑制しない。」(第945頁右欄第47行?第946頁左欄第2行)

(5)乙第12号証の記載事項
(ア)摘記事項乙12-(1)
「背景 肺炎球菌およびC群髄膜炎菌による侵襲性疾患の減少におけるコンジュゲートワクチンの成功は、混み合った乳児免疫化スケジュールに負荷をかけており、組合せワクチンの開発を優先させている。
目的 9価肺炎球菌-C群髄膜炎菌コンジュゲートワクチン候補品(Pnc9-MenC)の安全性および免疫原性を決定するため、英国における2,3および4か月齢におけるルーチンの乳児免疫化スケジュールの一部として接種した。
計画、設定、被験者 第2相無作為化対照試験が2000年8月から2002年1月に実施された。英国における2施設からの7から11週の健康な乳児240名が参加した。フォローアップの家庭訪問が2、3,4および5か月齢にて行われた。
介入 Pnc9-MenC(n=120)またはC群髄膜炎菌コンジュゲートワクチン単一価(MenC)(n=120)が、ルーチンの免疫化(ジフテリアおよび破傷風トキソイドおよび百日咳全細胞[DTwP]、インフルエンザ菌b[Hib]ポリリボシルリビトールリン酸-破傷風トキソイドタンパク質コンジュゲート、経口ポリオワクチン)に加えて接種された。
主要評価基準 3回目の投与後1月の血清殺菌価(SBT)により測定されるC群髄膜炎菌免疫原性;接種後反応の割合
結果 MenC成分免疫原性は、MenC群に対してPnc9-MenCにおいて減少していた(幾何平均SBT、179[95%信頼性区間{CI}、133-243]対808[95%CI、630-1037]、それぞれ;P<.001)。1:8よりも大きいC群髄膜炎菌SBTの比はPnc9-MenCにてMenC群に対して低かった(95%対100%,P=.05)。同時に投与されたHibワクチンに対する抗体の幾何平均濃度はMenC群に対してPnc9-MenCにおいて減少しており(2.11[95%CI,1.57-2.84]μg/mL対3.36[95%CI,2.57-4.39]μg/mL;P=.02)、ジフテリアに対する抗体でも同様であった(0.74[95%CI,0.63-0.87]μg/mL対1.47[95%CI,1.28-1.69]μg/mL;P<.001)。Pnc9-MenCは、各9つの含有される肺炎球菌血清型について免疫原性であり、88%以上の乳児において0.35μg/mLより大きい応答が観察された。Pnc9-MenC群の3回目投与後、被刺激性の増加と活性の減少が見られた。
結論 Pnc9-MenC組合せワクチンの2、3および4月齢の投与は、MenCワクチンと比較してC群髄膜炎菌免疫原性を低減した。同時に投与されたHibおよびDTwPワクチンの免疫原性も減少した。Pnc9-MenCワクチンは安全であり全ての含有された肺炎球菌血清型について免疫原性であった。減少したMenC免疫原性は、Pnc9-MenCワクチンの開発を制限しうる。」(第1751頁第2及び第3コラム第1?35行)
(イ)摘記事項乙12-(2)
「訪問およびワクチン
乳児は2,3,4および5か月齢にて来診され、来診間隔は28から42日であった。乳児は2,3および4月において、ジフテリアおよび破傷風トキソイドおよび全細胞百日咳(DTwP)ワクチン(Aventis,Lyon,France)が、0.5ml、インフルエンザ菌b型(Hib)ポリリボシルリビトールリン酸-破傷風トキソイドタンパク質コンジュゲート(ActHib;Aventis)、0.5mlと混合され、右大腿部前外側に筋肉内投与された。乳児には経口ポリオワクチンが、2滴経口にて投与された。乳児は試験導入時1:1の割合で無作為化され左大腿部前外側にPnc9-MenC(Wyeth Vaccines, Maidenhead, UK)を0.5mL筋肉内に、またはMenC(Meningitec; Wyeth Vaccines)を0.5mL筋肉内に、各接種来診ごとに投与した。無作為化は、コンピュータ生成の6のブロックの無作為化リストにより行った。Pnc9-MenC(凍結乾燥)およびMenC(事前にシリンジに調製)ワクチンは視覚的に異なるので、試験は盲検化されなかった。
Pnc9-MenCワクチンは単回用量バイアルにおいて凍結乾燥製剤にて提供された。各0.5mL用量は2μgの肺炎球菌糖コンジュゲート1,4,5、9V,14、18C,19F,および23F;4μgの肺炎球菌糖コンジュゲート6B;10μgのC群髄膜炎菌オリゴ糖;およびおよそ38.5μgのcross-reacting material 197(CRM_(197))キャリアタンパク質(ジフテリア毒素の非毒性変異体)を、アジュバントとしての0.5mgのリン酸アルミニウム(0.125mgアルミニウム元素)とともに含有した。MenCは、CRM197とコンジュゲートしたC群髄膜炎菌オリゴ糖を含むコンジュゲートワクチンである。各0.5mL投与量は、10μgの髄膜炎菌C群オリゴ糖、15μgのCRM197キャリアタンパク質、およびアジュバントとしての0.5mgのリン酸アルミニウム(0.125mgアルミニウム元素)を含有した。Pnc9-MenCワクチンにおけるMenC成分は、MenCワクチンとは異なる製造者ロットに由来した。静脈穿刺は、2および5か月来診時に行われ、血清学的アッセイのために2.5から5.0mLの血液が採取された。」(第1752頁第2コラム第51行?第3コラム最終行)

(6)乙第21号証の記載事項
(ア)摘記事項乙21-(1)
「組換えPneumolysinの性質および肺炎球菌血清型18Cコンジュゲートワクチンのための、キャリアタンパク質としての使用」(第2706頁、タイトル)
(イ)摘記事項乙21-(2)
「PS18CとrPLコンジュゲートの合成
・・・
PS18CはrPLへ、直接あるいは間接コンジュゲーションによりコンジュゲートした。還元アミノ化法による直接コンジュゲーションのために、0.1M PBS(pH7.0)中のPS18C(6 mg/ml)のサンプルを、重量比1:0.5のPS/タンパク質比で、rPL(3 mg/ml)と室温で穏やかに撹拌しながら混合した。
・・・
スペーサー分子である、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)の使用によるrPLへのPS18Cのカップリングのために、ADHは初めに、カルボジイミド縮合により、rPLへカップリングされた。・・・」(第2707頁右欄第19?56行)
(ウ)摘記事項乙21-(3)
「本研究において、両タイプのコンジュゲートが、rPLに対して等しい量の抗体反応を誘導したようだった、しかしながら、PS18C(AH)-rPLコンジュゲートは、PS18Cに対して、直接カップリングコンジュゲートより高い抗体反応を引き起こしたようだった(表1)。」(第2711頁右欄第20?25行)
(エ)摘記事項乙21-(4)
「さらに、直接あるいは間接カップリングによる、PS18CとrPLを含むコンジュゲートワクチンは、18C型肺炎球菌のチャレンジに対する、防御を生じさせることができた。」(第2712頁左欄第22?25行)

第6 当審の判断

1 本件特許の優先日における技術常識について
被請求人の主張及び提出した証拠によれば、本件特許の優先日時点において、以下に示す、いわゆる免疫干渉についての技術常識が存在していたものと認められる。なお、このことは、請求人も認めるところである。

(1)免疫干渉
同時に投与されるべき抗原の数が増えるにつれて、抗原が相互に影響し合う「免疫干渉」と呼ばれる現象が生ずる。免疫干渉を説明するいくつかのメカニズムが提案されており(摘記事項乙9-(2))、その中には、以下の2つがある。
(ア)キャリア誘発エピトープ抑制(多糖コンジュゲートワクチンにおいて観察される免疫干渉の一種であり、コンジュゲートされるキャリアタンパク質に対する免疫応答に起因して、多糖抗原に対する免疫応答が抑制される)
(イ)抗原競合(キャリアタンパク質は、多糖よりも良い抗原となりうるため、コンジュゲートワクチンに含まれるキャリアタンパク質や、同時に投与されるその他のワクチンに含まれているキャリアタンパク質が、多糖抗原に対する免疫応答を抑制する)

(2)免疫干渉の予測・回避の困難性
多糖コンジュゲートワクチンの免疫干渉は、キャリアタンパク質の含量が増えるにつれて、より起こりやすくなることが知られていたことから、免疫干渉を回避するために、少なくとも2つのキャリアタンパク質を混合して使用することが示唆されていたが(摘記事項乙8-(1)、摘記事項乙9-(1)、摘記事項乙10-(1))、多価コンジュゲートワクチン中のキャリアタンパク質の含量が多い場合に免疫干渉が起こり、少なければ免疫干渉が回避されると必ずいえるわけでもなく(摘記事項乙11-(1)?(3)及び摘記事項乙12-(1)(2)、なお、乙第12号証は、本件優先日後に頒布された刊行物であるが、その頒布日(2005年4月13日)からみて、本願優先日時点における技術常識を示すものと認められる。)、免疫干渉を事前に予測し、回避することは困難であった。

2 無効理由の検討
本件訂正発明25、本件訂正発明27は、ストレプトコッカスニューモニエの異なる13種類の莢膜多糖類(血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F及び23F)を別々にキャリアタンパク質CRM_(197)にコンジュゲートした多糖類-タンパク質コンジュゲートを含む多価免疫原性組成物の製造方法の発明であるので、無効理由1(新規性違反)及び無効理由2-1?2-3(進歩性違反)については、上記の多糖類-タンパク質コンジュゲートを含む多価免疫原性組成物自体に新規性及び進歩性が認められるか否かの点からまず検討する。

(1)本件訂正発明25について
(ア)無効理由1(新規性違反)について
(a)甲第1号証に基づく無効理由1
摘記事項甲1-(1)のとおり、甲第1号証の請求項1には、「少なくとも1つのストレプトコッカス・ニューモニエ多糖体抗原と、PhtA、PhtD、PhtB、PhtE、SpsA、LytB、LytC、LytA、Sp125、Sp101、Sp128、Sp130およびSp133から成る群から選択される少なくとも1つのストレプトコッカス・ニューモニエ蛋白抗原またはその免疫学的機能等価物とを含んで成る免疫原性組成物」(以下「甲第1号証の免疫原性組成物」という。)が記載され、同項を引用する請求項2には「多糖体抗原が多糖体蛋白担体接合物の形態で提供される」ことが記載され、さらに同項を引用する請求項3には「担体蛋白がジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、CRM197、キーホール・リンペットヘモシアニン(KLH)、ツベルクリンの蛋白誘導体およびH.インフルエンザ由来の蛋白Dから成る群から選択される」ことが記載されている。
また、摘記事項甲1-(2)のとおり、甲第1号証の【0013】には「本発明のストレプトコッカス・ニューモニエ多糖体抗原」との表題に続き、甲第1号証に記載の多糖体抗原における多糖体として、肺炎球菌(ストレプトコッカス・ニューモニエ)の6B、14、19F及び23Fの4つの血清型のもの、4、6B、9V、14、18C、19F及び23Fの7つの血清型のもの、1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23Fの11の血清型のものであることが、それぞれ記載され、さらに、【0014】には、上記11の血清型のものに6Aと19Aの血清型のものを加えて13価ワクチンとすることが記載されている。また、摘記事項甲1-(3)のとおり、【0048】には、多糖体を活性化し、担体蛋白に結合させることが記載されている。
以上の記載から、甲第1号証には、甲第1号証の免疫原性組成物において、多糖体抗原として、多糖体を担体蛋白に結合させた多糖体蛋白担体接合物(多糖類-タンパク質コンジュゲート)を用いること、その際の担体蛋白の選択肢の一つにCRM_(197)があることが記載されているといえる。また、甲第1号証の免疫原性組成物における多糖体抗原の多糖体が、上記4、7、11又は13の血清型からなるものであり得ることも記載されているといえ、さらに、多糖体蛋白担体接合物は、各多糖体が別々に担体蛋白に結合(コンジュゲート)したものであることも示唆されているといえる。
しかし、一般に、疾病の予防・治療のための組成物に係る発明(医薬発明)が、「刊行物に記載された発明である」といえるためには、当該医薬の有効成分となる物質の名称や化学構造等が記載されているだけでは足りず、有効成分とされる物質が、目的とする疾病の予防・治療に十分な薬理作用を有することを当業者が認識できるだけの記載(例えば、薬理試験結果の記載)が当該刊行物にある必要があるところ、上記の記載は、甲第1号証の免疫原性組成物における多糖体抗原の多糖体の種類及び数と担体蛋白の種類のそれぞれについて、考えられる選択肢を列挙したに過ぎず、列挙された選択肢の中から、多糖体として13種類の多糖体(血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F及び23F)及び担体蛋白としてCRM_(197)のみを選択することを示唆する記載であるとは言い得ても、実際に、かかる選択をして製造した、上記13種類の各多糖体が別々にCRM_(197)にコンジュゲートした組成物(以下「v13PnC-CRM_(197)」という。)が、医薬として有用な免疫原性を示したことを明らかにするものではない。
また、甲第1号証には、ストレプトコッカスニューモニエの莢膜多糖のコンジュゲートとして、11種類の莢膜多糖(血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23F)と蛋白Dを結合(コンジュゲート)した組成物(以下「v11Pn-PD」という。)について、具体的な試験結果の記載をもって、その有用な免疫原性が明らかにされているが(摘記事項甲1-(3)(6))、上記のような免疫干渉についての技術常識が存在したこと、及び、甲第1号証にエピトープ抑制の点から担体蛋白として蛋白Dが有利である旨記載されていること(摘記事項甲1-(5))からすれば、甲第1号証の免疫原性組成物において、11種類よりもさらに多い13種類の多糖体を選択し、かつ、担体蛋白としてCRM_(197)のみを選択して製造したv13PnC-CRM_(197)が、v11Pn-PDと同様に、有用な免疫原性を有するものとは認識できない。
してみると、v13PnC-CRM_(197)を含む多価免疫原性組成物の発明が、甲第1号証に記載されているとはいえない。
以上のとおり、甲第1号証には、v13PnC-CRM_(197)を含む多価免疫原性組成物の発明が記載されているといえないから、その製造方法に係る事項について検討するまでもなく、本件訂正発明25は、甲第1号証に記載された発明ではない。

(b)甲第2号証に基づく無効理由1
摘記事項甲2-(1)のとおり、甲第2号証の請求項1には、「3D-MPLでアジュバント化された1以上のストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)莢膜多糖コンジュゲートを含み、かつ、アルミニウム-ベースのアジュバントを実質的に欠く抗原性組成物であって、ここで、上記ストレプトコッカス・ニューモニエ多糖コンジュゲートの中の少なくとも1が、アルミニウム-ベースのアジュバントとともに3D-MPLを含む組成物に比較して、3D-MPLを含む組成物において有意により免疫原性である、前記抗原性組成物」(以下「甲第2号証の抗原性組成物」という。)が記載され、同項を引用する請求項8には、ストレプトコッカス・ニューモニエ莢膜多糖が、破傷風毒素、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)のOMPC、ジフテリア毒素、ストレプトコッカス・ニューモニエのニューモリジン(pneumolysin)又はCRM197から成る群から選ばれるタンパク質にコンジュゲートされていることが記載され、さらに、請求項1を引用する請求項14には、甲第2号証の抗原性組成物が、ストレプトコッカス・ニューモニエ莢膜多糖血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F及び23Fのコンジュゲートを含むことが記載されている。
また、摘記事項甲2-(2)から、【0048】、【0049】には、甲第2号証の抗原性組成物における莢膜多糖コンジュゲートが、肺炎球菌(ストレプトコッカス・ニューモニエ)の4つの血清型(6B、14、19F及び23F)、7つの血清型(4、6B、9V、14、18C、19F及び23F)、11の血清型(1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23F)又は13の血清型(1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F及び23F)から得られる莢膜多糖のコンジュゲート(複合化)であり得ることが記載されているものと認められる。さらに、摘記事項甲2-(3)(4)のとおり、ストレプトコッカス・ニューモニエの莢膜多糖を活性化し、タンパク質担体に連結させることも記載されている。
以上の記載から、甲第2号証には、甲第2号証の抗原性組成物において、莢膜多糖がタンパク質に結合したストレプトコッカス・ニューモニエ莢膜多糖コンジュゲートを用いること、その際のタンパク質の選択肢の一つにCRM_(197)があることが記載されているといえる。また、甲第2号証の抗原性組成物におけるストレプトコッカス・ニューモニエ莢膜多糖コンジュゲートの莢膜多糖が、上記4、7、11又は13の血清型からなるものであり得ることも記載されているといえる。さらに、ストレプトコッカス・ニューモニエ莢膜多糖コンジュゲートは、異なる莢膜多糖が別々にタンパク質に結合したものであることも示唆されているといえる。
しかし、上記の記載は、甲第2号証の抗原性組成物におけるストレプトコッカス・ニューモニエ莢膜多糖コンジュゲートの莢膜多糖の種類及び数と該莢膜多糖とコンジュゲートするタンパク質の種類のそれぞれについて、考えられる選択肢を列挙したに過ぎない点で、甲第1号証の免疫原性組成物の場合と同様であるから、上記の記載をもって、甲第2号証にv13PnC-CRM_(197)が記載されているとはいえない。
また、甲第2号証には、ストレプトコッカス・ニューモニエの莢膜多糖のコンジュゲートとして、v11Pn-PDについて、具体的な試験結果の記載をもって、その有用な免疫原性が明らかにされているが(摘記事項甲2-(3)、(4)、(7)?(10))、上記のような免疫干渉についての技術常識が存在したこと、及び、莢膜多糖とコンジュゲートするタンパク質としてプロテインDが特に有益である旨記載されている(摘記事項甲2-(6))ことから、v13PnC-CRM_(197)が、v11Pn-PDと同様に、有用な免疫原性を有するものとは認識できないのも、甲第1号証の免疫原性組成物の場合と同様である。
したがって、v13PnC-CRM_(197)を含む多価免疫原性組成物の発明が、甲第2号証に記載されているとはいえない。
以上のとおり、甲第2号証には、v13PnC-CRM_(197)を含む多価免疫原性組成物の発明が記載されているといえないから、その製造方法に係る事項について検討するまでもなく、本件訂正発明25は、甲第2号証に記載された発明ではない。

(c)甲第3号証に基づく無効理由1
摘記事項甲3-(1)のとおり、甲第3号証の請求項1には、「少なくとも1のストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)多糖抗原、及び少なくとも1のストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)タンパク質抗原又は免疫学的に機能性のその等価物を含む免疫原性組成物」(以下「甲第3号証の免疫原性組成物」という。)が記載され、同項を引用する請求項5には、多糖抗原が多糖-タンパク質担体コンジュゲートの形態で提供されることが記載され、さらに同項を引用する請求項6には、タンパク質担体が、ジフテリア毒素(Diphtheria toxid)、破傷風毒素(Tetanus toxid)、CRM197、キーホール・リンペット・ヘモシアニン(Keyhole Limpet Haemocyanin (KLH))、ツベルクリン(Tuberculin)のタンパク質誘導体(PPD)、及びH.インフルエンザ(H. influenzae)由来のタンパク質から成る群から選ばれることが記載されている。
また、摘記事項甲3-(2)から、【0048】、【0049】には、甲第3号証の免疫原性組成物における多糖抗原が、肺炎球菌(ストレプトコッカス・ニューモニエ)の4つの血清型(6B、14、19F及び23F)、7つの血清型(4、6B、9V、14、18C、19F及び23F)、11の血清型(1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23F)又は13の血清型(1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F及び23F)から得られる莢膜多糖のコンジュゲート(複合化)であり得ることが記載されているものと認められる。
さらに、摘記事項甲3-(3)(4)のとおり、多糖を活性化し、タンパク質担体に連結させることも記載されている。
以上の記載から、甲第3号証には、甲第3号証の免疫原性組成物において、多糖抗原として、多糖がタンパク質担体に結合した多糖-タンパク質担体コンジュゲートを用いること、その際のタンパク質担体の選択肢の一つにCRM_(197)があることが記載されているといえ、また、該多糖抗原の多糖が、上記4、7、11又は13の血清型からなるものであり得ることも記載されているといえる。さらに、多糖-タンパク質担体コンジュゲートは、異なる多糖が別々にタンパク質担体に結合したものであることも示唆されているといえる。
しかし、上記の記載は、甲第3号証の免疫原性組成物における多糖抗原の多糖の種類及び数とタンパク質担体の種類のそれぞれについて、考えられる選択肢を列挙したに過ぎない点で、甲第1号証の免疫原性組成物の場合と同様であるから、上記の記載をもって、甲第3号証にv13PnC-CRM_(197)が記載されているとはいえない。
また、甲第3号証には、ストレプトコッカス・ニューモニエの莢膜多糖のコンジュゲートとして、v11Pn-PDについて、具体的な試験結果の記載をもって、その有用な免疫原性が明らかにされているが(摘記事項甲3-(3)、(4)、(7)?(10))、上記のような免疫干渉についての技術常識が存在したこと、及び、タンパク質担体としてプロテインDが特に有益である旨記載されている(摘記事項甲3-(6))ことから、v13PnC-CRM_(197)が、v11Pn-PDと同様に、有用な免疫原性を有するものとは認識できないのも、甲第1号証の免疫原性組成物の場合と同様である。
したがって、v13PnC-CRM_(197)を含む多価免疫原性組成物の発明が、甲第3号証に記載されているとはいえない。
以上のとおり、甲第3号証には、v13PnC-CRM_(197)を含む多価免疫原性組成物の発明が記載されているといえないから、その製造方法に係る事項について検討するまでもなく、本件訂正発明25は、甲第3号証に記載された発明ではない。

(d)甲第4号証に基づく無効理由1
摘記事項甲4-(1)のとおり、甲第4号証の請求項1には、「(a)タンパク質又はペプチドと複合しているか、あるいは複合していない、そのいずれかの1又は複数のストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)の多糖類;及び(b)RSV抗原を、Th1型応答の優先的な刺激因子であるアジュバントと共に含んで成る、ワクチン組成物」(以下「甲第4号証のワクチン組成物」という。)が記載され、摘記事項甲4-(2)のとおり、甲第4号証のワクチン組成物におけるストレプトコッカス・ニューモニエの多糖類は、複合しているならば、タンパク質に複合すること、代表的なタンパク質として、ジフテリア毒素、破傷風毒素、及びプロテインD又はヘモフィルス・インフルエンザB由来のその脂質化した誘導リポプロテインD、ジフテリアCrm197及びインフルエンザ由来の主要な非構造性タンパク質、NS1(特にアミノ酸1-81)があることが記載されている。
また、摘記事項甲4-(3)より、甲第4号証には、甲第4号証のワクチン組成物における複合した多糖抗原の多糖としては、ストレプトコッカス・ニューモニエの6B、14、19F及び23Fの4つの血清型のもの、4、6B、9V、14、18C、19F及び23Fの7つの血清型のもの、1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23Fの11の血清型のものであり得ることが記載され、さらに、上記11の血清型のものに6Aと19Aの血清型のものを加えた13の血清型のものであり得ることが記載されていると認められる。
さらに、摘記事項甲4-(4)のとおり、複合した多糖抗原は、各多糖を活性化し、タンパク質の担体と複合されたものであることも記載されている。
以上の記載から、甲第4号証には、甲第4号証のワクチン組成物において、1又は複数のストレプトコッカス・ニューモニエの莢膜多糖をタンパク質担体に複合(コンジュゲート)させたもの(以下「甲第4号証の多糖-タンパク質複合体」という。)を用いること、甲第4号証の多糖-タンパク質複合体のタンパク質担体の選択肢の一つにcrm197(CRM_(197)と同じ)があり、多糖が上記4、7、11又は13の血清型からなるものであり得ることが記載されているといえる。さらに、多糖は別々にタンパク質担体に複合されることも示唆されているといえる。
しかし、上記の記載が、甲第4号証の多糖-タンパク質複合体における多糖の種類及び数とタンパク質担体の種類のそれぞれについて、考えられる選択肢を列挙したに過ぎないものであることは、甲第1号証の免疫原性組成物の場合と同様である。また、甲第4号証には、甲第4号証の多糖-タンパク質複合体として、v11Pn-PDについて、具体的な試験結果の記載をもって、その有用な免疫原性が明らかにされているが(摘記事項甲4-(4))、上記のような免疫干渉についての技術常識が存在したこと、及び、タンパク質担体としてプロテインDが好ましい旨記載されている(摘記事項甲4-(2)【0025】)ことからすれば、v13PnC-CRM_(197)が、v11Pn-PDと同様に、有用な免疫原性を有するものとは認識できない。
したがって、v13PnC-CRM_(197)を含む多価免疫原性組成物の発明が、甲第4号証に記載されているとはいえない。
以上のとおり、甲第4号証には、v13PnC-CRM_(197)を含む多価免疫原性組成物の発明が記載されているといえないから、その製造方法に係る事項について検討するまでもなく、本件訂正発明25は、甲第4号証に記載された発明ではない。

(e)無効理由1(新規性違反)についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正発明25は、甲第1?4号証のいずれにも記載されていないから、無効理由1に該当しない。

(イ)無効理由2-1(進歩性違反)について
上記のとおり、甲第1?4号証には、v13PnC-CRM_(197)を含む多価免疫原性組成物の発明は記載されていないし、免疫干渉の事前予測が困難であることに鑑みれば、本件特許明細書の実施例等に示される、v13PnC-CRM_(197)を含む多価免疫原性組成物が奏する効果は、当業者にも予測し得ない顕著な効果というべきものである。
してみると、本件訂正後の請求項25に記載の精製方法等が莢膜多糖類の精製技術等として周知慣用のものであったとしても、本件訂正発明25は、甲第1?4号証に記載の発明から容易に想到し得るものではない。
よって、本件訂正発明25は、無効理由2-1に該当しない。

(ウ)無効理由2-2(進歩性違反)について
無効理由2-2について、請求人は、甲第5?7号証には、ストレプトコッカスニューモニエの莢膜多糖類(血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23F)をCRM_(197)にコンジュゲートした11価コンジュゲートを含む多価免疫原性組成物が記載されており、甲第1?4、8、9号証の1には、血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23Fの莢膜多糖類を含む11価の多価免疫原性組成物に6A、19Aの2つの血清型の莢膜多糖類をさらに加えて13価の多価免疫原性組成物とすることが記載されており、13価の多価免疫原性組成物の効果も当業者が予測し得るものであるから、本件訂正発明25は、甲第5?7号証に記載の発明に甲第1?4、8、9号証の1に記載の発明を適用することにより、容易に発明し得るものであると主張する。
上記したとおり、一般に、医薬発明が、「刊行物に記載された発明である」といえるためには、当該医薬の有効成分となる物質の名称や化学構造等が記載されているだけでは足りず、有効成分とされる物質が、目的とする疾病の予防・治療に十分な薬理作用を有することを当業者が認識できるだけの記載が当該刊行物にある必要がある。
そこで、医薬発明である上記の11価コンジュゲートを含む多価免疫原性組成物が、甲第5?7号証に記載されているといえるかを、上記の点から検討する。
(a)甲第5号証について
甲第5号証の表3には、摘記事項甲5-(1)のとおり記載されており、Pnc-CRM11と称される、肺炎球菌(ストレプトコッカスニューモニエ)の莢膜多糖類がCRM_(197)にコンジュゲートした11価のコンジュゲートワクチンが「非臨床」の状況にあることが示されている。しかし、単に「非臨床」との記載のみでは、該11価のコンジュゲートワクチンがどのような開発段階にあって、どのような試験において、ワクチンとしての効果あるいは免疫原性についてどのような結果が得られたのかが全く理解できないから、かかる記載では、11価コンジュゲートを含む組成物が肺炎球菌に対するワクチンとしての効果を有することを当業者が認識できるだけの記載があるとはいえない。
したがって、ストレプトコッカスニューモニエの莢膜多糖類がCRM_(197)にコンジュゲートした11価コンジュゲートを含む多価免疫原性組成物が甲第5号証に記載された発明であるということはできない。
(b)甲第6号証について
甲第6号証の表4にも、摘記事項甲6-(1)のとおり、ストレプトコッカスニューモニエの莢膜多糖類がCRM_(197)にコンジュゲートした11価のコンジュゲートワクチンが「非臨床」の状況にあることのみが示されているが、これについても、甲第5号証と同様である。
したがって、ストレプトコッカスニューモニエの莢膜多糖類がCRM_(197)にコンジュゲートした11価コンジュゲートを含む多価免疫原性組成物が甲第6号証に記載された発明であるということもできない。
(c)甲第7号証について
甲第7号証には、摘記事項甲7-(1)のとおり、ストレプトコッカスニューモニエの莢膜多糖類がCRM_(197)にコンジュゲートした11価のコンジュゲートワクチン製剤が臨床開発中であることが記載されているが、「臨床開発中」との記載のみでは、実際に、上記の11価のコンジュゲートがワクチンとしての効果を有するのか否か当業者にも不明であるし、甲第7号証には、他に、上記の11価のコンジュゲートがワクチンとしての効果を有することを認識できるだけの記載もないから、甲第7号証についても、甲第5、6号証と同様である。
したがって、ストレプトコッカスニューモニエの莢膜多糖類がCRM_(197)にコンジュゲートした11価コンジュゲートを含む多価免疫原性組成物が甲第7号証に記載された発明であるということもできない。
以上のとおり、甲第5?7号証にストレプトコッカスニューモニエの莢膜多糖類がCRM_(197)にコンジュゲートした11価コンジュゲートを含む多価免疫原性組成物の発明が記載されているとは認められないから、請求人のその余の主張を検討するまでもなく、無効理由2-2は失当である。
よって、本件訂正発明25は、無効理由2-2に該当しない。

なお、仮に、ストレプトコッカスニューモニエの莢膜多糖類がCRM_(197)にコンジュゲートした11価コンジュゲートを含む多価免疫原性組成物が甲第5?7号証に記載された発明であるとしても、甲第1?9号証の1に記載の発明からv13PnC-CRM_(197)を含む多価免疫原性組成物を発明することが容易であるとはいえず、本件訂正発明25が無効理由2-2に該当しないことに変わりないことを、念のため、以下に付記する。
甲第1?4、8、9号証の1には、11価(血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23F)のコンジュゲートワクチンに血清型6A、19Aを追加することが記載されている(摘記事項甲1-(2)、摘記事項甲2-(2)、摘記事項甲3-(2)、摘記事項甲4-(3)、摘記事項甲8-(2)、摘記事項甲9-(3))。しかし、甲第1?4、8、9号証の1の記載は、単に11価のコンジュゲートワクチンに血清型6A、19Aを追加することを示すに過ぎず、それらの血清型を追加する際に、11価のコンジュゲートワクチンと同じキャリアタンパク質を用いることまで示すものではない。さらに、上記のとおり、免疫干渉の予測が困難であるのが技術常識であり、免疫干渉を回避するための手段の一つとして、複数のキャリアタンパク質を用いることも示唆されていたことに鑑みれば、13価のコンジュゲートワクチンにおいて、十分な免疫原性又はワクチンとしての効果が得られることを予測して、11価のコンジュゲートワクチンの場合と同様に、キャリアタンパク質として、CRM_(197)のみを選択することが、当業者に容易であったとはいえないし、v13PnC-CRM_(197)を含む多価免疫原性組成物が奏する、本件特許明細書に記載の効果は、これらの証拠の記載からは当業者にも予測できない顕著な効果というべきものである。
よって、v13PnC-CRM_(197)を含む多価免疫原性組成物は、甲第1?9号証の1から当業者が容易に発明し得たものではなく、当然、その製造方法の発明である本件訂正発明25は、甲第1?9号証の1から当業者が容易に発明し得たものではない。

(エ)無効理由2-3(進歩性違反)について
無効理由2-3について、請求人は、甲第9号証の1には、13種の血清型(1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F及び23F)の莢膜多糖類のコンジュゲートワクチンが記載されており、さらに甲第9号証の1には、7種の血清型(4、6B、9V、14、18C、19F及び23F)の莢膜多糖類とCRM_(197)とをコンジュゲートした7価のコンジュゲートワクチンが記載されているから、上記13種の血清型の莢膜多糖類のコンジュゲートワクチンにおいても同じキャリアタンパク質を含むものとする動機付けは十分にあり、甲第1?8号証には、ストレプトコッカス・ニューモニエの莢膜多糖類-タンパク質コンジュゲートのキャリアタンパク質としてCRM_(197)を用いることが記載されているから、本件訂正発明25は、甲第1?8号証に記載の事項を甲第9号証の1に記載の発明に適用して、当業者が容易に発明し得ると主張する。
そこでまず、甲第9号証の1に13種の血清型の莢膜多糖類のコンジュゲートワクチンの発明が記載されているといえるかを検討する。
摘記事項甲9-(1)のとおり、甲第9号証の1には、肺炎球菌防御のためのコンジュゲートワクチンとして、9価、11価、13価が開発中であることが記載され、摘記事項甲9-(2)(3)を併せ見れば、該13価のコンジュゲートワクチンは、血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F及び23Fの多糖類を含むものであることまでは理解できる。
しかし、「開発中である」との記載のみでは、該13価のコンジュゲートワクチンがどのような開発段階にあって、どのような試験において、ワクチンとしての効果あるいは免疫原性についてどのような結果が得られたのかが当業者にも全く理解できないから、甲第9号証の1の記載では、13種の血清型の莢膜多糖類のコンジュゲートが肺炎球菌に対するワクチンとしての効果を有することを当業者が認識できるとはいえない。
したがって、13種の血清型の莢膜多糖類のコンジュゲートワクチンの発明が甲第9号証の1に記載されているとはいえない。
以上のとおり、甲第9号証の1には、13種の血清型の莢膜多糖類のコンジュゲートワクチンの発明が記載されているとは認められないから、請求人のその余の主張を検討するまでもなく、無効理由2-3は失当である。
よって、本件訂正発明25は、無効理由2-3に該当しない。

なお、仮に、13種の血清型の莢膜多糖類のコンジュゲートワクチンが甲第9号証の1に記載された発明であるとしても、甲第1?9号証の1に記載の発明からv13PnC-CRM_(197)を含む多価免疫原性性組成物を発明することが容易であるとは認められず、本件訂正発明25が、無効理由2-3に該当しないことに変わりないことを、念のため、以下に付記する。
甲第9号証の1には、ストレプトコッカスニューモニエの7価コンジュゲートワクチンにおいてCRM_(197)をキャリア蛋白として用いることが記載されており(摘記事項甲9-(2))、甲第1?7号証にも、ストレプトコッカスニューモニエの多価コンジュゲートワクチンにおけるキャリアタンパク質としてCRM_(197)が記載されている(摘記事項甲1-(1)、摘記事項甲2-(1)、摘記事項甲3-(1)、摘記事項甲4-(2)、摘記事項甲5-(1)(2)、摘記事項甲6-(1)(2)、摘記事項甲7-(1))。また、甲第8号証には、ストレプトコッカスニューモニエの多価コンジュゲートワクチンが記載されているが(摘記事項甲8-(1))、そのキャリアタンパク質がCRM_(197)であることは明らかにされていない。
しかし、甲第1?4号証には、CRM_(197)がキャリアタンパク質の選択肢の一つとして記載されているだけで、ストレプトコッカスニューモニエの13種類の血清型の莢膜多糖類のコンジュゲートワクチン、すなわち13価コンジュゲートワクチンにおいてCRM_(197)が実際に有用な免疫原性を与えることについては記載も示唆もないのは既述のとおりである。また、甲第5?7、9号証の1には、7価か、あるいは9価又は11価のコンジュゲートワクチンにおいてCRM_(197)をキャリアタンパク質とすることが記載されてはいるが、それらの記載は、7価のコンジュゲートワクチン、あるいは、せいぜい11価までのコンジュゲートワクチンにおいて、CRM_(197)をキャリアタンパク質とすることを示すに過ぎず、それらの多価コンジュゲートワクチンで用いられるキャリアタンパク質と同じキャリアタンパク質を13価コンジュゲートワクチンで用いることを示唆するものではない。
さらに、上記のとおり、免疫干渉の予測が困難であるのが技術常識であり、免疫干渉を回避するための手段の一つとして、複数のキャリアタンパク質を用いることも示唆されていたことに鑑みれば、CRM_(197)について記載されていない甲第8号証やCRM_(197)が選択肢の一つとして記載されるだけの甲第1?4号証からはもちろん、せいぜい11価までのコンジュゲートワクチンについてしか記載されていない甲第5?7号証からも、13価コンジュゲートワクチンにおいて十分な免疫原性あるいはワクチンとしての効果が得られることを予測して、キャリアタンパク質として、CRM_(197)のみを選択することが、当業者に容易であったとはいえないし、v13PnC-CRM_(197)を含む多価免疫原性組成物が奏する効果は、これらの証拠の記載からは当業者にも予測できない顕著な効果というべきものである。
よって、v13PnC-CRM_(197)を含む多価免疫原性組成物は、甲第1?9号証の1から当業者が容易に発明し得たものではなく、当然、その製造方法の発明である本件訂正発明25は、甲第1?9号証の1から当業者が容易に発明し得たものではない。

さらに、請求人は、本件訂正発明25の進歩性に関し、「プレベナー(登録商標)が7価の肺炎球菌多糖コンジュゲートワクチン(PCV)として成功しているならば、当業者にとって、13価のPCVを開発するにあたり、プレベナー(登録商標)と同様に、13価の莢膜多糖類の各々をCRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートする構成とすることに強い動機付けが存在する。すなわち、プレベナー(登録商標)の成功を目の当たりにした当業者は、13価のPCVの開発において、CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートする構成とすることを最初に選択するといえるから、仮に免疫干渉に関する問題があるとしても、訂正発明に係る13価のPCVの構成に想到することは容易なことである。また、甲第1?9号証の1には13価のPCVの開発の目的やその方向性が記載されていることから、当業者であれば、これらの文献の記載より、得られる13価のPCVの効果についても十分に想定し得るから、訂正発明の効果は、甲第1?9号証の1に記載の引用発明から想定し得る範囲内に過ぎない」旨主張する。
しかし、免疫干渉の存在やその事前予測の困難性に鑑みれば、7価にとどまるプレベナー(登録商標)の成功例をもって、13価のPCVの成功を予測し得るという請求人の上記主張は、根拠に乏しいものであり、採用できない。

(オ)無効理由3-1(明確性要件違反)について
本件訂正により、請求項25の「化合」なる記載は「混合」に訂正された。そして、「混合」なる記載の意味は明確である。
よって、本件訂正発明25について、無効理由3-1は解消している。

(カ)無効理由3-2(実施可能要件違反及びサポート要件違反)について
本件訂正後の請求項25の記載では、多価免疫原性組成物における多糖類-タンパク質コンジュゲートは13種類の血清型(1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F及び23F)の莢膜多糖類からなるもののみであるから、本件訂正発明25について、無効理由3-2は解消している。

(キ)無効理由3-3(実施可能要件違反及びサポート要件違反)について
(a)本件特許明細書の記載
本件特許明細書には、背景技術、本件発明が解決しようとする課題、課題を解決するための手段について、以下のとおり記載されている。
「【0002】
ストレプトコッカスニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)は、世界中の乳児および子どもの髄膜炎、肺炎、および重度侵襲性疾患の主な原因である。・・・7価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン(7vPnC、Prevnar(登録商標))は、その種の中でも、乳児および子どもの侵襲性疾患および中耳炎に対して高い免疫原性および効果を有することが示された最初のワクチンであった。・・・Prevnarは、CRM_(197)と呼ばれるキャリアタンパク質とそれぞれコンジュゲートした、血清型4、6B、9V、14、18C、19F、および23Fからの莢膜多糖類を含有する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
血清型1、3、5、6A、7F、および19Aに起因する肺炎球菌による侵襲性疾患の相対的負荷の大きさおよび重要性を鑑みると、これらの血清型をPrevnar処方に加えることによって、米国および欧州では90%超、ならびにアジアおよびラテンアメリカでは70%?80%にまで、侵襲性疾患への適用範囲が高まるはずである。このワクチンは、Prevnar以上に適用範囲を著しく拡大し、血清群交差防御の制限に依存しない6Aおよび19Aへの適用範囲を提供するはずである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、一般に、13種類の異なる多糖類-タンパク質コンジュゲートを・・・含む多価免疫原性組成物を提供し、そのコンジュゲートのそれぞれは、キャリアタンパク質にコンジュゲートしたストレプトコッカスニューモニエの異なる血清型からの莢膜多糖類を含有する。・・・より具体的には、本発明は、7vPnCワクチン(4、6B、9V、14、18C、19F、および23F)の7種類の血清型に加えて、6種類のさらなる血清型(1、3、5、6A、7F、および19A)を含む13価の肺炎球菌コンジュゲート(13vPnC)組成物を提供する。
【0007】
本発明はまた、莢膜多糖類がストレプトコッカスニューモニエの血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fからのものであり、キャリアタンパク質がCRM_(197)である多価免疫原性組成物を提供する。」(第4頁第7行?第5頁第38行)
(b)実施可能要件違反・サポート要件違反についての判断
上記(a)の記載から、本件訂正発明25は、肺炎球菌ワクチンとして従来知られていた「Prevenar(登録商標)」以上の適用範囲を有する肺炎球菌ワクチンを提供することを課題とし、その解決手段は、13種類の肺炎球菌莢膜多糖(血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F及び23F)が別々にCRM_(197)にコンジュゲートした多糖類-タンパク質コンジュゲートを所定の方法で製造し、使用することであると理解でき、上記の課題が実際に解決できることを裏付ける記載として、本件特許明細書には、13種類の血清型の多糖類をそれぞれ還元的アミノ化法によってCRM_(197)にコンジュゲートした多糖類-タンパク質コンジュゲートを含む免疫原性組成物を製造し、ラビットでの免疫応答を確認したことも記載されている(実施例1?16)。
そして、多糖類-タンパク質コンジュゲートにおいて、多種多様なタンパク質や莢膜多糖類に免疫原性があることが、本件特許の優先日当時に周知であったことからすれば、上記実施例で確認された免疫応答の原因となっているのが、多糖類-タンパク質コンジュゲートの大部分を占める多糖類及びタンパク質(CRM_(197))の部分であって、コンジュゲーションによって形成される部分が、少なくともその主たる原因でないものと理解される。
以上のことからすると、本件訂正発明25の課題を解決するために必須の技術的事項は、本件訂正後の請求項25に記載のとおりのものと認められ、本件訂正発明25において、多糖類-タンパク質コンジュゲートが還元的アミノ化法によるものであることが、上記課題の解決に必須の技術的事項として、特許請求の範囲に記載されなければならない理由はない。
したがって、本件訂正発明25は、請求項25に記載の技術的事項によって、上記の課題を解決できる、すなわち、「Prevnar(登録商標)」以上の適用範囲を有する肺炎球菌ワクチンを提供できるものであるから、特許法第36条第6項第1号の要件(サポート要件)を満たしている。また、当業者は、周知のコンジュゲート法を用いることによって、過度の試行錯誤を要することなく、本件訂正発明25に係る多価免疫原性組成物を製造し、ワクチンとして使用し得るものといえるから、本件訂正発明25は、特許法第36条第4項第1号の要件(実施可能要件)を満たしている。
よって、本件訂正発明25は、無効理由3-3に該当しない。
(c)無効理由3-3についての請求人の主張について
請求人は、摘記事項甲12-(2)、摘記事項甲15-(1)、(2)の点を摘示し、キャリアタンパク質と莢膜多糖類とのコンジュゲーションの形態が、コンジュゲートワクチンの免疫原性に影響を与えることは、本件優先日前において、技術常識であったといえるから、あらゆるコンジュゲーションの形態で得られたワクチンを含み得る本件特許発明は、サポート要件及び実施可能要件を満たさないと主張するので、この点について検討する。
まず、摘記事項甲12-(2)によれば、甲第12号証には、4種のHibコンジュゲートワクチンにおいて、多糖のサイズ、キャリア蛋白の種類、結合のタイプが異なっており、誘導される免疫応答の型も異なる旨記載されている。
また、摘記事項甲15-(1)、(2)によれば、甲第15号証には、血清の殺菌活性において、還元アミノ化法でコンジュゲートしたものと認められる、CCPS-P64k_(R)なるコンジュゲートを含むワクチンが、カルボジイミド法でコンジュゲートしたワクチンを含む他のワクチンより3倍優れる旨記載され、さらに、CCPS-64k_(R)で免疫した群のプール血清のみで防御効果が認められる旨記載されている。
以上の記載からすると、確かに、多糖類-タンパク質コンジュゲートを含む免疫原性組成物において、コンジュゲーションの形態が、当該多糖類-タンパク質コンジュゲートの免疫原性あるいはワクチンとしての効果に全く影響しないとはいえない。
しかし、上記摘記事項の記載は、多糖類-タンパク質コンジュゲートを含む免疫原性組成物の中には、当該多糖類-タンパク質コンジュゲートの免疫原性あるいはワクチンとしての効果が、そのコンジュゲーションの形態に影響されるものがあることを示唆するだけのものであり、還元的アミノ化法以外の方法でコンジュゲートされた多糖類-タンパク質コンジュゲートを含む本件訂正発明25に係る多価免疫原性組成物が、本件訂正発明25の課題を解決し得ないことを当業者に推認させるものではないし、乙第21号証には、ストレプトコッカスニューモニエ(肺炎球菌)コンジュゲートワクチンにおいて、還元アミノ化法とはコンジュゲーションの形態が異なる、カルボジイミド縮合による方法でコンジュゲートされたものが同様にワクチンとしての効果を奏することも示されているから(摘記事項乙21-(1)?(4))、甲第12号証及び甲第15号証の記載から直ちに、本件訂正発明25がサポート要件・実施可能要件を満たすとする上記の判断が覆されるものではない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

(ク)本件訂正発明25についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正発明25は、請求人の主張するいずれの無効理由にも該当しないから、本件訂正後の請求項25に係る特許は、無効理由1、2-1、2-2、2-3、3-1、3-2又は3-3によって無効にすべきものではない。

(2)本件訂正発明27について
(ア)無効理由1及び2-1について
甲第1?4号証にv13PnC-CRM_(197)を含む多価免疫原性組成物の発明が記載されているといえないことは、上記の第6 2(1)(ア)(a)?(d)において説示したとおりであるから、本件訂正発明25と同様に、上記v13PnC-CRM_(197)を含む多価免疫原性組成物の製造方法である本件訂正発明27は、無効理由1及び無効理由2-1に該当しない。

(イ)無効理由2-2及び2-3について
無効理由2-2について、請求人は、甲第5?7号証には、ストレプトコッカス・ニューモニエの多糖(血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23F)をCRM_(197)にコンジュゲートした11価コンジュゲートを含む多価免疫原性組成物が記載されており、甲第1?4、8、9号証の1には、血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23Fの血清型の莢膜多糖類を含む11価の多価免疫原性組成物に6A、19Aの2つの血清型の多糖をさらに加えて13価の多価免疫原性組成物とすることが記載されており、13価の多価免疫原性組成物の効果も当業者が予測し得るものであるから、本件訂正発明27は、甲第5?7号証に記載の発明に甲第1?4、8、9号証の1に記載の発明を適用することにより、容易に発明し得るものであると主張する。
また、無効理由2-3について、請求人は、甲第9号証の1には、13種の血清型(1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F及び23F)の莢膜多糖類のコンジュゲートワクチンが記載されており、7種の血清型(4、6B、9V、14、18C、19F及び23F)の莢膜多糖類とCRM_(197)とをコンジュゲートした7価のコンジュゲートワクチンも記載されている、また、甲第1?8号証には、ストレプトコッカス・ニューモニエの莢膜多糖類-タンパク質コンジュゲートのキャリアタンパク質としてCRM_(197)を用いることが記載されている、したがって、本件訂正発明27は、甲第1?8号証に記載の事項を甲第9号証の1に記載の発明に適用して、当業者が容易に発明し得るものである、と主張する。
しかし、無効理由2-2は、11価のコンジュゲートを含む多価免疫原性組成物の発明が甲第5?7号証に記載されているとはいえない点で、また、無効理由2-3は、13価の多価コンジュゲートワクチンの発明が甲第9号証の1に記載されているとはいえない点で、いずれも失当であるのは、上記第6 2(1)(ウ)、(エ)において説示したとおりであり、この点は、本件訂正発明27についても同様であるから、本件訂正発明27は、無効理由2-2、2-3に該当しない。
なお、仮に、甲第5?7号証又は甲第9号証の1に上記の11価のコンジュゲートを含む多価免疫原性組成物の発明又は13価の多価コンジュゲートワクチンの発明が記載されているとしても、本件訂正発明27が甲第1?9号証の1に記載の発明から容易に発明し得るものでないことも、本件訂正発明25の場合と同様である。

(ウ)無効理由3-1、3-2について
本件訂正発明25と同様、本件訂正により、本件訂正発明27について、無効理由3-1、3-2は解消している。

(エ)無効理由3-3について
本件訂正発明27が、本件訂正発明25と同様の課題を有し、請求項27に記載の技術的事項によってその課題を解決できることは、本件訂正発明25の場合と同様である。
したがって、本件訂正発明25と同様に、本件訂正発明27は、サポート要件及び実施可能要件を満たすものである。
よって、本件訂正発明27は、無効理由3-3に該当しない。

(オ)本件訂正発明27についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正発明27は、請求人の主張するいずれの無効理由にも該当しないから、本件訂正後の請求項27に係る特許は、無効理由1、2-1、2-2、2-3、3-1、3-2又は3-3によって無効にすべきものではない。

第7 むすび

以上のとおり、本件訂正請求に係る訂正は適法であり、本件の請求項25、27に係る特許について請求人が主張する無効理由はいずれも理由がないものである。
審判費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とすべきものとする。
よって、結論のとおり、審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類-タンパク質コンジュゲートを、生理学的に許容できるビヒクルと共に含む多価免疫原性組成物であって、ここで前記多糖類-タンパク質コンジュゲートが13種類の異なる多糖類-タンパク質コンジュゲートからなり、そのコンジュゲートの各々がキャリアタンパク質にコンジュゲートしたストレプトコッカスニューモニエの異なる血清型からの莢膜多糖類を含み、その莢膜多糖類が血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fから調製され、ここで前記キャリアタンパク質がCRM_(197)であり、ここでコンジュゲーションが還元的アミノ化により実施されている、多価免疫原性組成物。
【請求項2】
さらにアジュバントを含む、請求項1記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
アジュバントがリン酸アルミニウムであるところの、請求項2記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
ストレプトコッカスニューモニエ莢膜多糖類コンジュゲートに対する免疫応答を誘発するための、請求項1から3のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
ワクチン投与に用いるための、請求項1から3のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
最初のワクチン投与後、投与対象が適切な間隔で1回または数回の追加免疫を受けるワクチン投与に用いるための、請求項1から3のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
免疫スケジュールが生後2、4、6、および12?15カ月である、乳児および幼児のワクチン投与に用いるための、請求項1から3のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
青少年および成人のワクチン投与に用いるための、請求項1から3のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
13種類の異なる多糖類-タンパク質コンジュゲートを、生理学的に許容できるビヒクルと共に含む多価免疫原性組成物であって、そのコンジュゲートの各々がキャリアタンパク質にコンジュゲートしたストレプトコッカスニューモニエの異なる血清型からの莢膜多糖類を含み、その莢膜多糖類が血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fから調製され、ここで前記キャリアタンパク質がCRM197であり、ここで各用量が4.4μgの6Bを除き各多糖類2.2μgを含む、多価免疫原性組成物。
【請求項10】
ストレプトコッカスニューモニエ莢膜多糖類コンジュゲートに対する免疫応答を誘発するための、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
ワクチン投与に用いるための、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
最初のワクチン投与後、投与対象が適切な間隔で1回または数回の追加免疫を受けるワクチン投与に用いるための、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
免疫スケジュールが生後2、4、6、および12?15カ月である、乳児および幼児のワクチン投与に用いるための、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
青少年および成人のワクチン投与に用いるための、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
13種類の異なる多糖類-タンパク質コンジュゲートを、生理学的に許容できるビヒクルと共に含む多価免疫原性組成物であって、そのコンジュゲートの各々がキャリアタンパク質にコンジュゲートしたストレプトコッカスニューモニエの異なる血清型からの莢膜多糖類を含み、その莢膜多糖類が血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fから調製され、ここで前記キャリアタンパク質がCRM197であり、ここで各0.5ml用量が4.4μgの6Bを除き各多糖類2.2μg、CRM197キャリアタンパク質29μg、元素アルミニウム0.125mg(リン酸アルミニウム0.5mg)アジュバント、ならびに賦形剤としての塩化ナトリウムおよびコハク酸ナトリウム緩衝液を含む、多価免疫原性組成物。
【請求項16】
ストレプトコッカスニューモニエ莢膜多糖類コンジュゲートに対する免疫応答を誘発するための、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
ワクチン投与に用いるための、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
最初のワクチン投与後、投与対象が適切な間隔で1回または数回の追加免疫を受けるワクチン投与に用いるための、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
免疫スケジュールが生後2、4、6、および12?15カ月である、乳児および幼児のワクチン投与に用いるための、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
青少年および成人のワクチン投与に用いるための、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
各々がCRM_(197)にコンジュゲートした血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fの肺炎球菌莢膜多糖類の滅菌液体処方物を充填された単回用量シリンジであって、各0.5mL用量が、6Bを4.4μgとすることを除き、各糖類を2.2μgにて;CRM_(197)キャリアタンパク質を29μgにて;アルミニウム元素を0.125mg(リン酸アルミニウムを0.5mg)のアジュバントにて;ならびに賦形剤としての塩化ナトリウムおよびコハク酸ナトリウム緩衝液を含有するように処方されるところの、単回用量シリンジ。
【請求項22】
筋肉内投与するための、請求項21に記載の単回用量シリンジ。
【請求項23】
各々がCRM_(197)にコンジュゲートした血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fの肺炎球菌莢膜多糖類の滅菌液体処方物を充填された単回用量シリンジであって、各0.5mL用量が、6Bを4μgとすることを除き、各糖類を2μgにて;CRM197キャリアタンパク質を29μgにて;アルミニウム元素を0.125mg(リン酸アルミニウムを0.5mg)のアジュバントにて;ならびに賦形剤としての塩化ナトリウムおよびコハク酸ナトリウム緩衝液を含有するように処方されるところの、単回用量シリンジ。
【請求項24】
筋肉内投与するための、請求項23に記載の単回用量シリンジ。
【請求項25】
多糖類-タンパク質コンジュゲートを生理学的に許容できるビヒクルとともに含む多価免疫原性組成物の製法であって、ここで前記多糖類-タンパク質コンジュゲートが13種類の異なる多糖類-タンパク質コンジュゲートからなり、各コンジュゲートは異なる莢膜多糖類CRM_(197)タンパク質コンジュゲートであり、ここで
莢膜多糖類はストレプトコッカスニューモニエの血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fから調製され、各々の多糖類は遠心分離、沈殿、限外ろ過およびカラムクロマトグラフィーを通じて精製され、
精製された多糖類はキャリアタンパク質CRM_(197)と反応することができるように化学的に活性化され、
いったん活性化されると、各莢膜多糖類は別々にキャリアタンパク質CRM_(197)とコンジュゲートして複合糖質を形成し、
各々の複合糖質は精製および混合され免疫原性組成物に調製される、
製法。
【請求項26】
コンジュゲーションが還元的アミノ化により実施される、請求項25に記載の製法。
【請求項27】
多糖類-タンパク質コンジュゲートを生理学的に許容できるビヒクルとともに含む多価免疫原性組成物の製法であって、ここで前記多糖類-タンパク質コンジュゲートが13種類の異なる多糖類-タンパク質コンジュゲートからなり、そのコンジュゲートの各々はストレプトコッカスニューモニエの異なる血清型からの、キャリアタンパク質にコンジュゲートした莢膜多糖類であり、
莢膜多糖類は血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fから調製され、
ここで前記キャリアタンパク質はCRM_(197)であり、
ここで各々の複合糖質が精製されたのち混合され免疫原性組成物に調製される、
製法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-05-11 
結審通知日 2016-05-13 
審決日 2016-05-30 
出願番号 特願2009-106688(P2009-106688)
審決分類 P 1 123・ 536- YAA (A61K)
P 1 123・ 113- YAA (A61K)
P 1 123・ 832- YAA (A61K)
P 1 123・ 537- YAA (A61K)
P 1 123・ 121- YAA (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 基章瀬下 浩一  
特許庁審判長 内藤 伸一
特許庁審判官 關 政立
新留 素子
登録日 2013-01-11 
登録番号 特許第5173920号(P5173920)
発明の名称 多価肺炎球菌多糖類-タンパク質コンジュゲート組成物  
代理人 小野 新次郎  
代理人 四本 能尚  
代理人 小野 新次郎  
代理人 龍田 美幸  
代理人 飯村 敏明  
代理人 森下 梓  
代理人 廣瀬 しのぶ  
代理人 一宮 維幸  
代理人 廣瀬 しのぶ  
代理人 四本 能尚  
代理人 森下 梓  
代理人 飯村 敏明  
代理人 龍田 美幸  
代理人 一宮 維幸  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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