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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1321592
審判番号 不服2015-13883  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-23 
確定日 2016-11-09 
事件の表示 特願2011-522023「電気輸送部品とその製造方法、並びに電気光学装置および光電気装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月11日国際公開、WO2010/016763、平成25年 1月10日国内公表、特表2013-501307〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続の経緯
本願は,特許法184条の3第1項の規定により,2009年(平成21年)8月5日にされたとみなされる特許出願であって,その後の手続の概要は,以下のとおりである。
平成23年 3月 8日:翻訳文提出
平成25年 5月27日:拒絶理由通知(同年6月4日発送)
平成25年10月 3日:意見書
平成25年10月 3日:手続補正書
平成26年 4月30日:拒絶理由通知(同年5月7日発送)
平成26年 8月18日:意見書
平成26年 8月18日:手続補正書
平成26年 9月16日:拒絶理由通知(同年同月24日発送)
平成27年 1月26日:意見書
平成27年 1月26日:手続補正書
平成27年 3月19日:拒絶査定(同年同月24日送達)
平成27年 7月23日:手続補正書(以下「本件補正」という。)
平成27年 7月23日:審判請求

なお,国際出願におけるパリ条約による優先権主張は,特許協力条約規則17.1の規定に定められた手続を満たしていないため,認められない。

2 本件補正について
(1) 本件補正の内容
ア 平成27年1月26日提出の手続補正書による手続補正によって補正された(以下「本件補正前」という。)特許請求の範囲の請求項1及び3は,以下のとおりである。

「【請求項1】
電気輸送部品と電気光学機能構造(40;140)を備えた電気光学装置であって,
前記電気輸送部品(10;110;210;310;60)には,第1の無機層(16;116;236;66)と,有機分断層(12;112;62)と,第2の無機層(18;118;68)とを有するバリア構造が設けられた基板(20;120;220)が備えられ,
前記有機分断層は前記第1および第2の無機層の間に挟まれ,前記有機分断層によって画成された平面には前記有機分断層内の少なくとも1つのトレンチ(13;113)を完全に充填する少なくとも1つの導電構造(14;114;314;414;414-1,414-2;514;614-1,614-2;64)が分散され,
前記無機層(18)の1つは前記導電構造(14;14-1,14-2;64)を前記有機分断層(12;62)から隔て,
前記電気光学機能構造(40;140)は,前記電気輸送部品の主表面に設けられ,第1および第2の導電層(42,46;142,146)と,前記導電層間に挟まれた少なくとも1つの電気光学機能層(44;144)とを備え,前記導電層の少なくとも1つは前記少なくとも1つの導電構造(14-1,14-2;114-1,114-2;
64)に電気的に結合される,
ことを特徴とする電気光学装置。」

「【請求項3】
前記少なくとも1つのトレンチ(13;113)は前記有機分断層(12;112;62)の深さ全体に広がる,請求項1または2に記載の装置。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1は,以下のとおりである。(下線は,当審が付した。)

「【請求項1】
電気輸送部品と電気光学機能構造(40;140)を備えた電気光学装置であって,
前記電気輸送部品(10;110;210;310;60)には,第1の無機層(16;116;236;66)と,有機分断層(12;112;62)と,第2の無機層(18;118;68)とを有するバリア構造が設けられた基板(20;120;220)が備えられ,
前記有機分断層は前記第1および第2の無機層の間に挟まれ,前記有機分断層によって画成された平面には前記有機分断層内の少なくとも1つのトレンチ(13;113)を完全に充填する少なくとも1つの導電構造(14;114;314;414;414-1,414-2;514;614-1,614-2;64)が分散され,
前記少なくとも1つのトレンチ(13;113)は前記有機分断層(12;112;62)の深さ全体に広がり,
前記無機層(18)の1つは前記導電構造(14;14-1,14-2;64)を前記有機分断層(12;62)から隔て,
前記電気光学機能構造(40;140)は,前記電気輸送部品の主表面に設けられ,第1および第2の導電層(42,46;142,146)と,前記導電層間に挟まれた少なくとも1つの電気光学機能層(44;144)とを備え,前記導電層の少なくとも1つは前記少なくとも1つの導電構造(14-1,14-2;114-1,114-2;64)に電気的に結合される,
ことを特徴とする電気光学装置。」

(2) 補正について
本件補正は,本件補正前の特許請求の範囲について補正しようとするものであるところ,本件補正前の請求項3は,請求項1又は請求項2の記載を選択的に引用して記載されたものである。そして,本件補正前の請求項1の記載を引用して記載された本件補正前の請求項3(以下「本件補正前の請求項3」という。)に係る発明と,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)は,発明として相違するところがないから,本件補正後の請求項1は,本件補正前の請求項3を,独立形式に書き改めて記載したものである。そうしてみると,本件補正は,本件補正前の請求項1を削除して,本件補正前の請求項3を本件補正後の請求項1にしたものであるから,本件補正前の請求項1の補正という観点からみれば,本件補正は,特許法17条の2第5項1号に掲げる,特許法36条5項に規定する請求項の削除を目的とする補正である。
したがって,請求項1に係る本件補正は適法になされたものである。

3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は,概略,この出願の請求項3に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の引用例3及び1に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用例3:国際公開2009/004560号
引用例1:特開2005-329680号公報

第2 当審判体の判断

1 引用例の記載及び引用発明等

(1) 引用例3の記載
引用例3には,以下の事項が記載されている。

ア 「FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a method for forming a patterned layer on a substrate and more particularly to a method for providing extra metallization to an organic light emitting device, OLED.」(1頁6行?9行)
(日本語訳)
「発明の技術分野
本発明は,パターン化された層を基板上に形成するための方法に関し,より詳しくは,本発明は,追加の金属被覆を有機発光素子,OLEDに供するための方法に関する。」

イ 「For large area OLED lighting, a large current is required to drive the device. For bottom emissive small area OLEDs the cathode usually has a low enough resistance, however for large area lighting applications the resistance has to be at least 10 times lower. Using common thin film anode and cathode materials, e.g. ITO and Al respectively, results in a large sheet resistance and the large currents give rise to substantial voltage drop.」(2頁1行?5行)
(日本語訳)
「広いエリアのOLED照明用には,大きな電流が素子を駆動するために必要とされる。底面発光型の小さなエリアのOLEDでは,陰極は,通常十分に低い抵抗をもつが,しかしながら広いエリアの照明アプリケーション用には,抵抗は,少なくとも10倍低くなければならない。通常の薄膜の陽極材料及び陰極材料,例えばITO及びAlをそれぞれ用いることによって,大きなシート抵抗を結果として生じ,大きな電流が,かなりの電圧降下を引き起こす。」

ウ 「The voltage drop gives rise to inhomogeneous luminance of the large area. The sheet resistance of the anode and cathode metals sets a limit to the maximum size of a uniformly lit area, a light tile, which has an area in the order of a few square centimetre in the current material systems. For large area applications the sheet resistance of the metal should be well below 0.01 Ω per square .」(2頁11行?15行)
(日本語訳)
「電圧降下は,広いエリアの不均一な輝度を引き起こす。陽極金属及び陰極金属のシート抵抗は,一様に照らされたエリア,即ちライト・タイルの最大サイズに限界を設けてしまい,この限界は,現在の材料システムでは,数平方センチメートルのオーダーである。広いエリアのアプリケーション用には,金属のシート抵抗は,0.01オーム毎スクウェア以下でなければならない。」

エ 「Techniques to further increase the area of the light tile are known. In these techniques additional metallization is added onto the substrate to decrease the sheet resistance. Referring to Fig. 1b, which illustrates a prior art light tile, a large area tile 40 is subdivided into subtiles ,or pixels, 44 for which extra fine metallization must be used, which metallization pattern is hereinafter referred to as a mash 42. The subtiles 44 are interconnected by good conducting metal tracks, which tracks are herein after referred to as a grid 41. The additional metallization acts as a shunt and provides an overall lower sheet resistance. For display purposes the anode requires extra metallization for shunting according to the description above.」(2頁16行?24行)
(日本語訳)
「ライト・タイルのエリアを更に増大させる技術が知られている。これらの技術においては,追加の金属被覆が,シート抵抗を減少させるために,基板上に加えられる。従来技術のライト・タイルを例示している図1bを参照すると,広いエリアのタイル40は,サブ・タイル,即ち画素44に再分割され,当該サブ・タイル,即ち画素44に対して追加の微細な金属被覆が用いられなければならず,この金属被覆のパターンをこれ以降マッシュ42と呼ぶ。サブ・タイル44は良好な導電性をもつ金属トラックによって相互接続され,当該金属トラックを,これ以降グリッド41と呼ぶ。追加された金属被覆は分路として働き,全体的に低いシート抵抗を供する。ディスプレー用には,陽極は,上の説明によって分路するための追加の金属被覆を必要とする。」

オ 「For the implementation of the extra metallization for shunting in an OLED two different technologies are currently used to perform the two types of patterned metallization: 1) For the mash manufacture thin film technology is used. This becomes rather expensive due to the use of photolithography and long deposition times in expensive machines. 2) For the grid manufacture thick film technology is used, which adds extra fabrication steps in the manufacturing of the display. Thus, the manufacture of the patterned metallizations is associated with drawbacks of being complicated and expensive.」(2頁25行?3頁5行)
(日本語訳)
「OLEDの分路用の追加の金属被覆の実現のために,二つの異なる技術が二つのタイプのパターン化された金属被覆を実施するために,現在用いられている。1) マッシュの製造用には,薄膜技術が用いられる。これは,フォトリソグラフィーの使用及び高価な機械での長い堆積時間に起因して,かなり高価になる。2) グリッド製造用には厚膜技術が用いられ,これは追加の製造ステップをディスプレーの製造に加える。このように,パターン化された金属被覆の製作は,複雑で高価であるという欠点を伴う。」

カ 「It is an object of the present invention to provide an improved method for providing patterned metallization to display devices, which alleviates the above-mentioned drawbacks of the prior art.
This object is achieved by a method that utilizes an imprinting process according to the present invention as defined in claim 1.」(3頁8行?12行)
(日本語訳)
「本発明の目的は,パターン化された金属被覆をディスプレー装置に供し,従来技術の上述の欠点を軽減する改善された方法を供することである。
この目的は,請求項1に記載の本発明による押印プロセスを利用する方法によって実現される。」

キ 「Thus, in accordance with an aspect of the present invention, there is provided a method for forming a patterned layer on a substrate by means of an imprinting process. Practically this comprises the steps of: providing a first patterning means for defining a pattern, providing a first layer on a surface of the substrate, providing a pattern of recesses in the first layer by imprinting the first layer with the patterning means, curing the first layer, performing a first surface treatment onto the first layer to make the surface of the first layer hydrophilic, performing a second surface treatment onto a selected subarea of the surface of the first layer to make the subarea hydrophobic, said subarea including surface portions between said recesses and excluding the recesses, and; depositing a conducting pattern material into the recesses.」(3頁13行?26行)
(日本語訳)
「このように,本発明の態様によって,押印プロセスを用いてパターン層を基板上に形成する方法が供される。実際には,押印プロセスは,パターンを規定するための第1のパターニング手段を供するステップと,第1の層を基板の表面上に供するステップと,パターニング手段を用いて第1の層を押印することによって,第1の層に凹部のパターンを供するステップと,第1の層を硬化させるステップと,第1の層の表面を親水性にするために,第1の表面処理を第1の層上に実施するステップと,複数の前記凹部間の表面部分を含み,凹部自体は除いたサブエリアを疎水性にするために,第2の表面処理を第1の層の表面の選択されたサブエリア上に実施するステップと,導電性のパターン材を凹部に堆積するステップと,を含んでいる。」

ク 「Hence, there is provided a method for forming a patterned layer on a substrate which utilizes imprinting a patterning means into a first layer to create a pattern of recesses. By utilizing the imprinting technique a low cost process for the manufacturing of patterned substrates is achieved, which process is fast and do not need expensive lithographic equipment, lithographic masks, vacuum deposition equipment and time consuming processing steps known from prior art. Once the patterning means for defining a pattern is provided, this may be used repeatedly in a manufacturing line. It should be noted that the patterned layer substrate resulting from this method is useful for manufacturing other devices than OLED devices and photovoltaic devices such as organic solar cells , although mainly OLED devices have been discussed above in the background of the invention.」(3頁27行?4頁2行)
(日本語訳)
「これ故,凹部のパターンをつくるために,第1の層にパターニング手段を押印することを利用して,パターン化された層を基板上に形成する方法が供される。押印技術を利用することによって,パターン化された基板の製造のための低コストのプロセスが実現され,当該プロセスは高速であり,従来技術で知られている高価なリソグラフィ装置,リソグラフィ・マスク,真空蒸着装置,及び時間がかかる処理は必要としない。一旦パターンを規定するためのパターニング手段が供されると,これは製造ラインで繰り返し使われることができる。本発明の背景部では,主にOLED素子が説明されたにもかかわらず,本方法から生じたパターン化された層をもつ基板は,OLED素子及び有機太陽電池などの光起電力素子以外の素子を製造することに役立つ点に留意する必要がある。」

ケ 「In accordance with an embodiment of the method, as defined in claim 4, the method further comprises the steps of:
masking the first and second layers providing unmasked areas,
depositing a third layer onto the unmasked areas.
Thereby, the method provides an advantageous way of creating a combined pattern. A first pattern is formed as the recesses are filled with the material of the second layer, and this first pattern is then combined with the third layer, which is preferably chosen to be a thinner coating which is provided onto selected, unmasked, areas of the patterned first layer.」(4頁23行?31行)
(日本語訳)
「請求項4で規定された方法の実施例によれば,当該方法は,マスクされていないエリアを供して,第1の層及び第2の層をマスキングするステップと,第3の層を,マスクされていないエリアに堆積するステップと,を更に含んでいる。
これにより,当該方法は,組み合わせられたパターンをつくる好都合な態様を供する。凹部が第2の層の材料で満たされるにつれて,第1のパターンが形成され,この第1のパターンは,次に,第3の層と組み合わせられる。第3の層が,パターン化された第1の層の,選択され,マスクされていないエリアに供される薄いコーティングであるよう,好ましくは選ばれる。」

コ 「In accordance with an embodiment of the method, as defined in claim 5, the step of masking is done with a shadow mask.
In accordance with an embodiment of the method, as defined in claim 6, the third layer is conducting. Thus, the method is advantageously used for creating a combined pattern of conducting material, resulting in a smooth flat transparent surface with integrated current spreading grid pattern and a thinner conducting mash which combined pattern is advantageous for providing current spreading, i.e. shunting, in for instance a display of OLED type or an organic solar cell.」(4頁32行?5頁6行)
(日本語訳)
「請求項5に規定された方法の実施例によれば,マスキングするステップは,シャドウマスクを用いて行われる。
請求項6に規定された方法の実施例によれば,第3の層は導通している。したがって当該方法は,組み合わされたパターンを導電性の材料で作るために,好都合に用いられ,結果として,電流を拡散させる一体化されたグリッドパターンと,より薄い導電性のマッシュとを有する滑らかな平らな透明表面を生じ,この組み合わされたパターンは,電流の拡散,即ち分路を,例えばOLEDタイプ又は有機太陽電池のディスプレーに供するのに好都合である。」

サ 「In accordance with an embodiment of the method, as defined in claim 7, the step of depositing a third layer is done by means of spray pyro lysis of tin/zinc solutions which is advantageous compared to sputter deposition of for example Indium Tin Oxide (ITO).
In accordance with an embodiment of the method, as defined in claim 8, the step of depositing a third layer is done by sputtering.」(5頁7行?12行)
(日本語訳)
「請求項7に規定された方法の実施例によれば,第3の層を堆積するステップは,例えばインジウム,錫,酸化物(ITO)のスパッタ堆積よりも好都合である,錫/亜鉛溶液のスプレー熱分解を用いて行われる。
請求項8に規定された方法の実施例によれば,第3の層を堆積するステップは,スパッタリングによって行われる。」

シ 「A basic aspect of the method is the manufacture of a certain layer of an electronic device, such as an OLED or an organic photovoltaic device (i.e. an organic solar cell), see fig. 1a). The layer is a conducting layer, for instance the cathode layer 20 or the anode layer 40 of the OLED 10, which in other respects also contain several organic layers 30 between the anode and cathode layers 20, 40. The conducting layer can be regarded as an extra metallization, as has been described above in the background of the invention. The extra metallization is added to realise a current distribution layer that has a low resistivity and high open area. In practice this results in high aspect ration metal lines on the OLED 10.」(9頁9行?16行)
(日本語訳)
「本方法の基本的な態様は,OLED又は有機光起電力素子(即ち,有機太陽電池)などの電子デバイスの特定の層の製造であり,図1a)を参照。当該層は,導電層,例えばOLED 10の陰極層20又は陽極層40であり,他の観点から,陽極層20と陰極層40との間に複数の有機層30も含む。本発明の背景において,上で説明されたように,導電層は,追加された金属被覆と考えられていることができる。追加された金属被覆は,低い抵抗率及び高いオープンエリアをもつ電流分散層を実現するために加えられている。実際には,これは,高いアスペクト比の金属線をOLED 10上に結果として生じる。」

ス 「In the following the method according to the present invention is described in an non-limiting illustrative example in which an OLED is provided with extra metallization. Let us consider making an extra metallization, in the form of a grid 41 and a mash 42 as illustrated in Fig. 1b), on an anode layer 40 for the purpose of shunting an OLED 10.」(9頁17行?20行)
(日本語訳)
「以下に,本発明による方法が,OLEDが追加の金属被覆を具備している非限定的な例示的な例にて説明されている。OLED 10を分路するために,図1b)に例示するようなグリッド41及びマッシュ42の形で,陽極層40に接して追加の金属被覆を作成することを考えよう。」

セ 「FIG. 1a, 1b



ソ 「Referring now to Fig. 2, as a first step a first patterning means 50 with a desired pattern, i.e a grid 41, as illustrated in Fig. 1 in this example, is provided. The patterning means 50 is a PDMS (Polydimethylsiloxane) stamp with a relief structure 51 corresponding to the desired pattern, i.e. the grid 41 and mash 42.」(9頁21行?24行)
(日本語訳)
「ここで図2を参照し,第1のステップとして,所望のパターンを有する第1のパターニング手段50,即ち,この例では図1にて例示されたようなグリッド41が供される。パターニング手段50は,所望のパターン,即ちグリッド41及びマッシュ42に相当するレリーフ構造51を備えたPDMS(ポリジメチルシロキサン)のスタンプである。」

タ 「Next, a first layer 70 is provided on a transparent substrate 60, made of glass or plastic. The first layer is preferably constituted by a transparent sol-gel material, a polymer or any other material which is suitable for imprinting patterns. As an illustrative non-limiting example a sol-gel material is used to form the first layer in the following description. It should be clear though, that the method is also applicable to a polymer layer, which may be formed by using for instance polyimide.」(10頁20行?25行)
(日本語訳)
「次に,第1の層70が,ガラス又はプラスチックで作られた透明基板60に供される。第1の層70は,パターンを押印するのに適している透明なゾル-ゲル材,ポリマ,又は何らかの他の材料によって,好ましくは構成されている。例示している非限定的な例として,以下の説明ではゾル-ゲル材が第1の層を形成するために使用されている。しかしながら,本方法は,例えばポリイミドを使用することにより形成されたポリマ層にも適用できることが明白でなければならない。」

チ 「The first layer 70, which hereinafter is referred to as the sol-gel layer 70, is preferably applied onto the substrate 60 by spin coating, i.e. a sol-gel material coating fluid is dispensed upon the clean substrate 60 which is then placed on a spinner. Depending on the sol-gel material used, the spinning process is optimized to result in required thickness and uniformity of the sol-gel layer 70 (which is determined by the spinner speed, temperature, the sol-gel viscosity and solvent evaporation etc.). In alternative embodiments the coating fluid is dispensed upon the substrate 60 by dip coating, spraying, electrophoresis, inkjet printing or roll coating. 」(10頁26行?33行)
(日本語訳)
「第1の層70は,これ以降ゾル-ゲル層70と呼ばれ,スピン・コーティングによって基板60上へ好ましくは塗布される。即ち,ゾル-ゲル材の塗布液がきれいな基板60上に滴下され,次にスピナ上に置かれる。使用されるゾル-ゲル材に応じて,スピン・プロセスが,ゾル-ゲル層70の必要とされる厚さ及び均一性を生じるよう,最適化される(ゾル-ゲル層70の厚さ及び均一性は,スピナの速度,温度,ゾル-ゲルの粘性,及び溶液の揮発性等によって決定される)。代替の実施例では,塗布液が,浸漬コーティング,噴霧,電気泳動,インクジェット印刷,又はロール・コーティングによって,基板60に塗布される。」

ツ 「After the sol-gel layer 70 has been provided to the substrate 60, a pattern of recesses is provided by imprinting the stamp 50 into the sol-gel layer 70, Fig. 2 b), such that the relief pattern 51 of the stamp 50 is pressed into the sol-gel layer 70. Preferably the sol-gel layer 70 is partly reacted as to achieve an appropriate viscosity. As the stamp 50 is imprinted, sol-gel has reacted to form as solid and as the stamp is retracted from the sol-gel layer 70, recesses 71 are formed in the sol gel layer 70, Fig. 2 c), leaving areas of the sol-gel layer, that have not been recessed 72.」(11頁1行?7行)
(日本語訳)
「ゾル-ゲル層70が基板60に供された後,スタンプ50のレリーフ・パターン51がゾル-ゲル層70に圧入されるようにゾル-ゲル層70にスタンプ50を押印することによって,凹部のパターンが供される。図2b)参照。好ましくは,ゾル-ゲル層70は,適切な粘性を実現するために,部分的に反応する。スタンプ50が押印されると,ゾル-ゲル層は固体として形成するよう反応し,スタンプがゾル-ゲル層70から離脱されると,凹部71がゾル-ゲル層70に形成され,凹部が形成されなかったエリア72が残る。図2c)参照。」

テ 「Next, the sol-gel layer 70 is cured in an oven at a temperature of typically 200 to 400°C for 20 minutes. The curing temperature and time is material dependent and the temperatures that are provided here are non- limiting examples and should not be regarded as being limiting to the scope of the invention.」(11頁8行?11行)
(日本語訳)
「次に,ゾル-ゲル層70は,20分の間,通常200℃乃至400℃の温度で,オーブンで硬化される。硬化温度及び硬化時間は材料に依存し,ここで示された温度は非限定的な例であって,本発明の範囲を限定するものと考えられてはならない。」

ト 「In an alternative embodiment, a step of providing a barrier layer 80, see Fig. 2d, is performed following the step of curing the sol-gel layer 70. The barrier layer 80, which is realized with a thin film encapsulation, TFE, may be a high temperature plasma enhanced chemical vapour deposition (PECVD) Silicon-nitride/Silicon-oxide/Silicon-nitride/Silicon- oxide/Silicon-nitride and acts as a water barrier. Other inorganic materials (e.g. AlO x , polyacrylate-Ag-polyacrylate-Ag-polyacrylate-Ag-polyacrylate (PAPAPAP)) and techniques like atomic layer deposition (ALD) may be used to provide the barrier layer. The water barrier prevents water from diffusing into the device. The barrier layer 80 is suitable for both sol-gel layers or/and polymer layers.」(11頁12行?20行)
(日本語訳)
「代替の実施例では,バリア層80(図2dを参照)を供するステップが,ゾル-ゲル層70を硬化させるステップに続いて実行される。薄膜のカプセル化,即ちTFEによって実現されるバリア層80は,高温プラズマで強化された窒化シリコン/酸化シリコン/窒化シリコン/酸化シリコン/窒化シリコン層の化学蒸着(PECVD)でもよく,水バリアとして機能する。他の無機材料(例えば酸化アルミ,ポリアクリレート-銀-ポリアクリレート-銀-ポリアクリレート-銀-ポリアクリレート(PAPAPAP)),及び原子層蒸着(ALD)のような技術が,バリア層を供するために用いられてもよい。当該水バリアは,水分が素子内に拡散するのを防止する。バリア層80は,ゾル-ゲル層及び/又はポリマ層の両方に適している。」

ナ 「After the curing of the sol-gel layer 70, the sol-gel layer is subjected to a first surface treatment. The surface of the sol-gel layer 70 is made hydrophilic by means of a UV- ozone treatment. In an alternative embodiment the surface of the sol-gel layer 70 is made hydrophilic by means of oxygen plasma. Another alternative embodiment is using methods for wet chemical oxidation, e.g. pirahna etch.」(11頁21行?25行)
(日本語訳)
「ゾル-ゲル層70を硬化させた後,当該ゾル-ゲル層は,第1の表面処理を受ける。ゾル-ゲル層70の表面は,UV-オゾン処理によって親水性にされる。代替の実施例では,ゾル-ゲル層70の表面は,酸素プラズマによって親水性にされる。別の代替の実施例は,湿式の化学的な酸化の方法,例えばピラニア・エッチングを使用している。」

ニ 「The sol-gel layer 70 is then subjected to a second surface treatment, wherein a selected subarea of the surface of the sol-gel layer 70 is made hydrophilic, so that the surface of the cured sol-gel layer 70 is covered by a subarea that is hydrophilic and a subarea that is hydrophobic. In this embodiment, the second surface treatment is done by applying a second patterning means, a flat PDMS stamp 8, which contains a reactive hydrophobic precursor, like MTMS or a fluorosilane. Consequently top surfaces 73, i.e. a subarea including surface portions between the recesses 71 and excluding the recesses 71, see Fig. 2 e) and f) are subjected to the reactive hydrophobic precursor, resulting in the surface of the patterned sol- gel layer 70 having a hydrophobic subarea 73 and a hydrophilic subarea 74, which hydrophilic subarea 74 is constituted by the surfaces of the recesses 71.」(11頁26行?12頁2行)
(日本語訳)
「ゾル-ゲル層70は,次に第2の表面処理を受け,ゾル-ゲル層70の表面の選択されたサブエリアが親水性にされ,この結果,硬化したゾル-ゲル層70の表面は,親水性であるサブエリアと疎水性であるサブエリアとによってカバーされる。本実施例では,第2の表面処理は第2のパターニング手段,即ち平面状のPDMSスタンプ8を使用することによって行われる。PDMSは,MTMS又はフルオロ・シランのような反応性の疎水性前駆体を含む。結果的に,上面73,即ち凹部71間の表面部分を含み,凹部71そのものは含まないサブエリア(図2e)及びf)を参照)は,反応性の疎水性前駆体となり,疎水性があるサブエリア73,及び親水性があるサブエリア74をもつ,パターン化されたゾル-ゲル層70の表面を結果として生じ,親水性があるサブエリア74が,凹部71の表面に構成される。」

ヌ 「Next a conducting pattern material is deposited onto the substrate by filling the recesses 71 by making use of self assembly with a second layer 90, see Fig. 2 g) constituted by a conducting patterning material. The conducting patterning material is a metal containing liquid which is applied by spin coating onto the sol-gel layer 70. The metal containing liquid is chosen as to contain polar molecules, i.e. the liquid is polar. Some examples of polar liquids are water, methanol, and N-methylpyrrolidone. In alternative embodiments the second layer 90 is provided by means of spray coating, ink jetting or a doctors blade distribution. In this embodiment the metal containing liquid is composed of nano-particles of silver and a stabilising medium. The nano-particles enhance sintering at low temperatures and so form good conducting metals (temperatures range from 100 to 400°C). Other suitable metals for filling the recesses 71 is one of gold, nickel and copper.」(12頁3行?13行)
(日本語訳)
「次に,導電性のパターン材が,凹部71を,自己集合現象を利用して,導電性のパターン材から構成される第2の層90で満たすことによって基板上に堆積される。図2g)参照。導電性のパターン材とは,ゾル-ゲル層70上へスピン・コーティングによって塗布される,金属を含んだ液体である。金属を含んだ液体は,有極性の分子を含むよう,即ち,液体が極性をもつよう選択される。極性をもつ液体の幾つかの例は,水,メタノール,及びN-メチル・ピロリドンである。代替の実施例では,第2の層90は,スプレー塗布,インクジェット噴射,又はドクター・ブレード方式による散布によって供される。本実施例では,金属を含んだ液体は,銀及び安定化媒体のナノ粒子から成る。当該ナノ粒子は,低温での焼結を強化し,従って,良好な導電性の金属を(100℃から400℃にわたる温度で)形成する。凹部71を満たすための他の適切な金属は,金,ニッケル,及び銅のうちの一つである。」

ネ 「As the silver containing liquid 90 is allowed to dry, instabilities form over the hydrophobic subarea 73 due to the polar molecules in the liquid and the second layer 90 redistributes from the hydrophobic subarea 73 into the recesses 71, i.e. breaks up and concentrates in the hydrophilic recesses 71, Fig. 2 h) and i). After drying, a small recess in the top surface of the second layer 90 may be formed as illustrated in Fig. 2 i), whereby the steps of providing the second layer 90 may have to be repeated to flatten the top surface of the second layer 90. At this point a silver grid 90 has been created in the transparent sol-gel layer 70.」(12頁14行?21行)
(日本語訳)
「銀を含んだ液体90が乾燥することができるので,液体内の有極性の分子に起因して,不安定性が疎水性であるサブエリア73上に生じ,第2の層90は,疎水性であるサブエリア73から凹部71に再分散,即ち浸透して,親水性のある凹部71に集中する。図2h)及び図2i)参照。乾燥後,図2i)に例示するように,第2の層90の上面に小さな凹部が形成される可能性があり,これによって,第2の層90を供するステップが,第2の層90の上面を平坦にするために繰り返されなければならない可能性がある。この時点で,銀のグリッド90が,透明なゾル-ゲル層70に作成された。」

ノ 「It should be mentioned that this method of imprinting patterns into a layer, which may be constituted by a sol-gel material, with an elastomeric stamp is also suitable for providing patterns of other non-conductive materials into the layer.
In an alternative embodiment the metal is provided to the sol-gel layer by damascening of metal in glass.」(12頁22行?26行)
(日本語訳)
「エラストマのスタンプを用いて,パターンをゾル-ゲル材によって構成された層へと押印する本方法は,他の非導電性の材料のパターンを当該層に供することにも適している点を言及せねばならない。
代替の実施例では,金属が,ガラス中の金属を象眼することによって,ゾル-ゲル層に供される。」

ハ 「Finally a shadow mask, which is patterned to cover the grid and provide the pattern of the mash, is used to cover the grid while the subtiles 44 between the grids are provided with a third layer 100, Fig. 2 j). This is done by spray pyrolisis of tin/zinc solutions, giving a mash 42 which is constituted by a planar transparent tin-/zinc oxide. In an alternative embodiment the mash 42, 100 is produced by having ITO deposited onto the subtiles 44 by means of a sputtering process.」(12頁27行?32行)
(日本語訳)
「最後に,格子間にあるサブ・タイル44が第3の層100を供されると共に,グリッドをカバーし,マッシュのパターンを供するようパターン化されたシャドウマスクが,グリッドをカバーするために用いられる。図2j)参照。これは錫/亜鉛溶液のスプレー熱分解によって行われ,平面状の透明な酸化錫/酸化亜鉛によって構成されたマッシュ42を与える。代替の実施例では,マッシュ42, 100は,スパッタリング・プロセスを用いてサブ・タイル44上へ堆積されたITOによって作られる。」

ヒ 「In the embodiment of the method according to the present invention as described above, an anode 40 to an OLED was created.」(12頁33行?34行)
(日本語訳)
「上で説明されたように,本発明による方法の実施例によって,OLEDの陽極40が作られた。」

フ 「FIG. 2



(2) 引用発明

上記(1)からみて,引用例3には,OLED10の陽極40が図1b)の追加の金属被覆を具備している例(ただし,図2dのバリア層80を有するもの)として,以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。なお,頁及び行は,引用発明の認定に活用した引用例3の記載箇所を示すために併記したものである。また,図面参照番号等の明らかな誤記及び用語の不統一は,修正して記載した。)。

「(9頁9行?16行) OLED10であって,
(9頁17行?20行) OLED10を分路するために,グリッド41及びマッシュ42の形で,陽極40に接して追加の金属被覆を作成する場合,
(10頁20行?25行) ゾル-ゲル層70が,プラスチックで作られた透明基板60に供され,
(11頁1行?7行) ゾル-ゲル層70にスタンプ50を押印することによって,凹部のパターンが供され,凹部が形成されなかったエリア72が残り,(9頁21行?24行)ここで,スタンプ50は,グリッド41及びマッシュ42に相当するレリーフ構造51を備え,
(11頁8行?11行) ゾル-ゲル層70は,オーブンで硬化され,
(11頁12行?20行) バリア層80を供するステップが薄膜のカプセル化によって実現され,
(12頁3行?13行) 導電性のパターン材が,凹部71を導電性のパターン材から構成される第2の層90で満たすことによって基板上に堆積され,(12頁14行?21行)このステップが,第2の層90の上面を平坦にするために繰り返され,
(12頁27行?32行) 最後に,画素44が第3の層100を供され,
(12頁33行?34行) OLED10の陽極40が作られ,
(9頁9行?16行) 追加された金属被覆は,低い抵抗率及び高いオープンエリアをもつ電流分散層を実現するために加えられ,
(9頁9行?16行) 陽極40と陰極20の間に複数の有機層30を含む,
(9頁9行?16行) OLED10。」

(3)引用例1の記載
引用例1には,以下の事項が記載されている。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と,該透明基材の少なくとも一方の面に,第1透明無機化合物層,平坦化層及び第2透明無機化合物層が,順次積層されてなる透明ガス遮断性積層体において,前記第2透明無機化合物層の表面粗さRa(平均粗さ)が5nm以下,Rmax(最大突起長)が80nm以下であることを特徴とする透明ガス遮断性積層体。
【請求項2】
上記透明基材が樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の透明ガス遮断性積層体。
【請求項3】
上記透明基材がガラスであり,該ガラスの少なくとも一方の面に,平坦化層及び第2透明無機化合物層が,順次積層されてなることを特徴とする請求項1に記載の透明ガス遮断性積層体。
【請求項4】
上記第1透明無機化合物層及び/又は第2透明無機化合物層が,酸化珪素,窒化珪素,炭化珪素,酸化アルミニウム,酸化マグネシウム,酸化インジウム,及びこれらの化合物を主成分とした複合体から選ばれたものであり,前記第1透明無機化合物層及び/又は第2透明無機化合物層がガス遮断性層であることを特徴とする請求項1?2のいずれかに記載の透明ガス遮断性積層体。
【請求項5】
上記平担化層がパターンを形成可能な材料であることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の透明ガス遮断性積層体。
【請求項6】
上記平担化層がフォトレジストを主成分とした材料であることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の透明ガス遮断性積層体。
【請求項7】
上記第2無機化合物層面に,さらに透明導電層及び補助電極層が形成されてなることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の透明ガス遮断性積層体。
【請求項8】
上記平担化層がパターン状であることを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の透明ガス遮断性積層体。
【請求項9】
透明基材と,該透明基材の少なくとも一方の面に,必要に応じて第1透明無機化合物層を設け,平坦化層,第2透明無機化合物層,透明導電層及び補助電極層が,順次積層されてなるディスプレイ用樹脂フィルム基板において,前記平担化層がパターン状であり,該パターンの凹部に前記透明導電層及び前記補助電極層が埋め込まれてなることを特徴とするディスプレイ用基板。
【請求項10】
上記平担化層の凹部に,酸素捕捉剤及び/又は水蒸気捕捉剤が埋め込まれてなることを特徴とする請求項9に記載のディスプレイ用基板。
【請求項11】
上記平担化層の凹部に,封止用樹脂が埋め込まれてなることを特徴とする請求項9?10のいずれかに記載のディスプレイ用基板。
【請求項12】
上記透明基材が樹脂フィルムであることを特徴とする請求項8?11のいずれかに記載のディスプレイ用基板。
【請求項13】
上記透明基材がガラスであることを特徴とする請求項8?11のいずれかに記載のディスプレイ用基板。
【請求項14】
請求項9?13のいずれかに記載のディスプレイ基板における,上記平坦化層の凹部に,電極層,正孔注入層,発光層及び陰極層が順次埋め込まれてなることを特徴とするディスプレイ。」

イ 「【0001】
本発明は,表面の透明ガス遮断性積層体に関し,さらに詳しくは,食品や医薬品等の包装材料はもとより,タッチパネル,ディスプレイ用フィルム基板,照明用フィルム基板,太陽電池用フィルム基板,サーキットボード用フィルム基板,電子ペーパー等に使用できる透明ガス遮断性積層体,並びにそれを用いたディスプレイ用基板及びディスプレイに関するものである。」

ウ 「【0003】
(背景技術)
(中略)
また,電子デバイスの分野においても,電子デバイス用基板として,ガラス基材などを用いた基板では,より薄膜化,省スペース化,軽量化が望まれている。
さらに,電子デバイス用基板として従来,Siウエハやガラスなどの無機材料が広く用いられてきた。ところが,近年,製品の軽量化,基板のフレキシブル化,低コスト化,ハンドリング特性などの様々な理由から樹脂フィルムを主体とするの基板(以下,樹脂フィルム基板,又はフィルム基板という)が望まれるようになっている。
特に,有機ELや液晶といったディスプレイ用途では,透明でかつ耐熱性を有し,デバイスが酸化劣化しないような酸素のバリア性,電子デバイス内の必要な真空度を維持でき,ディスプレイの寿命を伸ばせるような酸素や水蒸気のバリア性を有する樹脂フィルムを基材とするディスプレイ用基板も望まれている。しかしながら,ディスプレイ用基板は,ガラスなどの無機材料からなる基板と比較した場合,一般的に表面粗さがあり,特に最大突起が大きく,かつその処理が困難であるという問題を有している。表面に突起があると,ガスバリア性膜にピンホールが発生しやすく,酸素や水蒸気のバリア性が十分に得られない。さらに,表面に突起があると,その面に形成する電極にも突起が生じて,有機EL素子などのディスプレイによっては,電極となる透明導電層に突起(凹凸)があると,断線したり,電流が短絡したりするという問題があった。
そこで,包装材料やディスプレイ基板に用いる積層体には,水蒸気や酸素などのガスバリア性に優れ,かつ,断線や電流短絡の原因となる突起(凹凸)が極めて少ない透明ガス遮断性積層体が求められ,並びにそれを用いたディスプレイ用基板及びディスプレイも同様に求められている。」

エ 「【0006】
そこで,本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は,透明基材に透明無機化合物層,平坦化層,透明無機化合物層を順次積層することにより,表面粗さが低減されて,水蒸気や酸素などのガスバリア性に優れ,かつ,断線や電流短絡の原因となる突起(凹凸)が極めて少ない透明ガス遮断性積層体を提供し,さらに,該透明ガス遮断性積層体の平坦化層をパターニングすることにより,第2無機化合物層面に透明導電層及び補助電極層を積層する際に,絶縁層が不要で,さらに凹部に1又は複数の機能性材料を埋め込むことで,ガスバリア性などの機能を向上させたり,より薄型のディスプレイに使用することができるディスプレイ用基板,及びディスプレイもを提供することである。」

オ 「【発明の効果】
【0008】
(物の発明)本発明者は,表面を高度に平坦化する透明ガス遮断性積層体について,鋭意検討したところ,樹脂フィルム基材の表面には,サブミクロン以下の極く僅かな突起(凹凸)があり,該突起を平坦化することは,極めて困難であり,化学機械研磨(CMP,ケミカルメカニカル研磨,ケミカルメカニカルポリシング又はケミカルメカニカルプラナリゼーションともいう)法によっても,廃液が大量に発生し,平坦性の再現性に問題がある高コストな方法しかない。一般に樹脂フィルム等の高分子基材の表面はRa(平均粗さ)が2nm以上,Rmax(最大突起長)が80nm以上であり,所々に500nm(0.5μm)程度の高さの突起が生じており,微視的にみれば荒れた状態になっている。
このような500nmの突起上に,膜厚が20nm程度の薄膜のガスバリア層や透明導電層(電極層となる)を形成した場合,突起の頂部を覆うことはできず,突き抜けた突起が残ってしまう。該突起により,ガスバリア層にピンホ-ルが発生してガスバリア性が劣化したり,透明導電層が断線や短絡して,フィルム基板として使用できなくなる可能性が高い。
そこで,樹脂フィルムに突起があったとしても,突起(凹凸)を極めて少なくできるような,透明基材/第1透明無機化合物層/平坦化層/第2透明無機化合物層の層構成とすることで,前記第2透明無機化合物層の表面粗さRa(平均粗さ)が5nm以下,Rmax(最大突起長)が80nm以下とすることで,水蒸気や酸素などのガスバリア性に優れ,かつ,断線や電流短絡の原因となる突起(凹凸)が極めて少ない,樹脂フィルムを用いた包装材料やディスプレイ基板に用いる樹脂フィルムを主体とした透明ガス遮断性フィルムを見出して本発明に至った。
さらに,電子デバイス用基板として,ガラス基材などを用いた基板では,耐熱性がよく高熱がかけられるので,バリア層なしで,パターン化したレジスト層で,絶縁層,捕捉剤や封止剤の囲いとして使用することができ,ガスバリア性などの機能を向上させたり,より薄型とすることができる。
【0009】
請求項1の本発明によれば,透明基材に,第1透明無機化合物層,平坦化層,第2透明無機化合物層を順次積層して,前記第2透明無機化合物層の表面粗さRa(平均粗さ)が5nm以下,Rmax(最大突起長)が80nm以下とすることで,水蒸気や酸素などのガスバリア性に優れ,かつ,断線や電流短絡の原因となる突起(凹凸)が極めて少ない透明ガス遮断性積層体が提供される。
請求項2の本発明によれば,軽く,割れず,曲げられ,かつガスバリア性などの機能を向上させつつ,かつより薄型のディスプレイ用基板に使用することができる透明ガス遮断性積層体が提供される。
請求項3の本発明によれば,ガラスの有するガスバリア性で,第1透明無機化合物層を設けなくても,よりガス遮断性に優れる透明ガス遮断性積層体が提供される。
請求項4の本発明によれば,上記第1透明無機化合物層及び/又は第2透明無機化合物層を,特定の材料を用いてガス遮断性層とすることで,よりガス遮断性に優れる透明ガス遮断性積層体が提供される。
請求項5の本発明によれば,上記平担化層をパターン状とし,凹部に他の複数の機能性材料を埋め込むことで,より薄型のディスプレイ用基板に使用することができる透明ガス遮断性積層体が提供される。
請求項6の本発明によれば,上記平担化層の材料をフォトレジスト材料とすることで,安定した平坦性が得られてよりガス遮断性に優れ,さらに必要に応じてパターン化することができる透明ガス遮断性積層体が提供される。
請求項7の本発明によれば,上記第2無機化合物層面に,さらに透明導電層及び補助電極層が形成され,ディスプレイ用基板に使用することができるより薄型の透明ガス遮断性積層体が提供される。
請求項8の本発明によれば,上記平担化層をパターン状とすることで,凹部に他の複数の機能性材料を埋め込むことで,ガスバリア性などの機能を向上させたり,より薄型のディスプレイ用基板に使用することができる透明ガス遮断性積層体が提供される。
請求項9の本発明によれば,透明性,耐熱性,耐溶剤性,層間密着性,特にガスバリア性に極めて優れ,さらに,平担化層をパターン状とすることで,第2無機化合物層面に透明導電層及び補助電極層を積層する際に,絶縁層が不要で,さらに凹部に他の複数の機能性材料を埋め込むことで,より省スペース化,軽量化,薄型化でき,さらに,透明基材としてガラスを用いた場合には第1無機化合物層が不要で,また,透明基材として樹脂フィルムを用いた場合にはフレキシブル性があり,軽く,割れず,曲げられるディスプレイに使用することができるディスプレイ用基板が提供される。
請求項10の本発明によれば,上記平担化層の凹部に水蒸気捕捉剤が埋め込まれ,ガスバリア性が向上し,かつより薄型で,かつ長寿命のディスプレイ用基板が提供される。
請求項11の本発明によれば,上記平担化層の凹部に封止用樹脂が埋め込まれ,より薄型のディスプレイ用基板が提供される。
請求項12の本発明によれば,フレキシブル性があり,軽く,割れず,曲げられ,より省スペース化,軽量化,薄型化できるディスプレイ用基板が提供される。
請求項13の本発明によれば,より省スペース化,軽量化,薄型化できるディスプレイ用基板が提供される。
請求項14の本発明によれば,透明基材としてガラスを用いた場合にはより省スペース化,軽量化,薄型化でき,また,透明基材として樹脂フィルムを用いた場合にはフレキシブル性があり,軽く,割れず,曲げられる有機EL用ディスプレイが提供される。」

カ 「【0013】
(中略)
透明基材としてガラスを用いた場合には,ガラス自身が優れたガスバリア性を有するので,第1透明無機化合物層13Aを設けなくてもよく,より省スペース化,軽量化,薄型化することができる。」

キ 「【0017】
(第1透明無機化合物層)第1透明無機化合物層13Aを設ける目的は,透明ガス遮断性積層体10における,水蒸気の透過や酸素の透過を遮断する機能に加え,その上に形成される平坦化層15,第2透明無機化合物層13Bの積層体の応力による膜剥がれを防止させるために,透明基材11との間に挟持させ強固に密着させるための層である。また基材からの脱ガスを防止させるための層でもある。」

ク 「【0022】
(平坦化層)平坦化層15は,第1透明無機化合物層13Aの面に形成され,表面のRaおよびRmaxを,さらに低下させるための層である。
第1透明無機化合物層13A,及び平坦化層15は,機能的にみると平坦化機能であり,特に両者の層構成とすることで,無機化合物層との親和性,濡れ性がよいため,孔,凹部,及びクラック(割れ)などの欠陥を埋め,覆い,塞ぐことができる。またレベリング性がよいために,欠陥を埋めて覆い,乾燥後の表面は平滑となる。この親和性とレベリング性の相乗効果で超平坦化機能を発揮する。」

ケ 「【0030】
図4は,本発明のディスプレイ用基板の1実施例を示す断面図である。
フォトレジストを用いた平坦化層15は,該平坦化層15を容易にパターン化でき,例えば,感光性レジストを金属層上へ塗布し,乾燥した後に,所定のパターン版にてマスキングして,密着露光し,水又は現像液などで現像し,必要に応じて,硬膜処理やベーキング処理をする。
マスク版のパターンは,例えばメッシュ状,ストライプ状,又は所望のパターンなどである。メッシュ状は,ライン部で囲まれた複数の開口部又は凹部からなり,開口部又は凹部の形状(メッシュパターン)は特に限定されず,例えば,正3角形等の3角形,正方形,長方形,菱形,台形などの4角形,6角形,等の多角形,円形,楕円形などが適用できる。これらの開口部の複数を,組み合わせてメッシュとする。ストライプ状は,ライン部と,該ライン部間の開口部又は凹部からなっており,該ストライプ状はアドレス電極などを設ける場合に好適である。また,所望のパターンは,用いられるアプリケーションの電極の取り出し方等により決まるので,単純な幾何学模様ではなく,複雑な形状を有するパターンも多く,特に限定されるものではない。
開口部とは平坦化層15を除去したもので,凹部とは平坦化層15の厚さ方向の1部又は全部を除去したもので,凹部の底部には薄皮状に平坦化層15が残っていてもよい。
なお,凹部を設け,凹部の底部には薄皮状に平坦化層15が残っている場合,該底部のRa(平均粗さ)及びRmax(最大粗さ)は,平坦化層15の土手部より低く凹んでいるので,底部のRa(平均粗さ)は5nm以下,Rmax(最大粗さ)は80nm以下の範囲に限定されない。
通常,ライン幅,及びライン間隔(ラインピッチ)は,その凹部の中に入れるものによって異なるので,μm?cmオーダーまであり,特に限定されるものではない。
【0031】
その凹部の中に入れるものとしては,例えば,透明導電層,補助電極層,酸素捕捉剤,水蒸気捕捉剤,封止用樹脂,電極層,正孔注入層,発光層及び/又は陰極層などがある。例えば,図4に示すように,平坦化層15を凹部の底面にも平坦化層15の一部が残るようにパターン化して,凹部の底面に透明導電層21を設けたもので,該透明導電層21も平坦化層15のパターンに合わせてパターン化してある。なお,通常平坦化層15の厚みが最も厚いので,凹部に注入されるものは,図4に示すように,凹部の底部に埋め込まれ,なお上部に空間がある。
また,透明基板11としてガラス基材を用いた基板では,耐熱性がよく高熱がかけられるので,バリア層なしで,パターン化したレジスト層(平坦化層15)ライン部で囲まれた凹部へ,絶縁層,透明導電層,補助電極層を設けたり,及び/又は封止剤を注入することができる。
このように,平担化層をパターン状とし,該パターンの凹部に酸素捕捉剤及び/又は水蒸気捕捉剤を埋め込むことで,ガスバリア性などの機能を向上させることができる。また,該パターンの凹部に透明導電層,前記補助電極層,封止用樹脂,電極層,正孔注入層,発光層及び/又は陰極層などを埋め込むことで,該当する層の厚みを無視できるので,より薄型とすることができる。」

コ 「【図4】



サ 「【0037】
(第2透明無機化合物層)第2透明無機化合物層13Bも,透明ガス遮断性積層体10における,水蒸気や酸素などの透過を遮断性するための機能に加え,平坦化層15からの脱ガスの防止と,積層体の表面質を改質の効果をもたらす。例えばディスプレイ用基板として用いる際には,さらにこの面に透明電極などの層を設ける必要がある。第2透明無機化合物層13Bが設けられていると,親和性が高く,密着性がよく,導電性に優れた電極層を形成することができる。」

シ 「【0056】
(有機ELD)有機ELディスプレイは,やはり,二枚のガラス基板に,いずれも内側に透明電極を配置し,間に,例えば,(a)注入機能,(b)輸送機能,および(c)発光機能の各機能を持つ層を積層した複合層等からなる有機EL素子層が挟まれ,周囲がシールされたものであり,カラー化するためのカラーフィルターもしくはそのほかの手段を伴なうことがある。ELディスプレイを構成する場合には,例えば,本発明の薄型ディスプレイ用基板(パターン化透明導電層・補助電極層を含む)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極/封止層からなる層構成を挙げることができる。該層構成は,特に限定されるものではなく,具体的には,陽極/発光層/陰極,陽極/正孔注入層/発光層/陰極,陽極/発光層/電子注入層/陰極,陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極,陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極などの多くの層構造に対応できる。」

ス 「【実施例2】
【0059】
厚さ200μmの環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン製)を樹脂フィルム基材とし,一方の面に50nmの酸化窒化珪素膜(第1無機化合物層)をスパッタ法により成膜した。その後,平滑化層としてフォトレジスト材料である東京応化製レジスト溶液(CFPR CL-016S)をスピンコーティングし,120℃で30分間ベークにより,厚さ5μmの均一なレジスト膜(平担化層)を得た。パターニングマスクを使用し,紫外線露光時間を調整し照射,その後,現像液(東京応化製 N-A3K)に1分間室温にて浸漬させ平担化層のパターニング(フォトリソグラフィー法という,パターン形状はライン幅20mm,ピッチ25mmの,基板の底辺に対して平行なストライプとした)を行った。平坦化層の凹凸段差を触針式表面形状測定器(アルバック製DEKTAK)にて測定したところ,2μmであった。さらにその上面に50nmの酸化窒化珪素膜(第2無機化合物層)をスパッタ法により成膜した。
得られた透明ガス遮断性積層体のRaは1.1nm,Rmaxは78nmと十分に平坦で,水蒸気透過度も測定限界以下(0.05g/m^(2)・24h以下)と良好であった。
【実施例3】
【0060】
実施例2の透明ガス遮断性積層体を用いて,酸化窒化珪素膜(第2無機化合物層)面に,150nmのITO膜(透明導電層)をスパッタ法により成膜した。その後,ITOをパターニングするために,フォトレジスト材料である東京応化製レジスト溶液(OFPR800)をスピンコーティングし,120℃で30分間ベークにより,厚さ1μmの均一なレジスト膜を形成した。平担層のパターンとアライメントをあわせて露光,現像液(東京応化製 NMD-3)に1.5分間室温にて浸漬させパターニングを行った。その後,ITOを塩酸-硝酸-水(1:0.1:1)混合溶液に2分間室温にて浸漬させエッチングを行った。その後全面露光,現像と繰りかえすことにより,レジスト膜を除去した。これにより,平担化層の凹部に透明電極層(透明導電層)が埋まり,該透明電極層(透明導電層)の厚みが増加することなくディスプレイ用基板を得た。
【実施例4】
【0061】
実施例3の透明ガス遮断性積層体を用いて,透明電極層上に300nmのクロム膜(補助電極層)をスパッタ法により成膜した。その後,クロムをパターニングするために,フォトレジスト材料である東京応化製レジスト溶液(OFPR800)をスピンコーティングし,120℃で30分間ベークにより,厚さ1μmの均一なレジスト膜を形成した。平担化層のパターンとアライメントをあわせて露光,現像液(東京応化製 NMD-3)に1.5分間室温にて浸漬させパターニングを行った。その後,クロムをクロム用エッチング溶液(ザ・インクテック製 IT-ELM)に2分間室温にて浸漬させエッチングを行った。その後全面露光,現像と繰りかえすことにより,レジスト膜を除去した。これにより平担化層の凹部に透明電極層(透明導電層)及び補助電極層が埋まり,該透明電極層(透明導電層)及び補助電極層の厚みが増加することなく薄型ディスプレイ用基板を得た。
【実施例5】
【0062】
実施例3の薄型ディスプレイ用基板を用いて,平坦化層の凹部に,該凹部の形状に合わせてパターン状とした,正孔注入層,発光層,及び陰極層を順次形成することにより薄型有機ELディスプレイ用の基板を得た。
・正孔注入層は,ポリビニルカルバゾール(PVCz):トリフェニルジアミン(TPD)=1:1溶液をスピンコートし,乾燥して,厚さが50nmとし,フォトリソグラフィー法でパターンとした。
・発光層は,東京化成社製のキノリノールアミン錯体(3量体)(Alq3)をスピンコートし,乾燥して,厚さが10nmとし,フォトリソグラフィー法でパターンとした。
・陰極層は,Mg:Ag=10:1をスパッタ法により厚さ100nmに成膜した後に,フォトリソグラフィー法でパターンとした。これにより平担化層の凹部に正孔注入層,発光層,及び陰極層が埋まり,該正孔注入層,発光層,及び陰極層の厚みが増加することなく薄型有機ELディスプレイ用基板を得た。」

(4) 引用例1記載技術
上記(3)からみて,引用例1には,以下の技術が記載されている(以下「引用例1記載技術」という。)。
「【請求項1】 透明基材と,該透明基材の少なくとも一方の面に,第1透明無機化合物層,平坦化層及び第2透明無機化合物層が,順次積層されてなる透明ガス遮断性積層体において,前記第2透明無機化合物層の表面粗さRa(平均粗さ)が5nm以下,Rmax(最大突起長)が80nm以下で,
【請求項2】 上記透明基材が樹脂フィルムであり,
【請求項4】 上記第1透明無機化合物層及び第2透明無機化合物層が,酸化珪素,窒化珪素,炭化珪素,酸化アルミニウム,酸化マグネシウム,酸化インジウム,及びこれらの化合物を主成分とした複合体から選ばれたものであり,前記第1透明無機化合物層及び第2透明無機化合物層がガス遮断性層であり,
【請求項5】 上記平担化層がパターンを形成可能な材料であり,
【0009】 上記平担化層をパターン状とし,凹部に他の複数の機能性材料を埋め込むことで,より薄型のディスプレイ用基板に使用することができる,
透明ガス遮断性積層体。」

2 対比
本件補正後発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。なお,便宜上,本件補正後発明の図面番号は除いて記載する。

(1) 有機分断層,トレンチ,導電構造
引用発明の「ゾル-ゲル層70」は,「プラスチックで作られた透明基板60に供され」,「グリッド41及びマッシュ42に相当するレリーフ構造51を備え」る「スタンプ50」により,「ゾル-ゲル層70にスタンプ50を押印することによって,凹部のパターンが供され,凹部が形成されなかったエリア72が残」る。そして,引用発明の「ゾル-ゲル層70」は「オーブンで硬化され」,「バリア層80を供するステップが薄膜のカプセル化によって実現され」る。そして,引用発明において「ゾル-ゲル層70」の「凹部71を導電性のパターン材から構成される第2の層90で満たすことによって」,「導電性のパターン材が」,「基板上に堆積され,このステップが,第2の層90の上面を平坦にするために繰り返され」る。
ここで,引用発明の「第2の層90」は,「導電性のパターン材から構成」されているから,本件補正後発明の「少なくとも1つの導電構造」に相当する。また,引用発明の「第2の層90」は,「凹部71」と「凹部が形成されなかったエリア72」を有する「ゾル-ゲル層70」の「凹部71」に形成されている。そうしてみると,引用発明の「凹部が形成されなかったエリア72」及び「凹部71」と,本件補正後発明の「有機分断層」及び「有機分断層内の少なくとも1つのトレンチ」は,「分断層」及び「分断層内の少なくとも1つのトレンチ」の点で共通する。
また,「平面」に関して,本件出願の発明の詳細な説明の段落【0013】には,「本部品の特定の一実施形態において,導電構造は,有機分断層によって形成された平面内の方向に延在する第1および第2の寸法D1,D2と,この平面に直角に延在する,第1および第2の寸法の間の範囲内の値を有する第3の寸法D3とを有する細長い要素を複数備える。」と記載されているところ,本件出願の【図1】及び【図2】を参照すると,本件補正後発明でいう「平面」とは,引用例3の図1b)に示される面のことと理解される。そうしてみると,引用発明の「ゾル-ゲル層70」は,本件補正後発明の「分断層によって画成された平面には」「少なくとも1つの導電構造が分散され」るとの要件を満たす。
次に,引用発明の「陽極40」は,「最後に,画素44が第3の層100を供され」て,「作られ」ており,「OLED10を分路するために,グリッド41及びマッシュ42の形で,陽極40に接して追加の金属被覆」が「作成」され,「追加された金属被覆は,低い抵抗率及び高いオープンエリアをもつ電流分散層を実現するために加えられ」ている。加えて,引用発明の「第2の層90」は,「グリッド41及びマッシュ42に相当する」「凹部71」に満たされ,「第2の層90の上面を平坦」として,「低い抵抗率及び高いオープンエリアをもつ電流分散層を実現」して「OLED10を分路」している。ここで,引用発明の「グリッド41及びマッシュ42」は,「低い抵抗率」により「OLED10を分路」しているのであるから,引用発明の「第2の層90」はその上に形成される「第3の層100」と導通している。したがって,引用発明の「第2の層90」は,「凹部71」を充填して「第3の層100」と導通しており,また,本件補正後発明の「少なくとも1つの導電構造」の具備する「分断層内の少なくとも1つのトレンチを完全に充填する」との要件を満たす。なお,引用例3の図2jにも,この点が示されている。

(2) 無機層
引用発明の「ゾル-ゲル層70」は,「スタンプ50を押印することによって,凹部のパターンが供され,凹部が形成されなかったエリア72が残」り,「オーブンで硬化され」,その後「バリア層80を供するステップが薄膜のカプセル化によって実現され」る。そして,引用発明の「ゾル-ゲル層70」の「凹部71を導電性のパターン材から構成される第2の層90で満たすことによって基板上に堆積され,このステップが,第2の層90の上面を平坦にするために繰り返され」る。
引用発明において,「凹部71」と,「凹部が形成されなかったエリア72」が形成された「ゾル-ゲル層70」に,「薄膜のカプセル化によって」「バリア層80」が供された後,「凹部71を,導電性のパターン材から構成される第2の層90で満た」している。したがって,引用発明の「バリア層80」と本件補正後発明の「無機層の1つ」は,「バリア層の1つ」の点で共通する。また,引用発明の「バリア層80」は,「ゾル-ゲル層70」と「第2の層90」の間に設けられているから,本件補正後発明の「導電構造を」「分断層から隔て」るとの要件を満たす。

(3) 基板
本件補正後発明において「無機層の1つ」とは,「第2の無機層」でもある。また,上記(1)?(2)からみて,引用発明の「プラスチックで作られた透明基板60」には,「凹部が形成されなかったエリア72」と,「バリア層80」が設けられているところ,これらを併せたものを「バリア構造」と称することは任意である。
したがって,引用発明の「プラスチックで作られた透明基板60」は,本件補正後発明の「基板」に相当するとともに,本件補正後発明の「分断層と,」バリア層「とを有するバリア構造が設けられた基板」の要件を満たす。

(4) 電気輸送部品
上記(1)?(3)からみて,引用発明の「バリア層80」,「ゾル-ゲル層70」,「透明基板60」及び「第2の層90」を併せたものを「電気輸送部品」と称することは任意である。

(5) 導電層,電気光学機能層,電気光学機能構造
引用発明の「OLED10」は,「陽極40と陰極20の間に複数の有機層30を含」み,「陽極40」は,「透明基板60」,「凹部のパターンが供され,凹部が形成されなかったエリア72が残」る「ゾル-ゲル層70」,「バリア層80」,「凹部71」に満たされる「導電性のパターン材から構成される第2の層90」及び「第3の層100」を具備している。そして,引用発明の「第3の層100」は,「最後に,画素44に」形成されて「陽極40」を作るのであるから,引用発明の「第3の層100」は,「OLED10」の陽極の役割を果たす導電層であり,「第3の層100」及び「陰極20」は,本件補正後発明の「第1および第2の導電層」に相当する。さらに,引用発明の「陽極40と陰極20の間」の「複数の有機層30」は,本件補正後発明の「電気光学機能層」に相当し,本件補正後発明の「電気光学機能層」の「前記導電層間に挟まれ」ているとの要件を満たす。そして,上記から,引用発明の「第3の層100」,「陰極20」及び「複数の有機層30」とを併せたものは,本件補正後発明の「電気光学機能構造」に相当するとともに,本件補正後発明の「第1および第2の導電層と,前記導電層間に挟まれた少なくとも1つの電気光学機能層とを備え」の要件を満たし,さらに,これらは引用発明の「ゾル-ゲル層70」,「第2の層90」などの上に設けられるから,「電気輸送部品の主表面に設けられ」るとの要件を満たす。
そして,引用発明の「第2の層90」は,「グリッド41及びマッシュ42の形で,陽極40に接して追加の金属被覆を作成」して,「低い抵抗率及び高いオープンエリアをもつ電流分散層を実現」するものであるから,「第3の層100」と導通し,したがって,引用発明の「第3の層100」は,本件補正後発明の「前記導電層の少なくとも1つは前記少なくとも1つの導電構造に電気的に結合される」の要件を満たす。

(6) 電気光学装置
引用発明の「OLED10」は,「有機発光素子」であり,上記(1)?(5)より,本件補正後発明の「電気光学装置」に相当するとともに,「電気輸送部品と電気光学機能構造を備えた電気光学装置」の要件を満たす。

3 一致点
本件補正後発明と引用発明は,以下の構成において一致する。
「電気輸送部品と電気光学機能構造を備えた電気光学装置であって,
前記電気輸送部品には,分断層と,バリア層とを有するバリア構造が設けられた基板が備えられ,
前記分断層によって画成された平面には前記分断層内の少なくとも1つのトレンチを完全に充填する少なくとも1つの導電構造が分散され,
バリア層は前記導電構造を前記分断層から隔て,
前記電気光学機能構造は,前記電気輸送部品の主表面に設けられ,第1および第2の導電層と,前記導電層間に挟まれた少なくとも1つの電気光学機能層とを備え,前記導電層の少なくとも1つは前記少なくとも1つの導電構造に電気的に結合される,
電気光学装置。」

4 相違点
本件補正後発明と引用発明は,以下の点で相違する。
(1) 相違点1
本件補正後発明の「電気輸送部品」には,「第1の無機層」と「第2の無機層」が形成され,「有機分断層は前記第1および第2の無機層の間に挟まれ」るのに対して,引用発明は,「バリア層80」を形成しているが,形成されるバリア層は1層であり,「無機層」であるか否かについても,必ずしも明確ではない点。

(2) 相違点2
本件補正後発明の「分断層」は,「有機分断層」であるのに対して,引用発明は,「有機」分断層であるか否か,不明である点。

(3) 相違点3
本件補正後発明の「トレンチ」は「有機分断層の深さ全体に広が」るのに対して,引用発明の「凹部」は,「ゾル-ゲル層70」の深さ全体に広がるのか否か,必ずしも明確ではない点。

5 判断
(1) 相違点1について
ア 「無機」の層について
引用発明において形成される「バリア層80」について,引用例3には「薄膜のカプセル化,即ちTFEによって実現されるバリア層80は,高温プラズマで強化された窒化シリコン/酸化シリコン/窒化シリコン/酸化シリコン/窒化シリコン層の化学蒸着(PECVD)でもよく,水バリアとして機能する。他の無機材料(例えば酸化アルミ,ポリアクリレート-銀-ポリアクリレート-銀-ポリアクリレート-銀-ポリアクリレート(PAPAPAP)),及び原子層蒸着(ALD)のような技術が,バリア層を供するために用いられてもよい。当該水バリアは,水分が素子内に拡散するのを防止する。」(11頁12行?20行)と記載されている。
以上のように,引用例3には「バリア層80」の材料として無機材料が列挙されているのであるから,引用例3の記載に接した当業者は,引用発明における「バリア層80」は,事実上「無機層」であると解する。したがって,相違点1の「バリア層80」の材料が「無機」か否かについては,事実上,相違点ではない。
あるいは,引用例3に列挙されている無機材料の一つを採用して,引用発明の「バリア層80」を「無機層」とすることは,当業者が容易にできたことである。

イ 2層の層構造について
引用例1には,「水蒸気や酸素などのガスバリア性に優れ,かつ断線や電流短絡の原因となる突起(凹凸)」を極めて少なくすることを目的とした(段落【0006】)引用例1記載技術が開示されている。引用例1記載技術の「透明ガス遮断性積層体」は,「透明基材の少なくとも一方の面に,第1透明無機化合物層,平坦化層及び第2透明無機化合物層が,順次積層」して,「平担化層をパターン状とし,凹部に他の複数の機能性材料を埋め込」んでおり,パターン化された平坦化層を「第1および第2の無機層の間に挟」んでいる。
引用例1には,基材上の「第1透明無機化合物層」を設ける目的は,「その上に形成される平坦化層15,第2透明無機化合物層13Bの積層体の応力による膜剥がれを防止」し,「また基材からの脱ガスを防止させるため」である(段落【0017】)として,「透明基材としてガラスを用いた場合には,ガラス自身が優れたガスバリア性を有するので,第1透明無機化合物層13Aを設けなくてもよ」い(段落【0013】)としつつ,「透明基材が樹脂フィルム」である引用例1記載技術においては,「第1透明無機化合物層」を設けており,こうした樹脂フィルムを基材とする場合には,「第1透明無機化合物層」を設けることが好ましいことが示唆されている。
引用例3においても,バリア層を設けて水分の素子内への拡散を防止(11頁12行?20行)することについて記載されており,素子内への水分の拡散を一般の課題としている。また,引用発明は,「プラスチックで作られた透明基板60」を用いており,引用例1の上記記載や示唆に基づいて,よりガスバリア性を高めるなどの目的で,引用例1記載技術を適用して,「透明基板60」上に第1透明無機化合物層を下地層として設ける構成を採用して,「第1の無機層」と「第2の無機層」を形成し,「分断層」を「前記第1および第2の無機層の間に挟」むようにすることは,当業者が容易にできたことである。

(2) 相違点2及び3について
引用発明の凹部が形成される「ゾル-ゲル層70」について,引用例3には「第1の層70は,パターンを押印するのに適している透明なゾル-ゲル材,ポリマ,又は何らかの他の材料によって,好ましくは構成されている。例示している非限定的な例として,以下の説明ではゾル-ゲル材が第1の層を形成するために使用されている。しかしながら,本方法は,例えばポリイミドを使用することにより形成されたポリマ層にも適用できることが明白でなければならない。」(10頁20行?25行)と記載されており,これらの記載に基づいて,引用発明の「ゾル-ゲル層70」を,ポリイミドなどの一般的な有機ポリマとして,「有機」の分断層とすることは,当業者が容易にできたことである。

また,引用発明は,「導電性のパターン材が,凹部71を導電性のパターン材から構成される第2の層90で満たすことによって基板上に堆積され」るものであるから,引用発明の凹部71は,ゾル-ゲル層70の深さ全体に広がっているといえる(引用例3の図2b),図2c),図2g)からも見て取れる事項である。)。そして,引用発明の「ゾル-ゲル層70」を,ポリイミドなどの一般的な有機ポリマとした場合,例えば,硬化前の有機ポリマに対してスタンプ50を押印した状態で硬化処理を行って,凹部71を具備するポリマ層を形成することになるところ,そのようにして形成してなる凹部71についても,同様に,ポリマ層の深さ全体に広がるものとすることは,引用発明の構成に従う当業者が当然行う事項であるから,相違点3は,実質的な相違点ではない。
あるいは,引用発明において,引用例3の図2などの示唆から,「凹部71」を「深さ全体に広が」るように形成することは,当業者が容易にできたことである。

6 効果について
発明の効果に関して,本願の発明の詳細な説明には,「改良された電気輸送部品は,第1の無機層と,有機分断層と,第2の無機層とを有するバリア構造が設けられた基板を備える。この有機分断層内の複数のトレンチに,少なくとも1つの導電構造が収容される。この改良された製品においては,トレンチの壁が導電構造を支える。これにより,導電構造の縦横比の選択に関してより大きな自由度が得られる。」,「導電構造は,バリア構造の有機分断層内に収容される。これにより,有機分断層は二重の目的を果たすため,本部品の製造においては,無機層を分断し,かつ導電構造を収容する有機分断層を単一ステップで設けることができる。」(段落【0005】)及び「特に有機光電子または電気光学構造には,湿気に敏感な材料が用いられることが多い。この実施形態による電気輸送部品を有機光電子または電気光学構造を備えた装置に適用すると,電気信号または電力の輸送機能がもたらされるばかりでなく,湿気に対する装置の保護ももたらされる。これらの無機層の1つは,導電構造を有機分断層から分離する。この実施形態において,導電構造は自由表面を有する。したがって,本発明による改良された電気輸送部品を電気光学装置または光電子装置に組み込むときに,これらの電気輸送部品と電気光学機能部品または光電子機能部品との間の電気的接触を効率的な方法でもたらすことができる。」(段落【0006】)と記載されている。
しかしながら,上記で述べたとおり,引用発明は,凹部に導電構造が収容され,バリア層も設けている。また,引用例1記載技術は,パターン化された平坦化層を「第1および第2の無機層の間に挟」んで,「水蒸気や酸素などのガスバリア性に優れ」た基板としており,1層の場合と比較して,バリア層を2層としたほうがよりガスバリア性に優れることも,当業者が当然考慮する事項である。
そうしてみると,本件補正後発明が奏する効果は,引用発明が奏する効果であるか,あるいは,引用発明において引用例1記載技術を採用した当業者が期待する効果の範囲内のものである。

7 請求人の主張について
請求人は,審判請求書において「以上の説明をまとめると,以下の1から6の通りである。
1.引用文献3の層72は単に金属皮膜のパターンの鋳型である。バリア機能を有しているのは図2dに示されるバリア層80のみである。
2.引用文献3の図2には,凹部71が第1層70の深さ全体に広がるように形成される例が示されている。
3.しかし,引用文献3において,上記の例は開示する発明の本質とはいえず,その本質と関連するともいえない。
4.引用文献1の段落(0030)には,凹部が層15の深さ全体または一部に広がるように形成されてもよいことが述べられている。
5.しかし,引用文献1では,層15Aは,無機層13Bを損傷する無機層13Aの表面粗さやを緩和するために重要な機能をするとされている。
6.さらに,引用文献1に実際に開示されている実施例では,凹部は有機層15aの一部に広がってのみ設けられている(図4および実施例2から5を参照)。
したがって,引用文献3に記載された発明において,引用文献1に記載された発明を当業者が採用しようとすると,引用文献1に開示の中間無機層13Aを採用し構成するだけでなく,中間無機層13Aが,有機層15Aによって第2無機層13Bから十分に分断されているかに注意を払わなければならない(まとめの5および6を参照)。
図に示されてはいるものの,引用文献3には,凹部71の深さについて何ら示唆がされていない。引用文献1では,第1無機層13Aについて最初に説明した部分で,有機層15Aは凹部の内部も外部も十分な厚さをもって構成するとされている。よって,引用文献3および1のこれらの開示に基づき,当業者が凹部を有機層の深さ全体に広がるように形成することはない。」と主張する。
しかしながら,請求人の主張の引用発明に関する点については,上記5(3)のとおりである。また,引用発明における引用例1記載技術の採用については上記5(1)のとおりであり,引用例1について当業者は平坦化膜の有する機能を考慮するとしても,出願人が認めるとおり平坦化層15の厚さ方向の全部を除去することについても引用例1に記載されている以上,当業者が凹部を有機層の深さ全体に広がるように形成することはないとはいえない。

第3 まとめ
以上のとおり,本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用例3及び1に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,他の請求項に係る発明について審究するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-03 
結審通知日 2016-06-07 
審決日 2016-06-27 
出願番号 特願2011-522023(P2011-522023)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井亀 諭  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 鉄 豊郎
多田 達也
発明の名称 電気輸送部品とその製造方法、並びに電気光学装置および光電気装置  
代理人 特許業務法人 武和国際特許事務所  
代理人 特許業務法人 武和国際特許事務所  

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