• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1321648
審判番号 不服2015-2260  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-05 
確定日 2016-11-10 
事件の表示 特願2012-112661号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月28日出願公開、特開2013-236813号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年5月16日の出願であって,平成26年3月27日付けで拒絶の理由が通知され,同年4月23日付けで意見書及び手続補正書が提出されたところ,同年12月2日付け(発送日:平成26年12月4日)で拒絶の査定がなされ,これに対して,平成27年2月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,手続補正がなされたところ,平成28年4月27日付けで当審による拒絶の理由が通知され,これに対して,同年6月14日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明について
本願の請求項1に係る発明は,平成28年6月14日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである(下線は,補正箇所を明示するために当審にて付した。また,A?Fは,当審にて分説し付与した。)

「【請求項1】
A 遊技球が流下可能な遊技領域に設けられる始動口に遊技球が入球することにより、特別遊技を行うか否かを判定する特別遊技判定手段と、
B 前記特別遊技判定手段により特別遊技を行うと判定された場合、前記遊技領域に設けられた特別入賞口を開閉させるラウンド遊技を複数回実行して、当該特別入賞口に遊技球を入球可能にさせ、所定のラウンド遊技において前記特別入賞口に入球した遊技球が所定の領域を通過可能となる当該特別遊技を行う特別遊技実行手段と、
C 前記所定のラウンド遊技において、前記特別入賞口に入球した複数の遊技球のうち1の遊技球が前記所定の領域を通過する毎に、遊技球の通過を示す検知情報を出力する所定領域通過検知手段と、
D 前記所定領域通過検知手段により出力された前記検知情報が入力されると、前記特別遊技の終了後、前記特別遊技を行うか否かの判定が有利な遊技状態で遊技を制御する遊技状態制御手段と、
E 前記特別遊技実行手段により前記特別遊技が行なわれているときに、前記所定領域通過検知手段により出力された前記検知情報の入力に基づいて、当該特別遊技の終了後に前記有利な遊技状態で遊技が制御されることを示唆する示唆演出を演出実行手段に実行させることが可能な演出制御手段とを備え、
F 前記演出制御手段は、前記所定の領域を通過した所定個数目の遊技球の通過を示す前記検知情報が入力されたタイミングで前記示唆演出を実行し、当該所定個数目以外の遊技球の通過を示す前記検知情報の入力に基づいては前記示唆演出を実行しない、遊技機。」

第3 当審の平成28年4月27日付け拒絶理由の概要
当審の平成28年4月27日付け拒絶理由の概要は,次のとおりである。

1.本願の請求項1に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である特許第4883820号公報に記載された発明,及び,周知技術に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2.本願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が,特許法第36条第6項第1号及び第6項第2項に規定する要件を満たしていない。

第4 刊行物について
(1)刊行物に記載された発明
当審において通知した拒絶の理由にて引用された,本願の出願日前に頒布された刊行物である特許第4883820号公報(以下,「刊行物1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は審決にて付した。以下同様。)

(1-a)「【0006】
本発明に係る遊技機は、遊技盤上に設けられた第一始動口と、前記第一始動口に入賞した遊技球を検出する第一始動口検出手段と、前記第一始動口検出手段によって遊技球が検出されたことに起因して、遊技者にとって有利な大当たり遊技を実行するか否かを判定する第一大当たり判定手段と、前記遊技盤上に設けられた第二始動口と、前記第二始動口に入賞した遊技球を検出する第二始動口検出手段と、前記第二始動口検出手段によって遊技球が検出されたことに起因して、前記大当たり遊技を実行するか否かを判定する第二大当たり判定手段と、開閉部材を有し、当該開閉部材が開放された場合にのみ遊技球の入賞が可能となる特別入賞口と、前記第一大当たり判定手段または前記第二大当たり判定手段によって、前記大当たり遊技を実行する判定結果である大当たりと判定された際に、大当たりの種別があらかじめ定められた確率変動大当たりであるか否かを判定する種別判定手段と、前記第一大当たり判定手段または前記第二大当たり判定手段による判定結果が大当たりである際に、前記特別入賞口の開放パターンを決定する決定手段と、前記第一大当たり判定および前記第二大当たり判定の判定結果を遊技者に報知する報知手段と、前記報知手段によって大当たりが報知された後に実行される前記大当たり遊技中に、前記決定手段によって決定された開放パターンに従って前記特別入賞口の開閉部材を開閉する特別入賞口開閉手段と、前記特別入賞口に入賞した遊技球のみが通過することが可能な特定領域を通過した遊技球を検出する特定領域検出手段と、前記種別判定手段によって確率変動大当たりであると判定され、且つ前記特定領域検出手段によって遊技球が検出されたことを条件として、前記第一大当たり判定手段および前記第二大当たり判定手段によって大当たりと判定される確率が通常の確率よりも高くなる第一有利状態を、前記大当たり遊技の終了後に生起する第一有利状態生起手段とを備え、前記第一大当たり判定手段によって大当たりと判定された場合と、前記第二大当たり判定手段によって大当たりと判定された場合とで、前記種別判定手段によって確率変動大当たりであると判定される割合が同一であり、前記特別入賞口の前記開放パターンには、前記特定領域への遊技球の通過が容易な長時間開放パターンと、開放時間が前記長時間開放パターンによる開放時間よりも短く、前記特定領域への遊技球の通過が前記長時間開放パターンによる開放中よりも困難な短時間開放パターンとが含まれており、前記種別判定手段によって確率変動大当たりであると判定された際に前記決定手段によって前記長時間開放パターンが決定される割合が、前記第一大当たり判定手段によって大当たりと判定された場合と、前記第二大当たり判定手段によって大当たりと判定された場合とで異なることによって、前記第一有利状態生起手段によって前記第一有利状態が生起される割合が、前記第一大当たり判定手段によって大当たりと判定された場合と前記第二大当たり判定手段によって大当たりと判定された場合とで異なることを特徴とする。」

(1-b)「【0019】
図3に示すように、Vアタッカー17に入賞した遊技球の流路には、特定領域18および非特定領域19が形成されている。特定領域18は、非特定領域19よりも流路の上流側に設けられている。さらに、Vアタッカー17の内部には、特定領域18の上部開口の開放および閉鎖を行う蓋部材20が設けられている。蓋部材20は、特定領域18の上部である閉鎖位置と、閉鎖位置よりも右方の位置である開放位置(図3に示す位置)に移動することができる。蓋部材20が閉鎖位置にあれば、遊技球は特定領域18を通過することができず、非特定領域19を通過する。蓋部材20が開放位置にあれば、遊技球は、非特定領域19よりも流路の上流側にある特定領域18を高い確率で通過する。
【0020】
詳細は後述するが、パチンコ機1では、大当たり遊技中に遊技球がVアタッカー17内の特定領域18を通過することが、大当たり遊技終了後に確率変動時短状態を生起する条件の1つとなっている。本実施の形態では、Vアタッカー17は1回の大当たり遊技中に1回開放される。Vアタッカー17の開放パターンには、1回の開放動作で最大13秒開放される長時間開放パターンと、最大0.3秒しか開放されない短時間開放パターンとがある。短時間開放パターンの場合のVアタッカー17の最大開放時間は、遊技球の発射間隔よりも短い時間に設定されている。従って、短時間開放パターン場合には、Vアタッカー17に遊技球が入賞する確率は低い。そして、大当たり遊技の種類には、長時間開放パターンが選択される長時間開放大当たりと、短時間開放パターンが選択される短時間開放大当たりとが設けられている。
【0021】
さらに、特定領域18を閉鎖している蓋部材20は、所定のタイミングでのみ開放位置に移動する。詳細には、蓋部材20は、Vアタッカー17の開放と同時に開放位置に移動し、0.3秒後に一旦閉鎖位置へ戻る。そして、Vアタッカー17が開放されてから3.5秒経過した後に再び開放位置に移動し、12.5秒後(Vアタッカー開放から16秒後)に再び閉鎖位置へ戻る。従って、短時間開放大当たりの場合、遊技球が特定領域18を通過できる時間帯は、特定領域18が最初に開放状態となる0.3秒間のみとなる。また、図3に示すように、遊技球は、Vアタッカー17の入口に流入してから特定領域18へ至るまでに一定距離の流路を通過する必要がある。流路は、遊技球がVアタッカー17の入口から特定領域18へ至るまでの平均時間が0.3秒よりも長くなるように設計されている。つまり、短時間開放大当たりの場合には、遊技球がVアタッカー17に入賞する確率が長時間開放大当たりの場合よりも低いことに加え、Vアタッカー17に入賞した遊技球が特定領域18を通過する確率も低い。よって、短時間開放大当たりの場合に遊技球が特定領域18を通過する確率は、長時間開放大当たりの場合に比べて大幅に低い。」

(1-c)「【0034】
サブ制御基板58は、CPU581、RAM582、およびROM583を備え、ランプドライバ基板46、演出制御基板43、およびスピーカ48に接続している。サブ制御基板58は、主基板41から送信されるコマンドに従って、演出等の総合的な制御を行う。ランプドライバ基板46は演出装置30等を制御する。演出制御基板43は、CPU43a等を備え、サブ制御基板58から受信するコマンドに従って表示画面28の表示を制御する。払出制御基板45は、CPU45a等を備える。払出制御基板45は、主基板41から送信されるコマンドに応じて賞品球払出装置49の動作を制御し、所定数の遊技球を払い出させる。」

(1-d)「【0048】
次に、図9から図14を参照して、パチンコ機1の主基板41による動作について説明する。パチンコ機1の主制御は、ROM53に記憶されている制御プログラムによって行われる。制御プログラムのメイン処理は、割込信号発生回路57(図4参照)が4ms毎に発生する割込信号をCPU51が感知した際に、CPU51において実行される。以下、フローチャートの各ステップについて「S」と略記する。
【0049】
まず、コマンド出力処理が行われる(S10)。コマンド出力処理では、制御コマンドが、サブ制御基板58、払出制御基板45、中継基板47等に出力される。ここで出力される制御コマンドは、前回実施されたメイン処理においてRAM52に記憶された制御コマンドである。
【0050】
次いで、スイッチ読込処理が行われる(S11)。スイッチ読込処理では、普通図柄始動ゲート12、各入賞口、特定領域18、および非特定領域19に設けられた各スイッチ(図4参照)の検出結果から、遊技球を検知するための処理が行われる。
【0051】
次いで、カウンタ更新処理が行われる(S12)。カウンタ更新処理では、RAM52に記憶されている乱数取得カウンタの値が加算され、且つ、タイマカウンタの値が減算される。
【0052】
次いで、特別電動役物処理が行われる(S13)。特別電動役物処理では、主に、大当たり遊技の動作を制御するための処理と、大当たり遊技終了後に生起される遊技状態に関する処理とが行われる(図14参照)。」

(1-e)「【0072】
次に、図14を参照して、特別電動役物処理(S13、図9参照)の詳細について説明する。まず、特別電動役物処理で使用されるフラグについて説明する。ここで使用される主なフラグとして、開放中フラグ、および処理待機中フラグがある。開放中フラグは、通常アタッカー16およびVアタッカー17のいずれかが開放されているか否かを示すフラグであり、いずれかの開放中に「1」が記憶されて「ON」とされ、いずれも閉鎖されている場合には「OFF」とされる。処理待機中フラグは、通常アタッカー16およびVアタッカー17のいずれかが閉鎖されてから次の処理が行われるまでの待機時間中であるか否かを示すフラグであり、待機時間中には「1」が記憶されて「ON」とされる。
【0073】
図14に示すように、特別電動役物処理が開始されると、大当たり遊技状態であるか否かが判断される(S101)。大当たり遊技状態フラグが「OFF」となっており、大当たり遊技状態でないと判断された場合には(S101:NO)、処理はそのままメイン処理へ戻る。大当たり遊技状態であると判断された場合には(S101:YES)、処理待機中フラグによって、通常アタッカー16およびVアタッカー17に関する次の処理が行われるまでの待機時間中であるか否かが判断される(S102)。
【0074】
処理待機中フラグが「OFF」であり、待機時間中でないと判断された場合には(S102:NO)、通常アタッカー16およびVアタッカー17のいずれかが開放されているか否かが判断される(S103)。開放中フラグが「OFF」であり、通常アタッカー16およびVアタッカー17がいずれも閉鎖中である場合には(S103:NO)、通常アタッカー16およびVアタッカー17のいずれかを開放させる処理が行われる(S104?S111)。まず、実行されたアタッカー16,17の開閉動作の回数を計数するラウンド数カウンタに「1」が加算される(S104)。次いで、ラウンド数カウンタの値によって、最終ラウンド(例えば、全15ラウンド中の15ラウンド目)であるか否かが判断される(S105)。最終ラウンドでなければ(S105:NO)、通常アタッカー16を開放させるための通常アタッカー開放コマンドがRAM52に記憶される(S106)。13秒の最大開放時間を計測する長時間開放カウンタがセットされる(S109)。開放中フラグが「ON」とされて(S111)、処理はS113の判断へ移行する。
【0075】
最終ラウンドである場合には(S105:YES)、Vアタッカー17を開放させるためのVアタッカー開放コマンドがRAM52に記憶される(S107)。なお、Vアタッカー開放コマンドが記憶されると同時に、蓋部材20(図3参照)を前述した手順で開閉させるための制御処理(図示外)が行われる。次いで、大当たりの種別が長時間開放大当たり(本実施の形態では、「確率変動長時間開放大当たり」)であるか否かが判断される(S108)。長時間開放大当たりであれば(S108:YES)、長時間開放カウンタがセットされて(S109)、開放中フラグが「ON」とされ(S111)、Vアタッカー17が長時間開放パターンで開閉される。短時間開放大当たりであれば(S108:NO)、0.3秒の最大開放時間を計測する短時間開放カウンタがセットされて(S110)、開放中フラグが「ON」とされ(S111)、Vアタッカー17は短時間開放パターンで開閉される。
【0076】
次いで、開放しているアタッカー16,17へ入賞した遊技球の数が「9」以上であるか否かが判断される(S113)。1回の開放動作中(1回のラウンド中)にアタッカー16,17に入賞した遊技球の個数は、スイッチ読込処理(S11、図9参照)において計数されている。入賞球数が「9」以上でなければ(S113:NO)、13秒または0.3秒の最大開放時間が経過したか否かが判断される(S114)。最大開放時間が経過していなければ(S114:NO)、処理はそのままメイン処理へ戻る。その後に行われる特別電動役物処理で、大当たり遊技状態であり(S101:YES)、待機時間中でなく(S102:NO)、アタッカー16,17が開放中である場合には(S103:YES)、アタッカー16,17に9個以上の遊技球が入賞するか、若しくは最大開放時間が経過するまで、これらの判断が繰り返し行われる(S113:NO、S114:NO)。
【0077】
9個以上の遊技球が入賞するか(S113:YES)、若しくは最大開放時間が経過した場合には(S114:YES)、開放している通常アタッカー16またはVアタッカー17を閉鎖させるための閉鎖コマンドがRAM52に記憶される(S115)。所定の待機時間が処理待機時間カウンタに記憶される(S116)。開放中フラグが「OFF」とされる(S117)。待機時間中であることを示す「1」が処理待機中フラグに記憶されて「ON」とされ(S118)、処理はメイン処理へ戻る。
【0078】
処理待機中フラグが「ON」である場合には(S102:YES)、処理待機時間カウンタの値によって、待機時間が経過したか否かが判断される(S121)。カウンタの値が「0」でなく、待機時間の計測中であれば(S121:NO)、処理はそのままメイン処理へ戻る。繰り返しメイン処理が行われる中で時間が経過し、待機時間が経過すると(S121:YES)、処理待機中フラグが「OFF」とされる(S122)。
【0079】
次いで、規定ラウンド(例えば、15ラウンド)が消化されたか否かが、ラウンド数カウンタの値によって判断される(S123)。規定ラウンドが消化されていなければ(S123:NO)、処理はメイン処理に戻り、次回以降の特別電動役物処理で再びアタッカー16,17の開閉動作が行われる。規定ラウンドが消化された場合には(S123:YES)、ラウンド数カウンタの値が初期化される(S124)。大当たり遊技状態フラグが「OFF」とされる(S125)。
【0080】
次いで、「非確率変動時短状態」または「確率変動時短状態」を生起する処理が行われる。詳細には、まず、大当たり種別が確率変動大当たりであるか否かが判断される(S126)。大当たり種別が確率変動大当たりでなく通常大当たりであれば(S126:NO)、その時点で「確率変動時短状態」は生起されない。従って、時短フラグのみが「ON」とされて(S129)、「非確率変動時短状態」が生起され、処理はメイン処理へ戻る。大当たり種別が確率変動大当たりであれば(S126:YES)、大当たり遊技中にVアタッカー17内の特定領域18を遊技球が通過したか否かが判断される(S127)。特定領域18を通過した遊技球を特定領域スイッチ76が検出すると、メイン処理のスイッチ読込処理(S11、図9参照)において、入賞球フラグ記憶エリア5202の特定領域スイッチ76に対応するフラグが「ON」とされる。このフラグが「ON」とされていれば(S127:YES)、確率変動フラグが「ON」とされ(S128)、さらに時短フラグが「ON」とされて(S129)、「確率変動時短状態」が生起される。処理はメイン処理へ戻る。特定領域18を遊技球が通過していなければ(S127:NO)、時短フラグのみが「ON」とされて(S129)、「非確率変動時短状態」が生起され、処理はメイン処理へ戻る。」

(1-f)「【0085】
そして、「確率変動時短状態」中に大当たりと判定される確率は、「通常状態」および「非確率変動時短状態」に比べて高い。第二大当たり判定によって大当たりと判定されると、「確率変動長時間開放大当たり」となる割合は第一大当たり判定の場合よりも増加し、85%となる。つまり、確率変動大当たりとなる割合自体は、第一大当たり判定と第二大当たり判定で同一の割合となっているが、大当たり遊技終了後に「確率変動時短状態」が生起される割合は、第一大当たり判定と第二大当たり判定との間で異なる。従って、パチンコ機1は、確率変動大当たりとなる割合に制約を受けることなく、確率変動状態へ移行する割合を2つの大当たり判定の間で容易に変えることができる。」

(1-g)「【0090】
なお、本実施の形態における第一特別図柄始動入賞口14が本発明の「第一始動口」に相当する。第一始動スイッチ72が「第一始動口検出手段」に相当する。図12のS37で第一大当たり判定を行うCPU51が「第一大当たり判定手段」として機能する。第二特別図柄始動電動役物15が「第二始動口」に相当する。第二始動スイッチ73が「第二始動口検出手段」に相当する。図12のS44で第二大当たり判定を行うCPU51が「第二大当たり判定手段」として機能する。Vアタッカー17が「特別入賞口」に相当する。図14のS126で確率変動大当たりであるか否かを判定するCPU51が「種別判定手段」として機能する。図12のS40およびS47で特別図柄(大当たりの種別)を決定するCPU51が「決定手段」として機能する。報知演出を実行する表示画面28等が「報知手段」に相当する。Vアタッカー開閉ソレノイド71が「特別入賞口開閉手段」に相当する。特定領域スイッチ76が「特定領域検出手段」に相当する。図14のS128およびS129で「確率変動時短状態」を生起するCPU51が「第一有利状態生起手段」として機能する。」

(1-h)【0072】?【0075】の記載,及び,図14の図示内容によれば,大当たり遊技状態である場合には,最終ラウンドでなければ通常アタッカー16を開放させ,最終ラウンドである場合にはVアタッカー17を開放させる,特別電動役物処理が行われるといえ,【0048】?【0052】,及び,図9の図示内容によれば,当該特別電動役物処理は,大当たり遊技の動作を制御するための処理であり,CPU51によって実行されるものである。
また,大当たり遊技状態であるか否かは,前記第一大当たり判定手段または前記第二大当たり判定手段による大当たり判定の結果に基づくことは明らかである。
更に,【0021】には,特定領域18を閉鎖している蓋部材20は,Vアタッカー17の開放と同時に開放位置に移動することが記載されている。
以上のことから,刊行物1には,前記第一大当たり判定手段または前記第二大当たり判定手段による大当たり判定の結果が大当たりであれば,最終ラウンドでなければ通常アタッカー16を開放させ,最終ラウンドである場合にはVアタッカー17を開放させ,特定領域18を閉鎖している蓋部材20を開放位置に移動させる,大当たり遊技の動作を制御するための処理である特別電動役物処理を行うCPU51が,記載されているといえる。

(1-i)【0076】には,1回の開放動作中(1回のラウンド中)にVアタッカー17に入賞した遊技球の個数を,スイッチ読込処理において計数することが記載されている。
また,【0050】によれば,スイッチ読込処理では,特定領域18に設けられたスイッチの検出結果から,遊技球を検知しており,【0048】?【0052】,及び,図9の図示内容によれば,当該スイッチ読込処理は,CPU51によって実行されるものである。
以上のことから,刊行物1には,1回の開放動作中(1回のラウンド中)に,特定領域18に設けられたスイッチの検出結果から,遊技球を検知するスイッチ読込処理を行うCPU51が,記載されているといえる。

(1-j)【0080】には,大当たり遊技中にVアタッカー17内の特定領域18を通過した遊技球を特定領域スイッチ76が検出すると「確率変動時短状態」が生起されると記載されている。
また,「確率変動時短状態」については,【0020】に,大当たり遊技終了後に生起されることが記載され,【0085】には,「通常状態」および「非確率変動時短状態」に比べて大当たりと判定される確率が高いことが記載され,【0090】には,CPU51によって生起されることが記載されている。
以上のことから,刊行物1には,大当たり遊技中にVアタッカー17内の特定領域18を通過した遊技球を特定領域スイッチ76が検出すると,大当たり遊技終了後に,「通常状態」および「非確率変動時短状態」に比べて大当たりと判定される確率が高い「確率変動時短状態」を生起するCPU51が,記載されているといえる。

(1-k)【0034】には,演出制御基板43は,サブ制御基板58から受信するコマンドに従って表示画面28の表示を制御することが記載されている。
一方で,【0034】には,サブ制御基板58は演出等の総合的な制御を行うことが記載されているから,演出制御基板43が,サブ制御基板58から受信するコマンドに従って制御される表示画面28の表示には,演出に関するものであることは明らかである。
以上のことから,刊行物1には,演出に関する表示画面28の表示を演出制御基板43に制御させるサブ制御基板58が,記載されている。

上記(1-a)?(1-g)の記載事項,及び,(1-h)?(1-k)の認定事項によれば,刊行物1には以下の発明(以下,「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる(a?eは,本願発明のA?Eに対応させて付した。)。

「a 遊技盤上に設けられた第一始動口または第二始動口に入賞した遊技球が検出されたことに起因して、遊技者にとって有利な大当たり遊技を実行するか否かを判定する第一大当たり判定手段または第二大当たり判定手段と(【0006】),
b 前記第一大当たり判定手段または前記第二大当たり判定手段による大当たり判定の結果が大当たりであれば,最終ラウンドでなければ通常アタッカー16を開放させ,最終ラウンドである場合にはVアタッカー17を開放させ,特定領域18を閉鎖している蓋部材20を開放位置に移動させる,大当たり遊技の動作を制御するための処理である特別電動役物処理を行うCPU51と(認定事項(1-h)),
c 1回の開放動作中(1回のラウンド中)に,特定領域18に設けられたスイッチの検出結果から,遊技球を検知するスイッチ読込処理を行うCPU51と(認定事項(1-i)),
d 大当たり遊技中にVアタッカー17内の特定領域18を通過した遊技球を特定領域スイッチ76が検出すると,大当たり遊技終了後に,「通常状態」および「非確率変動時短状態」に比べて大当たりと判定される確率が高い「確率変動時短状態」を生起するCPU51と(認定事項(1-j)),
e 演出に関する表示画面28の表示を演出制御基板43に制御させるサブ制御基板58とを備えた(認定事項(1-k)),
パチンコ機1。」

第5 対比
本願発明と刊行物1発明とを,分説に従い対比する。
(a)刊行物1発明における「第一始動口または第二始動口」,「大当たり遊技」,「第一大当たり判定手段または第二大当たり判定手段」が,本願発明の「始動口」,「特別遊技」,「特別遊技判定手段」に相当することは明らかである。
これより,刊行物1発明における「遊技盤上に設けられた第一始動口または第二始動口に入賞した遊技球が検出されたことに起因して、遊技者にとって有利な大当たり遊技を実行するか否かを判定する第一大当たり判定手段または第二大当たり判定手段」は,本願発明における「遊技球が流下可能な遊技領域に設けられる始動口に遊技球が入球することにより、特別遊技を行うか否かを判定する特別遊技判定手段」に相当する。

(b)刊行物1発明は,大当たりであれば,最終ラウンドでなければ通常アタッカー16を開放させ,最終ラウンドである場合にはVアタッカー17を開放させることから,大当たりであれば,通常アタッカー16またはVアタッカー17を開閉させるラウンド遊技を複数回実行させているといえる。また,通常アタッカー16及びVアタッカー17が,遊技領域に設けられ,開放時に遊技球が入球可能であることは明らかである。
よって,刊行物1発明の「通常アタッカー16及びVアタッカー17」は,本願発明の「特別入賞口」に相当する。
さらに,刊行物1発明は,最終ラウンドである場合にはVアタッカー17を開放させ,特定領域18を閉鎖している蓋部材20を開放位置に移動させることにより,特定領域18を遊技球か通過可能としていることから,最終ラウンドにおいてVアタッカー17に入球した遊技球が特定領域18を通過可能としているといえる。
よって,刊行物1発明の「最終ラウンド」,「特定領域18」は,本願発明の「所定のラウンド遊技」,「所定の領域」にそれぞれ相当する。
これより,刊行物1発明における「前記第一大当たり判定手段または前記第二大当たり判定手段による大当たり判定の結果が大当たりであれば,最終ラウンドでなければ通常アタッカー16を開放させ,最終ラウンドである場合にはVアタッカー17を開放させ,特定領域18を閉鎖している蓋部材20を開放位置に移動させる,大当たり遊技の動作を制御するための処理である特別電動役物処理を行うCPU51」は,本願発明における「前記特別遊技判定手段により特別遊技を行うと判定された場合、前記遊技領域に設けられた特別入賞口を開閉させるラウンド遊技を複数回実行して、当該特別入賞口に遊技球を入球可能にさせ、所定のラウンド遊技において前記特別入賞口に入球した遊技球が所定の領域を通過可能となる当該特別遊技を行う特別遊技実行手段」に相当する。

(c)刊行物1発明は,1回の開放動作中(1回のラウンド中)に,特定領域18に設けられたスイッチの検出結果から,遊技球を検知するものであるが,当該開放動作(ラウンド)に最終ラウンドが含まれることは明らかである。
また,スイッチ読込処理に関し,刊行物1の【0076】には,1回の開放動作中(1回のラウンド中)にVアタッカー17に入賞した遊技球の個数を,スイッチ読込処理において計数することが記載されており,【0019】には,Vアタッカーに入賞した遊技球の流路には,特定領域18と非特定領域19が形成されていると記載されており,【0050】には,スイッチ読込処理では,特定領域18と非特定領域19に設けられたスイッチの検出結果から,遊技球を検知していると記載されている。
これらの記載から,Vアタッカー17に入賞した遊技球の個数は,特定領域18と非特定領域19に設けられたスイッチの検出結果に基づいて計数されていることは明らかである。そして,特定領域18と非特定領域19に設けられたスイッチの検出結果に基づいて計数するためには,特定領域18と非特定領域19を遊技球が通過する毎に,当該遊技球を検出する必要がある。
よって,スイッチ読込処理では,遊技球が特定領域18を通過する毎に,当該遊技球の通過を検出しているといえる。
これより,刊行物1発明における「1回の開放動作中(1回のラウンド中)に,特定領域18に設けられたスイッチの検出結果から,遊技球を検知するスイッチ読込処理を行うCPU51」は,本願発明における「前記所定のラウンド遊技において、前記特別入賞口に入球した複数の遊技球のうち1の遊技球が前記所定の領域を通過する毎に、遊技球の通過を示す検知情報を出力する所定領域通過検知手段」に相当する。

(d)刊行物1発明における「確率変動時短状態」は,「通常状態」および「非確率変動時短状態」に比べて大当たりと判定される確率が高いから,大当たりを行うか否かの判定が有利な遊技状態であるといえる。
これより,刊行物1発明における「大当たり遊技中にVアタッカー17内の特定領域18を通過した遊技球を特定領域スイッチ76が検出すると,大当たり遊技終了後に,「通常状態」および「非確率変動時短状態」に比べて大当たりと判定される確率が高い「確率変動時短状態」を生起するCPU51」は,本願発明の「前記所定領域通過検知手段により出力された前記検知情報が入力されると、前記特別遊技の終了後、前記特別遊技を行うか否かの判定が有利な遊技状態で遊技を制御する遊技状態制御手段」に相当する。

(e)刊行物1発明の,演出に関する表示画面28の表示は,演出の内容は不明であるものの,何らかの演出であることは明らかである。
これより,刊行物1発明の「演出に関する表示画面28の表示を演出制御基板43に制御させるサブ制御基板58」と,本願発明の「前記特別遊技実行手段により前記特別遊技が行なわれているときに、前記所定領域通過検知手段により出力された前記検知情報の入力に基づいて、当該特別遊技の終了後に前記有利な遊技状態で遊技が制御されることを示唆する示唆演出を演出実行手段に実行させることが可能な演出制御手段」とは,「演出を演出実行手段に実行させることが可能な演出制御手段」という点で共通する。

上記(a)?(e)によれば,本願発明と刊行物1発明は,
「A 遊技球が流下可能な遊技領域に設けられる始動口に遊技球が入球することにより、特別遊技を行うか否かを判定する特別遊技判定手段と、
B 前記特別遊技判定手段により特別遊技を行うと判定された場合、前記遊技領域に設けられた特別入賞口を開閉させるラウンド遊技を複数回実行して、当該特別入賞口に遊技球を入球可能にさせ、所定のラウンド遊技において前記特別入賞口に入球した遊技球が所定の領域を通過可能となる当該特別遊技を行う特別遊技実行手段と、
C 前記所定のラウンド遊技において、前記特別入賞口に入球した複数の遊技球のうち1の遊技球が前記所定の領域を通過する毎に、遊技球の通過を示す検知情報を出力する所定領域通過検知手段と、
D 前記所定領域通過検知手段により出力された前記検知情報が入力されると、前記特別遊技の終了後、前記特別遊技を行うか否かの判定が有利な遊技状態で遊技を制御する遊技状態制御手段と、
E’演出を演出実行手段に実行させることが可能な演出制御手段とを備えた、遊技機。」
の点で一致し,次の点で相違する。

(相違点1)
演出制御手段に関し,本願発明は「前記特別遊技実行手段により前記特別遊技が行なわれているときに、前記所定領域通過検知手段により出力された前記検知情報の入力に基づいて、当該特別遊技の終了後に前記有利な遊技状態で遊技が制御されることを示唆する示唆演出」を実行するのに対し,刊行物1発明は,どのような演出を実行するのか不明である点。

(相違点2)
演出制御手段に関し,本願発明は「前記所定の領域を通過した所定個数目の遊技球の通過を示す前記検知情報が入力されたタイミングで前記示唆演出を実行し、当該所定個数目以外の遊技球の通過を示す前記検知情報の入力に基づいては前記示唆演出を実行しない」のに対し,刊行物1発明は,その様な構成を有するか否か不明である点。

第6 当審の判断
1.審判請求人の主張の概要
審判請求人は,平成28年6月14日付け意見書において,刊行物1には,大当り遊技中に遊技球が特定領域を通過した(V入賞した)ことを条件として,大当り遊技の終了後に確率変動時短状態(有利な遊技状態)に制御される遊技機について開示されているように思われるが,遊技球がV入賞したときにどのような演出を実行するかについて開示および示唆するものではなく,刊行物2,3は,遊技球のV入賞を条件に大当りラウンドが継続する遊技機について開示するものであり,遊技機のV入賞を条件に大当り遊技後に大当り判定が有利な遊技状態(例えば高確状態)で制御される遊技機について開示するものではないため,刊行物1に,刊行物2,3の着想を組み合わせることは容易ではなく,仮に組み合わせたとしてもV入賞したことを報知する着想が示唆される程度に過ぎず,大当り遊技後に大当り判定が有利な遊技状態(例えば高確状態)で制御されることを報知するという報知内容までが示唆されるものではないと主張する。

2.判断
上記相違点1,2は,技術的に関連する内容であるので,まとめて検討する。

(1)本願発明は,構成Fに示されるように,「前記所定の領域を通過した所定個数目の遊技球の通過を示す前記検知情報が入力されたタイミングで前記示唆演出を実行し、当該所定個数目以外の遊技球の通過を示す前記検知情報の入力に基づいては前記示唆演出を実行しない」ものであるが,当該記載における「所定個数目」には,1個目を含むものであることは明らかであるから,以下においては,所定個数目が1個目の場合について検討する。

(2)大当り遊技中に遊技球が特定領域を通過したことを条件として,大当り遊技の終了後に確率変動状態に制御される遊技機において,遊技球が特定領域を通過したときに,確率変動状態に制御されることを示唆する示唆演出を行うことは,本願の出願日前において周知の技術(以下,「周知技術A」という。)である(例えば,本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2010-63502号公報の【0113】には,特別遊技A中に遊技球が第2大入賞口2220内の第一特定領域172を通過することにより,特別遊技A終了後,確率変動遊技状態に移行することが記載され,【0102】には,特別遊技Aの実行中に特定領域に遊技球が入球した場合「確変昇格おめでとう」という表示を演出表示装置2310上で実行することが記載されている。また,本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2006-296958号公報の【0146】には,大当り遊技状態において,遊技球が特別領域200内の特定領域に入賞すると,確変状態に移行することが記載され,【0228】には,ラウンド開始後,遊技球が特定領域を通過したときには,飾り図柄表示装置9において人が橋を渡りきったような表示をすることが記載されている。)

(3)また,所定の領域を1個でも通過すれば大当りラウンドが継続する遊技機において,通過した1個目の遊技球の通過を検出したタイミングで入賞の報知を行い,2個目以降の遊技球の通過に基づいては入賞の報知を行わないことは,本願の出願日前において周知の技術(以下,「周知技術B」という。)である(例えば,当審による拒絶理由において提示した本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2002-35268号公報の【0072】には,初回のV入賞に対応して特定入賞報知情報を表示し,2回目以降のV入賞が発生しても表示しない旨が記載されている。また,当審による拒絶理由において提示した本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2004-358148号公報の【0053】,【0089】-【0094】,図9には,特定領域に入球した遊技球が1個目である場合には効果音による報知を行い,1個目でない場合には報知処理を行わない旨の記載がある。)。

(4)ここで,上記第4の(1)に示したように,刊行物1発明は,大当たり遊技中に遊技球が特定領域を通過したことを条件として,大当たり遊技の終了後に確率変動時短状態に制御される遊技機である。
そして,上記(2)に示したように,刊行物1発明と同じく,大当り遊技中に遊技球が特定領域を通過したことを条件として,大当り遊技の終了後に確率変動状態に制御される遊技機において,遊技球が特定領域を通過したときに,確率変動状態に制御されることを示唆する示唆演出を行うことは周知技術(周知技術A)である。
よって,刊行物1発明においても,上記周知技術Aと同様に,遊技球が特定領域を通過したときに,確率変動状態に制御されることを示唆する示唆演出を行わせることは,当業者が容易に想到し得たものである。

(5)さらに,刊行物1発明においては,Vアタッカー17内の特定領域18を1個でも通過すれば確率変動時短状態となるものである。
そして,上記(3)に示したように,通過した1個目の遊技球の通過を検出したタイミングで入賞の報知を行い,2個目以降の遊技球の通過に基づいては入賞の報知を行わないことは,周知技術(周知技術B)である。
よって,周知技術Bを考慮すれば,Vアタッカー17内の特定領域18を1個目が通過したときのみにその旨の報知をし,2個目以降の遊技球の通過において報知を行わないようにすることは,当業者であれば当然になし得たことに過ぎない。

(6)以上のことから,刊行物1発明において,上記(4)のように周知技術Aを適用し,サブ制御基板に遊技球が特定領域を通過したときに,確率変動状態に制御されることを示唆する示唆演出を実行させ,上記相違点1に係る本願発明の構成とするとともに,上記(5)のように周知技術Bを考慮することにより,Vアタッカー17内の特定領域18を1個目が通過したときのみに確率変動時短状態となる示唆演出をし,2個目以降の遊技球の通過において示唆演出を行わないように構成することで,上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者にとって容易に想到し得たものである。

また,本願発明の効果は,当業者が刊行物1発明及び周知技術A及びBから予測される範囲内のものに過ぎず,格別なものではない。

3.審判請求人の主張について
上記2.(2)に示したとおり,大当り遊技中に遊技球が特定領域を通過したことを条件として,大当り遊技の終了後に確率変動状態に制御される遊技機において,遊技球が特定領域を通過したときに,確率変動状態に制御されることを示唆する示唆演出を行うことは周知技術であり,上記2.(4)に示したとおり,刊行物1発明においても,上記周知技術Aと同様に,遊技球が特定領域を通過したときに,確率変動状態に制御されることを示唆する示唆演出を行わせることは,当業者が容易に想到し得たものである。
よって,刊行物1が,遊技球がV入賞したときにどのような演出を実行するかについて開示および示唆するものでないとしても,遊技球が特定領域を通過したときに,確率変動状態に制御されることを示唆する示唆演出を行うことは周知技術(周知技術A)であり,本願発明は,刊行物1発明,及び,周知技術A及びBに基づいて,当業者が容易に想到し得たものであるから,上記審判請求人の主張は採用できない。

4.小括
よって,本願発明は,刊行物1発明,及び,周知技術A及びBに基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。

第7 まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-08 
結審通知日 2016-09-13 
審決日 2016-09-26 
出願番号 特願2012-112661(P2012-112661)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 辻野 安人  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 山崎 仁之
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人 小笠原特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ