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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01H 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01H |
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管理番号 | 1321673 |
審判番号 | 不服2016-1089 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-01-26 |
確定日 | 2016-11-10 |
事件の表示 | 特願2014-531626「電子部品、電子部品と端子金具との接続構造、電子部品を有する電気接続箱」拒絶査定不服審判事件〔2014年2月27日国際公開、WO2014/030626〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年8月20日(優先権主張平成24年8月21日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成27年10月1日付けの拒絶理由通知に対して、同年11月5日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月10日付け(発送日:12月15日)で拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年1月26日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。 第2 平成28年1月26日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成28年1月26日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正後の本願発明 平成28年1月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。 「外形が直方体状の部品本体と、端子金具と嵌合される複数の端子部と、を有する電子部品において、 前記複数の端子部は、前記部品本体における前記端子部と前記端子金具との嵌合方向に平行な側面から突出し、その先端部が前記側面と対向して延びるように直角に曲げられたものであり、 前記複数の端子部の先端部が、前記側面と垂直な方向から見て当該側面からはみ出してないとともに、 前記複数の端子部における前記側面からの突出位置が、前記複数の端子部と前記端子金具との嵌合方向に沿って並んで設けられ、かつ位置をずらして設けられていることを特徴とする電子部品。」 なお、下線は補正箇所であり、請求人が付したとおりである。 本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数の端子部の突出位置」について、複数の端子部と端子金具との嵌合方向に「沿って並んで設けられ」ることを限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 2 刊行物 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された実願昭62-39632号(実開昭63-146939号)のマイクロフィルム(以下「刊行物」という。)には、「電磁継電器」に関し、次の事項が、図面(特に第1?3図参照)と共に記載されている。 (1)明細書1頁13?18行 「(考案の分野) 本考案は、電磁継電器に係り、特には、本体内に電磁石と前記電磁石の作動により開閉される接点機構等とが設けられるとともに、前記本体外面に端子が突出して設けられてなる電磁継電器に関する。」 (2)同2頁9?20行 「このように端子101,101が本体102の取り付け面から突出するような構成の電磁継電器は、上記のようにプリント基板103に取り付ける際、ソケット104を使用して取り付ける場合は端子101,101長さにほぼ相当するソケット104の高さ分、直付けの場合は端子101,101の長さ分、電磁継電器が本体102の高さより高くプリント基板103上に突出し、したがって、プリント基板103上に本体102高さより高い配置スペースを確保しなければならず、機器におけるスペースの使用効率が悪いという欠点があった。」 (3)同3頁8?13行 「(考案の目的) 本考案は、このような事情に鑑みてなされたものであって、電磁継電器のプリント基板等への取り付けが、突出高さを低くできるようにして、機器におけるスペースの使用効率を向上することを目的とする。」 (4)同4頁15行?5頁16行 「図において、1は電磁継電器であり、本体2と端子3,3、4,4とからなっており、本体2は、樹脂製ケーシング内に電磁石、電磁石の作動により動作する可動体、可動体により開閉される接点機構等が納められて構成されており、電磁石のコイル端子として端子3,3、接点機構の端子として端子4,4が、本体2の両側面5,5上部から突出して設けられている。端子3,3、4,4は折れ曲がり形状で、本体2の両側面5,5に沿って、その端部3a,3b、4a,4b(3b、4bは図に表れない)それぞれが、本体2の取り付け面6位置にまで至らないように配置されている。 そして、この電磁継電器1は、第1図に示すように、内部にソケット端子7…の設けられたソケット8を介してプリント基板9に実装されるようになっていて、ソケット8内に上方から電磁継電器1を押し入れると、端子3,3、4,4とソケット端子7…とがソケット端子7…のバネ力により圧接し、取り付け状態においては、電磁継電器1の取り付け面6が直接プリント基板9面に接し、第3図に示すように、電磁継電器1はその項部10をソケット8から若干突出するようになっている。」 (5)上記(4)の「ソケット8内に上方から電磁継電器1を押し入れると、端子3,3、4,4とソケット端子7…とがソケット端子7…のバネ力により圧接」するとの記載及び第1図からみて、端子3,3、4,4がソケット端子7に圧入されることが理解できる。 (6)第1図及び第2図には、上記(1)ないし(5)を踏まえると、以下のアないしエが図示されているといえる。 ア 本体2が箱状であること。 イ 複数の端子3,3、4,4が本体2における前記端子3,3、4,4とソケット端子7との圧入方向(第1図の白抜き矢印方向)に平行な側面5,5から突出し、その端部3a,3b、4a,4bが前記側面5,5と対向して延びるように直角に曲げられること。 ウ 複数の端子3,3、4,4の端部3a,3b、4a,4bが、前記側面5,5と垂直な方向から見て当該側面5,5からはみ出していないこと。 エ 複数の端子3,3、4,4における前記側面5,5からの突出位置が、前記複数の端子3,3、4,4と前記ソケット端子7との圧入方向に直角な方向(第1図の紙面に垂直方向)に沿って並んで設けられ、かつ位置をずらして設けられていること。 上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「箱状の本体2と、ソケット端子7に圧入される複数の端子3,3、4,4と、を有する電磁継電器1において、 前記複数の端子3,3、4,4は、前記本体2における前記端子3,3、4,4と前記ソケット端子7との圧入方向に平行な側面5,5から突出し、その端部3a,3b、4a,4bが前記側面5,5と対向して延びるように直角に曲げられたものであり、 前記複数の端子3,3、4,4の端部3a,3b、4a,4bが、前記側面5,5と垂直な方向から見て当該側面5,5からはみ出してないとともに、 前記複数の端子3,3、4,4における前記側面5,5からの突出位置が、前記複数の端子3,3、4,4と前記ソケット端子7との圧入方向に直角な方向に沿って並んで設けられ、かつ位置をずらして設けられている電磁継電器1。」 3 対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「電磁継電器1」は前者の「電子部品」に相当し、同様に、「箱状の本体2」は「外形が直方体状の部品本体」に、「端子3,3、4,4」は「端子部」に、「端部3a,3b、4a,4b」は「先端部」に、「ソケット端子7」は「端子金具」に、「側面5,5」は「側面」にそれぞれ相当する。 後者の「ソケット端子7に圧入される複数の端子3,3、4,4」と前者の「端子金具と嵌合される複数の端子部」とは、「端子金具に挿入される複数の端子部」という限りで共通し、後者の「前記端子3,3、4,4と前記ソケット端子7との圧入方向」と前者の「前記端子部と前記端子金具との嵌合方向」とは、「前記端子部と前記端子金具との挿入方向」という限りで共通する。 したがって、両者は、 「外形が直方体状の部品本体と、端子金具に挿入される複数の端子部と、を有する電子部品において、 前記複数の端子部は、前記部品本体における前記端子部と前記端子金具との挿入方向に平行な側面から突出し、その先端部が前記側面と対向して延びるように直角に曲げられたものであり、 前記複数の端子部の先端部が、前記側面と垂直な方向から見て当該側面からはみ出してない、電子部品。」 である点で一致し、次の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明は、端子金具と複数の端子部とが「嵌合される」のに対し、 引用発明は、ソケット端子7に複数の端子3,3、4,4が「圧入される」点。 [相違点2] 本願補正発明は「前記複数の端子部における前記側面からの突出位置が、前記複数の端子部と前記端子金具との嵌合方向に沿って並んで設けられ、かつ位置をずらして設けられている」のに対し、 引用発明は「前記複数の端子3,3、4,4における前記側面5,5からの突出位置が、前記複数の端子3,3、4,4と前記ソケット端子7との圧入方向に直角な方向に沿って並んで設けられ、かつ位置をずらして設けられている」点。 4 当審の判断 そこで、各相違点について検討する。 (1)相違点1について リレー等の電子部品において、雄型の接続端子と雌型の接続端子とを嵌合させて電気的に接続させることは、例えば、実願昭63-29096号(実開平1-134342号)のマイクロフィルム(明細書2頁16?18行、第2図参照)に記載されるように周知の技術事項である。 引用発明と上記周知の技術事項とは、電磁継電器の端子の接続に関して共通するから、引用発明において、端子3,3、4,4が電気的に接続するソケット端子7に雌型端子を採用して嵌合させるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2)相違点2について コネクタ等の電子部品の複数の直角に曲げられた端子を、側面からの突出位置が複数の端子の挿入方向に沿って並んで設け、かつ位置をずらして設けることは、例えば、特開2001-244008号公報(図5のアングル型コンタクト315の配列参照)、特開平9-283241号公報(図1?3のターミナルピン20の配列、図9のターミナルピン3の配列参照)、特開2002-42935号公報(図1、2のコンタクト20の配列参照)に記載されるように周知の技術事項である。 引用発明と上記周知の技術事項とは、電子部品の側面から複数の直角に曲げられた端子が突出する点で共通するから、引用発明の端子3,3、4,4における側面5,5からの突出位置を、複数の端子3,3、4,4とソケット端子7との圧入方向に沿って並んで設けられ、かつ位置をずらして設けるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (3)効果について 本願補正発明が奏する効果は、引用発明及び上記各周知の技術事項から予測可能なものであって、格別ではない。 (4)まとめ したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記各周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5 むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成27年11月5日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「外形が直方体状の部品本体と、端子金具と嵌合される複数の端子部と、を有する電子部品において、 前記複数の端子部は、前記部品本体における前記端子部と前記端子金具との嵌合方向に平行な側面から突出し、その先端部が前記側面と対向して延びるように直角に曲げられたものであり、 前記複数の端子部の先端部が、前記側面と垂直な方向から見て当該側面からはみ出してないとともに、 前記複数の端子部の突出位置が、前記複数の端子部と前記端子金具との嵌合方向に位置をずらして設けられている ことを特徴とする電子部品。」 2 引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の記載事項及び引用発明は、上記「第2」の「2」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、本願補正発明の「端子部の突出位置」について、嵌合方向に「沿って並んで設けられ」るという特定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の特定事項をすべて含む本願補正発明が、上記「第2」の「3」及び「4」に記載したとおり、引用発明及び前記各周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記特定事項を省いた本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明及び前記各周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 まとめ したがって、本願発明は、引用発明及び前記各周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-09-14 |
結審通知日 | 2016-09-20 |
審決日 | 2016-09-27 |
出願番号 | 特願2014-531626(P2014-531626) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01H)
P 1 8・ 121- Z (H01H) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高橋 学 |
特許庁審判長 |
森川 元嗣 |
特許庁審判官 |
中川 隆司 冨岡 和人 |
発明の名称 | 電子部品、電子部品と端子金具との接続構造、電子部品を有する電気接続箱 |
代理人 | 瀧野 秀雄 |
代理人 | 川崎 隆夫 |
代理人 | 鳥野 正司 |
代理人 | 津田 俊明 |
代理人 | 瀧野 文雄 |