• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1321678
審判番号 不服2016-2892  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-26 
確定日 2016-11-10 
事件の表示 特願2011-154724「端子及びそれを備えたコネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月31日出願公開、特開2013- 20873〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成23年7月13日の出願であって、平成27年2月18日付けで拒絶理由が通知され、同年4月27日に手続補正がされるとともに意見書が提出され、さらに同年8月25日付けで拒絶理由が通知され、同年10月20日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたが、平成28年1月20日付けで拒絶査定(発送日:同年1月26日)がされ、これに対し、同年2月26日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、その後、同年6月28日に上申書が提出されたものである。

2 平成28年2月26日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の結論]
平成28年2月26日の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1) 本件補正後の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「基板に表面実装されるコネクタに備わる端子であって、
互いに直交する長手方向及び短手方向を有する断面視円弧状の端子本体と、
該端子本体の前記長手方向の一端における前記短手方向の両側から前記基板へ向かって下方にそれぞれ延設されて前記基板の導体パターンと接続される一対の第1の垂下部と、
前記端子本体の前記一端から前記基板へ向かって下方に垂下された第2の垂下部と、を備え、
前記第2の垂下部は、前記第2の垂下部の下端部における前記短手方向の両側から前記長手方向の他端側に向けてそれぞれ延設された一対の押圧板部を有し、
前記各押圧板部は、対応する前記第1の垂下部における前記短手方向の外側に位置するとともに、前記長手方向の他端側に向けて前記第1の垂下部における前記長手方向の他端の位置まで延設され、前記第1の垂下部の外面と当接した状態で前記第1の垂下部における前記長手方向の全域と向かい合うように配置され、
前記各第1の垂下部の下端部には、前記基板の導体パターンと接続するために前記短手方向の外側に向けて延設された部分が設けられ、前記延設された部分の前記長手方向の一端側の端面が、前記第1の垂下部における前記延設された部分以外の部分の前記長手方向の一端側の端面より前記長手方向の一端側に位置していることを特徴とする端子。」
と補正された。

本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1の垂下部」について「前記各第1の垂下部の下端部には、前記基板の導体パターンと接続するために前記短手方向の外側に向けて延設された部分が設けられ、前記延設された部分の前記長手方向の一端側の端面が、前記第1の垂下部における前記延設された部分以外の部分の前記長手方向の一端側の端面より前記長手方向の一端側に位置している」との限定、(以下、「限定事項」という。)を付すものであり、かつ、補正後の請求項1に記載される発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2) 引用文献及びその記載事項
原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-224715号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ハウジングに端子金具を装着した状態で回路基板に取り付けられる基板用コネクタであって、前記ハウジングには、前方からの相手側コネクタの外嵌を可能とされた筒状嵌合部が形成され、前記端子金具には、前記筒状嵌合部の内面に沿って後方から挿入されるとともに相手側端子金具との接続を可能とされた筒状接続部が形成され、前記ハウジングと前記端子金具には、前記筒状嵌合部から前記筒状接続部の抜けを規制する抜止め手段が形成されている基板用コネクタにおいて、
前記抜止め手段が、前記筒状嵌合部の内面に形成した係止凹部と、前記筒状接続部の一部を外側へ斜め後方に切り起こすことにより形成されて切り起こし先端と前記係止凹部との係合を可能とされた撓み可能なランスとから構成されていることを特徴とする基板用コネクタ。
【請求項2】 前記係止凹部が前記筒状嵌合部における後端位置に形成されていることを特徴とする請求項1記載の基板用コネクタ。」

イ 「【0008】
【発明の実施の形態】<実施形態1>以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図6を参照して説明する。本実施形態は回路基板(図示せず)に取り付けられる樹脂製のハウジング10と、このハウジング10に装着されて回路基板に接続される端子金具20とからなる。ハウジング10は、前後方向に貫通する角形断面の筒状嵌合部11と、この筒状嵌合部11の外周における中央部よりも後寄りの位置から前方へ延出する角形断面のフード部12と、フード部12の後端部両側面から突成する回路基板への取付部13とを有する。フード部12は、筒状嵌合部11よりも前方へ突出するとともに筒状嵌合部11の外周との間に空間を空けており、相手側コネクタ(図示せず)は筒状嵌合部11とフード部12との間に嵌合され、フード部12の上面の係止突起12Aにより抜止め保持される。」

ウ 「【0009】筒状嵌合部11は、上記のように相手側コネクタを外嵌させるとともに後述する端子金具20を後方から挿入させるようにしたものである。筒状嵌合部11の前端の開口には、端子金具20の先端を係止させるためのストッパ14が形成されており、後端の開口は端子挿入口15とされている。また、筒状嵌合部11の後端部においては、端子挿入口15と連通して下面に開口する切欠部16が形成されており、この切欠部16からは端子金具20の回路基板との接続部30,39が下向きに突出するようになっている。尚、切欠部16の前縁には、端子金具20を下から受けるための受け突起17が形成されている。かかる筒状嵌合部11の内面には、端子金具20を正規挿入位置に保持するための抜止め手段である係止凹部18が形成されている。係止凹部18は、筒状嵌合部11の後端部に配置され、その左右両側面の肉厚を方形領域だけ薄くした形態となっている。かかる係止凹部18の後縁の段差部18Aに、端子金具20のランス33が前方から係止されるようになっている。尚、この係止凹部18とその下側の切欠部16とは、金型成形の際の型抜きの必要上、互いに面一状とされている。」

エ 「【0010】端子金具20は、導電性を有する箱状の外部導体21と、導電性を有するL字形の内部導体22と、外部導体21と内部導体22とを絶縁状態に組み付けるための絶縁体23とからなる。外部導体21は、所定の形状にプレスで打ち抜いた金属板材を曲げ加工して成形され、筒状嵌合部11の内面に沿って挿入可能な筒状接続部24と、この筒状接続部24の後端面を塞ぐ後面壁部25と、筒状接続部24の後端部から下方へ少し延出する脚部26とからなる。尚、後面壁部25は、絶縁体23を組み付ける前には図1及び図4に示すように、筒状接続部24の上面から面一状に延出した状態とされており、絶縁体23を筒状接続部24内に収容した後に下へ折り曲げることによって絶縁体23を保持する。下へ折り曲げた後面壁部25は、その先端(下端)から延出する係止部27の係止突起28を脚部26の係止孔29に係合させることで、折曲げ状態に保持される。また、脚部26の左右両側下端縁には下向きに延出して回路基板に接続される接続部30が形成されている。」

オ 「【0011】筒状接続部24の上面後端部には、組み付けた絶縁体23の後方への遊動を規制するための弾性係止片31が形成されている。また、筒状接続部24の左右両側面における前端位置には、切り起こしにより内側へ斜め前方に延出する片持ち状の一対の弾性接触片32が形成されており、この弾性接触片32は図示しない相手端子金具と弾性的に接触する。一方、筒状接続部24の左右両側面における後端位置には、切り起こしにより外側へ斜め後方に延出する片持ち状の一対のランス33(本発明の構成要件である抜止め手段)が形成されている。このランス33は、その先端を上記係止凹部18の段差部18Aに係合させることで、端子金具20のハウジング10に対する後方への遊動を規制する。」

カ 「【0012】絶縁体23は、筒状接続部24の後端部に嵌合可能な概ね方形をなし、その後側領域の下面には脚部26に嵌合される突出部34が形成されている。絶縁体23の後面にはスリット状の取付凹部35が形成されているとともに、取付凹部35の奥端には絶縁体23の前面に達する取付孔36が形成されて、さらに絶縁体23の上面には、外部導体21の弾性係止片31と係合可能な受け段部37が形成されている。また、内部導体22の水平前方に延びる部分は相手側端子金具との接触部38とされ、鉛直下向きに延びる部分は回路基板との接続部39とされている。この内部導体22と絶縁体23とは、取付凹部35から接続部38を差し込んで取付孔36に圧入させることにより一体に組み付けられる。これを、後面壁部25が開いている状態の外部導体21に嵌入すると、突出部34が脚部26の前面に係合するとともに、弾性係止片31が受け段部37に係合し、もって絶縁体23と内部導体22が外部導体21に対して前後方向の遊動を規制された状態となる、この状態から後面壁部25を下へ折り曲げると、外部導体21、内部導体22及び絶縁体23が一体となり、端子金具20の組み付けが完了する。」

キ 「【0013】このようにして組み付けられた端子金具20は、その筒状接続部24を後方から筒状嵌合部11内に挿入することによってハウジング10に組み付けられる。端子金具20の挿入過程では、挿入が深く進んで正規挿入位置に近づくと、ランス33が筒状嵌合部11の内面と係合して内側に弾性撓みする。その後、僅かに挿入を進めると、端子金具20の先端がストッパ14に突き当たるか又はストッパ14に近接し、端子金具20が正規挿入位置に到達し、同時にランス33が弾性復元して係止凹部18に係合する。このランス33と係止凹部18との係合により、端子金具20が抜止め状態に保持される。また、この正規挿入状態では、端子金具20の脚部26が切欠部16に嵌合されるとともに受け突起17と係合する。」

ク 【図1】、【図4】?【図6】を参照し、ここで、筒状接続部24の筒状の方向を前後方向とし、この方向に対して直交する方向を左右方向とし、また、外部導体21のハウジング10への挿入方向を前側とすると、外部導体21は、筒状接続部24の前後方向の後端における左右方向の両側から回路基板に向かって下方に延設される一対の脚部26、及び筒状接続部24の後端から回路基板に向かって下方に折曲げられた後面壁部25を備えていることが看取できる。

ケ 上記「エ」の「下へ折り曲げた後面壁部25は、その先端(下端)から延出する係止部27の係止突起28を脚部26の係止孔29に係合させることで、折曲げ状態に保持される。」との記載、並びに【図1】、【図5】及び【図6】を参照すると、折曲げ状態では、後面壁部25の係止部27は、後面壁部25の下端部の左右方向の両側から前後方向の前側に向けてそれぞれ延出されるようになり、また、係止部27は、脚部26の左右方向の外側に位置し、脚部26の外面と当接した状態で脚部26における前後方向と向かい合うように配置されているといえる。

上記の記載事項及び図面の記載を総合すると、引用文献には、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「回路基板に取り付けられる基板用コネクタに備わる端子金具20の外部導体21であって、
互いに直交する前後方向及び左右方向を有する筒状接続部24と、
筒状接続部24の前後方向の後端における左右方向の両側から回路基板に向かって下方に延設されて回路基板に接続される一対の脚部26と、
筒状接続部24の後端から回路基板に向かって下方に折曲げられた後面壁部25と、を備え、
後面壁部25は、後面壁部25の下端部の左右方向の両側から前後方向の前側に向けてそれぞれ延出された一対の係止部27を有し、
各係止部27は、対応する脚部26における左右方向の外側に位置するとともに、前後方向の前側に向けて延出され、脚部26の外面と当接した状態で脚部26における前後方向と向かい合うように配置されている外部導体21。」

(3) 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「回路基板」は、本願補正発明の「基板」に相当する。
以下同様に、「取り付けられる」ことは「実装される」ことに、
「基板用コネクタ」は「コネクタ」に、
「端子金具20の外部導体21」は「端子」に、
「前後方向」は「長手方向」に、
「左右方向」は「短手方向」に、
「前後方向の後端」は「長手方向の一端」に、
「前後方向の前側」は「長手方向の他端側」に、
「筒状接続部24」は「端子本体」に、
「脚部26」は「第1の垂下部」に、
「後面壁部25」は「第2の垂下部」に、
「係止部27」は「押圧板部」に、
「延出」は「延設」に、それぞれ相当する。

引用発明において、一対の脚部26が、回路基板に取り付けられる際に、回路基板に設けられる導体パターンに接続されることは明らかである。

以上のことから、本願補正発明と引用発明とは次の点で一致する。
「基板に実装されるコネクタに備わる端子であって、
互いに直交する長手方向及び短手方向を有する端子本体と、
該端子本体の前記長手方向の一端における前記短手方向の両側から前記基板へ向かって下方にそれぞれ延設されて前記基板の導体パターンと接続される一対の第1の垂下部と、
前記端子本体の前記一端から前記基板へ向かって下方に垂下された第2の垂下部と、を備え、
前記第2の垂下部は、前記第2の垂下部の下端部における前記短手方向の両側から前記長手方向の他端側に向けてそれぞれ延設された一対の押圧板部を有し、
前記各押圧板部は、対応する前記第1の垂下部における前記短手方向の外側に位置するとともに、前記長手方向の他端側に向けて延設され、前記第1の垂下部の外面と当接した状態で前記第1の垂下部における前記長手方向と向かい合うように配置されている端子。」

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
本願補正発明では、「表面実装」であり、更に、「各第1の垂下部の下端部には、前記基板の導体パターンと接続するために前記短手方向の外側に向けて延設された部分が設けられ、前記延設された部分の前記長手方向の一端側の端面が、前記第1の垂下部における前記延設された部分以外の部分の前記長手方向の一端側の端面より前記長手方向の一端側に位置している」との構成を備えるのに対して、引用発明では、表面実装ではなく、更に、かかる構成を備えていない点。

[相違点2]
「端子本体」に関して、本願補正発明では、「断面視円弧状」であるのに対して、引用発明では、「筒状」である点。

[相違点3]
「押圧板」に関して、本願補正発明では、「第1の垂下部における前記長手方向の他端の位置まで延設され」、「第1の垂下部における前記長手方向の全域と向かい合うように配置され」ているとの構成を備えるのに対して、引用発明では、かかる構成を備えているか否かは、明らかでない点。

(4) 判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
コネクタの端子を表面実装すること、及びその際に、コネクタの端子の側壁の下端部に、基板の導体パターンと接続するために外側に向けて延出された部分を設けることは、本願出願前に周知の技術である(以下、「周知の技術1」という。)。
例えば、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-208951号公報(特に、段落【0009】?【0010】及び【図1】?【図5】を参照。)には、遮蔽枠体3a(コネクタの端子)の両側壁32(コネクタの端子の側壁)の下端部に、回路基板の接地回路(基板の導体パターン)に接続される、遮蔽枠体3aの幅方向の外側に向けて延出された突耳状接地片31(外側に向けて延出された部分)が設けられた、表面実装技術により回路基板にはんだ付けされる電気コネクタが記載されている。
また、同じく原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2005-340162号公報(特に、段落【0056】?【0057】、【0066】、【0092】、【図6】、【図11】、【図16】、【図17】及び【図23】を参照。)には、第2の外部導体4(コネクタの端子)の側面シールド部42(コネクタの端子の側壁)の下端部に、プリント基板60の導電パターン(基板の導体パターン)に接続される、第2の外部導体4の幅方向の外側に向けて延出された基板接続部であるリード部47(外側に向けて延出された部分)が設けられた、表面実装によりプリント基板60に取付けられる同軸コネクタが記載されている。
ここで、上記周知の技術1における、「コネクタの端子の側壁」及び「外側に向けて延出された部分」は、それぞれ本願補正発明の「第1の垂下部」及び「短手方向の外側に向けて延設された部分」に相当するから、上記周知の技術1の、「コネクタの端子の側壁の下端部に、基板の導体パターンと接続するために外側に向けて延出された部分」を設けることは、本願補正発明の用語で表すと、「第1の垂下部の下端部には、前記基板の導体パターンと接続するために前記短手方向の外側に向けて延設された部分」を設けること相当する。
すると、引用発明において、表面実装とし、及びその際に、「各第1の垂下部の下端部には、前記基板の導体パターンと接続するために前記短手方向の外側に向けて延設された部分」を設けることは、周知の技術1から、当業者が容易になし得たことである。

また、コネクタの端子において、基板の導体パターンと接続するために延設された部分の先端を、該部分とは直交方向に更に延設することも、周知の技術である(以下、「周知の技術2」という。例えば、特表2011-503783号公報(特に、【図1】?【図8】を参照。)では、本体230から延設された支持台(233_1、233_2)の先端を、直交方向に更に延設している。)。

ここで、前記周知の技術1及び周知の技術2は、引用発明と同様に基板に実装されるコネクタに関する技術であるところ、コネクタ端子をより堅く支持するために引用発明に周知の技術1とともに周知の技術2を適用することは設計事項にすぎず、そのものは、「各第1の垂下部の下端部には、前記基板の導体パターンと接続するために前記短手方向の外側に向けて延設された部分」の先端を、更に、直交方向に延設することになるから、結果的に、「延設された部分の前記長手方向の一端側の端面が、前記第1の垂下部における前記延設された部分以外の部分の前記長手方向の一端側の端面より前記長手方向の一端側に位置している」との構成も備えるものとなる。

以上のことから、引用発明において、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、上記周知の技術1及び周知の技術2から、当業者が容易になし得たことである。

[相違点2]について
端子本体を「断面視円弧状」とすることは、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-97647号公報(特に、段落【0010】及び【図1】?【図4】を参照。断面がU字状に折曲て形成されたシールドカバー30が、本願補正発明の「断面視円弧状の端子本体」に相当する。)、及び同じく原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2005-294260号公報(特に、段落【0009】及び【図1】?【図7】を参照。筒状部30を有する接地シェル4が、本願補正発明の「断面視円弧状の端子本体」に相当する。)に記載されているように、本願出願前に周知の技術である(以下、「周知の技術3」という。)。
すると、引用発明において、筒状接続部24(端子本体)を断面視円弧状とすることにより、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、上記周知の技術3から、当業者が容易になし得たことである。

[相違点3]について
引用文献の図1を参照すると、脚部26は、係止孔29が設けられているから、その断面積が減少して強度的に弱くなっていること、及び脚部26の左右方向の外側に位置する係止部27は、脚部26と重複する箇所を備えているから、脚部26の補強となることは、当業者であれば明らかな事項である。
そうすると、引用発明において、係止部27の前後方向の長さ、及び脚部26の前後方向の長さは、必要とされる強度等を考慮して、当業者が適宜定める設計事項であるといえる。
したがって、引用発明において、後面壁部25を折り曲げた際に、係止部27の前後方向の長さを、脚部26の前後方向の長さと同じとし、それによって、各押圧板部が「第1の垂下部における前記長手方向の他端の位置まで延設され」、「第1の垂下部における前記長手方向の全域と向かい合うように配置され」たものとすることにより、上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願補正発明により奏される作用効果も、引用発明及び周知の技術1?3から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。
以上のことから、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術1?3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5) むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(6) 付記
審判請求人は、平成28年6月28日の上申書において、「端子をハウジングに収容したコネクタ」(以下、「補正案の構成a」という。)である点、及び「ハウジングは、前記一対の押圧板部の前記短手方向の外側に位置すると共に前記一対の押圧板部の前記短手方向の外側面と向かい合う一対の第1壁と、前記一対の第1の垂下部の前記短手方向の内側に位置すると共に前記一対の第1の垂下部の前記短手方向の内側面と向かい合う一対の第2壁と、を有すること」(以下、「補正案の構成b」という。)を限定する補正案を前提に、「上記(補正案)の請求項1によれば、第1の垂下部及び押圧板部が、第1壁と第2壁との間の空間に収容された状態で第1壁と第2壁によって保持されます。従って、端子における第1の垂下部及び押圧板部が、ハウジングによってガタつきなく確実に保持され得ます。」(以下、「補正案の効果」という。)と主張している。

当該補正案について検討する。
第1壁及び第2壁について、本願明細書に説明はなく、どの部材を指すのか明確でないものの、本願の【図8】において、ハウジング21の一部であって、端子が挿入される挿入孔55の周囲のトンネル形状の部分が、補正案の構成bでいうところの「第1壁」に、また、ハウジング21の一部であって、収容孔53及び収容溝54の周囲のトンネル形状の部分が、補正案の構成bでいうところの「第2の壁」に該当するものと解される。

一方、引用文献の【図1】、【図5】及び【図6】を参照すると、外部導体21を、ハウジング10の筒状嵌合部11内に収容したものが看取されるから、「端子をハウジングに収容したコネクタ」、すなわち補正案の構成aは、引用文献に記載されている。

また、引用文献の筒状嵌合部11の切欠部16の部分(【図1】を参照。)は、係止部27の左右方向の外側に位置し、係止部27の左右方向の外側の面と向かい合うようになっているから、筒状嵌合部11は、「一対の押圧板部の前記短手方向の外側に位置すると共に前記一対の押圧板部の前記短手方向の外側面と向かい合う一対の第1壁」に相当する。
したがって、補正案の構成bのうちの「一対の押圧板部の前記短手方向の外側に位置すると共に前記一対の押圧板部の前記短手方向の外側面と向かい合う一対の第1壁」との構成は、引用文献に記載されている。
そして、引用文献の【図1】を参照すると、内部端子22は、絶縁体23とともに外部導体21に収容されるようになっているものの、内部端子を、絶縁体を用いずに、ハウジングに直接収容するようにすることは、本願出願前に周知の技術である(以下、「周知の技術4」という。例えば、前述の特開2005-340162号公報の【図6】?【図9】を参照すると、内部導体2(内部端子)は、絶縁ハウジング1(ハウジング)に直接収容されており、絶縁ハウジング1の一部であって、側面シールド挿入溝部9Bの左右方向内側の部分が、側面シールド部42(本願補正発明の「第1の垂下部」に相当。)の左右方向の内側に位置するとともに、側面シールド部42の内側面と向かい合うようになっている。)。
すると、引用発明において、内部端子22を、絶縁体23を用いずに、ハウジング10に直接収容するようにして、結果的に、ハウジング10の一部が、脚部26の左右方向の内側に位置するとともに、脚部26の左右方向の内側面と向かい合うようにすることにより、前記補正案の構成bのうちの「一対の第1の垂下部の前記短手方向の内側に位置すると共に前記一対の第1の垂下部の前記短手方向の内側面と向かい合う一対の第2壁」に相当する構成とすることは、上記周知の技術4から、当業者が容易になし得たことである。

審判請求人は、上記補正案の効果として、第1の垂下部及び押圧板部が、第1壁と第2壁との間の空間に収容された状態で第1壁と第2壁によって保持されることにより、ハウジングによってガタつきなく確実に保持されることを主張している。
しかしながら、本願明細書には「すると、ハウジング21には、その突起部52の周面に外導体端子23の端子本体41が配置され、また、図9に示すように、係合凹部56に、第1の垂下部42及び第2の垂下部43の押圧板部46が収容される。これにより、外導体端子23は、ガタつきなくハウジング21に収容された状態に保持される。」(段落【0037】)と記載されているように、本願では、第1の垂下部42及び第2の垂下部43の押圧板部46が、係合凹部56に収容されることにより、ハウジング21にガタつきなく収容されるものである。
そうすると、請求人の主張する補正案の効果は、補正案の構成a及びbだけによって奏するものではなく、係合凹部56を必須の構成とすることにより奏するものであるから、審判請求人の主張は採用できない。

したがって、補正案の発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本願発明について
(1) 本願発明
平成28年2月26日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成27年10月20日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうちの請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「基板に表面実装されるコネクタに備わる端子であって、
互いに直交する長手方向及び短手方向を有する断面視円弧状の端子本体と、
該端子本体の前記長手方向の一端における前記短手方向の両側から前記基板へ向かって下方にそれぞれ延設されて前記基板の導体パターンと接続される一対の第1の垂下部と、
前記端子本体の前記一端から前記基板へ向かって下方に垂下された第2の垂下部と、を備え、
前記第2の垂下部は、前記第2の垂下部の下端部における前記短手方向の両側から前記長手方向の他端側に向けてそれぞれ延設された一対の押圧板部を有し、
前記各押圧板部は、対応する前記第1の垂下部における前記短手方向の外側に位置するとともに、前記長手方向の他端側に向けて前記第1の垂下部における前記長手方向の他端の位置まで延設され、前記第1の垂下部の外面と当接した状態で前記第1の垂下部における前記長手方向の全域と向かい合うように配置されたことを特徴とする端子。」

(2) 引用文献及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献、その記載事項、及び引用発明は、前記「2(2)」に記載したとおりである。

(3) 対比・判断
本願発明は、前記「2」で検討した本願補正発明から、前記限定事項を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに前記限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2(3)」及び「2(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術1?3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4) 小括
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術1?3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-15 
結審通知日 2016-09-20 
審決日 2016-09-27 
出願番号 特願2011-154724(P2011-154724)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 貴志前田 仁  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 小関 峰夫
中川 隆司
発明の名称 端子及びそれを備えたコネクタ  
代理人 特許業務法人栄光特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ