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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H04L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04L |
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管理番号 | 1321685 |
審判番号 | 不服2015-14550 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-08-03 |
確定日 | 2016-12-02 |
事件の表示 | 特願2011-502375「少なくとも2つの符号語の連結を実施する方法,中継デバイス,およびそのコンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月 8日国際公開,WO2009/121883,平成23年 5月26日国内公表,特表2011-517199,請求項の数(11)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2009年3月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年4月2日 フランス)を国際出願日とする出願であって,平成26年7月1日付けで最後の拒絶理由が通知され,同年12月19日付けで手続補正がされたが,平成27年3月27日付けで独立特許要件を満たしていないことを理由に補正の却下の決定がされるとともに同日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,同年8月3日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされ,その後,当審において平成28年5月25日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年9月27日付けで手続補正がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1-11に係る発明は,平成28年9月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定されるものと認められる。 本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】 少なくとも2つの送信機から,1つの中継デバイスと少なくとも1つの受信機にディジタル信号を送信し,前記中継デバイスにおいて少なくとも2つの符号語の連結を実施する方法であって, 前記2つの送信機の各々において,少なくとも1つの第1の符号語を生成する第1の符号化ステップと, 前記2つの送信機の各々において,前記少なくとも1つの第1の符号語を送信する第1の送信ステップと, を備え, さらに,前記1つの中継デバイスにおいて下記のステップの全てが実行され,該ステップは, 前記少なくとも2つの第1の符号語を受信し,中間符号語を形成するステップと, 前記中間符号語のビットの少なくとも一部をインタリーブするステップであって,該インタリーブステップが,n1列とn2行の行列のいくつかの行に書き込む動作を実現し,前記n2行では,k2行の各々は前記少なくとも2つの送信機から受信された前記中間符号語に対応し,前記k2行の各々はk1情報ビットとn1-k1個の冗長性またはパリティ行ビットを備え,前記インタリーブするステップはインタリーブされたビットを得る,インタリーブするステップと, インタリーブされた前記ビットを符号化する第2の符号化ステップであって,前記行列の前記n1列と前記k2行を使用する積符号を実現し,前記中間符号語を考慮するn2-k2の第2の符号語を生成し,前記第2の符号語は列パリティビットに対応する,第2の符号化ステップと, 前記第2の符号語を送信する第2の送信ステップと, を備え, 前記少なくとも1つの受信機において,前記2つの第1の符号語と,前記少なくとも1つの第2の符号語によって形成された冗長性とを考慮して反復復号を実行できるようにすることを特徴とする方法。」 第3 原査定の理由について 1 原査定の理由の概要 原査定の理由は,平成26年7月1日付けで通知された拒絶理由のとおりであり,その概要は以下のものである。 この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 請求項1(なお請求項1を引用する請求項2-11も同様),12に記載の「前記k2個の第1行」について,日本語として明確でない。(「第1行」でなく,単に「行」を意図しているのか確認されたい。) また,請求項1,12に記載の「インタリーブするステップ」と「第2の符号化ステップ」との関係性が不明である。 よって,請求項1-12に係る発明は明確でない。 2 原査定の理由の判断 平成28年9月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1には,「前記k2個の第1行」なる記載は存在せず,また,「インタリーブするステップ」と「第2の符号化ステップ」とはそれぞれ独立して明確に記載されているため,上記拒絶理由は解消している。 よって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由の概要 (1)理由1は,請求項1-6,9-12に係る発明は,引用文献1,5,6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,請求項7,8に係る発明は,引用文献1,5,6,4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 引 用 文 献 等 一 覧 1.Christoph Hausl,et al.,Joint Network-Channel Coding for the Multiple-Access Relay Channel,Sensor and Ad Hoc Communications and Networks, 2006. SECON '06. 2006 3rd Annual IEEE Communications Society on,2006年9月,Volume:3,p.817-822 4.国際公開第2006/093286号 5.特表2004-523936号公報(新たに引用された文献) 6.大島英明,小笠原尚徳,小林学,平澤茂一,ブロックターボ符号の生成行列を用いた一復号方法,2001年7月6日,社団法人電子情報通信学会,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.101 No.177,49?54ページ(新たに引用された文献) (2)理由2は,この出願は,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないというものであり,具体的には以下のとおりである。 (請求項1) ア 「少なくとも2つの送信機と少なくとも1つの受信機間にディジタル信号を送信して,少なくとも2つの符号の連結を実施する方法」なる日本語の記載は,送信と連結との関係が不明確であるとともに,連結する主体が不明であり,ここに記載のない中継デバイスが連結するとは解せないから,記載内容が日本語として不明確である。 イ 「前記送信機において,少なくとも2つの第1の符号語を送出する第1の符号化ステップ」なる日本語の記載は,各送信機がそれぞれ少なくとも2つの第1の符号語を送出するのか,少なくとも2つの送信機がそれぞれ送信機がそれぞれ少なくとも1つの第1の符号語を送出することによって全体として少なくとも2つの第1の符号語を送出することとなるのか,不明確である。なお,前者は発明の詳細な説明や図1,図2,図5,図7の記載と対応しない。 ウ 日本語において「送出」と「送信」は同様の意味であるから,「前記送信機において,少なくとも2つの第1の符号語を送出する第1の符号化ステップ」と「前記第1の符号語を送信する第1のステップ」との関係(異同)が,日本語の記載として不明確である。 エ 「中間符号語」の定義が不明確であり,「中間符号語と称される前記第1の符号語のうちの少なくとも2つを受信するステップ」の裏付けも不明確である。 発明の詳細な説明の【0049】,【0050】,【0056】の記載によれば,「中間符号語」は「C’1」,「C’2」に対応するところ,「C’1」,「C’2」は,送信機によって送信された符号語を中継器が受信して閾値化により硬判定(復号)した結果であって,必ずしも初期符号語(すなわち,「前記第1の符号語」であるC1,C2。)ではないから,発明の詳細な説明には,中間符号語を受信することも,「前記第1の符号語」が中間符号語と称されることも,記載も示唆もされていない。また,「中間符号語と称される前記第1の符号語のうちの少なくとも2つを受信する」ことは,請求項3?5に記載された事項とも対応しない。 オ 「前記中間符号語の前記ビットの少なくとも一部をインタリーブするステップ」について,それ以前に「ビット」に係る記載は存在しないから,「前記ビットの少なくとも一部」は意味不明である。 カ 上記エのとおりであるから,「前記n2行では,k2行の各々は前記少なくとも2つの送信機から受信された前記少なくとも2つの第1の符号語に対応し,」の記載は,発明の詳細な説明と対応していない。 キ 「・・・前記インタリーブするステップはインタリーブされたビットを送出する,インタリーブするステップ」とは,どこに「送出する」のか不明であり,発明の詳細な説明との対応関係も不明である。 (請求項2?10) ク 請求項1を引用する請求項2?10についても,請求項1と同様に,上記ア?キの記載不備がある。 (請求項10) ケ 発明の詳細な説明及び図面を見ても,請求項10の裏付けが不明確である。 (請求項11) コ 「・・・請求項1?9の少なくとも一項に記載の送信方法を実現するプログラム符号命令を備えることを特徴とするコンピュータプログラム」は,複数の請求項を同時に引用することになるから,発明が不明確である。 「請求項1?9の少なくとも一項に記載」ではなく,「請求項1?9のいずれか一項に記載」とする必要がある。) サ 請求項11が引用する請求項1の「前記送信機において,少なくとも2つの第1の符号語を送出する第1の符号化ステップ」及び「前記第1の符号語を送信する第1のステップ」は送信器に係る動作であり,中継デバイスの各々において実行する各ステップは中継デバイスに係る動作であり,送信器と中継デバイスとは独立した別個の装置手段であって当然これらに含まれるプロセッサも別個のものであるから,これらのプロセッサを動作させるプログラムも当然に独立した別個のものであるはずである。このため,請求項11に記載中のプロセッサが特定できず,発明が意味不明になっている。 (3)理由3は,上記理由2のケ,サのとおりであるから,発明の詳細な説明の記載は,請求項10,11に係る発明を実施できる程度に十分に開示がなされているとはいえないため,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないというものである。 なお,平成28年9月27日付け手続補正により当該補正前の請求項10が削除され,当該補正後の請求項1?9は当該補正前の請求項1?9に対応し,当該補正後の請求項10は当該補正前の請求項12に対応し,当該補正後の請求項11は当該補正前の請求項11に対応する。 2 当審拒絶理由の判断 (1)理由1について ア 本願発明 本願発明は,上記「第2」の項において認定したとおりである。 イ 引用発明及び周知技術 [引用発明] 当審拒絶理由で引用されたChristoph Hausl,et al.,Joint Network-Channel Coding for the Multiple-Access Relay Channel([当審仮訳]:多元アクセスリレーチャネルのための共同ネットワーク-チャネル符号化),Sensor and Ad Hoc Communications and Networks, 2006. SECON '06. 2006 3rd Annual IEEE Communications Society on,2006年9月,Volume:3,p.817-822 (以下,「引用例」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「Abstract-We propose to use joint network-channel coding based on turbo codes for the multiple-access relay channel. Such a system can be used for the cooperative uplink for two mobile stations to a base station with the help of a relay. We compare the proposed system with a distributed turbo code for the relay channel and with a system which uses separate network-channel coding for the multiple-access relay channel. Simulation results confirm that the systems with network coding for the multipleaccess relay channel gain cooperative diversity compared to the system with the distributed turbo code for the relay channel. Moreover, the results show that joint network-channel coding outperforms separate network-channel coding. The reason for this is that the redundancy which is contained in the transmission of the relay can be exploited more efficiently with joint networkchannel coding.」(817ページ左欄) ([当審仮訳]: 要約- 多元アクセスリレーチャネルのためのターボ符号に基づく共同ネットワーク-チャネル符号化を使用することを提案する。このようなシステムは,リレーの助けを借りて,2つの移動局の基地局への協調アップリンクのために使用することができる。提案されたシステムと,リレーチャネルのための分布されたターボ符号とを,及び,多元アクセスリレーチャネルのための分離ネットワーク-チャネル符号化を使用したシステムとを,比較する。シミュレーション結果は,多元リレーチャネルのためのネットワーク符号化を持つシステムが,リレーチャネルのための分布されたターボ符号を持つシステムに比べて,協調ダイバーシティを獲得していることを確認する。さらに,結果は,共同ネットワーク-チャネル符号化は,分離したネットワーク-チャネル符号化よりも優れていることを示す。この理由は,リレーの送信に含まれる冗長性が,共同ネットワーク-チャネル符号化でより効率的に活用することができるということである。 (イ)「I. INTRODUCTION While the concept of network coding[1] was first proposed to increase the throughput in networks with error-free transmission, the application of network coding for wireless networks with disturbed channels is gaining interest. A. Diversity through Network Coding In [2]-[7] it was discussed how to gain cooperative diversity through network coding in wireless networks to combat channel fading. The concept of cooperative diversity[8] was initially applied (without network coding) for the relay channel (RC) which is depicted in Fig.1(a). A simple model where diversity can be gained with network coding is the multipleaccess relay channel (MARC)[9] which is depicted in Fig.1(b). An example for an MARC is the cooperative uplink of two mobile stations and with the help of a relay to the base station in a cellular based mobile communication system. (中略) The diversity gain through network coding increases with the number of transmitters. 」(817ページ左欄,同ページ右欄) ([当審仮訳]: I.はじめに ネットワーク符号化[1] の概念は,当初はエラーフリー伝送のネットワークにおけるスループットを向上させるよう提案されていたが,乱されたチャネルを有する無線ネットワークのためのネットワーク符号化の適用が関心を集めている。) A.ネットワーク符号化を通したダイバーシティ [2]-[7]においては,無線ネットワークにおいてフェージング・チャネルに対抗するために,ネットワーク符号化を通して如何に協調ダイバーシティを獲得するかが検討された。協調ダイバーシティ[8] の概念は,最初,図1(a)に示されるリレーチャネル(RC)(ネットワーク符号化なし)に適用された。ネットワーク符号化により得ることができる簡単なモデルは,図1(b)に示される多元リレーチャネル(MARC)である。MARCの例は,セルラベースの移動通信システムにおける2つの移動局のリレーの助けを借りた基地局への協調アップリンクである。 (中略) ネットワーク符号化を通したダイバーシティ利得は,送信機の数と共に増加する。) (ウ)「B. Joint Network-Channel Coding One way to gain diversity through network coding for the MARC with noisy channels is to treat network and channel coding separately. Then, channel coding is used in the physical layer for each transmission to transform the noisy channels to erasure-based links. On the network layer, one performs network coding for the erasure-based networks which is provided by the lower layers. However, a relay cannot only be used to gain diversity. Its transmission can be seen as additional redundancy which improves the performance compared to a point-to-point communication if the relay has a better connection to the base station than the mobile station. For this case relays are also useful for noisy channels without fading where diversity is not relevant. Distributed channel codes[10]-[13] can be applied to efficiently exploit the (direct) redundancy from the mobile station and the additional redundancy from the relay. Of course, the relay of the MARC delivers also additional redundancy. To efficiently exploit this redundancy, we have to generalize the concept of distributed channel codes to joint network-channel coding. Distributed channel codes for the relay channel can be seen in this context as joint routingchannel coding. While for the application of network coding to wireline networks only the network layer is considered and it is assumed that the lower layers deliver error-free or erasure-based links with the help of channel coding, the principle of joint networkchannel coding is that the redundancy in the network code should be used to support the channel code for better error protection. It is similar to the principle of joint source-channel coding[14], where the remaining redundancy after the source encoding helps the channel code to combat noise. We know from [15] and [16] that in general, capacity can only be achieved by treating network and channel coding jointly, if we consider the communication in wireless relay networks. It was shown in [4], how joint network-channel coding based on low-density parity-check (LDPC) codes can be used for the MARC. In [17] joint network-channel coding based on turbo codes was applied for the two-way relay channel [18], [19].」(817ページ右欄?818ページ左欄) ([当審仮訳]: B.共同ネットワーク-チャンネル符号化 ノイズの多いチャンネルのMARCのためのネットワーク符号化を通してダイバーシティゲインを獲得する一つの方法は,ネットワーク符号化及びチャネル符号化を別々に扱うことである。そして,ノイズの多いチャネルを消去ベースのリンクに変換するために,チャネル符号化が各送信のために物理層に使用される。ネットワーク層では,下位層によって提供される消去ベースのネットワークのためのネットワーク符号化を行う。 しかしながら,リレーは,ダイバーシティを得るためだけに使用できない。その送信は,リレーが移動局よりも基地局へのより良好な接続がある場合,ポイントツーポイント通信と比較して性能を向上させる追加の冗長性と見なすことができる。このケースでは,リレーは,ダイバーシティが関連しない,フェージングを伴わないノイズの多いチャンネルのためにも有用である。分散チャネル符号[10]-[13]は,移動局からの(直接の)冗長性とリレーからの追加の冗長性を効率的に利用するために適用することができる。もちろん,MARCのリレーはまた,追加の冗長性を提供する。この冗長性を効率的に利用するために,共同ネットワーク-チャネル符号化に対して分布したチャネル符号の概念を一般化する必要がある。リレーチャネルのための分散チャネル符号は,この文脈において共同ルーティングチャネル符号として見ることができる。 有線ネットワークへのネットワーク符号化の適用にはネットワーク層のみが考慮され,下位層はチャネル符号化の助けを借りてエラーフリー又は消去ベースのリンクを提供することが仮定されている一方,共同ネットワーク-チャネル符号化の原理は,良いエラー保護のためにネットワーク符号における冗長性はチャネル符号をサポートするように使用されるべきであるということである。それは,ソース符号化後の残りの冗長性がチャネル符号がノイズに対抗するのを助ける,共同ソース-チャネル符号化[14]の原理に類似している。[15]及び[16]から,一般的に,無線中継ネットワークにおける通信を考慮した場合,容量は,ネットワーク符号化とチャネル符号化を共同で扱うことによってのみ達成することができることを知っている。これは,低密度パリティチェック(LDPC)コードに基づく共同ネットワーク-チャネル符号化が,MARCのためにどのように使用することができるは,[4]に示されている。[17]では,ターボ符号に基づく共同ネットワーク-チャネル符号化が,双方向リレーチャネル[18],[19]に適用されている。) (エ)「II. SYSTEM MODEL A. System Setup In a cellular based mobile communication system (Fig.1(b)) two users MS1 and MS2 want to transmit statistically independent data which is segmented in blocks u_(1) and u_(2) of length K to the base station BS. A block diagram of the system is depicted in Fig.2. The information bits u_(1) and u_(2) are protected against transmission errors with channel encoders which output the code bits x_(1) and x_(2) with the block length N. The relay R receives the disturbed versions of the code bits x_(1) and x_(2) to obtain the estimates u^_(14) and u^_(24). Regardless whether u_(1) and u_(2) are decoded without errors at the relay, these estimates of the information bits of MS1 and MS2 are jointly combined to the network code bits x_(4) and sent to the base station to provide additional error protection. The network code bits x_(4) have the block length NR. The code rate of the system is given by R_(S)=2・K/(2・N+N_(R)).」(818ページ左欄) ([当審仮訳]: II.システムモデル A.システムのセットアップ セルラベースの移動体通信システム(図1(b))において,2人のユーザMS1及びMS2が,長さKのブロックu_(1)及びu_(2)にセグメント化された統計的に独立したデータを基地局BSに送信することを望んでいる。システムのブロック図が図2に示される。情報ビットu_(1)及びu_(2)は,ブロック長Nの符号ビットx_(1)及びx_(2)を出力するチャンネルエンコーダにより伝送エラーに対して保護されている。リレーRは,推定値u^_(14) 及びu^_(24)を得るために乱された符号ビットx_(1)及びx_(2)を受信する。u_(1)及びu_(2)がリレーでエラーなしで復号化されるかどうかにかかわらず,MS1とMS2の情報ビットのこれらの推定値は,ネットワーク符号ビットx_(4)に共同に結合され,追加のエラー保護を提供するために基地局に送信される。ネットワーク符号ビットx_(4)は,ブロック長N_(R)を持つ。システムの符号化率はR_(S)=2・K/(2・N+N_(R))によって与えられる。) (オ)「III. JOINT NETWORK-CHANNEL CODING FOR THE MARC We explain how joint network-channel coding can be performed with a turbo network code [17] for the multiple-access relay channel (MARC). (中略) A. Channel Coding The channel codes at the mobile stations contain a rate 1/2 recursive systematic convolutional code with constraint length 4 and information bit block length K=1500. The feedforward generator is 15 and the feedback generator is 13, both in octal. As the code is systematic the output of the channel code contains 1503 systematic bits (including three tail bits) v_(i) and 1503 parity bits p_(i) where i ∈{1, 2}. As we only want to send N=2000 code bits x_(i), we puncture the parity bits p_(i) according to the following rule. We only transmit every third parity bit except the parity bits at position 373, 748, 1123 and 1498. These position are chosen such that the puncturing occurs regularly. A block diagram of channel encoder 1 at MS1 is depicted in Fig.4(a). B. Network Coding If the relay has decoded the data of both mobile stations correctly, the relay network encodes the estimates u^_(14) and u^_(24) and sends the network code bits x_(4) to the base station to provide additional redundancy for both uplinks. A block diagram of the network encoder is depicted in Fig.4(b). Both estimates are interleaved according to [21]. Then, the interleaved bits appear alternately as the input of a convolutional encoder with the same parameters like the convolutional code used as channel encoder. However, the output of the network encoder contains only the 3003 parity bits of the convolutional encoder. As we only want to send N_(R)=2000 bits we puncture every third bit and the bits at position 1000 and 2000. The network code of rate R_(R)=(2・K)/N_(R)=1.5 provides NR additional parity bits which support the decoding at the base station. Although the different coding operations are processed spatially distributed, we will treat them as one network-channel code with the system rate R_(S)=2・K/(2・N+N_(R))=0.5. The joint network-channel code consists of three constituent encoders which are illustrated graphically in Fig.5(a). Channel encoder 1 and 2 at the mobile stations form two of the three constituent encoders. As they process the information bits in its original order, they are depicted in horizontal direction. The third constituent encoder is the network encoder at the relay. As it processes the interleaved information bits, it is depicted in vertical direction. The network encoder combines the information bits of MS1 and MS2. Therefore, the encoder at the mobile stations and at the relay form one spatially distributed code with increased cooperative diversity.」(818ページ右欄?819ページ左欄) ([当審仮訳]: III.MARCのための共同ネットワーク-チャネル符号化 多元アクセスリレーチャネル(MARC)のために,共同ネットワーク-チャネル符号化がターボネットワーク符号[17]を用いてどのように行うことができるかを説明する。(中略) A.チャンネル符号化 移動局でのチャネル符号は,拘束長4及び情報ビットのブロック長K=1500 で符号化率1/2の再帰的組織畳込符号を含む。8進数でフィードフォワード生成器は15であり,フィードバック生成器は13である。符号は組織的であり,チャネル符号の出力は,1503個(3個のテールビットを含む)のシステマティックビットv_(i)と1503個のパリティビットp_(i),i∈{1,2},を含む。N=2000個の符号ビットx_(i)のみを送信したいので,以下のルールに従ってパリティビットp_(i)をパンクチャする。373,748,1123及び1498の位置のパリティビットを除き,2つおきにパリティビットを送信する。これらの位置は,パンクチャが常に発生するように選択される。MS1におけるチャネルエンコーダ1のブロック図は,図4(a)に示される。。 B.ネットワーク符号化 リレーが両移動局のデータを正しく復号した場合,リレーネットワークは,両アップリンクのための追加の冗長性を提供するために,推定のu^_(14)及びu^_(24)をエンコードしてネットワーク符号ビットx_(4)を基地局に送信する。 ネットワークエンコーダのブロック図が図4(b)に示される。両推定値は,[21]に基づいてインタリーブされる。インタリーブされたビットは,チャネルエンコーダとして使用された畳込符号のような同じパラメータを持つ畳込エンコーダの入力として,交互に現れる。しかしながら,ネットワークエンコーダの出力は,畳込エンコーダの3003個のパリティビットのみを含んでいる。N_(R)=2000個の符号ビットのみを送信したいので,2つおきのビットと1000及び2000の位置のビットをパンクチャする。符号化率R_(R)=(2・K)/ N_(R)=1.5のネットワーク符号は,基地局でのデコードをサポートするN_(R)個の追加のパリティビットを提供する。 異なる符号化操作が空間的に分布して実行されるが,これらをシステムレートR_(S)=2・K /(2・N+N_(R))=0.5の1つのネットワーク-チャネル符号として扱う。 共同ネットワーク-チャネル符号は,図5(a)にグラフで示される3つの構成エンコーダからなる。移動局のチャネルエンコーダ1及び2は,3つの構成エンコーダのうちの2つを形成する。それらは,元の順序で情報ビットを処理するので,水平方向に示されている。第三の構成エンコーダは,リレーのネットワークエンコーダである。それはインタリーブされた情報ビットを処理するので,垂直方向に示されている。ネットワークエンコーダは,MS1及びMS2の情報ビットを結合する。そのため,移動局及びリレーのエンコーダは,増加された協調ダイバーシティを持つ1つの空間的に分布された符号を形成する。) 上記(ア)?(オ)の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると, a 上記(ア),(イ),(エ)の記載及び図1(b),図2によれば,引用例には,「少なくとも2つの移動局から,1つのリレーと1つの基地局にデータを送信し,前記リレーにおいて少なくとも2つの符号ビット(x_(1),x_(2))を受信してネットワーク符号ビット(x_(4))に結合する方法」が記載されていると認められる。 b 上記(エ),上記(オ)の「A.チャンネル符号化」の記載及び図2によれば,引用例には,「前記2つの移動局の各々において,少なくとも1つの符号ビット(x_(1),x_(2))を生成する第1の符号化ステップ」及び「前記2つの移動局の各々において,前記少なくとも1つの符号ビット(x_(1),x_(2))を送信する第1の送信ステップ」が記載されていると認められる。 c 上記(エ),上記(オ)の「B.ネットワーク符号化」の記載及び図2,図4(b),図5(a)によれば,引用例には,「前記少なくとも2つの符号ビット(x_(1),x_(2))を受信し,推定値(u^_(14) ,u^_(24))を得るステップ」と,「前記推定値(u^_(14) ,u^_(24))のビットの少なくとも一部をインタリーブするステップであって,該インタリーブするステップが,インタリーブされたビットがネットワークエンコーダの入力に交互に現れる,インタリーブするステップ」が記載されていると認められる。 d 上記(エ),上記(オ)の「B.ネットワーク符号化」の記載及び図2,図4(b),図5(a)によれば,引用例には「インタリーブされたビット(u^_(14) ,u^_(24))を符号化する第2の符号化ステップであって,交互に入力したビット(u^_(14) ,u^_(24))を畳込符号化して,2つの移動局の情報ビットを垂直方向に結合したパリティ(p_(4))からなるネットワーク符号ビット(x_(4))を生成する,第2の符号化ステップ」が記載されていると認められる。 e 上記(エ),上記(オ)の「B.ネットワーク符号化」の記載及び図2によれば,引用例には,リレーにおいて「前記ネットワーク符号ビット(x_(4))を送信する第2の送信ステップ」が記載されていると認められる。 d 上記c?eの各処理がリレーにおいて実行されることは明らかであるから,引用例には,「前記1つのリレーにおいて下記のステップの全てが実行され」ることが記載されていると認められる。 e 上記(ア)?(ウ)の記載及び図4(c)によれば,引用例には,「前記1つの基地局において,前記2つの符号ビット(x_(1),x_(2))と,前記少なくとも1つのネットワーク符号ビット(x_(4))によって形成された冗長性とを考慮して復号を実行できる」ことが記載されていると認められる。 以上を総合すると,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「 少なくとも2つの移動局から,1つのリレーと1つの基地局にデータを送信し,前記リレーにおいて少なくとも2つの符号ビット(x_(1),x_(2))を受信してネットワーク符号ビット(x_(4))に結合する方法であって, 前記2つの移動局の各々において,少なくとも1つの符号ビット(x_(1),x_(2))を生成する第1の符号化ステップと, 前記2つの移動局の各々において,前記少なくとも1つの符号ビット(x_(1),x_(2))を送信する第1の送信ステップとを備え, さらに,前記1つのリレーにおいて下記のステップの全てが実行され,該ステップは, 前記少なくとも2つの符号ビット(x_(1),x_(2))を受信し,推定値(u^_(14) ,u^_(24))を得るステップと, 前記推定値(u^_(14) ,u^_(24))のビットの少なくとも一部をインタリーブするステップであって,該インタリーブステップが,インタリーブされたビットがネットワークエンコーダの入力に交互に現れる,インタリーブするステップと, インタリーブされたビット(u^_(14) ,u^_(24))を符号化する第2の符号化ステップであって,交互に入力したビット(u^_(14) ,u^_(24))を畳込符号化して,2つの移動局の情報ビットを垂直方向に結合したパリティ(p_(4))からなるネットワーク符号ビット(x_(4))を生成する,第2の符号化ステップと, 前記ネットワーク符号ビット(x_(4))を送信する第2の送信ステップとを備え, 前記1つの基地局において,前記2つの符号ビット(x_(1),x_(2))と,前記少なくとも1つのネットワーク符号ビット(x_(4))によって形成された冗長性とを考慮して復号を実行できるようにする方法。」 [周知技術] 同じく当審拒絶理由で引用された特表2004-523936号公報(以下,「周知例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。 (カ)「【0002】 より具体的には,本発明は,特に「ターボ符号(turbo-codes)」(登録商標)として知られる符号を復号する技術の改良,とりわけ連接符号(concatenated codes)を繰り返して復号(iterative decoding)する操作の改良に関する。 【背景技術】 【0003】 情報(データ,画像,音声など)の伝送は,デジタル伝送技術にますます依存している。ソース符号化(source encoding)においてデジタルビットレートを減らし,同時にハイクォリティを維持するために多大な努力が払われてきた。当然ながらこれらの技術には,伝送に関係した擾乱(disturbance)に対してビットの保護の改良が要求される。これらの伝送システムにおいては強力な誤り訂正符号を使用することが不可欠となっている。「ターボ符号(turbo-codes)」技術が提案されたのは,特にこの目的のためである。 【0004】 「ターボ符号」の一般原理は,具体的には,「少なくとも2つの並列的なシステマチックな畳み込み符号化操作を用いる誤り訂正符号化の方法(原題;Procede de codage correcteur d'erreurs a au moins deux codages convolutifs systematiques paralleles(英訳;Method of error correction encoding with at least two parallel systematic convolutive encoding operation))」と題された仏国特許第91 05280号と,1993年5月に開催された通信に関するIEEE国際会議ICC’93の会議録巻2/3の1064乃至1071ページに掲載されたC. Berrou,A. Glavleux及びP. Thitlmajsbimaによって著された「シャノン限界にせまる誤り訂正符号化及び復号化:ターボ符号(Near Shannon limit error-correcting coding and decoding: Turbo-Codes)」に記述されている。従来技術に関してはC Berrou及びA. Glavieuxによって著された「最適に近い誤り訂正符号化及び復号化:ターボ符号(Near Optimum Error Correcting Coding and Decoding: Turbo-Codes)」(1996年10月発行の通信に関するIEEEトランザクション(IEEE Transactions on Communications)第44巻第10号1261乃至1271ページ)に詳しい。 【0005】 この技術は,少なくとも2つの要素復号器(elementary decoder)の使用に基づく「並列連接」符号化("parallel concatenation" encoding)の導入を提案している。これによれば2つの別個の符号器から来る有効な2つの冗長シンボル(redundancy symbol)が作られる。この2つの要素符号器の間には,これらの要素符号器のそれぞれに同じデータであるが各回異なる順序で採取されたソースデジタルデータが供給されるように置換手段(permutation means)が導入される。 【0006】 このタイプの技術を補完する技術が「ブロック・ターボ符号(block turbo-codes)」又はBTCとして知られる符号(codes)を得るために使用される。この補完技術はブロック符号化(連接符号(concatenated codes))用に設計される。この改良技術は,R. Pyndiab,A. Glavieux,A. Picart,及びS. Jacqによって著された「積符号の最適に近い復号(Near optimum decoding of product code)」(1998年8月発行の通信に関するIEEEトランザクション(IEEE Transactions on Communications)第46巻第8号1003乃至1010ページ)と,「連接ブロック符号を適用して情報ビットを伝送するための方法(原題;Procede pour transmettre des bits d'information en appliquant des codes en blocs concatenes(英訳;Method for the Transmission of Information Bits by the Application of Concatenated Block Codes))」と題された仏国特許第93 13858号,並びに,0. Aitsab及びR. Pyndiakによる「リード・ソロモン・ブロック・ターボ符号の性能(Performance of Reed Solomon Black Turbo-Code)」)(1996年11月にロンドンで開催されたIEEE Globecom'96 Confcrenceの会議録巻1/3の121乃至125ページ)に記述されている。 【0007】 この技術は,特に,P. Eliasによって導入された積符号(product codes)の使用に基づいており,彼によって著された1954年9月発行の情報理論に関するIREトランザクション(IRE Transaction on Information Theory)(巻IT4の29乃至27ページ)の論文「誤りの無い符号化(Error-Free Coding)」に記述されている。積符号はブロック符号の直列連接(serial concatenation of block codes)に基づく。積符号は,基本的なブロック符号復号器が入力側でビットを受取りそれを出力側に与えるハード入力・ハード出力アルゴリズム(hard-input and hard-output algorithms)に従って長く復号されてきた。 【0008】 ブロック「ターボ符号」(block "turbo-codes")を復号するために,基本的なブロック符号復号器が入力側でその尤度(likelihood)に応じて加重されたビットを受取りこれらのビットを出力側に与えるソフト入力・ソフト出力復号手段(soft-input and soft-output decoding means)が考案されている。 【0009】 ブロック「ターボ符号」は,データ符号化がサイズの小さなブロック(例えば100ビットより小さなブロック)に適用されるとき,或いは符号効率(すなわち,有用なデータビットの数を符号化した後のデータビットの数で割ったもの,例えば0.95)が高く,かつ,要求されるエラーレートが低いときに,特に興味を引く。実際,一般的に或る与えられた信号対ノイズ比の関数として残差エラーレート(residual error rate)を使って測定される符号のパーフォーマンスレベルは,ブロック「ターボ符号」の場合には非常に高い符号の最小ハミング距離(9,16,24,36又はそれ以上)に応じて変化する。 【0010】 「ターボ復号(turbo-decoding)」の異なる技術は,非常に大きな信頼性を必要とするデジタル通信にとってますます有用になっている。更に,伝送レートは,ますます高くなっている。光ファイバ上の伝送路を使用することにより,特にギガビットないしはさらにはテラビットの範囲にあるビットレートを実現することが可能となる。 【0011】 従来技術には, ・モジュラー構造(modular structure)と, ・フォン・ノイマン構造(Von Neumann structure)と, に基づく2つの異なったタイプの,ブロック「ターボ符号」のための周知タイプの復号器アーキテクチャが存在している。 (中略) 【0054】 符号C_(1)線形の場合,C_(1)によって構築される(n_(1)-k_(1))行は,符号C_(2)の語(words)であり,従って最初のk_(1)として復号されてよい。直列連接符号は,行に沿ったC_(2)のn_(1)個の符号語と列に沿ったC_(1)のn_(2)個の符号語によって特徴付けられる。符号C_(1)及びC_(2)は,ブロック符号又は線形ブロック符号として使用される畳み込み要素符号から得られてよい。 (中略) 【0058】 本発明は,並列連接符号(parallel concatenated codes)にも同じ方法で適用することができる。並列連接符号は,一般的に,図1にあるような2次元のバイナリ行列[C]の形で表現することができる。この行列[C]は,n_(1)行n_(2)列を含んでいる。また, ・バイナリ情報サンプルは,k_(1)行k_(2)列の部分行列10,[M],によって表される。 ・行列[M]のk_(1)行の各行は,要素符号(elementary code)C_(2)(n_(2),k_(2),δ_(2))(リダンダンシーは,行リダンダンシー部分行列11によって表される。)によって符号化される。 ・行列[M]のk_(2)列の各列は,要素符号C_(1)(n_(1),k_(1),δ_(1))(バイナリ情報サンプルに対応するリダンダンシーは列リダンダンシー部分行列12によって表される。並列連接符号の場合には冗長部分の冗長部分は存在しない。)によって符号化される。 【0059】 図1の行列Cに対応する符号の「ターボ復号(turbo-decoding)」では,図2の繰り返し処理に従って,行列Cの全ての行,次いで全ての列で加重入力・加重出力復号(weighted-input and weighted output decoding)が実行される。」(3?5,8?9ページ) 同じく当審拒絶理由で引用された大島英明,小笠原尚徳,小林学,平澤茂一,ブロックターボ符号の生成行列を用いた一復号法,2001年7月6日,社団法人電子情報通信学会,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.101 No.177,49?54ページ(以下,「周知例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。 (キ)「1 はじめに ターボ符号は,1993年にフランスのC.Berrouらによって提案された通信路符号化方式[6] であり,シャノン限界に迫る新しい方式として近年,符号理論などの分野で注目を集めている。ターボ符号の符号化は,2つの要素符号C^(-),C^(|)に対し,符号C^(-)で情報を符号化した後,符号C^(|)の前に一度情報をメモリに記憶させ,その後情報を取り出す順序を変換するインタリーバによって情報を並ベ替え,それを符号dによって符号化するという特徴がある。 ターボ復号法は符号dに対して,受信系列に基づいて復号化を行い,その際に各情報シンボルに対する信頼度情報を求める。次にインタリーバによる逆の並ベ替えを行った後,符号C-に対してこの信頼度情報と受信系列に基づいて復号化を行い,各シンボルの新しい信頼度情報を求める。この復号過程を1回目の復号とする。2回目以降同様の繰り返しを数回行い,その結果を出力する。またターボ復号の信頼度情報の計算方法として,最大事後確率復号法(MAP復号法[5] )がある。中でもこれを実現する復号法として,L.R.Bahlらによって,トレリスの前方からと後方からの繰り返し演算を行い各ノードに対する事後確率を求める復号法[2] (以降BCJRアルゴリズムと呼ぶ)などが提案されている。しかし前述の通りターボ復号はシャノン限界に近い復号法であるが,ある程度復号を繰り返すと,ビット誤り確率の値がある値に収束することが知られている。 一方,最尤復号法は各符号語の生起確率が等しいと仮定したときに復号誤り確率が最小になるという意味で最適な復号法である。しかし全符号語の中で尤度が最も大きい符号語を探索し出力する復号法であるため,計算量が膨大となり,これを低減する様々な研究が行われている。中でもD.Gazelleらによって置換生成行列を用いて効率よくテストパターンを生成し,これを符号化することを繰り返す復号法[3] (以降GS復号法と呼ぶ)などが提案されている。 そこで,本研究ではchecks on checksを付加する符号化を行いインタリーバで情報の順序を置換するブロックターボ符号(積符号型ブロックターボ符号と呼ぶことにする)を対象とし新しい復号法を提案する。まずこの積符号型ブロックターボ符号に対し,従来の積符号より最小距離が大きくなる例を示す。一方この符号化に対しターボ復号を行うと,チェックビットが先に符号化した符号の符号語とならないため,最尤復号した時のビット誤り確率の値に比ベ劣化した値に収束してしまう。そこで,ビット誤り確率がある程度一定の値になるまでターボ復号を繰り返した後に,最後の繰り返しにより計算された信頼度情報を硬判定し,それを初期符号語とみなしてGS復号を行う。結果的に,ビット誤り確率をさらに低減することが可能であることを示す。 (中略) 3 従来研究 3.1 積符号型ブロックターボ符号 k_(1)k_(2)ビットの情報記号,u=(u_(1),u_(2),・・・,u_(k2))とk_(1)ビットずつ区切った部分系列u_(i)に分割する。 [積符号型ブロックターボ符号の符号化] 丸1 2元(n_(1),k_(1),d_(1))組織符号C^(-)を用いて各u_(i)に対して符号化を行いチェックビットp_(i)^(-)を付加する。すなわち(u_(i),p_(i)^(-))∈C^(-)である.またp^(-)=(p_(1)^(-),p_(2)^(-),・・・,p_(k2)^(-))とする。 丸2 情報uとパリティビットのp^(-)をインタリーバを用いて置換する。この系列をv=(v_(1),v_(2),・・・,v_(n1))とする。ただしv_(i)は長さk_(2)ビットの部分系列である。 丸3 2元(n_(2),k_(2),d_(2))組織符号C^(|)を用いて各v_(i)に対し符号化を行い,チェックビットp_(i)^(|)を付加する。すなわち(v_(i),p_(i)^(|))∈C^(|)である.またp^(|)=(p_(1)^(|),p_(2)^(|),・・・,p_(n1)^(|))である。 積符号型ブロックターボ符号の構成を図1に示す. この符号が従来の積符号を含んでいることは容易に分かる。 」(50ページ左欄?51ページ左欄) ([当審注]:表記上の理由で,丸囲いの1,2,3をそれぞれ「丸1」,「丸2」,「丸3」と記す。) 上記(カ),(キ)の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると,「ターボ符号として,畳込ターボ符号とブロックターボ符号があること。」,「積符号を実現するブロックターボ符号。」は,それぞれ周知である。 ウ 対比 本願発明と引用発明とを対比すると, a 引用発明の「移動局」,「リレー」,「基地局」は,明らかに本願発明の「送信機」,「中継デバイス」,「受信機」にそれぞれ対応する。また,引用例の記載(上記イ(イ)参照。)によれば,引用発明の「移動局」で送信するデータは,明らかにディジタル信号である。また,引用発明における「結合」を「連結」と称することは任意である。 b 引用発明の「符号ビット(x_(1),x_(2))」を「第1の符号語」と称し,「ネットワーク符号ビット(x_(4))」を「第2の符号語」と称することは任意である。 また,本願発明の「中間符号語」と,引用発明の「推定値(u^_(14) ,u^_(24))」とは,下記の相違点1は別として,「中間ビット」といえる点で一致している。 また,本願発明の「前記中間符号語のビットの少なくとも一部をインタリーブするステップであって,該インタリーブステップが,n1列とn2行の行列のいくつかの行に書き込む動作を実現し,前記n2行では,k2行の各々は前記少なくとも2つの送信機から受信された前記中間符号語に対応し,前記k2行の各々はk1情報ビットとn1-k1個の冗長性またはパリティ行ビットを備え,前記インタリーブするステップはインタリーブされたビットを得る,インタリーブするステップ」と,引用発明の「前記推定値(u^_(14) ,u^_(24))のビットの少なくとも一部をインタリーブするステップであって,該インタリーブステップが,インタリーブされたビットがネットワークエンコーダの入力に交互に現れる,インタリーブするステップ」とは,下記の相違点2は別として「前記中間ビットの少なくとも一部をインタリーブするステップであって,前記インタリーブするステップはインタリーブされたビットを得る,インタリーブするステップ」の点で共通している。 c 本願発明の「インタリーブされた前記ビットを符号化する第2の符号化ステップであって,前記行列の前記n1列と前記k2行を使用する積符号を実現し,前記中間符号語を考慮するn2-k2の第2の符号語を生成し,前記第2の符号語は列パリティビットに対応する,第2の符号化ステップ」と,引用発明の「インタリーブされたビット(u^_(14),u^_(24))を符号化する第2の符号化ステップであって,交互に入力したビット(u^_(14),u^_(24))を畳込符号化して,2つの移動局の情報ビットを垂直方向に結合したパリティ(p_(4))からなるネットワーク符号ビット(x_(4))を生成する,第2の符号化ステップ」とは,下記の相違点3は別として「インタリーブされた前記ビットを符号化する第2の符号化ステップ」の点で共通している。 d 引用発明のネットワークエンコーダでは畳込符号化されるものであり,移動局においても同様の畳込符号化されることに鑑みれば,基地局における復号は反復復号であることは明らかである。したがって,引用発明の「前記1つの基地局において,前記2つの符号ビット(x_(1),x_(2))と,前記少なくとも1つのネットワーク符号ビット(x_(4))によって形成された冗長性とを考慮して復号を実行できるようにする」は,「前記少なくとも1つの受信機において,前記2つの第1の符号語と,前記少なくとも1つの第2の符号語によって形成された冗長性とを考慮して反復復号を実行できるようにする」といえる。 したがって,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。 (一致点) 「少なくとも2つの送信機から,1つの中継デバイスと少なくとも1つの受信機にディジタル信号を送信し,前記中継デバイスにおいて少なくとも2つの符号語の連結を実施する方法であって, 前記2つの送信機の各々において,少なくとも1つの第1の符号語を生成する第1の符号化ステップと, 前記2つの送信機の各々において,前記少なくとも1つの第1の符号語を送信する第1の送信ステップと, を備え, さらに,前記1つの中継デバイスにおいて下記のステップの全てが実行され,該ステップは, 前記少なくとも2つの第1の符号語を受信し,中間ビットを形成するステップと, 前記中間ビットの少なくとも一部をインタリーブするステップであって,前記インタリーブするステップはインタリーブされたビットを得る,インタリーブするステップと, インタリーブされた前記ビットを符号化する第2の符号化ステップと, 前記第2の符号語を送信する第2の送信ステップと, を備え, 前記少なくとも1つの受信機において,前記2つの第1の符号語と,前記少なくとも1つの第2の符号語によって形成された冗長性とを考慮して反復復号を実行できるようにする方法。」 (相違点1) 一致点の「中間ビット」に関し,本願発明は「中間符号語」であり,本願明細書の【0049】,【0055】,【0056】等によれば「受信した符号語をビット単位の閾値化したもの」を含むのに対し,引用発明は「推定値(u^_(14) ,u^_(24))」であり,引用例の図2によればチャネルデコーダにてデコードされたものである点。 (相違点2) 一致点の「前記中間ビットの少なくとも一部をインタリーブするステップであって,前記インタリーブするステップはインタリーブされたビットを得る,インタリーブするステップ」に関し,本願発明は,「n1列とn2行の行列のいくつかの行に書き込む動作を実現し,前記n2行では,k2行の各々は前記少なくとも2つの送信機から受信された前記中間符号語に対応し,前記k2行の各々はk1情報ビットとn1-k1個の冗長性またはパリティ行ビットを備え」るのに対し,引用発明は「インタリーブされたビットがネットワークエンコーダの入力に交互に現れる」ものである点。 (相違点3) 一致点の「インタリーブされた前記ビットを符号化する第2の符号化ステップ」に関し,本願発明は,「前記行列の前記n1列と前記k2行を使用する積符号を実現し,前記中間符号語を考慮するn2-k2の第2の符号語を生成し,前記第2の符号語は列パリティビットに対応する」のに対し,引用発明は,「交互に入力したビット(u^_(14),u^_(24))を畳込符号化して,2つの移動局の情報ビットを垂直方向に結合したパリティ(p_(4))からなるネットワーク符号ビット(x_(4))を生成する」点。 エ 判断 上記相違点1?3を纏めて検討するに,要するに,本願発明の第2の符号化ステップは積符号を実現するものであり,そのために水平方向のパリティを含む中間符号語がインタリーブされるのに対し,引用発明は積符号を実現するものではないから,交互にインタリーブされた復号された推定値が結合されて畳込符号化される点で相違するものである。 ここで,「ターボ符号として,畳込ターボ符号とブロックターボ符号があること。」,「積符号を実現するブロックターボ符号。」は,それぞれ周知である。しかしながら,引用例には,リレーにおいて畳込符号化に替えて積符号を採用する動機付けはなんら示唆されていない。 また,引用発明におけるネットワーク符号ビット(x_(4))は,2つの移動局の情報ビットを垂直方向に結合したパリティ(p_(4))であり,水平方向のパリティに係る垂直方向のパリティ(checks on checks)を有するものではない。してみると,本願発明の「第2の符号語」と引用発明の「ネットワーク符号ビット(x_(4))」とは,その内容も作用も異なるものであり,単なる均等手段の置換とはいえない。 そして,本願発明の水平方向のパリティに係る垂直方向のパリティ(checks on checks)による有利な効果を有するものである。 したがって,相違点1?3の点は,周知技術により置換することが容易とはいえない。 オ 小活 したがって,本願発明は,当業者が引用例及び周知技術に基づいて容易に発明することができたとはいえなくなった。 本願の請求項2-9に係る発明は,本願発明を更に限定したものであるから,本願発明と同様に,当業者が引用例及び周知技術に基づいて容易に発明することができたとはいえなくなった。また,本願の請求項10,11に係る発明は,本願発明を別のカテゴリーとして表現するものであるから,本願発明と同様に,当業者が引用例及び周知技術に基づいて容易に発明することができたとはいえなくなった。 そうすると,もはや理由1によっては本願を拒絶することはできない。 (2)理由2について ア 平成28年9月27日付けの手続補正によって,請求項1の「少なくとも2つの送信機と少なくとも1つの受信機間にディジタル信号を送信して,少なくとも2つの符号の連結を実施する方法であって」が,「少なくとも2つの送信機から,1つの中継デバイスと少なくとも1つの受信機にディジタル信号を送信し,前記中継デバイスにおいて少なくとも2つの符号語の連結を実施する方法であって」に補正された。このことにより,中継デバイスにおいて符号語の連結を行うことが明らかになり,送信と連結との関係も明らかになり,記載内容が日本語として明確になった。 よって,理由2アは解消した。 イ 平成28年9月27日付けの手続補正によって,請求項1の「前記送信機において,少なくとも2つの第1の符号語を送出する第1の符号化ステップ」,「前記第1の符号語を送信する第1のステップ」が,それぞれ「前記2つの送信機の各々において,少なくとも1つの第1の符号語を生成する第1の符号化ステップ」,「前記2つの送信機の各々において,前記少なくとも1つの第1の符号語を送信する第1の送信ステップ」に補正された。このことにより,「第1の符号化ステップ」では各送信機がそれぞれ少なくとも2つの第1の符号語を生成することが明らかになり,発明の詳細な説明や図1,図2,図5,図7の記載と対応するものとなり,また,「第1の符号化ステップ」と「第1の送信ステップ」との関係も明らかになった。 よって,理由2イ,ウは解消した。 ウ 平成28年9月27日付けの手続補正によって,請求項1の「中間符号語と称される前記第1の符号語のうちの少なくとも2つを受信するステップ」が,「前記少なくとも2つの第1の符号語を受信し,中間符号語を形成するステップ」に補正された。このことにより,発明の詳細な説明の記載と対応するものとなった。 よって,理由2エ,カは解消した。 エ 平成28年9月27日付けの手続補正によって,請求項1の「前記中間符号語の前記ビットの少なくとも一部をインタリーブするステップであって」が,「前記中間符号語のビットの少なくとも一部をインタリーブするステップであって」に補正された。このことにより,それ以前に「ビット」に係る記載が存在しないことと整合するようになった。 よって,理由2オは解消した。 オ 平成28年9月27日付けの手続補正によって,請求項1の「・・・前記インタリーブするステップはインタリーブされたビットを送出する,インタリーブするステップ」が,「・・・前記インタリーブするステップはインタリーブされたビットを得る,インタリーブするステップ」に補正された。このことにより,記載内容が明らかになり,発明の詳細な説明の記載とも対応するようになった。 よって,理由2キは解消した。 カ 上記ア?オのとおりであり,請求項1の記載不備が解消したことから,請求項1を引用する請求項2?10についても当該記載不備が解消した。 よって,理由2クは解消した。 キ 平成28年9月27日付けの手続補正によって,補正前の請求項10が削除された。 よって,理由2ケは解消した。 ク 平成28年9月27日付けの手続補正によって,「・・・請求項1?9の少なくとも一項に記載の送信方法を実現するプログラム符号命令を備えることを特徴とするコンピュータプログラム。」が,「・・・請求項10に記載の中継デバイスを実現するプログラム符号命令を備えることを特徴とするコンピュータプログラム。」に補正された。このことにより,コンピュータプログラムは請求項10のみを引用するようになり,また,中継デバイスを実現するものであることが明らかになった。 よって,理由2コ,サは解消した。 (3)理由3について 上記「(2)理由2について」の項の「キ」,「ク」のとおり理由2ケ,サが解消したことに伴い,理由3も解消した。 第5 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-11-22 |
出願番号 | 特願2011-502375(P2011-502375) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04L)
P 1 8・ 537- WY (H04L) P 1 8・ 536- WY (H04L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 谷岡 佳彦 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
中野 浩昌 菅原 道晴 |
発明の名称 | 少なくとも2つの符号語の連結を実施する方法、中継デバイス、およびそのコンピュータプログラム |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 河村 英文 |
代理人 | 河村 英文 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 松島 鉄男 |
代理人 | 松島 鉄男 |