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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R |
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管理番号 | 1321700 |
審判番号 | 不服2015-15585 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-08-21 |
確定日 | 2016-11-29 |
事件の表示 | 特願2013-167679「平面的RFセンサ技術の強化について」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月27日出願公開、特開2014- 38097、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許出願: 平成25年8月12日 (パリ条約による優先権主張2012年8月16日、米国、2013年3月14日、米国) 拒絶理由通知: 平成26年7月4日(発送日:同年同月8日) 手続補正: 平成26年11月10日 意見書: 平成26年11月10日 拒絶査定: 平成27年4月15日付け(送達日:同年同月21日) 拒絶査定不服審判の請求: 平成27年8月21日 拒絶理由通知: 平成28年6月7日 (以下、「当審拒絶理由」という。発送日:同年同月14日) 手続補正: 平成28年10月7日(以下、「本件補正」という。) 意見書: 平成28年10月7日 第2 本願発明 本願の請求項1-20に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-20に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「RF(無線周波数)センサシステムであって、 第1の外側層、第2の外側層、第1の内側層、第2の内側層、及び内周部を含み、前記内周部によって開口が規定されたPCB(プリント基板)と、 第1の複数のトレースによって第1の複数のビアに連結された第1の複数のセンサパッドを備え、当該第1の複数のセンサパッドが前記内周部に配置されている、第1のループと、 第2の複数のトレースによって第2の複数のビアに連結された第2の複数のセンサパッドを備え、当該第2の複数のセンサパッドが前記内周部に配置されている、第2のループと、 前記第1の複数のセンサパッド、前記第1の複数のビア、および前記第1の複数のトレースに近接する前記第1の外側層、前記第2の外側層、前記第1の内側層、及び前記第2の内側層に内蔵されたコアリングと、 を備え、 RF電流を伝搬させるための中心導体が、前記開口の中を通って延伸し、 前記第1および第2のループは、前記第1および第2の複数のセンサパッド、前記第1および第2の複数のビア、前記第1および第2の複数のトレース、ならびに、前記コアリングに基づいて、電気的信号を生成する ことを特徴とするRFセンサシステム。」 第3 原査定の理由について 1.原査定の理由の概要 この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項1-20 ・引用文献等1-7 ・備考 (請求項1,11について) 文献1には、開口を有するとともにコアが形成された中板15を、プリントパターンが形成された上板14と、プリントパターンが形成された下板16とで挟んで貼り合わせることで、進み巻と戻し巻の巻線構造を有する変流器が記載されている(【0024】-【0053】の記載を参照)。 また、文献1には、スルーホールを形成すること(【0031】の記載を参照)、内壁6にプリントパターンを形成すること(【0033】の記載を参照)が記載されている。 ここで、文献1に記載される「進み巻」と「戻し巻」は、本願発明の「第1のループ」、「第2のループ」に相当し、文献1に記載される内壁6に設けられたプリントパターンは、本願発明の「センサパッド」に相当する。 文献2には、第1の外面層と第2の外面層と第1の内面層と第2の内面層と開口を規定する内周とを有する基板と、第1のトレース、第1のビアホール、内周面に配置された第1のセンサパッドから構成される第1のループと、第2のトレース、第2のビアホール、内周面に配置された第2のセンサパッドから構成される第2のループと、を備えた高周波(RF)センサであって、RF電流を運ぶための導線が開口を通って延びており、第1のループ及び第2のループは、導線を流れるRF電流の流れを示す電気信号を生成することが記載されている(特に、請求項1の記載を参照)。 そして、文献1,2から、第1のループと第2のループとコアを備えたRFセンサとすることに困難性はない。 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開2010-232392号公報 2.特開2009-282017号公報 3.特開2005-37323号公報 4.特開平6-216307号公報 5.特開2010-256093号公報 6.特開2000-228323号公報 7.特開2001-102230号公報 2.原査定の理由の判断 (1)刊行物の記載事項 ア 引用文献1 引用文献1には、次の事項が図面とともに記載されている。(下線は当審による。以下同様。) 「【0024】 本発明の実施形態にかかる零相変流器は、コイルの巻線バラツキを解消し、高精度の出力を得るために、零相変流器をプリント基板によって構成する。すなわち、磁性体コアをプリント基板内に内蔵し、ロゴスキーコイル状のコイルをプリント基板に形成する。 【0025】 ロゴスキーコイルとは、空芯コイルの構成を指すものであるが、本実施形態のコア入りのコイルは、行き(進み巻)と帰り(戻し巻)の巻き線構造を有するコイルであり、この構成により外部の影響を低減する。 【0026】 図1,2は、本発明の実施形態にかかる零相変流器のコア入りコイル基板10を説明するための図である。コア入りコイル基板10は、図2に示すコア(パーマロイ等)13を基板10内に内蔵し、プリントパターン12とスルーホール11によって進み巻と戻し巻構造を形成し、ロゴスキーコイル状のコイルパターンでトロイダルコイルを構成する。 【0027】 図2に示すように、コア入りコイル基板10は、コア13が同時成型される中板15と、コア13および中板15を挟む上板14および底板16とを有し、プリントパターン12は、上板14および底板16に形成され、スルーホール11は、中板15に形成される。本実施形態の零相変流器は、コア入りコイル基板10内に磁性体コア13を入れることによって、従来のロゴスキーコイルの感度を良くすることができる。 【0028】 図3は、本実施形態の零相変流器におけるプリントパターン実装を説明するための図である。本実施形態の零相変流器は、図3(a)に示すように、磁性体コア13を成型品と同時成型してコア入りの板材9を予め作っておき、図3(b)に示すように銅板を張ってコア内蔵両面張り積層板17を形成し、その後、図3(c)に示すように、プリントパターン12およびスルーホール11によってコイルを構成する。 ・・・ 【0030】 図4,5,6は、コア入りロゴスキーコイル巻きプリント基板を3層の張り合わせ構造で作る際の説明図である。本実施形態の零相変流器は、図4に示すように、片面銅張り積層板である上板14と、コアの形をくりぬいた積層板である中板15と、磁性金属であるコア材13と、片面銅張り積層板である底板16とを有し、コア材13と中板15を上板14と底板16で挟み込んで貼りあわせ、プレスしてコア内蔵両面張り積層板17を形成する。そして、コア内蔵両面張り積層板17に通常のパターンエッチングを行う。図4に示すコア入りコイル基板にプリント基板パターンエッチングを行ったものを図5に示す。図5は、コア入りコイル基板10の積層板17の表面にパターンエッチング11、12を施している。 【0031】 次に、図6(a)、図6(b)を参照し、コア入りロゴスキーコイル巻きプリント基板を3層の張り合わせ構造の断面構造について、説明する。図6(a)は、図5に示すコア入りコイル基板10を上方向から見た図であり、図6(b)は、図6(a)のA-A部の断面図を示す。図6(b)に示すように、本実施形態のコア入りコイル基板10は、銅パターン18が形成された上板14と底板16をスルーホール11で接続し、上板14と底板16の間に磁性体コア13および磁性体コア13の形にくりぬいた中板15を挟み込んで貼りあわせた構造を有する。 【0032】 上述のように、コア入りコイル基板10は、磁性体コア13と中板15を上板14と底板16で挟み込んで構成される。そのため、中板の厚みを変えるだけで環状磁性体コアの厚みを変更できるので、設計の自由度が増す。また、汎用の設備で製造することができる。 【0033】 図7は、本実施形態の零相変流器におけるプリントパターン実装を説明するための図である。本実施形態の零相変流器は、図7(a)に示すように、先に磁性体コア13と樹脂板によりコア入り板材9を同時成型し、図7(b)に示すように、円筒形板材19に加工し、その後、図7(c)に示すように、レーザーによる3次元的なプリントパターンで上面8および底面7に加えて内壁6を実装し、スルーホール11を実装する。 【0034】 円筒形内壁6と上面8および底面7に3次元的にプリントパターンを形成し、コイルの外側の引き回しはスルーホール11を打ち、上面8と底面7のコイルパターンをつなぐ。一方、底面7にパターンを予め実装しておき、その上に磁性体コア13を配置し、更にその上に3次元的にコイルを構成することもできる。 ・・・ 【0039】 図9(a)は、回路基板上に構成したロゴスキーコイル(空芯)の原理図を示す。ロゴスキーコイルは進みコイル50と戻しコイル51で構成され、電流Iが進みコイル50と戻しコイル51を貫通して流れた場合に、電圧Eを検出する。電圧Eは積分回路(増幅回路)52で積分または増幅され、検出電圧Viとして取り出される。」 また、測定対象となる導体が円筒形内壁6の中を通って延伸することは、図9(a)に示されているように明らかといえるし、全体の配置構成から、行き(進み巻)と帰り(戻し巻)の巻き線構造が、スルーホール11、プリントパターン12、ならびに、コア13に基づいて、電気的信号を生成することも明らかである。そうすると、上記記載及び図面の第1?7,9図の記載から、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。 「零相変流器であって、 中板15と、コア13および中板15を挟む上板14および底板16と円筒形内壁6とを有するコア入りロゴスキーコイル巻きプリント基板と、 行き(進み巻)の巻き線構造と、 帰り(戻し巻)の巻き線構造と、 中板15と同時成型されるコア13と、 を備え、 測定対象となる導体が円筒形内壁6の中を通って延伸し、 行き(進み巻)と帰り(戻し巻)の巻き線構造は、スルーホール11、プリントパターン12、ならびに、コア13に基づいて、電気的信号を生成する ことを特徴とする零相変流器。」(以下「引用発明1」という。) イ 引用文献2 引用文献2には、次の事項(a)ないし(b)が図面とともに記載されている。 (a) 「【請求項1】 第1の外面層と第2の外面層と第1の内面層と第2の内面層と貫通する開口を規定する内周とを有する基板と、 複数の第1のビアホールに複数の第1のトレースにてそれぞれ結合された複数の第1のセンサパッドを有し、上記複数の第1のセンサパッドは上記内周上に配置されている第1のループと、 複数の第2のビアホールに複数の第2のトレースにてそれぞれ結合された複数の第2のセンサパッドを有し、上記複数の第2のセンサパッドは上記内周上に配置されている第2のループとを含み、 RF電流を運ぶための導線が、上記開口を通って延びており、上記第1のループおよび上記第2のループは、上記導線を流れるRF電流の流れを示す電気信号を生成する、RF電流を測定する高周波(RF)センサ。」 (b) 「【0020】 ここで、図1を参照する。この図には、直交高周波(RF)電圧/電流(VI)プローブ10が示されている。VIプローブ10は、少なくとも4つの導電層を有するプリント基板(PCB)12を備えている。第1の外面層14aおよび第2の外面層14bは、互いに平行であり、PCB12の絶縁基板によって離間された関係で維持されている。第1の層14aおよび第2の層14bを、集合的に接地平面(ground plane)14と呼ぶ。接地平面14は、多数のビアホール16によって互いに電気的に接続されている。ビアホール16は、開口18の円周の周りにおいて放射状に設けられているとすることができる。ビアホール16は、PCB12の内層から電気的に絶縁されている。これについて、以下に説明する。接地平面14およびビアホール16は、測定するRF電流が流れる同軸ケーブル(図示しない)の外層に接続されている。前記同軸ケーブルの中心導体は、開口18内において軸方向かつ同心円状に配置されている導線20に接続されている。VIプローブ10は、また、複数の取り付け穴13を含み、これら取り付け穴13は、VIプローブ10を、制御するRF発電機(図示しない)に結合させることを容易にしている。」 ここで上記(a)に記載された「基板」は、上記(b)に記載の「プリント基板(PCB)12」に対応するものである。したがって、上記(a)ないし(b)、及び図面の第1?3図の記載から、引用文献2には、次の発明が記載されていると認められる。 「RF電流を測定する高周波(RF)センサであって、 第1の外面層と第2の外面層と第1の内面層と第2の内面層と貫通する開口を規定する内周とを有するプリント基板(PCB)と、 複数の第1のビアホールに複数の第1のトレースにてそれぞれ結合された複数の第1のセンサパッドを有し、上記複数の第1のセンサパッドは上記内周上に配置されている第1のループと、 複数の第2のビアホールに複数の第2のトレースにてそれぞれ結合された複数の第2のセンサパッドを有し、上記複数の第2のセンサパッドは上記内周上に配置されている第2のループとを含み、 RF電流を運ぶための導線が、上記開口を通って延びており、上記第1のループおよび上記第2のループは、上記導線を流れるRF電流の流れを示す電気信号を生成する、RF電流を測定する高周波(RF)センサ。」(以下「引用発明2」という。) (2)対比 本願発明と引用発明1とを、主たる構成要件毎に、順次対比する。 まず、引用発明1における「零相変流器」と、本願発明における「RF(無線周波数)センサシステム」とは、「センサシステム」である点で共通する。 また、引用発明1における「中板15と、コア13および中板15を挟む上板14および底板16と円筒形内壁6とを有するコア入りロゴスキーコイル巻きプリント基板」は、本願発明における「第1の外側層、第2の外側層、第1の内側層、第2の内側層、及び内周部を含み、前記内周部によって開口が規定されたPCB(プリント基板)」に相当する。 次に、引用発明1における「行き(進み巻)の巻き線構造」と、本願発明における「第1の複数のトレースによって第1の複数のビアに連結された第1の複数のセンサパッドを備え、当該第1の複数のセンサパッドが前記内周部に配置されている、第1のループ」とは、「第1のループ」である点で共通する。同様に、引用発明1における「帰り(戻し巻)の巻き線構造」と、本願発明における「第2の複数のトレースによって第2の複数のビアに連結された第2の複数のセンサパッドを備え、当該第2の複数のセンサパッドが前記内周部に配置されている、第2のループ」とは、「第2のループ」である点で共通する。 さらに、引用発明1における「中板15と同時成型されるコア13」と、本願発明における「前記第1の複数のセンサパッド、前記第1の複数のビア、および前記第1の複数のトレースに近接する前記第1の外側層、前記第2の外側層、前記第1の内側層、及び前記第2の内側層に内蔵されたコアリング」とは、「内蔵されたコアリング」である点で共通する。 そして、引用発明1において「測定対象となる導体が円筒形内壁6の中を通って延伸」することと、本願発明において「RF電流を伝搬させるための中心導体が、前記開口の中を通って延伸」することとは、共に「中心導体が、前記開口の中を通って延伸」する点で共通し、引用発明1において「行き(進み巻)と帰り(戻し巻)の巻き線構造は、スルーホール11、プリントパターン12、ならびに、コア13に基づいて、電気的信号を生成する」ことと、本願発明において「前記第1および第2のループは、前記第1および第2の複数のセンサパッド、前記第1および第2の複数のビア、前記第1および第2の複数のトレース、ならびに、前記コアリングに基づいて、電気的信号を生成」することとは、共に「前記第1および第2のループは、前記第1および第2の複数のビア、前記第1および第2の複数のトレース、ならびに、前記コアリングに基づいて、電気的信号を生成」する点で共通する。 してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「センサシステムであって、 第1の外側層、第2の外側層、第1の内側層、第2の内側層、及び内周部を含み、前記内周部によって開口が規定されたPCB(プリント基板)と、 第1のループと、 第2のループと、 内蔵されたコアリングと、 を備え、 中心導体が、前記開口の中を通って延伸し、 前記第1および第2のループは、前記第1および第2の複数のビア、前記第1および第2の複数のトレース、ならびに、前記コアリングに基づいて、電気的信号を生成する ことを特徴とするセンサシステム。」 (相違点) 相違点1:本願発明のセンサシステムは対象を「RF(無線周波数)」とするものであるが、引用発明1の零相変流器は対象周波数が明記されていない点。また、本願発明の中心導体が「RF電流を伝搬させるため」のものであるのに対し、引用発明1の測定対象となる導体がそのようなものであるか否かは不明である点。 相違点2:本願発明の第1のループは「第1の複数のトレースによって第1の複数のビアに連結された第1の複数のセンサパッドを備え、当該第1の複数のセンサパッドが前記内周部に配置されている」ものであるが、引用発明1の行き(進み巻)の巻き線構造はそのような構成を備えていない点。また同様に、本願発明の第2のループは「第2の複数のトレースによって第2の複数のビアに連結された第2の複数のセンサパッドを備え、当該第2の複数のセンサパッドが前記内周部に配置されている」ものであるが、引用発明1の帰り(戻し巻)の巻き線構造はそのような構成を備えていない点。また本願発明において電気的信号の生成が「前記第1および第2の複数のセンサパッド」にも基づいているのに対し、引用発明1はそのような特定がない点。 相違点3:本願発明のコアリングは「前記第1の複数のセンサパッド、前記第1の複数のビア、および前記第1の複数のトレースに近接する前記第1の外側層、前記第2の外側層、前記第1の内側層、及び前記第2の内側層に内蔵された」ものであるのに対し、引用発明1のコアは「中板15と同時成型される」ものであって内蔵されているとはいえるが、上記のような構成は備えていない点。 (3)判断 上記相違点について検討する。 上記相違点1,2に係る本願発明の構成は、いずれも引用発明1と同様に電流を測定するセンサである引用発明2が実質的に備えるものである。しかしながら、上記相違点3に係る本願発明の構成は引用文献2に記載されておらず、また自明でも無い。 また、上記相違点3に係る本願発明の構成は引用文献3ないし7にも記載されておらず、自明でも無い。 (4)小括 したがって、本願発明は、当業者が引用発明1及び引用文献2ないし7に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 本願の請求項11に係る発明は、本願発明を方法として表現したものであり、また本願の請求項2-10、12-20に係る発明は、本願発明または本願の請求項11に係る発明をさらに限定したものであるので、いずれも本願発明と同様に、当業者が引用発明1及び引用文献2ないし7に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について 1.当審拒絶理由の概要(なお、下記引用文献を査定時の引用文献と区別して表記するため「引用文献A,B,C,D」とした。) 本件出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項1,11 ・引用文献A-B ・備考 引用文献A(特に請求項1及び段落【0020】を参照。)には、 「第1の外面層と第2の外面層と第1の内面層と第2の内面層と貫通する開口を規定する内周とを有するプリント基板(PCB)と、 複数の第1のビアホールに複数の第1のトレースにてそれぞれ結合された複数の第1のセンサパッドを有し、上記複数の第1のセンサパッドは上記内周上に配置されている第1のループと、 複数の第2のビアホールに複数の第2のトレースにてそれぞれ結合された複数の第2のセンサパッドを有し、上記複数の第2のセンサパッドは上記内周上に配置されている第2のループとを含み、 RF電流を運ぶための導線が、上記開口を通って延びており、上記第1のループおよび上記第2のループは、上記導線を流れるRF電流の流れを示す電気信号を生成する、RF電流を測定する高周波(RF)センサ。」(以下、「引用発明A」という。) が記載されている。 引用発明Aにおいて、「上記第1のループおよび上記第2のループ」による、「上記導線を流れるRF電流の流れを示す電気信号」の生成が、前記複数の第1および第2のセンサパッド、前記複数の第1および第2のビアホール、ならびに、前記複数の第1および第2のトレースに基づいていることは明らかである。 そうすると、引用発明Aと本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)との間の実質的な差異は、以下のとおりである。 相違点:本願発明1においては「前記第1の複数のセンサパッド、前記第1の複数のビア、および前記第1の複数のトレースに近接する前記第1の内側層に内蔵されたコアリング」を備えているのに対し、引用発明A2はそのようなコアリングを備えていない点。 また、該コアリングを備えることにより、本願発明1においては電気的信号の生成が「前記コアリングに基づいて」いるのに対し、引用発明Aはそのようにされていない点。 上記相違点について検討すると、引用文献B(特に段落【0026】,【0027】,【0030】を参照。)にも記載されているように、電流検出用のコイル(ループ)内に基板に内蔵された磁性体コア(コアリング)を設けて感度を良くすることは周知技術であって、これを引用発明Aに採用することは当業者が容易になし得たものであるし、コアを内蔵させる層の選択は設計事項に過ぎない。またその場合、配置したコアが、センサパッド、ビアホール、及びトレースに近接することや、電気的信号の生成がコアに基づいて行われるようになることは明らかである。 したがって、本願発明1は上記引用発明A及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本願請求項11に係る発明についても同様である。 引 用 文 献 等 一 覧 A.特開2009-282017号公報 B.特開2010-232392号公報 C.特開平6-216307号公報 D.特開2010-256093号公報 2.当審拒絶理由の判断 (1)引用文献の記載事項 ア 引用文献A 引用文献Aは、査定時の引用文献2と同一のものであって、引用文献Aの記載事項、及び引用文献Aに記載された発明は、上記「第3」「2.」「(1)」の「イ 引用文献2」に示したとおりである。引用発明2(引用文献Aに記載された発明)を以下に再掲する。 「RF電流を測定する高周波(RF)センサであって、 第1の外面層と第2の外面層と第1の内面層と第2の内面層と貫通する開口を規定する内周とを有するプリント基板(PCB)と、 複数の第1のビアホールに複数の第1のトレースにてそれぞれ結合された複数の第1のセンサパッドを有し、上記複数の第1のセンサパッドは上記内周上に配置されている第1のループと、 複数の第2のビアホールに複数の第2のトレースにてそれぞれ結合された複数の第2のセンサパッドを有し、上記複数の第2のセンサパッドは上記内周上に配置されている第2のループとを含み、 RF電流を運ぶための導線が、上記開口を通って延びており、上記第1のループおよび上記第2のループは、上記導線を流れるRF電流の流れを示す電気信号を生成する、RF電流を測定する高周波(RF)センサ。」 イ 引用文献B 引用文献Bは、査定時の引用文献1と同一のものであって、引用文献Bの記載事項は、上記「第3」「2.」「(1)」の「ア 引用文献1」に示したとおりである。 そして、上記記載からも明らかなように、電流検出用のコイル(ループ)内に基板に内蔵された磁性体コア(コアリング)を設けて感度を良くすることは周知技術である。 (2)対比 本願発明と引用発明2とを対比する。 引用発明2において、「上記導線を流れるRF電流の流れを示す電気信号」の生成が、前記複数の第1および第2のセンサパッド、前記複数の第1および第2のビアホール、ならびに、前記複数の第1および第2のトレースに基づいていることは明らかである。 してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「RF(無線周波数)センサシステムであって、 第1の外側層、第2の外側層、第1の内側層、第2の内側層、及び内周部を含み、前記内周部によって開口が規定されたPCB(プリント基板)と、 第1の複数のトレースによって第1の複数のビアに連結された第1の複数のセンサパッドを備え、当該第1の複数のセンサパッドが前記内周部に配置されている、第1のループと、 第2の複数のトレースによって第2の複数のビアに連結された第2の複数のセンサパッドを備え、当該第2の複数のセンサパッドが前記内周部に配置されている、第2のループと、 を備え、 RF電流を伝搬させるための中心導体が、前記開口の中を通って延伸し、 前記第1および第2のループは、前記第1および第2の複数のセンサパッド、前記第1および第2の複数のビア、前記第1および第2の複数のトレースに基づいて、電気的信号を生成する ことを特徴とするRFセンサシステム。」 (相違点) 相違点1:本願発明が「前記第1の複数のセンサパッド、前記第1の複数のビア、および前記第1の複数のトレースに近接する前記第1の外側層、前記第2の外側層、前記第1の内側層、及び前記第2の内側層に内蔵されたコアリング」を備えるのに対し、引用発明2はそのような構成を有さない点。またそれに伴い、本願発明における電気的信号の生成が「前記コアリング」にも基づいていると特定されているのに対し、引用発明2にはそのような特定はない点。 (3)判断 上記相違点1について検討する。 上記「イ 引用文献B」で述べたように、電流検出用のコイル(ループ)内に基板に内蔵された磁性体コア(コアリング)を設けて感度を良くすることは周知技術である。しかしながら、 「前記第1の複数のセンサパッド、前記第1の複数のビア、および前記第1の複数のトレースに近接する前記第1の外側層、前記第2の外側層、前記第1の内側層、及び前記第2の内側層に内蔵されたコアリング」 は引用文献Bに記載されておらず、周知技術でもない。また、上記コアリング4に相当する構成は引用文献C,Dにも記載されておらず、自明でも無い。 (4)小括 したがって、本願発明は、当業者が引用発明2、引用文献C,Dに記載された発明、及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。 本願の請求項11に係る発明は、本願発明を方法として表現したものであり、また本願の請求項2-10、12-20に係る発明は、本願発明または本願の請求項11に係る発明をさらに限定したものであるので、いずれも本願発明と同様に、当業者が引用発明2、引用文献C,Dに記載された発明、及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえなくなった。 そうすると、もはや、当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審で通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-11-15 |
出願番号 | 特願2013-167679(P2013-167679) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01R)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 菅藤 政明 |
特許庁審判長 |
酒井 伸芳 |
特許庁審判官 |
中塚 直樹 大和田 有軌 |
発明の名称 | 平面的RFセンサ技術の強化について |
代理人 | 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK |