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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08B |
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管理番号 | 1321725 |
審判番号 | 不服2016-5774 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-04-19 |
確定日 | 2016-12-06 |
事件の表示 | 特願2012-103360「火災受信機および防災システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月14日出願公開、特開2013-232082、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年4月27日の出願であって、平成27年10月14日付けで拒絶理由が通知され、同年12月14日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年1月15日付け(発送日:同年1月19日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年4月19日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。 第2 平成28年4月19日の手続補正(以下「本件補正」という。)の適否 1 補正の内容 (1) 請求項1について 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、 「感知器回線および地区音響回線と接続され、火災時用のガイドエリアと、非火災時用のガイドエリアとを分離して配置したガイド表示・操作部を有した火災受信機において、 前記ガイド表示・操作部の非火災時用のガイドエリア内には、上から順に、火災受信機の音響を停止する主音響停止釦、地区音響を停止する地区音響停止釦、火災受信機を監視状態に復旧させる復旧釦が、縦列に配置されており、 火災発報時には、主音響としてブザーが間欠鳴動し、間欠部に非火災時の前記主音響停止釦の操作をガイドする音声メッセージを挿入出力し、前記主音響停止釦の操作がされた後に、前記ブザーの鳴動を停止して前記地区音響停止釦の操作をガイドする音声メッセージを出力し、前記地区音響停止ボタンの操作がされた後に、前記復旧釦の操作をガイドする音声メッセージを出力することを特徴とする火災受信機。」(下線は請求人が付与) とする補正(以下「補正事項1」という。)を含んでいる。 (2) 明細書の段落【0008】について 本件補正は、明細書の段落【0008】を、 「上記目的を達成するために、本発明に係る火災受信機は、感知器回線および地区音響回線と接続され、火災時用のガイドエリアと、非火災時用のガイドエリアとを分離して配置したガイド表示・操作部を有した火災受信機において、ガイド表示・操作部の非火災時用のガイドエリア内には、上から順に、火災受信機の音響を停止する主音響停止釦、地区音響を停止する地区音響停止釦、火災受信機を監視状態に復旧させる復旧釦が、縦列に配置されており、火災発報時には、主音響としてブザーが間欠鳴動し、間欠部に非火災時の主音響停止釦の操作をガイドする音声メッセージを挿入出力し、主音響停止釦の操作がされた後に、ブザーの鳴動を停止して地区音響停止釦の操作をガイドする音声メッセージを出力し、地区音響停止ボタンの操作がされた後に、復旧釦の操作をガイドする音声メッセージを出力することを特徴とする。」(下線は請求人が付与) とする補正(以下「補正事項2」という。)を含んでいる。 2 補正の適否 (1) 補正事項1について 本件補正の補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である非火災時の「操作」について、「前記主音響停止釦の」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 ア 刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-274564号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア-1 「【0009】 【実施例】図1乃至図4に本発明の一実施例を示す。本実施例の自火報システムは、図3に示すように、火災受信機Aと、この火災受信機Aに感知器回線L_(11)?L_(1n)を介して接続された複数の感知器Sと、火災受信機Aに地区音響回線L_(12)?L_(2m)を介して接続された複数の地区音響Bとで構成され、各感知器回線L_(11)?L_(1n)の終端には感知器回線L_(11)?L_(1n)の断線などを検知するために終端器Eを接続してある。但し、このシステム構成は一例を示しただけであり、他のシステム構成の場合にも本発明を適用できる。 【0010】火災受信機Aには、図1に示すように、主音響の鳴動を停止する主音響停止スイッチSW_(1)、地区音響Bの鳴動を停止する地区音響停止スイッチSW_(2)及び火災復旧を行う場合に操作される火災復旧スイッチSW_(3)と、使用者に対して対処指示を与える表示装置Dとを備える。ここで、地区音響停止スイッチSW_(2)に関しては、1回押す毎に地区音響Bを停止及びこの停止状態の解除とに交互に切り換えることができるものであり、図中このスイッチSW_(2)の両側の四角で示す表示(LEDなど)P_(1),P_(2)でその操作状態を示す。なお、斜線を付した状態で表示P_(1),P_(2)の点灯を示し、例えば図1の場合には地区音響Bを鳴動可能な状態に設定してあることを示す。そして、表示装置DとしてはLED、液晶表示装置、プラズマディスプレイなどを用いてあり、この表示装置Dでは、『現場を確認』、『火災でなければ』及び『処置が終われば』の文字表示と、『現場を確認』の文字表示の横に設けられた主音響停止スイッチSW_(1)の方向を示した三角表示とを表示できるようにしてある。なお、上記『現場を確認』、三角表示、『火災でなければ』及び『処置が終われば』の各表示は、以下の説明では表示d_(1)?d_(4)と呼ぶことにする。」 (なお、段落【0009】の「地区音響回線L_(12)?L_(2m)」は誤記であり、正しくは「地区音響回線L_(21)?L_(2m)」である。) ア-2 「【0020】ところで、上述の指示方法以外に図2に示す方法を採用してもよい。図2の表示装置Dでは、上記図1の表示d_(1)?d_(4)に加えて、『火災ならば』及び『初期消火・119への連絡・適切な非難誘導を行ってください』(以下、夫々の表示をd_(5),d_(6)と呼ぶ)を追加してある。まず、地区音響Bが鳴動可能な状態にある場合について説明する。この図2の場合には火災受信機Aで感知器Sからの感知信号が受信されると、まず表示d_(1)が点灯し、同時に表示d_(2)が点滅し、表示d_(5),d_(6)が点灯する。ここで、表示d_(1)を点灯させることで、火災発生場所の確認を促し、表示d_(2)を点滅させることで、主音響を停止するように主音響停止スイッチSW_(1)を押すことを促すことは上述の場合と同じである。そして、この対処指示方法では、表示d_(5),d_(6)の点灯させることで、初期消火・119への連絡・適切な非難誘導を行うことを促す。 【0021】そして、表示d_(2)の指示に従って主音響停止スイッチSW_(1)が押されると、表示d_(2)が消灯し、表示d_(4)が点滅する。ここで、表示d_(2)の消灯で、主音響停止スイッチSW_(1)が押されたことを示し、表示d_(4)の点滅で火災発生場所の火災の処置、あるいは非火災報の原因の処置が終われば、火災復旧スイッチSW_(3)を押して感知器Sを復旧させると共に、火災受信機Aの表示を復旧させることを促す。 【0022】ここで、火災発生場所の火災の処置、あるいは非火災報の原因の処置が終われば、表示d_(4)による指示に従って火災復旧スイッチSW_(3)が押され、表示d_(1),d_(4)?d_(6)を消灯し、感知器Sを復旧されると共に、火災受信機Aの表示を復旧されたことを示す。なお、主音響停止スイッチSW_(1)が押されると、表示d_(2)が消灯し、表示d_(4)が点滅している時点で、指示に従わずに地区音響停止スイッチSW_(2)を操作して、地区音響Bを停止する場合が考えられる。そこで、このような場合には、表示d_(3)を点滅させて、火災であるならば、再び地区音響停止スイッチSW_(2)を押して地区音響Bを鳴動させることを促す。」 (なお、段落【0020】の「非難誘導」は誤記であり、正しくは「避難誘導」であると認められる。) ア-3 【図2】を参照すると、表示装置Dには、左側に表示d_(5)(火災ならば)、中央に表示d_(6)(初期消火・119への連絡・適切な非難誘導を行ってください)、右側に表示d_(1)(現場を確認)、表示d_(1)の右側に表示d_(2)、表示d_(1)の下側にd_(3)(火災でなければ)、表示d_(3)の更に下側に表示d_(4)(処置が終われば)がそれぞれ配置され、 表示装置Dの右側に、上から順に主音響停止スイッチSW_(1)、地区音響停止スイッチSW_(2)及び復旧スイッチSW_(3)が、縦列に配置されており、 表示d_(5)及び表示d_(6)が配置されている部分と、表示d_(2)?d_(4)並びに主音響停止スイッチSW_(1)、地区音響停止スイッチSW_(2)及び復旧スイッチSW_(3)が配置されている部分とは、互いに区別できるようになっているものが看取される。 (なお、【図2】の表示d_(6)の「非難誘導」は誤記であり、正しくは「避難誘導」であると認められる。) 以上のことから、引用文献1には、補正発明の記載ぶりに則って整理すると、火災受信機の対処指示方法関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「感知器回線L_(11)?L_(1n)および地区音響回線L_(21)?L_(2m)と接続され、 左側に表示d_(5)(火災ならば)、中央に表示d_(6)(初期消火・119への連絡・適切な避難誘導を行ってください)、右側に表示d_(1)(現場を確認)、表示d_(1)の更に右側に表示d_(2)、表示d_(1)の下側にd_(3)(火災でなければ)、表示d_(3)の更に下側に表示d_(4)(処置が終われば)がそれぞれ配置された表示装置Dを備え、 表示d_(5)及び表示d_(6)が配置されている部分と、表示d_(2)?d_(4)並びに主音響停止スイッチSW_(1)、地区音響停止スイッチSW_(2)及び復旧スイッチSW_(3)が配置されている部分とは、互いに区別できるようになっている火災受信機Aにおいて、 表示装置Dの右側に、上から順に主音響停止スイッチSW_(1)、地区音響停止スイッチSW_(2)及び復旧スイッチSW_(3)が、縦列に配置されており、 感知器Sからの感知信号が受信されると、表示d_(1)が点灯し、同時に表示d_(2) が点滅し、表示d_(5)、d_(6)が点灯し、 主音響停止スイッチSW_(1)が押されると、表示d_(2)が消灯し、表示d_(4)が点滅し、 火災復旧スイッチSW_(3)が押されると、表示d_(1)、d_(4)?d_(6)を消灯し、感知器Sが復旧されると共に、火災受信機Aの表示を復旧させ、 表示d_(4)が点滅している時点で、地区音響停止スイッチSW_(2)を操作して、地区音響Bを停止すると、表示d_(3)を点滅させる、 火災受信機A。」 イ 対比 補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「感知器回線L_(11)?L_(1n)」は、補正発明の「感知器回線」に相当する。 以下同様に、「地区音響回線L_(21)?L_(2m)」は、「地区音響回線」に、 「火災受信機A」は、「火災受信機」に、 「主音響停止スイッチSW_(1)」は、「火災受信機の音響を停止する主音響停止釦」に、 「地区音響停止スイッチSW_(2)」は、「地区音響を停止する地区音響停止釦」に、 「復旧スイッチSW_(3)」は、「火災受信機を監視状態に復旧させる復旧釦」に、それぞれ相当する。 引用発明では、表示装置Dには「左側に表示d_(5)(火災ならば)、中央に表示d_(6)(初期消火・119への連絡・適切な避難誘導を行ってください)」が配置されており、これらが配置されている部分は、補正発明の「火災時用のガイドエリア」に相当する。 また、引用発明では、表示装置Dには「表示d_(1)の更に右側に表示d_(2)、表示d_(1)の下側にd_(3)(火災でなければ)、表示d_(3)の更に下側に表示d_(4)(処置が終われば)がそれぞれ配置」され、更に、「表示装置Dの右側に、上から順に主音響停止スイッチSW_(1)、地区音響停止スイッチSW_(2)及び復旧スイッチSW_(3)が、縦列に配置」されており、これらが配置されている部分は、補正発明の「非火災時用のガイドエリア」に相当する。 更に、引用発明では、「表示d_(5)及び表示d_(6)が配置されている部分と、表示d_(2)?d_(4)並びに主音響停止スイッチSW_(1)、地区音響停止スイッチSW_(2)及び復旧スイッチSW_(3)が配置されている部分とは、互いに区別できるようになっている」から、引用発明は「火災時用のガイドエリアと、非火災時用のガイドエリアとを分離して配置したガイド表示・操作部」を有しているといえる。 以上のことから、補正発明と引用発明とは次の点で一致する。 「感知器回線および地区音響回線と接続され、火災時用のガイドエリアと、非火災時用のガイドエリアとを分離して配置したガイド表示・操作部を有した火災受信機において、 前記ガイド表示・操作部の非火災時用のガイドエリア内には、上から順に、火災受信機の音響を停止する主音響停止釦、地区音響を停止する地区音響停止釦、火災受信機を監視状態に復旧させる復旧釦が、縦列に配置されている、 火災受信機。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点] 補正発明では、「火災発報時には、主音響としてブザーが間欠鳴動し、間欠部に非火災時の前記主音響停止釦の操作をガイドする音声メッセージを挿入出力し、前記主音響停止釦の操作がされた後に、前記ブザーの鳴動を停止して前記地区音響停止釦の操作をガイドする音声メッセージを出力し、前記地区音響停止ボタンの操作がされた後に、前記復旧釦の操作をガイドする音声メッセージを出力する」のに対して、 引用発明では、「感知器Sからの感知信号が受信されると、表示d_(1)が点灯し、同時に表示d_(2)が点滅し、表示d_(5)、d_(6) が点灯し、主音響停止スイッチSW_(1)が押されると、表示d_(2)が消灯し、表示d_(4)が点滅し、火災復旧スイッチSW_(3)が押されると、表示d_(1)、d_(4)?d_(6)を消灯し、感知器Sが復旧されると共に、火災受信機Aの表示を復旧させ、表示d_(4)が点滅している時点で、地区音響停止スイッチSW_(2)を操作して、地区音響Bを停止すると、表示d_(3)を点滅させる」点。 ウ 判断 上記相違点について検討する。 原査定の拒絶の理由に引用され、警報時の機器操作の各手順を音声にてガイダンスすることが周知技術(以下「周知技術1」という。)であることの証拠として挙げられた特開2009-87111号公報(以下「引用文献2」という。)には、検知器からの火災やガス漏れなどの異常検知信号を回線単位に受信して警報する受信機に関して、非常時にあっては、火災やガス漏れなどの異常検知信号を受信して主音響が鳴動したら、主音響停止スイッチを操作すると音声ガイダンス処理が起動し、音声案内スイッチを押すと、状況に合った適切な操作方法のガイダンス内容を音声によって知らせ、受信機の操作に不慣れな管理者であっても、音声ガイダンスに従いながら操作することで、非常時に適切な操作を行うこと、及び主音響として音声合成により異常の種類に応じた内容の擬似警報音と異常内容を示す警報メッセージの組合せとなる音声警報である、例えば「“第1擬似音”火事です。火事です。発生場所を確認してください」を出力することが記載されている(以下「引用文献2記載の事項」という。)(特に、段落【0001】、【0027】、【0065】?【0088】及び【図6】?【図8】を参照。)。 しかし、引用文献2記載の事項は、第1擬似音(補正発明の「主音響」に相当。)の間欠部に、火事であるとの音声メーセージ及び火事の発生場所を確認するようにとの音声メッセージを挿入出力しているにすぎず、主音響停止釦の操作をガイドする音声メッセージを挿入出力しているものではなく、また、操作方法のガイダンス内容を音声によって知らせるのは、主音響停止スイッチを操作した後、すなわち主音響の停止後であるから、「主音響としてブザーが間欠鳴動し、間欠部に非火災時の前記主音響停止釦の操作をガイドする音声メッセージを挿入出力」することを示唆するものではない。 また、引用文献2記載の事項は、「主音響停止釦の操作がされた後に、前記ブザーの鳴動を停止して前記地区音響停止釦の操作をガイドする音声メッセージを出力し、前記地区音響停止ボタンの操作がされた後に、前記復旧釦の操作をガイドする音声メッセージを出力する」ことを示唆するものでもない。 原査定の拒絶の理由に引用され、警報時、ブザー音とメッセージ音を交互に出力することが周知技術(以下「周知技術2」という。)であることの証拠として挙げられた特開昭63-200300号公報(以下「引用文献3」という。)には、音声警報システムの警報発声方法に関して、警報時に、ブザー音と音声警報メッセージとを交互に出力することが記載されている(以下「引用文献3記載の事項」という。)(特に、1ページ左下欄5行?20行、2ページ左下欄13行?18行及び第1図を参照。)。 しかし、引用文献3記載の事項は、ブザー音による警報の間欠部に、音声での警報を挿入出力しているにすぎず、「主音響としてブザーが間欠鳴動し、間欠部に非火災時の前記主音響停止釦の操作をガイドする音声メッセージを挿入出力」することを示唆するものではなく、また、「主音響停止釦の操作がされた後に、前記ブザーの鳴動を停止して前記地区音響停止釦の操作をガイドする音声メッセージを出力し、前記地区音響停止ボタンの操作がされた後に、前記復旧釦の操作をガイドする音声メッセージを出力する」ことを示唆するものでもない。 原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-180073号公報(以下「引用文献4」という。)には、火災受信機に関して、非火災時を確認したときには、主音響停止スイッチ5、地区音響停止スイッチ7を操作して、主音響6、地区音響Bを停止させた時点で、下矢印灯9が点灯あるいは点滅して、復旧スイッチ10の操作を指示することが記載されている(以下「引用文献4記載の事項」という。)(特に、段落【0029】?【0030】及び図5を参照。)。 しかし、引用文献4記載の事項は、主音響6及び地区音響Bの両者を停止させた時点で、下矢印灯9が点灯あるいは点滅して、復旧スイッチ10の操作を指示するにすぎず、「主音響停止釦の操作がされた後に、前記ブザーの鳴動を停止して前記地区音響停止釦の操作をガイドする音声メッセージを出力し、前記地区音響停止ボタンの操作がされた後に、前記復旧釦の操作をガイドする音声メッセージを出力する」ことを示唆するものではなく、また、「主音響としてブザーが間欠鳴動し、間欠部に非火災時の前記主音響停止釦の操作をガイドする音声メッセージを挿入出力」することを示唆するものでもない。 以上のように、周知技術1であるとする証拠である引用文献2記載の事項、周知技術2であるとする証拠である引用文献3記載の事項、及び引用文献4記載の事項は、「主音響としてブザーが間欠鳴動し、間欠部に非火災時の前記主音響停止釦の操作をガイドする音声メッセージを挿入出力」すること、及び「主音響停止釦の操作がされた後に、前記ブザーの鳴動を停止して前記地区音響停止釦の操作をガイドする音声メッセージを出力し、前記地区音響停止ボタンの操作がされた後に、前記復旧釦の操作をガイドする音声メッセージを出力する」こと、すなわち上記相違点に係る補正発明の構成を示唆するものではないから、たとえ引用発明に引用文献2?4記載の事項を適用したとしても、上記相違点に係る補正発明の構成に至るものではない。 一方、補正発明は、上記相違点に係る補正発明の構成を備えることにより、「音声メッセージをブザー鳴動の間欠部Vに挿入するようにすれば、非火災時の釦の誤操作をほぼ確実に防止することができる。」(本願明細書段落【0047】)との効果を奏するものである。 したがって、補正発明は、引用発明及び引用文献2?4記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 (2) 補正事項2について 本件補正の補正事項2は、補正前の明細書の段落【0008】に記載した「非火災時の操作」について、「非火災時の主音響停止釦の操作」と補正するものであって、請求項1の補正に伴って特許請求の範囲の記載との整合を図るため、明細書の段落【0008】を補正するものである。 したがって、補正事項2は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 3 むすび 本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1?4に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、補正発明は、上記「第2 2(1)」のとおり、当業者が引用発明及び引用文献2?4記載の事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。 また、補正発明を直接又は間接的に引用する本願の請求項2?4に係る発明は、補正発明をさらに限定した発明であるから、当業者が引用発明及び引用文献2?4記載の事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-11-21 |
出願番号 | 特願2012-103360(P2012-103360) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G08B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 圓道 浩史、安井 雅史 |
特許庁審判長 |
阿部 利英 |
特許庁審判官 |
内田 博之 小関 峰夫 |
発明の名称 | 火災受信機および防災システム |
代理人 | 中井 宏行 |
代理人 | 沖本 周子 |
代理人 | 奥村 公敏 |