• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1321770
審判番号 不服2015-16141  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-01 
確定日 2016-11-17 
事件の表示 特願2013- 99195「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月20日出願公開、特開2014-217602〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成25年5月9日の出願であって,平成27年5月28日付けで拒絶査定され,これに対し,同年9月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同日付けで手続補正がなされ,当審において,平成28年6月17日付けで拒絶理由が通知され,これに対し同年8月18日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
平成28年8月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
所定の判定条件の成立により遊技者に有利な特別遊技を行うか否かを判定する判定手段と,
前記判定手段による判定が行われると,所定時間だけ図柄を変動表示させた後に,当該判定手段による判定結果に対応付けられた図柄を停止表示させる図柄表示手段と,
遊技における演出用の発光部材を設けた演出部材と,
を備え,
前記演出部材に設けられた前記演出用の発光部材の少なくとも一部が,
前記図柄表示手段により図柄の前記変動表示が行われる際に,当該変動表示に対応して特定された第1の発光態様で発光し,
前記図柄表示手段により図柄の前記停止表示が行われる際に,当該停止表示に対応して特定されるとともに前記判定手段による判定結果に対応付けられず,前記第1の発光態様とは異なる第2の発光態様で発光し,
前記少なくとも一部の前記演出用の発光部材は,第1始動口への入賞にともなって前記第1の発光態様および前記第2の発光態様で発光する第1発光部材と,第2始動口への入賞にともなって当該第1の発光態様および当該第2の発光態様で発光する第2発光部材とを有することを特徴とする,遊技機。」

3.当審における拒絶理由
当審における平成28年6月17日付けの拒絶理由の概要は次のとおりである。

(1)本願の請求項1に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。

(2)本願の請求項1に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開2013-48764号公報

4.刊行物
当審における平成28年6月17日付けの拒絶理由において刊行物1として引用した特開2013-48764号公報(以下,「刊行物1」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【0009】
[第1の実施の形態]
以下,図面を用いて,本発明の第1の実施の形態による遊技台(例えば,パチンコ機等の弾球遊技機やスロットマシン等の回胴遊技機)について説明する。まず,図1および図2を用いて,本実施の形態によるパチンコ機100の全体構成について説明する。なお,図1はパチンコ機100を正面側(遊技者側)から見た外観斜視図である。図2はパチンコ機100の構成を示す分解斜視図である。パチンコ機100は,外部的構造として,外枠102と,本体104と,前面枠扉106と,球貯留皿付扉108と,発射装置110と,遊技盤200と,をその前面に備える。」

(イ)「【0034】
また演出装置206には,装飾図柄表示装置208の表示画面の右側に隣接して,補助表示部800が設けられている。補助表示部800は,装飾図柄等を含む所定の演出情報を表示するための表示装置であり,本例ではセグメント型のLED表示装置によって構成されている。補助表示部800としては,例えば,セグメント型に限らずドットマトリクス型の表示装置を用いることもできるし,LED表示装置に限らず液晶表示装置,有機EL表示装置,蛍光表示管,リール式表示装置,リーフ式表示装置,プラズマディスプレイ,プロジェクタを含む他の表示装置を用いることもできる。補助表示部800は,装飾図柄表示装置208の表示画面よりも小さい表示画面を有している。補助表示部800は,装飾図柄表示装置208に表示される演出情報の一部または全てを表示可能である。補助表示部800の構成や配置の詳細については後述する。」

(ウ)「【0052】
次に,図7(a)?(c)を用いて,パチンコ機100の特図1表示装置212,特図2表示装置214,装飾図柄表示装置208,普図表示装置210が停止表示する特図および普図の種類について説明する。図7(a)は特図の停止図柄態様の一例を示したものである。特図1始動口230に球が入球したことを第1始動口センサが検出したことを条件として特図1変動遊技が開始され,特図2始動口232に球が入球したことを第2始動口センサが検出したことを条件として特図2変動遊技が開始される。特図1変動遊技が開始されると,特図1表示装置212は,7個のセグメントの全点灯と,中央の1個のセグメントの点灯を繰り返す「特図1の変動表示」を行う。また,特図2変動遊技が開始されると,特図2表示装置214は,7個のセグメントの全点灯と,中央の1個のセグメントの点灯を繰り返す「特図2の変動表示」を行う。これらの「特図1の変動表示」および「特図2の変動表示」が本実施形態にいう図柄の変動表示の一例に相当する。
【0053】
そして,特図1の変動開始前に決定した変動時間が経過すると,特図1表示装置212は特図1の停止図柄態様を停止表示し,特図2の変動開始前に決定した変動時間が経過すると,特図2表示装置214は特図2の停止図柄態様を停止表示する。したがって,「特図1の変動表示」を開始してから特図1の停止図柄態様を停止表示するまで,あるいは「特図2の変動表示」を開始してから特図2の停止図柄態様を停止表示するまでが本実施形態にいう図柄変動停止表示の一例に相当し,以下,この「特図1または2の変動表示」を開始してから特図1または2の停止図柄態様を停止表示するまでの一連の表示を図柄変動停止表示と称する。図柄変動停止表示は複数回,連続して行われることがある。
【0054】
図7(a)には,図柄変動停止表示における停止図柄態様として「特図A」?「特図J」の10種類の特図が示されている。図7(a)においては,図中の白抜きの部分が消灯するセグメントの場所を示し,黒塗りの部分が点灯するセグメントの場所を示している。「特図A」は15ラウンド(15R)特別大当り図柄であり,「特図B」は15R大当り図柄である。本実施形態のパチンコ機100では,特図変動遊技における大当りか否かの決定はハードウェア乱数の抽選によって行い,特別大当りか否かの決定はソフトウェア乱数の抽選によって行う。大当りと特別大当りの違いは,次回の特図変動遊技で,大当りに当選する確率が高い(特別大当り)か低い(大当り)かの違いである。以下,この大当りに当選する確率が高い状態のことを特図高確率状態(以下,「特図確変」または単に「確変」という場合がある)と称し,その確率が低い状態のことを特図低確率状態と称する。」

(エ)「【0062】
図7(b)は装飾図柄の一例を示したものである。本実施形態の装飾図柄には,「装飾1」?「装飾10」の10種類がある。本実施形態では,「装飾1」,「装飾2」,「装飾4」?「装飾6」および「装飾8」?「装飾10」の各装飾図柄の表示色は所定の色(図中,白色)であり,「装飾3」および「装飾7」の各装飾図柄の表示色は当該所定の色とは異なる特定色(図中,グレー)である。以下,特定色の2種類の装飾図柄「装飾3」および「装飾7」のことを「特定装飾図柄」という場合がある。特図1始動口230または特図2始動口232に球が入賞したこと,すなわち,特図1始動口230に球が入球したことを第1始動口センサが検出したこと,あるいは特図2始動口232に球が入球したことを第2始動口センサが検出したことを条件にして,装飾図柄表示装置208の左図柄表示領域208a,中図柄表示領域208b,右図柄表示領域208cの各図柄表示領域に,「装飾1」→「装飾2」→「装飾3」→・・・→「装飾9」→「装飾10」→「装飾1」→・・・の順番で表示を切り替える「装飾図柄の変動表示」を行う。
【0063】
そして,「特図A」の15R特別大当りまたは「特図B」の15R大当りを報知する場合には,図柄表示領域208a?208cに同じ装飾図柄が3つ並んだ図柄組合せ(例えば「装飾1-装飾1-装飾1」や「装飾2-装飾2-装飾2」等)を停止表示する。「特図A」の15R特別大当りを明示的に報知する場合には,同じ特定装飾図柄が3つ並んだ図柄組合せ(例えば「装飾3-装飾3-装飾3」や「装飾7-装飾7-装飾7」等)を停止表示する。
・・・
【0065】
図示していないが,本実施形態の第四図柄の表示態様には,黒色円形状の黒丸図柄と,白色円形状の白丸図柄との2種類がある。黒丸図柄は装飾図柄の停止表示中に表示され,白丸図柄は装飾図柄の変動表示中に表示される。」

(オ)「【0089】
特図1始動口230へ入賞があった場合かつRAM308に設けた対応する特図1保留数記憶領域が満タンでない場合,乱数値生成回路(ハード乱数回路)318の特図1始動口230に対応する内蔵のカウンタ値記憶用レジスタに記憶された値に所定の加工を施して生成した特図1当選乱数値を取得するとともに,RAM308に設けた特図1乱数値生成用乱数カウンタから特図1乱数値を取得して特図1乱数値記憶領域に取得順に格納する。特図1乱数値記憶領域内の特図1当選乱数値および特図1乱数値の組は,特図1保留数記憶領域に記憶された特図1保留数と同数分だけ格納される。特図1乱数値記憶領域内では,特図1保留数が1つ減るごとに保留順位が最上位(最先)の特図1当選乱数値および特図1乱数値の組のデータが消去されるとともに,残余の特図1当選乱数値および特図1乱数値の組のデータの保留順位が1ずつ繰り上がるように処理される。また,特図1保留数が1つ増えるごとに,保留順位が最下位(最後)の特図1当選乱数値および特図1乱数値の組のデータの次の保留順位に新たな特図1当選乱数値および特図1乱数値の組のデータが書き込まれる。
【0090】
特図2始動口232へ入賞があった場合かつRAM308に設けた対応する特図2保留数記憶領域が満タンでない場合,乱数値生成回路318の特図2始動口232に対応する内蔵のカウンタ値記憶用レジスタに記憶された値に所定の加工を施して生成した特図2当選乱数値を取得するとともに,RAM308に設けた特図2乱数値生成用乱数カウンタから特図2乱数値を取得して特図2乱数値記憶領域に取得順に格納する。特図2乱数値記憶領域内の特図2当選乱数値および特図2乱数値の組は,特図2保留数記憶領域に記憶された特図2保留数と同数分だけ格納される。特図2乱数値記憶領域内では,特図2保留数が1つ減るごとに保留順位が最上位の特図2当選乱数値および特図2乱数値の組のデータが消去されるとともに,残余の特図2当選乱数値および特図2乱数値の組のデータの保留順位が1ずつ繰り上がるように処理される。また,特図2保留数が1つ増えるごとに,保留順位が最下位の特図2当選乱数値および特図2乱数値の組のデータの次の保留順位に新たな特図2当選乱数値および特図2乱数値の組のデータが書き込まれる。」

(カ)「【0118】
特図2関連抽選処理(ステップS229)の場合には,主制御部300は,特図2乱数値記憶領域内の最先の(最も過去に記憶された)保留位置から特図2始動情報(特図2当選乱数値および特図2乱数値の組)を取得し,取得した特図2始動情報内の特図2当選乱数値に基づいて,ROM306に記憶された不図示の当否判定用テーブルを用いて大当りとするか,小当りとするか,あるいははずれとするかの決定を行う。次いで,主制御部300は,取得した特図2始動情報内の特図2乱数値に基づいて,ROM306に記憶された不図示の特図決定用テーブルを用いて特図2の変動表示後に停止表示する図柄(停止図柄)の決定を行う。次いで,主制御部300は,例えば,決定した当否判定結果,停止図柄,当該当否判定時の特図2保留数,取得した特図変動時間決定用乱数値等に基づいて,ROM306に記憶された各種テーブルを用いて特図2の図柄変動表示時間(タイマ番号)の決定を行う。
・・・
【0120】
以上のような特図2関連抽選処理(ステップS229)の後に,特図1関連抽選処理(ステップS231)が同様にして行われる。」

(キ)「【0158】
次に,本実施の形態のパチンコ機100が備える補助表示部800の構成について説明する。図12は,補助表示部800の表示領域の例を示している。図12に示すように,補助表示部800の表示領域には,個別に点消灯可能な複数のセグメントLEDが配置されている。なお,後述するように一部のセグメントには2色のLEDが備えられており,当該セグメントは少なくとも2色で点灯可能になっている。図12では,全てのセグメントを黒塗りで表している。
【0159】
補助表示部800の表示領域の上部には,それぞれ「0」?「9」の任意の数字を表示可能な3つの7セグメント部802a,802b,802cが左右方向に配列して設けられている。7セグメント部802a,802b,802cには,装飾図柄表示装置208の各図柄表示領域208a,208b,208cに表示される装飾図柄に対応する数字が表示されるようになっている。例えば,7セグメント部802aと図柄表示領域208aとの関係を例に挙げると,図柄表示領域208aに装飾図柄が停止表示されているときには,7セグメント部802aには当該装飾図柄に対応する数字が表示される。また,図柄表示領域208aで装飾図柄の変動表示が行われているときには,7セグメント部802aにおいても装飾図柄と同期して「1」,「2」,・・・,「9」,「0」,「1」,・・・の順に表示を切り替える変動表示が行われる。7セグメント部802b,802cと図柄表示領域208b,208cとの関係についても同様である。
・・・
【0161】
7セグメント部802cの右下方には,円形状の1つのドットセグメント802eが設けられている。ドットセグメント802eは,後述する装飾図柄表示装置208の第四図柄表示領域208eでの表示に対応して点消灯する。本例のドットセグメント802eは,例えば,第四図柄表示領域208eに黒丸図柄が表示されるとき(装飾図柄の停止表示中)に点灯し,第四図柄表示領域208eに白丸図柄が表示されるとき(装飾図柄の変動表示中)に消灯または点滅する。」

(ク)上記(オ)の段落【0089】には,特図1始動口230へ入賞があった場合,特図1当選乱数値を取得し,特図1乱数値を取得すること,段落【0090】には,特図2始動口232へ入賞があった場合,特図2当選乱数値を取得し,特図2乱数値を取得すること,上記(カ)の段落【0118】には,主制御部300は,特図2当選乱数値および特図2乱数値の組を取得し,特図2当選乱数値に基づいて大当りとするかの決定を行い,次いで,特図2乱数値に基づいて特図2の変動表示後に停止表示する停止図柄の決定を行い,次いで,決定した当否判定結果,停止図柄に基づいて,特図2の図柄変動表示時間の決定を行うこと,段落【0120】には,特図2関連抽選処理の後に,特図1関連抽選処理が同様にして行われること,が記載されていることから,特図1始動口230または特図2始動口232へ入賞があった場合,特図1当選乱数値および特図1乱数値の組または特図2当選乱数値および特図2乱数値の組を取得し,特図1当選乱数値または特図2当選乱数値に基づいて大当りとするかの当否判定結果の決定を行い,次いで,特図1乱数値または特図2乱数値に基づいて特図1または特図2の変動表示後に停止表示する停止図柄の決定を行い,次いで,決定した当否判定結果,停止図柄に基づいて,特図1または特図2の変動時間の決定を行う主制御部300を有することは,明らかである。

(ケ)上記(ウ)の段落【0052】には,特図1表示装置212は,特図1の変動表示を行うこと,特図2表示装置212は,特図2の変動表示を行うこと,段落【0053】には,特図1の変動開始前に決定した変動時間が経過すると,特図1表示装置212は特図1の停止図柄態様を停止表示し,特図2の変動開始前に決定した変動時間が経過すると,特図2表示装置214は特図2の停止図柄態様を停止表示すること,との記載から,変動時間の決定後に,特図1または特図2の変動表示を行い,変動時間が経過すると特図1または特図2の停止図柄を停止表示する特図1表示装置212または特図2表示装置214を有することは,明らかである。

(コ)上記(ウ)の段落【0052】には,特図1始動口230に球が入球したことを第1始動口センサが検出したことを条件として特図1変動遊技が開始され,特図2始動口232に球が入球したことを第2始動口センサが検出したことを条件として特図2変動遊技が開始され,特図1変動遊技が開始されると,特図1表示装置212は特図1の変動表示を行い,特図2変動遊技が開始されると,特図2表示装置214は特図2の変動表示を行うこと,上記(エ)の段落【0062】には,特図1始動口230に球が入球したことを第1始動口センサが検出したこと,あるいは特図2始動口232に球が入球したことを第2始動口センサが検出したことを条件にして,装飾図柄表示装置208は装飾図柄の変動表示を行うこと,との記載から,特図1表示装置212または特図2表示装置214での特図1または特図2の変動表示が行われる際に,装飾図柄表示装置208での装飾図柄の変動表示が行われることは,明らかである。
そして,上記(エ)の段落【0065】には,第四図柄の表示態様には,黒色円形状の黒丸図柄と,白色円形状の白丸図柄との2種類があり,黒丸図柄は装飾図柄の停止表示中に表示され,白丸図柄は装飾図柄の変動表示中に表示されること,上記(キ)の段落【0161】には,ドットセグメント802eは,装飾図柄の変動表示中に第第四図柄表示領域208eに白丸図柄が表示されることに対応して,点滅すること,が記載されている。
これらの記載から,ドットセグメント802eは,特図1または特図2の変動表示中に第四図柄表示領域208eに白丸図柄が表示されることに対応して,点滅することは,明らかである。

(サ)上記(ウ)の段落【0053】には,変動時間が経過すると,特図1表示装置212は特図1の停止図柄態様を停止表示し,変動時間が経過すると,特図2表示装置214は特図2の停止図柄態様を停止表示すること,段落【0054】には,停止図柄態様として「特図A」の特図があること,上記(エ)の段落【0063】には,「特図A」を報知する場合には,装飾図柄表示装置208は同じ装飾図柄が3つ並んだ図柄組合せを停止表示すること,との記載から,特図1表示装置212または特図2表示装置214で特図1または特図2の停止表示が行われる際に,装飾図柄表示装置208での装飾図柄の停止表示が行われることが,記載されているといえる。
そして,上記(エ)の段落【0065】には,第四図柄の表示態様には,黒色円形状の黒丸図柄と,白色円形状の白丸図柄との2種類があり,黒丸図柄は装飾図柄の停止表示中に表示され,白丸図柄は装飾図柄の変動表示中に表示されることが記載されていることから,第四図柄の黒丸図柄は決定した当否判定結果に対応しないことは,明らかである。
上記(キ)の段落【0161】には,ドットセグメント802eは,装飾図柄の停止表示中に第四図柄表示領域208eに黒丸図柄が表示されることに対応して,点灯すること,が記載されている。
これらの記載から,ドットセグメント802eは,特図1または特図2の停止表示中に第四図柄表示領域208eに決定した当否判定結果に対応しない黒丸図柄が表示されることに対応して,点灯することは,明らかである。

(シ)上記(ク)の認定事項の特図1始動口230または特図2始動口232へ入賞があった場合,特図1当選乱数値および特図1乱数値の組または特図2当選乱数値および特図2乱数値の組を取得して特図1乱数値または特図2乱数値に基づいて特図1または特図2の変動表示を行うこと,上記(コ)の認定事項のドットセグメント802eは,特図1または特図2の変動表示中に第四図柄表示領域208eに白丸図柄が表示されることに対応して,点滅すること,上記(サ)の認定事項のドットセグメント802eは,特図1または特図2の停止表示中に第四図柄表示領域208eに決定した当否判定結果に対応しない黒丸図柄が表示されることに対応して,点灯することとから,ドットセグメント802eは,特図1始動口230または特図2始動口232へ入賞があった場合,点滅および点灯することは,明らかである。

したがって,上記(ア)?(キ)の記載事項及び上記(ク)?(シ)の認定事項を総合すると,刊行物1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

「特図1始動口230または特図2始動口232へ入賞があった場合,特図1当選乱数値および特図1乱数値の組または特図2当選乱数値および特図2乱数値の組を取得し,特図1当選乱数値または特図2当選乱数値に基づいて大当りとするかの当否判定結果の決定を行い,次いで,特図1乱数値または特図2乱数値に基づいて特図1または特図2の変動表示後に停止表示する停止図柄の決定を行い,次いで,決定した当否判定結果,停止図柄に基づいて,特図1または特図2の変動時間の決定を行う主制御部300と,
変動時間の決定後に,特図1または特図2の変動表示を行い,変動時間が経過すると特図1または特図2の停止図柄を停止表示する特図1表示装置212または特図2表示装置214と,
所定の演出情報を表示するためLED表示装置によって構成されている補助表示部800と,
を有し,
補助表示部800の表示領域に設けられたドットセグメント802eが,
特図1または特図2の変動表示中に第四図柄表示領域208eに白丸図柄が表示されることに対応して,点滅し,
特図1または特図2の停止表示中に第四図柄表示領域208eに決定した当否判定結果に対応しない黒丸図柄が表示されることに対応して,点灯し,
ドットセグメント802eは,特図1始動口230または特図2始動口232へ入賞があった場合,点滅および点灯する,
パチンコ機100。」

5.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(a)引用発明の「特図1当選乱数値または特図2当選乱数値に基づいて大当りとするかの当否判定結果の決定を行」うことは,本願発明の「所定の判定条件の成立により遊技者に有利な特別遊技を行うか否かを判定する」ことに相当する。
このことから,引用発明の「特図1始動口230または特図2始動口232へ入賞があった場合,特図1当選乱数値および特図1乱数値の組または特図2当選乱数値および特図2乱数値の組を取得し,特図1当選乱数値または特図2当選乱数値に基づいて大当りとするかの当否判定結果の決定を行い,次いで,特図1乱数値または特図2乱数値に基づいて特図1または特図2の変動表示後に停止表示する停止図柄の決定を行い,次いで,決定した当否判定結果,停止図柄に基づいて,特図1または特図2の変動時間の決定を行う主制御部300」は,本願発明の「所定の判定条件の成立により遊技者に有利な特別遊技を行うか否かを判定する判定手段」の機能を備えている。

(b)引用発明の「変動時間の決定後」は,大当たりとするか(当否判定結果)の決定の後であるから,本願発明の「前記判定手段による判定が行われ」た後に相当するものである。
また,引用発明の「停止図柄」は,本願発明の「当該判定手段による判定結果に対応付けられた図柄」に相当する。
そうすると,引用発明の「変動時間の決定後に,特図1または特図2の変動表示を行い,変動時間が経過すると特図1または特図2の停止図柄を停止表示する特図1表示装置212または特図2表示装置214」は,本願発明の「前記判定手段による判定が行われると,所定時間だけ図柄を変動表示させた後に,当該判定手段による判定結果に対応付けられた図柄を停止表示させる図柄表示手段」に相当する。

(c)引用発明の「LED表示装置」は,本願発明の「発光部材」に相当する。
また,引用発明の「補助表示部800」は,「演出部材」に相当する。
したがって,引用発明の「所定の演出情報を表示するためLED表示装置によって構成されている補助表示部800」は,本願発明の「遊技における演出用の発光部材を設けた演出部材」に相当する。

(d)引用発明の「補助表示部800の表示領域に設けられたドットセグメント802e」は,補助表示部800に配置された個別に点消灯可能なセグメントLEDであるから,本願発明の「前記演出部材に設けられた前記演出用の発光部材の少なくとも一部」に相当する。

(e)引用発明の「特図1または特図2の変動表示中」は,本願発明の「前記図柄表示手段により図柄の前記変動表示が行われる際」に相当し,引用発明の「点滅」は,本願発明の「第1の発光態様で発光」に相当する。
よって,引用発明の「特図1または特図2の変動表示中に第四図柄表示領域208eに白丸図柄が表示されることに対応して,点滅」する構成は,本願発明の「前記図柄表示手段により図柄の前記変動表示が行われる際に,当該変動表示に対応して特定された第1の発光態様で発光」する構成に相当する。

(f)引用発明の「特図1または特図2の停止表示中」は,本願発明の「前記図柄表示手段により図柄の前記停止表示が行われる際」に相当し,引用発明の「点灯」は,本願発明の「前記第1の発光態様とは異なる第2の発光態様で発光」に相当する。
また,引用発明のドットセグメント802eは「第四図柄表示領域208eに決定した当否判定結果に対応しない黒丸図柄が表示されることに対応して,点灯する」ことから,ドットセグメント802eの「点灯」は決定した当否判定結果に対応しないものといえる。
以上より,引用発明「特図1または特図2の停止表示中に第四図柄表示領域208eに決定した当否判定結果に対応しない黒丸図柄が表示されることに対応して,点灯する」構成は,本願発明の「前記図柄表示手段により図柄の前記停止表示が行われる際に,当該停止表示に対応して特定されるとともに前記判定手段による判定結果に対応付けられず,前記第1の発光態様とは異なる第2の発光態様で発光」する構成に相当する。

(g)引用発明の「ドットセグメント802e」,「特図1始動口230」及び「特図2始動口232」は,それぞれ本願発明の「前記少なくとも一部の前記演出用の発光部材」,「第1始動口」及び「第2始動口」に相当する。
また,上記(e),(f)で検討したとおり,引用発明の「点滅」及び「点灯」は,それぞれ本願発明の「第1の発光態様で発光」及び「前記第1の発光態様とは異なる第2の発光態様で発光」に相当する。
以上より,引用発明の「ドットセグメント802e」は,本願発明と「前記少なくとも一部の前記演出用の発光部材」は「第1始動口」及び「第2始動口の入賞にともなって前記第1の発光態様および前記第2の発光態様で発光する」「発光部材を有する」点で共通している。

(h)引用発明の「パチンコ機100」は,本願発明の「遊技機」に相当する。

上記(a)?(h)により,本願発明と引用発明とは,
[一致点]
「所定の判定条件の成立により遊技者に有利な特別遊技を行うか否かを判定する判定手段と,
前記判定手段による判定が行われると,所定時間だけ図柄を変動表示させた後に,当該判定手段による判定結果に対応付けられた図柄を停止表示させる図柄表示手段と,
遊技における演出用の発光部材を設けた演出部材と,
を備え,
前記演出部材に設けられた前記演出用の発光部材の少なくとも一部が,
前記図柄表示手段により図柄の前記変動表示が行われる際に,当該変動表示に対応して特定された第1の発光態様で発光し,
前記図柄表示手段により図柄の前記停止表示が行われる際に,当該停止表示に対応して特定されるとともに前記判定手段による判定結果に対応付けられず,前記第1の発光態様とは異なる第2の発光態様で発光し,
前記少なくとも一部の前記演出用の発光部材は,第1始動口及び第2始動口の入賞にともなって前記第1の発光態様および前記第2の発光態様で発光する発光部材を有する,
遊技機。」
である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点]
「第1始動口」と「第2始動口」への入賞にともなって発光させる「前記少なくとも一部の前記演出用の発光部材」について,本願発明は,2つの始動口のそれぞれに対応して2つの発光部材を有するのに対し,引用発明では,両方の始動口に対応して1つの発光部材を有する点。

6.判断
上記相違点について検討する。

本願出願前の遊技機の分野において,特図の変動表示中の状態と停止表示中の状態とを識別可能にする表示部を設ける際に,2つの始動口にそれぞれ対応した2つの表示部を設けることは周知技術(例えば,特開2010-264026号公報の段落【0027】?【0031】,【0055】?【0056】,【0610】?【0613】(図85?86)には,遊技球が第1始動入賞口13に入り第1始動口スイッチ13aで検出されると,第1特別図柄の変動表示を開始し,変動表示に同期して,第1特別図柄用の第4図柄表示領域9cにおいて点滅表示し,第1特別図柄の変動表示が停止すると点灯表示になり,遊技球が第2始動入賞口14に入り第2始動口スイッチ14aで検出されると,第2特別図柄の変動表示を開始し,変動表示に同期して,第2特別図柄用の第4図柄表示領域dにおいて点滅表示し,変動表示が停止すると点灯表示になることが記載されている。特開2012-152523号公報の段落【0140】?【0141】,【0365】?【0374】(図30?32)には,右始動入賞口スイッチ80又は左始動入賞口スイッチ82から入賞検出信号(ON)が入力されると,それぞれ第1特別図柄又は第2特別図柄の変動表示を行い,第1特別図柄の変動表示に同期して,第4図柄Z1が表示色を変化させることで変動表示し,停止表示に同期して停止表示され,同様に第2特別図柄に同期して,第4図柄Z2が変動表示または停止表示することが記載されている。以下,「周知技術」という。)である。
そして,引用発明の少なくとも一部の前記演出用の発光部材と上記周知技術の表示部とは,特図の変動表示中の状態と停止表示中の状態とを識別可能に表示する点で共通するから,引用発明の少なくとも一部の前記演出用の発光部材に,上記周知技術を適用して,第1始動口に対応した発光部材(特図1用の第四図柄表示領域eに対応したドットセグメント802e)と第2始動口に対応した発光部材(特図2用の第四図柄表示領域eに対応したドットセグメント802e)を有する構成とすることは,当業者が適宜行えることであり,上記相違点に係る本願発明の構成にすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本願発明の作用効果は,引用発明及び周知技術からみて格別なものではない。
よって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7.むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができないものである。
したがって,本願は拒絶すべきである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-15 
結審通知日 2016-09-20 
審決日 2016-10-03 
出願番号 特願2013-99195(P2013-99195)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤脇 沙絵武田 知晋  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 瀬津 太朗
加舎 理紅子
発明の名称 遊技機  
代理人 古部 次郎  
代理人 伊與田 幸穂  
代理人 尾形 文雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ