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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1321774
審判番号 不服2015-20875  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-24 
確定日 2016-11-17 
事件の表示 特願2014- 60990号「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月22日出願公開、特開2015-181730号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年3月24日の出願であって、平成27年5月25日付け拒絶理由通知に対して、同年7月27日付けで手続補正がされたところ、同年8月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月24日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、その請求項1について補正前に

(平成27年7月27日付け手続補正)
「【請求項1】
遊技図柄の変動表示動作を表示可能な表示手段と、
所定の開始条件に基づいて前記表示手段における遊技図柄の変動表示動作に関する動作制御を含む遊技動作を統括的に制御する主制御手段と、
前記主制御手段から送信される制御コマンドに基づき、演出手段の演出制御を司る演出制御手段と、を有し、
前記主制御手段は、
始動手段が遊技球を検出したことを契機に、所定の遊技情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記遊技情報に基づき、当り遊技を発生させるか否かに関する抽選を行う抽選手段と、
前記取得手段により取得された前記遊技情報を保留データとして、前記図柄表示手段における前記遊技図柄の変動表示動作に供されるまで、あらかじめ定めた最大保留記憶個数を上限として保留記憶する保留記憶手段と、
今回前記始動手段が遊技球を検出したことに起因して、前記保留記憶手段に保留記憶された最新の前記保留データについて、前記遊技情報に基づき、少なくとも前記抽選手段による抽選結果を当該保留記憶が前記図柄の変動表示動作に供される前に先読み判定する先読み判定手段と、
前記先読み判定手段による先読み判定結果に関する情報および前記保留記憶手段に保留記憶された保留球数に関する情報を含む制御コマンドを作成する制御コマンド作成手段と、
前記制御コマンドを前記演出制御手段に送信するコマンド送信手段と、を備え、
前記図柄表示手段に前記遊技図柄が特定の表示態様で停止表示された後、前記当り遊技を実行可能に構成された遊技機において、

前記演出制御手段は、
前記制御コマンドを受信可能なコマンド受信手段と、
前記コマンド受信手段で前記制御コマンドを受信した場合、当該制御コマンドに含まれる保留球数情報が演出制御手段側において既知である保留球数情報と整合するかどうかを判定する整合性判定手段と、
前記制御コマンドに含まれる前記先読み判定結果の情報に基づき、当該先読み判定結果に関連する情報を報知する予告演出を現出制御する予告演出制御手段と、を有し、
前記予告演出制御手段は、
前記整合性判定手段で保留球数情報の整合性が確認された場合、前記先読み判定手段により前記最新の前記保留データに係る前記先読み判定の結果が得られたことを演出開始条件に、前記予告演出の実行可否を抽選により判定する予告実行判定手段と、
前記予告実行判定手段により前記予告演出を実行可と判定された場合には所定の演出手段に対して前記予告演出を発生させる一方、前記予告実行判定手段により前記予告演出を実行不可と判定された場合には当該所定の演出手段に対して前記予告演出を発生させないように制御する予告実行制御手段と、
前記予告実行制御手段が前記最新の前記保留データに係る保留記憶について前記予告演出を発生させることとした場合、当該最新の保留データよりも後に生起する所定回数分の保留データに関して前記予告演出が実行されることをあらかじめ禁止する第1の予告演出実行禁止手段と、
前記最新の保留データについて前記整合性判定手段で保留球数情報の整合性が確認されなかった場合、当該最新の保留データよりも後に生起する所定回数分の保留データに関して前記予告演出が実行されることをあらかじめ禁止する第2の予告演出実行禁止手段と、を有する、
ことを特徴とする弾球遊技機。」

とあったものを、

(本件補正である平成27年11月24日付け手続補正)
「【請求項1】
遊技図柄の変動表示動作を表示可能な表示手段と、
所定の開始条件に基づいて前記表示手段における遊技図柄の変動表示動作に関する動作制御を含む遊技動作を統括的に制御する主制御手段と、
前記主制御手段から送信される制御コマンドに基づき、演出手段の演出制御を司る演出制御手段と、を有し、
前記主制御手段は、
始動手段が遊技球を検出したことを契機に、所定の遊技情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記遊技情報に基づき、当り遊技を発生させるか否かに関する抽選を行う抽選手段と、
前記取得手段により取得された前記遊技情報を保留データとして、前記図柄表示手段における前記遊技図柄の変動表示動作に供されるまで、あらかじめ定めた最大保留記憶個数を上限として保留記憶する保留記憶手段と、
今回前記始動手段が遊技球を検出したことに起因して、前記保留記憶手段に保留記憶された最新の前記保留データについて、前記遊技情報に基づき、少なくとも前記抽選手段による抽選結果を当該保留記憶が前記図柄の変動表示動作に供される前に先読み判定する先読み判定手段と、
前記先読み判定手段による先読み判定結果に関する情報および前記保留記憶手段に保留記憶された保留球数に関する情報を含む制御コマンドを作成する制御コマンド作成手段と、
前記制御コマンドを前記演出制御手段に送信するコマンド送信手段と、を備え、
前記図柄表示手段に前記遊技図柄が特定の表示態様で停止表示された後、前記当り遊技を実行可能に構成された遊技機において、
前記演出制御手段は、
前記制御コマンドを受信可能なコマンド受信手段と、
前記コマンド受信手段で前記制御コマンドを受信した場合、当該制御コマンドに含まれる保留球数情報が演出制御手段側において既知である保留球数情報と整合するかどうかを判定する整合性判定手段と、
前記制御コマンドに含まれる前記先読み判定結果の情報に基づき、当該先読み判定結果に関連する情報を報知する予告演出を現出制御する予告演出制御手段と、を有し、
前記予告演出制御手段は、
前記整合性判定手段で保留球数情報の整合性が確認された場合、前記先読み判定手段により前記最新の前記保留データに係る前記先読み判定の結果が得られたことを演出開始条件に、前記予告演出の実行可否を抽選により判定する予告実行判定手段と、
前記予告実行判定手段により前記予告演出を実行可と判定された場合には所定の演出手段に対して前記予告演出を発生させる一方、前記予告実行判定手段により前記予告演出を実行不可と判定された場合には当該所定の演出手段に対して前記予告演出を発生させないように制御する予告実行制御手段と、
前記予告実行制御手段が前記最新の前記保留データに係る保留記憶について前記予告演出を発生させることとした場合、当該最新の保留データよりも後に生起する所定回数分の保留データに関して、前記予告演出が実行されることをあらかじめ禁止する第1の予告演出実行禁止手段と、
前記最新の保留データについて前記整合性判定手段で保留球数情報の整合性が確認されなかった場合、当該最新の保留データよりも後に生起する所定回数分の保留データに関して前記予告演出が実行されることをあらかじめ禁止する第2の予告演出実行禁止手段と、を有し、
前記第2の予告演出実行禁止手段は、電源復帰後、その後に生起する最大保留記憶個数と同数またはそれを超える所定回数分の保留データに関して、前記予告演出が実行されることをあらかじめ禁止する、
ことを特徴とする弾球遊技機。」

と補正することを含むものである(下線部は補正箇所を示す。)。

2 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「第2の予告演出実行禁止手段」に関して、「前記第2の予告演出実行禁止手段は、電源復帰後、その後に生起する最大保留記憶個数と同数またはそれを超える所定回数分の保留データに関して、前記予告演出が実行されることをあらかじめ禁止する」との限定を付加するものでる。
したがって、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求に範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下に検討する。

(1)引用文献及びその記載事項
(1-1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-273890号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(1-ア)
「【0001】
本発明は、遊技盤面に向けて遊技球を発射することによって遊技を行うアレンジボール機やパチンコ機等の弾球遊技機に関する。」

(1-イ)
「【0041】
図示されているように主制御基板200(CPU201)は、第1始動口スイッチ17sや、第2始動口スイッチ17t、大入賞口スイッチ31s、ゲートスイッチ36sなどから遊技球の検出信号を受け取って、遊技の基本的な進行や賞球に関わる当否を決定した後、サブ制御基板220や、払出制御基板240、発射制御基板260などに向かって、各種の動作を指令するコマンドを送信する。・・・尚、主制御基板200のCPU201は、第1図柄表示装置28および第2図柄表示装置32での図柄の変動や、大入賞口31dの開閉による当り遊技の進行制御を司ることから、本実施例の主制御基板200のCPU201は、本発明の「遊技制御手段」の一態様を構成している。
【0042】
サブ制御基板220(CPU221)は、主制御基板200からの各種コマンドを受け取ると、コマンドの内容を解析して、その結果に応じた遊技の演出を実行するための制御を行う。・・・尚、サブ制御基板220のCPU221は、各種演出の制御を司ることから、本実施例のサブ制御基板220のCPU221は、本発明の「演出制御手段」の一態様を構成している。」

(1-ウ)
「【0052】
また、図3(a)を用いて前述したように、第1図柄表示装置28には、特図1表示部30が設けられており、特図1を変動表示可能となっている。さらに、図3(b)に示したように、第2図柄表示装置32に設けられた特図2表示部33では、特図2を変動表示可能となっている。・・・
・・・・・
【0054】
特図1表示部30および特図2表示部33では、それぞれ7個のLED(特図1LED30a、特図2LED33a)を所定時間にわたって点滅させることによって特別図柄の変動表示を行い、所定時間が経過すると、いずれかの停止表示態様に従って停止表示される。そして、「通常大当り図柄」、「確変大当り図柄」の何れかの図柄(いわゆる大当り図柄)が停止表示されると、通常時は閉鎖状態となっている大入賞口31dが開放状態となって大当り遊技が開始される。大入賞口31dが開放状態になると遊技球が入球し易くなるので、大当り遊技は遊技者にとって大変に有利な遊技状態と言うことができる。」

(1-エ)
「【0063】
C-1.遊技制御処理 :
図10は、主制御基板200に搭載されたCPU201が、遊技の進行を制御するために行う遊技制御処理の大まかな流れを示したフローチャートである。図示されているように、遊技制御処理では、賞球関連処理、普通図柄遊技処理、始動口復帰処理、特別図柄遊技処理、特別電動役物遊技処理などの各処理が繰り返し実行されている。・・・こうすることにより、パチンコ機1全体の遊技が進行するとともに、サブ制御基板220では、遊技の進行に合わせた演出の制御が行われることになる。以下、フローチャートに従って、主制御基板200に搭載されたCPU201が行う遊技制御処理について説明する。
・・・・・
【0069】
C-2.特別図柄遊技処理 :
図11、図12および図13は、特別図柄遊技処理の流れを示したフローチャートである。特別図柄遊技処理を開始すると、先ず初めに、始動口ユニット17の第1始動口17aに遊技球が入球したか否かを判断する(S200)。前述したように、第1始動口17aの内部には、遊技球の入球を検出する第1始動口スイッチ17sが設けられており、これにより、第1始動口17aに遊技球が入球したこと(始動入賞)を検出することができる。
【0070】
遊技球の入球が第1始動口スイッチ17sによって検出され、第1始動口17aに遊技球が入球した(始動入賞が発生した)と判断された場合は(S200:yes)、特図1の保留数が上限値(本実施例では「4」)に達しているか否かを判断する(S202)。このとき、特図1保留数が上限値に達していなければ(S202:yes)、特図1の抽選用乱数および図柄決定乱数を取得し、遊技球が第1始動口17aに入球した順序(入球順序)と対応付けて主制御基板200のRAM203に記憶する処理を行う(S204)。ここで、特図1の抽選用乱数は、後述する特図1の大当り抽選を行うために用いられる乱数であり、特図1の図柄決定乱数は、特図1の大当り抽選の結果に応じて停止表示させる特図1の種類(図8参照)を決定するための乱数である。・・・尚、第1始動口17aへの入球により当り抽選用乱数および図柄決定乱数が特図1の保留として主制御基板200のRAM203に記憶されることから、本実施例の主制御基板200のRAM203は、本発明の「保留記憶手段」の一態様を構成している。
【0071】
続いて、記憶した特図1の抽選用乱数に基づいて、発生した特図1の新たな保留が特定保留か否かの判定を行う(S208)。本実施例のパチンコ機1では、特定保留に対応する乱数値(特定乱数値)が予め定められており、記憶した特図1の抽選用乱数がこの特定乱数値と一致すれば、特定保留であると判定し、特定乱数値と一致しなければ、特定保留ではないと判定する。ここで、特定乱数値としては、後述する大当り抽選の当選値(当り値)の全部あるいは一部を設定しておくことができる。また、後述する大当り抽選の落選値(外れ値)の一部を、特定乱数値として設定しておくこともできる。尚、特定保留か否かを判定する処理は、主制御基板200のCPU201によって行われていることから、本実施例の主制御基板200のCPU201は、本発明の「特定保留判定手段」の一態様を構成している。
【0072】
こうして特定保留か否を判定したら、その判定結果および現在の特図1の保留数を示す特図1の始動入賞時保留数指定コマンドをサブ制御基板220に向かって送信する(S210)。後述するように、本実施例のサブ制御基板220のCPU221は、特図1の始動入賞時保留数指定コマンドを受信すると、受信したコマンドに基づいて、演出表示装置27の保留表示領域27eに特図1の保留数の増加に伴う保留表示を行う。また、特定保留である旨の始動入賞時保留数指定コマンドを受信した場合には、その特定保留の消化に伴って大当りが発生することを保留表示により予め示唆する予告演出(保留予告演出)を実行する。尚、ここでは、判定結果と特図1の保留数とを含むコマンドを送信しているが、判定結果を示すコマンドと、特図1の保留数を示すコマンドとに分けて送信することとしてもよい。また、本実施例のパチンコ機1で行われる保留予告演出の具体的な態様については、後ほど詳しく説明する。さらに、特図1の保留数や、特定保留か否かの判定結果に関する始動入賞時保留数指定コマンドは、本発明の「保留制御信号」に相当しており、始動入賞時保留数指定コマンドを送信する処理は、主制御基板200のCPU201によって行われていることから、本実施例の主制御基板200のCPU201は、本発明の「信号送信手段」の一態様を構成している。
・・・・・
【0074】
そして、第2始動口スイッチ17tによって遊技球が検出され、第2始動口17bに遊技球が入球した(始動入賞が発生した)と判断された場合は(S212:yes)、特図2の保留数が上限値(本実施例では「4」)に達しているか否かを判断し(S214)、特図2の保留数が上限値に達していなければ(S214:yes)、特図2の抽選用乱数および図柄決定乱数を取得し、遊技球が第2始動口17bに入球した順序(入球順序)と対応付けて主制御基板200のRAM203に記憶する処理を行う(S216)。また、これらの乱数を記憶すると、特図2の保留数が1つ増加したことになるので、第2図柄表示装置32の特図2保留表示部33bにおける特図2の保留数の表示に1を加算する(S218)。次いで、記憶した特図2の抽選用乱数に基づいて、発生した特図2の新たな保留が特定保留か否かを判定した後(S220)、その判定結果および特図2の現在の保留数を示す特図2の始動入賞時保留数指定コマンドをサブ制御基板220に向かって送信する(S222)。
・・・・・
【0079】
一方、特図1の保留数または特図2の保留数の少なくとも何れかが「0」でない場合は(S230:no)、第1始動口17aまたは第2始動口17bに入球した順序(入球順序)に従って、主制御基板200のRAM203に最も古くに記憶された特図1または特図2の抽選用乱数の読み出しを行う(S232)。前述したように抽選用乱数とは、遊技球が第1始動口17aまたは第2始動口17bに入球することで取得される乱数であり、本実施例のパチンコ機1では、入球順序と対応付けて記憶される。こうして記憶されている最も古い抽選用乱数を読み出したら、以下に説明する変動表示関連処理を開始する(S234)。
・・・・・
【0082】
図14の変動表示関連処理では、現在の確変フラグの設定(ON/OFF)に応じて大当り抽選テーブルを選択したら、選択したテーブルを用いて大当り抽選を行う(S306)。すなわち、選択した大当り抽選テーブルを参照しながら、図12のS232で読み出した最も古い抽選用乱数に対応する大当り抽選結果を引き出すことによって、「大当り」あるいは「外れ」の何れであるかを決定する。・・・」

(1-オ)
「【0110】
C-4.始動入賞時保留関連処理 :
図17は、サブ制御基板220のCPU221が行う始動入賞時保留関連処理の流れを示すフローチャートである。図示されているように、始動入賞時保留関連処理を開始すると、先ず初めに、始動入賞時保留数指定コマンドを受信したか否かを判断する(S500)。前述したように、始動入賞時保留数指定コマンドとは、特図1または特図2の新たな保留が発生した際に、発生した保留が特定保留か否かの判定結果と主制御基板200のRAM203に記憶されている現在の保留数とを伝達するために主制御基板200から送信される制御コマンドである(図11のS210,S222)。そして、始動入賞時保留数指定コマンドを受信していない場合には(S500:no)、本処理(始動入賞時保留関連処理)をそのまま終了する。尚、始動入賞時保留数指定コマンド(保留制御信号)を受信する処理は、サブ制御基板220のCPU221によって行われていることから、本実施例のサブ制御基板220のCPU221は、本発明の「信号受信手段」の一態様を構成している。
【0111】
一方、始動入賞時保留数指定コマンドを受信した場合には(S500:yes)、後述する予告演出禁止フラグがOFFに設定されているか否か(予告演出実行禁止期間中であるか否か)を判断し(S501)、OFFに設定されていれば(S501:yes)、S500で受信した始動入賞時保留数指定コマンドの内容を解析して、その内容がサブ制御基板220のRAM223に記憶されている保留情報と整合しているか否かを判断する(S502)。・・・つまり、始動入賞の発生に伴って特別図柄(特図1または特図2)の保留数は「1」加算されることから、S502の処理では、S500で受信した始動入賞時保留数指定コマンドで特定される保留数が、サブ制御基板220のRAM223で既に記憶している保留情報に含まれる保留数に「1」を加算した値と等しいこと、換言すると、サブ制御基板220のRAM223に既に記憶している保留情報に含まれる保留数が、受信した始動入賞時保留数指定コマンドで特定される保留数よりも「1」小さいことが確認できれば、受信したコマンドに基づき特定されるRAM203の記憶内容(主制御基板200側で記憶している保留情報)と、RAM223で既に記憶している保留情報(サブ制御基板220側で記憶している保留情報)とが整合していると判断する。尚、このようなS502の処理を行う本実施例のサブ制御基板220のCPU221は、本発明の「記憶異常検出手段」の一態様を構成している。
・・・・・
【0118】
このようにして、S500で受信した始動入賞時保留数指定コマンドで特定される(主制御基板200のRAM203に記憶されている)特図1または特図2の保留情報と、サブ制御基板220のRAM223に記憶されている保留情報とが整合しないと判断すると(図17のS502:no)、サブ制御基板220のCPU221は、次のような処理を行う。
【0119】
先ず、サブ制御基板220のRAM223に記憶されている現在の保留数に相当する数値(図18に示した例では「5」)を予告演出禁止カウンタにセットした後(S506)、RAM223に記憶されている保留数、入球順序、および特定保留か否かなどの保留情報をクリアする(S508)。ここで、予告演出禁止カウンタとは、前述した予告演出(保留予告演出)の実行を禁止する期間を計数するための専用のカウンタであり、RAM223の所定アドレスに設定されている。・・・そこで、本実施例のパチンコ機1では、受信したコマンドに基づき特定される保留情報と、RAM223で既に記憶している保留情報とが整合していなければ、その時点でRAM223に記憶されていた保留数に相当する回数分の特別図柄(特図1および特図2)の変動表示が完了するまでの期間は保留予告演出の実行を禁止するべく、予告演出禁止カウンタにRAM223の現在の保留数をセットし(S506)、その後、RAM223に記憶されている不確かな保留情報をすべてクリアする(S508)。
【0120】
続いて、予告演出禁止フラグをONに設定すると共に(S510)、演出表示装置27の表示画面上で行われている特図1および特図2の保留表示を消去する(S512)。ここで、予告演出禁止フラグとは、予告演出の実行を禁止する期間中であることを示すフラグであり、サブ制御基板220のRAM223の所定アドレスが予告演出禁止フラグに割り当てられている。また、前述したように、本実施例のパチンコ機1では、演出表示装置27の保留表示領域27eにて特図1および特図2の保留数に相当する保留表示を行うが(図4参照)、これらの保留表示は、サブ制御基板220のRAM223に記憶された特図1および特図2の保留数に基づいて行うことから、RAM223の保留情報をクリアしたら(S508)、演出表示装置27の保留表示も消去するのである。
・・・・・
【0122】
以上では、サブ制御基板220が受信した始動入賞時保留数指定コマンドで特定される保留情報(主制御基板200のRAM203に記憶されている保留情報)と、サブ制御基板220のRAM223に記憶されている保留情報とが整合している場合(S502:yes)に行われる処理(S504)と、整合していない場合(S502:no)に行われる処理(S506?S512)とに分けて説明したが、これらの処理を終了すると、続いて、新たに発生した特図1または特図2の保留が特定保留か否かを判断する(S516)。前述したように、主制御基板200からの始動入賞時保留数指定コマンドには、新たに発生した保留が特定保留か否かの判定結果を示す情報が含まれていることから、S500で受信したコマンドの内容を解析することで、新たに発生した保留が特定保留であるか否かを判断できる。そして、新たに発生した保留が特定保留であると判断された場合には(S516:yes)、新たな保留が予告演出の対象となる保留である(すなわち、この新たな保留の消化に伴って大当りが発生することを示唆する保留予告演出を実行する)旨をサブ制御基板220のRAM223に記憶する(S518)。尚、受信した始動入賞時保留数指定コマンドに基づいて、保留情報(保留数、入球順序、予告演出の対象となる保留か否か)がサブ制御基板220のRAM223に記憶されることから、本実施例のサブ制御基板220のRAM223は、本発明の「保留情報記憶手段」の一態様を構成している。
【0123】
一方、新たに発生した特図1または特図2の保留が特定保留ではないと判断された場合には(S516:no)、S518の処理を省略して、予告演出禁止フラグがONに設定されているか否かを判断する(S520)。・・・・」

(1-カ)
「【0137】
こうしてサブ制御基板220のRAM223に記憶されている保留数、および演出表示装置27の保留表示を更新したら、予告演出実行フラグがONに設定されているか否かを判断する(S716)。ここで、予告演出実行フラグとは、予告演出の実行中であることを示すフラグであり、サブ制御基板220のRAM223の所定アドレスが予告演出実行フラグに割り当てられている。この予告演出実行フラグがOFFに設定されている場合には(S716:no)、続いて、サブ制御基板220のRAM223に記憶されている特別図柄(特図1または特図2)の保留(保留情報)の中に、予告演出の対象となる保留があるか否かを判断する(S718)。前述したように、本実施例のパチンコ機1では、受信した始動入賞時保留数指定コマンドに基づいて、特定保留と判断された場合には、予告演出の対象となる保留である(すなわち、その保留の消化に伴って大当りが発生することを示唆する予告演出を実行する)旨が記憶される(図17のS518)。そして、予告演出の対象となる保留がない場合には(S718:no)、そのまま図20の変動開始時保留関連処理を終了して、図19の図柄変動演出関連処理に復帰する。
【0138】
これに対して、予告演出の対象となる保留がある場合には(S718:yes)、予告演出を実行する(S720)。前述したように、本実施例のパチンコ機1では、演出表示装置27の保留表示領域27eに表示される特別図柄(特図1および特図2)の保留表示を用いた予告演出(保留予告演出)を行う。尚、特定保留が発生した場合に予告演出の対象となる保留である旨が記憶され、これを受けて予告演出を実行する処理は、サブ制御基板220のCPU221によって行われていることから、本実施例のサブ制御基板220のCPU221は、本発明の「予告演出実行手段」の一態様を構成している。
・・・・・
【0141】
以上のようにして予告演出を実行すると(図20のS720)、予告演出の実行中であることを示す予告演出実行フラグをONに設定して、特定保留表示が付された保留の順位(図23に示した例では「5」)を予告演出実行カウンタにセットする(S722)。ここで、予告演出実行カウンタとは、予告演出の実行期間(特定保留表示が保留表示領域27eに表示されている期間)を計数するためのカウンタであり、サブ制御基板220のRAM223の所定アドレスに設定されている。その後、図20の変動開始時保留関連処理を終了して、図19の図柄変動演出関連処理に復帰する。
【0142】
以上では、S716において、予告演出実行フラグがOFFに設定されていた場合(S716:no)に行われる処理について説明した。これに対して、予告演出実行フラグがONに設定されていた場合は(S716:yes)、S722の処理で予告演出実行フラグをONに設定する際にセットした予告演出実行カウンタから「1」を減算した後(S724)、予告演出実行カウンタが「0」になったか否かを判断する(S726)。そして、予告演出実行カウンタが「0」になっていなければ(S726:no)、そのまま図20の変動開始時保留関連処理を終了して、図19の図柄変動演出関連処理に復帰する。
【0143】
一方、予告演出実行カウンタが「0」になった場合は(S726:yes)、予告演出が終了した(特定保留表示が保留表示領域27eから削除された)ことになるので、予告演出実行フラグをOFFに設定した後(S728)、図20の変動開始時保留関連処理を終了して、図19の図柄変動演出関連処理に復帰する。」

上記記載事項の(1-ア)?(1-カ)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「特図1を変動表示可能となっている第1図柄表示装置28と、特図2を変動表示可能となっている第2図柄表示装置32と、(段落【0052】)
第1始動口スイッチ17sや、第2始動口スイッチ17tなどから遊技球の検出信号を受け取って、遊技の基本的な進行を決定し、第1図柄表示装置28および第2図柄表示装置32での図柄の変動や当り遊技の進行制御を司る遊技制御手段と、(段落【0041】)
主制御基板200からの各種コマンドを受け取ると、コマンドの内容を解析して、その結果に応じた遊技の演出を実行するための制御を行う演出制御手段と、を有し(段落【0042】)
前記遊技制御手段は、
第1始動口17aに遊技球が入球したと判断された場合は、特図1保留数が上限値に達していなければ、特図1の抽選用乱数を取得し、主制御基板200のRAM203に記憶する処理を行い、第2始動口17bに遊技球が入球したと判断された場合は、特図2の保留数が上限値に達していなければ、特図2の抽選用乱数を取得し、主制御基板200のRAM203に記憶する処理を行う手段と、(段落【0063】、【0070】、【0074】)
主制御基板200のRAM203に最も古くに記憶された特図1または特図2の抽選用乱数の読み出しを行い、読み出した最も古い抽選用乱数に対応する大当り抽選結果を引き出すことによって、『大当り』あるいは『外れ』の何れであるかを決定する手段と、(段落【0063】、【0079】、【0082】)
記憶した特図1の抽選用乱数に基づいて、発生した特図1の新たな保留が特定保留か否かの判定を行い、その判定結果および現在の特図1の保留数を示す特図1の始動入賞時保留数指定コマンドをサブ制御基板220に向かって送信し、記憶した特図2の抽選用乱数に基づいて、発生した特図2の新たな保留が特定保留か否かを判定した後、その判定結果および特図2の現在の保留数を示す特図2の始動入賞時保留数指定コマンドをサブ制御基板220に向かって送信する手段と、を備え、(段落【0071】、【0072】、【0074】)
特図1表示部30および特図2表示部33では、特別図柄の変動表示を行い、大当り図柄が停止表示されると、大当り遊技が開始される弾球遊技機において、(段落【0001】、【0054】)
前記演出制御手段は、
始動入賞時保留数指定コマンドを受信した場合には、サブ制御基板220のRAM223に既に記憶している保留情報に含まれる保留数が、受信した始動入賞時保留数指定コマンドで特定される保留数よりも『1』小さいことが確認できれば、整合していると判断する手段と、(段落【0110】、【0111】)
主制御基板200からの始動入賞時保留数指定コマンドには、新たに発生した保留が特定保留か否かの判定結果を示す情報が含まれていることから、受信したコマンドの内容を解析することで、新たに発生した保留が特定保留であるか否かを判断でき、新たに発生した保留が特定保留であると判断された場合には、この新たな保留の消化に伴って大当りが発生することを示唆する保留予告演出を実行する旨を記憶し、新たに発生した保留が特定保留ではないと判断された場合には、この新たな保留の消化に伴って大当りが発生することを示唆する保留予告演出を実行する旨を記憶する処理を省略する手段と、(段落【0110】、【0122】、【0123】)
予告演出実行フラグがOFFに設定されている場合には、サブ制御基板220のRAM223に記憶されている特図1または特図2の保留の中に、予告演出の対象となる保留があるか否かを判断し、予告演出の対象となる保留がある場合には、予告演出を実行し、予告演出を実行すると、予告演出の実行中であることを示す予告演出実行フラグをONに設定して、特定保留表示が付された保留の順位を予告演出実行カウンタにセットし、予告演出実行フラグがONに設定されていた場合は、予告演出実行カウンタから『1』を減算した後、予告演出実行カウンタが『0』になっていなければ、そのまま変動開始時保留関連処理を終了する手段と、(段落【0137】、【0138】、【0141】?【0143】)
受信したコマンドに基づき特定される保留情報と、RAM223で既に記憶している保留情報とが整合していなければ、その時点でRAM223に記憶されていた保留数に相当する回数分の特図1および特図2の変動表示が完了するまでの期間は保留予告演出の実行を禁止するべく、予告演出禁止カウンタにRAM223の現在の保留数をセットする手段と、を有する、(段落【0118】、【0119】)
弾球遊技機。(段落【0001】)」

(1-2)引用文献2
また、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-100787号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(2-ア)
「【0001】
本発明は、先読み予告演出を実施する機能を備え、遊技動作途中で電源が遮断された場合、電源遮断前の遊技動作状態のデータを復活させるようにした弾球遊技機に関するものである。」

(2-イ)
「【0010】
しかしながら、上記した電断復旧処理が行われた後、先読み予告演出機能が働く場合には、次のような不都合が発生するという問題があった。
【0011】
たとえば、大当りや小当りといった当り入賞(変動開始時には当り抽選に当選すると先読みされる入賞)に係る保留記憶が存在している状態で電源遮断状態となり、その電源復帰処理後に新たな入賞があり、これにより生じた保留記憶について先読み予告抽選に当選することがある(ケース1)。このケース1では、当該新たな入賞に係る保留記憶を含め、先読み予告抽選に当選した時点で現存する全ての保留記憶に跨って、連続予告演出が行われる。しかし本ケース1では、この連続予告演出中において、当該新たな入賞に係る保留記憶が図柄遊技の変動表示動作の実行に供される前に、当り入賞に係る保留記憶が図柄遊技の変動表示動作の実行に供され、そこで大当りや小当りであると判断されて、大入賞口の所定回の開閉動作を伴う大当り遊技(たとえば15ラウンドの開放動作を伴う大当り遊技)や小当り遊技(たとえば2ラウンドの開放動作を伴う小当り遊技)が開始されてしまう。したがって、遊技者側からみると、先読み結果として保留表示器がたとえば赤色に点滅しているにも拘わらず、その点滅保留が変動表示動作の実行に供される前に、つまり連続予告演出が完結する前に、別の当りである大当り遊技や小当り遊技が発生してしまうことから、ここで先読み予告演出が途絶えてしまう。このため遊技者に違和感や不信感を与える、という不具合が生じることになる。
・・・・・
【0013】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、当り入賞や転落入賞に係る保留記憶が存在している状態で電断し、電断復旧処理が行われた後に先読み予告演出が発生することによる上記不信感を遊技者に与えないようにした弾球遊技機を提供することにある。」

(2-ウ)
「【0280】
(7-5.電源復帰表示コマンドの受信処理:図39)
図39は、主制御側メイン処理(図8)のステップS105で送信される電源復帰表示コマンドを受信した場合の処理を示す。
【0281】
この電源復帰表示コマンドを受信した場合、演出制御部24は、バックアップ復帰時の演出として「電源復帰中です。しばらくお待ち下さい。」のメッセージを液晶表示装置36に表示する(ステップS801)。そして先読み禁止カウンタに最大保留個数に対応する保留MAX値をセットする(ステップS802)。ここで保留MAX値は、本実施形態の場合、特図1および特図2の作動保留球数が共に4個で総計が8個と定められているので(図11、図12参照)、「8」がセットされる。これにより停電から復帰した後で生じる8回分の保留記憶について先読み予告演出が禁止されることになる。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「特図1」及び「特図2」は、本願補正発明の「遊技図柄」に相当するから、引用発明の「特図1を変動表示可能となっている第1図柄表示装置28」及び「特図2を変動表示可能となっている第2図柄表示装置32」は、本願補正発明の「遊技図柄の変動表示動作を表示可能な表示手段」に相当する。

イ 引用発明の「第1始動口スイッチ17sや、第2始動口スイッチ17t」「から遊技球の検出信号を受け取」ることは、本願補正発明の「所定の開始条件」に相当し、引用発明の「第1図柄表示装置28および第2図柄表示装置32での図柄の変動」は、本願補正発明の「前記表示手段における遊技図柄の変動表示動作」に相当する。また、引用発明の「遊技の基本的な進行を決定」することは、本願補正発明の「遊技動作を統括的に制御する」ことに相当するといえる。
そうすると、引用発明の「第1始動口スイッチ17sや、第2始動口スイッチ17tなどから遊技球の検出信号を受け取って、遊技の基本的な進行を決定し、第1図柄表示装置28および第2図柄表示装置32での図柄の変動や当り遊技の進行制御を司る遊技制御手段」は、
本願補正発明の「所定の開始条件に基づいて前記表示手段における遊技図柄の変動表示動作に関する動作制御を含む遊技動作を統括的に制御する主制御手段」に相当する。

ウ 引用発明の「主制御基板200」、「各種コマンド」、「遊技の演出を実行するための制御」は、それぞれ本願補正発明の「前記主制御手段」、「制御コマンド」、「演出手段の演出制御」に相当する。
そうすると、引用発明の「主制御基板200からの各種コマンドを受け取ると、コマンドの内容を解析して、その結果に応じた遊技の演出を実行するための制御を行う演出制御手段」は、
本願補正発明の「前記主制御手段から送信される制御コマンドに基づき、演出手段の演出制御を司る演出制御手段」に相当する。

エ 引用発明の「第1始動口17aに遊技球が入球したと判断された」こと及び「第2始動口17bに遊技球が入球したと判断された」ことは、本願補正発明の「始動手段が遊技球を検出した」ことに相当し、引用発明の「特図1の抽選用乱数」及び「特図2の抽選用乱数」は、本願補正発明の「所定の遊技情報」に相当する。
そうすると、引用発明の「第1始動口17aに遊技球が入球したと判断された場合は」「特図1の抽選用乱数を取得」し、「第2始動口17bに遊技球が入球したと判断された場合は」「特図2の抽選用乱数を取得」する「手段」は、
本願補正発明の「始動手段が遊技球を検出したことを契機に、所定の遊技情報を取得する取得手段」に相当する。

オ 引用発明の「読み出した最も古い抽選用乱数に対応する大当り抽選結果を引き出すことによって、『大当り』あるいは『外れ』の何れであるかを決定」することは、特別図柄の変動表示開始時に古い抽選用乱数から順番に抽選結果の引き出しがなされることは明らかであるから、本願補正発明の「当り遊技を発生させるか否かに関する抽選」に相当する。
そうすると、引用発明の「主制御基板200のRAM203に最も古くに記憶された特図1または特図2の抽選用乱数の読み出しを行い、読み出した最も古い抽選用乱数に対応する大当り抽選結果を引き出すことによって、『大当り』あるいは『外れ』の何れであるかを決定する手段」は、
本願補正発明の「前記取得手段により取得された前記遊技情報に基づき、当り遊技を発生させるか否かに関する抽選を行う抽選手段」に相当する。

カ 引用発明の「特図1の抽選用乱数」及び「特図2の抽選用乱数」は、本願補正発明の「保留データ」に相当する。そして、特図1の抽選用乱数は、特図1の大当り抽選を行うために用いられる乱数であるから(引用文献1の段落【0070】を参照。)、「図柄表示手段における遊技図柄の変動表示動作に供されるまで」記憶されるものであるといえる(「特図2の抽選用乱数」についても同様であることは明らか。)。
また、引用発明は、「特図1保留数が上限値に達していなければ、特図1の抽選用乱数を取得し、主制御基板200のRAM203に記憶する処理を行」うものであり、「特図2の保留数が上限値に達していなければ、特図2の抽選用乱数を取得し、主制御基板200のRAM203に記憶する処理を行う」ものであるから、「あらかじめ定めた最大保留記憶個数を上限として保留記憶」されるものであるといえる。
そうすると、引用発明は、「第1始動口17aに遊技球が入球したと判断された場合は、特図1保留数が上限値に達していなければ、特図1の抽選用乱数を取得し、主制御基板200のRAM203に記憶する処理を行い、第2始動口17bに遊技球が入球したと判断された場合は、特図2の保留数が上限値に達していなければ、特図2の抽選用乱数を取得し、主制御基板200のRAM203に記憶する処理を行う」ものであるから、引用発明の「主制御基板200のRAM203」は、
本願補正発明の「前記取得手段により取得された前記遊技情報を保留データとして、前記図柄表示手段における前記遊技図柄の変動表示動作に供されるまで、あらかじめ定めた最大保留記憶個数を上限として保留記憶する保留記憶手段」としての機能を有している。

キ 引用発明の「発生した特図1の新たな保留」及び「発生した特図2の新たな保留」は、本願補正発明の「最新の前記保留データ」に相当するものであり、これらは、「特図1の抽選用乱数」及び「特図2の抽選用乱数」として「主制御基板200のRAM203」に記憶されるものだから、「前記保留記憶手段に保留記憶された」ものということができる。
そして、新たな保留の発生は、第1始動口17a又は第2始動口17bに遊技球が入球したと判断された場合になされるものであり、「新たな保留」という以上、当該保留が図柄の変動表示動作に供される前の話であることも明らかであるから、引用発明の「発生した特図1の新たな保留が特定保留か否かの判定」及び「発生した特図2の新たな保留が特定保留か否か」の「判定」は、「今回前記始動手段が遊技球を検出したことに起因して、」「当該保留記憶が前記図柄の変動表示動作に供される前に先読み判定する」ものであるといえる。
そうすると、引用発明の「記憶した特図1の抽選用乱数に基づいて、発生した特図1の新たな保留が特定保留か否かの判定を行い、」「記憶した特図2の抽選用乱数に基づいて、発生した特図2の新たな保留が特定保留か否かを判定」する「手段」と、
本願補正発明の「今回前記始動手段が遊技球を検出したことに起因して、前記保留記憶手段に保留記憶された最新の前記保留データについて、前記遊技情報に基づき、少なくとも前記抽選手段による抽選結果を当該保留記憶が前記図柄の変動表示動作に供される前に先読み判定する先読み判定手段」とは、
「今回前記始動手段が遊技球を検出したことに起因して、前記保留記憶手段に保留記憶された最新の前記保留データについて、前記遊技情報に基づき、当該保留記憶が前記図柄の変動表示動作に供される前に先読み判定する先読み判定手段」という点で共通する。

ク 引用発明の「その判定結果」は、「発生した特図1の新たな保留が特定保留か否かの判定」及び「発生した特図2の新たな保留が特定保留か否か」の「判定」の結果であるから、本願補正発明の「前記先読み判定手段による先読み判定結果」に相当する。
また、引用発明の「現在の特図1の保留数」及び「特図2の現在の保留数」は、本願補正発明の「前記保留記憶手段に保留記憶された保留球数」に相当し、引用発明の「特図1の始動入賞時保留数指定コマンド」及び「特図2の始動入賞時保留数指定コマンド」は、本願補正発明の「制御コマンド」に相当する。
そして、引用発明の「遊技制御手段」は、「特図1の始動入賞時保留数指定コマンドをサブ制御基板220に向かって送信」し、「特図2の始動入賞時保留数指定コマンドをサブ制御基板220に向かって送信」するものであるから、当然に「特図1の始動入賞時保留数指定コマンド」及び「特図2の始動入賞時保留数指定コマンド」を作成する機能を有するものである。
そうすると、引用発明の「記憶した特図1の抽選用乱数に基づいて、発生した特図1の新たな保留が特定保留か否かの判定を行い、その判定結果および現在の特図1の保留数を示す特図1の始動入賞時保留数指定コマンドをサブ制御基板220に向かって送信し、記憶した特図2の抽選用乱数に基づいて、発生した特図2の新たな保留が特定保留か否かを判定した後、その判定結果および特図2の現在の保留数を示す特図2の始動入賞時保留数指定コマンドをサブ制御基板220に向かって送信する手段」は、
本願補正発明の「前記先読み判定手段による先読み判定結果に関する情報および前記保留記憶手段に保留記憶された保留球数に関する情報を含む制御コマンドを作成する制御コマンド作成手段」としての機能を有している。

ケ 引用発明の「サブ制御基板220」は、本願補正発明の「前記演出制御手段」に相当するから、引用発明の「特図1の始動入賞時保留数指定コマンドをサブ制御基板220に向かって送信し、」「特図2の始動入賞時保留数指定コマンドをサブ制御基板220に向かって送信する手段」は、本願補正発明の「前記制御コマンドを前記演出制御手段に送信するコマンド送信手段」に相当する。

コ 引用発明の「特図1表示部30および特図2表示部33」、「特別図柄」、「大当り図柄」、「大当り遊技」は、それぞれ本願補正発明の「前記図柄表示手段」、「前記遊技図柄」、「特定の表示態様」、「前記当り遊技」に相当するから、引用発明の「特図1表示部30および特図2表示部33では、特別図柄の変動表示を行い、大当り図柄が停止表示されると、大当り遊技が開始され」ることは、本願補正発明の「前記図柄表示手段に前記遊技図柄が特定の表示態様で停止表示された後、前記当り遊技を実行可能に構成され」ることに相当する。

サ 引用発明の「演出制御手段」は、「始動入賞時保留数指定コマンドを受信」するものであるから、本願補正発明の「前記制御コマンドを受信可能なコマンド受信手段」としての機能を有している。

シ 引用発明の「受信した始動入賞時保留数指定コマンドで特定される保留数」、「サブ制御基板220のRAM223に既に記憶している保留情報」は、それぞれ本願補正発明の「当該制御コマンドに含まれる保留球数情報」、「演出制御手段側において既知である保留球数情報」に相当する。
そうすると、引用発明の「演出制御手段」の「始動入賞時保留数指定コマンドを受信した場合には、サブ制御基板220のRAM223に既に記憶している保留情報に含まれる保留数が、受信した始動入賞時保留数指定コマンドで特定される保留数よりも『1』小さいことが確認できれば、整合していると判断する手段」は、
本願補正発明の「前記コマンド受信手段で前記制御コマンドを受信した場合、当該制御コマンドに含まれる保留球数情報が演出制御手段側において既知である保留球数情報と整合するかどうかを判定する整合性判定手段」に相当する。

ス 引用発明の「この新たな保留の消化に伴って大当りが発生することを示唆する保留予告演出」は、「新たに発生した保留が特定保留か否かの判定結果」により、「新たに発生した保留が特定保留であると判断された場合」に実行する旨が記憶されるものであるから、本願補正発明の「当該先読み判定結果に関連する情報を報知する予告演出」に相当する。
さらに、引用発明の「演出制御手段」は、「予告演出の対象となる保留がある場合には、予告演出を実行」するものであるから、「保留予告演出を実行する旨を記憶」する場合に、保留予告演出の現出制御まで実行することは自明である。
そうすると、引用発明の「演出制御手段」は、「主制御基板200からの始動入賞時保留数指定コマンドには、新たに発生した保留が特定保留か否かの判定結果を示す情報が含まれていることから、受信したコマンドの内容を解析することで、新たに発生した保留が特定保留であるか否かを判断でき、新たに発生した保留が特定保留であると判断された場合には、この新たな保留の消化に伴って大当りが発生することを示唆する保留予告演出を実行する旨を記憶する」ものであるから、
本願補正発明の「前記制御コマンドに含まれる前記先読み判定結果の情報に基づき、当該先読み判定結果に関連する情報を報知する予告演出を現出制御する予告演出制御手段」としての機能を有している。

セ 引用発明の「この新たな保留の消化に伴って大当りが発生することを示唆する保留予告演出」、「新たに発生した保留が特定保留であると判断された場合」、「新たに発生した保留が特定保留ではないと判断された場合」は、それぞれ本願補正発明の「前記予告演出」、「前記予告演出を実行可と判定された場合」、「前記予告演出を実行不可と判定された場合」に相当する。
また、引用発明は、「予告演出の対象となる保留がある場合には、予告演出を実行」するものであるから、「保留予告演出を実行する旨を記憶」した場合に、所定の演出手段に対して保留予告演出を発生されるように制御することは自明であり、逆に、「保留予告演出を実行する旨を記憶する処理を省略」した場合に、所定の演出手段に対して保留予告演出を発生させないように制御することも自明である。
そうすると、引用発明は、「新たに発生した保留が特定保留であると判断された場合には、この新たな保留の消化に伴って大当りが発生することを示唆する保留予告演出を実行する旨を記憶し、新たに発生した特図1または特図2の保留が特定保留ではないと判断された場合には、この新たな保留の消化に伴って大当りが発生することを示唆する保留予告演出を実行する旨を記憶する処理を省略する手段」を有し、
本願補正発明は、「前記予告実行判定手段により前記予告演出を実行可と判定された場合には所定の演出手段に対して前記予告演出を発生させる一方、前記予告実行判定手段により前記予告演出を実行不可と判定された場合には当該所定の演出手段に対して前記予告演出を発生させないように制御する予告実行制御手段」を有するから、
両発明は、「前記予告演出を実行可と判定された場合には所定の演出手段に対して前記予告演出を発生させる一方、前記予告演出を実行不可と判定された場合には当該所定の演出手段に対して前記予告演出を発生させないように制御する予告実行制御手段」を有する点で共通する。
そして、両発明が有することで共通する上記の手段は、予告演出の現出制御に関連するものであるから、「予告演出制御手段」が有する手段ということができる。

ソ 引用発明の「予告演出実行フラグがOFFに設定されている場合には、サブ制御基板220のRAM223に記憶されている特図1または特図2の保留の中に、予告演出の対象となる保留があるか否かを判断し、予告演出の対象となる保留がある場合」は、「新たに発生した保留が特定保留であると判断された場合には、この新たな保留の消化に伴って大当りが発生することを示唆する保留予告演出を実行する旨を記憶」させることにより判断されるものであるから、本願補正発明の「前記予告実行制御手段が最新の前記保留データに係る保留記憶について前記予告演出を発生させることとした場合」に相当する。
また、引用発明は、予告演出を実行すると、予告演出実行フラグをONに設定して、特定保留表示が付された保留の順位を予告演出実行カウンタにセットし、予告演出実行フラグがONに設定されていた場合は、予告演出実行カウンタから「1」を減算した後、予告演出実行カウンタが「0」になっていなければ、そのまま変動開始時保留関連処理を終了し、予告演出実行フラグがOFFに設定されている場合に実行される、予告演出の対象となる保留がある場合に予告演出を実行する処理を行わないものであり、最新の保留データに基づいて予告演出を実行した後、予告演出実行カウンタが「0」になるまでに最大保留記憶個数の範囲内で生起した保留データの数は「所定回数分」といえるから、最新の保留データよりも後に生起する所定回数分の保留データに関して予告演出が実行されることをあらかじめ禁止するものであるということができる。
そうすると、引用発明の「予告演出実行フラグがOFFに設定されている場合には、サブ制御基板220のRAM223に記憶されている特図1または特図2の保留の中に、予告演出の対象となる保留があるか否かを判断し、予告演出の対象となる保留がある場合には、予告演出を実行し、予告演出を実行すると、予告演出の実行中であることを示す予告演出実行フラグをONに設定して、特定保留表示が付された保留の順位を予告演出実行カウンタにセットし、予告演出実行フラグがONに設定されていた場合は、予告演出実行カウンタから『1』を減算した後、予告演出実行カウンタが『0』になっていなければ、そのまま変動開始時保留関連処理を終了する手段」は、
本願補正発明の「前記予告実行制御手段が最新の前記保留データに係る保留記憶について前記予告演出を発生させることとした場合、当該最新の保留データよりも後に生起する所定回数分の保留データに関して、前記予告演出が実行されることをあらかじめ禁止する第1の予告演出実行禁止手段」に相当する。
そして、引用発明の「・・・終了する手段」は、予告演出の現出制御に関連するものであるから、「予告演出制御手段」が有する手段ということができる。


タ 引用発明の「受信したコマンドに基づき特定される保留情報と、RAM223で既に記憶している保留情報とが整合していなければ」の判断は、「始動入賞時保留数指定コマンドを受信した場合には、サブ制御基板220のRAM223に既に記憶している保留情報に含まれる保留数が、受信した始動入賞時保留数指定コマンドで特定される保留数よりも『1』小さいことが確認できれば、整合していると判断」されなかった場合の判断であるから、引用発明の「受信したコマンドに基づき特定される保留情報と、RAM223で既に記憶している保留情報とが整合していなければ」は、本願補正発明の「前記最新の保留データについて前記整合性判定手段で保留球数情報の整合性が確認されなかった場合」に相当する。
また、引用発明において、「その時点でRAM223に記憶されていた保留数に相当する回数分の特図1および特図2の変動表示が完了するまでの期間」に最大保留記憶個数の範囲内で生起した保留データの数は「所定回数分」といえるから、引用発明の「その時点でRAM223に記憶されていた保留数に相当する回数分の特図1および特図2の変動表示が完了するまでの期間は保留予告演出の実行を禁止する」ことは、本願補正発明の「当該最新の保留データよりも後に生起する所定回数分の保留データに関して前記予告演出が実行されることをあらかじめ禁止する」ことに相当する。
そうすると、引用発明の「受信したコマンドに基づき特定される保留情報と、RAM223で既に記憶している保留情報とが整合していなければ、その時点でRAM223に記憶されていた保留数に相当する回数分の特図1および特図2の変動表示が完了するまでの期間は保留予告演出の実行を禁止するべく、予告演出禁止カウンタにRAM223の現在の保留数をセットする手段」は、
本願補正発明の「前記最新の保留データについて前記整合性判定手段で保留球数情報の整合性が確認されなかった場合、当該最新の保留データよりも後に生起する所定回数分の保留データに関して前記予告演出が実行されることをあらかじめ禁止する第2の予告演出実行禁止手段」に相当する。
そして、引用発明の「・・・セットする手段」は、予告演出の現出制御に関連するものであるから、「予告演出制御手段」が有する手段ということができる。

チ 引用発明の「弾球遊技機」は、本願補正発明の「弾球遊技機」に相当する。

上記ア?チにより、本願補正発明と引用発明とは、

(一致点)
「遊技図柄の変動表示動作を表示可能な表示手段と、
所定の開始条件に基づいて前記表示手段における遊技図柄の変動表示動作に関する動作制御を含む遊技動作を統括的に制御する主制御手段と、
前記主制御手段から送信される制御コマンドに基づき、演出手段の演出制御を司る演出制御手段と、を有し、
前記主制御手段は、
始動手段が遊技球を検出したことを契機に、所定の遊技情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記遊技情報に基づき、当り遊技を発生させるか否かに関する抽選を行う抽選手段と、
前記取得手段により取得された前記遊技情報を保留データとして、前記図柄表示手段における前記遊技図柄の変動表示動作に供されるまで、あらかじめ定めた最大保留記憶個数を上限として保留記憶する保留記憶手段と、
今回前記始動手段が遊技球を検出したことに起因して、前記保留記憶手段に保留記憶された最新の前記保留データについて、前記遊技情報に基づき、当該保留記憶が前記図柄の変動表示動作に供される前に先読み判定する先読み判定手段と、
前記先読み判定手段による先読み判定結果に関する情報および前記保留記憶手段に保留記憶された保留球数に関する情報を含む制御コマンドを作成する制御コマンド作成手段と、
前記制御コマンドを前記演出制御手段に送信するコマンド送信手段と、を備え、
前記図柄表示手段に前記遊技図柄が特定の表示態様で停止表示された後、前記当り遊技を実行可能に構成された遊技機において、
前記演出制御手段は、
前記制御コマンドを受信可能なコマンド受信手段と、
前記コマンド受信手段で前記制御コマンドを受信した場合、当該制御コマンドに含まれる保留球数情報が演出制御手段側において既知である保留球数情報と整合するかどうかを判定する整合性判定手段と、
前記制御コマンドに含まれる前記先読み判定結果の情報に基づき、当該先読み判定結果に関連する情報を報知する予告演出を現出制御する予告演出制御手段と、を有し、
前記予告演出制御手段は、
前記予告演出を実行可と判定された場合には所定の演出手段に対して前記予告演出を発生させる一方、前記予告演出を実行不可と判定された場合には当該所定の演出手段に対して前記予告演出を発生させないように制御する予告実行制御手段と、
前記予告実行制御手段が最新の前記保留データに係る保留記憶について前記予告演出を発生させることとした場合、当該最新の保留データよりも後に生起する所定回数分の保留データに関して、前記予告演出が実行されることをあらかじめ禁止する第1の予告演出実行禁止手段と、
前記最新の保留データについて前記整合性判定手段で保留球数情報の整合性が確認されなかった場合、当該最新の保留データよりも後に生起する所定回数分の保留データに関して前記予告演出が実行されることをあらかじめ禁止する第2の予告演出実行禁止手段と、を有する弾球遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)
「主制御手段」の「先読み判定手段」が「先読み判定する」対象について、本願補正発明では、「少なくとも前記抽選手段による抽選結果」であるのに対して、引用発明では、「発生した特図1の新たな保留が特定保留か否か」及び「発生した特図2の新たな保留が特定保留か否か」である点。

(相違点2)
本願補正発明では、「演出制御手段」の「予告演出制御手段」が「前記整合性判定手段で保留球数情報の整合性が確認された場合、前記先読み判定手段により前記最新の前記保留データに係る前記先読み判定の結果が得られたことを演出開始条件に、前記予告演出の実行可否を抽選により判定する予告実行判定手段」を有し、「前記予告演出判定手段により前記予告演出を実行可と判定」し、「前記予告演出判定手段により前記予告演出を実行不可と判定」するのに対して、引用発明はそのような構成を有しない点。

(相違点3)
「第2の予告演出実行禁止手段」について、本願補正発明では、「前記第2の予告演出実行禁止手段は、電源復帰後、その後に生起する最大保留記憶個数と同数またはそれを超える所定回数分の保留データに関して、前記予告演出が実行されることをあらかじめ禁止する」ものであるのに対して、引用発明では、そのようなものであるのかが明らかでない点。

(3)判断
相違点1及び2は関連するので、まとめて検討する。
弾球遊技機の技術分野において、当り遊技を発生させるか否かに関する抽選を行う抽選手段の抽選結果を主制御手段が先読み判定し、先読み判定結果を受信した演出制御手段が、最新の保留データに係る前記先読み判定の結果が得られたことを演出開始条件に、大当りを示唆する予告演出の実行可否を抽選により判定することは、例えば特開2012-24130号公報(主制御CPU201が実施する始動口入賞時乱数判定処理において、保留記憶された大当り判定用乱数に基づき、抽選手段による大当り抽選の結果が当りとなるか否かを先読み判定し、演出制御CPU241が実施する保留加算コマンドの受信処理において、保留加算コマンドにより送られてくる先読み判定結果を演出開始条件として、先読み予告演出の実行可否について先読み予告抽選を行う点。段落【0149】?【0152】、【0246】?【0247】、【0255】、図11、33、34等を参照。)や、特開2010-227131号公報(主基板31のCPU56は、検出した始動入賞に基づく変動がその後実行されたときの変動表示結果を始動入賞時にあらかじめ判定して入賞時判定結果指定コマンドを送信し、演出制御用CPU101は、連続予告演出決定用乱数の値が、連続予告決定用テーブルにおいて入賞時判定結果毎に規定された判定値と合致するか否かを判定することによって、連続予告演出を実行するか否かを決定する点。段落【0213】、【0355】?【0358】、図21、23、41?43等を参照。)等にも記載されているように、本願出願前に周知の技術である。
そして、引用文献1の段落【0071】には、特定保留か否かの判定に用いる特定乱数値が、大当り抽選の当選値の全部あるいは一部を設定しておくことができ、大当り抽選の落選値の一部を設定しておくこともできるものであることが記載されているから、引用発明における特定保留か否かの判定も、上記の周知技術と同様に、大当りを示唆する予告演出の実行可否の抽選を行うものであるということができる。
また、引用発明に上記の周知技術を適用した場合、仮に整合性判定手段で保留球数情報の整合性が確認されない場合に予告演出の実行可否の抽選を実施すると、抽選結果によらずに予告演出禁止フラグがONにされて(引用文献1の段落【0120】を参照。)予告演出の実行が禁止され、抽選結果が無駄になってしまうから、整合性判定手段で保留球数情報の整合性が確認された場合に予告演出の実行可否を抽選するように構成することは、当業者であれば当然に実施すべきことである。
そうすると、引用発明と上記の周知技術とは、大当りを示唆する予告演出の実行可否の抽選を行うという点で共通するものであり、また、主制御手段の負荷をできるだけ他手段に分散して軽減することは、弾球遊技機の技術分野において一般的な課題であるから、引用発明に対して上記の周知技術を適用して、当り遊技を発生させるか否かに関する抽選結果の先読み判定結果を主制御手段から受信した演出制御手段にて予告演出の実行可否の抽選を実行するように構成するとともに、整合性判定手段で保留球数情報の整合性が確認された場合に上記予告演出の実行可否の抽選を行うようにして、相違点1及び2における本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。

次に相違点3について検討する。
上記記載事項の(2-ウ)によれば、引用文献2には、電源復帰表示コマンドを受信した場合、演出制御部24は、先読み禁止カウンタに最大保留個数に対応する保留MAX値「8」をセットし、これにより停電から復帰した後で生じる8回分の保留記憶について先読み予告演出が禁止されることが記載されている。
そして、引用文献2の「最大保留個数に対応する保留MAX値」、「停電から復帰した後」、「保留記憶」、「先読み予告演出」は、それぞれ本願補正発明の「最大保留記憶個数と同数」、「電源復帰後」、「保留データ」、「予告演出」に相当するものである。
そうすると、上記記載事項の(2-ア)?(2-ウ)の記載によれば、引用文献2には、当たり入賞等に係る保留記憶が存在している状態で電断し電源復旧処理が行われた後に先読み予告演出が発生することによる不信感を遊技者に与えないようにした弾球遊技機を提供するために、演出制御部24が、電源復帰後、その後に生起する最大保留記憶個数と同数となる所定回数分の保留データに関して、予告演出が実行されることをあらかじめ禁止するとの技術的事項が記載されているといえる。
また、複数の予告演出禁止事由に対して共通の先読み禁止カウンタを利用することは、例えば特開2012-24130号公報(転落入賞の場合と当り入賞の場合に共通の先読み禁止カウンタを利用する点。段落【0259】、【0265】、図33等を参照。)や引用文献1(始動入賞時の保留情報不整合の場合と変動開始時の保留情報不整合の場合に共通の予告演出禁止カウンタを利用する点。段落【0119】、【0135】、【0145】、図17、20等を参照。)等にも記載されているように、本願出願前に周知の技術である。
したがって、引用発明と引用文献2に記載されたものとは、先読み予告演出を行う弾球遊技機であるという点で共通するものであるから、引用発明に対して、引用文献2に記載された上記の技術的事項を適用して、引用発明の「演出制御手段」により、電源復帰後、その後に生起する最大保留記憶個数と同数となる所定回数分の保留データに関して、予告演出が実行されることをあらかじめ禁止するとともに、上記の周知技術に基づき、始動入賞時の保留情報不整合の場合に「第2の予告演出実行禁止手段」により用いられる「予告演出禁止カウンタ」を、電源復帰後の場合にも共通に利用するように構成して、相違点3における本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

なお、請求人は審判請求書において、「本願発明の第2の予告演出実行禁止手段(先読み禁止カウンタsys系)が上記2つの予告演出禁止機能を有するということは、第2の予告演出実行禁止手段が単に一の異常に対処すべく設けられたものではなく、『複数種類の異常に対処可能に設けられたもの』であること、換言すれば、一の手段でカバーしうる異常については全てこれを一まとめに取り扱うとする思想がここに内在することを意味します。具体的には、保留球数情報の整合性が確認されなかった場合と電源復帰後の場合とを、同じ範疇の制御異常として一の第2の予告演出実行禁止手段(先読み禁止カウンタsys系)にて担当管理し、予告演出が実行されてしまうことをあらかじめ禁止します。このような技術的思想は本願発明の独自のものであり、引用文献1中に見出すことはできません。」(第11頁第1?10行)と主張している。
しかしながら、相違点3についての検討で示したおとり、複数の予告演出禁止事由に対して共通の先読み禁止カウンタを利用することは、本願出願前に周知の技術であるから、請求人の上記主張は採用することができない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1乃至2に係る発明は、平成27年7月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、「第2[理由]1 補正の内容」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用文献及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項及び引用発明の認定については、「第2[理由]3(1)(1-1)引用文献1」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、構成要件である「第2の予告演出実行禁止手段」について、「前記第2の予告演出実行禁止手段は、電源復帰後、その後に生起する最大保留記憶個数と同数またはそれを超える所定回数分の保留データに関して、前記予告演出が実行されることをあらかじめ禁止する」との限定を省いたものである。
してみると、本願発明は、本願補正発明について検討した「第2[理由]3(2)対比」における相違点3に対応する構成が存在しないことを除いて、本願補正発明と同じ構成であるから、本願発明と引用発明とは、同相違点1及び2と同等の相違点において相違するほかは、すべて一致している。

そして、上記相違点における本願発明の構成は、「第2[理由]3(3)判断」に上記相違点1及び2に係る判断として記載したのと同じ理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到することができたものである。
さらに、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-16 
結審通知日 2016-09-20 
審決日 2016-10-04 
出願番号 特願2014-60990(P2014-60990)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 芝沼 隆太  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 長崎 洋一
小島 寛史
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 河合 貴之  

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