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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1321792
審判番号 不服2015-19146  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-23 
確定日 2016-12-06 
事件の表示 特願2013-519834「動的スペクトル仲裁のための方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月19日国際公開、WO2012/009557、平成25年 8月 1日国内公表、特表2013-531446、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成23年(2011年)7月14日(パリ条約による優先権主張 2011年7月13日(US)アメリカ合衆国、2011年5月26日(US)アメリカ合衆国、2011年4月27日(US)アメリカ合衆国、2010年11月5日(US)アメリカ合衆国、2010年7月15日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

平成25年 1月15日 国内書面
平成25年 4月11日 手続補正書
平成26年 8月28日 拒絶理由通知
平成27年 1月 5日 意見書
平成27年 6月16日 拒絶査定
平成27年10月23日 審判請求
平成28年 9月23日 拒絶理由通知
平成28年10月11日 意見書、手続補正書

第2.特許請求の範囲の記載
本願の特許請求の範囲の記載は、平成28年10月11日付けの手続補正書の特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
警察、消防、緊急医療サービス、もしくは政府機関のうちの1つまたは複数に充てられる第1の通信ネットワーク内の、余剰資源として他に割当てて使用可能な無線周波数(RF)スペクトル資源の量を通信サーバ上で求め、
前記第1の通信ネットワークの使用可能なRFスペクトル資源の一部を第2の通信ネットワークによるアクセスおよび使用のために動的に割り当て、
割当済RFスペクトル資源の使用を開始できることを前記第2の通信ネットワークに知らせ、
前記第2の通信ネットワークによる使用のために割り当てられたRFスペクトル資源の量を特定するトランザクションをトランザクションデータベース内に記録し、
前記割当済RFスペクトル資源の少なくとも一部が前記第1の通信ネットワークによって必要とされているかどうかを判定し、
前記割当済RFスペクトル資源の少なくとも一部が、前記警察、消防、緊急医療サービス、もしくは政府機関のうちの1つまたは複数によって必要とされていると判定することに応答し、前記割当済RFスペクトル資源の使用を停止すべきことを前記第2の通信ネットワークに知らせ、
前記割当済RFスペクトル資源の使用が前記第2の通信ネットワークに
よって停止される時間を特定する情報を受信する
ことを含む、動的スペクトル仲裁(DSA)方法。
【請求項2】
さらに、前記第1の通信ネットワーク内の使用可能なRFスペクトル資源について、複数のネットワークオペレータの間で競売を行い、
前記競売が、要求されたネットワーク容量、ネットワークの境界、ネットワークのサービス品質、ネットワークの地理的パラメータ、資源が要求される時間、およびサービスの持続時間パラメータのうちの少なくとも1つに関係する入札規則に従って達成され、
前記第1の通信ネットワークの使用可能なRFスペクトル資源の一部を第2の通信ネットワークによるアクセスおよび使用のために動的に割り当てる際に、前記競売によって選択された通信ネットワークに前記使用可能なRFスペクトル資源の一部を動的に割り当てる、
請求項1に記載の動的スペクトル仲裁(DSA)方法。
【請求項3】
さらに、前記第1の通信ネットワークおよび少なくとも1つの他の通信
ネットワークから使用可能な資源をプールし、
前記第1の通信ネットワークの使用可能なRFスペクトル資源の一部を第2の通信ネットワークによるアクセスおよび使用のために動的に割り当てる際に、前記RFスペクトル資源のプールからRFスペクトル資源を前記第2の通信ネットワークに割り当てる、
請求項1に記載の動的スペクトル仲裁(DSA)方法。
【請求項4】
さらに、前記第1の通信ネットワークのRFスペクトル資源を前記第2の通信ネットワークによるアクセスおよび使用のために割り当てると、前記第1の通信ネットワークと前記第2の通信ネットワークとの間で電子商取引を自動で開始する、請求項1に記載の動的スペクトル仲裁(DSA)方法。
【請求項5】
さらに、前記通信ネットワーク内のサーバから追加RFスペクトル資源要求を受け取り、
使用可能なRFスペクトル資源の一部の動的な割り当てが、前記サーバからの前記追加RFスペクトル資源要求の受け取りに応答して達成される、
請求項1に記載の動的スペクトル仲裁(DSA)方法。
【請求項6】
前記第1の通信ネットワークの使用可能なRFスペクトル資源の一部を第2の通信ネットワークによるアクセスおよび使用のために割り当てる際に、時間、帯域幅、通信容量、サービス処理、地理的境界、および持続時間のうちの1つまたは複数に基づいてRFスペクトル資源を割り当てる、請求項1に記載の動的スペクトル仲裁(DSA)方法。
【請求項7】
さらに、前記第1の通信ネットワーク内のRFスペクトル資源の使用を監視し、
割り当てるために使用可能な無線周波数(RF)スペクトル資源の量を求めることが、前記第1の通信ネットワーク内のRFスペクトル資源の使用の監視に基づく、
請求項1に記載の動的スペクトル仲裁(DSA)方法。
【請求項8】
前記第1の通信ネットワークの使用可能なRFスペクトル資源の一部を第2の通信ネットワークによるアクセスおよび使用のために割り当てる際に、前記第1の通信ネットワークによって搬送される、前記第2の通信ネット
ワーク内で確立された通信セッションをハンドオフする、請求項1に記載の動的スペクトル仲裁(DSA)方法。
【請求項9】
前記第1の通信ネットワークおよび前記第2の通信ネットワークが、異なる携帯電話サービスプロバイダによって運営される携帯電話通信ネットワークである、請求項1に記載の動的スペクトル仲裁(DSA)方法。
【請求項10】
前記第1の通信ネットワークの使用可能なRFスペクトル資源の一部を第2の通信ネットワークによるアクセスおよび使用のために割り当てる際に、
前記割当済RFスペクトル資源を前記第2の通信ネットワークに知らせ、前記第1の通信ネットワークによるその資源の使用を停止させ、
前記割当済RFスペクトル資源にアクセスし、使用するために必要な情報を、前記第2の通信ネットワークが1つまたは複数のモバイル装置に伝送
し、
前記割当済RFスペクトル資源を使用して、前記1つまたは複数のモバイル装置との通信をサポートする、請求項1に記載の動的スペクトル仲裁(DSA)方法。
【請求項11】
さらに、
前記第1の通信ネットワークから、RFスペクトル資源の割当てを解除する通知を前記第2の通信ネットワーク内で受け取り、
前記割当済RFスペクトル資源の使用を中断する指示を、前記第2の通信ネットワークが1つまたは複数のモバイル装置に伝送し、
前記第2の通信ネットワークのRFスペクトル資源を使用して、前記1つまたは複数のモバイル装置との通信をサポートする、請求項10に記載の動的スペクトル仲裁(DSA)方法。
【請求項12】
警察、消防、緊急医療サービス、もしくは政府機関のうちの1つまたは複数に充てられる第1の通信ネットワークと第2の通信ネットワークとの間
で、使用可能な無線周波数(RF)スペクトル資源の動的スペクトル仲裁
(DSA)を達成するための通信サーバであって、
前記第1の通信ネットワークおよび前記第2の通信ネットワークと通信するためのネットワーク通信回路と、
メモリと、
前記メモリおよび前記ネットワーク通信回路に接続されるプロセッサで
あって、
前記第1の通信ネットワーク内の割当目的で使用可能なRFスペクトル資源の量を求め、
前記第1の通信ネットワークの使用可能なRFスペクトル資源の一部を前記第2の通信ネットワークによるアクセスおよび使用のために動的に割り当て、
割当済RFスペクトル資源の使用を開始できることを前記第2の通信ネットワークに知らせ、
前記第2の通信ネットワークによる使用のために割り当てられたRFスペクトル資源の量を特定するトランザクションをトランザクションデータベース内に記録し、
前記割当済RFスペクトル資源の少なくとも一部が前記第1の通信ネットワークによって必要とされているかどうかを判定し、
前記割当済RFスペクトル資源の少なくとも一部が、前記警察、消防、緊急医療サービス、もしくは政府機関のうちの1つまたは複数によって必要とされているとの判定に応答し、前記割当済RFスペクトル資源の使用を停止すべきことを前記第2の通信ネットワークに知らせ、
前記割当済RFスペクトル資源の使用が前記第2の通信ネットワークに
よって停止される時間を特定する情報を受信する操作を実行するためのプロセッサ実行可能命令を用いて構成される、プロセッサと、
を含む、通信サーバ。
【請求項13】
前記第1の通信ネットワークの使用可能なRFスペクトル資源について、複数のネットワークオペレータの間で競売を行うことをさらに含む操作を実行するためのプロセッサ実行可能命令を用いて前記プロセッサが構成され、
前記競売が、要求されたネットワーク容量、ネットワークの境界、ネットワークのサービス品質、ネットワークの地理的パラメータ、資源が要求される時間、およびサービスの持続時間パラメータのうちの少なくとも1つに関係する入札規則に従って達成され、
前記第1の通信ネットワークの使用可能なRFスペクトル資源の一部を前記第2の通信ネットワークによるアクセスおよび使用のために動的に割り当てる際に、前記競売によって選択された通信ネットワークに前記使用可能なRFスペクトル資源の一部を動的に割り当てる、プロセッサ実行可能命令を用いて前記プロセッサが構成される、
請求項12に記載の通信サーバ。
【請求項14】
警察、消防、緊急医療サービス、もしくは政府機関のうちの1つまたは複数に充てられる第1の通信ネットワーク内の、割当目的で使用可能な無線周波数(RF)スペクトル資源の量を求め、
前記第1の通信ネットワークの使用可能なRFスペクトル資源の一部を第2の通信ネットワークによるアクセスおよび使用のために動的に割り当て、
割当済RFスペクトル資源の使用を開始できることを前記第2の通信ネットワークに知らせ、
前記第2の通信ネットワークによる使用のために割り当てられたRFスペクトル資源の量を特定するトランザクションをトランザクションデータベース内に記録し、
前記割当済RFスペクトル資源の少なくとも一部が前記第1の通信ネットワークによって必要とされているかどうかを判定し、
前記割当済RFスペクトル資源の少なくとも一部が、前記警察、消防、緊急医療サービス、もしくは政府機関のうちの1つまたは複数によって必要とされているとの判定に応答し、前記割当済RFスペクトル資源の使用を停止すべきことを前記第2の通信ネットワークに知らせること、
前記割当済RFスペクトル資源の使用が前記第2の通信ネットワークに
よって停止される時間を特定する情報を受信する動的スペクトル仲裁(DSA)操作をプロセッサに実行させるために構成されるプロセッサ実行可能ソフトウェア命令が記憶された、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
前記第1の通信ネットワーク内の使用可能なRFスペクトル資源につい
て、複数のネットワークオペレータの間で競売を行うことをさらに含む操作をプロセッサに実行させるように前記記憶されたプロセッサ実行可能ソフトウェア命令が構成され、
前記競売が、要求されたネットワーク容量、ネットワークの境界、ネットワークのサービス品質、ネットワークの地理的パラメータ、資源が要求される時間、およびサービスの持続時間パラメータのうちの少なくとも1つに関係する入札規則に従って達成され、
前記第1の通信ネットワークの使用可能なRFスペクトル資源の一部を第2の通信ネットワークによるアクセスおよび使用のために動的に割り当てることが、前記競売によって選択された通信ネットワークに前記使用可能なRFスペクトル資源の一部を動的に割り当てる操作を、プロセッサに実行させるための、前記記憶されたプロセッサ実行可能ソフトウェア命令が構成される、
請求項14に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。」

第3.当審の拒絶理由の概要
平成28年9月23日付けで通知した当審の拒絶理由の概要は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないというものである。
上記「第2.特許請求の範囲の記載」に記載したように、本願の特許請求の範囲の記載は、補正によって明確なものとなり、各請求項に係る発明は明細書の発明の詳細な説明に記載されたものとなったので、当審の拒絶理由は解消した。

第4.原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、本願の請求項1-15に係る発明は、その出願前に外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
刊行物1.国際公開第2009/071431号
刊行物2.国際公開第2008/109641号

第5.当審の判断
1.引用発明1
原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物1には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「[Detailed description]

An embodiment of the invention may work as follows . An infrastructure operator (i.e. an operator who constructs and maintains the infrastructure for enabling wireless communication) obtains a spectrum usage rights (e.g. via a spectrum license) under the obligation to enable other communication service providers to provide communications services in the same spectrum (according to certain rules) . This infrastructure operator provides a network infrastructure that enables communication services in the spectrum resource. The infrastructure supports that other providers (denoted as "system operators" herein, as they operate a transmission system on the shared infrastructure) can have access to the infrastructure via an interface (i.e. via a slice manager of an infrastructure node). Some negotiation process (e.g. a price setting process and a negotiation about the amount of resources and geographic distribution of resources) enables the system operator to obtain a certain share of spectrum resources from the infrastructure operator - this share is provided as a transmission instance administered by the system operator, and preferably the share is dynamically allocatable, i.e. the allocation may vary over time, e.g. depending on circumstances. The infrastructure resource can be such that each transmission system instance is independently administratable by a different transmission system operator.」
(明細書第14ページ第27行-第15ページ第23行)

(2)「The interaction between system operator and infrastructure resource may be as follows. The infrastructure owner owns an infrastructure resource that has free capacity available. In addition, it may or may not have some slices instantiated already. In the following example given in

Figures 3a to 3g, the infrastructure 30 resource has three slices 31 already that are being used by some system operator 35, but also still has free capacity 32 available. The infrastructure owner now announces the availability of the resource to system operators 35. This could e.g. consist of putting up an offer in a public infrastructure trading exchange. The announcement may or may not include information about the amount of free capacity (the infrastructure owner may not want to publicly disclose it) . The announcement can e.g. contain the address of a resource' s virtualization management interface (VMI) indicated as 34.

As shown in Fig. 3b, one of the system operators 35 is interested in the infrastructure resource. He connects to the slice manager 33 using the VMI address from the announcement and requests a slice with desired properties and a desired capacity,

As shown in Fig. 3c, the slice manager 33 of the infrastructure resource 30 checks whether the request can be fulfilled from the available free capacity 32 and optionally considers additional policies (e.g. certain system operators may be excluded from using the resource). If the outcome is positive, the slice manager 33 offers a slice with a specific capacity (which may or may not be identical to the system operator's requested capacity) . In addition, the offer may contain other information such as cost and billing details .

As shown in Fig. 3d, In case the offer is acceptable to the system operator, he sends an accept message to the slice manager. Optionally, there may be additional negotiation steps .

As shown In Fig. 3e, the slice manager 33 now instantiates a new slice 36 (instance of a transmission system) and allocates the negotiated part of the free capacity to it. As shown In Fig. 3f, upon successful instantiation, the slice manager 33 grants access to the new slice 36 to the system operator. The grant message includes an identifier (e.g. a port number) that enables the system operator to address this specific slice in the future. The system operator now has full access to the newly instantiated slice 36. By means of vlrtualization, he now owns a share of the resource and has full control over that share.

Finally, as shown in Fig. 3g, the system operator configures the slice 36 to his liking. This includes e.g. installing custom protocols and state information, as described further on.」
(明細書第16ページ第6行-第17ページ第21行)

(3)「The invention may be further embodied according to the following examples which can fully or in part combined with the features of previously described embodiments and any of the claimed concepts.
……
- Resources for slices can be re-assigned according to meta-policies, e.g. a slice that contains disaster recovery or public safety communication procedures can be provided with more resources during emergency events.」
(明細書第33ページ第24行-第34ページ第19行)

刊行物1のパテントファミリである特表2011-508474号公報の対応する記載は以下のとおりである。

(1’)「【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態は次のように動作することができる。インフラストラクチャ運用者(即ち無線通信を可能にするインフラストラクチャを構築、維持する運用者)は、他通信サービスプロバイダが同じ帯域で(一定の規則に従う)通信サービスを提供することを可能にする義務の下に、帯域使用権を
(例えば帯域ライセンスにより)取得する。このインフラストラクチャ運用者は帯域リソースにおける通信サービスを可能にするネットワークインフラストラクチャを提供する。インフラストラクチャがサポートするのは、他プロバイダ(他プロバイダは共有インフラストラクチャにおいて伝送システムを運用するので、本明細書では「システム運用者」と表す)がインタフェースを介して(即ちインフラストラクチャノードのスライスマネジャを介し
て)インフラストラクチャにアクセスすることができることである。ある取り決め処理(例えば価格設定処理およびリソース量並びにリソースの地理的分散に関する取り決め)はシステム運用者がインフラストラクチャ運用者から帯域リソースの一定の割り当て分を取得することを可能にする。この割り当てはシステム運用者により監督される伝送インスタンスとして提供され、好ましくはこの割り当て分は動的に割り当て可能、即ち割り当て分は例えば状況に応じて時間に対して変化させることができる。インフラストラクチャリソースは、各伝送システムインスタンスが異なる伝送システム運用者により独立に監督できるように存在し得る。」

(2’)「【0032】
システム運用者とインフラストラクチャリソース間の相互動作は以下の通りでありうる。インフラストラクチャの所有者は利用可能な空き容量を有するインフラストラクチャリソースを所有する。加えて、インフラストラク
チャリソースは既にインスタンス化した幾つかのスライスを有しても有しなくても良い。図3a乃至図3gに示す次の例では、インフラストラクチャリソース30は3つのスライス31を既に有し、これらのスライスはあるシステム運用者35が使用しているが、またなお利用可能な空き容量32を有する。インフラストラクチャ所有者は次にリソースの利用可能性をシステム運用者35に通知する。これは例えば公開インフラストラクチャ取引所における供給の売り出しを構成上含みえよう。通知は空き容量(インフラストラクチャ所有者は空き容量の公的な開示を望まないであろう)に関する情報を含んでも含まなくても良い。通知は例えば34として示すリソースの仮想化管理インタフェース(VMI)のアドレスを包含することができる。
【0033】
図3bに示すように、システム運用者の1つ35はインフラストラクチャリソースに関心を持つ。システム運用者の1つは通知VMIアドレスを使用してスライスマネジャ33に接続し、所望の特性および所望の容量を持つスライスを要求する。
【0034】
図3cに示すように、インフラストラクチャリソース30のスライスマネジャ33は利用可能空き容量32で要求を満たすことができるかを調べ、オプションとして追加規定を考慮する(例えばあるシステム運用者にリソースを使用させないことができる)。結果が肯定的であれば、スライスマネジャ33は特定容量(システム運用者の要求容量と同じであっても、なくても良い。)を持つスライスを供給する。加えて、供給には経費および請求の詳細のようなその他の情報を包含することができる。
【0035】
図3dに示すように、供給がシステム運用者により受理可能である場合、システム運用者は受理メッセージをスライスマネジャに送信する。オプションとして追加取り決めの段階がありうる。
【0036】
図3eに示すように、スライスマネジャ33は次に新しいスライス36
(伝送システムのインスタンス)をインスタンス化し、新しいスライスに空き容量の取り決めた部分を割り当てる。
【0037】
図3fに示すように、インスタンス化に成功すると、スライスマネジャ33はシステム運用者に新しいスライス36へのアクセスを許可する。許可
メッセージはシステム運用者がこの特定スライスをアドレス指定することを将来可能にする識別子(例えば、ポート番号)を含む。システム運用者はこの時点で新しくインスタンス化したスライス36に完全なアクセスができ
る。仮想化により、いまやシステム運用者はリソースの割り当て分を所有
し、その割り当て分に対する完全な制御ができる。
【0038】
最後に図3gに示すように、システム運用者は自分の好むようにスライス36を構成する。さらに説明するように、これは例えばカスタムプロトコルおよび状態情報の組み込み
を含む。」

(3’)「【0083】
以前に説明した実施形態の特徴およびあらゆる特許請求概念と完全にまたは部分的に組み合わせることができる次の例に従い、本発明をさらに実施することができる。
……
-メタポルシーに従いスライスにリソースを再割り当てすることができる、例えば災害復旧または公衆安全通信手順を包含するスライスに緊急事態の間より多くのリソースを提供ことができる。」

したがって、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

インフラストラクチャ運用者(即ち無線通信を可能にするインフラストラクチャを構築、維持する運用者)は、帯域リソースの利用可能性を複数のシステム運用者に通知し、
前記複数のシステム運用者の1つは前記インフラストラクチャ運用者のスライスマネジャに接続し、所望の特性および所望のリソースの容量を要求
し、
前記スライスマネジャは、利用可能な空き容量で要求を満たすことができるかを調べ、前記システム運用者の1つに容量を提示し、
前記提示が前記システム運用者の1つにより受理可能である場合、前記システム運用者の1つは受理メッセージをスライスマネジャに送信し、
前記スライスマネジャは、前記システム運用者の1つに、空き容量を割り当てる方法であって、
公衆安全通信手順を包含する緊急事態の間より多くのリソースを提供ことができる方法。

2.引用発明2
原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物2には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「Spectrum commodity items may be generated by analyzing actual, current spectrum usage and/or predicted, future spectrum usage. Each spectrum commodity item may relate to a definable amount of spectrum from spectrum that is allocated to a holder so as to identify unused or underutilized spectrum that may be made available for use by another entity, or by the holder in a more productive manner. The holder may carry out this analysis or this analysis may be carried out by another entity, such the spectrum broker. Spectrum commodity items may be offered to users that request spectrum usage, such as by bidding on specific commodity items or by submitting a spectrum use request. The brokerage may match offers of spectrum to bids or requests for spectrum. Once matched, the user may be provided with a spectrum certificate. In one embodiment, the spectrum certificate is a data object that forces radio devices of an associated spectrum user system to operate in accordance with spectrum-related components of the spectrum certificate, such as a time window, a frequency-based spectral mask, a geography-based emission mask and a transmitted power limit. Additional details of the transfer of spectrum use rights will be described below in connection with a number of exemplary operational scenarios. Also, aspects of regulating compliance with one or more spectrum certificates that are issued to a user are described below.」
(明細書第8ページ第3行-第19行)

(2)「When granting spectrum access to a user, the user may be issued a spectrum certificate. The spectrum certificate is a data object that the radio devices and/or other components of the user's system based their operation. As described in greater detail below, communications-related information, such as frequency, spectral mask and power limits, may be contained in such a data object. In this manner, the communication equipment of the user is self-regulating to comply with the spectrum access grant and such operation is transparent to the user. For instance, if the frequency with which the equipment is to operate changes, the spectrum certificate may be used to automatically effectuate the change.

As will be more fully described, the broker system matches spectrum availability to spectrum need based on a number of factors, including some or all of geography, service rules and/or other regulatory constraints on the holder's spectrum, user's application, user's radio equipment, bandwidth (inclusive of frequency and spectral mask considerations), power, interference, and price (or other non-monetary consideration). Additional criteria may be evaluated as part of the matching process. For example, the holder may place constraints on the use of spectrum that is granted to another entity. One such constraint may be a non-competition restriction. For instance, a cellular service provider may allow the exchange engine to grant access to the cellular service provider's available spectrum for any application other than a directly competing service.」
(明細書第12ページ第27行-第13ページ第13行)

(3)「In one embodiment, WiFi or WiMax technology combined with cooperation from a license holder may be used to economically deploy a wireless network across a geographic area using the spectrum brokering system 100 and/or the system 12, 12' or 12". In one embodiment, the license holder could be a commercial entity, such as the holder of a 700 MHz television license or a government entity (e.g., NTIA). Exemplary candidate spectrum ranges include the 300 MHz to 400 MHz range held by the government, or the 698 MHz to 794 MHz range primarily used for television broadcasting.

In one embodiment, the service provider of the wireless network may enter into an agreement with the license holder or holders for a secondary use of the spectrum. The system would provide spectrum certificates to allow operation of the wireless network. System sensors (e.g., spectrum sniffers) or radios operating within the system may be used as part of a policing function to minimize transmissions falling outside a predetermined boundary and to minimize interference of network operation with use by the primary license holder(s). The spectrum holder may regain control of its spectrum in an orderly manner by slowly reducing the number and/or type of certificates issued to the service provider of the wireless network.

An exemplary implementation will be described where NTIA offers spectrum. The spectrum held by NTIA is typically only needed in an emergency. The spectrum made available for the secondary use may be returned to NTIA if an emergency arises or may be returned over time in a particular geographic area. For instance, if spectrum certificates are issued for a duration less than the timeframe that it may take to return all or part of the spectrum, then the service provider may release the spectrum in an emergency situation. It may be noted that very few emergencies are nationwide. Therefore, an incident that leads to the return of spectrum may have a localized impact on the wireless network. In the event of an emergency during which spectrum may need to be returned, the service provider may establish a backup plan to allow for limited wireless network service to continue until the end of the emergency situation. The backup plan may include accessing alternative spectrum from another spectrum holder. This alternative spectrum may have a higher cost than the spectrum provided by the NTIA. Another backup plan may include using spectrum in an unlicensed band, such as the 900 MHz ISM band.」
(明細書第48ページ第24行-第49ページ第21行)

刊行物2のパテントファミリである特表2010-521105号公報の対応する記載は以下のとおりである。

(1’)「【0025】
スペクトル商品アイテムは、実際の現在のスペクトル使用料及び/又は予測される将来のスペクトル使用料を分析することにより生成されてもよい。各スペクトル商品アイテムは、より生産的な方法で別の実体により又は保有者により使用するために利用可能にされてもよい未使用の又は十分に使用されていないスペクトルを識別するように保有者に割り当てられたスペクトルからの定義可能なスペクトル量に関連してもよい。保有者はその分析を実行してもよく、或いはその分析はスペクトルブローカ等の別の実体により実行されてもよい。スペクトル商品アイテムは、特定の商品アイテムの入札又はスペクトル使用要求の提出等によりスペクトル使用料を要求するユーザにオファーされてもよい。ブローカは、スペクトルのオファーをスペクトルに対する入札又は要求とマッチングさせてもよい。マッチングされると、ユーザはスペクトル証明書を提供されてもよい。一実施形態において、スペクトル証明書は、タイムウィンドウ、周波数に基づくスペクトルマスク、地理に基づく放射マスク及び送信された電力の限度等のスペクトル証明書のスペクトル関連要素に従ってスペクトルユーザシステムに関連する無線装置を動作させるデータオブジェクトである。スペクトル使用権の譲渡の更なる詳細をいくつかの例示的な動作例に関連して以下に説明する。また、ユーザに発行された1つ以上のスペクトル証明書とのコンプライアンスを調整する面を以下に説明する。」

(2’)「【0037】
ユーザにスペクトルアクセスを許可する時、ユーザはスペクトル証明書を発行されてもよい。スペクトル証明書は、無線装置及び/又はユーザのシステムの他の要素が動作に基づくデータオブジェクトである。以下に更に詳細に説明するように、周波数、スペクトルマスク及び電力の限度等の通信関連情報は、そのようなデータオブジェクト内に含まれてもよい。このように、ユーザの通信機器はスペクトルアクセス許可に準拠するように自己調整しており、そのような動作はユーザから透過的である。例えば、機器が動作する周波数が変化する場合、スペクトル証明書は自動的に変化を起こすために使用されてもよい。
【0038】
更に詳細に説明するように、ブローカシステムは、地理、サービス規則及び/又は保有者のスペクトル、ユーザのアプリケーション、ユーザの無線機器、帯域幅(周波数及びスペクトルマスクの考慮を含む)、電力、干渉及び価格(又は非金銭的考慮)の一部又は全てを含む多数の要因に基づいてスペクトル使用可能性とスペクトルの必要性とをマッチングさせる。更なる基準がマッチング処理の一部として評価されてもよい。例えば保有者は、別の実体に対して許可されるスペクトルの使用に制約を課してもよい。そのような制約の1つは、非競合の制限であってもよい。例えばセルラサービスプロバイダは、交換エンジンが直接競合するサービス以外の任意のアプリケーションに対してセルラサービスプロバイダの使用可能なスペクトルへのアクセスを許可することを可能にしてもよい。」

(3’)「【0182】
一実施形態において、ライセンス保有者からの協力と組み合わされたWiFi又はWiMax技術は、スペクトルブローカシステム100及び/或いはシステム12、12’又は12”を使用する地域の無線ネットワークを経済的に配置するために使用される。一実施形態では、ライセンス保有者は、700MHzテレビライセンス又は政府実体(例えばNTIA)等の民間実体で有り得る。例示的な候補スペクトル範囲は政府が保有する300MHzから400MHzの範囲またはテレビ放送が主に使用する698MHzから794MHzの範囲を含む。
【0183】
一実施形態では、無線ネットワークのサービスプロバイダはライセンス保有者又はスペクトルの2次的な使用の保有者と契約を結ぶことになる。システムは、スペクトル証明書を提供して無線ネットワークの動作を許可する。システムセンサ(例えばスペクトルスニファ)又はシステム内で動作する無線機器は、規制機能の一部として使用されて所定の境界外の送信を最小に
し、1次ライセンス保有者による使用に伴うネットワーク動作の干渉を最小限にする。スペクトル保有者は、無線ネットワークのサービスプロバイダに発行された証明書の数及び/又は種類を徐々に削減することによってスペクトルの制御を円滑に取り戻す。
【0184】
NTIAがスペクトルを提供する例示的な実現例を説明する。NTIAにより保有されたスペクトルは一般に緊急時に必要なものだけである。2次的な使用に供されるスペクトルは、緊急事態の発生時にNTIAに返却されるか又は特定の地域では時間の経過と共に返却される。例えば、スペクトル証明書がスペクトルの全て又は一部の返却を開始するタイムフレームよりも短い持続時間の間発行される場合、サービスプロバイダは緊急事態の発生時にスペクトルを開放する。尚、殆ど起こらない緊急事態とは全国的なものである。従って、スペクトルの返却となる出来事は無線ネットワーク上の局所的な衝撃となる。スペクトルが返却される必要がある緊急事態発生時には、
サービスプロバイダは緊急事態が収まるまで制限された無線ネットワークのサービスを許可するバックアッププランを確立する。バックアッププラン
は、別のスペクトル保有者からの代替スペクトルのアクセスを含む。この代替スペクトルは、NTIAが提供するスペクトルよりもコスト高になる。別のバックアッププランは、900MHzISM帯域等の未認可帯域のスペクトルを使用することである。」

したがって、刊行物2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

ユーザにスペクトルアクセスを許可する方法であって、
NTIAにより保有されたスペクトルは一般に緊急時に必要なものだけであるので、2次的な使用に供されるスペクトルは、緊急事態の発生時にNTIAにスペクトルの全て又は一部が返却される
方法。

3.対比
本願の請求項1-15に係る発明は、その特許請求の範囲の各請求項に記載された事項によって特定されるとおりのものであり、その記載は上記「第2.特許請求の範囲の記載」のとおりである。
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と、引用発明とを対比する。
本願発明は「前記割当済RFスペクトル資源の使用が前記第2の通信ネットワークによって停止される時間を特定する情報を受信する」ことを、発明を特定する事項とするのに対して、引用発明1には、そのような時間を特定する情報を受信することは特定がなく、引用発明2にもそのような特定はない。
また、引用発明1または2において、そのような時間を特定する情報を受信することが、当業者であっても容易にできることとはいえない。
請求項12及び14においても、そのような時間を特定する情報を受信することを、発明を特定する事項とし、その他の請求項は、請求項1、12、または請求項14を引用するものである。
したがって、本願の請求項1-15に係る発明は、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1-15に係る発明は、引用発明1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-11-22 
出願番号 特願2013-519834(P2013-519834)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 倉本 敦史  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 加藤 恵一
山本 章裕
発明の名称 動的スペクトル仲裁のための方法およびシステム  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  

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