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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01J
管理番号 1321824
審判番号 不服2014-25381  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-11 
確定日 2016-11-14 
事件の表示 特願2012-528294号「顆粒を生成する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年3月17日国際公開、WO2011/029682、平成25年2月7日国内公表、特表2013-504410号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2010年8月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年9月10日、ヨーロッパ特許庁(EP))を国際出願日とする出願であって、平成26年4月16日付けの拒絶理由の通知に対して同年7月17日付けで手続補正書及び意見書が提出され、同年8月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月11日に拒絶査定不服審判が請求され、さらに、同年12月19日付けで審判請求書の手続補正書(方式)が提出されたものである。

2.本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年7月17日付けで提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載の事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
顆粒を調製する方法であって、
動かされ続けている粒子を備えた造粒領域を提供するステップと、
前記造粒領域内を動いている前記粒子の上に又は上方に適用される液状組成物を備えた第一の供給流を前記造粒領域内に提供するステップと、
前記造粒領域内を動いている前記粒子の層状成長の結果である顆粒を備えた生成物流を前記造粒領域から回収するステップとを備え、
造粒核を備えた第二の供給流が前記造粒領域内に供給され、前記造粒核が平均粒径の15%未満の粒径の標準偏差を有する粒径分布を有し、前記第二の供給流が前記生成物流の0.05質量%から50質量%を構成することを特徴とする方法。」

3.原査定の概要
平成26年8月6日付けの拒絶査定は、「この出願については、平成26年4月16日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、4によって、拒絶をすべきものです。」というものであり、平成26年4月16日付け拒絶理由通知書に記載した理由4の概要は、以下のとおりのものである。
「4.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・・・(省略)・・・
・理由4
・請求項1
・引用文献1、2

・・・(省略)・・・

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開平11-137988号公報
2.特開平07-222920号公報」

4.引用例に記載の事項
(4-1)特開平11-137988号公報(原査定における引用文献1であり、以下、「引用例1」という。)に記載の事項
(ア)「【請求項1】 多孔板を底部とする造粒部の底床と、流動用空気を造粒部の底床に供給する上部空気供給管と、下部空気供給管と、該下部空気供給管から分岐した空気を造粒部に噴出する空気供給管と、該空気出口の中央部に設けられた溶融原料噴射用ノズルとを有してなる造粒器を用い、予めほぼ球状の、平均粒子径が0.4mm?3.0mmの粒子径にされ供給された造粒部中の核に対して前記噴射用ノズルから溶融原料を噴射して造粒することを特徴とする改良された造粒方法。」

(イ)「【請求項7】 製品のうち製品粒子径の小さなものを造粒器にリサイクルし、製品の粒子径分布を鋭くすることを併せ持つことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の改良された造粒方法。」

(ウ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、尿素、硫黄等の溶融原料、および溶融尿素に固体状の硫酸アンモニウム等を含む尿素・硫酸アンモニウム等のスラリー液から造粒する、改良された省エネルギー型の造粒方法およびそれに用いる造粒器に関する。」

(エ)「【0003】このような従来の又は先行する造粒方法の中で代表的な方法を図18に従って説明する。図18において、造粒器1(後述のA型造粒器)には、スタート・アップ時、尿素の種晶が核としてライン供給口であるライン40からライン41を通り供給される。造粒器1では、90wt%以上、好ましくは95wt%以上の尿素を含む尿素水溶液がノズル6、7および8から30度?80度から選択される所定のスプレー角度で液滴径150?600μmで核に噴霧される。なお、尿素合成プラント等(図示しない)から供給された濃度90wt%以上、好ましくは濃度95wt%以上の溶融尿素17は、125?145℃に調整され、ライン31から混合槽21に供給されライン36、ポンプ22およびライン37を通り、ノズル6、7および8に供給される。
【0004】上記ライン41から供給された尿素の種晶は、該造粒器1内で尿素水溶液の噴霧を受けると同時に粒子が成長し、下部供給口であるライン24を通り下部空気供給管2から分流された複数の空気供給管3、4および5の噴流用気流によって、空間60に舞い上がり成長した尿素70として上部に舞い上がった状態10から下部の空間11に落下する。一方、上部供給口であるライン23からは、流動用空気が供給され、底部に対し垂直の方向に開口する孔を複数有する底床9上の成長した粒状の尿素70が空間11においてレベル12まで流動状態とされており、ノズル6、7および8上の空間11全体を埋めるように成長中の粒状尿素が流動している。このような動きが繰り返され、造粒を終えた粒状尿素は最後に排出口であるライン25から排出される。
【0005】造粒器1のライン25から排出された粒状尿素中の呼称製品サイズのものが占める割合(以下、造粒器出口の呼称製品サイズの割合と称す)は、後述の比較例1に示すように通常75?80%であり、フルイ13でふるい分けられ、所望する製品中の呼称製品サイズの割合の規格品および規格品外に分別される。規格品は、ライン26を通り、製品14として貯蔵される。一方、連続的に安定して製品の生産を続けるうえで、造粒器1中の核の数を一定に保つため、規格より粒子径の大きなものおよび規格品の一部は、ライン27を通り粉砕器15で粉砕された後、また、規格より小さなものはライン28を通り、ライン29からのものと合流してライン30からライン41を通り、造粒器1の入口へ造粒のための核としてリサイクルされる。」

(オ)「【0027】核の粒子径分布と該核の造粒器内の滞留時間分布および該核から得られた製品の粒子径分布の相関については、従来用いられている造粒器(後述のA型及びB型造粒器)の運転条件は、ある範囲でほぼ一定である。したがって、核の上記造粒器内の滞留時間分布は、ある範囲でほぼ一定である。例えば、呼称2mm?4mmの製品を得る場合、平均粒子径が0.4mm?1.0mm、好ましくは、粒子分布が0.4mm?1.0mm、さらに好ましくは、粒子分布が0.5mm?0.8mmである粒子径のそろったほぼ球状の核を噴流床と流動床を組み合わせた造粒器に供給すると、例えば比較例1に対する実施例1および実施例6の比較で示すように所望する造粒器出口の呼称製品サイズの割合が従来で得られる75?80%に対して85%?88%程度になり、かつ、異形物を含まない。なおさらに、所望する製品中の呼称製品サイズの割合を多くするには実施例5に示すように造粒器出口粒子をふるいわけ、製品とし、ふるい下のものを造粒器にリサイクルすれば良いことも分る。」

(カ)「【0036】本発明の造粒方法は、上記の造粒器を用いて、図1及び図2に示す製造工程に従って実施することができる。本発明方法によれば、規格外粒子の粉砕工程を省略できる。したがって図1及び2に示す製造工程は、図18に示した従来工程とは粉砕工程(図18の符号27?30及び15)を有しない点が異なる。本発明の製造方法において造粒器1の運転条件自体は、本発明で規定する点以外は前記の各特許公報に記載がある従来公知の方法を参照して実施できる。粒状尿素等が流動している層11の温度は、通常約100℃である。また一例として特公平4-63729号公報に開示されるように、A型造粒器において空気供給管の数は、底床の面積当り0.5?5本/m^(2)の密度で設置されてもよいし、また、6?10本/m^(2)の密度で設置することもできる。ノズル6、7および8の噴射角度は、30度?80度が選択され、空気供給管3、4および5にそれぞれ供給される空気供給量は、尿素生産量が1000トン/日基準で250Nm^(3)/h?10000Nm^(3)/hが選択される。このとき、空気供給管3、4および5に供給される空気の流速は、5m/s?50m/s、好ましくは、10m/s?20m/sが選択され、該空気の温度は、常温?120℃が選択される。なお、実施例でノズル1本当たり4400kg/hの溶融原料が供給された例が開示されているが、これに限定されるものではない。また、レベル12の高さは、静止状態において0.1m?1.0m、流動状態において0.3m?1.5mが選択され、空間60の高さは、底床から2m?10mが選択される。ここに、これらの運転条件は、前述のA型造粒器のみならず、B型、E型、F型およびS型造粒器に適用できることはいうまでもないことである。また、特公平4-63729号は尿素の造粒の説明であるが、粒状尿素以外のもの、例えば硫黄の製造に関しても、ほぼ上記条件下で運転することができる。
【0037】またC型造粒器の運転条件は、例えば、特公昭60-13735号公報に記載されるように、高圧空気を補助気体として用いた溶融原料液噴射ノズル600、700および800は20度より小さい角度のものが用いられ、ライン240からノズル600、700および800まわりにそれぞれ供給される補助流体は130Nm^(3)/h、補助流体の流速は60m/sec?300m/sec、好ましくは150m/sec?280m/sec、レベル12は0.3m?1.5m、空間60の高さは0.3m?1.5mとすることができる。また、該公報では、その1実施例として尿素生産量が800トン/日基準でノズル1本当たり325kg/hの溶融原料が供給され、流動床に供給される空気23の量として、52000Nm^(3)/hが供給された例が開示されている。ここに、これらの運転条件は、C型造粒器のみならず、D型、G型、H型およびSS型造粒器に適用できることはいうまでもないことである。図1は尿素又は硫黄粒状物の製造工程の一例であり、同図による造粒を尿素を例にとって説明すると、造粒器1中で使用される造粒用の核を製造するため、予め別途用意された99.5wt%以上の尿素を含む溶融尿素が、ライン27を通り、核製造器150へ供給される。核製造器150としては、シャワー型のスプレー方式、加振型スプレーのスプレー方式、バスケット型のスプレー方式、円板回転式方法等が上げられるが、シャワー型のスプレー方式、加振型スプレーのスプレー方式が通常選択される。
【0038】このシャワー型のスプレー方式を採用すると、平均粒子径が0.4mm?1.0mmおよび0.4mm?2.0mm、さらに、粒子径分布が0.4mm?1.0mmおよび0.4mm?2.0mmであるほぼ球状の核を供給することが可能となる。スプレーは、曲率のついた球面状のプレートに孔を多数開けたシャワー型のものである。この方式では、以下の条件を選定するのが好ましい。すなわち、曲率のついた球面状のプレートに孔を多数開けた孔径を0.3mm?0.4mm、該孔径を通過する流速を0.5m/s?2mm/sを選択すれば足りる。なお、冷却用の空気の流速は、0.2m/s?1.0m/sから選択され、通常0.4m/sが採用される。特に、造粒器と一体化される場合には、上記運転条件を守ることが好ましい。図1に示すように、核製造器150が造粒器1の外に設置される場合には、上記条件の外、近傍の条件で運転してもよい。
【0039】核製造器150は、他の方法として、加振型スプレーでスプレーする方法が用いられる。周知のように、曲率のついた球面状のプレートに孔を多数開けたスプレーを用い、その孔径と孔を通過する流速および振動数を調整することにより、スプレーされた溶融尿素が冷却固化され該冷却固化後の平均粒子径が、0.4mm?1.0mmおよび0.4mm?2.0mmのものを製造することができる。例えば、振動数を300HZ?1000HZ、孔径を0.3mm?0.4mm、孔径を通過する流速を0.5m/s?2m/sを選択すれば足りる。冷却用の空気の流速は、シャワー型スプレーおよび加振型スプレーのいずれにおいても、0.2m/s?1.0m/sから選択され、通常0.4m/sが採用される。造粒器と一体化される場合も同様である。
【0040】本発明において、基本的に造粒器中の核の数は、ライン25から排出される製品粒子の数に等しいため、例えば、粒子径が0.4mm?1.0mmである核から呼称2mm?4mmの分布を有する平均粒子径3mmの製品を製造する場合、造粒器へ供給される尿素17の約1wt%程度の量を供給すれば足りる。そのため、上記核製造器150は小さくてよい。なお、プリル方式を採用している尿素製造プラントが隣接している特殊な場合、極く少量ではあるが平均粒子径が0.4mm?1.0mmおよび0.4mm?2.0mmであるものが含まれているため、予め分別したものを用いてもよいのは、言うまでもないことである。
【0041】一方、尿素17は、90wt%以上、好ましくは95wt%以上の尿素を含む尿素水溶液である。該尿素17は、ライン31を通り混合槽21に供給される。また、混合槽21には、サイクロン16からライン35を通り供給される少量のダストと合流し、尿素17は均一に混合される。混合槽21の尿素は、ライン36、ポンプ22およびライン37を通り、ノズル6、7および8から液滴径が150μm?600μmで噴射され核に付着し、成長する。なお、C型造粒器を用いる場合は、ノズル600、700および800から液滴径が20μm?120μmで噴射され核に付着し、成長する。」

(キ)「【0052】実施例1
図1に示す工程で、生産量は、日産1000トンである尿素プラントに適用した。核製造器150にシャワー型スプレーを採用し、0.4mm?1.0mmの粒子径の尿素を製造し、造粒器lに供給した。ここで造粒器lとしては、A型を用いた。造粒器lのL/Mは4で、造粒器の底床の多孔板の開孔された孔を通過する空気の流れ方向は、垂直軸に対し30度であった。また、製品のリサイクルは行わなかった。運転条件は、以下を選択した。ノズル噴射角度は、35度、ノズルl本当たりの供給量は、125℃、95wt%の溶融尿素を空気供給管出口空気量1Nm^(3)当たり1.3kg、空気供給管出口の線速、15m/s、造粒物が流動している底床に供給される空気の線速は、1.5m/s、レベル12は1.0m、空間60の高さは6m、レベル12の層温度は100℃であった。異形物の有無の試験は以下の方法で行った。前述の図19の試験装置において、ベルト幅300mm,機長長さ1500mm,ベルト材質ポリウレタンのものを用いた。試験条件は、ベルトスピ-ド380cm/min、ベルト角度は10度?15度の間に次のようにして設定した。呼称2mm?4mmのほぼ球状のもの90重量部に対し、同呼称のもので1つ以上の頂点を有する多角形の粒又は粒同士が合体したもの10重量部を加え、標準サンプルとした。ついで、球状係数が90%となるように上記ベルト角度を決定後、本実施例のサンプル100gを用い試験を数回繰り返し、球状係数の平均値を求めた。次の基準で異形物発生を評価した。
○:球状係数90%以上 (異形物発生防止良好)
△:球状係数90%未満、80%以上 (異形物あり)
×:球状係数80%未満 (異形物多し)
なお、以下の実施例および比較例においては呼称が異なる以外は、標準サンプルの作成方法および試験方法は同様に行った。運転結果とこの時の製品硬度(強度)をISO8397-1988に従って測定し、それぞれの従来法製品との比較結果を表1に記載する。」

(ク)「【0057】実施例6
実施例1の核製造法をシャワー型スプレーから加振型スプレーに変えた以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に併記する。」

(ケ)「【0060】
【表1】




(コ)「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の尿素および硫黄に関する一実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明の尿素・硫酸アンモニウム肥料剤の一実施形態を示す説明図である。

・・・(省略)・・・

【符号の説明】
1 造粒器
2 下部空気供給管
3、4、5 空気供給管
6、7、8、 ノズル
9 底床
10 舞い上がった伏態
11 空間
12 レベル
13 フルイ
14 製品
15 粉砕器
16 サイクロン
17 尿素
18 硫安
19 ミル
20 ヒータ
21 混合槽
22 ポンプ
23?43、240 ライン
60 空間
70 成長した製品
100、101 仕切壁
150 核製造器
・・・(省略)・・・」

(サ)「 【図1】





(シ)「 【図2】





(ス)「 【図18】





(4-2)特開平07-222920号公報(原査定における引用文献2であり、以下、「引用例2」という。)に記載の事項
(セ)「【0005】以下、本発明を詳細に説明する。これにより、本発明の目的、構成および効果が明確になるであろう。
基材粒子
本発明において使用される基材粒子の材料は、該粒子の用途に応じて適宜選択されるものであり、特に限定されるものではないが、その例としては、ガラス、シリカ、アルミニウム、チタン、鉄、ニッケル、銅、銀、金、ステンレススチール、酸化鉄、フェライト、カーボンブラック、無機顔料等の無機材料や、エチレン、プロピレン等のオレフィン(共)重合体、スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物(共)重合体、酢酸ビニル等のビニルエステル(共)重合体、アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物(共)重合体、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、塩化ビニル、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化ビニル化合物(共)重合体、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、ポリアリレート、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリアミド(例えばナイロン-6、ナイロン-12等)、ポリイミド、ポリシロキサン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、セルロース、澱粉、アイオノマー、有機顔料等の有機材料等を挙げることができるが、特に、耐湿性、耐水性、耐溶剤性、耐酸素性、耐熱性等が必要とされる無機粒子、例えば硫化亜鉛、チタン酸バリウム等のEL用蛍光体粒子、有機ポリマーからなるコアの表面にニッケル、銅、銀、酸化錫等の導電層を固定した導電性粒子、有機ポリマーからなるコアの表面にマグネタイト、フェライト等の磁性層を固定した磁性粒子等が好ましい。これらの基材粒子には、例えばEL用の硫化亜鉛粒子に銅イオン、臭素イオン等をドーピングするように、予め予備処理しておくこともできる。基材粒子は、異なる材料からなる2種以上の粒子の混合物でも、あるいは2種以上の材料を混練・混合後、造粒し、分級したものでもよい。また、基材粒子の性状は、有機ポリマーからなる粒子およびコアが有機ポリマーからなる粒子以外は、一般に結晶質であるが、場合により無定形でもよい。さらに、基材粒子は、中空体あるいは多孔体であってもよい。基材粒子の平均粒径は、得られる被覆粒子の用途、所望の特性等に応じて適宜選定されるものであるが、例えばEL用蛍光体粒子の場合、銅イオンをドープした硫化亜鉛粒子では、通常、10?50μm、好ましくは20?40μmであり、チタン酸バリウム粒子では、通常、10nm?0.1μmであり、ニッケル導電層を有する導電性粒子の場合、通常、5nm?20μm、好ましくは0.1?10μmであり、診断薬用の磁性担体の場合、通常、0.1μm?10mm、好ましくは0.5μm?6mmであり、また付着細胞培養用の磁性担体の場合、通常、50?300μm、好ましくは100?250μmである。基材粒子の粒径は均一であるほど好ましいが、その粒度分布の標準偏差は、通常、平均粒径の±40%以下であり、好ましくは±20%以下、特に好ましくは±10%以下である。また、基材粒子の形状は球形状であることが好ましいが、楕円、六方晶形等の非球形形状をとることもできる。なお、基材粒子の形状が非球形である場合、該粒子の平均粒径は、球相当径によるものとする。前記基材粒子の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒、解砕・粉砕造粒、圧縮造粒、押出造粒、溶融造粒、混合造粒、噴霧冷却造粒、噴霧乾燥造粒、沈澱・析出造粒、凍結乾燥造粒、懸濁凝集造粒、滴下冷却造粒等の物理的造粒法、乳化重合、懸濁重合、沈澱重合等の化学的造粒法等を、基材粒子の材料に応じて適宜選択して造粒し、分級する。また、基材粒子が市販品として入手できる場合は、それを使用することもできる。」

(ソ)「【0019】基材粒子の被覆工程
本発明において、基材粒子を多成分型硬化性材料の硬化膜で被覆する被覆工程としては、例えば
○の1 基材粒子を気流中で流動させつつ、液状の多成分型硬化性材料を噴霧して、硬化させる流動噴霧法;
○の2 基材粒子を液状の多成分型硬化性材料中に分散し、このスラリー状混合物を噴霧して、硬化させるスラリー噴霧法;
○の3 基材粒子を多成分型硬化性材料の溶剤溶液中に分散し、このスラリー状混合物を攪拌して、硬化させるスラリー攪拌法;
○の4 基材粒子と液状、ペースト状、粉末状等の多成分型硬化性材料とを、実質上乾式で混練して、硬化させる乾式混練法;
○の5 基材粒子を液状の多成分型硬化性材料中に浸漬し、ろ過、遠心分離等により基材粒子を分離したのち、硬化させる浸漬分離法
等を採用することができる。但し、ここで言う「液状」とは、溶剤を使用する場合と使用しない場合との両者を含む。これらの工程においては多様な被覆操作が可能であって、基材粒子の被覆方法としての自由度が大きい。これは、硬化性材料として多成分型を使用することに基づくものである。以下、各被覆工程における主な操作手順を、硬化性樹脂成分と硬化剤成分とを用いる前記(イ)の材料の場合を例にとり、さらに具体的に説明する。即ち、○の1の方法では、(i) 基材粒子を流動させつつ、硬化性樹脂成分および硬化剤の液状混合物を噴霧することが好ましいが、場合により液状の硬化性樹脂成分と液状の硬化剤とを別々に噴霧してもよく、また(ii)基材粒子と液状の硬化性樹脂成分との混合物を流動させつつ、液状の硬化剤成分を噴霧してもよい。○の2の方法では、 (iii)基材粒子を硬化性樹脂成分および硬化剤の液状混合物中に分散したスラリー状混合物を噴霧することが好ましいが、場合により、(iv)基材粒子を液状の硬化性樹脂成分中に分散したスラリー状混合物と液状の硬化剤成分とを別々に噴霧してもよい。○の3の方法では、 (v)基材粒子を硬化性樹脂成分および硬化剤成分の溶剤溶液中に分散したスラリー状混合物を攪拌することが好ましいが、場合により、(vi)基材粒子を硬化性樹脂成分の溶剤溶液中に分散したスラリー状混合物を攪拌しつつ、硬化剤成分を添加しても、あるいは (vii)基材粒子を溶剤中に分散したスラリー状混合物を攪拌しつつ、硬化性樹脂成分と硬化剤成分とを予め混合してもしくは別々に添加してもよい。○の4の方法では、(viii)基材粒子、硬化性樹脂成分および硬化剤成分を同時に供給して混練することが好ましいが、場合により、(ix)基材粒子と硬化性樹脂成分とを混練しつつ、硬化剤成分を供給しても、あるいは (x)基材粒子のみを混合・混練しつつ、硬化性樹脂成分と硬化剤成分とを予め混合してもしくは別々に供給してもよい。○の5の方法では、(xi)基材粒子を硬化性樹脂成分および硬化剤の液状混合物中に浸漬し、基材粒子を分離したのち、噴霧乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等を経て硬化させることが好ましいが、場合により、 (xii)基材粒子を液状の硬化性樹脂成分中に浸漬し、基材粒子を分離したのち、該基材粒子を気流中で流動させつつ、液状の硬化剤成分を噴霧してもよく(前記○の1との中間法)、あるいは(xiii)基材粒子を液状の硬化性樹脂成分中に浸漬し、基材粒子を分離したのち、該基材粒子と硬化剤成分とを実質上乾式で混練してもよい(前記○の4との中間法)。本発明においては、基材粒子の被覆時に、該粒子の凝集を可及的に抑制し、かつ該粒子が元の形状、大きさを実質的に維持できるように、溶剤の種類、処理条件等を適切に選定する。また、多成分型硬化性材料を構成する全成分を予め混合しておく場合は、基材粒子の被覆前に硬化反応が実質的に進行しないように留意するのは言うまでもない。」(当審注:上記において、丸数字を「○の数」として表記した。)

5.引用例1に記載の発明
(A)上記(ア)ないし(ケ)、特に、上記(ア)の「多孔板を底部とする造粒部の底床と、流動用空気を造粒部の底床に供給する上部空気供給管と、下部空気供給管と、該下部空気供給管から分岐した空気を造粒部に噴出する空気供給管と、該空気出口の中央部に設けられた溶融原料噴射用ノズルとを有してなる造粒器を用い、予めほぼ球状の、平均粒子径が0.4mm?3.0mmの粒子径にされ供給された造粒部中の核に対して前記噴射用ノズルから溶融原料を噴射して造粒する」、同(エ)の「このような従来の又は先行する造粒方法の中で代表的な方法を図18に従って説明する。図18において、造粒器1(後述のA型造粒器)には、スタート・アップ時、尿素の種晶が核としてライン供給口であるライン40からライン41を通り供給される。・・・上記ライン41から供給された尿素の種晶は、該造粒器1内で尿素水溶液の噴霧を受けると同時に粒子が成長し、下部供給口であるライン24を通り下部空気供給管2から分流された複数の空気供給管3、4および5の噴流用気流によって、空間60に舞い上がり成長した尿素70として上部に舞い上がった状態10から下部の空間11に落下する。一方、上部供給口であるライン23からは、流動用空気が供給され、底部に対し垂直の方向に開口する孔を複数有する底床9上の成長した粒状の尿素70が空間11においてレベル12まで流動状態とされており、ノズル6、7および8上の空間11全体を埋めるように成長中の粒状尿素が流動している。このような動きが繰り返され、造粒を終えた粒状尿素は最後に排出口であるライン25から排出される。」(【0003】および【0004】)、同(オ)の「例えば、呼称2mm?4mmの製品を得る場合、平均粒子径が0.4mm?1.0mm、好ましくは、粒子分布が0.4mm?1.0mm、さらに好ましくは、粒子分布が0.5mm?0.8mmである粒子径のそろったほぼ球状の核を噴流床と流動床を組み合わせた造粒器に供給すると、例えば比較例1に対する実施例1および実施例6の比較で示すように所望する造粒器出口の呼称製品サイズの割合が従来で得られる75?80%に対して85%?88%程度になり、かつ、異形物を含まない。」、同(カ)の「本発明の造粒方法は、上記の造粒器を用いて、図1及び図2に示す製造工程に従って実施することができる。本発明方法によれば、規格外粒子の粉砕工程を省略できる。したがって図1及び2に示す製造工程は、図18に示した従来工程とは粉砕工程(図18の符号27?30及び15)を有しない点が異なる。・・・粒状尿素等が流動している層11の温度は、通常約100℃である。」(【0036】)および同(カ)の「一方、尿素17は、90wt%以上、好ましくは95wt%以上の尿素を含む尿素水溶液である。」(【0041】)からして、引用例1(明細書)には、「溶融原料(尿素水溶液)を造粒器(造粒部)中の核(尿素の種晶)および粒状尿素(成長中の粒状尿素)に対して噴射して製品粒子(造粒を終えた粒状尿素)を造粒する」、「ほぼ球状の核(尿素の種晶)が0.5?0.8mmである粒子径のそろった粒子分布を有する」および「造粒器(造粒部)中の核(尿素の種晶)および粒状尿素(成長中の粒状尿素)が流動している(動かされ続けている)」ことが記載されているということができる。

(B)上記(エ)の【0005】、同(カ)の【0037】及び【0041】、同(コ)ないし(ス)からして、引用例1には、「混合槽21を介して尿素17をノズル6、7および8から造粒器1中に供給する」、「核製造器150で製造された核を造粒器1中に供給する」および「造粒器1(上流側)とフルイ13(下流側)とがライン25で接続されている」ことが図示されているということができる。

上記(ア)および(イ)、上記検討事項の(A)および(B)からして、引用例1には、
「多孔板を底部とする造粒部の底床と、流動用空気を造粒部の底床に供給する上部空気供給管と、下部空気供給管と、該下部空気供給管から分岐した空気を造粒部に噴出する空気供給管と、該空気出口の中央部に設けられた溶融原料(尿素水溶液)噴射用ノズルとを有してなる造粒器(造粒部)を用い、予めほぼ球状の、0.5?0.8mmである粒子径のそろった粒子分布を有する核(尿素の種晶)にされ供給された造粒部中の流動している(動かされ続けている)核(尿素の種晶)および粒状尿素(成長中の粒状尿素)に対して噴射用ノズルから溶融原料(尿素水溶液)を噴射して製品粒子(造粒を終えた粒状尿素)を造粒する、改良された造粒方法であって、排出された製品粒子(造粒を終えた粒状尿素)のうち製品粒子径の小さなものを造粒器(造粒部)にリサイクルし、製品粒子(造粒を終えた粒状尿素)の粒子径分布を鋭くする、改良された造粒方法。」(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されているものと認める。

6.対比・判断
本願発明と引用例1記載の発明とを対比する。
○引用例1記載の発明の「流動している(動かされ続けている)核(尿素の種晶)および粒状尿素(成長中の粒状尿素)」、「排出」および「改良された造粒方法」は、本願発明の「動かされ続けている粒子」、「回収」および「顆粒を調整する方法」それぞれに相当する。

○引用例1記載の発明の「造粒部」および「造粒器(造粒部)」は、本願発明の「造粒領域」に相当する。

○引用例1記載の発明の「製品粒子(造粒を終えた粒状尿素)」は、核(尿素の種晶)および粒状尿素(成長中の粒状尿素)が成長することで造粒を終えた粒状尿素(生成された顆粒)であることからして、本願発明の「粒子の」「成長の結果である顆粒」および「顆粒」に、また、造粒部から排出される生成物(流れ)であることからして、同「生成物流」に相当する。

○引用例1記載の発明の「溶融原料(尿素水溶液)」は、造粒部中の流動している(動かされ続けている)核(尿素の種晶)および粒状尿素(成長中の粒状尿素)に対して噴射される(供給される)もの(流れ)であり、核(尿素の種晶)および粒状尿素(成長中の粒状尿素)の表面(上)に溶融原料(尿素水溶液)の尿素を適用することで粒状尿素として成長させるものであることからして、本願発明の「造粒領域内を動いている粒子の上に又は上方に適用される液状組成物を備えた第一の供給流」に相当する。

○引用例1記載の発明の「核(尿素の種晶)」は、本願発明の「造粒核」に、また、造粒器(造粒部)に供給されるもの(流れ)であることからして、同「造粒核を備えた第二の供給流」に相当する。

○引用例1記載の発明の「多孔板を底部とする造粒部の底床と、流動用空気を造粒部の底床に供給する上部空気供給管と、下部空気供給管と、該下部空気供給管から分岐した空気を造粒部に噴出する空気供給管と、該空気出口の中央部に設けられた溶融原料(尿素水溶液)噴射用ノズルとを有してなる造粒器(造粒部)を用い、」「供給された造粒部中の流動している(動かされ続けている)核(尿素の種晶)および粒状尿素(成長中の粒状尿素)に対して噴射用ノズルから溶融原料(尿素水溶液)を噴射して製品粒子(造粒を終えた粒状尿素)を造粒する、改良された造粒方法であって、排出された製品粒子(造粒を終えた粒状尿素)のうち製品粒子径の小さなものを造粒器(造粒部)にリサイクルし、製品粒子(造粒を終えた粒状尿素)の粒子径分布を鋭くする」(以下、「※」と表記する。)は、核(尿素の種晶)および粒状尿素(成長中の粒状尿素)が流動している(動かされ続けている)造粒部を提供する段階(ステップ)と、流動している(動かされ続けている)核(尿素の種晶)および粒状尿素(成長中の粒状尿素)に対して溶融原料(尿素水溶液)を噴射(提供)する段階(ステップ)と、製品粒子(造粒を終えた粒状尿素)が造粒部から排出される段階(ステップ)を有するものであるといえることからして、引用例1記載の発明の上記※と、本願発明の「顆粒を調製する方法であって、動かされ続けている粒子を備えた造粒領域を提供するステップと、造粒領域内を動いている粒子の上に又は上方に適用される液状組成物を備えた第一の供給流を造粒領域内に提供するステップと、造粒領域内を動いている粒子の層状成長の結果である顆粒を備えた生成物流を造粒領域から回収するステップとを備え、
造粒核を備えた第二の供給流が造粒領域内に供給され、」「前記第二の供給流が前記生成物流の0.05質量%から50質量%を構成する」とは、「顆粒を調製する方法であって、動かされ続けている粒子を備えた造粒領域を提供するステップと、前記造粒領域内を動いている前記粒子の上に又は上方に適用される液状組成物を備えた第一の供給流を前記造粒領域内に提供するステップと、前記造粒領域内を動いている前記粒子の成長の結果である顆粒を備えた生成物流を前記造粒領域から回収するステップとを備え、造粒核を備えた第二の供給流が前記造粒領域内に供給される」という点で共通する。

上記より、本願発明と引用例1記載の発明とは、
「顆粒を調製する方法であって、動かされ続けている粒子を備えた造粒領域を提供するステップと、前記造粒領域内を動いている前記粒子の上に又は上方に適用される液状組成物を備えた第一の供給流を前記造粒領域内に提供するステップと、前記造粒領域内を動いている前記粒子の成長の結果である顆粒を備えた生成物流を前記造粒領域から回収するステップとを備え、造粒核を備えた第二の供給流が前記造粒領域内に供給される、方法。」という点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
本願発明では、「層状」成長の結果の顆粒であるのに対して、引用例1記載の発明では、核(尿素の種晶)および粒状尿素(成長中の粒状尿素)に対して噴射用ノズルから溶融原料(尿素水溶液)を噴射して造粒された製品粒子(造粒を終えた粒状尿素)(顆粒)である、つまり、製品粒子(顆粒)は、成長の結果として得られたものであるものの、上記「 」内の事項の特定がない点。

<相違点2>
本願発明では、「造粒核が平均粒径の15%未満の粒径の標準偏差を有する粒径分布を有し」であるのに対して、引用例1記載の発明では、「予めほぼ球状の、0.5?0.8mmである粒子径のそろった粒子分布を有する核(尿素の種晶)(造粒核)にされ」である点。

<相違点3>
本願発明では、「第二の供給流が生成物流の0.05質量%から50質量%を構成する」のに対して、引用例1記載の発明では、上記「 」内の事項の特定がない点。

以下、上記各相違点について検討する。
<相違点1>について
引用例記載の発明は、核(尿素の種晶)(造粒核)および粒状尿素(成長中の粒状尿素)に対して噴射用ノズルから溶融原料(尿素水溶液)を噴射し、核(尿素の種晶)(造粒核)および粒状尿素(成長中の粒状尿素)の表面(上)に溶融原料(尿素水溶液)の尿素を適用すること、更にいうと、これを順次継続させて尿素を層状に成長させることで製品粒子(顆粒)を生成するものである、つまり、製品粒子(顆粒)は、「層状」成長の結果の顆粒(被覆粒子)であるとみるのが妥当である。
したがって、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。

<相違点2>について
引用例1記載の発明は、核(尿素の種晶)(造粒核)および粒状尿素(成長中の粒状尿素)に対して噴射用ノズルから溶融原料(尿素水溶液)を噴射して製品粒子(造粒を終えた粒状尿素)(顆粒)(被覆粒子)を造粒するものであると共に、上記(オ)の「粒子径のそろったほぼ球状の核を噴流床と流動床を組み合わせた造粒器に供給すると、例えば比較例1に対する実施例1および実施例6の比較で示すように所望する造粒器出口の呼称製品サイズの割合が従来で得られる75?80%に対して85%?88%程度になり、かつ、異形物を含まない。」からして、製品粒子(造粒を終えた粒状尿素)(顆粒)(被覆粒子)のサイズの割合を従来よりも高くする(粒子径をそろえる)と共に異形物が含まれないようにする前提として、核(尿素の種晶)(造粒核)の粒子径をそろえるものであるということができる。
そして、引用例2には、上記(セ)および(ソ)、特に、上記(セ)の「基材粒子の粒径は均一であるほど好ましいが、その粒度分布の標準偏差は、通常、平均粒径の±40%以下であり、好ましくは±20%以下、特に好ましくは±10%以下である。」および同(ソ)の「基材粒子の被覆時に、該粒子の凝集を可及的に抑制し、かつ該粒子が元の形状、大きさを実質的に維持できるように、溶剤の種類、処理条件等を適切に選定する。」からして、被覆粒子と、粒径が均一な基材粒子(造粒核)それぞれの粒径を実質的に同じにすること、更にいうと、被覆粒子の粒径をそろえる前提として、基材粒子(造粒核)の粒径をそろえること(事項)が記載されているということができる。
上記からして、引用例1記載の発明と引用例2記載の事項とは、被覆粒子の粒径をそろえる前提として、造粒核の粒径をそろえるという点で一致していることからして、引用例1記載の発明の「予めほぼ球状の、0.5?0.8mmである粒子径のそろった粒子分布を有する核(尿素の種晶)(造粒核)にされ」について、上記の点で一致する引用例2記載の事項を適用することで、「核(尿素の種晶)(造粒核)が平均粒径の±40%以下、好ましくは±20%以下、特に好ましくは±10%以下の粒径の標準偏差を有し」にすることは、当業者であれば容易に想起し得ることである。
なお、上記(ケ)の表1について、実施例6の「核の平均粒子径(mm)」および「核の粒子径(mm)」は、それぞれ「0.65」および「0.5?0.8」であり、これについて、本願明細書の【0022】、【0026】および【0067】を参酌して、同様に「σ/μ(標準偏差)」を計算すると13%となり、本願発明の「15%未満」を満たしている。
したがって、上記相違点2に係る発明特定事項を構成することは、引用例1記載の発明および引用例2記載の事項に基いて当業者であれば容易に想到できることである。

<相違点3>について
引用例1には、上記(カ)の「本発明において、基本的に造粒器中の核の数は、ライン25から排出される製品粒子の数に等しいため、例えば、粒子径が0.4mm?1.0mmである核から呼称2mm?4mmの分布を有する平均粒子径3mmの製品を製造する場合、造粒器へ供給される尿素17の約1wt%程度の量を供給すれば足りる。」(【0040】)および同(カ)の「一方、尿素17は、90wt%以上、好ましくは95wt%以上の尿素を含む尿素水溶液である。該尿素17は、ライン31を通り混合槽21に供給される。また、混合槽21には、サイクロン16からライン35を通り供給される少量のダストと合流し、尿素17は均一に混合される。混合槽21の尿素は、ライン36、ポンプ22およびライン37を通り、ノズル6、7および8から液滴径が150μm?600μmで噴射され核に付着し、成長する。なお、C型造粒器を用いる場合は、ノズル600、700および800から液滴径が20μm?120μmで噴射され核に付着し、成長する。」(【0041】)からして、例えば、95wt%の尿素を含む尿素水溶液(第一の供給流)を、尿素水溶液の約1wt%の核(第二の供給流)に噴射(供給)することが記載されており、これは、噴射された尿素水溶液の尿素のすべてが製品粒子(生成物流)の造粒に賄われるのであれば、製品粒子(生成物流)「95wt(尿素水溶液の尿素)+約1wt(核)(第二の供給流)」に対する第二の供給流「約1wt(核)」の割合は約1%となり、また、尿素水溶液の尿素の半分(1/2)が造粒に賄われるのであれば、約2%となることを示すものであり、本願発明の「第二の供給流が生成物流の0.05質量%から50質量%を構成する」に該当する。
したがって、上記相違点3に係る発明特定事項を構成することは、引用例1記載の発明および引用例1記載の事項に基いて当業者であれば容易に想到できることである。

そして、本願発明の「狭い粒径分布を有する顆粒を調整する」(例えば、本願明細書の【0015】参照)等の作用効果は、上記各相違点についての検討からして、引用例1記載の発明および引用例1、2記載の事項に基いて当業者であれば容易に予測し得るものである。
よって、本願発明は、引用例1記載の発明および引用例1、2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、審判請求書(手続補正書)において、
『本願発明1(本願発明)の被覆は、「層状成長」によるものであるのに対して、引用文献2に記載の発明の被覆は、化学反応によるものであって、本願発明1と引用文献2に記載の発明の原理とは、異なっている。
また、本願発明1の造粒の目的は、粒子のサイズを大きくして成長させていくことであり、引用文献2に記載の発明の目的は、被覆の厚さを可能な限り薄くするものであり、本願発明1と引用文献2に記載の発明の目的とは、全く逆である。
以上の通り、本願発明1と引用文献1に記載の発明との相違点について、引用文献2に記載の発明によっても全く補われるものでなく、本願発明1が、それらの引用文献に記載の発明及び引用発明の組み合わせに対して進歩性を有することは明らかである。」旨の主張をしており、これについて検討する。
引用文献2(引用例2)は、造粒核の粒径がそろっていることを立証する方途として何があるかを示すために引用したものであって、この点に着目して被覆前の造粒核の粒径の均一さをみるとき、どのような原理の被覆が為されるか、また、被覆の厚さをどれくらいにするかについて思議することに格別の意義があるとはいえない。
そうすると、請求人の上記主張は、妥当性を欠くものであり、これを採用することはできない。

7.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明および引用例1、2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項2ないし12に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-15 
結審通知日 2016-06-20 
審決日 2016-07-01 
出願番号 特願2012-528294(P2012-528294)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増田 健司  
特許庁審判長 國島 明弘
特許庁審判官 日比野 隆治
豊永 茂弘
発明の名称 顆粒を生成する方法  
代理人 渡邊 隆  
代理人 志賀 正武  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  

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