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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01N |
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管理番号 | 1321843 |
審判番号 | 不服2015-21232 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-11-30 |
確定日 | 2016-12-06 |
事件の表示 | 特願2013-502711「検体センサ光学式読み取り装置のためのアライメント位置合わせ機構」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月 6日国際公開、WO2011/123409、平成25年 7月11日国内公表、特表2013-528784、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2011年(平成23年)3月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年4月2日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年9月18日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がされ、同査定の謄本は、同月29日に請求人に送達された。 これに対し、同年11月30日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において平成28年7月6日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)が通知され、同年10月11日に意見書及び手続補正書の提出がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1及び2に係る発明は、平成28年10月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】 光学的干渉によって提供される反射スペクトルが変化する光学式検体センサを読み取るための光学式読み取り装置であって、 ハウジングを備え、 前記ハウジングは、その内部に、 第1のスペクトル範囲によって特徴付けられる第1光源、 前記第1のスペクトル範囲と異なる第2のスペクトル範囲によって特徴付けられる第2光源、 前記第1光源と前記第2光源との間に配置され、少なくとも第1及び第2のスペクトル範囲を検出する単一の広帯域検出器、及び 第1のスペクトル範囲で検出された光の量を示す前記広帯域検出器からの信号と、第2のスペクトル範囲で検出された光の量を示す前記広帯域検出器からの信号とを比較する、プログラミング可能な論理デバイスを含み、 前記ハウジングが、位置合わせ機構を含み、 前記位置合わせ機構は、前記光学式読み取り装置を前記光学式検体センサと位置合わせするように構成され、 前記第1のスペクトル範囲の中心点は、目的とする検体がないときでは、前記光学式検体センサの反射スペクトルのピーク最大値の40nm以内であり、 前記第2のスペクトル範囲の中心点は、目的とする検体がないときでは、前記光学式検体センサの反射スペクトルの最小値の底の40nm以内である、光学式読み取り装置。」 第3 原査定の理由について 1 原査定の理由の概要 原査定の理由の概要は、次のとおりである。 本願の請求項1及び2に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術(引用文献2?12を参照。)に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1?12は、以下のとおり。 1.特表2010-502375号公報 2.特開2008-216193号公報 3.特開2006-145529号公報 4.特開平9-127257号公報 5.特表2008-510961号公報 6.特開2002-210031号公報 7.特開平1-134250号公報 8.特開2009-109384号公報 9.特開2002-228658号公報 10.特開昭63-45539号公報 11.特開2008-209350号公報 12.特開2006-47236号公報 2 原査定の理由の判断 (1)引用文献1の記載事項 引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は、当審において付加したものである。)。 ア 「【請求項1】 気体注入口、気体排出口、及び薄膜多層インジケータを含むエンクロージャを含む保護装置であって、 A)前記エンクロージャは、前記注入口から前記排出口へと流れる目的の蒸気を吸着することができる、吸着媒体を含み、 B)前記薄膜多層インジケータは、 i) ii)とiii)との間に位置する、光学的厚さが、前記蒸気の存在で変化する多孔質検出層、 ii)前記エンクロージャの外側から見える半反射層及び、 iii)前記蒸気に対して透過性の反射層、を含み、かつ C)前記反射層は前記媒体に十分に近く、その結果、前記媒体の少なくとも一部と前記蒸気の間の適用される蒸気濃度が平衡になると、前記蒸気は、前記媒体から前記反射層を通過して前記検出層に入り、前記検出層の光学的厚さを十分に変えて、前記半反射層を通じて見たときの前記インジケータの外観に視覚的に認識可能な変化を生じることができる、保護装置。 【請求項2】 前記蒸気が存在する場合、前記インジケータ内で干渉色が作られる、又は破壊される、請求項1に記載の装置。」 イ 「【0029】 図4は、透明基材43及び吸着媒体48に隣接する薄膜多層インジケータ42の概略図を示す。インジケータ42は、半反射層44、多孔質検出層45、及び蒸気透過反射層46を含む。媒体48の少なくとも一部と目的の蒸気の間の、適用される蒸気の濃度における平衡化の際、又はその直後に、蒸気は孔47を通じて検出層45に入ることができる。検出層45は好適な材料から構成され、又は好適な構造で構成され、目的の蒸気への暴露の際に、層の光学的厚さは変化する(即ち、増える)。生じる光学的厚さの変化は、インジケータ42の視覚的に知覚可能な外観の変化をもたらす。この変化は、外側から、つまり基材43を通じてインジケータ42を見ることによって観察できる。光線49aによって表される周囲光の一部は、基材43を通過し、光線49bとして半反射層44から反射し、基材43を通じて戻り、次に基材43の外側に出る。周囲光線49aの別の部分は、基材43、半反射層44、及び検出層45を通過し、反射層46から光線49cとして反射する。光線49cは、検出層45、半反射層44、及び基材43を通過して戻り、次に基材43の外を通過する。検出層45に適切な初期又は変化した厚さが選択され、層44及び46が十分に平坦な場合、次に、インジケータ42、並びに光49b及び49cのような光線内で干渉色が作られ、又は破壊され、インジケータ42の外観の視覚的に認識可能な変化が、半反射層44を通じて見たときに明らかになる。したがって、電力付き光源、光学検出器、又はスペクトル分析(当審注:スペクトル分析器の誤記であることは明らか)などの外部機器は、インジケータ42の状態を評価するために必要ではないが、このような外部機器は、所望に応じて使用されてもよい。」 ウ 上記イに記載の「外部機器」は、何らかのハウジングに備えられていることは、技術的に自明である。 エ 上記イに記載の「スペクトル分析」器が、プログラミング可能な論理デバイスを備えていることは、技術的に自明である。 (2)引用文献1に記載された発明の認定 上記(1)ア?エの記載事項を総合すると、 引用文献1には、 「気体注入口、気体排出口、及び薄膜多層インジケータを含むエンクロージャを含む保護装置であって、 A)前記エンクロージャは、前記注入口から前記排出口へと流れる目的の蒸気を吸着することができる、吸着媒体を含み、 B)前記薄膜多層インジケータは、 i) ii)とiii)との間に位置する、光学的厚さが、前記蒸気の存在で変化する多孔質検出層、 ii)前記エンクロージャの外側から見える半反射層及び、 iii)前記蒸気に対して透過性の反射層、を含み、かつ C)前記反射層は前記媒体に十分に近く、その結果、前記媒体の少なくとも一部と前記蒸気の間の適用される蒸気濃度が平衡になると、前記蒸気は、前記媒体から前記反射層を通過して前記検出層に入り、前記検出層の光学的厚さを十分に変えて、前記半反射層を通じて見たときの前記インジケータの外観に視覚的に認識可能な変化を生じることができ、 前記蒸気が存在する場合、前記インジケータ内で干渉色が作られ、又は破壊され、 電力付き光源、光学検出器、スペクトル分析器などの外部機器は、前記インジケータの状態を評価するために使用され、 前記外部機器は、ハウジングに備えられ、 前記スペクトル分析器は、プログラミング可能な論理デバイスを備えている、保護装置。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (3)本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「薄膜多層インジケータ」は、「前記インジケータ内で干渉色が作られ、又は破壊され」た状態を、「電力付き光源、光学検出器、スペクトル分析器などの外部機器」によって「評価」されるものであるから、本願発明の「光学的干渉によって提供される反射スペクトルが変化する光学式検体センサ」に相当する。 イ 上記アを踏まえると、引用発明の「電力付き光源、光学検出器、スペクトル分析器などの外部機器」は、「前記インジケータの状態を評価する」もの、すなわち「前記インジケータの状態を」読み取るものであるから、本願発明の「光学式検体センサを読み取るための光学式読み取り装置」に相当する。 ウ 引用発明の「電力付き光源」と、本願発明の「第1のスペクトル範囲によって特徴付けられる第1光源、前記第1のスペクトル範囲と異なる第2のスペクトル範囲によって特徴付けられる第2光源」とは、「スペクトル範囲によって特徴付けられる光源」である点で共通する。 エ 引用発明の「光学検出器」と、本願発明の「前記第1光源と前記第2光源との間に配置され、少なくとも第1及び第2のスペクトル範囲を検出する単一の広帯域検出器」とは、「少なくとも前記スペクトル範囲を検出する単一の検出器」である点で共通する。 オ 引用発明の「プログラミング可能な論理デバイスを備えている」「スペクトル分析器」と、本願発明の「第1のスペクトル範囲で検出された光の量を示す前記広帯域検出器からの信号と、第2のスペクトル範囲で検出された光の量を示す前記広帯域検出器からの信号とを比較する、プログラミング可能な論理デバイス」とは、「前記スペクトル範囲で検出された光の量を示す前記検出器からの信号を処理する、プログラミング可能な論理デバイス」である点で共通する。 (4)一致点及び相違点 よって、本願発明と引用発明とは、 「光学的干渉によって提供される反射スペクトルが変化する光学式検体センサを読み取るための光学式読み取り装置であって、 ハウジングを備え、 前記ハウジングは、その内部に、 スペクトル範囲によって特徴付けられる光源、 少なくとも前記スペクトル範囲を検出する単一の検出器、及び 前記スペクトル範囲で検出された光の量を示す前記検出器からの信号を処理する、プログラミング可能な論理デバイスを含む、 光学式読み取り装置。」 の発明である点で一致し、次の2点で相違する。 (相違点1) 光学的干渉によって提供される反射スペクトルが変化する光学式検体センサを読み取るための光学式読み取り装置におけるハウジングの内部に含まれる光源、検出器及び論理デバイスについて、 本願発明は、 「第1のスペクトル範囲によって特徴付けられる第1光源、 前記第1のスペクトル範囲と異なる第2のスペクトル範囲によって特徴付けられる第2光源、 前記第1光源と前記第2光源との間に配置され、少なくとも第1及び第2のスペクトル範囲を検出する単一の広帯域検出器、及び 第1のスペクトル範囲で検出された光の量を示す前記広帯域検出器からの信号と、第2のスペクトル範囲で検出された光の量を示す前記広帯域検出器からの信号とを比較する、プログラミング可能な論理デバイス」を備え、 「前記第1のスペクトル範囲の中心点は、目的とする検体がないときでは、前記光学式検体センサの反射スペクトルのピーク最大値の40nm以内であり、 前記第2のスペクトル範囲の中心点は、目的とする検体がないときでは、前記光学式検体センサの反射スペクトルの最小値の底の40nm以内である」のに対し、 引用発明は、このように特定されていない点。 (相違点2) 光学的干渉によって提供される反射スペクトルが変化する光学式検体センサを読み取るための光学式読み取り装置におけるハウジングについて、 本願発明は、 「前記ハウジングが、位置合わせ機構を含み、 前記位置合わせ機構は、前記光学式読み取り装置を前記光学式検体センサと位置合わせするように構成され」るのに対し、 引用発明は、このような位置合わせ機構を備えていない点。 (5)当審の判断 相違点1について検討する。 上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項、特に、「目的とする検体がないとき」の光学式検体センサの反射スペクトルを基準として、第1及び第2のスペクトル範囲の中心点を決定する事項に対応する「前記第1のスペクトル範囲の中心点は、目的とする検体がないときでは、前記光学式検体センサの反射スペクトルのピーク最大値の40nm以内であり、 前記第2のスペクトル範囲の中心点は、目的とする検体がないときでは、前記光学式検体センサの反射スペクトルの最小値の底の40nm以内である」点については、原査定の理由で引用した引用文献2?12のいずれにも開示も示唆もされていない。 よって、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことではない。 (6)小括 上記(5)で検討したとおりであるから、上記相違点2を判断するまでもなく、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。 本願の請求項2に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。 よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由の概要 本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 発明の詳細な説明には、「光学式検体センサ」は、光学的干渉によって提供される反射スペクトルが変化をするもののみが開示されているだけであり、この具体例から、請求項1を、センサ原理を特定していない「光学式検体センサ」にまで、技術常識に照らしても拡張ないし一般化できるとはいえない。 また、請求項1の、第1のスペクトル範囲と同じ「第2のスペクトル範囲によって特徴付けられる第2光源」、広帯域で何を検出するかを問わない「前記第1光源と前記第2光源との間に配置された単一の広帯域検出器」、及び何を処理するかを問わない「プログラミング可能な論理デバイス」は、いずれも発明の詳細な説明に記載されたものでない。 よって、請求項1に係る発明、及び請求項1を引用する請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 2 当審拒絶理由の判断 (1)サポート要件についての判断 本願の請求項1及び2に係る発明は、平成28年10月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものとなったことで、当審拒絶理由は解消された。 (2)小括 上記で検討したとおり、本願の請求項1及び2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものであるとはいえないため、本願の請求項1及び2の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。 よって、当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、原査定及び当審拒絶理由通知の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-11-24 |
出願番号 | 特願2013-502711(P2013-502711) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01N)
P 1 8・ 537- WY (G01N) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 横井 亜矢子 |
特許庁審判長 |
福島 浩司 |
特許庁審判官 |
藤田 年彦 ▲高▼見 重雄 |
発明の名称 | 検体センサ光学式読み取り装置のためのアライメント位置合わせ機構 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 池田 正人 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 城戸 博兒 |
代理人 | 柳 康樹 |