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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G01M
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 G01M
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01M
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01M
管理番号 1321905
審判番号 不服2015-15628  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-24 
確定日 2016-12-13 
事件の表示 特願2011- 93844「ハイブリッド車輌用パワートレインの調査システム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月10日出願公開、特開2011-227082、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年4月20日(パリ条約による優先権主張:2010年4月21日(FR)フランス)を出願日とする特許出願であって、平成26年10月28日付けで拒絶理由が通知され、平成27年1月7日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月12日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、同査定の謄本は同月23日に請求人に送達された。
これに対し、同年8月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、それと同時に手続補正書が提出された。
その後、当審において平成28年6月15日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という)が通知され、同年8月29日に意見書及び手続補正書が提出され、応対(同年10月7日格納の応対記録を参照。)がなされ、当審において同年10月11日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という)が通知され、同月19日に手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成28年10月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうちの本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。

「熱機関と駆動用電気モータとを備えたハイブリッド車輌用のパワートレインの調査システムであって、
縮小スケールの前記駆動用電気モータを模擬する第1の電気モータ(M1)と、
リアルタイムのシミュレーション手段と、
前記シミュレーション手段から得られた前記熱機関のトルク及び車輛の抵抗トルクの寄与を、前記第1のモータ(M1)の回転軸に機械的に再現するように、前記第1の電気モータ(M1)の回転軸に付加される実際の物理的なトルクに変換する手段(PTRI,M2)と、を有し、
前記リアルタイムのシミュレーション手段はコンピュータを有し、
前記コンピュータは、
リアルタイムオペレーティングシステムと、
前記熱機関の作動と、前記熱機関の制御手段と、車輌のトランスミッションと、車輌の動特性と、をリアルタイムに模擬するソフトウェアモジュール(S1?S4)と、を有し、
前記実際の物理的なトルクに変換する手段(PTRI,M2)は、前記熱機関のトルク及び車輛の抵抗トルクの寄与を、前記縮小スケールでスケーリングするソフトウェア手段を有することを特徴とする調査システム。」


第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。

「<理由B>特許法第29条第1項第3号
・請求項1、2、4、5
・引用文献等1

<理由C>特許法第29条第2項
・請求項1-10
・引用文献等1、2

引用文献等一覧
1.特開2000-035380号公報(全文、全図)
2.特開2002-022618号公報(特に、段落【0001】、【0024】-【0032】、第1、2図参照)」

2 原査定の理由の判断
(1)刊行物の記載事項及び引用発明
本願の優先権主張日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2000-035380号公報)には、以下の発明が記載されていると認められる。
「エンジンと共に動力機としてハイブリッド電気自動車に搭載される動力用モーターの運転試験を行うためのハイブリッド電気自動車用試験装置であって、
所定の交流電力を直流電力に変換する電源変換部と、
前記エンジンの出力軸と同等の低慣性を有する出力軸を有し、前記エンジンの運転状態を模擬するための模擬用モーターと、
前記電源変換部から直流電力を入力し、加振制御しながら前記模擬用モーターを駆動制御する第1の駆動制御部と、
前記電源変換部から直流電力を入力し、所定のバッテリー特性を反映させて試験対象としての前記動力用モーターを駆動制御する第2の駆動制御部と、
前記模擬用モーターの出力軸と前記動力用モーターの出力軸とを連結する連結装置と、
前記連結装置を介して前記模擬用モーターまたは動力用モーターの各出力軸に対し実車と同様の負荷を発生する負荷発生部と、を備えたことを特徴とするハイブリッド電気自動車用試験装置。」(以下、「引用発明」という。)

(2)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とは、以下の相違点1ないし相違点3で相違し、その余の点で一致する。
<相違点1>
本願発明の「第1の電気モータ(M1)」は、「縮小スケール」の「駆動用電気モータ」を「模擬する」ものであるのに対して、
引用発明の「動力用モーター」は、ハイブリッド電気自動車に搭載される動力用モーターそのものであり「縮小」されていない点

<相違点2>
本願発明の「前記実際の物理的なトルクに変換する手段(PTRI,M2)」は、「前記熱機関のトルク及び車輛の抵抗トルクの寄与を、前記縮小スケールでスケーリングするソフトウェア手段を有する」のに対して、
引用発明の「模擬用モーター」と「負荷発生部」はともに「縮小」されていなく、当然に「模擬用モーター」の「第1の駆動制御部」も、「負荷発生部」の制御部も、「縮小」する処理を実行するソフトウェアを有しない点

<相違点3>
本願発明の「リアルタイムのシミュレーション手段」は、「コンピュータを有し、前記コンピュータは、リアルタイムオペレーティングシステムと、前記熱機関の作動と、前記熱機関の制御手段と、車輌のトランスミッションと、車輌の動特性と、をリアルタイムに模擬するソフトウェアモジュール(S1?S4)と、を有し」ているのに対して、
引用発明の「第1の駆動制御部」は、「加振制御しながら」「前記エンジンの運転状態を模擬する」「前記模擬用モーターを駆動制御する」とともに、「負荷発生部」は「実車と同様の負荷を発生する」ように制御されるものの、「車輌のトランスミッション」が模擬の対象であるのか明らかでなく、「リアルタイムシミュレーションを常時実行しながら弾力的に各特性を模擬するもの」ではなく、「実験、シミュレーション等により予め導出した各特性にしたがって固定的に再現、模擬するもの」である点

(3)判断
上記相違点1及び相違点2について検討する。
本願の優先権主張日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2002-22618号公報)には、エンジンやモーター等の原動機にテストトルクを付与して試験を行う装置において、「自動変速機320」(トランスミッション)についてもモデル化し、トルクの算出に用いる構成、及び、回転軸上に「トルクセンサ42」(トルクメータ)を設ける構成が記載されているものの、相違点1及び相違点2に係る構成のように、ハイブリッド車輌のパワートレインの調査システムにおいて、縮小スケールのモータを用いるとともに、シミュレーション結果を実際の物理的なトルクに変換する際に該縮小スケールに基づいてスケーリングを行うことについては記載も示唆もされていない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明と相違点1ないし3で相違するととともに、相違点3に論及するまでもなく、本願発明は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたものともいえない。
また、本願の請求項2ないし7に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、同様に、本願の請求項2ないし7に係る発明は、引用発明と少なくとも相違点1ないし3で相違するとともに、当業者が引用発明及び引用文献2に記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由(特許法第29条第1項第3号、及び、特許法第29条第2項)によっては、本願を拒絶することはできない。


第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由1及び2の概要
(1)当審拒絶理由1の概要は、以下のとおりである。
「 第2 特許法第29条第2項について
本願発明1ないし6は、引用発明、引用例2に記載の発明及び周知技術(引用例3に記載の発明)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

<引用文献等一覧>

1.Arno Ebner他,Real-Time Modelica Simulation on a Suse Linux Enterprise Real Time PC,Modelica 2008,Modelica Association ,2008年 3月,第375-379頁,URL,https://modelica.org/events/modelica2008/Proceedings/sessions/session3d4.pdf
2.特開2001-91410号公報
3.特開2000-35380号公報 」

「 第3 特許法第36条第6項第2号について
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



1 請求項1には、「駆動用電気モータ」、「第1の電気モータ(M1)」という記載があるが、両者の異同が明らかでない結果、発明が不明確である(「駆動用電気モータ」と「第1の電気モータ(M1)」が同じであるのか、「駆動用電気モータ」と「第1の電気モータ(M1)」は異なり、「駆動用電気モータ」は実車で用いられるもので、「第1の電気モータ(M1)」は調査システム用のもので実車で用いられるものよりも低出力のものを意味するのであるのかを明確にされたい。)。

2 請求項1には、「前記シミュレーション手段から得られた機関速度」という記載があるが、「何」の「機関速度(回転数)」を指すのか明らかでない(「熱機関の機関速度(回転数)」を指すのか、「第1の電気モータ(M1)の機関速度(回転数)」を指すのか、あるいは、「実車で用いられる駆動用電気モータの機関速度(回転数)」を指すのかを、段落0061等を参照しつつ、慎重に明確化されたい。)。
請求項3の「回転速度要求」についても、同様に、「何」の「回転速度(回転数)」についての要求を指すのか明らかでないので、発明が不明確である。
さらに、請求項1の「機関速度」と請求項3の「回転速度要求」との関係も明らかでないので、発明が不明確である。

3 請求項1には、「前記熱機関の作動をリアルタイムに模擬し、かつ前記熱機関の制御手段を模擬するソフトウェアのシミュレーション手段(S1,S2)」と「リアルタイムの前記シミュレーション手段はコンピュータを有し、前記コンピュータは、リアルタイムオペレーティングシステムと、前記熱機関の作動と、前記熱機関の前記制御手段と、車輌のトランスミッションと、車輌の動特性と、をリアルタイムに模擬するソフトウェアモジュール(S1?S4)と、を有すること」という記載があるが、
熱機関の作動、制御手段を模擬する「S1」と「S2」について、コンピュータを有するシミュレーション手段と規定する一方で、コンピュータ上のソフトウェアモジュールであると規定されており両記載が整合しないので、発明が不明確である。

4 請求項3には、「前記第1の電気モータ(M1)から実際に与えられたトルクの測定値」という記載があるが、
あたかも「第1の電気モータ(M1)」のみの「トルク(第2のモータによる負荷が考慮されないもの)」であるかのような記載であり、技術的に正しくない態様を包含する記載であるので、発明が不明確である。

5 請求項5には、「前記電子制御手段」という記載があるが、
請求項5が直接的に引用する請求項4には、「第1の電子制御手段(OND1)」、「第2の電子制御手段(OND3)」という記載があり、両方の電子制御手段を指すのか、いずれか一方のみを指すのか明らかでないので、発明が不明確である。

6 請求項6には、「複数の前記電気モータ」という記載があるが、
どの「電気モータ」を指すのか明らかでない、すなわち、「第1の電気モータ(M1)」と「第2の電気モータ(M2)」との合計2つの「電気モータ」を意味するのか、「第1の電気モータ(M1)」が複数存在することを意味するのか、あるいは、「第2の電気モータ(M2)」が複数存在することを意味するのか明らかでないので、発明が不明確である。

7 請求項7には、「縮小スケールの駆動用電気モータ」という記載があるが、
「縮小スケールの前記駆動用電気モータ」の誤記であるので、発明が不明確である。

8 小括
以上のとおりであるから、請求項1、3及び5ないし7に記載された発明、並びに、請求項1、3及び5ないし7を直接的、間接的に引用する請求項2、4、8及び9に記載された発明は明確でないから、本願のそれらの請求項の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 」

(2)当審拒絶理由2の概要は、以下のとおりである。
「第2 特許法第17条の2第3項について
平成28年8月29日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



請求項1に、上記補正により「前記シミュレーション手段から得られた前記熱機関の機関速度を前記第1の電気モータの回転軸上に機械的に再現する手段(PTRI,M2)」との事項が追加されたが、これら事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載されていなく、また当初明細書等に記載した事項から自明な事項でもない(出願時明細書の段落0056には、シミュレーションから得られた「熱機関のトルク及び車輌の抵抗トルクの寄与」を第1の電気モータの回転軸に再現することが、出願時明細書の段落0061には、シミュレートされた「第1の電気モータ回転数」を第1の電気モータの回転軸に再現することが、それぞれ記載されているものの、「熱機関の機関速度(回転数)」を第1の電気モータの回転軸上に機械的に再現すること、すなわち、第1の電気モータの回転軸が「熱機関の回転数(機関速度)そのもの」で回転することについては、当初明細書等には全く記載されていない。)。」

2 当審拒絶理由1の判断
(1)特許法第29条第2項について
ア 刊行物の記載事項及び当審引用発明
当審引用例1のFigure 1, Table 1, 2.1 Real Time Computer, 2.2 Testing infrastructure, 3 Modelica Real-Time Interface 4.1 Hybrid Electric Vehicle HIL simulation等の記載を総合すると、つぎの発明が記載されていると認められる。
「内燃機関(internal combustiing engine)と電気モータ(Electric Drive)とを備えたハイブリッド車輌(hybric electric vehicle)用の電気モータの試験システム(Figure 1全体)であって、
電気モータ(Electric Drive)と、
Suse社のエンタープライズ版 Linuxのリアルタイムオペレーティングシステム(Suse Linux Enterprise Real-Time (SLERT) operating system)上で、
前記内燃機関の作動及び前記内燃機関の制御手段(Figure 1上部のDymola Modelを示す破線内のEngine、第376頁右欄第11-15行のinternal combustiing engine。なお、内燃機関の作動をシミュレーションするには、その制御手段のシミュレーションも不可欠であるため、内燃機関の制御手段のシミュレーションも行われていると認められる。)と、車輌のトランスミッション(Figure 1上部のDymola Modelを示す破線内のClutchとDifrrentialの間に存在する「Trans」)と、車輌の動特性(driving dynamics)とをリアルタイムにシミュレートするソフトウェア(Modelica)を実行するリアルタイムシミュレーションワークステーション(real-time simulation workstaion)と、
リアルタイムインターフェース(Real-Time Interface)を介して、ダイナモメーター(dynamometer)に基準値(reference values)を与え制御することで、
前記リアルタイムシミュレーションワークステーションによって算出される、前記電気モータ(Electric Drive)の走行時の想定負荷を、前記電気モータ(Electric Drive)の回転軸に接続された前記ダイナモメーター(dynamometer)に生じさせる手段とを有する試験システム。」(以下、「当審引用発明」という。)

イ 本願発明と当審引用発明との対比
本願発明と当審引用発明とは、以下の相違点A及び相違点Bで相違し、その余の点で一致する。

<相違点A>
本願発明の「第1の電気モータ(M1)」は、「縮小スケール」の「駆動用電気モータ」を「模擬する」ものであるのに対して、
当審引用発明の「電気モータ(Electric Drive)」は、「ハイブリッド車輌(hybric electric vehicle)用の電気モータ」そのものであり「縮小」されていない点

<相違点B>
本願発明の「前記実際の物理的なトルクに変換する手段(PTRI,M2)」は、「前記熱機関のトルク及び車輛の抵抗トルクの寄与を、前記縮小スケールでスケーリングするソフトウェア手段を有する」のに対して、
当審引用発明の「電気モータ(Electric Drive)」は「縮小」されていなく、当然に「前記電気モータ(Electric Drive)の走行時の想定負荷」を「算出」する「前記リアルタイムシミュレーションワークステーション」で「実行される」「ソフトウェア(Modelica)」は、「縮小」する処理をしない点

ウ 判断
上記相違点A及び相違点Bについて検討する。
(ア)本願の優先権主張日前に頒布され、当審の拒絶理由に引用された当審引用例2(特開2001-91410号公報)には、ハイブリッド車等のモータの性能試験装置において、所定の運転パターンから算出される理論車両速度相当の回転数(本願発明の機関速度に相当)が得られるように、交流式発電機よりなる動力吸収部6を制御してモータに走行時の想定負荷を与えることが記載されているものの、相違点A及び相違点Bに係る構成のように、ハイブリッド車輌のパワートレインの調査システムにおいて、縮小スケールのモータを用いるとともに、シミュレーション結果を実際の物理的なトルクに変換する際に該縮小スケールに基づいてスケーリングを行うことについては記載も示唆もされていない。

(イ)当審の拒絶理由に引用された当審引用例3(特開2000-35380号公報)は、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1と同じものであり、上記第3で説示したとおり、引用文献1に記載される発明である引用発明は、本願発明と相違点1及び相違点2に係る構成で相違するものである。
そして、相違点1及び相違点2と、相違点A及び相違点Bは、実質的に同じ相違点であるから、引用発明において、相違点A及び相違点Bのように、ハイブリッド車輌のパワートレインの調査システムにおいて、縮小スケールのモータを用いるとともに、シミュレーション結果を実際の物理的なトルクに変換する際に該縮小スケールに基づいてスケーリングを行うことについては、特定されているとはいえないし、示唆されているともいえない。
その他に、当審引用例3には、ダイナモメーターの負荷をインバータによって制御するとの周知技術も記載されているが、相違点A及び相違点Bに係る構成に関する記載ではない。

エ 小括
したがって、本願発明は、当業者が当審引用発明、当審引用例2に記載の発明及び当審引用例3に記載の周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。
本願の請求項2ないし7に係る発明についても、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が当審引用発明、当審引用例2に記載の発明及び当審引用例3に記載の周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。
そうすると、もはや、当審拒絶理由1(特許法第29条第2項)によって本願を拒絶することはできない。

(2)特許法第36条第6項第2号について
ア 当審拒絶理由1の第3の1
平成28年8月29日にされた手続補正によって、請求項1の当審拒絶理由1の第3の1で指摘した部分が「縮小スケールの前記駆動用電気モータを模擬する第1の電気モータ(M1)」と補正された。このことにより、請求項1に記載の発明は明確となった。

イ 当審拒絶理由1の第3の2
平成28年10月19日にされた手続補正によって、請求項1の当審拒絶理由1の第3の2で指摘した部分が「前記シミュレーション手段から得られた前記熱機関のトルク及び車輛の抵抗トルクの寄与を、前記第1のモータ(M1)の回転軸に機械的に再現するように、前記第1の電気モータ(M1)の回転軸に付加される実際の物理的なトルクに変換する手段(PTRI,M2)」と補正された。このことにより、請求項1は明確となった。
また、平成28年8月29日にされた手続補正によって、当審拒絶理由1の第3の2で指摘した部分を含む請求項3全体が削除された。このことにより、特許請求の範囲の記載は明確となった。

ウ 当審拒絶理由1の第3の3
平成28年8月29日にされた手続補正によって、請求項1の当審拒絶理由1の第3の3で指摘した部分が「前記熱機関の作動をリアルタイムに模擬し、かつ前記熱機関の制御手段を模擬するリアルタイムのシミュレーション手段」と補正された。このことにより、請求項1に記載の発明は明確となった。

エ 当審拒絶理由1の第3の4
平成28年8月29日にされた手続補正によって、当審拒絶理由1の第3の4で指摘した部分を含む請求項3全体が削除された。このことにより、特許請求の範囲の記載は明確となった。

オ 当審拒絶理由1の第3の5
平成28年8月29日にされた手続補正によって、請求項5の当審拒絶理由1の第3の5で指摘した部分が「前記第1及び第2の電子制御手段」と補正されるとともに、補正前の請求項5を請求項4に繰り上げる補正がされた。このことにより、請求項4に記載の発明は明確となった。

カ 当審拒絶理由1の第3の6
平成28年8月29日にされた手続補正によって、請求項6の当審拒絶理由1の第3の6で指摘した部分が「前記第1の電気モータの前記回転軸は、」と補正されるとともに、補正前の請求項6を請求項5に繰り上げる補正がされた。このことにより、請求項5に記載の発明は明確となった。

キ 当審拒絶理由1の第3の7
平成28年8月29日にされた手続補正によって、請求項7の当審拒絶理由1の第3の7で指摘した部分が「縮小スケールの前記駆動用電気モータ」と補正されるとともに、補正前の請求項7を請求項1に追加する補正がされた。このことにより、請求項1に記載の発明は明確となった。

ク 小括
以上のとおり、特許請求の範囲の記載は明確になり、当審拒絶理由1(特許法第36条第6項第2号)は解消した。
そうすると、もはや、当審拒絶理由1(特許法第36条第6項第2号)によって本願を拒絶することはできない。

2 当審拒絶理由2の判断
(1)特許法第17条の2第3項について
平成28年10月19日にされた手続補正によって、当審拒絶理由2で指摘した部分は、「前記シミュレーション手段から得られた前記熱機関のトルク及び車輛の抵抗トルクの寄与を、前記第1のモータ(M1)の回転軸に機械的に再現するように、前記第1の電気モータ(M1)の回転軸に付加される実際の物理的なトルクに変換する手段(PTRI,M2)」と補正された。このことにより、本願発明は当初明細書等に記載されたものとなった。
よって、当審拒絶理由(特許法第17条の2第3項)は解消した。


第5 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由及び当審拒絶理由1及び当審拒絶理由2によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-11-28 
出願番号 特願2011-93844(P2011-93844)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G01M)
P 1 8・ 121- WY (G01M)
P 1 8・ 113- WY (G01M)
P 1 8・ 55- WY (G01M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 萩田 裕介  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 信田 昌男
小川 亮
発明の名称 ハイブリッド車輌用パワートレインの調査システム  
代理人 宮崎 昭夫  
代理人 緒方 雅昭  

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