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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B29C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1321986
審判番号 不服2014-24554  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-02 
確定日 2016-11-22 
事件の表示 特願2013- 98547「立体物体の積層式の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月21日出願公開、特開2013-233806〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成25年5月8日(パリ条約による優先権主張 2012年5月8日 (DE)ドイツ連邦共和国)の特許出願であって、平成26年3月12日付けで拒絶理由が通知され、同年6月13日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同年7月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月2日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲が補正されたので、特許法第162条所定の審査がされた結果、平成27年1月6日付けで同法第164条第3項の規定による報告がされ、同年3月3日付けで上申書が提出されたものである。


第2.平成26年12月2日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年12月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
(1)平成26年12月2日付けの手続補正による補正前の特許請求の範囲の請求項1についての補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の
「ポリアミドPA613を含有する粉末材料が使用される立体物体の積層式の製造方法により製造された成形体であって、2000MPaを上回る縦弾性率と、30%を上回る破断点伸びとを有することを特徴とする前記成形体。」なる記載を、
「ポリアミドPA613を含有する粉末材料が使用される立体物体の積層式の製造方法により製造された成形体であって、2000MPaを上回る縦弾性率と、30%を上回る破断点伸びとを有し、ポリアミドPA613が、粉末材料の全質量に対して、少なくとも75質量%の割合で含まれており、かつ前記ポリアミドが、最大70sの流動性を有することを特徴とする前記成形体。」とする補正(以下、「本件補正1」という。)を含むものであり、かかる補正は次の補正事項1からなるものである。なお、下線は補正箇所を示すためのものである。
補正事項1:本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)である、「ポリアミドPA613を含有する粉末材料」について、「ポリアミドPA613が、粉末材料の全質量に対して、少なくとも75質量%の割合で含まれており、かつ前記ポリアミドが、最大70sの流動性を有する」との事項を付加する補正。

(2)平成26年12月2日付けの手続補正による補正前の特許請求の範囲の請求項15についての補正は、補正後の請求項13は補正後の請求項1に従属するものであるから上記本件補正1に加えて、以下の補正を含むものである。
つまり、本件補正前の特許請求の範囲の請求項15の
「請求項1から14までのいずれか1項に定義されているポリアミドPA613を含有する粉末材料の、立体物体の積層式製造のための使用。」なる記載を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項13の
「請求項1から12までのいずれか1項に定義されているポリアミドPA613を含有する粉末材料の、立体物体の積層式製造のための使用。」とする補正(以下、「本件補正2」という。)を含むものであり、かかる補正は次の補正事項2からなるものである。なお、下線は補正箇所を示すためのものである。
補正事項2:本件補正前の請求項15の引用請求項を「1?14」から「1?12」に減少させる補正。

2.補正の目的
上記補正事項1は、本件補正前の請求項1に記載した発明特定事項を限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一のものであるので、請求項1についての本件補正1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記補正事項2は、本件補正前の請求項15の引用請求項を減少させる補正であって、本件補正前の請求項15に記載された発明と本件補正後の請求項13に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一のものであるので、本件補正前の請求項15についての本件補正2は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
なお、上記補正事項1及び2は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものといえるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものである。

3.独立特許要件
そこで、特許請求の範囲の減縮を目的とする本件補正1後の請求項1(以下、「本願補正発明1」という。)、及び、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とする本件補正1及び2後の請求項13に係る発明(以下、「本願補正発明13」という。)のそれぞれについて、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)を以下に検討する。

(1)本願補正発明1について
ア.本願補正発明1は、次のとおりのものである。
「ポリアミドPA613を含有する粉末材料が使用される立体物体の積層式の製造方法により製造された成形体であって、2000MPaを上回る縦弾性率と、30%を上回る破断点伸びとを有し、ポリアミドPA613が、粉末材料の全質量に対して、少なくとも75質量%の割合で含まれており、かつ前記ポリアミドが、最大70sの流動性を有することを特徴とする前記成形体。」

イ.検討
(ア)刊行物及びその記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2007-534818号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。
a.「【請求項1】
選択的にそのつどの粉末層の領域を電磁エネルギーの導入により溶融する、積層造型法において使用するためのポリマー粉末において、該粉末が、少なくとも125J/gの溶融エンタルピーおよび少なくとも148℃の再結晶温度を有する、ジアミンとジカルボン酸との重縮合により製造された少なくとも1種のホモポリアミドを含有することを特徴とする、積層造型法において使用するためのポリマー粉末。
・・・
【請求項12】
粉末が、ヘキサメチレンジアミンとブラシル酸(PA613)との重縮合により製造された少なくとも1種のホモポリアミドを含有することを特徴とする、請求項1から3までの少なくともいずれか1項記載のポリマー粉末。
・・・
【請求項32】
選択的にそのつどのポリマー粉末層の領域を電磁エネルギーの導入により溶融する、積層造型法を用いる成形体の製造法において、該粉末が、少なくとも125J/gの溶融エンタルピーおよび少なくとも148℃の再結晶温度を有する、ジアミンとジカルボン酸との重縮合により製造された少なくとも1種のホモポリアミドを含有することを特徴とする、積層造型法を用いる成形体の製造法。
・・・
【請求項35】
請求項32から34までのいずれか1項記載の方法により製造された成形体。
・・・
【請求項42】
成形体が、ヘキサメチレンジアミンとブラシル酸(PA613)との重縮合により製造された少なくとも1種のホモポリアミドを含有することを特徴とする、請求項35または36記載の成形体。
・・・」(特許請求の範囲)
b.「有利には、本発明によるポリマー粉末は存在するポリアミドの合計に対してそのような充填剤の75質量%未満を、有利には0.001?70質量%未満を、とりわけ有利には0.05?50質量%をかつ特にとりわけ有利には0.5?25質量%を有する。」(段落【0030】)
c.「成形体はそれ以外に、充填剤および/または助剤、例えば熱安定剤、例えば立体障害フェノール誘導体を含有してよい。例えば充填剤は、ガラス粒子、セラミック粒子およびまた金属粒子、例えば鉄球、もしくは相応する中空球を有してもよい。有利には本発明による成形体は、存在するポリマーの合計に対してそのような助剤の3質量%未満を、有利には0.001?2質量%をかつ特にとりわけ有利には0.05?1質量%を含有する。同様に有利には、本発明による成形体は、存在するポリマーの合計に対してそのような充填剤の75質量%未満を、有利には0.001?70質量%を、とりわけ有利には0.05?50質量%をかつ特にとりわけ有利には0.5?25質量%を含有する。」(段落【0042】)

(イ)引用文献に記載された発明
引用文献には、(ア)a.より、「選択的にそのつどのポリマー粉末層の領域を電磁エネルギーの導入により溶融する、積層造型法を用いる成形体の製造法により製造された成形体であって、該粉末が、少なくとも125J/gの溶融エンタルピーおよび少なくとも148℃の再結晶温度を有する、ジアミンとジカルボン酸との重縮合により製造された少なくとも1種のホモポリアミドを含有し、成形体が、ヘキサメチレンジアミンとブラシル酸(PA613)との重縮合により製造された少なくとも1種のホモポリアミドを含有する成形体。」(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

(ウ)対比
本願補正発明1と引用発明1を対比する。
a.引用発明1の「PA613」は、本願補正発明1の「ポリアミドPA613」に相当する。
b.引用発明1の「成形体」は、ヘキサメチレンジアミンとブラシル酸(PA613)との重縮合により製造された少なくとも1種のホモポリアミドを含有するものであるから、溶融してその成形体となる引用発明1の「粉末」も同様に、ヘキサメチレンジアミンとブラシル酸(PA613)との重縮合により製造された少なくとも1種のホモポリアミドを含有すると認められる。よって、引用発明1の「粉末」は、本願補正発明1の「ポリアミドPA613を含有する粉末材料」に相当すると認められる。
c.引用発明1の「成形体」は当然に立体物体であるから、引用発明1の「積層造型法を用いる成形体の製造法により製造された成形体」は、本願補正発明1の「立体物体の積層式の製造方法により製造された成形体」に相当する。
d.(ア)b.及びc.より、引用発明1の「成形体」に含有されうる充填材及び助剤の特にとりわけ有利な含有量はそれぞれ0.5?25質量%及び0.05?1質量%であるから、引用発明1の「成形体」は、PA613がポリマー粉末の全質量に対して、少なくとも75質量%の割合で含まれている場合を包含していると認められる。
e.以上のことから、本願補正発明1と引用発明1とは、
「ポリアミドPA613を含有する粉末材料が使用される立体物体の積層式の製造方法により製造された成形体であって、ポリアミドPA613が、粉末材料の全質量に対して、少なくとも75質量%の割合で含まれている前記成形体。」の点で一致し、以下の点で相違、または一応相違する。
相違点1:本願補正発明1では、成形体が2000MPaを上回る縦弾性率と、30%を上回る破断点伸びとを有するのに対して、引用発明1では、そのような特定がなされていない点。
相違点2:本願補正発明1では、ポリアミドが最大70sの流動性を有するのに対して、引用発明1では、そのような特定がなされていない点。

(エ)判断
相違点1及び2について検討する。
a.相違点1について
本願の発明の詳細な説明の記載によれば、原材料としてPA613がポリマー粉末の全質量に対して、少なくとも75質量%の割合で含まれている粉末材料を用いて、立体物体の積層式の製造方法により製造される成形体はすべて2000MPaを上回る縦弾性率及び30%を上回る破断点伸びを有しているところ、引用発明1においては、本願補正発明1と同様の原材料としてPA613がポリマー粉末の全質量に対して、少なくとも75質量%の割合で含まれている粉末材料を用いて、且つ、本願補正発明1と同様の立体物体の積層式の製造方法により成形体を製造しているのであるから、引用発明1の成形体は、本願補正発明1のそれと同等の縦弾性率及び破断点伸びを有する蓋然性が高いと認められる。よって、当該相違点1は実質的な相違点ではないといえる。
加えて、本願のような積層式の製造方法により立体物体の成形体を製造する技術分野において、製造される成形体にはそれが適用される具体的な用途に応じて一定値以上の縦弾性率や破断点伸びが要求されるところ、引用発明1において必要に応じて縦弾性率や破断点伸びを一定値以上に設定することは、当業者が適宜なし得たことであるともいえる。そして、それによる効果も当業者が予測できないものではない。
b.相違点2について
本願補正発明1は「成形体」に係る発明であるところ、本願補正発明1の「ポリアミドが最大70sの流動性を有する」とは、後に立体物体の積層式の製造方法により成形体となる粉末材料の流動性、言い換えると、成形体になる前段階の原材料であるポリアミドPA613自体の流動性を特定しているにすぎず、何ら本願補正発明1に係る「成形体」の構造や特性を特定するものではない。
そして、引用発明1でも本願補正発明1と同じポリアミドPA613を使用して成形体を得ているのであるから、当該相違点2は、「成形体」に係る発明についての実質的な相違点であるとは認められない。
加えて、本願のような積層式の製造方法により立体物体の成形体を製造する技術分野において、成形体の充填密度の均一化、緻密化のためや、粉末材料を薄層にスムーズに展開させるために、積層式の製造方法に用いる粉末材料の流動性を高くすることは周知の技術的事項である(例えば、特開2002-265619号公報:【0007】、【0015】、【0020】等参照、特開2005-144870号公報:【0040】、【0041】等参照、特開2006-321711号公報:【0002】、【0004】、【0022】、【0028】等参照)。
そうしてみると、引用発明1において、成形体の充填密度の均一化、緻密化のためや、粉末材料を薄層にスムーズに展開させるために、積層式の製造方法に用いる粉末材料であるポリアミドPA613の流動性を一定値以上に設定するようにして、相違点2に係る本願補正発明1の発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得たことであるといえる。そして、それによる効果も格別顕著なものとはいえない。

(オ)小括
よって、本願補正発明1は、引用発明1、すなわち引用文献に記載された発明であるか、あるいは、引用文献に記載された発明(及び周知技術)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、同法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(2)本願補正発明13について
ア.本件補正1及び2後の請求項13は、本件補正1後の請求項1に従属するものであり、本件補正1後の請求項1に記載された「ポリアミドPA613を含有する粉末材料」の定義は、「ポリアミドが最大70sの流動性を有する」ことであるから、本願補正発明13は、次のとおりのものであると認める。
「最大70sの流動性を有するポリアミドPA613を含有する粉末材料の、立体物体の積層式製造のための使用。」

イ.検討
(ア)引用文献に記載された発明
引用文献には、(1)イ.(ア)a.より、「選択的にそのつどの粉末層の領域を電磁エネルギーの導入により溶融する積層造型法においてポリマー粉末を使用する方法であって、粉末がヘキサメチレンジアミンとブラシル酸(PA613)との重縮合により製造された少なくとも1種のホモポリアミドを含有する、ポリマー粉末を使用する方法。」(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

(イ)対比
本願補正発明13と引用発明2と対比する。
a.引用発明2の「PA613」は、本願補正発明13の「ポリアミドPA613」に相当し、引用発明2の「粉末」は、本願補正発明13の「ポリアミドPA613を含有する粉末材料」に相当すると認められる。
b.引用発明2の「積層造型法」は立体物体を成形するものであると認められるので、引用発明2の「積層造型法においてポリマー粉末を使用する方法」は、本願補正発明13の「立体物体の積層式製造のための使用」に相当する。
c.以上のことから、本願補正発明13と引用発明2とは、
「ポリアミドPA613を含有する粉末材料の、立体物体の積層式製造のための使用。」の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点3:本願補正発明13では、ポリアミドが最大70sの流動性を有するのに対して、引用発明2では、そのような特定がなされていない点。

(ウ)判断
相違点3について検討する。
本願のような積層式の製造方法により立体物体の成形体を製造する技術分野において、成形体の充填密度の均一化、緻密化のためや、粉末材料を薄層にスムーズに展開させるために、積層式の製造方法に用いる粉末材料の流動性を高くすることは周知の技術的事項である(例えば、特開2002-265619号公報:【0007】、【0015】、【0020】等参照、特開2005-144870号公報:【0040】、【0041】等参照、特開2006-321711号公報:【0002】、【0004】、【0022】、【0028】等参照)。
そうしてみると、引用発明2において、成形体の充填密度の均一化、緻密化のためや、粉末材料を薄層にスムーズに展開させるために、積層式の製造方法に用いる粉末材料であるポリアミドPA613の流動性を一定値以上に設定するようにして、相違点3に係る本願補正発明13の発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得たことであるといえる。そして、それによる効果も格別顕著なものとはいえない。

(エ)小括
よって、本願補正発明13は、引用発明2、すなわち引用文献に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.まとめ
以上のとおり、本願補正発明1及び13は、いずれも特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正1及び2は、いずれも特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、本件補正1及び2を含む平成26年12月2日付けの手続補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
平成26年12月2日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?15に係る発明は、同年6月13日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。
そのうち請求項1及び15に係る発明を、それぞれ、以下、「本願発明1」及び「本願発明15」という。

1.本願発明1について
(1)本願発明1は、次のとおりのものである。
「ポリアミドPA613を含有する粉末材料が使用される立体物体の積層式の製造方法により製造された成形体であって、2000MPaを上回る縦弾性率と、30%を上回る破断点伸びとを有することを特徴とする前記成形体。」

(2)原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
理由:本願発明1は、引用文献に記載された発明であるか、あるいは、引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(3)引用文献の記載事項及び引用発明
引用文献の記載事項及び引用発明1は、第2.3.(1)イ.(ア)及び(イ)に記載したとおりである。

(4)対比・判断
本願発明1は、第2.1.に記載したように、本願補正発明1の「成形体」の発明特定事項を一部省いたものであるから、本願補正発明1を包含するものである。
そして、本願補正発明1が、前記第2.3.(1)イ.に記載したとおり、引用文献に記載された発明であるか、あるいは、引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明1を包含する本願発明1も同様の理由により、引用文献に記載された発明であるか、あるいは、引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(5)小括
よって、本願発明1は、原査定の拒絶の理由により拒絶すべきものである。

2.本願発明15について
(1)本願の請求項15は、請求項1に従属するものであるところ、請求項1には、ポリアミドPA613自体を定義する発明特定事項はない。そうしてみると、本願発明15は、次のとおりのものであると認める。
「ポリアミドPA613を含有する粉末材料の、立体物体の積層式製造のための使用。」

(2)原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
理由:本願発明15は、引用文献に記載された発明であるか、あるいは、引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(3)引用文献の記載事項及び引用発明
引用文献の記載事項及び引用発明2は、第2.3.(1)イ.(ア)及び第2.3.(2)イ.(ア)に記載したとおりである。

(4)対比・判断
ア.引用発明2の「PA613」は、本願発明15の「ポリアミドPA613」に相当し、引用発明2の「粉末」は、本願発明15の「ポリアミドPA613を含有する粉末材料」に相当すると認められる。
イ.引用発明2の「積層造型法」は立体物体を成形するものであると認められるので、引用発明2の「積層造型法においてポリマー粉末を使用する方法」は、本願発明15の「立体物体の積層式製造のための使用」に相当する。
ウ.以上のことから、本願発明15と引用発明2とは、
「ポリアミドPA613を含有する粉末材料の、立体物体の積層式製造のための使用。」の点で一致し、両者の間に相違点はない。
エ.そうしてみると、本願発明15は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(5)小括
よって、本願発明15は、原査定の拒絶の理由により拒絶すべきものである。


第4.むすび
上記第3.のとおり、本願の請求項1及び15に係る発明は、原査定の拒絶の理由により拒絶すべきものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-24 
結審通知日 2016-06-27 
審決日 2016-07-08 
出願番号 特願2013-98547(P2013-98547)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (B29C)
P 1 8・ 121- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川端 康之平井 裕彰  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 橋本 栄和
前田 寛之
発明の名称 立体物体の積層式の製造方法  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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