ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H04W |
---|---|
管理番号 | 1322011 |
審判番号 | 不服2015-22121 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-12-15 |
確定日 | 2016-12-13 |
事件の表示 | 特願2014-530071「セルを共有する複数のリモート無線ユニットのためのリソース割り当て方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月13日国際公開、WO2012/119444、平成26年11月17日国内公表、特表2014-530526、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2011年9月19日を国際出願日とする出願であって、平成26年3月25日付けで手続補正がされ、平成27年3月2日付けで拒絶理由が通知され、平成27年6月10日付けで手続補正がされ、平成27年8月3日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年12月15日に拒絶査定不服審判が請求され、平成28年6月29日付けで当審から拒絶理由が通知され、平成28年9月29日付けで手続補正がされたものである。 第2 原査定の理由の概要と当審の拒絶理由 1.原査定の理由の概要 ●理由1(特許法第29条第2項)について ・請求項 1-6 ・引用文献等 1 出願人は意見書において 『引用文献1において、無線基地局BS1および無線基地局BS2は、リモート・レディオ・ヘッド(RRH)として言及されているかもしれませんが、本来的に、無線基地局BS1および無線基地局BS2は、互いに異なったセルC1およびセルC2を形成し、無線端末UE1は、セルC1とセルC2との重複部分に位置しているに過ぎません。すなわち、引用文献1に記載の方法は、2つの基地局と2つの無線端末UEとの間で実行されるものであります。』 と主張する。 引用文献1の変形例4([0142]-[0157])には、図1の無線基地局BS1及び無線基地局BS2の機能をRRHに置き換え、図1の制御装置が該制御装置及び無線基地局の機能を行うよう、置き換えることが記載されている。すなわち、無線基地局として機能する制御装置の通信エリア(本願発明の「セル」に相当)に対して、複数のRRHが該通信エリアを共有することが記載されていると認められる。 したがって出願人の主張するような差異は認められない。 また出願人は意見書で a.『引用文献1において、条件は、2つのセルに関連するのみではなく、2つの無線端末UEにも関連します。本願の請求項1の方法に比較して、引用文献1の手順は、より複雑であります』 b.『引用文献1では、・・・無線リソースR1を無線端末UE2に割り当てるための条件はずっと厳しいので、大部分の時間において、無線基地局BS1および無線基地局BS2は、無線リソースR1を使用して、無線端末UEとの間でCoMPを実行します。 これに対して、請求項1に係る発明においては、・・・最大試験値を有するリモート無線ユニットが、ユーザ装置の動作リモート無線ユニットのみとして選択されます。このことは、引用文献1に記載の方法が、本願発明に比較してずっと多くのリソースを消費してしまうという結果になることを意味しております。』と主張する。 引用文献1では、UEから受信したパイロット信号を用いて伝搬路品質を測定する。UE1からBS1への伝搬路品質がQ1であり、UE1からBS2への伝搬路品質がQ3である。また、UE2からBS1への伝搬路品質がQ2である。([0033]) 伝搬路品質Q1と伝搬路品質Q3に閾値2以上の差があるとき、伝搬路品質Q1と伝搬路品質Q2に閾値1以上の差があると、UE1にはBS2のみからリソースR1が割り当てられている。伝搬路品質Q1と伝搬路品質Q3に閾値2以上の差がないときは、UE1にはBS1とBS2からリソースR1が割り当てられている。([0045]-[0047]) 本願の請求項1に係る発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、 『前記最大試験値を有する前記リモート無線ユニットは、前記ユーザ装置の唯一の前記動作リモート無線ユニットとして選択される』 ための条件が、本願の請求項1に係る発明と引用文献1記載の発明では、以下の点で相違する。 ・本願の請求項1に係る発明 『前記動作リモート無線ユニットの下の前記ユーザ装置の前記基準信号の前記試験値と、前記セルにおける別のリモート無線ユニットの下の前記ユーザ装置の前記基準信号の別の試験値との差』が『前記プリセット値よりも小さくない場合』。 ・引用文献1記載の発明 上記の『前記プリセット値よりも小さくない場合』(引用文献1の「伝搬路品質Q1と伝搬路品質Q3に閾値2以上の差があるとき」が対応)であって、さらに『伝搬路品質Q1と伝搬路品質Q2に閾値1以上の差がある』場合。 上記相違点について検討する。 ここで引用文献1記載の『伝搬路品質Q1と伝搬路品質Q2に閾値1以上の差がある』場合とは、UE1からBS2への送信がUE2からBS1への送信の妨害とはならないことを意味する。すなわち伝搬路品質Q1と伝搬路品質Q2に閾値1以上の差がない場合には、UE1からBS2への送信に用いるリソースR1は、(UE1からBS1への送信に使用されていなくても、)UE2からBS1への送信に用いることができないことを意味する。 したがって、本願発明において出願人が主張する上記bの 『引用文献1に記載の方法が、本願発明に比較してずっと多くのリソースを消費してしまうという結果になる』 は、引用文献1の構成を誤って解釈したものであるから、採用できない。 そして、 『前記最大試験値を有する前記リモート無線ユニットは、前記ユーザ装置の唯一の前記動作リモート無線ユニットとして選択される』 ための条件から、『伝搬路品質Q1と伝搬路品質Q2に閾値1以上の差がある』場合の条件を外すことは、引用文献1の構成要素の単なる一部削除にすぎず、その効果も構成要素を一部削除したからその分構成が簡単になるという、当業者にとって自明なものにすぎないと認められる。(上記主張aに対して) 以上の理由により本願の請求項1に係る発明は、引用文献1記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 請求項2-6も、同様の理由により拒絶すべきものと認める。 <引用文献等一覧> 1.国際公開第2010/150896号 2.当審の拒絶理由 1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ●理由1(実施可能要件)について 本願請求項1に係る発明には、「基地局によって、複数のリモート無線ユニットのそれぞれの下の前記セルにおける前記ユーザ装置の基準信号の試験値を測定するステップ」が記載されている。 しかしながら、本願発明の詳細な説明には、単に「基地局は、セルにおける各リモート無線ユニットの下のユーザ装置の基準信号の試験値を測定する。」(【0016】段落参照)等と記載されているのみであって、どのようにして「基地局」が、自身を含まない「複数のリモート無線ユニット」と「ユーザ装置」との間の「基準信号の試験値」を「測定する」ことができるのか、その具体的な実施態様が記載されておらず、上記記載の実現方法を把握できない。 また、請求項4、並びに、請求項1又は4を引用する請求項2、3及び請求項5、6についても同様である。 よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 なお、「各リモート無線ユニットによって、」「基準信号の試験値」を「測定する」、又は、「基地局によって、」「基準信号の試験値」を「取得する」、ということであれば実施可能と思料する。 ●理由2(明確性)について ・請求項 1?6 (1)「ユーザ装置がセルに位置し、かつ、複数のリモート無線ユニットが前記セルを共有する前記ユーザ装置のためのリソース割り当て方法において」との記載について 本願請求項1には「ユーザ装置がセルに位置し、かつ、複数のリモート無線ユニットが前記セルを共有する前記ユーザ装置のためのリソース割り当て方法において」という記載がある。(下線部は当審にて付した。) しかしながら、当該記載の、「複数のリモート無線ユニットが前記セルを共有する」との文節が、後のいずれの語句に係るのか不明であるため、日本語として不明確となっている。 また、同様の記載がある請求項4、並びに、請求項1又は4を引用する請求項2、3及び請求項5、6についても同様である。 よって、本願請求項1?6に係る発明は、明確でない。 <補正等の示唆> 「複数のリモート無線ユニットが前記セルを共有する」との文節は「前記ユーザ装置」に係るのではなく、「リソース割り当て方法」に係ると思料する。 そうであるならば、これが明確となるような表現、例えば、「ユーザ装置がセルに位置し、かつ、複数のリモート無線ユニットが前記セルを共有する、前記ユーザ装置のためのリソース割り当て方法において」(句読点を加える)等を検討されたい。 なお、上記の補正等の示唆は法律的効果を生じさせるものではなく、拒絶理由を解消するための一案である。明細書等をどのように補正するかは出願人が決定すべきものである。 (2)本願請求項1には「前記基地局によって、前記差がプリセット値よりも小さい場合、同時に、前記別のリモート無線ユニットを別の動作リモート無線ユニットとして選択するステップ」という記載がある。(下線部は当審にて付した。) しかしながら、当該記載では何と「同時に、」なのか不明であることに加え、「同時に、」とは、選択するタイミングが同時であることを特定している(すなわち、選択する時点が何らかの処理と同時であることを意味しようとしている)とも、選択した「前記動作リモート無線ユニット」に追加して「別の動作リモート無線ユニット」を選択することを特定しているとも解釈し得るため、発明全体が不明確となっている。 また、同様の記載がある請求項4、並びに、請求項1又は4を引用する請求項2、3及び請求項5、6についても同様である。 よって、本願請求項1?6に係る発明は、明確でない。 <補正等の示唆> 「同時に、」とは、選択するステップにて選択した「前記動作リモート無線ユニット」に追加して「別の動作リモート無線ユニット」を選択することを意味すると思料する。 そうであるならば、これが明確となるような表現、例えば、「前記基地局によって、前記差がプリセット値よりも小さい場合、前記選択した前記動作リモート無線ユニットに加え、前記別のリモート無線ユニットを別の動作リモート無線ユニットとして選択するステップ」等の表現を検討されたい。 なお、上記の補正等の示唆は法律的効果を生じさせるものではなく、拒絶理由を解消するための一案である。明細書等をどのように補正するかは出願人が決定すべきものである。 なお、上記<補正等の示唆>は、理由2(明確性)を解消するための補正の示唆であって、以下に記載する理由3(進歩性)を解消する補正の示唆ではない。 ●理由3(進歩性)について ・請求項 1 ・引用文献 1 ・備考 1.本願発明について 本願請求項1に係る発明は、平成27年6月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものであると認める。 「【請求項1】 ユーザ装置がセルに位置し、かつ、複数のリモート無線ユニットが前記セルを共有する前記ユーザ装置のためのリソース割り当て方法において、 基地局によって、複数のリモート無線ユニットのそれぞれの下の前記セルにおける前記ユーザ装置の基準信号の試験値を測定するステップと、 前記基地局によって、最大試験値を有する前記複数のリモート無線ユニットの一つを前記ユーザ装置の動作リモート無線ユニットとして選択するステップと、 前記基地局によって、前記動作リモート無線ユニットの下の前記ユーザ装置の前記基準信号の前記試験値と、前記セルにおける別のリモート無線ユニットの下の前記ユーザ装置の前記基準信号の別の試験値との差を計算するステップと、 前記基地局によって、前記差がプリセット値よりも小さい場合、同時に、前記別のリモート無線ユニットを別の動作リモート無線ユニットとして選択するステップであって、もし、前記差が前記プリセット値よりも小さくない場合、前記最大試験値を有する前記リモート無線ユニットは、前記ユーザ装置の唯一の前記動作リモート無線ユニットとして選択されるステップと を含むユーザ装置のリソース割り当て方法。」(以下、これを「本願発明1」という。) 2.引用発明について (1)引用文献1について 引用文献1(特開2011-097225号公報)には、以下の事項が記載されている。(以下、下線は全て当審で付した。) ア.「【背景技術】 【0002】 無線通信において、セルエッジで周波数の利用効率が低下することが問題となっている。そのため、IMT-Advanced(第4世代移動通信システム)などにおいて、複数基地局を連携制御することによって、この問題に対応する方法が検討されている。 【0003】 しかしながら、無線端末が複数の連携制御する無線基地局からの信号を受信する場合、それぞれの無線基地局と無線端末との間の距離が相違する。そのため、無線端末において、複数の連携制御する無線基地局からの信号の受信タイミングが相違することになる。また、複数の連携制御する無線基地局から送信される信号は、別個の無線基地局で生成された信号であるため、周波数オフセットが相違する。」(段落【0002】?【0003】参照) イ.「【0025】 図1を参照して、この無線基地局1は、中央処理部2と、それぞれが物理的に独立したリモート無線ヘッドRRH(1)3-1?RRH(N)3-Nとからなる。RRH(1)3-1?RRH(N)3-Nは、別個の場所に設置される。RRH(1)3-1?RRH(N)3-Nは、無線端末からアップリンク信号を受信し、無線端末へダウンリンク信号を送信する。」(段落【0025】参照) ウ.【図1】 エ.【図2】 オ.「【0070】 (無線通信システムの動作) 図7は、本発明の実施形態の無線通信システムの動作手順を表わすフローチャートである。フレームごとに処理をする。図7では、RRHの個数をN個として説明する。また、通信相手の無線端末を無線端末Aとする。 【0071】 図7を参照して、まず、受信タイミング検出部25は、RRH(i)(i=1?N)で受信した無線端末Aからのアップリンク信号の受信タイミングRT(i)を検出する。」(段落【0070】?【0071】参照) カ.「【0076】 次に、受信タイミング検出部25は、i=1?Nについて、ER(i)が「OK」のRRH(i)の受信タイミングRT(i)の中で、最もタイミングが早いものを最早受信タイミングRTFに設定する(ステップS102)。」(段落【0076】参照) キ.「【0079】 一方、無線端末Aの移動速度VL(i)が閾値TH1未満の場合、かつ、下りMCSが最低レベルでない場合には(ステップS106でNO)、設定部33は、受信タイミングRT(i)と最先受信タイミングRTFとの差が閾値TH2(たとえば、ガードインターバル期間)を超える場合には(ステップS108でNO)、RRH(i)を第2グループのRRHに設定する(ステップS109)。 【0080】 一方、設定部33は、受信タイミングRT(i)と最先受信タイミングRTFとの差が閾値TH2以下の場合には(ステップS108でYES)、RRH(i)を第1グループのRRHに設定する(ステップS109)。」(段落【0079】?【0080】参照) ク.「【0083】 次に、送信制御部28は、第1グループに属するRRHが2個以上ある場合には(ステップS112でYES)、連携制御モードで第1グループに属するすべてのRRHから、無線端末Aへダウンリンクのユーザデータを送信するように制御する(ステップS113)。 【0084】 一方、送信制御部28は、第1グループに属するRRHが1個の場合には(ステップS112でNO、ステップS114でYES)、単独通信モードで第1グループに属する1個のRRHから無線端末Aへのダウンリンクのユーザデータを送信するように制御する(ステップS115)。」(段落【0083】?【0084】参照) ケ.【図7】 (2)引用発明1について 上記ア?ケから、引用文献1には、次の発明(以下、引用発明1という。)が記載されていると認められる。 「無線基地局1は、中央処理部2と、それぞれが物理的に独立したリモート無線ヘッドRRH(1)3-1?RRH(N)3-Nとからなり、RRH(1)3-1?RRH(N)3-Nは、無線端末からアップリンク信号を受信し、無線端末へダウンリンク信号を送信するものであって、 RRH(i)(i=1?N)で受信した無線端末Aからのアップリンク信号の受信タイミングRT(i)を検出し、 最もタイミングが早いものを最早受信タイミングRTFに設定し、 設定部33は、受信タイミングRT(i)と最先受信タイミングRTFとの差が閾値TH2を超える場合には、RRH(i)を第2グループのRRHに設定し、 受信タイミングRT(i)と最先受信タイミングRTFとの差が閾値TH2以下の場合には、RRH(i)を第1グループのRRHに設定し、 第1グループに属するRRHが2個以上ある場合には、連携制御モードで第1グループに属するすべてのRRHから、無線端末Aへダウンリンクのユーザデータを送信し、 第1グループに属するRRHが1個の場合には、単独通信モードで第1グループに属する1個のRRHから無線端末Aへのダウンリンクのユーザデータを送信する、 無線基地局の動作方法」 3.対比 本願発明1と、引用発明1とを対比する。 なお、これ以降は、引用発明1における「リモート無線ヘッドRRH」、「アップリンク信号の受信タイミングRT」及び「最先受信タイミングRTF」を、それぞれ「RRH」、「RT」及び「RTF」と表す。また、最もタイミングが早いRT(i)(=RTF)について、このときのiをfと表し、i=fではないiをmとして表すこととする。 (1)引用発明1の「無線端末A」、「RRH」及び「無線基地局」は、それぞれ、本願発明の「ユーザ装置」、「リモート無線ユニット」及び「基地局」に対応する。 (2)引用発明1の「無線基地局」は、「無線端末A」に「ユーザデータを送信」する「第1グループのRRH」を設定し、設定した「第1グループのRRH」のリソースを用いて通信を行うものであるから、「ユーザ装置のためのリソース割り当て」という動作を行っているといえる。 そして、引用発明1では、「無線端末A」が「無線基地局」の通信範囲内にあることは明らかであるから、「無線端末A」は「無線基地局」のセルに位置する、といえる。 また、引用発明1では、上記「2.引用発明について(イ)」にあるように、「無線基地局1は、中央処理部2と、それぞれが物理的に独立したリモート無線ヘッドRRH(1)3-1?RRH(N)3-Nとからなる」から、複数の「RRH」が「無線基地局」の通信範囲を形成しているといえる。そして、各「RRH」の通信範囲は「無線基地局」の通信範囲であるセルの一部であるから、複数の「RRH」が「無線基地局」のセルを共有する、といえる。 よって、引用発明1は、本願発明1と、「ユーザ装置がセルに位置し、かつ、複数のリモート無線ユニットが前記セルを共有する前記ユーザ装置のためのリソース割り当て方法」という点で一致する。 (3)引用発明1の「無線基地局」は、「RRH(i)(i=1?N)で受信した無線端末Aからのアップリンク信号の受信タイミングRT(i)を検出」するものである。 ここで、「RRH(i)(i=1?N)」は複数のRRHであり、「無線基地局」は各RRHでの「RT(i)」を検出する。 また、「RT(i)」は、無線端末Aからのアップリンク信号を受信するタイミングであるから、無線端末Aに関する値といえる。 よって、引用発明1は、本願発明1と、「基地局によって、複数のリモート無線ユニットのそれぞれの下の前記セルにおける前記ユーザ装置に関する値を測定する」という点で一致する。 (4-1)引用発明1の「無線基地局」は、「設定部33は、受信タイミングRT(i)と最先受信タイミングRTFとの差が閾値TH2を超える場合には、RRH(i)を第2グループのRRHに設定」し、「受信タイミングRT(i)と最先受信タイミングRTFとの差が閾値TH2以下の場合には、RRH(i)を第1グループのRRHに設定」するものである。 (4-2)引用発明1の「RTF」は、RT(f)を測定したRRH(f)のRTであって、RRH(f)は最もタイミングが早いRTを測定したRRHであるから、引用発明1のRRH(f)は、本願発明1の「最大試験値を有する前記複数のリモート無線ユニットの一つ」に対応する。 (4-3)そうすると、引用発明1の「RTF」は、本願発明1の「前記基地局によって、最大試験値を有する前記複数のリモート無線ユニットの一つを前記ユーザ装置の動作リモート無線ユニットとして選択するステップ」にて選択された「前記動作リモート無線ユニットの下の前記ユーザ装置の前記基準信号の前記試験値」と、「前記動作リモート無線ユニットの下の前記ユーザ装置に関する値」という点で一致する。 (4-4)また、引用発明1の「RT(i)」のうち、RT(f)以外の値(すなわち、RT(m))を測定したRRH(m)は、RTFを測定したRRH(f)とは別のRRHであるから、引用発明1のRRH(m)は、本願発明1の「別のリモート無線ユニット」に対応する。 (4-5)そして、引用発明1のRT(m)は、本願発明1の「前記セルにおける別のリモート無線ユニットの下の前記ユーザ装置の前記基準信号の別の試験値」と、「前記セルにおける別のリモート無線ユニットの下の前記ユーザ装置に関する値」という点で一致する。 (4-6)上記(4-2)?(4-5)を踏まえると、引用発明1の「無線基地局」は、「受信タイミングRT(i)と最先受信タイミングRTFとの差が閾値TH2を超える場合」(「閾値TH2以下の場合」も含む)であるかどうかを計算しており、RRH(m)におけるRT(m)とRTFとの差を計算することを含むから、本願発明1と、「前記基地局によって、前記動作リモート無線ユニットの下の前記ユーザ装置に関する値と、前記セルにおける別のリモート無線ユニットの下の前記ユーザ装置に関する値との差を計算する」という点で一致する。 (5-1)引用発明1の「無線基地局」は、「受信タイミングRT(i)と最先受信タイミングRTFとの差が閾値TH2以下の場合には、RRH(i)を第1グループのRRHに設定」し、「第1グループに属するRRHが2個以上ある場合には、連携制御モードで第1グループに属するすべてのRRHから、無線端末Aへダウンリンクのユーザデータを送信」するものである。 (5-2)ここで、引用発明1の「閾値TH2」は、本願発明1の「プリセット値」に対応する。 (5-3)また、「第1グループのRRH」は、無線端末Aへユーザデータを送信するRRHであるから、本願発明1の「動作リモート無線ユニット」に対応する。 (5-4)ところで、RTFとRT(f)との関係を検討すると、引用発明1において、最もタイミングが早い「RT(i)」(すなわち、RT(f))を「RTF」として設定することから、「RTF」と「RT(f)」との差が0であることは自明である。そうすると、「RT(f)」は、「RTF」との差が「閾値TH2」以下という条件を必ず満たすこととなる。 (5-5)その上で、上記「3.対比(4-2)」及び「3.対比(4-4)」にて述べたように、引用発明1のRRH(f)は、本願発明1の「最大試験値を有する前記複数のリモート無線ユニットの一つ」に、引用発明1のRRH(m)は、本願発明の「別のリモート無線ユニット」に、それぞれ対応することを勘案すると、RRH(m)のうち、RT(m)とRTFとの差が閾値TH2以下の場合に該当したRRH(m)は、RTFを測定したRRHとは「別の動作するRRH」ということができる。 よって、引用発明1における、RRH(f)と連携制御モードで無線端末Aにユーザデータを送信することになるRRH(m)は、RT(m)とRTFとの差が閾値TH2以下の場合に該当するので、本願発明1の「別の動作リモート無線ユニット」に対応する。 (5-6)加えて、RRH(f)は「閾値TH2」以下という条件を必ず満たすことは上記「3.対比(5-4)」にて述べたとおりであって、RRH(f)は動作するRRHということができるから、引用発明1のRRH(f)は、本願発明1の「動作リモート無線ユニット」に対応する。 (5-7)上記(5-1)?(5-6)を踏まえると、引用発明1の「無線基地局」は、「受信タイミングRT(i)と最先受信タイミングRTFとの差が閾値TH2以下という範囲である場合」に、RRH(m)を、RRH(f)とは別の、動作するRRHとするものであるから、本願発明1と、「前記基地局によって、前記差がプリセット値と一定の範囲にある場合、同時に、前記別のリモート無線ユニットを別の動作リモート無線ユニットとして選択するステップ」という点で一致する。 (6-1)また、引用発明1の「無線基地局」は、「受信タイミングRT(i)と最先受信タイミングRTFとの差が閾値TH2を超える場合には、RRH(i)を第2グループのRRHに設定」し、「第1グループに属するRRHが1個の場合には、単独通信モードで第1グループに属する1個のRRHから無線端末Aへのダウンリンクのユーザデータを送信する」ものである。 (6-2)引用発明1では、RRH(m)のRT(m)とRTFとの差が閾値TH2を超える場合、RRH(m)は第2グループのRRHとして設定され、無線端末Aにユーザデータを送信しないから、「第1グループに属するRRHが1個の場合」における、引用発明1の「第1グループに属するRRH」は、本願発明1の「前記ユーザ装置の唯一の前記動作リモート無線ユニット」に対応する。 (6-3)また、上記「3.対比(5-4)」で検討したように、RRH(f)は動作するRRHとして必ず選択されるから、「第1グループに属するRRHが1個の場合」とは、RRH(f)のみが選択される場合であることは明らかである。 (6-4)上記(6-1)?(6-3)を踏まえると、引用発明1の「無線基地局」は、RT(m)とRTFとの差が閾値TH2を超える場合、すなわち、閾値TH2以下という範囲でない場合、RRH(f)のみを「第1グループに属するRRH」として選択することから、本願発明1と、「もし、前記差が前記プリセット値と一定の範囲にない場合、リモート無線ユニットは、前記ユーザ装置の唯一の前記動作リモート無線ユニットとして選択される」という点で一致する。 (7)以上より、本願発明1と引用発明1とは以下の点で一致する。 「ユーザ装置がセルに位置し、かつ、複数のリモート無線ユニットが前記セルを共有する前記ユーザ装置のためのリソース割り当て方法において、 基地局によって、複数のリモート無線ユニットのそれぞれの下の前記セルにおける前記ユーザ装置に関する値を測定するステップと、 前記基地局によって、動作リモート無線ユニットの下の前記ユーザ装置に関する値と、前記セルにおける別のリモート無線ユニットの下の前記ユーザ装置に関する値との差を計算するステップと、 前記基地局によって、前記差がプリセット値と一定の範囲にある場合、同時に、前記別のリモート無線ユニットを動作リモート無線ユニットとして選択するステップであって、もし、前記差が前記プリセット値と一定の範囲にない場合、リモート無線ユニットは、前記ユーザ装置の唯一の前記動作リモート無線ユニットとして選択されるステップと を含むユーザ装置のリソース割り当て方法」 (8)一方、本願発明1と引用発明1とは以下の点で相違する。 [相違点1] 引用発明1では、「無線端末Aからのアップリンク信号の受信タイミングRT(i)」に基づいて動作させるリモート無線ユニットを選択するものであって、「ユーザ装置の基準信号の試験値」ではない点。 [相違点2] 引用発明1では、最もタイミングが早いRT(i)をRTFとして選択するものであるが、RTFに設定されたRRHを選択していないことから、「前記基地局によって、最大試験値を有する前記複数のリモート無線ユニットの一つを前記ユーザ装置の動作リモート無線ユニットとして選択する」という構成を有しない点。 [相違点3] 別のリモート無線ユニットを選択する一定の範囲として、引用発明1では「閾値TH2以下の場合」であるのに対し、本願発明1では「前記差が前記プリセット値よりも小さい場合」である点。 すなわち、RT(i)とRTFとの差が閾値TH2と同じ場合、「別の動作リモート無線ユニット」として選択するが、本願発明1では選択しない点。 [相違点4] 上記[相違点2]に関連して、引用発明1では、RT(f)についても差を計算するが、本願発明1では、事前に「動作リモート無線ユニット」を選択するため、「最大試験値」を有する「リモート無線ユニット」については「差」を計算しない点。 4.判断 上記[相違点1]?[相違点4]について判断する。 (1)[相違点1]について 引用発明1における「無線端末Aからのアップリンク信号」は、各RRHが受信するタイミングを測定するための信号であるから、アップリンク信号を、受信するタイミングを測定するための基準とすること、すなわち「基準信号」とすることは当業者が適宜為し得ることである。 また、本願発明にある「基準信号の試験値」について、本願発明の詳細な説明等では「基準信号の試験値」の具体例が示されているものの、「試験値」の定義に関しては何ら説明がないこと、及び、具体例のいずれも信号を測定することで得られる値であること、を踏まえると、アップリンク信号の測定によって求められ、動作するRRHとするかどうかを試験する引用発明1の「アップリンク信号の受信タイミング」を、本願発明のように「試験値」と表現することは当業者が適宜為し得ることである。 してみれば、引用発明1において、「無線端末Aからのアップリンク信号の受信タイミング」を「ユーザ装置の基準信号の試験値」とすることは当業者が適宜為し得るである。 よって、[相違点1]に関する事項は、引用発明1から当業者が適宜為し得ることに過ぎない。 (2)[相違点2]及び[相違点4]について 引用発明1では、最もタイミングが早いRT(i)をRTFとして選択することから、送信点から受信点までの送信時間が最も短い値を持つRRH、すなわち、最も近いRRHのRTを選択しているといえる。 一方、上記「4.判断(1)[相違点1]について」にて述べたように、本願発明では「試験値」の定義に関して何ら説明がないことから、「最大試験値」がどのような技術的意味を有するかは「試験値」によって変わってくる。 そこで、本願発明の詳細な説明を参照すると、試験値の具体例として、RSRP、SRSのSINR等が挙げられているから、ここでいう「最大試験値」とは、測定した試験値の中で、無線通信を行うのに最適と考え得る送信点からの信号の値を指すと考えられる。 そして、無線通信を行うのに最適と考え得る送信点からの信号の値を選択するに際し、どのような値を選ぶのかは、試験目的、試験内容、測定値の特性等に応じて決定されるべきことであって、一般に送信点と受信点との距離が近い方が無線通信を行うのに適していることは技術常識であるから、最も近いRRHのRTを表す引用発明1の「RTF」は、無線通信を行うのに最適と考え得る送信点からの信号の値を指す、といえる。 よって、引用発明1の「RTF」は、本願発明の「最大試験値」に対応する。 また、RTFは、動作リモート無線ユニットを選択する選択条件に用いられ、上記「3.対比(5-4)」で述べたように、RTFを検出したRRH(f)は動作リモート無線ユニットとして必ず選択される。すなわち、RTFを選択した段階で、RTFを検出したRRH(f)が動作リモート無線ユニットとなることが決定することは当業者に明らかである。 このことから、引用発明1において、RTFを選択した段階で動作リモート無線ユニットとして決定されるRRH(f)について、RTFを選択する際に、動作リモート無線ユニットとして選択しておくことは、当業者が容易に想到し得ることである。 更に、RTFを選択する際に、動作リモート無線ユニットとして選択しておくことに伴い、動作リモート無線ユニットを選択する際に、既に選択済みのRRH(f)について判定を行わないようにすることも、格別のことではない。 よって、[相違点2]及び[相違点4]に関する事項は、引用発明1から当業者が容易に想到し得ることに過ぎない。 (3)[相違点3]について 連携制御モードにて通信を行う際、いずれのRRHを動作させるかは当業者が適宜決定すべき設計事項であるから、引用発明1において、閾値TH2にて動作させるRRHを決定しているところ、RT(i)とRTFとの差が閾値TH2と同じ場合には、連携制御モードで動作するRRHとして選択しないこと、すなわち、別の動作リモート無線ユニットとして選択しないようにすることは、当業者が適宜為し得るである。 よって、[相違点3]に関する事項についても、引用発明1から当業者が適宜為し得るに過ぎない。 (4)まとめ 上記のように、[相違点1]?[相違点4]は、いずれも、引用発明1から、当業者が適宜為し得ること、乃至、当業者が容易に想到し得ることである。 そして、引用発明1を本願発明1のように構成したことによる効果は、引用発明1から当業者が予測できる範囲のものであって、格別のものではない。 5.結論 以上のとおりであるから、本願発明1は、引用文献1に記載された引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明し得たものである。 よって、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項 2 ・引用文献 1 ・備考 本願請求項2に係る発明は、プリセット時間値に基づいて動作リモート無線ユニットの再選択を行うものである。 一方、引用発明1において、RRHの選択を、予め設定した時間に基づいて再度行うようにすることは格別のことではない。 よって、本願請求項2に係る発明は、引用文献1に記載された引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項 3 ・引用文献 1?3 ・備考 本願請求項3に係る発明は、基準信号の試験値を、基準信号受信電力(RSRP)、サウンディング基準信号の信号対干渉・雑音比(SRSのSINR)、又は、復調基準信号の信号対干渉・雑音比(DMRSのSINR)とするものである。 一方、引用文献2("2.1. CoMP cell selection" 第3段落目参照)、引用文献3("2.1 Determination of CoMP Cooperating Set of Scenarios 3 and 4" Equation(1)参照)、引用文献4(スライド"CoMP Set Comfiguration" の "Selection Algorithm" 参照)には、それぞれ、RRHの選択においてRSRP等を用いることが示されており、このような技術は周知技術であるといえる。 そして、引用発明1において、RTに代えて、周知技術であるRSRPを用いてRRHの選択を行うことは、当業者が適宜為し得ることである。 よって、本願請求項3に係る発明は、引用文献1に記載された引用発明1、及び、引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項 4?6 ・引用文献 1?3 ・備考 本願請求項4?6に係る発明は、それぞれ、請求項1?3に係る発明を装置として特定したものである。 よって、本願請求項4?6係る発明は、上記本願請求項1?3に係る発明と同様に、それぞれ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2011-097225号公報 2.Fujitsu、Phase 2 Performance evaluation of JT CoMP、3GPP TSG-RAN1#66 R1-112660、その他、2011.08.17発行 3.MediaTek Inc.、Simulation Evaluation for CoMP Scenarios 3 and 4、3GPP TSG-RAN WG1 #65 R1-111528、その他、2011.05.05発行 4.LG Electronics、Phase 1 CoMP Evaluation Results Full Buffer、3GPP TSG WG RAN1 #65 R1-111288、その他、2011.04.15発行 第3 本願発明 本願の請求項1-6に係る発明は、平成28年9月29日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】 ユーザ装置がセルに位置し、かつ、複数のリモート無線ユニットが前記セルを共有する、ユーザ装置のためのリソース割り当て方法であって、 基地局によって、複数のリモート無線ユニットのそれぞれの下の前記セルにおける前記ユーザ装置の基準信号の試験値を取得するステップと、 前記基地局によって、最大試験値を有する前記複数のリモート無線ユニットの一つを前記ユーザ装置の動作リモート無線ユニットとして選択するステップと、 前記基地局によって、前記動作リモート無線ユニットの下の前記ユーザ装置の前記基準信号の前記試験値と、前記セルにおける別のリモート無線ユニットの下の前記ユーザ装置の前記基準信号の別の試験値との差を計算するステップと、 前記基地局によって、前記差がプリセット値よりも小さい場合、前記選択された動作リモート無線ユニットに加えて、前記別のリモート無線ユニットを別の動作リモート無線ユニットとして選択するステップであって、もし、前記差が前記プリセット値よりも小さくない場合、前記最大試験値を有する前記リモート無線ユニットは、前記ユーザ装置の唯一の前記動作リモート無線ユニットとして選択されるステップと を含み、 前記基準信号の前記試験値は、基準信号受信電力を含む、方法。 【請求項2】 前記動作リモート無線ユニットが選択された後に、前記方法はさらに、 前記基地局によって、前記動作リモート無線ユニットの動作時間を測定するステップと、 前記基地局によって、前記動作時間がプリセット時間値に達するとき、前記ユーザ装置のために動作リモート無線ユニットを再選択するステップと を含む請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記差を計算するステップは、前記ユーザ装置が前記選択された動作リモート無線ユニットのセンタユーザ又はエッジユーザのいずれであるかを判断する、請求項1又は2に記載の方法。 【請求項4】 ユーザ装置がセルに位置し、かつ、複数のリモート無線ユニットが前記セルを共有する、ユーザ装置のためのリソース割り当ての装置であって、 リモート無線ユニットのそれぞれの下の前記セルにおける前記ユーザ装置の基準信号の試験値を取得するように構成された基準信号測定ユニットと、 前記基準信号測定ユニットによって測定された最大試験値を有する複数のリモート無線ユニットの一つを前記ユーザ装置の動作リモート無線ユニットとして選択し、 前記動作リモート無線ユニットの下の前記ユーザ装置の前記基準信号の前記試験値と、前記セルにおける別のリモート無線ユニットの下の前記ユーザ装置の前記基準信号の別の試験値との差を計算し、 前記差がプリセット値よりも小さい場合、前記選択された動作リモート無線ユニットに加えて、前記別のリモート無線ユニットを別の動作リモート無線ユニットとして選択するように構成された選択ユニットと を具備し、 前記差が前記プリセット値よりも小さくない場合、前記最大試験値を有する前記リモート無線ユニットは、前記ユーザ装置の唯一の前記動作リモート無線ユニットであり、 前記基準信号の前記試験値は、基準信号受信電力を含む、装置。 【請求項5】 前記動作リモート無線ユニットが選択された後に、前記動作リモート無線ユニットの動作時間を測定し、その結果、前記動作時間がプリセット時間値に達するとき、動作リモート無線ユニットが前記ユーザ装置のために再選択されるように構成される、リモート無線ユニット動作時間測定ユニットをさらに含む、請求項4に記載の装置。 【請求項6】 前記選択ユニットは、前記差を計算することで、前記ユーザ装置が前記選択された動作リモート無線ユニットのセンタユーザ又はエッジユーザのいずれであるかを判断する、請求項4又は5に記載の装置。」 第4 当審の判断 1.特許法第36条第4項第1号について 当審が拒絶理由で通知した「基地局によって、複数のリモート無線ユニットのそれぞれの下の前記セルにおける前記ユーザ装置の基準信号の試験値を測定するステップ」については、「基地局によって、複数のリモート無線ユニットのそれぞれの下の前記セルにおける前記ユーザ装置の基準信号の試験値を取得するステップ」と補正され、実施可能であることが明らかとなった。 2.特許法第36条第6項第2号について 当審が拒絶理由で通知した「ユーザ装置がセルに位置し、かつ、複数のリモート無線ユニットが前記セルを共有する前記ユーザ装置のためのリソース割り当て方法において」については、「ユーザ装置がセルに位置し、かつ、複数のリモート無線ユニットが前記セルを共有する、ユーザ装置のためのリソース割り当て方法であって」と、「複数のリモート無線ユニットが前記セルを共有する」のが「リソース割当方法」であることが明らかとなった。 また、当審が拒絶理由で通知した「同時に、」についても、「前記選択された動作リモート無線ユニットに加えて、」となり、選択した「前記動作リモート無線ユニット」に加えて「別の動作リモート無線ユニット」を選択することを特定することが明らかとなった。 3.特許法第29条第2項について (1)引用発明 原査定に引用された国際公開第2010/150896号(以下「引用例1」という。下線は当審が付与。)には、 「[0031] 図1に示すように、無線通信システム1は、無線基地局BS1(第1無線基地局)、無線基地局BS2(第2無線基地局)、無線端末UE1(第1無線端末)、無線端末UE2(第2無線端末)、及び制御装置11を有する。 [0032] 無線端末UE1は、無線基地局BS1によって形成される通信エリアであるセルC1と、無線基地局BS2によって形成される通信エリアであるセルC2との重複部分に位置している。無線端末UE2は、セルC1内に位置している。 [0033] 無線基地局BS1、無線基地局BS2、無線端末UE1、及び無線端末UE2それぞれは、受信側が既知の信号系列である既知信号(いわゆる、パイロット信号)を周期的に送信(ブロードキャスト)できる。また、無線基地局BS1、無線基地局BS2、無線端末UE1、及び無線端末UE2それぞれは、受信したパイロット信号を用いて、送信側との間の伝搬路品質を測定できる。ここで伝搬路品質とは、無線伝搬路を信号が通過する際に受ける減衰量、位相回転量、遅延量等の、無線伝搬路の品質を示す各種パラメータを意味する。無線通信システム1においては、無線基地局BS1と無線端末UE1との間の伝搬路品質Q1と、無線基地局BS1と無線端末UE2との間の伝搬路品質Q2と、無線基地局BS2と無線端末UE1との間の伝搬路品質Q3とが測定される。測定される各伝搬路品質は、瞬時の伝搬路品質でもよく、短期間における平均伝搬路品質でもよい。 [0034] 無線基地局BS1及び無線基地局BS2は、有線通信網であるバックホールネットワーク10を介して互いに接続されている。制御装置11は、バックホールネットワーク10に設けられ、バックホールネットワーク10を介して無線基地局BS1及び無線基地局BS2を制御する。ただし、無線基地局BS1及び無線基地局BS2は、制御装置11を介さずに、X2インタフェースと称される通信コネクションを介して、直接的に基地局間通信を行うことができる。 [0035] 無線基地局BS1は、周波数(サブチャネル)及び時間(時間スロット)の組み合わせにより規定される無線リソース(以下、無線リソースR1)を無線端末UE1に割り当てる。このような無線リソースR1は、リソースブロック(RB)と称される。無線基地局BS2は、無線リソースR1を無線端末UE1に割り当てる。無線基地局BS1及び無線基地局BS2は、無線端末UE1に割り当てた無線リソースR1を使用して無線端末UE1とのCoMPを行う。 [0036] JP型のCoMPにおいては、無線基地局BS1が無線リソースR1を使用して送信するデータと、無線基地局BS2が無線リソースR1を使用して送信するデータとは、基本的には同じデータである。すなわち、無線基地局BS1及び無線基地局BS2が送信する各データが無線端末UE1で合成されることで無線端末UE1における受信品質が改善される。」 「[0142] (5.4)変更例4 上述した実施形態では、無線基地局BS1及び無線基地局BS2のそれぞれがベースバンド(BB)処理を行う構成について説明したが、当該BB処理を制御装置11側で行う構成としてもよい。BB処理を行う部分を外部に設けることで小型化された無線基地局の形態は、リモート・レディオ・ヘッド(RRH)と称される。RRHは、主にアンテナ及び無線周波数(RF)回路によって構成される。 [0143] 無線基地局BS1及び無線基地局BS2のそれぞれがRRHとして構成される場合、無線基地局BS1及び無線基地局BS2のそれぞれは、光ファイバ回線等により制御装置11に接続される。制御装置11は、光ファイバ回線等を介して、無線基地局BS1及び無線基地局BS2のそれぞれとBB信号を送受信する。 [0144] 図8は、無線基地局BS1及び無線基地局BS2のそれぞれがRRHとして構成される場合の制御装置11の構成を示すブロック図である。図8に示すように、制御装置11は、インタフェース部211、インタフェース部212、制御部220、記憶部230、及び有線通信部240を有する。 [0145] インタフェース部211は、BB回路等を用いて構成され、無線基地局BS1とのインタフェースとして機能する。インタフェース部212は、BB回路等を用いて構成され、無線基地局BS2とのインタフェースとして機能する。 [0146] 制御部220は、例えばCPUを用いて構成され、無線基地局BS1、無線基地局BS2、及び制御装置11が具備する各種の機能を制御する。記憶部230は、例えばメモリを用いて構成され、無線基地局BS1、無線基地局BS2、及び制御装置11の制御等に用いられる各種の情報を記憶する。記憶部230は、有線通信部240は、バックホールネットワークに接続される。 [0147] 制御部220は、リソース割当部221、伝搬路品質測定部222、伝搬路品質比較部223、及び送信電力制御部224を有する。 [0148] リソース割当部221は、無線基地局BS1が無線端末UE1とのCoMPを行う際に、無線端末UE1に無線リソースR1を割り当てるよう無線基地局BS1を制御する。」 の記載があるから、引用例1には、 「無線通信システム1は、無線基地局BS1、無線基地局BS2、無線端末UE1、無線端末UE2、及び制御装置11を有し、 無線端末UE1は、無線基地局BS1によって形成される通信エリアであるセルC1と、無線基地局BS2によって形成される通信エリアであるセルC2との重複部分に位置し、 無線基地局BS1及び無線基地局BS2は、有線通信網であるバックホールネットワーク10を介して互いに接続されており、 無線基地局BS1は、周波数及び時間の組み合わせにより規定される無線リソースR1を無線端末UE1に割り当て、無線基地局BS2は、無線リソースR1を無線端末UE1に割り当て、無線基地局BS1及び無線基地局BS2は、無線端末UE1に割り当てた無線リソースR1を使用して無線端末UE1とのCoMPを行い、 JP型のCoMPにおいては、無線基地局BS1が無線リソースR1を使用して送信するデータと、無線基地局BS2が無線リソースR1を使用して送信するデータとは、基本的には同じデータであり、無線基地局BS1及び無線基地局BS2が送信する各データが無線端末UE1で合成されることで無線端末UE1における受信品質が改善され、 無線基地局BS1及び無線基地局BS2のそれぞれがRRHとして構成される場合、無線基地局BS1及び無線基地局BS2のそれぞれは、光ファイバ回線等により制御装置11に接続され、 制御装置11は、インタフェース部211、インタフェース部212、制御部220、記憶部230、及び有線通信部240を有し、 制御部220は、リソース割当部221、伝搬路品質測定部222、伝搬路品質比較部223、及び送信電力制御部224を有し、 リソース割当部221は、無線基地局BS1が無線端末UE1とのCoMPを行う際に、無線端末UE1に無線リソースR1を割り当てるよう無線基地局BS1を制御する 方法。」 の発明が記載されている。(以下「引用発明1」という。) また、当審の拒絶理由に引用された特開2011-097225号公報(以下「引用例2」という。下線は当審が付与。)には、 「【0001】 本発明は、無線基地局および無線通信方法に関し、特に、RRH(Remote Radio-frequency Head:リモート無線ヘッド)を備えた無線基地局およびその無線基地局の無線通信方法に関する。」 「【0070】 (無線通信システムの動作) 図7は、本発明の実施形態の無線通信システムの動作手順を表わすフローチャートである。フレームごとに処理をする。図7では、RRHの個数をN個として説明する。また、通信相手の無線端末を無線端末Aとする。 【0071】 図7を参照して、まず、受信タイミング検出部25は、RRH(i)(i=1?N)で受信した無線端末Aからのアップリンク信号の受信タイミングRT(i)を検出する。 【0072】 誤り検出部26は、RRH(i)(i=1?N)で受信した無線端末Aからのアップリンク信号の誤り検出をCRCに基づいて実行する。誤り検出部26は、1フレーム内に誤りが検出されなかった場合に、誤り検出情報ER(i)を「OK」に設定し、1フレーム内に誤りが検出された場合に、誤り検出情報ER(i)を「NG」に設定する。 【0073】 下りMCS切替部30は、無線端末Aへのダウンリンク信号のパケットエラーレートPERに基づいて、第1のテーブルに従って、下りMCSを設定する。 【0074】 下りMIMO切替部32は、無線端末Aへのダウンリンク信号のパケットエラーレートPERに基づいて、第1のテーブルに従って、下りMIMO方式を設定する。 【0075】 端末速度識別部27は、RRH(i)(i=1?N)で受信した無線端末Aからのアップリンク信号のそれぞれに基づいて、無線端末Aの移動速度VL(i)を識別する(ステップS101)。 【0076】 次に、受信タイミング検出部25は、i=1?Nについて、ER(i)が「OK」のRRH(i)の受信タイミングRT(i)の中で、最もタイミングが早いものを最早受信タイミングRTFに設定する(ステップS102)。 【0077】 次に、設定部33は、RRHの番号iを1に設定する(ステップS103)。 まず、設定部33は、誤り検出情報ER(i)が「NG」の場合には(ステップS104でNO)、RRH(i)を第2グループのRRHに設定する(ステップS105)。 【0078】 次に、設定部33は、誤り検出情報ER(i)が「OK」の場合には(ステップS104でYES)、無線端末AのRRH(i)で受信した信号に基づいて識別された移動速度VL(i)が閾値TH1以上の場合(この場合、無線端末Aが高速移動している無線端末であると判断する)、または、下り通信レベルが設定可能な範囲のうち、データ伝送レートが最も低いレベルである「A1」の場合には(ステップS106でYES)、すべてのRRH(i)(i=1?N)を第1グループのRRHに設定する。高速移動している無線端末と通信する場合に、すべてのRRH(i)(i=1?N)を第1グループのRRHに設定した理由は、高速移動している無線端末は、短時間に広範囲に移動することが予想されるから、無線基地局でカバーするエリアをできるだけ広げておくことが望ましいからである。下り通信レベルが最も低いレベルである「A1」の場合に、すべてのRRH(i)(i=1?N)を第1グループのRRHに設定した理由は、下り通信レベルが低い場合に、通信が異常切断する可能性があるため、できだけ多数のRRHで通信するようにしておくことが望ましいからである(ステップS107)。 【0079】 一方、無線端末Aの移動速度VL(i)が閾値TH1未満の場合、かつ、下りMCSが最低レベルでない場合には(ステップS106でNO)、設定部33は、受信タイミングRT(i)と最先受信タイミングRTFとの差が閾値TH2(たとえば、ガードインターバル期間)を超える場合には(ステップS108でNO)、RRH(i)を第2グループのRRHに設定する(ステップS109)。 【0080】 一方、設定部33は、受信タイミングRT(i)と最先受信タイミングRTFとの差が閾値TH2以下の場合には(ステップS108でYES)、RRH(i)を第1グループのRRHに設定する(ステップS109)。 【0081】 ステップS105およびステップS109の後、RRHの番号iがNでない場合には(ステップS110でNO)、RRHの番号iを1だけインクリメントする(ステップS111)。 【0082】 一方、RRHの番号iがNの場合には(ステップS110でYES)、次のステップS112に進む。 【0083】 次に、送信制御部28は、第1グループに属するRRHが2個以上ある場合には(ステップS112でYES)、連携制御モードで第1グループに属するすべてのRRHから、無線端末Aへダウンリンクのユーザデータを送信するように制御する(ステップS113)。 【0084】 一方、送信制御部28は、第1グループに属するRRHが1個の場合には(ステップS112でNO、ステップS114でYES)、単独通信モードで第1グループに属する1個のRRHから無線端末Aへのダウンリンクのユーザデータを送信するように制御する(ステップS115)。」 の記載があるから、 「受信タイミング検出部25は、RRH(i)(i=1?N)で受信した無線端末Aからのアップリンク信号の受信タイミングRT(i)を検出し、 誤り検出部26は、RRH(i)(i=1?N)で受信した無線端末Aからのアップリンク信号の誤り検出をCRCに基づいて実行し、1フレーム内に誤りが検出されなかった場合に、誤り検出情報ER(i)を「OK」に設定し、1フレーム内に誤りが検出された場合に、誤り検出情報ER(i)を「NG」に設定し、 端末速度識別部27は、RRH(i)(i=1?N)で受信した無線端末Aからのアップリンク信号のそれぞれに基づいて、無線端末Aの移動速度VL(i)を識別し、 受信タイミング検出部25は、i=1?Nについて、ER(i)が「OK」のRRH(i)の受信タイミングRT(i)の中で、最もタイミングが早いものを最早受信タイミングRTFに設定し、 設定部33は、RRHの番号iを1に設定し、 誤り検出情報ER(i)が「NG」の場合には、RRH(i)を第2グループのRRHに設定し、 誤り検出情報ER(i)が「OK」の場合には、無線端末AのRRH(i)で受信した信号に基づいて識別された移動速度VL(i)が閾値TH1以上の場合、すべてのRRH(i)(i=1?N)を第1グループのRRHに設定し、高速移動している無線端末と通信する場合に、すべてのRRH(i)(i=1?N)を第1グループのRRHに設定した理由は、高速移動している無線端末は、短時間に広範囲に移動することが予想されるから、無線基地局でカバーするエリアをできるだけ広げておくことが望ましいからであり、 無線端末Aの移動速度VL(i)が閾値TH1未満の場合、かつ、下りMCSが最低レベルでない場合には、設定部33は、受信タイミングRT(i)と最先受信タイミングRTFとの差が閾値TH2を超える場合には、RRH(i)を第2グループのRRHに設定し、受信タイミングRT(i)と最先受信タイミングRTFとの差が閾値TH2以下の場合には、RRH(i)を第1グループのRRHに設定し、 RRHの番号iがNでない場合には、RRHの番号iを1だけインクリメントし、 送信制御部28は、第1グループに属するRRHが2個以上ある場合には、連携制御モードで第1グループに属するすべてのRRHから、無線端末Aへダウンリンクのユーザデータを送信するように制御し、第1グループに属するRRHが1個の場合には、単独通信モードで第1グループに属する1個のRRHから無線端末Aへのダウンリンクのユーザデータを送信するように制御する 方法。」 の発明が記載されている。(以下「引用発明2」という。) (2)本願発明1と引用発明の対比 (2-1)引用発明1との対比 引用発明1は、「無線基地局BS1、無線基地局BS2、無線端末UE1、無線端末UE2、及び制御装置11を有」する通信システムと、「無線基地局BS1及び無線基地局BS2のそれぞれがRRHとして構成」される場合の通信システムについて記載されているものの、無線基地局とRRHのどちらか片方しか有さない通信システムが記載されているに過ぎず、本願発明1の「複数のリモート無線ユニットが前記セルを共有する」ことは考慮されていない。 (2-2)引用発明2との対比 引用発明2の「無線端末A」、「RRH」及び「無線基地局」は、それぞれ、本願発明1の「ユーザ装置」、「リモート無線ユニット」及び「基地局」に対応する。 引用発明2の「無線基地局」は、「無線端末A」に「ユーザデータを送信」する「第1グループのRRH」を設定し、設定した「第1グループのRRH」のリソースを用いて通信を行うものであるから、「ユーザ装置のためのリソース割り当て」という動作を行っているといえる。 一方、引用発明2では、「無線端末A」が「無線基地局」の通信範囲内にあることは明らかであるから、「無線端末A」は無線基地局の「セルに位置」しているといえる。 さらに、引用発明2では、「無線基地局1は、中央処理部2と、それぞれが物理的に独立したリモート無線ヘッドRRH(1)3-1?RRH(N)3-Nとからなる」から、複数の「RRH」が「無線基地局」の通信範囲を形成しており、各「RRH」の通信範囲は「無線基地局」の通信範囲であるセルの一部であるから、複数の「RRH」が無線基地局の「セルを共有」しているといえる。 したがって、引用発明2は、「ユーザ装置がセルに位置し、かつ、複数のリモート無線ユニットが前記セルを共有する、前記ユーザ装置のためのリソース割り当て方法」である。 引用発明2の「無線基地局」は、「RRH(i)(i=1?N)で受信した無線端末Aからのアップリンク信号の受信タイミングRT(i)を検出」している。 ここで、「RRH(i)(i=1?N)」は「i番目のRRH」を意味するから、引用発明2は、「無線基地局」がそれぞれのRRHで「RT(i)」を検出しているといえる。 そして、それぞれのRRHで受信した受信タイミングを「無線基地局」が検出するためには、「無線基地局」が「それぞれのRRH」から検出した結果を取得する必要があることは自明である。 また、「RT(i)」は、無線端末Aからのアップリンク信号を受信するタイミングを試験した値であるから、「無線端末Aに関する試験値」といえる。 したがって、引用発明2は、「基地局によって、複数のリモート無線ユニットのそれぞれの下の前記セルにおける前記ユーザ装置に関する試験値を取得」しているといえる。 引用発明2の「閾値TH2」は、本願発明1の「プリセット値」に対応する。 引用発明2の「第1グループのRRH」は、無線端末Aへユーザデータを送信するRRHであるから、本願発明1の「動作リモート無線ユニット」に対応する。 引用発明2の「RTF」は、「ER(i)が「OK」のRRH(i)の受信タイミングRT(i)の中で、最もタイミングが早いもの」であるから、本願発明1の「最大試験値」に相当する。 そうすると、引用発明2は、移動速度が閾値TH1未満の無線端末について、RTFとRRH(i)が検出した受信タイミングRT(i)を比較しているから、「無線端末Aに関する試験値」と「最大試験値」に基づいて動作リモート無線ユニットを選択しているといえる。 したがって、本願発明1と引用発明2とは、 「ユーザ装置がセルに位置し、かつ、複数のリモート無線ユニットが前記セルを共有する、ユーザ装置のためのリソース割り当て方法であって、 基地局によって、複数のリモート無線ユニットのそれぞれの下の前記セルにおける前記ユーザ装置に関する試験値を取得するステップと、 前記基地局によって、ユーザ装置に関する最大試験値とユーザ装置に関する試験値に基づいて動作リモート無線ユニットを選択するステップと を含む、方法。」 で一致し、下記の点で相違する。 相違点1 測定対象の受信信号として、引用発明2では、「アップリンク信号」であるのに対し、本願発明1は「基準信号」である点。 相違点2 動作リモート無線ユニットの選択に関し、引用発明2は、移動速度が閾値TH1未満の無線端末について、全てのリモート無線ユニットについて、最大試験値との比較を計算して、差が閾値TH2以下の場合に選択を行うのに対し、本願発明1では、「最大試験値を有する前記複数のリモート無線ユニットの一つを前記ユーザ装置の動作リモート無線ユニットとして選択」して、「前記動作リモート無線ユニットの下の前記ユーザ装置の前記基準信号の前記試験値と、前記セルにおける別のリモート無線ユニットの下の前記ユーザ装置の前記基準信号の別の試験値との差を計算」し、「前記差がプリセット値よりも小さい場合、前記選択された動作リモート無線ユニットに加えて、前記別のリモート無線ユニットを別の動作リモート無線ユニットとして選択するステップであって、もし、前記差が前記プリセット値よりも小さくない場合、前記最大試験値を有する前記リモート無線ユニットは、前記ユーザ装置の唯一の前記動作リモート無線ユニットとして選択」する点。 相違点3 ユーザ装置に関する値として、引用発明2は、「受信タイミング」であるのに対し、本願発明1は「基準信号受信電力」である点。 (3)相違点の判断 (3-1)引用発明1に対しての判断 本願発明1は、引用発明1が考慮しない通信システムを前提とした発明であるから、引用発明1に基づいて本願発明1を想起する合理的な事由があるとは考えがたく、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (3-2)引用発明2に対しての判断 相違点3について 請求人は、平成28年9月29日付けの意見書において、 「2.本願発明の進歩性 引用文献1(特開2011-097225号公報)は、MIMO技術分野におけるRRHを備える無線基地局を開示しております。 具体的には、引用文献1に記載の発明において、受信タイミング検出部25は、RRH(i)(i=1?N)で受信した無線端末Aからのアップリンク信号の受信タイミングRT(i)を検出します(引用文献1の段落[0071]参照;下線は本審判請求人が付加)。そして、端末速度識別部27は、RRH(i)(i=1?N)で受信した無線端末Aからのアップリンク信号のそれぞれに基づいて、無線端末Aの移動速度VL(i)を識別します(ステップS101)(引用文献1の段落[0075]参照;下線は本審判請求人が付加)。 これに対して、本願発明において、基準信号受信電力を含む基準信号の試験値が用いられます。すなわち、引用文献1に記載されたアップリンク信号の受信タイミングRT(i)は、本願発明の「基準信号受信電力」を含む基準信号の試験値とは異なっていることは明らかであります。審判長殿もこの相違点の存在を認定されております。その上で、審判長殿は、「引用発明1において、RTに代えて、周知技術であるRSRPを用いてRRHの選択を行うことは、当業者が適宜為し得ることである。」(請求項3についての記載)と結論付けられております。 しかしながら、この審判長殿の認定は、後知恵であると言わざるを得ません。引用文献1に記載の発明においては、無線端末の移動速度VL(i)に応じて、第1グループのRRHに設定される対象を動的に決定することを本質とするものであり、無線端末の「移動速度」を識別できる範囲でのみ設計変更が可能であります。ここで、本願発明のように、基準信号の試験値として基準信号受信電力を採用した場合には、無線端末の「移動速度」を識別することはできません。つまり、引用文献1に記載の発明に対して、引用文献2に記載のRSRPを用いるようにすることは、引用文献1に記載された発明の目的を達成できなくなるような変形であると言わざるを得ず、審判長殿が指摘されるような「当業者が適宜為し得ること」に相当するようなものではありません。 つまり、引用文献1から出発して、本願発明に想到するのは、阻害要因が存在すると言わざるを得ません。」 と主張している。 まず、引用発明2は、引用例2に 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら、特許文献1に記載の方法では、無線端末において、複数のRRHから受信した信号の周波数オフセットを同一にすることができるものの、複数のRRHから受信した信号の受信タイミングの差は相違する。 【0008】 また、すべてのRRHが必ずしも通信環境が良い状況にあるとは限らず、このようなRRHを用いて無線端末へ信号を送信することは、他の無線端末、および他の無線基地局に対して干渉をまきちらしていることになり、望ましくない。 【0009】 一方、複数のRRHのうちの少数のみを用いて無線端末へ信号を送信した場合には、カバーするエリアが小さくなるので、無線端末が高速移動するような場合には、通信が切断が起こりやすく、適切でない。 【0010】 それゆえに、本発明の目的は、無線端末が、複数のRRHからの信号を良好に受信することができる無線基地局および無線通信方法を提供することである。」 と記載されているように、無線端末が高速移動するような場合に、少数のRRHのみを用いて無線端末へ信号を送信した場合には、通信の切断が起こりやすいという課題を解決するための発明であって、そのための具体的な手段として、「無線端末AのRRH(i)で受信した信号に基づいて識別された移動速度VL(i)が閾値TH1以上の場合、すべてのRRH(i)(i=1?N)を第1グループのRRHに設定」し、「無線端末Aの移動速度VL(i)が閾値TH1未満の場合」には、「受信タイミングRT(i)と最先受信タイミングRTFとの差」に応じて第1グループのRRHに設定するか第2グループのRRHに設定するかを選択している。 この選択手段は、上記引用発明2の課題を解決するため、「高速移動している無線端末は、短時間に広範囲に移動することが予想されるから、無線基地局でカバーするエリアをできるだけ広げておくことが望ましい」ためである。 ここで、受信タイミングは無線端末とRRHの距離の違いにより発生することが当業者に自明であるから、RTFを受信したRRHは、無線端末Aに「最も近いRRH」であり、RTFと閾値TH2以下のRRHは、無線端末Aとの距離が「比較的近いRRH」である。 つまり、引用発明2は、「高速移動している無線端末」については、広い範囲をカバーするために、「誤りなしに通信可能な全てのRRH」を用いるのに対し、「低速移動している無線端末」については、それほど広い範囲をカバーする必要がないので、無線端末に「誤りなしに通信可能なRRH」の中から「距離の近いRRH」を選択して用いることが発明の本質であるといえる。 一方、一般に、「基準信号受信電力」に基いてRRHを選択する場合は、「受信電波状態」に基づいて「受信電波状態の良いRRH」を選択しようとしているものであり、「無線端末とRRHの距離」に基づいた選択を行うものではない。これは、当審の拒絶理由で通知した周知文献も同じである。 そうすると、引用発明2は「無線端末とRRHの距離」を認識することが必要であるから、「受信タイミング」を測定することは必要である一方、「基準信号受信電力」は「無線端末とRRHの距離」を認識することができないから、引用発明2において、「受信タイミング」に代えて「基準信号受信電力」を測定するようにすることは、引用発明2の基本的な発明思想に反することであるといわざるを得ない。 したがって、他の文献に、「RRHの選択において基準信号受信電力を用いること」が記載されているとしても、引用発明2において、受信タイミングに代えて基準信号受信電力を用いることには、阻害要因がある。 上記のとおり、「ユーザ装置に関する値」として、「受信タイミング」に代えて「基準信号受信電力」とすることは、当業者が容易に発明をすること ができたとはいえない。 したがって、他の相違点について考慮するまでもなく、本願発明1は、引用発明2に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 (4)請求項2-6について 請求項4に係る発明についても、上記(2)に記載した相違点を有するから、(3)に記載したのと同様の理由により、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 請求項2、3は、請求項1を引用して記載されているから、請求項2、3に係る発明も、少なくとも上記(2)と同様の相違点を有する。 さらに、請求項5、6は請求項4を引用して記載されているから、同様に上記(2)に記載した相違点を有する。 したがって、請求項2、3、5、6に係る発明も、(3)に記載したのと同様の理由により、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、本願の請求項2-6に係る発明も、本願発明1と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1-6に係る発明は、いずれも、原査定の理 由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-11-30 |
出願番号 | 特願2014-530071(P2014-530071) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04W)
P 1 8・ 537- WY (H04W) P 1 8・ 536- WY (H04W) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 伊東 和重 |
特許庁審判長 |
佐藤 智康 |
特許庁審判官 |
吉田 隆之 水野 恵雄 |
発明の名称 | セルを共有する複数のリモート無線ユニットのためのリソース割り当て方法及び装置 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |