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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C |
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管理番号 | 1322113 |
審判番号 | 不服2015-983 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-01-19 |
確定日 | 2016-11-28 |
事件の表示 | 特願2013- 601「携帯型地図表示装置及びその表示制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月18日出願公開、特開2013- 68637〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件に係る出願(以下「本願」という。)は、 平成11年9月30日に出願した特願平11-280564号(以下「原出願」という。)の一部を平成22年4月8日に新たな特許出願(特願2010-89493号)とし、その一部を平成25年1月7日に新たな特許出願としたものであって、 平成26年10月8日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成26年10月21日)、 これに対し、平成27年1月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 一方、当審において、平成28年1月12日付けで拒絶理由を通知し(発送日:平成28年1月19日)、 これに対し、平成28年3月17日付けで意見書及び手続補正書が提出され、 当審において、平成28年6月6日付けで拒絶理由を通知し(発送日:平成28年6月7日)、 これに対し、平成28年8月3日付けで意見書及び手続補正書が提出されたところである。 第2 本願発明について 1 本願発明 本願の請求項1?4に係る発明は、平成28年8月3日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 横画面表示又は縦画面表示の画面に設定される表示部に地図を表示させる携帯型地図表示装置であって、 前記表示部の前記画面における上方向を示す方位を取得する方位取得部と、 前記取得された方位を前記表示部の前記画面に表示する地図の表示方向に反映させるように制御する制御部と、 前記表示部の一辺に向かう方向を示す画像を表示し、前記画面に表示される前記地図の表示方向が変化した場合であっても、前記画像が前記表示部の一辺へ向かう方向を表わす状態を維持する情報表示部と、を備える携帯型地図表示装置。」 2 引用刊行物とその記載事項 (1)当審における平成28年6月6日付けで通知した拒絶理由に引用された、原出願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-311625号公報(以下「引用例1」という。)には、「表示装置、地図表示装置、表示方法、地図表示方法」に関し、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は表示装置本体の状態に応じて表示状態を変化させる表示装置、表示方法に関し、また特に地図画像表示装置、地図画像表示方法に関するものである。」 (イ)「【0009】1.電子地図装置の構成 図1は本例の電子地図装置のブロック図を示し、また図2は電子地図装置の外観例を示すものである。図2に示すように、電子地図装置1は例えば携帯も可能な程度のノートブック形状とされ、上面に液晶ディスプレイなどによる表示部2が形成されている。また電子地図データの記録媒体としては例えば通常のナビゲーションシステムに用いられるようなCD-ROMを用いるようにしているが、このCD-ROMを挿入する挿入部3が設けられている。」 (ウ)「【0013】またCD-ROM20から再生され表示に用いられる地図画像情報は地図画像メモリ15に取り込まれる。CPU10はCD-ROM20から読み出した地図画像情報や各種付加情報に基づいて表示すべき画像データを生成し、地図画像メモリ15に展開する。そして地図画像メモリ15に保持された画像データのうちの所要部分が表示ドライバ13に送られ、表示部2において或る地域の地図表示が実行される。」 (エ)「【0016】センサ部17は、電子地図装置1の本体の姿勢状態や移動状態を検出するために必要なセンサが設けられている。センサ部17からの検出情報はCPU10に供給される。以上各部の間でのデータや制御信号の伝送はバス19を介して行なわれる。また図2に示した操作部4からの各種の操作情報はCPU10に入力される。 【0017】CPU10は、操作部4からのモード設定操作、表示地域指定操作や、センサ部17からの検出情報、GPS受信機18からの検出情報、及びROM12に記憶されている動作プログラムに基づいて、CD-ROMドライバ14による再生動作、画像合成部16での合成処理、地図画像メモリ15の書込/読出動作、表示ドライバ13による表示動作を制御し、これによってユーザーの求める地図表示が表示部2において実行されることになる。 【0018】2.センサによる体勢・移動検出 ここで、センサ部17における電子地図装置1本体の体勢・移動検出について説明しておく。センサ部17は本体の傾斜状態を検出する傾斜センサ機能、絶対的な方位(東西南北)を検出する方位センサ機能、本体の移動(移動方向及び移動量)を検出する移動センサ機能が設けられるようにされ、このために各種の必要なセンサが搭載される。 【0019】説明上、まず図2に示すように、電子地図装置1の本体における表示部1の画面からみた方向としての上下左右を考え、これを画面上、画面下、画面右、画面左と呼び、地球上の重力的な上下や絶対方位的な左右と区別することとする。 【0020】図3に電子地図装置1本体の傾斜状態例を示す。図3(a)(b)(c)は画面左から画面右への軸線を中心として、電子地図装置1本体が画面上下方向に回転された状態を示している。つまり図3(a)は電子地図装置1がほぼ水平とされており、図3(b)(c)は、画面上が重力的な上方に持ち上げられていった体勢を示している。図示していないが、もちろん画面下が重力的な上方に持ち上げられていく体勢も有りえる。また図3(a)(d)(e)は画面上から画面下への軸線を中心として、電子地図装置1本体が画面左右方向に回転された状態を示している。つまり図3(d)(e)は、水平状態な図3(a)から、画面左が重力的な上方に持ち上げられていった体勢を示している。図示していないが、画面右が重力的な上方に持ち上げられていく体勢も有りえる。 【0021】これらの傾斜状態を検出するセンサとしては、センサ部17において例えば水銀スイッチによる傾斜センサを2軸的に形成したり、重力の方向を検出する重力センサを搭載するようにすればよい。各体勢の変化は、ユーザーが電子地図装置1を持っている時の持ち方や、置き方(机上などに水平に置いたり、立て掛けて置いたり)などによるものである。 【0022】次に図4は電子地図装置1本体と絶対方位の関係を示している。図4(a)は画面上が絶対方位としての北を向いている状態、図4(b)は画面左が北を向いている状態、図4(c)は画面下と画面左の間が北を向いている状態である。本例では、例えばこれらのように、電子地図装置1が絶対方位に対してどのような方位体勢にあるかも検出するようにしており、このためにセンサ部17には電子コンパスなどの方位センサを搭載する。実際には地磁気センサを採用する例などが考えられる。また、方位センサとしてGPS受信機18によって得られる進行方向の方位情報を利用してもよい。」 (オ)「【0024】本例では以上の図3、図4、図5に例示したような、電子地図装置本体の傾斜や移動、及び絶対方位に対する方向をセンサ部17によって検出するようにしており、このために必要なセンサが搭載されている。センサの種類や数としては、これらの傾斜/移動/方位を検出できるものであればどのようなものでもよい。そして後述するように、検出された傾斜/移動/方位の状況に基づいて、CPU10は所定の表示出力処理を実行させることになる。」 (カ)「【0040】なお、以上のように表示方位指定モードでは、指定された方向があくまでその時々の重力的な上方に一致するような状態で表示されることになるが、画面上下左右方向の検出精度や、検出段階数、傾きの検出精度、検出段階数は各種設定できることはいうまでもない。例えば検出段回数を細かくすれば、本体が回転されたようなときに、常に地図上が重力上になるようにほぼ連続的な表示画像変更が可能となるし、また45°毎や90°毎など、段回数を少なくすれば、或る程度の角度回転されたときに表示方向が切り換わるというような表示動作となる。」 (キ)「【0042】なお、検出精度や検出段階数などの点については、後述する現実方位反映モード、近辺地図反映モード、バーチャル表示モードでも同様であり、体勢や移動についての検出精度や検出段階数の設定次第で表示変更態様を各種設定できる。 【0043】4.現実方位反映モードでの地図表示動作 次に現実方位反映モードでの地図表示動作について図10、図11で説明する。現実方位反映モードとは、電子地図装置1がどのような体勢であろうとも、あくまで実際の方位に一致した状態で地図が表示されるようにする表示動作モードである。 【0044】現実方位反映モードとされた場合のCPU10による制御動作を図10に示す。なお、この場合も表示される地図としての地域は、ユーザーが或る地域を指定し、その地域の地図情報や付加情報がCD-ROM20から読み出されて地図画像メモリ15に保持されているとする。」 (ク)「【0051】その地域についてはバードビュー画像や3D画像を合成する処理に必要なデータが用意されていない(CD-ROM20に収録されていない)場合は、通常の平面的な地図表示を行なうためにステップF205からF207に進む。垂直もしくは斜めとされている場合は、そのままでは画面上、画面下、画面左、画面右の画面での2次元方向と現実の方角を一致させることはできないため、この場合は、電子地図装置本体の重力的な上方が画面上下左右のいずれに相当しているかを検出する。 【0052】そしてステップF208では、検出した重力的な上方となる画面上下左右を、その電子地図装置本体1を通して見える方向に一致させた状態で地図画像の表示を行なう。例えば、ユーザーが北を向いているときに手で電子地図装置1を保持し、しかもその電子地図装置1を画面上を重力的な上として斜め又は垂直に持っていたとする。この場合、電子地図装置本体1を通して見える方向とは、換言すればユーザーの向いている方角のことであり、つまり北である。従って、図11(a)のような画面上が北となる地図画像が表示される。これによってユーザーからみれば、例えば電子地図装置1が斜めもしくは垂直であっても、感覚的に現実の方角と一致された状態の地図が表示されることになる。」 (ケ)「【0071】7.ナビゲーション表示モードでの地図表示動作 本例ではGPS受信機18を備え、電子地図装置1自体の現在位置(緯度/経度)を検出できるようにしていることから、地図画像に現在位置表示を重ねることでナビゲーション表示も可能となる。即ちCPU10はGPS受信機18により得られた現在位置情報に基づいて、その現在位置に合致する地図画像データをCD-ROM20から読み出し、その地図画像を表示部2に表示させるとともに、その表示内で現在位置に相当する地点にポインタ等を表示させることで、ユーザーは現在位置及び周辺地域を確認できるようになる。」 (コ)「【0074】さらに、ナビゲーション表示モードの場合は、表示方位指定モード、現実方位反映モード、近辺地図表示モードのそれぞれの動作を複合的に実施すれば、ユーザーにとってより使い勝手のよいナビゲーション機能が実現されることになる。さらにナビゲーション機能時にバーチャル表示を実行すれば、現実の情景との合致がとれ、より好適である。以上に限らず、各種モードの合成動作により、多様な表示動作を実現できる。」 (サ)図1に、電子地図装置のブロック図が図示され、電子地図装置は、「センサ部17」及び「CPU10」を備え、「センサ部17」と「CPU10」とが「バス19」を介して接続されているものが示されている。 (シ)図2に、電子地図装置の外観図が図示され、「電子地図装置1」の「表示部2」は、長辺と短辺を有する矩形であり、「表示部2」の「画面上」及び「画面下」が矩形の長辺であり、「表示部2」の「画面右」及び「画面左」が矩形の短辺であるものが示されている。 (ス)記載事項(イ)の「電子地図装置1」は、「携帯も可能な程度のノートブック形状とされ、上面に液晶ディスプレイなどによる表示部2が形成されている」ものであり、その「表示部2」は、記載事項(ウ)の「表示部2において或る地域の地図表示が実行される」ものである。 そうすると、記載事項(イ)の「電子地図装置1」は、「地図表示が実行される表示部2が形成されている携帯も可能な電子地図装置1」といえる。 (セ)記載事項(イ)の「表示部2」は、記載事項(エ)の「電子地図装置1の本体における表示部1」(「表示部1」は「表示部2」の誤記と解される。)であり、「電子地図装置1の本体における表示部1の画面からみた方向としての上下左右を考え、これを画面上、画面下、画面右、画面左と呼び、地球上の重力的な上下や絶対方位的な左右と区別することと」されるものである。 また、記載事項(イ)の「表示部2」は、記載事項(シ)の「表示部2」であり、長辺と短辺を有する矩形であり、「表示部2」の「画面上」及び「画面下」が矩形の長辺であり、「表示部2」の「画面右」及び「画面左」が矩形の短辺であるものである。 そうすると、記載事項(イ)の「表示部2」は、「画面上、画面下、画面右、画面左を有し、画面上及び画面下は矩形の長辺であり、画面右及び画面左が矩形の短辺であるもの」といえる。 (ソ)記載事項(イ)の「電子地図装置1」は、記載事項(サ)の電子地図装置であり、「センサ部17」及び「CPU10」を備えるものである。 そして、記載事項(サ)の「センサ部17」は、記載事項(エ)の「センサ部17」であり、「本体の傾斜状態を検出する傾斜センサ機能、絶対的な方位(東西南北)を検出する方位センサ機能、本体の移動(移動方向及び移動量)を検出する移動センサ機能が設けられるようにされ、このために各種の必要なセンサが搭載される」ものであり、「重力の方向を検出する重力センサを搭載する」ものであり、「電子コンパスなどの方位センサを搭載する」ものである。 また、記載事項(エ)の「センサ部17」の「重力センサ」は、記載事項(エ)に「図3に電子地図装置1本体の傾斜状態例を示す。……図3(b)(c)は、画面上が重力的な上方に持ち上げられていった体勢を示している。図示していないが、もちろん画面下が重力的な上方に持ち上げられていく体勢も有りえる。……つまり図3(d)(e)は、水平状態な図3(a)から、画面左が重力的な上方に持ち上げられていった体勢を示している。図示していないが、画面右が重力的な上方に持ち上げられていく体勢も有りえる。」、「これらの傾斜状態を検出するセンサとしては、……、重力の方向を検出する重力センサを搭載するようにすればよい。」とあるから、「画面上が重力的な上方に持ち上げられていった体勢」、「画面下が重力的な上方に持ち上げられていく体勢」、「画面左が重力的な上方に持ち上げられていった体勢」、「画面右が重力的な上方に持ち上げられていく体勢」という「傾斜状態」を検出するものである。 さらに、記載事項(エ)の「センサ部17」の「電子コンパスなどの方位センサ」は、「電子地図装置1が絶対方位に対してどのような方位体勢にあるかも検出する」ものである。 よって、記載事項(エ)の「センサ部17」は、「画面上が重力的な上方に持ち上げられていった体勢」、「画面下が重力的な上方に持ち上げられていく体勢」、「画面左が重力的な上方に持ち上げられていった体勢」、「画面右が重力的な上方に持ち上げられていく体勢」という「傾斜状態」を検出し、また、「電子地図装置1が絶対方位に対してどのような方位体勢にあるか」を検出するものである。 また、記載事項(サ)の「CPU10」は、記載事項(オ)の「CPU10」であり、記載事項(オ)に「本例では以上の図3、図4、図5に例示したような、電子地図装置本体の傾斜や移動、及び絶対方位に対する方向をセンサ部17によって検出するようにしており、このために必要なセンサが搭載されている。センサの種類や数としては、これらの傾斜/移動/方位を検出できるものであればどのようなものでもよい。そして後述するように、検出された傾斜/移動/方位の状況に基づいて、CPU10は所定の表示出力処理を実行させることになる。」とあるから、「センサ部17」によって「検出された傾斜/移動/方位の状況に基づいて、所定の表示出力処理を実行」させるものである。 そうすると、記載事項(イ)の「電子地図装置1」は、「センサ部17及びCPU10を備え、センサ部17は、画面上が重力的な上方に持ち上げられていった体勢、画面下が重力的な上方に持ち上げられていく体勢、画面左が重力的な上方に持ち上げられていった体勢、画面右が重力的な上方に持ち上げられていく体勢という傾斜状態を検出し、また、電子地図装置1が絶対方位に対してどのような方位体勢にあるかを検出するものであり、CPU10は、センサ部17によって検出された傾斜状態や方位体勢に基づいて、所定の表示出力処理を実行させるもの」といえる。 (タ)記載事項(カ)の「表示動作」は、記載事項(エ)に「CPU10は、操作部4からのモード設定操作、表示地域指定操作や、センサ部17からの検出情報、GPS受信機18からの検出情報、及びROM12に記憶されている動作プログラムに基づいて、……表示ドライバ13による表示動作を制御し、これによってユーザーの求める地図表示が表示部2において実行されることになる。」とあるから、「CPU10に制御される表示動作」といえる。 (チ)記載事項(カ)の「表示動作」は、記載事項(カ)に「表示方位指定モードでは、指定された方向があくまでその時々の重力的な上方に一致するような状態で表示されることになるが、画面上下左右方向の検出精度や、検出段階数、傾きの検出精度、検出段階数は各種設定できることはいうまでもない。例えば検出段回数を細かくすれば、本体が回転されたようなときに、常に地図上が重力上になるようにほぼ連続的な表示画像変更が可能となるし、また45°毎や90°毎など、段回数を少なくすれば、或る程度の角度回転されたときに表示方向が切り換わるというような表示動作となる。」とあるから、「表示方位指定モード」において、「画面上下左右方向の……検出段階数、傾きの……検出段階数」は「90°毎」に設定でき、「90°毎」に設定すると「或る程度の角度回転されたときに表示方向が切り換わる」の「或る程度の角度」が「90°毎」となり、「本体が回転されたようなときに、」「90°毎」「回転されたときに表示方向が切り換わるというような表示動作となる」ものである。 また、記載事項(カ)の「表示動作」は、記載事項(キ)に「検出精度や検出段階数などの点については、後述する現実方位反映モード、近辺地図反映モード、バーチャル表示モードでも同様であり、体勢や移動についての検出精度や検出段階数の設定次第で表示変更態様を各種設定できる。」とあるから、「現実方位反映モード」においても「表示方位指定モード」と同様に、「本体が回転されたようなときに、」「90°毎」「回転されたときに表示方向が切り換わるというような表示動作となる」ものである。 そうすると、記載事項(カ)の(「CPU10」に制御される)「表示動作」は、「現実方位反映モードにおいて、本体が90°回転する毎に表示方向が切り換わるもの」といえる。 (ツ)記載事項(サ)の「CPU10」は、記載事項(キ)に「4.現実方位反映モードでの地図表示動作」、「現実方位反映モードとされた場合のCPU10による制御動作を図10に示す。」とあるから、「現実方位反映モードとされた場合」、「現実方位反映モードでの地図表示動作」を「制御動作」するものである。 また、記載事項(キ)の「現実方位反映モード」は、記載事項(ク)に「その地域についてはバードビュー画像や3D画像を合成する処理に必要なデータが用意されていない(CD-ROM20に収録されていない)場合は、通常の平面的な地図表示を行なうためにステップF205からF207に進む。垂直もしくは斜めとされている場合は、そのままでは画面上、画面下、画面左、画面右の画面での2次元方向と現実の方角を一致させることはできないため、この場合は、電子地図装置本体の重力的な上方が画面上下左右のいずれに相当しているかを検出する。」、「そしてステップF208では、検出した重力的な上方となる画面上下左右を、その電子地図装置本体1を通して見える方向に一致させた状態で地図画像の表示を行なう。例えば、ユーザーが北を向いているときに手で電子地図装置1を保持し、しかもその電子地図装置1を画面上を重力的な上として斜め又は垂直に持っていたとする。この場合、電子地図装置本体1を通して見える方向とは、換言すればユーザーの向いている方角のことであり、つまり北である。従って、図11(a)のような画面上が北となる地図画像が表示される。これによってユーザーからみれば、例えば電子地図装置1が斜めもしくは垂直であっても、感覚的に現実の方角と一致された状態の地図が表示されることになる。」とあるから、「電子地図装置本体の重力的な上方が画面上下左右のいずれに相当しているかを検出」し、「検出した重力的な上方となる画面上下左右を、その電子地図装置本体1を通して見える方向に一致させた状態で地図画像の表示を行なう」ものである。 そして、記載事項(ク)の「画面上下左右」は、記載事項(エ)に「電子地図装置1の本体における表示部1の画面からみた方向としての上下左右を考え、これを画面上、画面下、画面右、画面左と呼び」とあるから、「画面上、画面下、画面右及び画面左」と解され、記載事項(ク)の「電子地図装置本体の重力的な上方が画面上下左右のいずれに相当しているかを検出」及び「検出した重力的な上方となる画面上下左右」は、それぞれ、「電子地図装置本体の重力的な上方が画面上、画面下、画面右及び画面左のいずれに相当しているかを検出」及び「検出した重力的な上方となる画面上、画面下、画面右及び画面左のいずれか」と解される。 そうすると、記載事項(サ)の「CPU10」は、「現実方位反映モードとされた場合、現実方位反映モードでの地図表示動作を制御動作するものであり、現実方位反映モードは、電子地図装置本体の重力的な上方が画面上、画面下、画面右及び画面左のいずれに相当しているかを検出し、検出した重力的な上方となる画面上、画面下、画面右及び画面左のいずれかを、その電子地図装置本体1を通して見える方向に一致させた状態で地図画像の表示を行なうもの」といえる。 (テ)記載事項(サ)の「CPU10」は、記載事項(ケ)に「7.ナビゲーション表示モードでの地図表示動作」、「即ちCPU10は……現在位置に合致する地図画像データをCD-ROM20から読み出し、その地図画像を表示部2に表示させるとともに、その表示内で現在位置に相当する地点にポインタ等を表示させる……」とあるから、「ナビゲーション表示モード」において、「現在位置に合致する地図画像データを」「表示部2に表示させるとともに、その表示内で現在位置に相当する地点にポインタ等を表示させる」ものである。 また、記載事項(ケ)の「ナビゲーション表示モード」は、記載事項(コ)に「ナビゲーション表示モードの場合は、表示方位指定モード、現実方位反映モード、近辺地図表示モードのそれぞれの動作を複合的に実施すれば、ユーザーにとってより使い勝手のよいナビゲーション機能が実現されることになる。」とあり、「現実方位反映モード」と複合的に実施されるものである。 そうすると、記載事項(サ)の「CPU10」は、「現実方位反映モードと複合的に実施されるナビゲーション表示モードにおいて、現在位置に合致する地図画像データを表示部2に表示させるとともに、その表示内で現在位置に相当する地点にポインタ等を表示させるもの」といえる。 すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認めることができる(以下、この発明を「引用発明」と言う。)。 「地図表示が実行される表示部2が形成されている携帯も可能な電子地図装置1において、 表示部2は、画面上、画面下、画面右、画面左を有し、画面上及び画面下は矩形の長辺であり、画面右及び画面左が矩形の短辺であるものであり、 電子地図装置1は、センサ部17及びCPU10を備え、 センサ部17は、画面上が重力的な上方に持ち上げられていった体勢、画面下が重力的な上方に持ち上げられていく体勢、画面左が重力的な上方に持ち上げられていった体勢、画面右が重力的な上方に持ち上げられていく体勢という傾斜状態を検出し、また、電子地図装置1が絶対方位に対してどのような方位体勢にあるかを検出するものであり、 CPU10は、センサ部17によって検出された傾斜状態や方位体勢に基づいて、所定の表示出力処理を実行させるものであり、 CPU10に制御される表示動作は、現実方位反映モードにおいて、本体が90°回転する毎に表示方向が切り換わるものであり、 CPU10は、現実方位反映モードとされた場合、現実方位反映モードでの地図表示動作を制御動作するものであり、現実方位反映モードは、電子地図装置本体の重力的な上方が画面上、画面下、画面右及び画面左のいずれに相当しているかを検出し、検出した重力的な上方となる画面上、画面下、画面右及び画面左のいずれかを、その電子地図装置本体1を通して見える方向に一致させた状態で地図画像の表示を行なうものであり、 現実方位反映モードと複合的に実施されるナビゲーション表示モードにおいて、現在位置に合致する地図画像データを表示部2に表示させるとともに、その表示内で現在位置に相当する地点にポインタ等を表示させるものである、 電子地図装置1。」 (2)原出願の出願前に頒布された刊行物である実願昭62-103607号(実開昭64-8618号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には、「車載用ナビゲータ装置」に関し、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ・「車載用ナビゲータ装置においては一般に地図を表示すると共にその地図上に現在地と車輌の進行方向が表示される。この表示部としては通常CRTが用いられるが、CRTの両面は縦横の長さが異なり大体3対4程度になっている。このような縦横長さの異なる表示装置を用いる場合、第8図に示すように表示方法Aと表示方法Bの2通りの方法が考えられるが、どちらが優れているかはその時の状況により異なってくる。 即ち、モニタは通常車輌の車内に設置されその設置スペースは非常に限られている。そのため、取り付け対象の車輌によって、Aの方法が良い場合とBの方法が良い場合とがある。 また第9図の地図を現在地を示すマーク50の方向(車輌の進行方向)を常に上方向になる様に表示する場合(この方が感覚的に好ましいとされている)、地点Iを目的地とする場合には第10図に示すようにAの方法が好ましく、地点IIを目的地とする場合には第11図に示すようにBの方が好ましいと考えられる。」(明細書第2頁第4行目?第3頁第3行目) ・「本考案は上記した従来の欠点を改善するためになされたもので、地図情報をモニタに表示すると共に車輌の現在地を該モニタに表示する車載用ナビゲータ装置において.モニタのモニタ中央を中心とした回転方向角度を検出する手段と、該検出回転方向角度に応じた変更を加えて表示する手段とを有することを基本的な特徴とするものである。 この構成において.モニタの回転方向角度を自由に設定しても、その表示は該回転方向角度に対応した変更を加えられるため、所定の表示を維持できる。そのため、モニタの設置スペースの自由度を向上させることができる。 また、これらの構成に加えてモニタの中央を中心とした回転方向角度を変更する手段を設け、表示手段に回転角度に応じて、表示する地図領域を変更して表示させる様にしても良く、これにより効率的な表示を実現することが可能になる。」(明細書第3頁第19行目?第4頁第15行目) ・「表示器角度検出部7の角度検出センサの最も基本的な構成を第2図に示す。ここではスイッチSWにより、モニタ10が縦位置か横位置かを、すなわちモニタ10の回転方向角度を検出している。モニタ10が横位置の角度Aの場合スイッチSWはオフ、縦位置の角度Bの場合スイッチSWはオンとなるように構成されている。」(明細書第5頁第10行目?第16行目) ・「表示信号発生部5はこのような表示部6の回転方向角度を表示器角度検出部7から入力し、その検出角度に応じて表示部6のモニタ10に表示する車輌の進行方向を一定方向に維持すると共に、地図領域の変更を行わせる。」(明細書第6頁第11行目?第15行目) ・第8?11図に、モニタに表示される現在地を示すマーク50は、モニタが横位置である表示方法Aにおいて、モニタの上側の長辺に向かう方向を示す画像であり、モニタが縦位置である表示方法Bにおいて、モニタの上側の短辺に向かう方向を示す画像であるものが図示されている。 ・上記記載事項からみて、引用例2には、 「地図を表示する車載用ナビゲータ装置において、モニタ10が横位置であることを検出すると、モニタ10の上側の長辺に向かう方向を示す画像であるマーク50を表示し、モニタ10が縦位置であることを検出すると、モニタ10の上側の短辺に向かう方向を示す画像であるマーク50を表示し、現在地を示すマーク50の方向(車輌の進行方向)を常に上方向になるように表示する、車載用ナビゲータ装置。」が記載されている。 (3)原出願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-34353号公報(以下「引用例3」という。)には、「ナビゲーション装置」に関し、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ・「【0024】つまり、液晶ディスプレイ14の縦横比は、図3Aに示すように、3:4とされている。この液晶ディスプレイ14をそのまま横長の画面として使用すると、図3Bに示すように、フロントワイド機能により、現在地のマークA1が画面の下方に示される。そして、ヘッドアップ機能により、画面の上方が常に進行方向となる。したがって、これから必要となる地図情報は、現在地のマークA1から画面の上端までの間のL1で示される範囲になる。 【0025】これに対して、液晶ディスプレイ14を90度回転させると、図3Cに示すように、縦横比が4:3の縦長の画面となる。フロントワイド機能により、現在地のマークA2が画面の下方に示され、ヘッドアップ機能により、画面の上方が常に進行方向となる。したがって、これから必要となる地図情報は、現在地のマークA2から画面の上端までの間のL2で示される範囲になる。」 ・図3A?図3Cに、液晶ディスプレイに表示される現在地を示すマークA1は、液晶ディスプレイが横長の画面として使用されると、液晶ディスプレイの上側の長辺に向かう方向を示す画像であり、液晶ディスプレイが縦長の画面として使用されると、液晶ディスプレイの上側の短辺に向かう方向を示す画像であるものが図示されている。 上記記載事項からみて、引用例3には、 「地図を表示するナビゲーション装置において、液晶ディスプレイ14が横長の画面として使用されると、液晶ディスプレイ14の上側の長辺に向かう方向を示す画像であるマークを表示し、液晶ディスプレイ14が90度回転され、縦長の画面として使用されると、液晶ディスプレイ14の上側の短辺に向かう方向を示す画像であるマークを表示し、ヘッドアップ機能により、画面の上方が常に進行方向となるように現在地のマークを表示する、ナビゲーション装置。」が記載されている。 (4)原出願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-160489号公報(以下「引用例4」という。)には、「車載ナビゲーション装置」に関し、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ・「【0004】地図表示には、通常、北方位を画面の上方にして表示するノースアップモードと、車両の進行方位を画面の上方にして表示するヘッドアップモード(またはヘディングアップモード)の2種類があり、経路探索結果に基づいて走行する場合には、あまり方位を意識する必要がないことから、常に車両の前方の進行方位を指すヘッドアップモードで走行することが多い。 【0005】また、車載ナビゲーション装置の通常の表示画面は横長であり画面上部の表示が限られることから、ヘッドアップモードの場合は、特に車両の前方を表すため画面は、図5に示す車載ナビゲーション装置の表示画面例のように、車両位置マーク1の表示位置を情報画面2の中心からやや下げて表示されている。」 ・「【0015】また、図2は本実施の形態1における表示情報の表示画面例を示す図である。図2において、1は車両位置マーク、2は情報画面、3は機能選択表示、4は北方位の方向、5は現在の地名、6は表示縮尺である。従来例の表示画面例を示す図4,図5の横長の表示画面例を縦長の表示画面例としたものである。」 ・「【0017】このように、表示装置10の回転角度を回転角度検出手段11の検出した回転角度が水平位置(0°)の近傍の場合は通常の情報表示を行い、回転角度が垂直位置(90°)の近傍の場合は、表示情報12の上部表示が表示装置の上部位置となるように、回転表示手段13により回転1次変換の表示処理を行い表示角度を90°回転して表示することができる。これにより、縦長置き,横長置きのどちらでも画面表示ができ、従来の横長置きによる特徴を損なうことなく、縦長置きによる車両前方の画面上部の表示量を大きくすることができる。」 ・図2に、表示装置に表示される車両位置マーク1は、表示装置が縦長置きのとき、表示装置の上側の短辺に向かう方向を示す画像であるものが図示されている。 ・図5に、表示装置に表示される車両位置マーク1は、表示装置が横長置きのとき、表示装置の上側の長辺に向かう方向を示す画像であるものが図示されている。 上記記載事項からみて、引用例4には、 「地図を表示する車載ナビゲーション装置において、ヘッドアップモードの場合、表示装置10が横長置きであることを検出すると、表示装置10の上側の長辺に向かう方向を示す画像である車両位置マーク1を表示し、表示装置10が縦長置きであることを検出すると、表示装置10の上側の短辺に向かう方向を示す画像である車両位置マーク1を表示し、車両の進行方位を画面の上方にして表示する、車載ナビゲーション装置。」が記載されている。 3 本願発明と引用発明との対比 (1)両発明の対応関係 (ア)引用発明の「地図表示が実行される表示部2が形成されている携帯も可能な電子地図装置1」は、本願発明の「表示部に地図を表示させる携帯型地図表示装置」に相当する。 また、引用発明の「表示部2」は、「画面上、画面下、画面右、画面左を有し、画面上及び画面下は矩形の長辺であり、画面右及び画面左が矩形の短辺であるものであり」、「CPU10に制御される表示動作は、現実方位反映モードにおいて、本体が90°回転する毎に表示方向が切り換わるもの」であるから、「本体が90°回転する毎に」、「矩形の長辺である」「画面上」または「画面下」を上方向とする表示と、「矩形の短辺である」「画面右」または「画面左」を上方向とする表示と、に「表示方向が切り換わるもの」である。 ここで、「矩形の長辺である」「画面上」または「画面下」を上方向とする表示は、横画面表示であり、「矩形の短辺である」「画面右」または「画面左」を上方向とする表示は、縦画面表示である。 そうすると、引用発明の「表示部2」は、「本体が90°回転する毎に」横画面表示又は縦画面表示のいずれかの画面に切り換わるものである。 そして、横画面表示又は縦画面表示のいずれかの画面に切り換わる構成と、横画面表示又は縦画面表示の画面に設定される構成とは、どちらも画面の表示態様を変更させるもので実質的な内容は相違しないから、引用発明の「表示部2」の「本体が90°回転する毎に」横画面表示又は縦画面表示のいずれかの画面に切り換わる構成は、本願発明の「表示部」の「横画面表示又は縦画面表示の画面に設定される」構成に相当する。 よって、引用発明の「表示部2は、画面上、画面下、画面右、画面左を有し、画面上及び画面下は矩形の長辺であり、画面右及び画面左が矩形の短辺であるもの」であって、「CPU10に制御される表示動作は、現実方位反映モードにおいて、本体が90°回転する毎に表示方向が切り換わるもの」である、「地図表示が実行される表示部2が形成されている携帯も可能な電子地図装置1」は、本願発明の「横画面表示又は縦画面表示の画面に設定される表示部に地図を表示させる携帯型地図表示装置」に相当する。 (イ)引用発明の「CPU10」は、「センサ部17によって検出された」「画面上が重力的な上方に持ち上げられていった体勢、画面下が重力的な上方に持ち上げられていく体勢、画面左が重力的な上方に持ち上げられていった体勢、画面右が重力的な上方に持ち上げられていく体勢という傾斜状態」、すなわち、「画面上、画面下、画面左及び画面右のいずれ」が「重力的な上方」にあるかという「傾斜状態」に基づいて、「所定の表示出力処理を実行させるもの」であり、さらに、「センサ部17によって検出された」「電子地図装置1が絶対方位に対してどのような方位体勢にあるか」という「方位体勢」に基づいて、「所定の表示出力処理を実行させるもの」である。 また、引用発明の「CPU10」は、「現実方位反映モードとされた場合、現実方位反映モードでの地図表示動作を制御動作するものであり、現実方位反映モードは、電子地図装置本体の重力的な上方が画面上、画面下、画面右及び画面左のいずれに相当しているかを検出し、検出した重力的な上方となる画面上、画面下、画面右及び画面左のいずれかを、その電子地図装置本体1を通して見える方向に一致させた状態で地図画像の表示を行なうもの」である。 上記「電子地図装置本体の重力的な上方が画面上、画面下、画面右及び画面左のいずれに相当しているか」の検出は、「センサ部17によって検出された」「画面上、画面下、画面右及び画面左のいずれ」が「重力的な上方」にあるかという「傾斜状態」に基づくものであり、上記(ア)で述べたように「表示部2」は、「本体が90°回転する毎に」横画面表示及び縦画面表示のいずれか一方の画面に切り換わるものであり、「画面上」が「重力的な上方」にある状態から、「画面右」または「画面左」が「重力的な上方」にある状態へ変化することは「本体が90°回転する」ことを意味するから、引用発明の「CPU10」は、「画面上」が「重力的な上方」にある状態から、「画面右」または「画面左」が「重力的な上方」にある状態へ変化したことを検出すると、「表示部2」を横画面表示及び縦画面表示のいずれか一方の画面に設定するものである。 また、上記「その電子地図装置本体1を通して見える方向」は、「センサ部17によって検出された」「電子地図装置1が絶対方位に対してどのような方位体勢にあるか」という「方位体勢」に基づき取得されるものである。 そうすると、引用発明の「CPU10」は、「現実方位反映モードにおいて」、「センサ部17によって検出された」「画面上、画面下、画面左及び画面右のいずれ」が「重力的な上方」にあるかという「傾斜状態」に基づき、「電子地図装置本体の重力的な上方が画面上、画面下、画面右及び画面左のいずれに相当しているかを検出し」、「画面上」が「重力的な上方」にある状態から、「画面右」または「画面左」が「重力的な上方」にある状態に変化したことを検出すると、「表示部2」を横画面表示及び縦画面表示のいずれか一方の画面に設定し、「センサ部17によって検出された」「電子地図装置1が絶対方位に対してどのような方位体勢にあるか」という「方位体勢」に基づき、「その電子地図装置本体1を通して見える方向」を取得し、当該取得した方向に、「検出した重力的な上方となる画面上、画面下、画面右及び画面左のいずれかを」「一致させた状態で地図画像の表示を行なうもの」である。 そして、上記「CPU10」の、「現実方位反映モードにおいて」、「センサ部17によって検出された」「画面上、画面下、画面左及び画面右のいずれ」が「重力的な上方」にあるかという「傾斜状態」に基づき、「電子地図装置本体の重力的な上方が画面上、画面下、画面右及び画面左のいずれに相当しているかを検出し」、「画面上」が「重力的な上方」にある状態から、「画面右」または「画面左」が「重力的な上方」にある状態に変化したことを検出すると、「表示部2」を横画面表示及び縦画面表示のいずれか一方の画面に設定し、「センサ部17によって検出された」「電子地図装置1が絶対方位に対してどのような方位体勢にあるか」という「方位体勢」に基づき、「その電子地図装置本体1を通して見える方向」を取得する機能部分は、本願発明の「前記表示部の前記画面における上方向を示す方位を取得する方位取得部」に相当する。 また、上記「CPU10」の、(「その電子地図装置本体1を通して見える方向」を取得し、)当該取得した方向に、「検出した重力的な上方となる画面上、画面下、画面右及び画面左のいずれかを」「一致させた状態で地図画像の表示を行なう」機能部分は、「前記取得された方位を前記表示部の前記画面に表示する地図の表示方向に反映させるように制御する制御部」に相当する。 (2)両発明の一致点 「横画面表示又は縦画面表示の画面に設定される表示部に地図を表示させる携帯型地図表示装置であって、 前記表示部の前記画面における上方向を示す方位を取得する方位取得部と、 前記取得された方位を前記表示部の前記画面に表示する地図の表示方向に反映させるように制御する制御部と、 を備える携帯型地図表示装置。」 (3)両発明の相違点 本願発明は、「前記表示部の一辺に向かう方向を示す画像を表示し、前記画面に表示される前記地図の表示方向が変化した場合であっても、前記画像が前記表示部の一辺へ向かう方向を表わす状態を維持する情報表示部」を備えるものであるのに対し、引用発明は、「現実方位反映モードと複合的に実施されるナビゲーション表示モードにおいて、現在位置に合致する地図画像データを表示部2に表示させるとともに、その表示内で現在位置に相当する地点にポインタ等を表示させる」ものである点。 (4)判断 地図を表示するナビゲーション装置において、横画面表示になると、表示部の上側の長辺に向かう方向を示す画像を表示し、縦画面表示になると、表示部の上側の短辺に向かう方向を示す画像を表示し、画面の上方が常に進行方向となるように、現在位置を示す画像を表示する態様は、引用例2?4のいずれにも記載されているように周知であり、引用発明の「現実方位反映モードと複合的に実施されるナビゲーション表示モードにおいて、」「現在位置に相当する地点に」表示される「ポインタ等」を、当該周知の「現在位置を示す画像」として具現化することは、当業者が適宜なし得たことである。 そして、「現在位置に相当する地点に」表示される「ポインタ等」を、上記周知の「現在位置を示す画像」として具現化することにともない、引用発明は、「現実方位反映モードと複合的に実施されるナビゲーション表示モードにおいて、」「表示部2」の一辺に向かう方向を示す画像を表示し、「表示部2」の画面に表示される地図の表示方向が変化した場合であっても、前記画像が「表示部2」の一辺へ向かう方向を表わす状態を維持するものとなることは自明である。 したがって、上記相違点に係る本願発明の構成は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が適宜なし得たことである。 また、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-09-27 |
結審通知日 | 2016-10-04 |
審決日 | 2016-10-17 |
出願番号 | 特願2013-601(P2013-601) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G01C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 池田 貴俊 |
特許庁審判長 |
中川 真一 |
特許庁審判官 |
久保 竜一 前田 浩 |
発明の名称 | 携帯型地図表示装置及びその表示制御方法 |