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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1322168
審判番号 不服2015-15083  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-11 
確定日 2016-12-01 
事件の表示 特願2009-255407「電力融通システム及びコントロールユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月19日出願公開、特開2011-101534〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年11月6日を出願日とする出願であって、平成27年5月8日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成27年5月12日)、これに対し、平成27年8月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、当審により平成28年6月10日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成28年6月14日)、これに対し、平成28年8月10日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.特許請求の範囲
平成28年8月10日付手続補正で、特許請求の範囲は以下のように補正された。
「【請求項1】
主電力幹線から分岐する副電力幹線を有する電力供給系において、同一の前記副電力幹線から電力供給を受ける電力需要家の間で各自の発電装置による発電量を互いに融通し合う電力融通システムにおいて、
前記電力需要家が売電する電力量を売電電力量とし、前記電力需要家が他の電力需要家に対して要求する電力量を買電電力量として、
電力を融通し合う電力需要家が構成員とされる電力融通グループが形成され、
前記電力融通グループの各電力需要家は前記発電装置の電力を管理するコントロールユニットを備え、
前記コントロールユニットは、前記売電電力量を示す売電電力量情報と前記買電電力量を示す買電電力量情報とを前記電力融通グループ内の他の電力需要家に対して送受信し、前記売電電力量と他の電力需要家のコントロールユニットから受信した前記買電電力量情報とに基づいて前記他の電力需要家との間で電力融通を成立させ、前記他の電力需要家との間で成立した条件に基づいて前記売電電力量を前記電力供給系に放電する旨の指令を出す
ことを特徴とする電力融通システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力融通システムにおいて、
前記コントロールユニットは、特定の電力需要家間で予め電力売買条件を設定する設定機能をさらに備え、この設定電力売買条件に基づいて特定の電力需要家同士の電力売買を行う
ことを特徴とする電力融通システム。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一項に記載の電力融通システムにおいて、
前記各電力需要家はさらに前記発電装置による発電量を蓄電する蓄電池を備え、
前記蓄電池にて閾値を超えて蓄えている電力量に基づいて前記売電電力量を求める
ことを特徴とする電力融通システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電力融通システムにおいて、
前記発電装置による発電量が前記電力需要家の消費する消費電力量よりも大きいときに前記発電量と前記消費電力量との差を前記売電電力量とする
ことを特徴とする電力融通システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電力融通システムにおいて、
前記電力供給系のうちで前記各電力需要家への電力供給分岐部分よりも上流側の基幹部には、当該基幹部に流れる基幹電力量を計測する基幹電力量計測装置が設けられ、
前記基幹電力量計測装置により逆潮が検出されたときには、前記コントロールユニットによる電力売買を制限する
ことを特徴とする電力融通システム。
【請求項6】
主電力幹線から分岐する副電力幹線を有する電力供給系において、同一の前記副電力幹線から電力供給を受け、電力を融通し合う電力需要家が構成員とされる電力融通グループの各電力需要家に設けられた発電装置の電力を管理するコントロールユニットであって、
前記電力需要家が売電する電力量を売電電力量とし、前記電力需要家が他の電力需要家に対して要求する電力量を買電電力量として、
前記売電電力量を示す売電電力量情報と前記買電電力量を示す買電電力量情報とを前記電力融通グループ内の他の電力需要家に対して送受信し、前記売電電力量と他の電力需要家のコントロールユニットから受信した前記買電電力量情報とに基づいて前記他の電力需要家との間で電力融通を成立させ、前記他の電力需要家との間で成立した条件に基づいて前記売電電力量を前記電力供給系に放電する旨の指令を出す
ことを特徴とするコントロールユニット。」


3.当審の拒絶の理由
平成28年6月10日付の当審の拒絶の理由で以下の事項を通知した。
「この出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


(1)この出願の発明の構成が不明である。例えば、電力融通グループとあるが、どの様な定義であるのか不明(図1において、電力融通グループは、時々刻々グループのメンバーが替わるのか、点線で囲まれた三電力需要家で固定されるのか開示が無く不明。1つの副電力幹線内のグループは複数有っても良いのか否か開示が無く不明。仮に、複数グループがある場合、一電力需要家は複数のグループに所属できるのか否か開示が無く不明。)である。
更に、本願は、電力需要家間で電力を売買することが前提であるが、売買とは「あきない」のことであるから、金銭のやり取りが必要であるにもかかわらず、金銭のやり取りについて何ら説明が無く不明[図2において、蓄電池に貯蔵される電力は、系統からのもの、太陽電池からのもの、燃料電池からのものである。電力の売却のためには、蓄電池の、系統からの電力の単価ごと(時刻によって単価が異なる)の充電量、太陽電池からの電力の単価に基づく充電量、燃料電池からの電力の単価ごと(製造方法・ガス購入先によって単価が異なる)の充電量を把握すると共に、売主が電力を単価いくらでどの程度売るかを決めなければならないし、買主が電力を単価いくらでどの程度買うかを把握しなければ売買契約が成り立たない。また、電力会社の配線(図1の113)を使用して電力を売買するから、配線使用料(遠方の電力需要家から購入すれば、配線使用料も距離に応じて高くなる。そもそも、配線使用料を誰が払うのか開示が無い。)も考慮しなければならない。これらの点は、明細書では全く考慮されていない。価格によっては売買契約が成り立たない場合もあるが、何ら考慮されていない。本願の説明では、単に、余剰電力を有する者が、電力が不足する者に、電力を配分しているだけである。]である。
更に、図4?6に、「売買時刻?」とあるが、明細書を参照すると、これらの売買時刻は、各々が予め決めた時刻のことであり、同一時刻ではないから、そもそも売買契約が成り立たないものと考えられるが、この点不明である。
更に、図6の電力売買処理は、どの電力需要家が行うのか開示が無く不明(仮に、売電する一電力需要家が行うものとする。複数買主がいる場合、売電する電力の配分量をどの様に決定するのか買主の意向が全く反映されておらず、複数の買主が各々単価いくらで買うかも考慮されていない。売電側が複数の電力需要者、購入側も複数の電力需要者の場合、放電・充電の指令を誰が発するのか不明である。統括的な管理装置が必要ではないのか。)である。
更に、特許請求の範囲に、「電力制御装置」とあるが、具体的に何に対応するのか不明(図2のどれか)である。
更に、図7(C)において、電力を売っているが、売電量は【0047】に記載された原則と整合していない。
更に、請求項1において、「送受信し」とあるが、送信及び受信のタイミングは何ら考慮されず、送信・受信が行われれば良いのか否か不明(図4?6参照)である。
更に、請求項1において、「電力供給系に放電する旨の指令を出す」とあるが、充電指令が何れかの電力需要家に出されなければ、電力が融通できず、何故電力が融通できるのか不明である。請求項6も同様である。」


4.拒絶の理由に対する当審の判断
(1)特許請求の範囲及び明細書には電力融通グループとあるが、例えば、図1において、電力融通グループは、時々刻々グループのメンバーが替わるのか、点線で囲まれた三電力需要家で固定されるのか開示が無く不明であり、又、1つの副電力幹線内にはグループは複数有っても良いのか否か何ら開示が無く不明であり、仮に、1つの副電力幹線内に複数グループがある場合、一電力需要家は複数のグループに所属できるのか否か何ら開示が無く不明のため、電力融通グループがどの様な定義であるのか不明である。

(2)本願は、電力融通グループ内の電力需要家間で電力を売買することが前提であるが、売買とは「あきない」のことであるから、金銭のやり取りが必要であるにもかかわらず、金銭のやり取りについて何ら説明が無く不明である。例えば、図2において、蓄電池に貯蔵される電力は、系統からのもの、太陽電池からのもの、燃料電池からのものであるから、蓄電池の電力の売却のためには、まず、蓄電池に貯蔵される電力の、系統からの電力の単価ごと(時刻によって単価が異なる)の充電量、太陽電池からの電力の単価に基づく充電量、燃料電池からの電力の単価ごと(製造方法・ガス購入先によって単価が異なる)の充電量を把握しなければならず、次に、売主が電力を単価いくらでどの程度売るかを決めなければならないし、買主が電力を単価いくらでどの程度買うかを把握しなければ売買契約が成り立たない。また、電力会社の配線(図1の113)を使用して電力を売買するから、配線使用料(遠方の電力需要家から購入すれば、配線使用料も距離に応じて高くなる。そもそも、配線使用料を誰が払うのか開示が無い。)も考慮しなければならない。しかし、これらの点は、明細書では全く考慮されておらず、何等開示も無い。しかも、価格によっては売買契約が成り立たない場合もあるが、この点も何ら考慮されていない。明細書には、単に、余剰電力を有する者が、電力が不足する者に、電力を配分することのみが記載され、電力の売買については開示が無い。

(3)図4に「売買時刻?」とあり、対応する明細書【0045】、【0046】には、「図4を参照して、コントロールユニット7が実行する売電処理について説明する。ここで説明する売電処理では、コントロールユニット7により売電電力量が計算されて、他の電力需要家60に対して電力が売り出す処理が行われる。なお同処理は所定の演算周期毎に繰り返し実行される。ステップS110では処理時刻が予め設定された売買時刻であるか否か判定される。例えば、太陽電池3による発電が行われている電力需要家60にあっては、蓄電池16の充電レベルCLが最大になると予想される時刻が設定される。売買時刻となっているときには、ステップS120に移行する。」とある。
図5に「売買時刻?」とあり、対応する明細書【0048】、【0049】には、「図5を参照して、コントロールユニット7が実行する買電処理について説明する買電処理では、コントロールユニット7により買電電力量を計算する。なお同処理は所定の演算周期毎に繰り返し実行される。ステップS210にて処理時刻が予め設定された売買時刻であるか否か判定される。売買時刻となっているときには、ステップS220に移行する。」とある。
図6に「売買時刻?」とあり、対応する明細書【0051】、【0052】には、「図6を参照して、コントロールユニット7が実行する電力売買処理について説明する。ここで説明する電力売買処理では、コントロールユニット7により売電電力量と買電電力量とを比較して電力売買が成立させる処理が行われる。なお同処理は所定の演算周期毎に繰り返し実行される。ステップS310にて処理時刻が予め設定された売買時刻であるか否か判定される。売買時刻となっているときには、ステップS320に移行する。」とある。
これらの記載から、何れの売買時刻も、各々が予め決めた時刻のことであり、同一時刻ではないから、電力需要家が電力を売りたいときに売買処理が行われず、電力需要家が電力を買いたいときに売買処理が行われないこととなり、売買契約が成り立たないものと考えられ、又、売電電力量情報の送信、買電電力量情報の送信は、売電処理の売買時刻、買電処理の売買時刻に既に行われているから、電力需要家が電力を売りたくないときに売買処理が行われ、電力需要家が電力を買いたくないときに売買処理が行われることとなり、売買契約が成り立たないものと考えられ、これらの点が不明である。

(4)請求項1に、「前記コントロールユニットは、前記売電電力量を示す売電電力量情報と前記買電電力量を示す買電電力量情報とを前記電力融通グループ内の他の電力需要家に対して送受信し」とあるが、送信及び受信のタイミングは何ら記載されていないから、送信・受信が行われればタイミングは任意となるが、上記(3)同様、売買契約が成り立たないものと考えられるが、この点が不明である。請求項6も同様である。

(5)図6及び明細書【0051】?【0054】には電力売買処理が記載されているが、この電力売買処理はどの電力需要家のコントロールユニットがどの様に行うのか何ら開示が無く不明である。
仮に、売電する一電力需要家のコントロールユニットが売買処理を行うものとする。複数買主がいる場合、複数の買主が各々単価いくらで電力を買うか考慮されておらず(通常高値で買う方に売る)、売主が単価いくらなら電力を売るか考慮されておらず、売電する電力の配分量を誰がどの様に決定するのか全く不明であり、何故売買処理が成り立つのか不明である。
売電する電力需要家が複数いて、買主が1人の場合、複数の売主が単価いくらで電力を売るか考慮されておらず、買主が単価いくらで電力を買うか考慮されておらず(通常安値で売る方を買う)、売電する電力の配分量を誰がどの様に決定するのか全く不明であり、何故売買処理が成り立つのか不明である。
更に、売電する電力需要家が複数いて、買電する電力需要家も複数いる場合、売買の指令を誰が発するのか不明であり、統括的な管理装置がなくて何故売買が成り立つのか不明である。

(6)図7(C)において、時刻t34?時刻t35で電力を売っているが、第2閾値CLC以下になるまで売電しており、明細書【0040】に記載された「売電可能電力量は、所定時刻において充電レベルCLが第2閾値CLCを超えている場合において、この第2閾値CLCを超えて蓄えられている電力量として求められる」、明細書【0047】に記載された「第2閾値CLCよりも小さいときには売電することができない」、「例えば、蓄電池16にて第2閾値CLCを超えて蓄えている蓄電量MGの10割?数割が売電電力量として設定される。」との記載と矛盾するため、売電可能量が特定できず不明である。請求人は、平成28年8月10日付意見書で、「本願明細書の段落〔0047〕は、充電レベルCLが第2閾値CLCよりも大きいときに売電電力量の計算を行うことを記載しているにすぎず、売電電力量の記載の一例であるため、図7(c)の記載と整合しないものではないと思料します。」と主張するが、当該主張に基づけば、充電レベルCLが第1閾値CLB以下になるまで売電しても良いこととなり、蓄電池の放電禁止レベル以下まで売電することが含まれる(明細書【0066】)から、請求人の上記主張は採用できない。

(7)請求項1において、「電力供給系に放電する旨の指令を出す」とあるが、充電指令が何れかの電力需要家に出されなければ電力が融通できず(例えば、バッテリに充電するためにはバッテリへのスイッチをオンにする必要がある。図5では買電処理の際、蓄電池の充電レベルを判定している。図7では買電の際、蓄電池の充電レベルが上昇している。)、何故電力が融通できるのか不明である。請求項6も同様である。

(8)したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1-6の記載は、発明の詳細な説明を参照しても明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


5.むすび
したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1-6の記載は、発明の詳細な説明を参照しても明確ではないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-23 
結審通知日 2016-09-27 
審決日 2016-10-19 
出願番号 特願2009-255407(P2009-255407)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H02J)
P 1 8・ 536- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂東 博司  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 矢島 伸一
堀川 一郎
発明の名称 電力融通システム及びコントロールユニット  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  

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