• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1322174
審判番号 不服2016-663  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-15 
確定日 2016-12-01 
事件の表示 特願2013-128619号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月 8日出願公開、特開2015- 2792号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月19日付けで出願され、平成27年2月2日付けで拒絶理由通知がなされ、平成27年4月8日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成27年10月14日付け(発送日:平成27年10月20日)で拒絶査定がなされ、これに対して平成28年1月15日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、これに対して平成28年3月18日付けで前置報告がなされたものである。

第2 平成28年1月15日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成28年1月15日付けの手続補正(以下、本件補正という)を却下する。

[理由]

1.本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載の補正を含む補正であり、そして、特許請求の範囲の請求項1の記載は、
補正前(平成27年4月8日付け手続補正)の
「【請求項1】
所定の判定条件を満足したことを契機として、遊技者にとって有利な特別遊技状態に移行するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定が行われると、図柄を変動表示させた後に、当該判定手段による判定結果に対応付けられた図柄を停止表示させる図柄表示手段と、
遊技に応じて、所定の演出部材による演出の実行を制御する演出制御手段と、
演出における遊技者の入力操作を受け付ける操作手段と、を備え、
前記演出制御手段は、
前記図柄表示手段による図柄の変動表示中に、前記操作手段による1回目の操作の受け付けが可能となり、
当該操作手段による1回目の操作を受け付けた後に、当該1回目の操作を受け付けなかった場合の演出とは異なる第1の特殊演出を行い、
2回目の操作を促す演出を行い、
当該2回目の操作を促す演出が行われた後に当該2回目の操作を受け付けた場合に、当該2回目の操作を受け付けなかった場合の演出とは異なる第2の特殊演出を行うこと、
を特徴とする、遊技機。」
から、
補正後(本件補正である平成28年1月15日付け手続補正)の
「【請求項1】
所定の判定条件を満足したことを契機として、遊技者にとって有利な特別遊技状態に移行するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定が行われると、図柄を変動表示させた後に、当該判定手段による判定結果に対応付けられた図柄を停止表示させる図柄表示手段と、
遊技に応じて、所定の演出部材による演出の実行を制御する演出制御手段と、
演出における遊技者の入力操作を受け付ける操作手段と、を備え、
前記演出制御手段は、
前記図柄表示手段による図柄の変動表示中に、前記操作手段による1回目の操作の受け付けが可能となり、
当該操作手段による1回目の操作を受け付けた後に、当該1回目の操作を受け付けなかった場合の演出とは異なる第1の特殊演出を行い、
当該第1の特殊演出において、2回目の操作を促す演出を行い、
当該2回目の操作を促す演出が行われた後に当該2回目の操作を受け付けた場合に、当該2回目の操作を受け付けなかった場合の演出とは異なる第2の特殊演出を行うこと、
を特徴とする、遊技機。」

へ補正された(下線は補正箇所を示す)。

2.補正の適否
上記補正事項は、補正前の請求項1における「第1の特殊演出」と「2回目の操作を促す演出」との関係を、「当該操作手段による1回目の操作を受け付けた後に、当該1回目の操作を受け付けなかった場合の演出とは異なる第1の特殊演出を行い、2回目の操作を促す演出を行い」という記載から、「当該操作手段による1回目の操作を受け付けた後に、当該1回目の操作を受け付けなかった場合の演出とは異なる第1の特殊演出を行い、当該第1の特殊演出において2回目の操作を促す演出を行い」と限定したものである。
また、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する限定的減縮を目的とするものに該当する。

そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)原査定の拒絶の理由において提示された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2009-172049号公報(以下、刊行物1という)には以下の記載がある。(下線は合議体が審決にて付した。以下、同じ)

ア 「【0001】 本発明は、パチンコ遊技機、特に遊技者が演出に介入する為の操作手段を有するパチンコ遊技機において、当選確定表示に至るまでの制御に関する発明である。・・・
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その第1に目的とするところは、遊技者が自らリーチ演出に関する報知を得る機会とタイミングを選択することによって、遊技に積極的に参加する感覚を与える事である。この感覚により、特定のリーチ演出を自ら獲得したという実感を与えることとなり、幅広い遊技者層に対して共感を得やすいパチンコ機とする目的である。」

イ 「【0032】
図1はこの発明の実施形態におけるパチンコ遊技機1の外観構成を示す正面図である。・・・
【0034】
遊技盤5の下部には操作手段として作動する押ボタン8、9、10が配置されている。押ボタン8、9、10は、左押ボタン8、中押ボタン9、右押ボタン10からなり、大当り遊技中に、例えば後述する液晶表示部15で表示される演出に遊技者自らがいずれかを操作することにより、例えば続きの演出を選択する等に使用される。・・・
【0041】
始動入賞口20または役物始動口21に遊技球が入ると、予め定める個数、例えば3個の賞球(遊技球)が遊技者に付与されるとともに、遊技者が特別遊技(以下、大当り遊技と記載するときあり)を実行できるか否かを決定するための大当り抽選及び大当り遊技の内容を決定する大当り種別抽選からなる特別図柄抽選が行われる。・・・
【0046】
・・・大当り遊技に突入すると、開閉板が開状態となり、容易に遊技球が特別入賞口23に入るので、遊技者は多数個の賞球を獲得することができる。」

ウ 「【0047】
図4はこの発明の実施形態におけるパチンコ遊技機1の電気的構成を示すブロック図である。図4において、制御部100は、I/Oポート101A,101Bと、ドライバ回路102A,102B,102Cと、主制御部110と、第1副制御部120,第2副制御部130と、中継基板140とを含む。I/Oポート101Aは、主制御部110と、入力部30のうちの始動口20に対応する始動口センサ30と、役物始動口21に対応する役物始動口センサ31と、大入賞口センサ32と、ゲートセンサ33と、複数の普通入賞口N1?N4のそれぞれに設けられる普通入賞口センサ34A?34Dとのインタフェースであり、ドライバ回路102A?Cは、各出力部を駆動する。
【0048】
主制御部110は、パチンコ遊技機1における遊技の基本となる動作を制御するためのものであり、CPU111や、大当り抽選を行うための乱数発生部と、遊技を制御するプログラムソフト等が記憶されたROM112や、制御時に必要なデータが書込まれるRAM113を含むマイクロコンピュータで構成されている。
【0049】
主制御部110は、入力部からI/Oポート101Aを介して入力された信号に基づいて、抽選結果に応じたコマンドやデータなどを中継基板140を介して第1副制御部120に一方向に出力するとともに、ドライバ回路102Aを介して出力部に含まれる抽選結果表示手段である特別図柄表示部SD(SD1、SD2)と、普通図柄表示部NDと、特別図柄用保留表示部TD(T11、T12、T21、T22)と、普通図柄用保留表示部MDと、始動口駆動部35と、大入賞口駆動部36とに制御信号を与える。始動口駆動部35は、図2に示した可動翼片22を開閉する。大入賞口役物駆動部36は、大入賞口23の開閉板を開閉する。始動入賞に基づいて行われる抽選処理はCPU111により実行される。
【0050】
第1副制御部120は、ドライバ回路102Bを介して液晶表示部15の表示を制御するものであり、演出表示実行手段として作動するCPU121と、ROM122と、RAM123とを含むマイクロコンピュータで構成されている。
【0051】
前記CPU121は、CPU111からの抽選結果に応じたコマンドを受けて、多彩な演出を行う。例えば前記CPU121は大当り遊技中、CPU111が実行する大入賞口開放に応じた演出画像を液晶表示部15に画像表示する。また、ROM122には押ボタンの有効化時間を計時するための計時部(タイマ)200と、押ボタンを用いる演出を制御するための押ボタン演出制御プログラム201と、押ボタンの入力状態を監視する押ボタン入力監視部202、押ボタンの入力とともに画面に表示するためのリーチ予告演出パターンデータを記憶したリーチ予告演出パターン記憶部203が設けられている。RAM123には、計時を行うためのタイマ値を一時的に記憶するためのタイマ値記憶部204が設けられている。これら第1副制御部に設けられたプログラムの協動によって、後記する押ボタン操作入力に関わる演出制御が行われる。
【0052】
第1副制御部120には、I/Oポート101Bを介して入力部の左押ボタン8,中押ボタン9,右押ボタン10に各々設けられたセンサからセンサ信号が与えられる。また、第1副制御部120には、双方向でデータを送受信する第2副制御部130が接続されている。
【0053】
第2副制御部130は、ドライバ回路104を介して、スピーカ11,12と装飾効果を演出するための各種演出ランプ37を制御するものであり、CPU131と、ROM132と、RAM133とを含む。ROM132には、大当り中に導出する楽曲などの音声データ等を記憶した音声データ記憶部500を有する。図示していないが、ROM132には、液晶表示部15で行われる演出と同期して、各種演出ランプ37を駆動するための発光パターンデータも内蔵されている。」

エ 「【0058】
図6は、本発明の実施形態において、主制御部110が行う特別図柄抽選の抽選処理を示すフローチャートである。この処理は、特別図柄が変動中でない場合に行われる処理であり、図5に示した乱数記憶処理と並行して行われる。まず、ステップS200において、特別図柄乱数保留記憶部の記憶領域に始動記憶が記憶されているかどうかを判定する。YESの場合、ステップS201で乱数記憶部シフト処理を行う。この乱数記憶部シフト処理は、始動記憶の記憶領域を一つずつシフトさせる処理である。そして、ステップS202で保留数記憶部に記憶された始動記憶数から1を減算する処理を行う。
【0059】
ステップS203では、作動用乱数記憶部の乱数値を判定し、抽選の当否と変動パターンを決定する処理を行う。このステップで主制御部110のCPU111によって行われる判定処理は、乱数取得手段によって取得された乱数により当否を判定する当否判定手段として働くものである。そしてステップS204では変動パターン番号と始動記憶数を第1副制御部120に送信する。これらの送信される信号は、第1副制御部(第2の制御手段)に対して主制御部(第1の制御手段)から与えられる制御信号として働くものである。同時にステップS205で特別図柄表示部SDにおいて特別図柄の変動を開始する。この変動は、判定された乱数が第1特別図柄のものである場合には第1特別図柄表示部SD1にて行われ、第2特別図柄のものである場合には第2特別図柄表示部SD2にて行われる。そしてステップS206で、決定した変動パターンのそれぞれに応じて定められた変動時間が経過したかどうかを判断する。変動時間が経過している場合はステップS207で変動している特別図柄表示部の変動を停止する処理を行う。
【0060】
ステップS208では第1副制御部120に変動停止信号を送信する。そして、ステップS209で大当りの場合には、ステップS210で大入賞口駆動部を駆動する大当り遊技が実行される。そして、ステップS211で作動用乱数記憶部の乱数値をクリアしてステップS200に復帰する。この図6の一連の処理を繰り返し行うことにより、順に記憶した乱数に基づいて特別図柄抽選及び特別図柄の変動が行われる。」

オ 「【0061】
図7に、主制御部110からの制御信号を受けて、第1副制御部120が行う演出制御のフローチャートを示している。まず、ステップS300で主制御部110から変動パターンを受信したかどうかを確認する。変動パターンを受信した場合は、ステップS301で演出パターン決定抽選を行う。この演出パターン決定抽選は、第1副制御部120のCPUが発生する乱数に基づいて行われ、主制御部110から受信した変動パターン番号に対して複数の演出パターンが対応している場合に行われる。そして、ステップS302で決定した演出パターンがリーチ演出パターンかどうかを判断する。これらの演出パターンは、「7-7-7」などの複数の識別情報の変動を含み、液晶表示装置15などの演出表示装置で行われるものである。NOの場合そのままステップS303にうつり、変動を開始する。YESの場合、ステップS304にうつり、押ボタン演出を伴う演出かどうかを判断する。NOの場合、ステップS303にうつり、変動を開始する。YESの場合、ステップS305にうつり、押ボタン演出制御処理を行う。このステップS305の押ボタン演出制御処理については後記に詳述する。
【0062】
そして、ステップS306で主制御部110から変動停止コマンドを受信したかどうかを判断する。この変動停止コマンドは、変動開始から所定時間後に送信されるものであり、変動パターン番号によって異なるものである。そして、変動停止コマンドを受信した場合、ステップS307で変動停止を行う。」

カ 「【0063】
図8に、前述のステップS305で行う押ボタン演出制御処理についてのフローチャートを示している。まず、ステップS400において、前述のように決定した演出パターンに応じて第1入力用画像と第2入力用画像をセットする処理を行う。第1入力用画像と第2入力用画像は、左押ボタンあるいは右押ボタンの入力に応じて導出されるものであり、いずれか先に押された押ボタン操作に応じて第1入力用画像が表示されるものとする。そして、ステップS401にて図柄の変動を開始する。
【0064】
そして、ステップS402で、ボタン演出開始時期かどうかを判定する。このボタン演出の開始時期は、液晶表示部15で変動表示している3つの図柄表示部のうち、2つの図柄表示部が同一図柄で停止した状態(リーチ状態)が発生した場合に設定されている。このリーチ状態では、1つの図柄表示部が変動表示中であり、この変動中の図柄が、既に停止している図柄と同一の図柄で停止する場合には大当りとなるため、遊技者は大当りへの期待感を持って遊技することになる。このリーチ状態は、抽選結果が当りの場合にもハズレの場合にも一定の確率で出現するようになっており、このリーチ状態の出現後、変動中の図柄表示部が停止するまでの間、リーチ演出を行うようになっている。このリーチ状態を表示する第1副制御部120のCPU121による処理は、特定態様(リーチ状態)を表示する特定態様表示手段として働くものである。
【0065】
ステップS402の判定がYESの場合、ステップS403で押ボタンの入力状態の監視を開始する。これと同時に所定時間の計時を開始する。押ボタン8、9、10は、そのボタンスイッチからの信号が第1副制御部120に入力されるようになっており、通常の状態では、ボタンスイッチからの信号の状態は監視されていない。ここで入力状態の監視が開始されると、左押ボタン8、右押ボタン10のボタンスイッチの入力ポートの状態を監視することによって、両押ボタンへの操作を検出するようになっている。
【0066】
ステップS404では、予告表示部の表示が開始される。この予告表示部は、左押ボタン8、右押ボタン10にそれぞれ対応して2つの予告表示領域が液晶表示部15上に出現するように制御される。そして、ステップS405でそれぞれの予告表示領域にてシャッフル画像表示が開始される。このシャッフル画像表示は、複数種類あるリーチ演出を示す画像を順次高速で循環変動させるものであり、このシャッフル画像表示のための変動データは、第1副制御部120のROM121に記憶されている。そして、ステップS406で、液晶画面上にて押ボタン入力操作を促す画像を表示する。この操作入力示唆画像表示は、液晶表示部15に表示される矢印表示とボタン表示の組合せ等から構成されており、それぞれ左押ボタン8と右押ボタン10に対応して表示されるようになっている。

キ 「【0067】
そして、左押ボタン8あるいは右押ボタン10に対する操作のいずれかを検出した場合は、ステップS407でこれを第1入力操作として検出する。そして、ステップS407で第1入力操作を検出した場合は、ステップS408で第1入力用画像を確定表示する。確定表示は、ステップS404で出現表示される予告表示領域のうち、操作を検出した押ボタンに対応する予告表示領域に対して行われ、シャッフル画像表示を消去して第1入力用画像が停止される。同時に、操作が行われた押ボタンに対応する操作入力示唆画像も消去される。ステップS407で入力操作を検出しない場合は、ステップS409で所定時間が経過したかどうかを判断する。この所定時間は、ステップS403から計時を開始したものであり、例えば5秒に設定されている。そして、ステップS409で所定時間が経過した場合には、ステップS410で双方の予告表示領域に、いずれのリーチ演出にも対応しない画像である、デフォルト画像を表示してシャッフル画像表示を消去する。
【0068】
ステップS408で第1入力用画像が停止された場合は、ステップS411にすすみ、第2入力操作があるかどうかを判断する。この第2入力操作は、左押ボタン8及び右押ボタン10のうち、第1入力操作が行われたボタンとは異なる方の押ボタンについて判定されるものである。そして、ステップS411で第2入力操作が行われた場合には、ステップS412にて予め決定された第2入力用画像を確定表示する。この確定表示は、操作を検出した押ボタンに対応する予告表示領域に対して行われ、シャッフル画像表示を消去して第2入力用画像が停止される。同時に操作が行われた押ボタンに対応する操作入力示唆画像も消去される。一方、ステップ411で第2入力操作が行われない場合には、ステップS413に進んで所定時間が経過したかどうかを確認する。この所定時間は、ステップS403から計時を開始したものであり、例えば5秒に設定されている。そして、ステップS413で所定時間がまだ経過していない場合にはステップS411の判断に復帰する。ステップS413で所定時間が経過している場合は、ステップS414に進み、第2入力用画像が表示される予定の予告表示領域、つまり、操作が行われていない押ボタンに対応する予告表示領域に、いずれのリーチ演出にも対応しない画像である、デフォルト画像を表示してシャッフル画像表示を消去する。」

ク 上記イの【0041】の「始動入賞口20または役物始動口21に遊技球が入ると、・・・遊技者が特別遊技・・・を実行できるか否かを決定するための大当り抽選・・・からなる特別図柄抽選が行われる。」との記載、【0046】の「大当り遊技に突入すると、・・・遊技者は多数個の賞球を獲得することができる」の記載、上記ウの【0047】の「図4は・・・パチンコ遊技機1の電気的構成を示すブロック図である。」との記載、「図4において、制御部100は・・・主制御部110と、第1副制御部120と、・・・を含む」との記載、上記エの【0058】の「主制御部110が行う特別図柄抽選の抽選処理を示す」「特別図柄乱数保留記憶部の記憶領域に始動記憶が記憶されているかどうかを判定する。YESの場合」との記載、【0059】の「作動用乱数記憶部の乱数値を判定し、抽選の当否と変動パターンを決定する処理を行う」との記載から、「主制御部110と副制御部120を含む制御部100を含むパチンコ機1」は「特別図柄抽選の抽選処理において、特別図柄乱数保留記憶部の記憶領域に始動記憶が記憶されているかどうかを判定し、YESの場合、作動用乱数記憶部の乱数値を判定し、突入すると遊技者は多数個の賞球を獲得することができる特別遊技を実行できるか否かを決定するための大当り抽選の当否と変動パターンを決定する処理を行う主制御部110」を含むものといえる。

ケ 上記エの【0058】の「主制御部110が行う特別図柄抽選の抽選処理を示す」との記載、【0059】の「作動用乱数記憶部の乱数値を判定し、抽選の当否と変動パターンを決定する処理を行う。・・・変動パターン番号と始動記憶数を第1副制御部120に送信する」「同時に特別図柄表示部SDにおいて特別図柄の変動を開始する」「変動時間が経過している場合は・・・変動している特別図柄表示部の変動を停止する」との記載、【0060】の「第1副制御部120に変動停止信号を送信する」との記載から、「主制御部110」は「抽選の当否を決定する処理を行い、変動パターン番号と始動記憶数を第1副制御部120に送信し、変動時間が経過している場合は、第1副制御部120に変動停止信号を送信」し、また、「特別図柄表示部SD」は、「主制御部110による抽選の当否の決定が行われると、特別図柄の変動表示を開始し、変動時間が経過している場合は変動を停止する」といえる。

コ 上記ウの【0050】の「第1副制御部120は、・・・液晶表示部15の表示を制御するものであり、演出表示実行手段として作動するCPU121と、ROM122と、RAM123とを含むマイクロコンピュータで構成されている。」、【0051】の「前記CPU121は、CPU111からの抽選結果に応じたコマンドを受けて、多彩な演出を行う。例えば前記CPU121は大当り遊技中、CPU111が実行する大入賞口開放に応じた演出画像を液晶表示部15に画像表示する」との記載から、「第1副制御部120は液晶表示部15の表示を制御するものであり、第1副制御部のCPU121は大当り遊技中、大入賞口開放に応じた演出画像を液晶表示部15に画像表示する演出を行う」といえる。

サ 上記イの【0032】の「パチンコ遊技機1の外観構成」、【0034】の「操作手段として作動する押ボタン8、9、10が配置されている。押ボタン8、9、10は、左押ボタン8、中押ボタン9、右押ボタン10からなり、大当り遊技中に、・・・液晶表示部15で表示される演出に遊技者自らがいずれかを操作する」との記載から、パチンコ遊技機1は「大当り遊技中に液晶表示部15で表示される演出に遊技者自らがいずれかを操作する左押ボタン8、右押しボタン10」を含むものといえる。

シ 上記オの【0061】【0062】から、
「第1副制御部120が行う演出制御において、主制御部110から変動パターンを受信した場合、リーチ演出パターンかどうかを判断し、押ボタン演出を伴う演出かどうかを判断し、押ボタン演出制御処理を行い、主制御部110から変動停止コマンドを受信した場合、変動停止を行う」ことがいえる。

また、上記カの【0063】-【0066】から、
「押ボタン演出制御処理において、第1入力用画像と第2入力用画像をセットし、ボタン演出開始時期かどうかを判定し、判定がYESの場合押ボタンの入力状態の監視を開始し、左押ボタン8、右押ボタン10のボタンスイッチの入力ポートの状態を監視することによって、両押ボタンへの操作を検出するようになっており、左押ボタン8、右押ボタン10にそれぞれ対応して2つの予告表示領域が液晶表示部15上に出現するように制御される予告表示部の表示が開始され」ることがいえる。

さらに、上記キの【0067】から、
「左押ボタン8あるいは右押ボタン10に対する操作のいずれかを検出した場合は、これを第1入力操作として検出し、第1入力用画像を確定表示することであって、確定表示は、上記出現表示される予告表示領域のうち、操作を検出した押ボタンに対応する予告表示領域に対して行われ、シャッフル画像表示を消去して第1入力用画像が停止され、同時に、操作が行われた押ボタンに対応する操作入力示唆画像が消去され、入力操作を検出しない場合は双方の予告表示領域に、いずれのリーチ演出にも対応しない画像である、デフォルト画像を表示してシャッフル画像表示を消去する」ことがいえる。

加えて、上記キの【0068】から、
「第1入力用画像が停止された場合は、第2入力操作があるかどうかを判断し、第2入力操作が行われた場合には、予め決定された第2入力用画像を確定表示することであって、確定表示は、操作を検出した押ボタンに対応する上記予告表示領域に対して行われ、シャッフル画像表示を消去して第2入力用画像が停止され、同時に、操作が行われた押ボタンに対応する操作入力示唆画像が消去され、入力操作を検出しない場合は第2入力用画像が表示される予定の予告表示領域である操作が行われていない押ボタンに対応する予告表示領域に、いずれのリーチ演出にも対応しない画像である、デフォルト画像を表示してシャッフル画像表示を消去する」ことがいえる。

上記ア?キの記載事項及び上記ク?シの認定事項から、刊行物1には、

「主制御部110と副制御部120を含む制御部100を含むパチンコ機1であって、
特別図柄抽選の抽選処理において、特別図柄乱数保留記憶部の記憶領域に始動記憶が記憶されているかどうかを判定し、YESの場合、作動用乱数記憶部の乱数値を判定し、突入すると遊技者は多数個の賞球を獲得することができる特別遊技を実行できるか否かを決定するための大当り抽選の当否と変動パターンを決定する処理を行い、抽選の当否を決定する処理を行い、変動パターン番号と始動記憶数を第1副制御部120に送信し、変動時間が経過している場合は、第1副制御部120に変動停止信号を送信する主制御部110(認定事項ク、ケ)と、
主制御部110による抽選の当否の決定が行われると、特別図柄の変動表示を開始し、変動時間が経過している場合は変動を停止する特別図柄表示部SD(認定事項ケ)と、
液晶表示部15の表示を制御するものであり、大当り遊技中、大入賞口開放に応じた演出画像を液晶表示部15に画像表示する演出を行うCPU121とを含む第1副制御部120(認定事項コ)と、
大当り遊技中に液晶表示部15で表示される演出に遊技者自らがいずれかを操作する左押ボタン8、右押しボタン10(認定事項サ)と、を備え、
第1副制御部120が行う演出制御において、主制御部110から変動パターンを受信した場合、リーチ演出パターンかどうかを判断し、押ボタン演出を伴う演出かどうかを判断し、押ボタン演出制御処理を行い、主制御部110から変動停止コマンドを受信した場合、変動停止を行うものであり、
上記押ボタン演出制御処理において、第1入力用画像と第2入力用画像をセットし、ボタン演出開始時期かどうかを判定し、判定がYESの場合押ボタンの入力状態の監視を開始し、左押ボタン8、右押ボタン10のボタンスイッチの入力ポートの状態を監視することによって、両押ボタンへの操作を検出するようになっており、左押ボタン8、右押ボタン10にそれぞれ対応して2つの予告表示領域が液晶表示部15上に出現するように制御される予告表示部の表示が開始され、
左押ボタン8あるいは右押ボタン10に対する操作のいずれかを検出した場合は、これを第1入力操作として検出し、第1入力用画像を確定表示し、確定表示は、上記出現表示される予告表示領域のうち、操作を検出した押ボタンに対応する予告表示領域に対して行われ、シャッフル画像表示を消去して第1入力用画像が停止され、同時に、操作が行われた押ボタンに対応する操作入力示唆画像が消去され、入力操作を検出しない場合は双方の予告表示領域に、いずれのリーチ演出にも対応しない画像である、デフォルト画像を表示してシャッフル画像表示を消去し、
第1入力用画像が停止された場合は、第2入力操作があるかどうかを判断し、第2入力操作が行われた場合には、予め決定された第2入力用画像を確定表示し、確定表示は、操作を検出した押ボタンに対応する上記予告表示領域に対して行われ、シャッフル画像表示を消去して第2入力用画像が停止され、同時に、操作が行われた押ボタンに対応する操作入力示唆画像が消去され、入力操作を検出しない場合は第2入力用画像が表示される予定の予告表示領域である操作が行われていない押ボタンに対応する予告表示領域に、いずれのリーチ演出にも対応しない画像である、デフォルト画像を表示してシャッフル画像表示を消去する(認定事項シ)、
パチンコ遊技機1」

という発明(以下、刊行物1記載の発明という)が開示されていると認める。

(2)本件補正発明と刊行物1記載の発明との対比

本件補正発明と刊行物1記載の発明とを対比する。

(ア)刊行物1記載の発明における「特別図柄乱数保留記憶部の記憶領域に始動記憶が記憶されているかどうかを判定し、YESの場合、」「作動用乱数記憶部の乱数値を判定し、突入すると遊技者は多数個の賞球を獲得することができる特別遊技を実行できるか否かを決定するための大当り抽選の当否と変動パターンを決定する処理を行う主制御部110」は、本件補正発明の「所定の判定条件を満足したことを契機として」「遊技者にとって有利な特別遊技状態に移行するか否かを判定する判定手段」に相当する。

(イ)刊行物1記載の発明における「主制御部110による抽選の当否の決定が行われると、特別図柄の変動を開始し、変動時間が経過している場合は、変動を停止」する特別図柄表示部SDは、「判定手段による判定が行われると、図柄を変動表示させた後に図柄を停止表示させる」という点で、本件補正発明の「図柄表示手段」と共通する。

(ウ)刊行物1記載の発明における「液晶表示部15の表示を制御するものであり、大当り遊技中、大入賞口開放に応じた演出画像を液晶表示部15に画像表示する演出を行うCPU121とを含む第1副制御部120」は、本件補正発明の「遊技に応じて、所定の演出部材による演出の実行を制御する演出制御手段」に相当する。

(エ)刊行物1記載の発明における「大当り遊技中に液晶表示部15で表示される演出に遊技者自らがいずれかを操作する左押ボタン8、右押しボタン10」について、刊行物1記載の発明における「押ボタン演出制御処理」において、「左押ボタン8、右押ボタン10のボタンスイッチの入力ポートの状態を監視することによって、両押ボタンへの操作を検出するようになって」いる。
また、本件補正発明の「演出における遊技者の入力操作を受け付ける操作手段」は「1回目の操作を受け付け」るものであり、本願明細書段落【0205】の「センサユニット171?173により検知される操作を第1の操作としている」という記載から、「操作」を「検知」するものが「操作を受け付ける操作手段」であるといえる。
そうすると、刊行物1記載の発明の「左押ボタン8、右押ボタン10のボタンスイッチの入力ポート」は「左押ボタン8、右押ボタン10」への操作を検出、すなわち検知するという点で、本件補正発明の「演出における遊技者の入力操作を受け付ける操作手段」に相当する。

(オ)刊行物1記載の発明は「第1副制御部120が行う演出制御において、主制御部110から変動パターンを受信した場合、リーチ演出パターンかどうかを判断し、押ボタン演出を伴う演出かどうかを判断し、押ボタン演出制御処理を行」うこと、「主制御部110」は「変動パターン番号と始動記憶数を第1副制御部120に送信すると同時に、特別図柄表示部SDにおいて特別図柄の変動を開始」すること、「上記押ボタン演出制御処理において、第1入力用画像と第2入力用画像をセットし、ボタン演出開始時期かどうかを判定し、判定がYESの場合押ボタンの入力状態の監視を開始し、左押ボタン8、右押ボタン10のボタンスイッチの入力ポートの状態を監視することによって、両押ボタンへの操作を検出する」ことから、刊行物1記載の発明において、第1副制御部120は特別図柄表示部の変動表示が開始されてから押ボタン演出制御処理を行い、該押ボタン演出制御処理において押ボタンの入力状態を監視し、両押しボタンへの操作を操作を検出することがいえる。

そうすると、刊行物1記載の発明における「第1副制御部120が行う演出制御において、主制御部110から変動パターンを受信した場合、リーチ演出パターンかどうかを判断し、押ボタン演出を伴う演出かどうかを判断し、押ボタン演出制御処理を行い」、「上記押ボタン演出制御処理において、第1入力用画像と第2入力用画像をセットし、ボタン演出開始時期かどうかを判定し、判定がYESの場合押ボタンの入力状態の監視を開始し、左押ボタン8、右押ボタン10のボタンスイッチの入力ポートの状態を監視することによって、両押ボタンへの操作を検出するようになって」いることは、本件補正発明の「演出制御手段は、前記図柄表示手段による図柄の変動表示中に、前記操作手段による1回目の操作の受け付けが可能とな」ることに相当する。

(カ)刊行物1記載の発明において「左押ボタン8あるいは右押ボタン10に対する操作のいずれかを検出した場合は、これを第1入力操作として検出し、」「操作を検出した押ボタンに対応する予告表示領域のシャッフル画像表示を消去して第1入力用画像が停止され、同時に、操作が行われた押ボタンに対応する操作入力示唆画像が消去され」ることは、本件補正発明の「当該操作手段による1回目の操作を受け付けた後に」「第1の特殊演出を行」うことに相当する。
また、刊行物1記載の発明における「入力操作を検出しない場合は双方の予告表示領域に、いずれのリーチ演出にも対応しない画像である、デフォルト画像を表示してシャッフル画像表示を消去」することは、本件補正発明の「当該1回目の操作を受け付けなかった場合の演出」に相当し、これは上記「第1の特殊演出」とは異なることは明らかである。

さらに、刊行物1記載の発明における「操作を検出した押ボタンに対応する予告表示領域のシャッフル画像を消去して第1入力用画像が停止され、同時に操作が行われた押ボタンに対応する操作入力示唆画像が消去され」るという演出を行った後、「第1入力用画像が停止された場合は、第2入力操作があるかどうかを判断し、第2入力操作が行われた場合には、予め決定された第2入力用画像を確定表示」し、「同時に、操作が行われた押ボタンに対応する操作入力示唆画像が消去され」ることから、「操作が行われた押ボタンに対応する操作入力示唆画像が消去され」た後、操作が行われなかった押ボタンへの操作入力示唆画像が依然表示されており、第2入力操作があるかどうかを検出しているといえる。

そうすると、刊行物1記載の発明における「操作が行われた押ボタンに対応する操作入力示唆画像が消去され」た後、操作が行われなかった押ボタンへの操作入力示唆画像が依然表示されている演出は、本件補正発明における「第1の特殊演出において、2回目の操作を促す演出を行う」ことに相当する。

(キ)刊行物1記載の発明において「第1入力用画像が停止された場合は、第2入力操作があるかどうかを判断し」「第2入力操作が行われた場合には、操作を検出した押ボタンに対応する予告表示領域に対して行われ、シャッフル画像表示を消去して第2入力用画像が停止され、同時に、操作が行われた押ボタンに対応する操作入力示唆画像が消去され」ることは、本件補正発明の「当該2回目の操作を促す演出が行われた後に当該2回目の操作を受け付けた場合に」「第2の特殊演出を行う」ことに相当する。
また、刊行物1記載の発明における「入力操作を検出しない場合は第2入力用画像が表示される予定の予告表示領域である操作が行われていない押ボタンに対応する予告表示領域に、いずれのリーチ演出にも対応しない画像である、デフォルト画像を表示してシャッフル画像表示を消去」することは、本件補正発明の「当該2回目の操作を受け付けなかった場合の演出」に相当し、これは上記「第2の特殊演出」とは異なることは明らかである。

以上のことから、本件補正発明と刊行物1記載の発明は以下の点で一致する。
(一致点)
「所定の判定条件を満足したことを契機として、遊技者にとって有利な特別遊技状態に移行するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定が行われると、図柄を変動表示させた後に、図柄を停止表示させる図柄表示手段と、
遊技に応じて、所定の演出部材による演出の実行を制御する演出制御手段と、
演出における遊技者の入力操作を受け付ける操作手段と、を備え、
前記演出制御手段は、
前記図柄表示手段による図柄の変動表示中に、前記操作手段による1回目の操作の受け付けが可能となり、
当該操作手段による1回目の操作を受け付けた後に、当該1回目の操作を受け付けなかった場合の演出とは異なる第1の特殊演出を行い、
当該第1の特殊演出において、2回目の操作を促す演出を行い、
当該2回目の操作を促す演出が行われた後に当該2回目の操作を受け付けた場合に、当該2回目の操作を受け付けなかった場合の演出とは異なる第2の特殊演出を行うこと、
を特徴とする、遊技機。」

一方、本件補正発明と刊行物1記載の発明は以下の点で相違する。
(相違点)
図柄を変動表示させた後に、図柄を停止表示させる図柄表示手段について、本件補正発明は「判定手段による判定結果に対応付けられた図柄を停止表示させる」のに対して、刊行物1記載の発明はどの図柄を停止表示させるかについて特定されていない点

(3)相違点についての判断
上記相違点について判断する。
所定の判定条件を満足したことを契機として、遊技者にとって有利な特別遊技状態に移行するか否かを判定する判定手段による判定が行われると、図柄を変動表示させた後に、当該判定手段による判定結果に対応付けられた図柄を停止表示させることは、遊技機の技術分野における周知技術(例えば、特開2010-200857号公報の【0002】「従来の遊技機では、遊技球が始動口へ有効に入球することを契機に特別遊技を実行する権利獲得の当否を決定する大当たりの抽選が実行され、この抽選結果は、当該抽選結果に対応した特別図柄が特別図柄表示装置に変動表示されたあとに停止表示される(以下、変動表示のあとに停止表示されることを可変表示という)ことによって遊技者に報知される。」の記載を参照)にすぎず、当該周知技術を刊行物1記載の発明における「特別図柄の変動を開始し、変動時間が経過している場合は変動を停止する特別図柄表示部」に適用することで、上記相違点に関する本件補正発明の構成とすることは当業者ならば容易になし得たものである。

(4)審判請求人の主張について
審判請求人は平成28年1月15日付け審判請求書の(4)本願発明と引用発明との対比において、次の主張をしている。

「本願発明は、第1の操作(1回目の操作)を受け付け可能な場面において、第1の操作(1回目の操作)を受け付けた場合に、第1の特殊演出を行い、かつ第1の特殊演出において第2の操作(2回目の操作)を促す演出を行い、その後に第2の操作(2回目の操作)を受け付けた場合に、第2の特殊演出を行うものである。
すなわち、本願発明では、遊技者は、第1の操作を行った後に初めて、第2の操作を要求される。
そのため、本願発明によれば、一つの操作を行った後に、その一つの操作を行う際には提示されていなかった新たな操作を要求されるという驚きを遊技者に与えることができる。本願発明は、このような演出の進行で、遊技者に対して新たな操作を順次要求しながら遊技者を誘導することにより、遊技者を飽きさせることなく、その興趣を持続させることができるという顕著な効果を有する。
これに対し、引用文献1に記載された技術では、最初から第1の操作および第2の操作を促す演出が行われる。そのため、遊技者は、最初に操作が要求された時点で、どちらの操作を先に行うかという自由度が与えられる一方、自身が行うべき操作が最初から知らされることとなる。したがって、引用文献1に記載された技術において、遊技者は、一つの操作を行った後に、その一つの操作を行う際には提示されていなかった新たな操作を要求されることはない。すなわち、引用文献1に記載された技術によっては、本願発明のように、遊技者に対して新たな操作を順次要求することによって、遊技者の興趣を持続させるという効果は実現し得ない。」

そこで、上記主張について検討するに、

ア 本件補正発明は、「図柄表示手段による図柄の変動表示中に、前記操作手段による1回目の操作の受け付けが可能となり」「前記操作手段による1回目の操作を受け付けた後に、当該1回目の操作を受け付けなかった場合の演出とは異なる第1の特殊演出を行い」「当該第1の特殊演出において、2回目の操作を促す演出を行い」「2回目の操作を促す演出が行われた後に当該2回目の操作を受け付けた場合に、当該2回目の操作を受け付けなかった場合の演出とは異なる第2の特殊演出を行う」と特定されているのみで、遊技者は第1の操作を行った後に初めて、第2の操作を要求されるという限定があるわけではなく、一つの操作を行った後に、その一つの操作を行う際には提示されていなかった新たな操作を要求するという限定があるわけでもない。
イ 本件補正発明は、上記アのような限定を含むものではないため、遊技者に対して新たな操作を順次要求しながら遊技者を誘導することにより、遊技者を飽きさせることなく、その興趣を持続させることができるという効果は、本件補正発明の発明特定事項に基づくものではない。

ア、イのとおりであるから審判請求人の主張は採用できない。

(5)小括
したがって、本件補正発明は、刊行物1記載の発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1,2に係る発明は、平成27年4月8日付けの手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記第2の1.において記載した次のとおりのものである。

「所定の判定条件を満足したことを契機として、遊技者にとって有利な特別遊技状態に移行するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定が行われると、図柄を変動表示させた後に、当該判定手段による判定結果に対応付けられた図柄を停止表示させる図柄表示手段と、
遊技に応じて、所定の演出部材による演出の実行を制御する演出制御手段と、
演出における遊技者の入力操作を受け付ける操作手段と、を備え、
前記演出制御手段は、
前記図柄表示手段による図柄の変動表示中に、前記操作手段による1回目の操作の受け付けが可能となり、
当該操作手段による1回目の操作を受け付けた後に、当該1回目の操作を受け付けなかった場合の演出とは異なる第1の特殊演出を行い、
2回目の操作を促す演出を行い、
当該2回目の操作を促す演出が行われた後に当該2回目の操作を受け付けた場合に、当該2回目の操作を受け付けなかった場合の演出とは異なる第2の特殊演出を行うこと、
を特徴とする、遊技機。」

2.拒絶理由通知の概要
平成27年2月2日付け拒絶理由通知は、本願発明は、上記刊行物1である特開2009-172049号公報に示された発明であるから特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、もしくは、上記刊行物1記載の発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

3.刊行物及び刊行物の発明
刊行物1記載の発明の認定は前記「第2 平成27年10月2日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、本件補正発明における「第1の特殊演出」と「2回目の操作を促す演出」との関係を、「当該操作手段による1回目の操作を受け付けた後に、当該1回目の操作を受け付けなかった場合の演出とは異なる第1の特殊演出を行い、2回目の操作を促す演出を行い」という記載から、「当該操作手段による1回目の操作を受け付けた後に、当該1回目の操作を受け付けなかった場合の演出とは異なる第1の特殊演出を行い、当該第1の特殊演出において2回目の操作を促す演出を行い」とにする限定を削除したものである。

そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の限定を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の3.に記載したとおり,刊行物1記載の発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,刊行物1記載の発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1記載の発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-27 
結審通知日 2016-10-04 
審決日 2016-10-18 
出願番号 特願2013-128619(P2013-128619)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡辺 剛史  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 齋藤 智也
川崎 優
発明の名称 遊技機  
代理人 尾形 文雄  
代理人 伊與田 幸穂  
代理人 古部 次郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ