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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01D
管理番号 1322179
審判番号 不服2016-5014  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-05 
確定日 2016-12-01 
事件の表示 特願2012- 17178「光学式センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月15日出願公開、特開2013-156163〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成24年1月30日
手続補正: 平成27年7月22日(以下、「補正1」という。)
拒絶査定: 平成27年12月22日(送達日:平成28年1月5日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成28年4月5日
手続補正: 平成28年4月5日 (以下、「本件補正」という。)


第2 補正の却下の決定

[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正によって、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された。

(補正前)
「光を出射する光源と、
前記光源から出射された前記光を導光する特性用導光部材と、
前記特性用導光部材に配設され、前記特性用導光部材の湾曲量に応じて前記光の光学特性を変化させる特性変化部と、
前記特性変化部によって前記光学特性が変化し、且つ前記特性用導光部材によって導光された前記光を検出する検出部と、
前記光源と前記特性用導光部材と前記検出部とに光学的に接続する光接続部と、
を具備し、
前記光接続部は、
前記光源から出射された前記光を前記特性用導光部材に分岐し、前記特性用導光部材によって導光された前記光を前記検出部に分岐する光分岐部と、
前記光分岐部を含む導光路が配設されている基板部と
を有することを特徴とする光学式センサ。」

(補正後)
「光を出射する光源と、
前記光源から出射された前記光を導光する特性用導光部材と、
前記特性用導光部材に配設され、前記特性用導光部材の湾曲量に応じて前記光の光学特性を変化させる特性変化部と、
前記特性変化部によって前記光学特性が変化し、且つ前記特性用導光部材によって導光された前記光を検出する検出部と、
前記光源と前記特性用導光部材と前記検出部とに光学的に接続する光接続部と、
を具備し、
前記光接続部は、
前記光源から出射された前記光を前記特性用導光部材に分岐し、前記特性用導光部材によって導光された前記光を前記検出部に分岐する光分岐部と、
前記光分岐部を含む導光路が載置されている基板部と
を有することを特徴とする光学式センサ。」(下線は補正箇所。)

上記補正は、補正後の請求項1において、「光分岐部を含む導光路が配設されている基板部」とされていた構成を、「光分岐部を含む導光路が載置されている基板部」と限定するものである。
よって、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2 検討
(1)引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2008-190910号公報(以下「引用例」という。)には、「曲がり度合い検出装置およびそれを用いた曲がり度合い検出方法」(【発明の名称】)の発明に関し、次の事項(a)ないし(c)が図面と共に記載されている。(下線は当審による。以下同様。)

(a)
「【0028】
図1および図2において、この光ファイバセンサ1は光ファイバ2のコア3とクラッド4の境界の一部に凹凸面5を形成したものである。凹凸面5は、光ファイバ2の長さ方向に配列された複数の凹凸5aを含む。凹凸5aは、たとえば、コア3の外周面に中心軸1aと直交する方向に、底が円弧状の溝を切り込み、その溝をクラッド4の材料で埋めたような形状を有する。凹凸5aの外周のうちの少なくとも一部の外周の接線Lと中心軸1aとは交差する。」

(b)
「【0035】
βcに対する曲げ角度αの影響は、中心軸に対して、片側の面ではプラスに作用し、反対側の面ではマイナスに作用するが、本発明では、片側の面のみに凹凸面5が設けられているので、反対側の面は影響を受けない。したがって、αの変化によって、クラッド4から外に放射される光線が増減するので、光ファイバ2のコア3内を通過する光の光量を測定することによって、凹凸面5に垂直な方向(図2ではY軸方向)の曲がり度合いを知ることができる。」

(c)
「【0038】
図7(a)(b)は、図1?図6で示した光ファイバセンサ1を用いた曲がり度合い検出装置の構成を示す断面図であり、特に、図7(a)は図7(b)のVIIA-VIIA線断面図であり、図7(b)は図7(a)のVIIB-VIIB線断面図である。
【0039】
図7(a)(b)において、この曲がり度合い検出装置は、2本の光ファイバセンサ1を備える。2本の光ファイバセンサ1の凹凸面5は、図5で示したように、それぞれY軸およびX軸に垂直に配置されている。各光ファイバセンサ1の先端面には、光を反射させるための反射膜10が形成され、その基端面はY分岐型光導波路11を介して光源部12と受光部13に接続されている。2本の光ファイバセンサ1は、体内の血管のような管に挿入するための医療器具であるカテーテル14内に設けられている。カテーテル14は可撓性を有する中空チューブである。2本の光ファイバセンサ1は、カテーテル14を貫通する中空部14aに沿ってカテーテル14内に封入されており、カテーテル14とともに曲がる。
【0040】
光源部12から出射された光線はY分岐型光導波路11を介して光ファイバセンサ1に入射され、光ファイバセンサ1中を伝播して反射膜10で反射され、光ファイバセンサ1中を再度伝播し、Y分岐型光導波路11を介して受光部13に入射される。このとき、光ファイバセンサ1中を伝播する光のうちの光ファイバセンサ1の曲がり度合いに応じた量の光が、凹凸面5から外部に漏れる。したがって、2本の光ファイバセンサ1のそれぞれにおいて受光部13の受光量を読み取ることで、カテーテル14先端の曲がり度合いおよび曲がり方向を検知することできる。」

引用例に記載の「Y分岐型光導波路11」によって「光源部12から出射された光線はY分岐型光導波路11を介して光ファイバセンサ1に入射され、光ファイバセンサ1中を伝播して反射膜10で反射され、光ファイバセンサ1中を再度伝播し、Y分岐型光導波路11を介して受光部13に入射される」のであるから、「Y分岐型光導波路11」が、光源部12から出射された光線を光ファイバセンサ1に分岐し、光ファイバセンサ1によって導光された前記光線を受光部13に分岐する光分岐部を有することは明らかである。そうすると、上記記載(a)ないし(c)及び図1及び図7の記載から、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。

「光線を出射する光源部12と、
前記光源部12から出射された前記光線が入射される光ファイバセンサ1と、
光ファイバセンサ1の光ファイバ2のコア3とクラッド4の境界の一部に形成され、光ファイバセンサ1中を伝播する光のうちの光ファイバセンサ1の曲がり度合いに応じた量の光が外部に漏れる、凹凸面5と、
光ファイバセンサ1中を伝播した光が入射される受光部13と、
光ファイバセンサ1の基端面と光源部12と受光部13とを接続するY分岐型光導波路11と、
を具備し、
前記Y分岐型光導波路11は、
光源部12から出射された光線を光ファイバセンサ1に分岐し、光ファイバセンサ1によって導光された前記光線を受光部13に分岐する光分岐部
を有する曲がり度合い検出装置。」(以下、「引用発明」という。)

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
まず、引用発明の「光線を出射する光源部12」は、本願補正発明の「光を出射する光源」に相当し、同様に、引用発明の「前記光源部12から出射された前記光線が入射される光ファイバセンサ1」は、本願補正発明の「前記光源から出射された前記光を導光する特性用導光部材」に相当する。
また、本願補正発明の「特性変化部」は、「特性変化部50は、例えば光を吸収する光吸収部によって形成されている。」(本願明細書の段落【0016】)とされており、光量を変化させるものを含むことは明らかであるから、引用発明の「光ファイバセンサ1の光ファイバ2のコア3とクラッド4の境界の一部に形成され、光ファイバセンサ1中を伝播する光のうちの光ファイバセンサ1の曲がり度合いに応じた量の光が外部に漏れる、凹凸面5」は、本願補正発明の「前記特性用導光部材に配設され、前記特性用導光部材の湾曲量に応じて前記光の光学特性を変化させる特性変化部」に相当するといえる。
次に、引用発明の「光ファイバセンサ1中を伝播した光が入射される受光部13」は、本願補正発明の「前記特性変化部によって前記光学特性が変化し、且つ前記特性用導光部材によって導光された前記光を検出する検出部」に相当するから、引用発明の「光ファイバセンサ1の基端面と光源部12と受光部13とを接続するY分岐型光導波路11」は、本願補正発明の「前記光源と前記特性用導光部材と前記検出部とに光学的に接続する光接続部」に相当するといえる。
そうすると、引用発明において「前記Y分岐型光導波路11は、光源部12から出射された光線を光ファイバセンサ1に分岐し、光ファイバセンサ1によって導光された前記光線を受光部13に分岐する光分岐部を有する」点と、本願補正発明において「前記光接続部は、前記光源から出射された前記光を前記特性用導光部材に分岐し、前記特性用導光部材によって導光された前記光を前記検出部に分岐する光分岐部と、前記光分岐部を含む導光路が載置されている基板部とを有する」点とは、共に「前記光接続部は、前記光源から出射された前記光を前記特性用導光部材に分岐し、前記特性用導光部材によって導光された前記光を前記検出部に分岐する光分岐部を有する」点で共通する。また、引用発明の「曲がり度合い検出装置」は「光源部12」と「受光部13」とを用いるものであるから、本願補正発明の「光学式センサ」に相当するといえる。
してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「光を出射する光源と、
前記光源から出射された前記光を導光する特性用導光部材と、
前記特性用導光部材に配設され、前記特性用導光部材の湾曲量に応じて前記光の光学特性を変化させる特性変化部と、
前記特性変化部によって前記光学特性が変化し、且つ前記特性用導光部材によって導光された前記光を検出する検出部と、
前記光源と前記特性用導光部材と前記検出部とに光学的に接続する光接続部と、
を具備し、
前記光接続部は、
前記光源から出射された前記光を前記特性用導光部材に分岐し、前記特性用導光部材によって導光された前記光を前記検出部に分岐する光分岐部
を有することを特徴とする光学式センサ。」

(相違点)
相違点1:本願補正発明の光接続部は、「光分岐部を含む導光路が載置されている基板部」を有するのに対し、引用発明のY分岐型光導波路11がそのような基板部を有するか否かは不明である点。

(3)判断
例えば、本願出願前に頒布された刊行物である周知例1ないし3には、以下のように記載されている。(下線は当審による。)

ア 特開昭63-311213号公報(周知例1)
「第1図は本発明の一実施例の組立斜視図である。同図において、導波路チップ1には光導波路3が形成され、ここでは1入力2出力の光導波路となっている。導波路チップ1と基板2とは直方体であり、基板2は導波路チップ1を載置することが可能な大きさを有する。基板2には、その表面の所定位置に導波路チップ1を光導波路3の形成面で載置した状態で、・・・」(第2ページ左下欄第8行?第15行)

イ 特開2004-37776号公報(周知例2)
「【0023】
・・・光導波路を支持基板に載置し、・・・」

ウ 特開2000-275472号公報(周知例3)
「【0168】そのため、本手段を用いて支持基板2上に光導波路付基板1と光ファイバ4を載置すれば、・・・」

上記周知例1ないし3の記載からも明らかなように、導光路を基板に載置して支持することは周知技術であり、引用発明のY分岐型光導波路11に該周知技術を採用することは、当業者が容易になし得たものである。またそのことにより、当業者の予想し得ない特段の効果が生じているとも認められない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、補正1により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。

「光を出射する光源と、
前記光源から出射された前記光を導光する特性用導光部材と、
前記特性用導光部材に配設され、前記特性用導光部材の湾曲量に応じて前記光の光学特性を変化させる特性変化部と、
前記特性変化部によって前記光学特性が変化し、且つ前記特性用導光部材によって導光された前記光を検出する検出部と、
前記光源と前記特性用導光部材と前記検出部とに光学的に接続する光接続部と、
を具備し、
前記光接続部は、
前記光源から出射された前記光を前記特性用導光部材に分岐し、前記特性用導光部材によって導光された前記光を前記検出部に分岐する光分岐部と、
前記光分岐部を含む導光路が配設されている基板部と
を有することを特徴とする光学式センサ。」(以下「本願発明」という。)

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2008-190910号公報(引用例)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 判断
本願発明は、前記「第2 補正の却下の決定」の「1 補正の内容」で検討した本願補正発明から、光分岐部を含む導光路が基板部に「載置されている」とする限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に上記本件補正に係る限定を付加した本願補正発明が、前記「第2 補正の却下の決定」の「2 検討」における「(3)判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-29 
結審通知日 2016-10-04 
審決日 2016-10-17 
出願番号 特願2012-17178(P2012-17178)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 眞岩 久恵  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 大和田 有軌
中塚 直樹
発明の名称 光学式センサ  
代理人 河野 直樹  
代理人 野河 信久  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 峰 隆司  

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