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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05B
管理番号 1322220
審判番号 不服2015-8714  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-11 
確定日 2016-12-20 
事件の表示 特願2011- 94918号「点灯装置及びそれを用いた灯具、点灯システム並びに車両」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月15日出願公開、特開2012-227045号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年4月21日の出願であって、平成26年11月10日付けで拒絶理由が通知され、平成27年1月19日に意見書が提出され、同年2月4日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年5月11日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後当審において平成28年3月29日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)が通知され、同年6月6日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月16日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)が通知され、同年10月24日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?6に係る発明は、平成28年10月24日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、独立請求項である請求項1及び2に係る発明(以下、「本願発明1」及び「本願発明2」という。また、まとめて「本願発明」という場合もある。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
直流電源から電力供給を受けて、直列接続された複数のLEDモジュールで構成された光源に点灯電力を出力する点灯回路部と、
前記点灯回路部の出力を制御する制御部と、
前記光源の状態を検出する状態検出部とを備え、
前記制御部は、前記点灯回路部への入力電流を検出する入力電流検出部を有し、
前記制御部には、通常動作時における前記点灯回路部への入力電流の半分以下の値である第1の閾値が予め設定されており、
前記制御部は、前記状態検出部が前記光源の異常として前記光源を構成する前記複数のLEDモジュールのうち少なくとも1つのLEDモジュールの短絡を検出すると、前記点灯回路部から前記光源への電力供給を継続させつつ、前記入力電流検出部による検出電流が前記第1の閾値以下となるように前記点灯回路部を制御することを特徴とする点灯装置。

【請求項2】
直流電源から電力供給を受けて、直列接続された複数のLEDモジュールで構成された光源に点灯電力を出力する点灯回路部と、
前記点灯回路部の出力を制御する制御部と、
前記光源の状態を検出する状態検出部とを備え、
前記制御部には、前記点灯回路部への入力電流が通常動作時の半分以下となるときの前記光源への出力電流の値として第2の閾値が予め設定されており、
前記制御部は、前記状態検出部が前記光源の異常として前記光源を構成する前記複数のLEDモジュールのうち少なくとも1つのLEDモジュールの短絡を検出すると、前記点灯回路部から前記光源への電力供給を継続させつつ、前記光源への出力電流が前記第2の閾値以下となるように前記点灯回路部を制御することを特徴とする点灯装置。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2008-192625号公報(引用文献1)及び特開平6-283278号公報(引用文献2)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 原査定の理由の判断
(1)引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
ア 引用文献1の記載事項
引用文献1には、図面と共に以下の記載がある。(下線は当審で付加した。以下同様。)
(ア)「【請求項1】
車両用灯具に配置された複数の発光ダイオードを点灯させる車両用点灯回路であって、
前記車両用灯具は、少なくとも1つの発光ダイオードを含み、並列に接続された複数の光源ユニットを有し、
前記車両用点灯回路は、
並列接続された前記光源ユニットの各列に直列に接続され、ゲート端子の受け取る電圧に応じて当該光源ユニットに流れる電流を制御する複数のトランジスタと、
並列接続された前記光源ユニットの各列に直列に接続される複数の抵抗と、
並列接続された前記光源ユニットの各列に直列に接続され、入力には予め定められた電圧と当該光源ユニットに流れる電流によって前記抵抗に生じる電圧とが供給され、当該光源ユニットに接続された前記トランジスタの前記ゲート端子に出力を与える複数のオペアンプと、
外部に設けられた直流電源から受け取る電源電圧に基づく出力電圧を前記複数の光源ユニットに印加することにより、複数の前記発光ダイオードに供給電流を供給するスイッチングレギュレータと、
複数の前記ゲート端子に与えられる複数の前記オペアンプの前記出力に基づいて、前記スイッチングレギュレータの出力電圧を制御する出力制御部と
を備え、
前記出力制御部は、複数の前記光源ユニットのいずれかに流れる電流が、予め定められた電流値よりも小さい場合に、前記スイッチングレギュレータの前記出力電圧を上昇させる
車両用点灯回路。」

(イ)「【0015】
図1は、本発明の実施形態の一例に係る車両用灯具10の回路構成の一例を示す。本例の車両用灯具10は、例えば車両用バッテリ等の、外部に設けられた直流電源112から受け取る電力に基づき、発光ダイオード30を安全に点灯させる。車両用灯具10は、光源ブロック58、及び点灯回路102を備える。
【0016】
光源ブロック58は、並列に接続された複数の光源ユニット60と、それぞれの光源ユニット60と直列に接続された複数の抵抗106とを有する。光源ユニット60は、直列に接続された一又は複数の発光ダイオード30を含む。また、抵抗106は、両端に、供給電流に応じて光源ユニット60に流れる電流に基づく電圧を生じる。そのため、光源ユニット60が含む一又は複数の発光ダイオード30のいずれかが断線した場合、抵抗106の両端の電圧は低下する。
【0017】
点灯回路102は、スイッチングレギュレータ114、抵抗118、異常検出部120、出力制御部116、コンデンサ122、コンデンサ126、ダイオード134、及びダイオード124を有する。」

(ウ)「【0024】
ここで、異常検出部120が異常を検出した場合、出力制御部116は、スイッチングレギュレータ114の出力電圧を低下させる。出力制御部116は、例えば、スイッチングレギュレータ114を停止させる。本例によれば、発光ダイオード30を安全に点灯させることができる。
【0025】
尚、例えば、車両用灯具10が並列に接続されたn個(nは2以上の整数2、3、4・・・のいずれか)の発光ダイオード30を備える場合、異常検出部120は、当該n個の発光ダイオード30の少なくとも一つの断線を、異常として検出する。そして、異常検出部120が当該異常を検出した場合、出力制御部116は、スイッチングレギュレータ114の出力電圧を低下させることにより、供給電流を略(n-1)/nの大きさに減少させてよい。この場合、車両用灯具10は、断線していない発光ダイオード30を適切な明るさに発光させることができる。」

イ 引用文献1に記載された発明
以上のことから、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「直流電源112から受け取る電力に基づき、並列に接続された複数の光源ユニット60で構成された光源ブロック58に供給電流を供給するスイッチングレギュレータ114と、
前記光源ブロック58は、並列に接続されたn個(nは2以上の整数2、3、4・・・のいずれか)の発光ダイオード30を備え、
前記スイッチングレギュレータ114の出力電圧を制御する出力制御部116と、
前記発光ダイオード30の少なくとも一つの断線を異常として検出する異常検出部120とを備え、
前記出力制御部116は、前記異常検出部120が、n個の発光ダイオード30の少なくとも一つの断線を異常として検出した場合、前記スイッチングレギュレータ114の出力電圧を低下させることにより、供給電流を略(n-1)/nの大きさに減少させるようにスイッチングレギュレータ114を制御する点灯回路102。」

ウ 引用文献2の記載事項
引用文献2には、図面と共に次の記載がある。
(ア)「【請求項1】複数の放電灯点灯装置を備え、各放電灯点灯装置に接続された放電灯を同時点灯する照明装置において、各放電灯点灯装置に夫々対応して設けられる異常状態検出手段と、各放電灯点灯装置の異常状態検出手段より生じる異常状態検出信号を集中受信し、集中受信した異常状態検出信号を組み合わせて放電灯点灯装置で発生した異常状態発生原因を特定する信号処理部とを設けたことを特徴とする照明装置。」

(イ)「【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
(実施例1)図1は本実施例1の構成を示しており、この実施例は車の前照灯の点灯に用いるもので、左右に設けられるHIDランプからなる放電灯2_(1)、2_(2)に対応して夫々放電灯点灯装置3_(1)、3_(3)を設け、各放電灯装置3_(1 )、3_(3)には図4に示す従来例回路における各検知部8_(1)?8_(5)を設け、各検知部8_(1)?8_(5)の出力で表示ランプ5_(1)?5_(5)を点灯させる代わりに、本実施例では各放電灯点灯装置3_(1)、3_(2)の検知部8_(1)?8_(5)の出力を異常状態検出信号DP_(11)?DP_(15)、DP_(21)?DP_(25)としてロジック回路からなる信号処理部9へ送るようになっている。
【0017】信号処理部9の論理演算は表2に基づいて行うもので、入力電圧異常検出に対応する異常状態検出信号DP_(11)、DP_(21)の論理積演算を行うアンド回路10_(1)、入力電流異常検出に対応する異常状態検出信号DP_(12)、DP_(22)の論理積演算を行うアンド回路10_(2)、ランプ電圧異常検出に対応する異常状態検出信号DP_(13)、DP_(23)の論理積演算を行うアンド回路10_(3)、高電圧V_(P)の異常検出に対応する異常状態検出信号DP_(14)、DP_(24)の論理積演算を行うアンド回路10_(4)、不点検出に対応する異常状態検出信号DP_(15)、DP_(25)の論理積演算を行うアンド回路10_(5)、異常状態検出信号DP_(11)と異常状態検出信号DP_(21)の反転信号との論理積演算を行うアンド回路10_(6)、異常状態検出信号DP_(11)の反転信号と異常状態検出信号DP_(21)との論理積演算を行うアンド回路10_(7) を備えるとともに、アンド回路10_(6)、10_(7)の出力の論理和演算を行うオア回路10_(8)、異常状態検出信号DP_(15)、DP_(25)の論理和演算を行うオア回路10_(9) とからなり、アンド回路10_(1)?10_(7)の出力には使用者を対象とする認知手段として設けてある発光ダイオードLED_(1)?LED_(7)を接続し、またアンド回路10_(1)の出力、オア回路10_(8)、10_(9)の出力には夫々整備工場等の修理業者を対象とする認知手段として設けてある発光ダイオードLED_(10)?LED_(12)を接続してある。」

(2)本願発明1と引用発明との対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「直流電源112」は本願発明1の「直流電源」に相当し、以下同様に、「発光ダイオード30」は「LEDモジュール」に、「光源ブロック58」は「光源」に、「スイッチングレギュレータ113」は「点灯回路部」に、「出力制御部116」は「制御部」に、「異常検出部116」は「状態検出部」に、「点灯回路102」は「点灯装置」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明の「直流電源112から受け取る電力に基づき、」は、本願発明1の「直流電源から電力供給を受けて、」に相当する。

ウ 引用発明の「並列に接続された複数の光源ユニット60で構成された光源ブロック58に供給電流を供給するスイッチングレギュレータ114と、前記光源ブロック58は、並列に接続されたn個(nは2以上の整数2、3、4・・・のいずれか)の発光ダイオード30を備え、」と、本願発明1の「直列接続された複数のLEDモジュールで構成された光源に点灯電力を出力する点灯回路部と、」とは、「複数のLEDモジュールで構成された光源に点灯電力を出力する点灯回路部と、」の限度で一致するといえる。

エ 引用発明の「前記スイッチングレギュレータ114の出力電圧を制御する出力制御部116と、」は、本願発明1の「前記点灯回路部の出力を制御する制御部と、」に相当する。

オ 引用発明の「前記発光ダイオード30の少なくとも一つの断線を異常として検出する異常検出部120とを備え、前記出力制御部116は、前記異常検出部120が、n個の発光ダイオード30の少なくとも一つの断線を異常として検出した場合、前記スイッチングレギュレータ114の出力電圧を低下させることにより、供給電流を略(n-1)/nの大きさに減少させるようにスイッチングレギュレータ114を制御する」と、本願発明1の「前記光源の状態を検出する状態検出部とを備え、前記制御部には、通常動作時における前記点灯回路部への入力電流の半分以下の値である第1の閾値が予め設定されており、前記制御部は、前記状態検出部が前記光源の異常として前記光源を構成する前記複数のLEDモジュールのうち少なくとも1つのLEDモジュールの短絡を検出すると、前記点灯回路部から前記光源への電力供給を継続させつつ、前記入力電流検出部による検出電流が前記第1の閾値以下となるように前記点灯回路部を制御する」とは、「前記光源の状態を検出する状態検出部とを備え、前記制御部は、前記状態検出部が前記光源の異常として前記光源を構成する前記複数のLEDモジュールのうち少なくとも1つのLEDモジュールの異常を検出すると、前記点灯回路部から前記光源への電力供給を継続させつつ減少するように前記点灯回路部を制御する」の限度で一致するといえる。

カ してみると、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点]
「直流電源から電力供給を受けて、複数のLEDモジュールで構成された光源に点灯電力を出力する点灯回路部と、
前記点灯回路部の出力を制御する制御部と、
前記光源の状態を検出する状態検出部とを備え、
前記制御部は、前記状態検出部が前記光源の異常として前記光源を構成する前記複数のLEDモジュールのうち少なくとも1つのLEDモジュールの異常を検出すると、前記点灯回路部から前記光源への電力供給を継続させつつ減少するように前記点灯回路部を制御する点灯装置。」

[相違点1]
「複数のLEDモジュールから構成された光源」の具体的な構成に関し、本願発明1が「直列接続された直列接続された複数のLEDモジュールで構成された」ものであるのに対し、引用発明は「並列に接続された複数の光源ユニット60で構成された光源ブロック58」であり「前記光源ブロック58は、並列に接続されたn個(nは2以上の整数2、3、4・・・のいずれか)の発光ダイオード30を備え」たものである点。

[相違点2]
「状態検出部」の具体的な検出内容及び「制御部」の具体的な制御内容に関し、本願発明1が「前記制御部は、前記点灯回路部への入力電流を検出する入力電流検出部を有し、前記制御部には、通常動作時における前記点灯回路部への入力電流の半分以下の値である第1の閾値が予め設定されており、前記制御部は、前記状態検出部が前記光源の異常として前記光源を構成する前記複数のLEDモジュールのうち少なくとも1つのLEDモジュールの短絡を検出すると、前記点灯回路部から前記光源への電力供給を継続させつつ、前記入力電流検出部による検出電流が前記第1の閾値以下となるように前記点灯回路部を制御する」のに対し、引用発明は「前記発光ダイオード30の少なくとも一つの断線を異常として検出する」ものであり、「前記出力制御部116は、前記異常検出部120が、n個の発光ダイオード30の少なくとも一つの断線を異常として検出した場合、前記スイッチングレギュレータ114の出力電圧を低下させることにより、供給電流を略(n-1)/nの大きさに減少させるようにスイッチングレギュレータ114を制御する」ものである点。

(2)本願発明1の進歩性の判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
ア 上記相違点2に示されるように、本願発明1が「光源の異常」としているのは「少なくとも1つのLEDモジュールの短絡」であるのに対し、引用発明は「前記発光ダイオード30の少なくとも一つの断線」であり、全く逆の事象である。そして、このような違いは、上記相違点1に示されるように複数のLEDモジュールの接続が「直列」であるか「並列」であるかという光源としての基本的な構造の違いによるものである。(本願発明1のように「直列接続」されていた場合、「断線」していた場合は、「光源」自体が作動しなくなる。)
このことは、本願発明1が「光源に異常が発生しても継続して光源を点灯可能であり、且つ、コストアップを抑えつつ光源の異常を外部に報知可能」(本願明細書の段落【0004】)とすることを課題としているのに対し、引用発明においては単に「断線していない発光ダイオード30を適切な明るさに発光させる」(引用文献1の摘示事項(ウ)の段落【0026】)ということに止まり、技術思想が異なることに起因しているといえる。
さらに、引用発明は、本願発明1の「前記制御部は、前記点灯回路部への入力電流を検出する入力電流検出部を有し、前記制御部には、通常動作時における前記点灯回路部への入力電流の半分以下の値である第1の閾値が予め設定されており、」「前記入力電流検出部による検出電流が前記第1の閾値以下となるように前記点灯回路部を制御する」という事項に対応する構成も有してない。

イ また、引用文献2の記載事項をみても、上記相違点2に対応する事項の開示はない。

ウ したがって、引用発明において少なくとも上記相違点2に係る本願発明1の事項を有するものとすることは当業者にとって容易とはいえないことから、本願発明1は、引用発明に基いて、あるいは、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)本願発明2と引用発明との対比
ア 本願発明2と引用発明とを対比すると、引用発明の「直流電源112」は本願発明2の「直流電源」に相当し、以下同様に、「発光ダイオード30」は「LEDモジュール」に、「光源ブロック58」は「光源」に、「スイッチングレギュレータ113」は「点灯回路部」に、「出力制御部116」は「制御部」に、「異常検出部116」は「状態検出部」に、「点灯回路102」は「点灯装置」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明の「直流電源112から受け取る電力に基づき、」は、本願発明2の「直流電源から電力供給を受けて、」に相当する。

ウ 引用発明の「並列に接続された複数の光源ユニット60で構成された光源ブロック58に供給電流を供給するスイッチングレギュレータ114と、前記光源ブロック58は、並列に接続されたn個(nは2以上の整数2、3、4・・・のいずれか)の発光ダイオード30を備え、」と、本願発明2の「直列接続された複数のLEDモジュールで構成された光源に点灯電力を出力する点灯回路部と、」とは、「複数のLEDモジュールで構成された光源に点灯電力を出力する点灯回路部と、」の限度で一致するといえる。

エ 引用発明の「前記スイッチングレギュレータ114の出力電圧を制御する出力制御部116と、」は、本願発明2の「前記点灯回路部の出力を制御する制御部と、」に相当する。

オ 引用発明の「前記発光ダイオード30の少なくとも一つの断線を異常として検出する異常検出部120とを備え、前記出力制御部116は、前記異常検出部120が、n個の発光ダイオード30の少なくとも一つの断線を異常として検出した場合、前記スイッチングレギュレータ114の出力電圧を低下させることにより、供給電流を略(n-1)/nの大きさに減少させるようにスイッチングレギュレータ114を制御する」と、本願発明2の「前記光源の状態を検出する状態検出部とを備え、前記制御部には、前記点灯回路部への入力電流が通常動作時の半分以下となるときの前記光源への出力電流の値として第2の閾値が予め設定されており、前記制御部は、前記状態検出部が前記光源の異常として前記光源を構成する前記複数のLEDモジュールのうち少なくとも1つのLEDモジュールの短絡を検出すると、前記点灯回路部から前記光源への電力供給を継続させつつ、前記光源への出力電流が前記第2の閾値以下となるように前記点灯回路部を制御する」とは、「前記光源の状態を検出する状態検出部とを備え、前記制御部は、前記状態検出部が前記光源の異常として前記光源を構成する前記複数のLEDモジュールのうち少なくとも1つのLEDモジュールの異常を検出すると、前記点灯回路部から前記光源への電力供給を継続させつつ、前記光源への出力電流を減少するように前記点灯回路部を制御する」の限度で一致するといえる。

カ してみると、本願発明2と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点]
「直流電源から電力供給を受けて、複数のLEDモジュールで構成された光源に点灯電力を出力する点灯回路部と、
前記点灯回路部の出力を制御する制御部と、
前記光源の状態を検出する状態検出部とを備え、
前記制御部は、前記状態検出部が前記光源の異常として前記光源を構成する前記複数のLEDモジュールのうち少なくとも1つのLEDモジュールの異常を検出すると、
前記点灯回路部から前記光源への電力供給を継続させつつ、前記光源への出力電流を減少するように前記点灯回路部を制御する点灯装置。」

[相違点3]
「複数のLEDモジュールから構成された光源」の具体的な構成に関し、本願発明2が「直列接続された直列接続された複数のLEDモジュールで構成された」ものであるのに対し、引用発明は「並列に接続された複数の光源ユニット60で構成された光源ブロック58」であり「前記光源ブロック58は、並列に接続されたn個(nは2以上の整数2、3、4・・・のいずれか)の発光ダイオード30を備え」たものである点。

[相違点4]
「状態検出部」の具体的な検出内容及び「制御部」の具体的な制御内容に関し、本願発明2が「前記制御部には、前記点灯回路部への入力電流が通常動作時の半分以下となるときの前記光源への出力電流の値として第2の閾値が予め設定されており、前記制御部は、前記状態検出部が前記光源の異常として前記光源を構成する前記複数のLEDモジュールのうち少なくとも1つのLEDモジュールの短絡を検出すると、前記点灯回路部から前記光源への電力供給を継続させつつ、前記光源への出力電流が前記第2の閾値以下となるように前記点灯回路部を制御する」のに対し、引用発明は「前記発光ダイオード30の少なくとも一つの断線を異常として検出する」ものであり、「前記出力制御部116は、前記異常検出部120が、n個の発光ダイオード30の少なくとも一つの断線を異常として検出した場合、前記スイッチングレギュレータ114の出力電圧を低下させることにより、供給電流を略(n-1)/nの大きさに減少させるようにスイッチングレギュレータ114を制御する」ものである点。

(4)本願発明2の進歩性の判断
事案に鑑み、上記相違点4について検討する。
ア 上記相違点4に示されるように、本願発明2が「光源の異常」としているのは「少なくとも1つのLEDモジュールの短絡」であるのに対し、引用発明は「前記発光ダイオード30の少なくとも一つの断線」であり、全く逆の事象である。そして、このような違いは、上記相違点3に示されるように複数のLEDモジュールの接続が「直列」であるか「並列」であるかという光源としての基本的な構造の違いによるものである。(本願発明2のように「直列接続」されていた場合、「断線」していた場合は、「光源」自体が作動しなくなる。)
このことは、本願発明1が「光源に異常が発生しても継続して光源を点灯可能であり、且つ、コストアップを抑えつつ光源の異常を外部に報知可能」(本願明細書の段落【0004】)とすることを課題としているのに対し、引用発明においては単に「断線していない発光ダイオード30を適切な明るさに発光させる」(引用文献1の摘示事項(ウ)の段落【0026】)ということに止まり、技術思想が異なることに起因しているといえる。
さらに、引用発明は、本願発明2の「前記点灯回路部への入力電流が通常動作時の半分以下となるときの前記光源への出力電流の値として第2の閾値が予め設定されており、」「前記光源への出力電流が前記第2の閾値以下となるように前記点灯回路部を制御する」という事項に対応する構成も有していない。

イ また、引用文献2の記載事項をみても、上記相違点4に対応する事項の開示はない。

ウ したがって、引用発明において少なくとも上記相違点4に係る本願発明2の事項を有するものとすることは当業者にとって容易とはいえないことから、本願発明2は、引用発明に基いて、あるいは、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(5)小活
以上検討したとおり、本願発明1及び2は、引用発明に基いて、あるいは、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願の請求項3?6に係る発明は、本願発明1または2をさらに限定したものであるので、同様に、引用発明に基いて、あるいは、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由1の概要
(1)本願発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2006-222377号公報に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)本願は、特許請求の範囲の記載が不備であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2 当審拒絶理由2の概要
(1)本願は、特許請求の範囲の記載が不備であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(2)本願は、特許請求の範囲の記載が不備であり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

3 当審拒絶理由1、2の判断
平成28年10月24日付け手続補正により、本願の請求項1、2の記載は、上記第2に示すとおりに補正され、当審拒絶理由1、2のいずれの理由も解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-06 
出願番号 特願2011-94918(P2011-94918)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H05B)
P 1 8・ 121- WY (H05B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮崎 光治  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 和田 雄二
一ノ瀬 覚
発明の名称 点灯装置及びそれを用いた灯具、点灯システム並びに車両  
代理人 北出 英敏  
代理人 仲石 晴樹  
代理人 坂口 武  
代理人 西川 惠清  

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