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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63B
管理番号 1322240
審判番号 不服2016-2321  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-16 
確定日 2016-12-20 
事件の表示 特願2011- 27356「ゴルフ支援システム、ゴルフ支援装置及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月 6日出願公開、特開2012-165811、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成23年2月10日の出願であって、平成26年7月30日付けて拒絶理由が通知され、同年10月6日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成27年5月28日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年7月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月6日付けで、同年7月27日に提出された手続補正書による補正は却下の決定がされるとともに拒絶査定(査定の謄本の送達日 同年11月17日)がなされ、これに対し、平成28年2月16日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に、手続補正書の提出がされ、同年8月31日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年10月17日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成28年10月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項によって特定されるとおりのものであって、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。

「ゴルフクラブのスイングに関する測定を行うためのゴルフ支援システムであって、
ヘッドスピードについて複数の難易度が設定され、各難易度には複数のヘッドスピードの基準データが設定され、複数の難易度からユーザによりあらかじめ一つの難易度が選択され、
ヘッドスピードを測定し、この測定結果を、ユーザが選択した難易度に対応する複数の基準データと比較して良否判定する制御手段と、前記制御手段からの信号に基づいて前記測定結果の良否を色で知らせる報知手段とを含むことを特徴とするゴルフ支援システム。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
本願発明は、下記の刊行物1ないし5に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

刊行物1.特開2010-5289号公報
刊行物2.特開2008-73210号公報
刊行物3.特開2010-22739号公報
刊行物4.特表2008-512165号公報
刊行物5.特開2010-25737号公報

2 原査定の理由の判断
(1)刊行物の記載事項
ア 刊行物1
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物1には、以下の記載がある。

(ア) 「【0022】
図1,図2は、本発明のゴルフ支援装置の利用状態の一例を示す図である。図1,図2(a)に示すように、ゴルフ支援装置10は、ゴルフクラブ2をスイングするゴルファー1の後方所定位置に設置する。具体的な設置位置は、ゴルフ支援装置10の検知範囲が、スイング中のゴルフクラブ2のヘッド2aが最大速度で移動する地点を含むような位置である。一例としては、図1に示すように、ゴルフクラブ2のヘッド2aの移動軌跡Kの最下点付近がボールBに対するインパクト位置となり、通常、当該位置付近でヘッド2aの移動速度は最大速度になるため、係る移動軌跡Kの最下点の接線L上であり、かつ、ゴルファー1の後方を設置位置とする。この場合のボールBとゴルフ支援装置10との距離は、約1mとしている。後述するように、このゴルフ支援装置10には、ドップラーセンサが内蔵されているため、ドップラーセンサのアンテナの開口面11aが、ボールBに正対する(接線L上を向く)ように設置される。
【0023】
この設置位置は、使用クラブがパター以外のクラブの場合に対応するものであり、ボールBは無くても良い。つまり、ゴルフ支援装置10は、ボールBをおいて実際に打った場合には、そのスイングする毎にヘッドスピードとボールスピードの両者を同時に測定し、ボールBを置かない(置いていても実際に打たない)で素振りをした場合にはヘッドスピードのみ測定する。」

(イ) 「【0027】
図4に示すように、このゴルフ支援装置10は、出力周波数が24.15GHzのマイクロ波ドップラーセンサ11と、当該ドップラーセンサ11の出力信号(1波がゴルフクラブのヘッドの6mmの移動に相当する信号)を増幅するアンプ12と、アンプ12によって増幅された信号を基準値と比較し、ドップラーパルス(基準値以上の場合にハイレベルを基準値より小さい場合にはローレベルの信号)を出力するコンパレータ13と、コンパレータ13から出力されたパルス信号を入力し、アンプ12によって増幅されたアナログ信号を内蔵するA/Dコンバータに入力して、スイングスピードを求めるマイクロコントローラ(制御部)14と、マイクロコントローラ14からの制御によってスイングスピード等の表示を行う表示部15と、マイクロコントローラ14に接続されたスイッチ群16と、GPS衛星から発せられるGPS信号を受信し、現在位置を検出するGPS受信機17と、通信インターフェース18と、を備える。らさに、ゴルフ支援装置10は、内部メモリや、着脱可能な外部記録媒体(マイクロSDメモリカード等)等の記録メディアを備える。この記録メディアには、計測結果や機器の設定情報、仮想のゴルフコース並びに実際のゴルフコースのホールレイアウトを示すコースデータ等が記録される。実際のゴルフコースについてのデータは、例えばゴルフ場のグリーンやバンカー等コース上の対象物の位置、ゴルフ場の地図(位置情報を含む)がある。これらの情報は、例えば、特開平7-57189号公報や、特開2003-339929号公報に開示されたものと同様なものとすることができる。これにより、実際のゴルフコースでのプレイの軌跡を記録することができる。また、仮想のゴルフコースのホール情報を記憶しておくことで、仮想のゴルフコースを用いたゲームをすることかできる。」

(ウ) 「【0052】
また、上述したように、本実施形態のゴルフ支援装置10は、“平均値表示”モードにすることで、選択した条件(クラブ種,表示項目)についての平均値を知ることができる。そこで、例えば、コントローラ14は、ヘッドスピードの平均値と、実際に測定モードで素振りをして求めたヘッドスピードとを比較(選択したクラブ種は同じが良い)し、その日のコンディションがわかる様に表示する機能を備える。このコンディションは、ヘッドスピードが、平均値と比べて“ほぼ同じ”/“遅い”/“速い”、のいずれであるかを求め、“通常通りのコンディション”/“通常よりも振りが遅いコンディション(調子が悪い)”/“通常よりも振りが速いコンディション(調子がよい)”のいずれかをマイクロコントローラ14が判断して、その結果を表示する。この“同じ”/“遅い”/“速い”、のいずれに該当するかは、平均値に対して上下限のしきい値を設定し、そのしきい値の範囲内か否かにより弁別することができる。しきい値は、平均値に対して予め定めたマージン(±10%等)により決定できる。また、単純に平均値を用いるのではなく、過去の履歴データから分布状況を求め統計的に範囲を定めても良い。さらに、この例では、コンディションを3つの区分に分けたが、4段階以上に分けてももちろん良い。」

(エ) 刊行物1記載の「ゴルフ支援装置10」は、上記(イ)の記載からすれば、「出力周波数が24.15GHzのマイクロ波ドップラーセンサ11」、「コントローラ14」、「表示部15」等の各種ハードウェアからなる「ゴルフ支援システム」であることは自明である。

(オ) 上記(ウ)の「このコンディションは、ヘッドスピードが、平均値と比べて“ほぼ同じ”/“遅い”/“速い”、のいずれであるかを求め、“通常通りのコンディション”/“通常よりも振りが遅いコンディション(調子が悪い)”/“通常よりも振りが速いコンディション(調子がよい)”のいずれかをマイクロコントローラ14が判断して、その結果を表示する。」の記載について、「表示する」場所が「表示部15」であることは自明である。

上記(ア)ないし(オ)を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されている。
「ゴルフ支援システムは、ゴルフクラブ2をスイングするゴルファー1の後方所定位置に設置し、具体的な設置位置は、ゴルフ支援システムの検知範囲が、スイング中のゴルフクラブ2のヘッド2aが最大速度で移動する地点を含むような位置であり、
ゴルフ支援システムは、ボールBをおいて実際に打った場合には、そのスイングする毎にヘッドスピードとボールスピードの両者を同時に測定し、ボールBを置かない(置いていても実際に打たない)で素振りをした場合にはヘッドスピードのみ測定し、
ゴルフ支援システムは、出力周波数が24.15GHzのマイクロ波ドップラーセンサ11と、スイングスピードを求めるマイクロコントローラ(制御部)14と、マイクロコントローラ14からの制御によってスイングスピード等の表示を行う表示部15と、を備え、
ゴルフ支援システムは、ヘッドスピードの平均値と、実際に測定モードで素振りをして求めたヘッドスピードとを比較(選択したクラブ種は同じが良い)し、ヘッドスピードが、平均値と比べて“ほぼ同じ”/“遅い”/“速い”、のいずれであるかを求め、“通常通りのコンディション”/“通常よりも振りが遅いコンディション(調子が悪い)”/“通常よりも振りが速いコンディション(調子がよい)”のいずれかをマイクロコントローラ14が判断して、その結果を表示部15に表示し、
この“同じ”/“遅い”/“速い”、のいずれに該当するかは、平均値に対して上下限のしきい値を設定し、そのしきい値の範囲内か否かにより弁別し、しきい値は、平均値に対して予め定めたマージン(±10%等)により決定できる、ゴルフ支援システム。」

イ 刊行物2
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物2には、以下の記載がある。

(ア) 「【0019】
図1は、本発明の一実施形態が適用されたゴルフクラブのスイング評価支援システムの概略構成図である。図示するように、スイング評価支援システムは、ゴルフのクラブ10と、クラブバッグ30と、挙動解析装置50とを備えて構成される。
【0020】
クラブ10は、その内部に、クラブ10のスイング時の挙動を検出するための挙動検出装置20を備えている。ただし、その外観、重さ、重心などは、通常のゴルフクラブと同等になるように設計されている。
【0021】
図2は、挙動検出装置20の構成図である。挙動検出装置20は、様々な処理を行う中心的なユニットである主制御部21と、2つのジャイロセンサ22h、22gと、2つの加速度センサ23h、23gと、蓄電池24と、日時を生成する時計25と、入出力IF(インタフェース)26と、スイッチ27と、記憶装置28とを備えている。」

(イ) 「【0030】
図3は、挙動解析装置50の機能構成図である。挙動解析装置50は、主制御部51と、挙動評価部52と、入出力IF54とを有する。主制御部51は、様々な処理を行う中心的なユニットである。例えば、ユーザから入力装置を介して各種の要求を受け付けると、要求に応じた処理が行われるように、他の機能部に命令する。」

(ウ) 「【0032】
入出力IF54は、外部の機器との情報の授受を仲介する。例えば、クラブ10の挙動検出装置20から、挙動検出装置20が収集した挙動情報110(各センサの出力情報)を取得する。また、挙動評価部52が出力した評価結果を、表示装置に出力する。入出力IF54は、無線通信装置を備え、挙動検出装置20との情報の授受を、無線で行うことができる。また、入出力IF54は、挙動検出装置20の記憶装置28がICカードやメモリカードなどの可搬性の記録媒体の場合、これらの読取装置を備えている。」

(エ) 「【0037】
図5は、挙動検出装置20の記憶装置28に蓄積される、挙動情報110を示す。主制御部21は、図4のS14において、挙動情報110にレコード111を追加し、追加したレコード111に、レコードを識別するコード(レコードID)112と、クラブを識別するコード(クラブID113)と、時計25で取得した記録日時114と、各センサからの出力からなる挙動データ115とを格納する。
【0038】
挙動データ115には、図6に示すように、測定時間(スイッチ27のONからOFFまでの間)における、経過時間112ごとに、ヘッド部11のジャイロセンサ22hの三軸の検出結果123と加速度センサ23hの三軸の検出結果124と、グリップ部13のジャイロセンサ22gの三軸の検出結果125と加速度センサ23gの三軸の検出結果126とが格納される。
【0039】
こうして、スイッチ27のスイッチがON/OFFされ、クラブ10がスイングされるたびに、挙動情報110には、レコード111追加されていく。」

(オ) 「【0061】
そこで、クラブ10は、出力装置として、図15に示すように、例えばグリップ部13に、小型表示装置18と、スピーカ19とを内蔵している。小型表示装置18は、文字表示可能なものでもよいし、例えば、LED(レーザ発光ダイオードである)などの発光素子であってもよい。」

(カ) 「【0068】
(3)プロゴルファーのスイングと比較
挙動評価部52は、スイングが行われ、新たに挙動データ115が生成されると、プロゴルファーデータ170に登録されているプロゴルファーの挙動データ152と比較する。なお、複数のプロゴルファーの挙動データ152が存在する場合、ユーザにより予め選択されているものと比較する。例えば、新たに生成された挙動データ115と、プロゴルファーの挙動データ152とについて、それぞれ評価用データを求めて、ヘッドスピード162や飛距離163の相違度(差分)を求める。そして、相違度に応じて、予め定めたメッセージをスピーカ19で音声により発声する。例えば、ヘッドスピードが早い場合、「プロゴルファー***のヘッドスピードより早いです」などと発声する。もしくは、小型表示装置18で表示する。若しくは、出力内容に応じて予め定めた態様(色や点滅回数)で点灯させる。」

上記(ア)ないし(カ)を総合すると、刊行物2には、次の発明(以下「刊行物2発明」という。)が記載されている。

「スイング評価支援システムは、ゴルフのクラブ10と、挙動解析装置50とを備えて構成され、
クラブ10は、その内部に、クラブ10のスイング時の挙動を検出するための挙動検出装置20を備え、
挙動検出装置20は、 2つのジャイロセンサ22h、22gと、2つの加速度センサ23h、23gと、スイッチ27と、記憶装置28とを備え、
挙動解析装置50は、挙動評価部52と、入出力IF54とを有し、
入出力IF54は、挙動検出装置20から、挙動検出装置20が収集した挙動情報110(各センサの出力情報)を取得し、
入出力IF54は、無線通信装置を備え、挙動検出装置20との情報の授受を、無線で行うことができ、
挙動検出装置20の記憶装置28は、各センサからの出力からなる挙動データ115を格納し、
挙動データ115には、測定時間(スイッチ27のONからOFFまでの間)における、経過時間112ごとに、ヘッド部11のジャイロセンサ22hの三軸の検出結果123と加速度センサ23hの三軸の検出結果124と、グリップ部13のジャイロセンサ22gの三軸の検出結果125と加速度センサ23gの三軸の検出結果126とが格納され、
クラブ10は、出力装置として小型表示装置18を内蔵し、小型表示装置18はLED(レーザ発光ダイオードである)などの発光素子であってもよく、
挙動評価部52は、スイングが行われ、新たに挙動データ115が生成されると、プロゴルファーデータ170に登録されている複数のプロゴルファーの挙動データ152から、ユーザにより予め選択されているものと比較し、ヘッドスピード162の相違度(差分)を求め、相違度に応じて、小型表示装置18を予め定めた態様(色や点滅回数)で点灯させる、スイング評価支援システム。」

ウ 刊行物3
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物3には、以下の記載がある。

(ア) 「【0001】
本発明は、ゴルフクラブのヘッドスピード及びボールスピードを測定して求められるミート率に関する情報を適切に提供することができるゴルフ支援システム及びプログラムに関するものである。」

(イ) 「【0037】
一方、ミート率は、ヘッドスピードと、打ち出したボールのスピード(初速)に基づいて求めることができる。つまり、マイクロコントローラ14は、
ミート率=ボールスピード/ヘッドスピード
によりミート率を算出する。」

(ウ) 「【0058】
マイクロコントローラ14は、マイクロコントローラ14内のメモリに記憶した上記の諸特性(クラブ種、ヘッドスピード、ボールスピード、ミート率)を、マイクロSDメモリーカードに書き出す。このマイクロSDメモリーカードを取り出すと共に、パーソナルコンピュータ(PC)に接続されたメモリカードリーダー等にセットし、上記保存した諸特性のデータをPCに転送する。この転送は、PCにインストールされた諸特性の管理用のアプリケーション(ゴルフ支援システム)を起動し、そのアプリケーション上で取り込む。PCのメモリ(外部記憶メモリ/内部記憶メモリ)に格納される諸特性のデータ構造は、図6に示すものと同様にすることができる。マイクロSDメモリーカードに登録された諸特性が、ユーザごとに分けて登録されている場合、PCのメモリに格納する諸特性のデータも、ユーザごとに分けて登録する。これにより、以下に説明する履歴の表示も、ユーザごとに切り替えて行うことができる。なお、本実施形態では、測定結果等は、マイクロコントローラ14内のメモリに一旦記憶し、所定のボタン操作によってマイクロSDメモリーカードに書き出すこととしたが、測定後ボタン操作なしに直接マイクロSDメモリーカードに書き出すようにしてもよい。
【0059】
このPCに実装されたゴルフ支援システムは、PCの記憶装置に格納された上記の諸特性のデータを読み出し、PCのモニタ画面に表示する機能を備える。もちろん、プリントアウトすることもできる。
【0060】
図7から図12は、モニタ画面に表示されるレイアウトの一例を示している。図に示すように、表示画面Wの左上に、表示する諸特性を選択するためのメニューボタン領域MBが用意される。ユーザは、PCに連係されるマウス等のポインティングデバイスを操作して、所定のメニューボタンMBをクリックして指定することで、対応する表示画面を出力する。
【0061】
例えば「ヘッドスピード」ボタンがクリックされると、図7に示すような表示レイアウトの「ヘッドスピード表示画面」を出力する。つまり、PCのMPUは、メモリに格納された諸特性のうち、ヘッドスピードの履歴情報をクラブ種と関連付けて読み出すとともに、クラブ種ごとにグループ化する。そして、グループごとに最大/最小のヘッドスピードの値を抽出すると共に、グループごとに平均値を求め、その抽出並びに算出した結果を、画面の左側に用意された表形式の第1表示ウインドウW1に出力する。また、個々のヘッドスピードは、画面の右側に用意されたグラフ形式の第2表示ウインドウW2に表示する。この第2表示ウインドウW2は、図から明らかなように、横軸がクラブ種で、縦軸がヘッドスピードのグラフにおいて、取得した個々のヘッドスピードをグラフ上の該当する位置にマークMを描画するものである。また、第1,第2表示ウインドウW1,W2の間(第2表示ウインドウW2の縦軸の外側)には、クラブ種(図ではドライバー:1W)についてヘッドスピードのレベルを「プロ級」,「アマチュアトップレベル」,「一般男性」,「一般女性」の4段階に分けて表示している。そして、選択されたクラブ種(ドライバー)について、第2ウインドウW2内においても棒グラフ形式で対応する領域を区分けしている。なお、このレベル分けは、必ずしも、境界がしっかりと区分けされるものではないので、境界を線で仕切るのではなく、グラデーションのように適宜ぼかすようにしても良い。」

(エ) 「【0075】
一方、本実施形態では、図10に示したミート率表示画面を見たユーザは、自己の目標とするミート率(基準ミート率)を決め、登録することができる。なお、設定可能な基準ミート率の範囲は、「1.20?1.60」である。具体的には、ユーザからの指示(PCの入力装置(キーボード,ポインティングデバイス)の操作)を受けて、PCに実装されたゴルフ支援システムが用意した図13,図14に示す設定画面を表示する。なお、これら各図内に記載された値は、初期設定値(デフォルト値)である。この指示は、具体的には、表示画面に用意したメニュー画面(図示省略)を操作して指定したり、任意の表示画面でポインティングデバイスを操作して右クリックすることで、プルダウンメニューを表示させ、そこから選択するようにするなど、各種の手法がとれる。」

(オ) 「【0081】
このように、本実施形態では、目標とするミート率を自分で決めて設定でき、目標とするミート率を超えた場合には、ナイスショット表示がされるので、ナイスショット表示がされるようにスイングを工夫して改善させていくことができる。このように各人のレベルに合わせて、目標を設定できる。よって、徐々に目標とするミート率を高めながら、トレーニングを行うこともできる。また計測したら表示するので、その場で、目標に達しているかすぐに確認できる。
【0082】
本実施形態では、ナイスショットの出力は、たとえば、ナイスショットを示すマーク等を点灯させたり、LED等のランプを別途設けると共に、それを点灯・点滅するようにしたり、“ナイスショット”を示す音(音声等)を出力したりするようにしてもよい。」

上記(ア)ないし(オ)を総合すると、刊行物3には、次の発明(以下「刊行物3発明」という。)が記載されている。
「ゴルフクラブのヘッドスピード及びボールスピードを測定して求められるミート率に関する情報を適切に提供することができるゴルフ支援システムであって、
ミート率は、ヘッドスピードと、打ち出したボールのスピード(初速)に基づいて求めることができ、
ミート率=ボールスピード/ヘッドスピード
によりミート率を算出し、
ゴルフ支援システムは、PCの記憶装置に格納されたヘッドスピードのデータを読み出し、PCのモニタ画面に表示する機能を備え、
メモリに格納されたヘッドスピードの履歴情報を読み出し、
横軸がクラブ種で、縦軸がヘッドスピードのグラフにおいて、取得した個々のヘッドスピードをグラフ上の該当する位置にマークMを描画して、ヘッドスピードのレベルを「プロ級」,「アマチュアトップレベル」,「一般男性」,「一般女性」の4段階に分けて表示し、
ユーザは、自己の目標とするミート率(基準ミート率)を決め、登録することができ、
目標とするミート率を自分で決めて設定でき、目標とするミート率を超えた場合には、ナイスショット表示がされ、
ナイスショットの出力は、LED等のランプを別途設けると共に、それを点灯・点滅する、ゴルフ支援システム。」

エ 刊行物4
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物4には、以下の記載がある。
(ア) 「【0001】
本発明は、ゴルフスイングおよびボールの打撃を改善するためのゴルフトレーニング装置に関し、より詳細には、ゴルフストロークをプレイする人のスタンス、ゴルフボールの位置決め、クラブフェースのアライメント、体重配分および体重移動を改善するためのゴルフトレーニング装置に関する。」

(イ) 「【0059】
この装置は好ましくは、ゴルフボールのアドレス時およびゴルフストロークの間の全ゴルフスイング中の両方でゴルファーの足の間の体重配分についての情報を測定、表示および保存する。この装置は好ましくは、ゴルファーの足のつまさき端部と踵端部との間の体重配分を測定する。この装置は好ましくは、理想的なゴルフボールのアドレスならびにゴルフスイング体重配分および移動データの保存された組を保有および表示する。このデータは、さまざまなスイングパワーおよびスイングテンポを用いて、さまざまなゴルフクラブを用いてゴルフストロークをプレイする多数のさまざまな大きさおよび年齢の熟達したゴルファーからの踵およびつまさきの体重配分データを含み、ゴルファーが自分のゴルフスイングを改善するのに使用する自分自身の結果を比較する際に使用される。この装置は好ましくは、ゴルフクラブのゴルフボールに対するインパクトの前、インパクト中およびインパクト後に、ゴルファーのスイング中の短い時間の間、それぞれの足の間のゴルファーの体重移動およびつまさきと踵との体重配分を測定して、この情報をベクトル矢印の形状で表示する。これは、体重移動情報を評価する際、およびその体重移動情報を、ゴルフスイングを改善するのに使用される、熟達したゴルファーからの保存されたデータと比較する際にゴルファーによって使用される。」

(ウ) 「【0063】
本発明の一実施例はゴルフトレーニング装置を提供し、このゴルフトレーニング装置は、半透明なマットを含むスタンディングエリアと、複数のティーおよび電光板がスタンディングおよびヒッティングエリアの下にあるゴルフボール打撃マットとを提供するプラットフォームを含むベースユニットを含み、コンピュータにプログラムされたアルゴリズムは、性別、年齢、体重および寸法、クラブの選択ならびにプレイされるゴルフストロークのタイプに関して人によってコンピュータに入力されたデータに応じて、ゴルフストロークをプレイするために足を配置し、ゴルフボールを配置し、ゴルフボールの後にクラブフェースを位置合わせすべき最適な位置および角度を、装置を使用する人に表示するように、電光板における特定のライトのスイッチをオンまたはオフにするために用いられる。」

(エ) 「【0066】
公知の圧力感知装置は、公知の位置からゴルフボールを打撃する人のそれぞれの足の位置を検知するためにスタンディングエリアの下に設けられることができ、ここでは電光板は足配置位置を表示しない。電光板は次いで、選択された期間後または人がゴルフボールを打撃した後に点灯して、そのゴルフストロークをプレイするために足を配置すべきであった場所をその人に示し、これをその人に表示するために、コンピュータスクリーンもしくはモニタおよび/もしくはプリントアウト上のテキストおよび/もしくは矢印もしくは線によって、コンピュータスクリーンもしくはモニタ上の、コンピュータもしくは別の方法で生成された音声および/もしくはムービーによって、ならびに/または矢印の形状もしくは他の好適な形の電光板におけるライトによって、付随する指示をその人に示す。この指示は、点滅していてもよい。このおよび他のデータならびに指示は、その後の検索のため、および/または装置上で、もしくはデータベース上でリモートで、もしくはインターネットを介してワールドワイドウェブ上で見るために保存されてもよい。」

(オ) 「【0079】
自分の結果を熟達したゴルファーの結果と比較することによってゴルフスイングを改善するために装置を使用する人によって使用されるように、さまざまなスイングパワーおよびスイングテンポを用いて、さまざまなゴルフクラブを用いて、さまざまなボール飛翔ストロークをプレイする多数のさまざまな大きさの男女の熟達したゴルファーの足によってアドレス時およびゴルフスイング中に連続的な態様で取られる理想的な体重配分のデータが与えられることができる。熟達したゴルファーについての体重配分および移動のデータは、このシステムを使用する人が選択したときに表示されることが可能である。コンピュータは、ゴルファーの入力データと最も近く一致する熟達したゴルファー、すなわち、性別、身長、体重および体格の点で最も近く一致し、たとえば選択されたゴルフスイングテンポが少なくともスロー、ミディアムまたはファーストの範囲から1つに分類される選択されたゴルフクラブを用いる熟達したゴルファーを選択することになる。したがって、このシステムを使用する人は、スイングテンポが自分自身のスイングテンポと類似した、自分の選択されたストロークと類似したゴルフストロークをプレイする熟達したゴルファーのゴルフスイングと自分のゴルフスイングを比較することができることになる。したがって、人は、ゴルフスイングの前およびゴルフスイング中の体重配分および移動を改善するのに使用される公知の熟達した人の基準に対して自分の体重配分および移動を容易にモニタでき、評価できる。」

上記(ア)ないし(オ)を総合すると、刊行物4には、次の発明(以下「刊行物4発明」という。)が記載されている。

「ゴルフスイングおよびボールの打撃を改善するためのゴルフトレーニング装置に関し、より詳細には、ゴルフストロークをプレイする人のスタンス、ゴルフボールの位置決め、クラブフェースのアライメント、体重配分および体重移動を改善するためのゴルフトレーニング装置に関し、
この装置は、ゴルフボールのアドレス時およびゴルフストロークの間の全ゴルフスイング中の両方でゴルファーの足の間の体重配分についての情報を測定、表示および保存し、
理想的なゴルフボールのアドレスならびにゴルフスイング体重配分および移動データの保存された組を保有および表示し、このデータは、さまざまなスイングパワーおよびスイングテンポを用いて、さまざまなゴルフクラブを用いてゴルフストロークをプレイする多数のさまざまな大きさおよび年齢の熟達したゴルファーからの踵およびつまさきの体重配分データを含み、
ゴルファーが自分のゴルフスイングを改善するのに使用する自分自身の結果を比較し、
ゴルフトレーニング装置は、半透明なマットを含むスタンディングエリアと、複数のティーおよび電光板がスタンディングおよびヒッティングエリアの下にあるゴルフボール打撃マットとを提供するプラットフォームを含むベースユニットを含み、コンピュータにプログラムされたアルゴリズムは、性別、年齢、体重および寸法、クラブの選択ならびにプレイされるゴルフストロークのタイプに関して人によってコンピュータに入力されたデータに応じて、ゴルフストロークをプレイするために足を配置し、ゴルフボールを配置し、ゴルフボールの後にクラブフェースを位置合わせすべき最適な位置および角度を、装置を使用する人に表示し、
圧力感知装置は、公知の位置からゴルフボールを打撃する人のそれぞれの足の位置を検知するためにスタンディングエリアの下に設けられることができ、ここでは電光板は足配置位置を表示せず、電光板は次いで、選択された期間後または人がゴルフボールを打撃した後に点灯し、
コンピュータは、ゴルファーの入力データと最も近く一致する熟達したゴルファー、すなわち、性別、身長、体重および体格の点で最も近く一致し、たとえば選択されたゴルフスイングテンポが少なくともスロー、ミディアムまたはファーストの範囲から1つに分類される選択されたゴルフクラブを用いる熟達したゴルファーを選択するゴルフトレーニング装置。」

オ 刊行物5
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物5には、以下の記載がある。

(ア) 「【請求項1】
ドップラー信号を出力するドップラーセンサと、
前記ドップラーセンサによって出力されたドップラー信号に基づく当該ドップラー信号の周期に関するデータを複数個蓄積可能な第一蓄積手段と、
前記ドップラーセンサによって出力されたドップラー信号に基づき当該ドップラー信号の周期に関するデータを得て前記第一蓄積手段への蓄積を行い、前記第一蓄積手段に蓄積されたデータ群に基づきゴルフクラブのヘッドスピードを算出するヘッドスピード算出手段と、
前記ドップラーセンサによって出力されたドップラー信号に基づくA/D変換データを蓄積可能な第二蓄積手段と、
前記ドップラーセンサによって出力されたドップラー信号に基づくA/D変換データを得て前記第二蓄積手段への蓄積を行い、前記第二蓄積手段に蓄積されたA/D変換データに対する周波数スペクトル解析を行ってボールスピードを算出するボールスピード算出手段と
を備える速度測定装置であって、
前記ゴルフクラブのスイングがあったか否かを判別するスイング判別手段を備え、
前記ヘッドスピード算出手段は、前記ドップラーセンサによって出力されたドップラー信号の周期が所定値より小さくなった場合に、前記第一蓄積手段への前記周期に関するデータの蓄積を開始し、
前記ボールスピード算出手段は、前記スイング判別手段によってヘッドのスイングがあったと判別された場合に、前記第二蓄積手段へのA/D変換データの蓄積を開始すること
を特徴とする速度測定装置。」

(イ) 「【0018】
またドップラーセンサは従来から知られている様々なものを用いることができる。たとえば、所定周波数の出力信号を生成する信号生成手段と、前記信号生成手段で生成された前記出力信号を出力する送信アンテナと、前記出力信号の反射波を受信する受信アンテナと、前記受信アンテナで受信された反射波と前記出力信号を周波数混合するミキサと、前記ミキサから出力される混合信号を前記ドップラー信号として出力するドップラーセンサを用いることができる。送信アンテナと受信アンテナは異なるものとすることもできるし、同一のものを用いるようにもできる。このように、たとえば送信波と反射波の差分信号をドップラー信号として出力するドップラーセンサを用いることができる。ドップラー信号としては、この差分信号そのものでもよいし、差分信号に所定の処理を加えたものでもよい。ドップラーセンサとしては、特にマイクロ波ドップラーセンサを用いるとよい。マイクロ波ドップラーセンサによれば、装置自体のセンサ部を開口させたり、透明板を用いたりする必要がなく、装置のデザイン性を損なわずにすむ。」

上記(ア)、(イ)を総合すると、刊行物5には、次の発明(以下「刊行物5発明」という。)が記載されている。

「ドップラー信号を出力するドップラーセンサと、
ドップラーセンサによって出力されたドップラー信号に基づき ゴルフクラブのヘッドスピードを算出するヘッドスピード算出手段と、
ドップラーセンサによって出力されたドップラー信号に基づき、ボールスピードを算出するボールスピード算出手段とを備える速度測定装置であって、
ドップラーセンサは、所定周波数の出力信号を生成する信号生成手段と、前記信号生成手段で生成された前記出力信号を出力する送信アンテナと、前記出力信号の反射波を受信する受信アンテナと、前記受信アンテナで受信された反射波と前記出力信号を周波数混合するミキサと、前記ミキサから出力される混合信号を前記ドップラー信号として出力し、
ドップラーセンサとしては、特にマイクロ波ドップラーセンサを用いるとよい、速度測定装置。」

(2)対比
本願発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「ゴルフ支援システム」は、「ボールBをおいて実際に打った場合には、そのスイングする毎にヘッドスピードとボールスピードの両者を同時に測定し、ボールBを置かない(置いていても実際に打たない)で素振りをした場合にはヘッドスピードのみ測定」するものであるから、本願発明の「ゴルフクラブのスイングに関する測定を行うためのゴルフ支援システム」に相当する。
刊行物1発明の「ヘッドスピードの平均値」に対して「予め定めたマージン(±10%等)」である「上下限のしきい値」は、「ヘッドスピードが、平均値と比べて“ほぼ同じ”/“遅い”/“速い”、のいずれであるか」を「そのしきい値の範囲内か否かにより弁別」するためのものであるから、本願発明の「複数のヘッドスピードの基準データ」に相当する。
刊行物1発明において、「ヘッドスピードの平均値と、実際に測定モードで素振りをして求めたヘッドスピードとを比較(選択したクラブ種は同じが良い)し、ヘッドスピードが、平均値と比べて“ほぼ同じ”/“遅い”/“速い”、のいずれであるかを求め、“通常通りのコンディション”/“通常よりも振りが遅いコンディション(調子が悪い)”/“通常よりも振りが速いコンディション(調子がよい)”のいずれか」を「マイクロコントローラ14」が「判断」するから、刊行物1発明の「マイクロコントローラ14」は、本願発明の「基準データと比較して良否判定する制御手段」に相当する。
刊行物1発明において、「表示部15」は、「“通常通りのコンディション”/“通常よりも振りが遅いコンディション(調子が悪い)”/“通常よりも振りが速いコンディション(調子がよい)”のいずれか」の「結果」を「表示」するものであるから、本願発明の「測定結果の良否」を「知らせる報知手段」に相当する。

したがって、本願発明と刊行物1発明とは、
「ゴルフクラブのスイングに関する測定を行うためのゴルフ支援システムであって、
複数のヘッドスピードの基準データが設定され、
ヘッドスピードを測定し、この測定結果を、複数の基準データと比較して良否判定する制御手段と、前記制御手段からの信号に基づいて前記測定結果の良否を知らせる報知手段とを含むゴルフ支援システム。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)
本願発明は「ヘッドスピードについて複数の難易度が設定され」、「各難易度には」複数のヘッドスピードの基準データが設定され、「複数の難易度からユーザによりあらかじめ一つの難易度が選択され」、「ユーザが選択した難易度」に対応する複数の基準データと比較して良否判断する制御手段を含むのに対し、刊行物1発明は、そうではない点。

(相違点2)
本願発明は測定結果の良否を「色」で知らせるのに対し、刊行物1発明は測定結果の良否を色で知らせることは特定していない点。

(3)判断
上記相違点1について検討する。刊行物2ないし5発明は、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項である、「ヘッドスピードについて複数の難易度が設定され」、「複数の難易度からユーザによりあらかじめ一つの難易度が選択され」る点を備えていない。また、 この点は、当業者が適宜選択できる設計的事項であるともいえない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明は、刊行物1ないし5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
また、請求項2ないし7に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、同様に、刊行物1ないし5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

(4)まとめ
以上のとおり、請求項1ないし7に係る発明は、刊行物1ないし5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということはできないから、本願は、原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
平成28年8月31日付けで通知した拒絶理由の概要は以下のとおりである。

(1)理由1
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


(請求項1)
「複数の段階的に設定した難易度に応じて複数準備される基準データ」の記載の意味が不明確である。
(請求項5)
「ヘッドスピード」について、「段階的に増減する複数の基準データ」という記載と、請求項1の「複数の段階的に設定した難易度に応じて複数準備される基準データ」との記載は、同じことを意味しているのか否かが不明である。
(請求項5ないし11)
請求項2ないし4を引用しない場合、「ボールスピード、ミート率又はボールの推定飛距離」について「基準データ」を設定することの技術的意味を理解できない。
(請求項6ないし11)
「ユーザのスコアに対応して複数の基準データを設定した」との記載があるが、「ユーザのスコアに対応して」という記載が「複数の基準データ」に対していかなる限定を加えようとするものであるのか、明確に理解できない。言い換えれば、「ユーザのスコアに対応して」設定された「複数の基準データ」と、単なる「複数の基準データ」とは、いかなる点で異なるのか不明である。

(2)理由2
平成28年2月16日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


当該手続補正により補正された請求項1の「複数の段階的に設定した難易度に応じて複数準備される基準データ」という記載について、出願当初明細書、図面に記載されておらず、自明な事項であるともいえない。

2 当審拒絶理由についての判断
(1)理由1について
ア 請求項1について
平成28年10月17日に提出された手続補正書による補正により、請求項1の「複数の段階的に設定した難易度に応じて複数準備される基準データ」の記載が、「ユーザが選択した難易度に対応する複数の基準データ」と補正されるとともに、「ヘッドスピードについて複数の難易度が設定され、各難易度には複数のヘッドスピードの基準データが設定され、複数の難易度からユーザによりあらかじめ一つの難易度が選択され」ることが追加して特定されたから、明確となった。

イ 請求項5について
平成28年10月17日に提出された手続補正書による補正により、「前記ヘッドスピード、ボールスピード、ミート率又はボールの推定飛距離のうちの少なくとも一つについて、段階的に増減する複数の基準データを設定するとともに、」との記載が削除されたため、意味が明確となった。

ウ 請求項6ないし11について
平成28年10月17日に提出された手続補正書による補正により、請求項6ないし11は削除された。

以上により、当審拒絶理由の理由1は解消した。

(2)理由2について
平成28年10月17日に提出された手続補正書による補正により、請求項1の「複数の段階的に設定した難易度に応じて複数準備される基準データ」の記載が、「ユーザが選択した難易度に対応する複数の基準データ」と補正されるとともに、「ヘッドスピードについて複数の難易度が設定され、各難易度には複数のヘッドスピードの基準データが設定され、複数の難易度からユーザによりあらかじめ一つの難易度が選択され」ることが追加されたことにより、請求項1の記載は出願当初明細書、特許請求の範囲、図面に記載した事項の範囲内のものとなった。
したがって、当審拒絶理由の理由2は解消した。

(3)まとめ
以上のとおり、平成28年10月17日に提出された手続補正書による補正により、当審拒絶理由の理由1及び理由2は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-05 
出願番号 特願2011-27356(P2011-27356)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石川 信也右田 純生  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 植田 高盛
森次 顕
発明の名称 ゴルフ支援システム、ゴルフ支援装置及びプログラム  

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