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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1322244
異議申立番号 異議2015-700270  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-12-03 
確定日 2016-08-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5727754号発明「固形粉末化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5727754号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?4]について訂正することを認める。 特許第5727754号の請求項1、3に係る特許を維持する。 特許第5727754号の請求項2、4についての申立てを却下する。 
理由 1.経緯
特許第5727754号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成22年11月12日に特許出願され、平成27年4月10日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人舘野美成子及び長谷川隆治により、各々特許異議の申立てがなされ、平成28年2月18日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年4月25日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その後、平成28年7月6日に特許異議申立人長谷川隆治から意見書の提出があったものである。

2.訂正の適否についての判断

(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。

ア 訂正事項1
請求項1に「平均粒子径0.1?20μm」とあるのを、「平均粒子径1?10μm」と訂正する。

イ 訂正事項2
請求項1に「架橋型アクリル系樹脂粉末」とあるのを、「メタクリル酸メチルクロスポリマー」に訂正する。

ウ 訂正事項3
請求項1に「(b)25℃で液体であるIOB値0.1以下の低極性油剤及び/又は非極性油剤」とあるのを、「(b)エステル油、シリコーン油及び炭化水素系油剤から選ばれる、25℃で液体であるIOB値0.1以下の低極性油剤及び/又は非極性油剤」に訂正する。

エ 訂正事項4
請求項1に「(c)IOB値0.1を超える極性油剤」とあるのを、「(c)エステル油及び高級アルコールから選ばれる、IOB値0.1を超える極性油剤」に訂正する。

オ 訂正事項5
請求項2を削除する。

カ 訂正事項6
請求項3に「架橋型アクリル系樹脂粉末」とあるのを、「メタクリル酸メチルクロスポリマー」に訂正する。

キ 訂正事項7
請求項3に「請求項1又は2記載の」とあるのを、「請求項1記載の」に訂正する。

ク 訂正事項8
請求項4を削除する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

ア 訂正事項1
訂正事項1に関連して、特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0008】
・・・。また、当該架橋アクリル系樹脂粉末の平均粒子径は、皮脂や汗を選択的に吸着し、高い化粧持続性を得る点及び皮膚形態の補正効果、皮膚の平滑性、塗擦感の点から、0.1?20μmが好ましく、1?10μmがより好ましい。・・・。」
よって、訂正事項1は、特許明細書に記載されているものと認められる。
かかる訂正は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、架橋アクリル系樹脂粉末の平均粒子径を、「0.1?20μm」より、さらに限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正事項2
訂正事項2に関連して、特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0008】
本発明に用いる(a)比表面積が100m^(2)/g以上で平均粒子径が0.1?20μmの架橋型アクリル系樹脂粉末としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド及びメタクリルアミドから選ばれるアクリル系モノマーを構成単位として含む重合体又は共重合体の架橋体が挙げられる。このうち、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルから選ばれるモノマーを構成単位として含む重合体又は共重合体の架橋体が好ましく、メタクリル酸メチルクロスポリマーが特に好ましい。・・・。」
よって、訂正事項2は、特許明細書に記載されているものと認められる。
かかる訂正は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、「架橋アクリル系樹脂粉末」を、より具体的に「メタクリル酸メチルクロスポリマー」に限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 訂正事項3
訂正事項3に関連して、 特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0010】
本発明に用いる(b)25℃で液体であるIOB値0.1以下の低極性油剤及び/又は非極性油剤としては、ステアリン酸ステアリル(IOB=0.08)、ミリスチン酸オクチルドデシル(IOB=0.09)等のエステル油;重合度0?5の直鎖状ジメチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等のシリコーン油;軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン等のパラフィン系油剤;合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワラン等のスクワラン系油剤;α-オレフィンオリゴマー等の炭化水素系油剤等が挙げられるが、シリコーン油及び炭化水素系油剤などの非極性油剤を用いた場合に、化粧持続性において特に良好な効果が得られる。・・・。」
よって、訂正事項3は、特許明細書に記載されているものと認められる。
かかる訂正は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、「25℃で液体であるIOB値0.1以下の低極性油剤及び/又は非極性油剤」を、より具体的な成分である「エステル油、シリコーン油及び炭化水素系油剤から選ばれる」ものに限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ 訂正事項4
訂正事項4に関連して、 特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0013】
(c)IOB値0.1を超える極性油剤としては、パルチミン酸オクチル(IOB=0.13)、・・・セバシン酸ジイソプロピル(IOB=0.4.)等のエステル油;・・・;デシルテトラデカノール(IOB=0.21)、オクチルドデカノール(IOB=0.26)、オレイルアルコール(IOB=0.28)等の高級アルコール等が挙げられる。」
よって、訂正事項4は、特許明細書に記載されているものと認められる。
かかる訂正は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、「(c)IOB値0.1を超える極性油剤」を、より具体的な成分である「エステル油及び高級アルコールから選ばれる」ものに限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

オ 訂正事項5
訂正事項5は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

カ 訂正事項6
訂正事項6に関連して、特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0008】
本発明に用いる(a)比表面積が100m^(2)/g以上で平均粒子径が0.1?20μmの架橋型アクリル系樹脂粉末としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド及びメタクリルアミドから選ばれるアクリル系モノマーを構成単位として含む重合体又は共重合体の架橋体が挙げられる。このうち、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルから選ばれるモノマーを構成単位として含む重合体又は共重合体の架橋体が好ましく、メタクリル酸メチルクロスポリマーが特に好ましい。・・・。」
よって、訂正事項6は、特許明細書に記載されているものと認められる。
かかる訂正は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、「架橋アクリル系樹脂粉末」を、より具体的に「メタクリル酸メチルクロスポリマー」に限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

キ 訂正事項7
訂正事項7は、訂正前の請求項3が、請求項1または2の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとしたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ク 訂正事項8
訂正事項8は、請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)一群の請求項
補正前の請求項1?4について、請求項2?4は、いずれも請求項1を直接又は間接に引用しており、 訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、当該請求項1?8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(4)むすび
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、 同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものである。

【請求項1】
(a)比表面積が100m^(2)/g以上で平均粒子径1?10μmのメタクリル酸メチルクロスポリマー0.01?10質量%、(b)エステル油、シリコーン油及び炭化水素系油剤から選ばれる、25℃で液体であるIOB値0.1以下の低極性油剤及び/又は非極性油剤30?70質量%、並びに(c)エステル油及び高級アルコールから選ばれる、IOB値0.1を超える極性油剤15質量%以下を含有することを特徴とする油性固形粉末化粧料。

【請求項2】(削除)

【請求項3】
メタクリル酸メチルクロスポリマーが、球状又は略球状である請求項1記載の固形粉末化粧料。

【請求項4】(削除)

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし4に係る特許に対して平成28年2月18日付けで特許権者に通知した取消理由は、要旨次のとおりである。

[理由1及び2]
本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号、同条第6項第1号又は同条同項第2号に規定する要件を満たしていない。
ア 成分(a)の粉末について
イ 本件発明の所期の効果を奏する構成について

(3)判断
ア 成分(a)の粉末について
特許明細書の【0024】?【0028】には、具体的な実施例として実施例1が示され、実施例1は成分(a)として「比表面積が170m^(2)/g、平均粒子径8μmのメタクリル酸メチルクロスポリマー」を含んでおり、これは、本件訂正発明1の「(a)比表面積が100m^(2)/g以上で平均粒子径1?10μmのメタクリル酸メチルクロスポリマー」との発明特定事項を満たすものであり、そして当該実施例1は、塗布感、補正効果、化粧持続性において優れることが明らかにされている。
そうすると、発明の詳細な説明が、成分(a)の粉末に関して、本件訂正発明1に係る特許、及びこれを引用する本件訂正発明3に係る特許を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとまではいえない。

イ 本件発明の所期の効果を奏する構成について
特許明細書の【0024】?【0028】には、実施例1とともに比較例1、2が示されており、実施例1は成分(a)として「比表面積が170m^(2)/g、平均粒子径8μmのメタクリル酸メチルクロスポリマー0.1質量%」を含んでおり、成分(b)として「デカメチルシクロペンタシロキサン30.0質量%及びジメチルポリシロキサン10.1質量%」を含んでおり、成分(c)として「イソノナン酸イソノニル10.0質量%」を含んでおり、これらは、各々本件訂正発明1の「(a)比表面積が100m^(2)/g以上で平均粒子径1?10μmのメタクリル酸メチルクロスポリマー0.01?10質量%」、「(b)エステル油、シリコーン油及び/又は炭化水素系油剤から選ばれる、25℃で液体であるIOB値0.1以下の低極性油剤及び/又は非極性油剤30?70質量%」、「(c)エステル油及び高級アルコールから選ばれる、IOB値0.1を超える極性油剤15質量%以下」を満たすものであり、そして当該実施例1は、塗布感、補正効果、化粧持続性において優れることが明らかにされている。
これに対して、比較例1は、本件訂正発明1の「(b)エステル油、シリコーン油及び/又は炭化水素系油剤から選ばれる、25℃で液体であるIOB値0.1以下の低極性油剤及び/又は非極性油剤30?70質量%」、「(c)エステル油及び高級アルコールから選ばれる、IOB値0.1を超える極性油剤15質量%以下」を満たすものではなく、塗布感及び補正効果については、実施例1と比較して劣ること(◎から○)、化粧持続性については、実施例1と比較して大変劣ること(◎から×)が把握できる。また、比較例2は、本件訂正発明1の「比表面積が170m^(2)/g、平均粒子径8μmのメタクリル酸メチルクロスポリマー0.1質量%」を満たすものではなく、塗布感及び補正効果については、実施例1と比較して劣ること(◎から○)、化粧持続性については、実施例1と比較して大変劣ること(◎から△)が把握できる。
以上のとおり、当業者であれば、実施例1及び比較例1、2の対比から、成分(a)?成分(c)についての、本件訂正発明1における発明特定事項を全て満たせば、所期の作用効果を得られる一方、本件訂正発明1における発明特定事項を一つでも満たさなければ、所期の作用効果を得られないこと
が理解できる。
そうすると、本件訂正発明1、3に係る特許が、発明の詳細な説明に記載したものではないとまではいえないとともに、本件訂正発明1、3に係る特許が、明確でないとまではいえない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、上記取消理由によっては、本件訂正発明1、3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正発明1、3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件訂正発明2、4に係る特許は訂正により削除されたため、当該請求項2、4に対してなされた特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)比表面積が100m^(2)/g以上で平均粒子径1?10μmのメタクリル酸メチルクロスポリマー0.01?10質量%、(b)エステル油、シリコーン油及び炭化水素系油剤から選ばれる、25℃で液体であるIOB値0.1以下の低極性油剤及び/又は非極性油剤30?70質量%、並びに(c)エステル油及び高級アルコールから選ばれる、IOB値0.1を超える極性油剤15質量%以下を含有することを特徴とする油性固形粉末化粧料。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
メタクリル酸メチルクロスポリマーが、球状又は略球状である請求項1記載の固形粉末化粧料。
【請求項4】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-08-09 
出願番号 特願2010-253517(P2010-253517)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (A61K)
P 1 651・ 537- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 橋本 憲一郎松村 真里  
特許庁審判長 内藤 伸一
特許庁審判官 小川 慶子
齊藤 光子
登録日 2015-04-10 
登録番号 特許第5727754号(P5727754)
権利者 花王株式会社
発明の名称 固形粉末化粧料  
代理人 村田 正樹  
代理人 中嶋 俊夫  
代理人 村田 正樹  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 山本 博人  
代理人 山本 博人  
代理人 高野 登志雄  
代理人 高野 登志雄  
代理人 中嶋 俊夫  

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