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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 発明同一  B32B
管理番号 1322253
異議申立番号 異議2015-700172  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-11-11 
確定日 2016-09-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5718679号発明「積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5718679号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1ないし13]について訂正することを認める。 特許第5718679号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5718679号の請求項1ないし13に係る特許についての出願は、平成23年3月3日(優先権主張 平成22年3月3日)に特許出願され、平成27年3月27日にその特許権の設定登録がされた。
その後、請求項1ないし13に係る特許について、特許異議申立人林法子により特許異議の申立てがなされ、平成28年2月22日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年4月25日(特許庁受付)に意見書の提出及び訂正の請求があり、平成28年6月6日付けで特許異議申立人林法子より意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
ア.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と芳香族環を有さないジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とからなるポリカーボネート樹脂層(A層)」を、「下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の少なくともいずれか一方とからなるポリカーボネート樹脂層(A層)」に訂正する。
イ.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の「からなることを特徴とする積層体。」を、「からなり、総厚さが0.15mm以上、3mm以下であることを特徴とする積層体。」に訂正する。
ウ.訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2の「前記B層の両面に前記A層を積層することを特徴とする請求項1に記載の積層体。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と・・・前記B層に用いる樹脂が芳香族ポリカーボネート樹脂のみからなり、前記B層の両面に前記A層を積層することを特徴とする積層体。」に訂正する。
エ.訂正事項4
訂正事項3により独立形式に改めた、特許請求の範囲の請求項2の「下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と芳香族環を有さないジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とからなるポリカーボネート樹脂層(A層)」を、「下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の少なくともいずれか一方とからなるポリカーボネート樹脂層(A層)」に訂正する。
オ.訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6の「前記積層体の総厚さが0.15mm以上、3mm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の積層体。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、「下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と・・・前記B層に用いる樹脂が芳香族ポリカーボネート樹脂のみからなり、前記B層の両面に前記A層を積層し、総厚さが0.15mm以上、3mm以下であることを特徴とする積層体。」に訂正する。
カ.訂正事項6
訂正事項5により独立形式に改めた、特許請求の範囲の請求項6の「下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と芳香族環を有さないジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とからなるポリカーボネート樹脂層(A層)」を、「下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の少なくともいずれか一方とからなるポリカーボネート樹脂層(A層)」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正前の請求項1及びそれぞれが請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2ないし13は一群の請求項であり、訂正事項1ないし6による訂正は当該一群の請求項1ないし13に対し請求されたものである。
イ.訂正事項1及び訂正事項2について
訂正事項1は、本件特許明細書の段落【0058】ないし【0059】の「前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位以外の構造単位の中では、芳香族環を有さないジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が好ましく用いられる。より具体的には、例えば、国際公開第2004/111106号に記載の脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位および国際公開第2007/148604号に記載の脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を挙げることができる。」なる記載に基づいて、訂正前の請求項1の「芳香族環を有さないジヒドロキシ化合物に由来する構造単位」が「脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の少なくともいずれか一方」であることを特定するものである。
訂正事項2は、訂正前の請求項6の記載及び本件特許明細書の段落【0125】の「本発明の積層体の総厚さは、0.15mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましく、また3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。かかる範囲にあることで、現行使用されている芳香族ポリカーボネート樹脂シートの代替として容易に適用できる。」なる記載に基づいて、訂正前の請求項1の「積層体」が、「総厚さが0.15mm以上、3mm以下である」ことを特定するものである。
ゆえに、訂正前の請求項1についての訂正事項1及び訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ.訂正事項3及び訂正事項4について
訂正事項3は、請求項2について、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する形式であったものを、請求項1を引用しない独立形式とするものであり、訂正事項4は、訂正事項3により独立形式に改めた請求項2について、「芳香族環を有さないジヒドロキシ化合物に由来する構造単位」が「脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の少なくともいずれか一方」であることを特定するものである。
ゆえに、訂正前の請求項2についての訂正事項3及び訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第2項第4号に掲げる事項を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ.訂正事項5及び訂正事項6について
訂正事項5は、請求項6について、訂正前の請求項6が訂正前の請求項1から5のいずれか1項を引用する形式であったものを、請求項1から5のいずれか1項を引用しない独立形式とするものであり、訂正事項6は、訂正事項5により独立形式に改めた請求項6について、「芳香族環を有さないジヒドロキシ化合物に由来する構造単位」が「脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の少なくともいずれか一方」であることを特定するものである。
ゆえに、訂正前の請求項6についての訂正事項5及び訂正事項6による訂正は、特許法第120条の5第2項第4号に掲げる事項を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項[1ないし13]について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
申立ての対象である本件訂正請求により訂正された請求項1ないし13に係る発明(以下「本件発明1ないし13」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

【請求項1】
下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の少なくともいずれか一方とからなるポリカーボネート樹脂層(A層)と、芳香族ポリカーボネート樹脂層(B層)とを積層し、前記A層に用いるポリカーボネート樹脂中の一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が35モル%以上90モル%以下であり、前記B層に用いる樹脂が芳香族ポリカーボネート樹脂のみからなり、総厚さが0.15mm以上、3mm以下であることを特徴とする積層体。
【化1】

【請求項2】
下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の少なくともいずれか一方とからなるポリカーボネート樹脂層(A層)と、芳香族ポリカーボネート樹脂層(B層)とを積層し、前記A層に用いるポリカーボネート樹脂中の一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が35モル%以上90モル%以下であり、前記B層に用いる樹脂が芳香族ポリカーボネート樹脂のみからなり、前記B層の両面に前記A層を積層することを特徴とする積層体。
【化2】

【請求項3】
積層体の両表面のうち、少なくとも一方にハードコート層、反射防止層および防汚層から選ばれる機能付与層を1層以上設けることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
さらに印刷層を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記A層の厚さが30μm以上、100μm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の少なくともいずれか一方とからなるポリカーボネート樹脂層(A層)と、芳香族ポリカーボネート樹脂層(B層)とを積層し、前記A層に用いるポリカーボネート樹脂中の一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が35モル%以上90モル%以下であり、前記B層に用いる樹脂が芳香族ポリカーボネート樹脂のみからなり、前記B層の両面に前記A層を積層し、総厚さが0.15mm以上、3mm以下であることを特徴とする積層体。
【化3】

【請求項7】
前記A層を構成する樹脂組成物100重量%に対し、紫外線吸収剤を1.0重量%以上添加してなることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の積層体を打ち抜き加工して得られるディスプレイカバー。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の積層体を加工して得られる建築材料部材。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか1項に記載の積層体を熱成形して得られる熱成形体。
【請求項11】
請求項10記載の熱成形体を含む自動販売機用模擬缶。
【請求項12】
請求項10に記載の熱成形体を含むプレススルーパック。
【請求項13】
請求項10に記載の熱成形体の表面に溶融樹脂を射出成形して裏打ち層を形成して得られるインモールド成形体。

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし13に係る特許に対して、通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。

理由1.本件特許は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)には、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が記載されていない。
特に、「芳香族環を有さないジヒドロキシ化合物に由来する構造単位」について、本件特許明細書の段落【0047】ないし【0065】には、「1,4-シクロヘキサンジメタノール」を含む様々な好ましい例が記載されているが、これらの例が好ましいとされる理由や、前記「芳香族環を有さないジヒドロキシ化合物に由来する構造単位」が、発明の課題解決にどのように寄与するのかといった課題解決の原理については、本件特許明細書には記載されていない。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された事項と実質的に対応しないものであり、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。
また、本件発明1を引用する請求項2ないし13に係る発明(以下、「本件発明2ないし13」という。)についても同様である。

理由2.本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報が発行された下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。


・請求項 1、3ないし5、7ないし13
・先の特許出願 特願2011-527727号(特許第5798921号)
・備考
先の特許出願は、特許異議申立の甲第1号証の対応出願である。
本件発明1、3ないし5、7ないし13は、先の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一である。

理由3.本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1ないし13
・刊行物
1.特開2006-103169号公報
2.特開2009-144013号公報
3.特開2009-196153号公報
・備考
刊行物1ないし3は、それぞれ、特許異議申立の甲第2号証ないし甲第4号証である。
本件発明1ないし13は、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものである。

(3)判断
以下に述べるとおり、上記理由1ないし3はいずれも解消された。
ア.理由1について
訂正の認容により、訂正前の請求項1の「芳香族環を有さないジヒドロキシ化合物に由来する構造単位」について、本件発明1、2及び6では「脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の少なくともいずれか一方」であることが特定された。

これに関し、本件特許明細書には以下の(ア)ないし(オ)が記載されている。
(ア)段落【0013】
本発明が解決しようとする課題は、芳香族ポリカーボネート樹脂シートでは達成できない表面硬度と、アクリル樹脂又はアクリル樹脂を表層に配置する積層体では達成できない耐衝撃性および打ち抜き加工性とを兼備したディスプレイカバー、並びに紫外線吸収機能を付与した芳香族ポリカーボネート樹脂シートでは達成できない耐黄変劣化性を有する建材などに適した積層体を提供することにある。
(イ)段落【0014】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定のポリカーボネート樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂とを積層する積層体が、総厚さが現行厚さであり、かつ薄肉化しても歩留まり良く打ち抜き加工が可能であることを見出した。
(ウ)段落【0019】ないし【0020】
第1の発明によれば、構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂層(A層)と、芳香族ポリカーボネート樹脂層(B層)とを積層することを特徴とする積層体が提供される。
【化1】

(エ)段落【0022】ないし【0023】
第2の発明によれば、第1の発明において、前記ジヒドロキシ化合物が、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物である。
【化2】

(オ)段落【0057】ないし【0059】
前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位以外の構造単位を更に含むことで、加工容易性、耐衝撃性および芳香族ポリカーボネート樹脂との相互溶解性などを改良することが可能となる。
前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位以外の構造単位の中では、芳香族環を有さないジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が好ましく用いられる。
より具体的には、例えば、国際公開第2004/111106号に記載の脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位および国際公開第2007/148604号に記載の脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を挙げることができる。

これらの記載(ア)ないし(オ)からみて、上記特定は、本件発明1ないし13の解決すべき課題(上記(ア)を参照)について、「加工容易性、耐衝撃性および芳香族ポリカーボネート樹脂との相互溶解性などを改良することが可能となる」(上記(オ)を参照)ことに寄与するものと解される。
ゆえに、本件発明1ないし13について、発明の課題を解決するための手段が記載されていないとはもはやいえず、発明の詳細な説明に記載されていない発明であるともいえない。

したがって、訂正の認容により、理由1は解消された。

イ.理由2について
訂正により、理由2のなかった訂正前の請求項6に記載されていた「総厚さが0.15mm以上、3mm以下であること」が、請求項1及び請求項1を引用する請求項3ないし5及び7ないし13についての発明特定事項とされた。
したがって訂正の認容により、理由2は解消された。

ウ.理由3について
刊行物1ないし3には、本件発明1ないし13における発明特定事項である「下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の少なくともいずれか一方とからなるポリカーボネート樹脂層(A層)と、芳香族ポリカーボネート樹脂層(B層)とを積層」することについて、記載も示唆もされていない。

刊行物1には、「芳香族ポリカーボネート樹脂層にアクリル樹脂層を積層し、総厚さが0.5?1.2mmの積層体」の発明が記載されている。
そして、刊行物1の段落【0005】に「本発明者は、上記課題を達成するため鋭意研究を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂積層体を構成するアクリル樹脂層厚み及び積層体の総厚みを特定の範囲に制御し、更にアクリル樹脂層上にハードコート処理することにより、表面硬度、特に鉛筆硬度、耐衝撃性及び打ち抜き加工性のバランスのとれた液晶ディスプレーカバーに好適なポリカーボネート樹脂積層体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。」と記載されているように、刊行物1に記載された発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂層にアクリル樹脂層を積層することを前提とした発明であって、アクリル樹脂層を他の樹脂に変更し得ることについては、記載も示唆もされていない。

刊行物2には、上記A層の樹脂を用いたもの(土木建築資材部品)が記載されているが、これと芳香族ポリカーボネート樹脂層(B層)とを積層することについて、記載も示唆もされていない。

さらに、上記刊行物1に記載された発明におけるアクリル樹脂層を他の樹脂に変更する動機付けとなる事項や、上記刊行物2に記載されたA層の樹脂からなる層と芳香族ポリカーボネート樹脂層(B層)とを積層する動機付けとなる事項は、刊行物3には記載されていない。

したがって、理由3には理由がない。

(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、平成28年6月6日付け意見書で、本件訂正請求による訂正は認められるべきものではなく、訂正前の請求項1ないし13に係る発明は理由3により特許を受けることができないものであり、仮に上記訂正が認められるとしても、本件発明1ないし13は依然として進歩性を有しない旨の意見を述べている。
しかしながら、上記2で述べたとおり、本件訂正請求による訂正に違法性はなく、訂正は認められるべきものである。
そして、進歩性については、刊行物1ないし3には、本件発明1ないし13における発明特定事項である「下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の少なくともいずれか一方とからなるポリカーボネート樹脂層(A層)と、芳香族ポリカーボネート樹脂層(B層)とを積層」することについて、記載も示唆もされていないことは、上記(3)に述べたとおりである。
したがって、上記意見はいずれも失当である。

(5)むすび
以上のとおりであるから、取消理由によっては、本件発明1ないし13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の少なくともいずれか一方とからなるポリカーボネート樹脂層(A層)と、芳香族ポリカーボネート樹脂層(B層)とを積層し、
前記A層に用いるポリカーボネート樹脂中の一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が35モル%以上90モル%以下であり、
前記B層に用いる樹脂が芳香族ポリカーボネート樹脂のみからなり、
総厚さが0.15mm以上、3mm以下であることを特徴とする積層体。
【化1】

【請求項2】
下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の少なくともいずれか一方とからなるポリカーボネート樹脂層(A層)と、芳香族ポリカーボネート樹脂層(B層)とを積層し、
前記A層に用いるポリカーボネート樹脂中の一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が35モル%以上90モル%以下であり、
前記B層に用いる樹脂が芳香族ポリカーボネート樹脂のみからなり、
前記B層の両面に前記A層を積層することを特徴とする積層体。
【化2】

【請求項3】
積層体の両表面のうち、少なくとも一方にハードコート層、反射防止層および防汚層から選ばれる機能付与層を1層以上設けることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
さらに印刷層を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記A層の厚さが30μm以上、100μm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の少なくともいずれか一方とからなるポリカーボネート樹脂層(A層)と、芳香族ポリカーボネート樹脂層(B層)とを積層し、
前記A層に用いるポリカーボネート樹脂中の一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が35モル%以上90モル%以下であり、
前記B層に用いる樹脂が芳香族ポリカーボネート樹脂のみからなり、
前記B層の両面に前記A層を積層し、
総厚さが0.15mm以上、3mm以下であることを特徴とする積層体。
【化3】

【請求項7】
前記A層を構成する樹脂組成物100重量%に対し、紫外線吸収剤を1.0重量%以上添加してなることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の積層体を打ち抜き加工して得られるディスプレイカバー。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の積層体を加工して得られる建築材料部材。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか1項に記載の積層体を熱成形して得られる熱成形体。
【請求項11】
請求項10記載の熱成形体を含む自動販売機用模擬缶。
【請求項12】
請求項10に記載の熱成形体を含むプレススルーパック。
【請求項13】
請求項10に記載の熱成形体の表面に溶融樹脂を射出成形して裏打ち層を形成して得られるインモールド成形体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-08-31 
出願番号 特願2011-45898(P2011-45898)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B32B)
P 1 651・ 161- YAA (B32B)
P 1 651・ 121- YAA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 加賀 直人  
特許庁審判長 見目 省二
特許庁審判官 山田 由希子
渡邊 豊英
登録日 2015-03-27 
登録番号 特許第5718679号(P5718679)
権利者 三菱化学株式会社 三菱樹脂株式会社
発明の名称 積層体  
代理人 濱田 百合子  
代理人 特許業務法人栄光特許事務所  
代理人 特許業務法人栄光特許事務所  
代理人 市川 利光  
代理人 市川 利光  
代理人 濱田 百合子  
代理人 特許業務法人栄光特許事務所  
代理人 特許業務法人栄光特許事務所  

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