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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23G
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23G
管理番号 1322262
異議申立番号 異議2016-700080  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-01-29 
確定日 2016-09-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5756074号発明「耐熱性チョコレート及び耐熱性チョコレートの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5756074号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4について訂正することを認める。 特許第5756074号の請求項1?4に係る特許を維持する。 
理由 1.特許第5756074号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成24年11月2日の出願であって、平成27年6月5日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人不二製油株式会社により特許異議申立がなされ、当審において平成28年3月28日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年5月30日に意見書の提出及び訂正の請求があり、平成28年6月24日に手続補正があったものである。


2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
平成28年6月24日の手続補正により補正された平成28年5月30日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第5756074号の特許請求の範囲を、本請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?3、4について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。

(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に「油脂中に40?90質量%のXOX及び3.1?10質量%のXXXを含み、」とあるのを、「油脂中に40?90質量%のXOX、3.1?10質量%のXXX、及び0.6?9.9質量%のUUUを含み、」と訂正する。

(訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項4に「油脂中に40?90質量%のXOX及び1?10質量%のXXXを含み、」とあるのを、「油脂中に40?90質量%のXOX、1?10質量%のXXX、及び0.6?9.9質量%のUUUを含み、」と訂正する。

(2)訂正の適否
ア 訂正の目的
上記訂正事項1は、耐熱性テンパー型チョコレートのトリグリセリド組成について「0.6?9.9質量%のUUUを含」むことをさらに特定するものであり、上記訂正事項2は、チョコレート生地のトリグリセリド組成について「0.6?9.9質量%のUUUを含」むことをさらに特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項1及び2は、上記アのとおり、耐熱性テンパー型チョコレート又はチョコレート生地のトリグリセリド組成をさらに特定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項1及び2で限定した事項は、本件明細書の段落【0078】【表3】に実施例として、実施例4:UUUが9.9質量%及び実施例5:UUUが0.6質量%のものが示されると共に、2.1質量%のものが示され、さらに、段落【0077】【表2】にUUUが0.9質量%のものが示されていることに基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?3〕、4についての訂正を認める。

3.特許異議申立について
(1)本件発明
本件訂正の請求により訂正された訂正請求項1?4に係る発明(以下訂正請求項1?4に記載された発明を「本件発明1?4」、また、これらをあわせて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

【請求項1】
油脂中に40?90質量%のXOX、3.1?10質量%のXXX、及び0.6?9.9質量%のUUUを含み、
前記XOXは少なくともStOStを含み、
前記StOStの含量は油脂中に35?70質量%である、
耐熱性テンパー型チョコレート。
(ただし、XOXはグリセロール骨格の1,3位に炭素数16以上の飽和脂肪酸(X)が、2位にオレイン酸(O)が結合したトリアシルグリセロールを示し、StOStは1,3-ジステアロイル-2-オレオイルグリセロールを示し、XXXは、炭素数16以上の飽和脂肪酸(X)が3個結合したトリアシルグリセロールを示す)
【請求項2】
油脂中に6?26質量%のXU2+UUUを含む請求項1に記載の耐熱性テンパー型チョコレート。
(ただし、XU2は炭素数16以上の飽和脂肪酸(X)1個と炭素数16以上の不飽和脂肪酸(U)2個とが結合したトリアシルグリセロールを示し、UUUは炭素数16以上の不飽和脂肪酸(U)が3個結合したトリアシルグリセロールを示し、XU2+UUUはXU2及びUUUの合計量を示す)
【請求項3】
油脂中に0.1?5質量%のP2Stを含む請求項1又は2に記載の耐熱性テンパー型チョコレート。
(ただし、P2Stはパルミチン酸2個とステアリン酸1個とが結合したトリアシルグリセロールを示す)
【請求項4】
油脂中に40?90質量%のXOX、1?10質量%のXXX、及び0.6?9.9質量%のUUUを含み、
前記XOXは少なくともStOStを含み、
前記StOStの含量は油脂中に35?70質量%である、融液状態にある34?39℃のチョコレート生地に、β型StOSt結晶を少なくとも含むシーディング剤を添加する添加工程を含む耐熱性テンパー型チョコレートの製造方法。
(ただし、XOXはグリセロール骨格の1,3位に炭素数16以上の飽和脂肪酸(X)が、2位にオレイン酸(O)が結合したトリアシルグリセロールを示し、StOStは1,3-ジステアロイル-2-オレオイルグリセロールを示し、XXXは、炭素数16以上の飽和脂肪酸(X)が3個結合したトリアシルグリセロールを示す)

(2)取消理由の概要
請求項1?4に係る特許に対して平成28年3月28日付けで特許権者に通知した取消理由は、要旨次のとおりである。

甲第1号証:特開昭63-248343号公報
甲第2号証:特開昭60-27341号公報
(ア)請求項1及び2について
本件発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当する。
また、仮に相違するとしても、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

(イ)請求項3について
本件発明3は、甲第1号証及び甲第2号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

(ウ)請求項4について
本件発明4は、甲第1号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

(3)甲号証の記載
ア 甲第1号証には、以下の記載がある。
(ア-1)「2.特許請求の範囲
(1)、以下の(a)?(d)からなるトリグリセリド成分85%(重量基準、以下同じ)以上と15%未満の非トリグリセリド成分から成り、且つ下記の固体脂含有率を有する、ハードバター組成物。
(a)、5%以下のトリ飽和グリセリド、
(b)、20?65%の、一分子内に1個の不飽和結合を有するトリグリセリド、但し該グリセリド中、その重量に基づいて、
○1(「○内に数字の1、以下同じ。)、2-オレオ-1,3-ジステアリンが50?95%、
○2、2-オレオ-1-パルミト-3-ステアリンが20%以下、
○3、2-オレオ-1,3-ジパルミチンが30%以下、
○4、1,2-飽和-3-不飽和グリセリドが20%以下、
(c)、30%以下の、一分子内に2個の不飽和結合を有するトリグリセリド、但し該グリセリド中、その重量に基づいて、
○1、1-ステアロ-2,3-ジオレインが40%以下、
(d)、10?70%の、一分子内に3個以上の不飽和結合を有するトリグリセリド。

固体脂含有率(SFI)
5℃:65%以下、
5℃と25℃の差:15%以下、
30℃:20?55%、
35℃:2?35%、
40℃:3%以下。」

(ア-2)「(産業技術分野)
本発明は、耐熱性を有するにも拘わらず低温域において軟らかい特性を備えたハードバター組成物に関し、殊に固型チョコレート用に使用したとき噛み出しがソフトであってシャープな口溶けを有し、且つ通常温度において充分な保型性を有する、ハードバター組成物に関する。」(1頁右欄下から5行?2頁左上欄2行)

(ア-3)「(従来技術及び解決課題)
従来より、カカオ代用脂として周知である、2-オレオ-1,3-ジパルミチン(略称POP)、2-オレオ-1-パルミト-3-ステアリン(略称PoSt)又は2-オレオ-1,3-ジステアリン(略称StOSt)等の一分子内に1個の不飽和結合を有するトリグリセリド(略称U1)を主成分とするテンパリング型のハードバターは、カカオ脂との相客性がよくカカオ脂と任意の割合で混合使用することが可能であるため、カカオ脂を多量使用する芳醇なカカオ風味を有したチョコレートを製造する上で極めて有用である。」(2頁左上欄3?14行)

(アー4)「本発明におけるハードバター組成物は、事実上2種類の、一分子内に1個の不飽和結合を有するトリグリセリド(略称Ul)成分と、一分子内に3個以上の不飽和結合を有するトリグリセリド(略称U3)成分より成るものであってもよく、前者のU1成分が20?65%、後者のU3成分が10?70%の範囲内であればカカオ脂と任意の割合で混合でき、且つテンパリング処理が可能である。但し、U1成分中その50?95%以上は2-オレオ-1,3-ジステアリン(略称StOSt)成分でなければならず、2-オレオ-1-パルミト-3-ステアリン(略称POSt)は20%以下、2-オレオ-1,3-ジパルミチン(略称POP)成分は30%以下でないと耐熱性が得られ難い。」(3頁左上欄13行?右上欄6行)

(ア-5)「使用例1?6
ミルクチョコレート配合
カカオマス 13 部
精製油脂 33 部
砂糖 41 部
全脂粉乳 13 部
レシチン 0.3部
香料 適量
以上の配合にて、常法どおりロール掛け、コンチング、テンパリング処理して固型チョコレートを得た。かくして得たチョコレートを10℃においてはコーンペネトレーターにより(数値が大きい程軟らかい)、30℃においてはレオメータ-により(数値が大きい程硬い)それぞれ硬さを測定した。その結果を表-2に示す。」(5頁右下欄1?15行)

(ア-6)「使用例7及び8
スイートチョコレート配合
カカオマス 35 部
混合油脂 20 部
砂糖 45 部
レシチン 0.5部
香料 適量
以上の配合にて、前例と同様に、ロール掛け、コンチング、テンパリング処理して固型チョコレートを得、その硬さを測定した。結果は表-3のとおり。」(6頁右上欄9?末行)

(イ)甲第1号証に記載された発明
上記(ア-2)?(ア-4)の記載を総合すると、ハードバター組成物をチョコレートに使用すること(上記(ア-2))及びハードバター組成物をカカオ脂と任意の割合で混合できること(上記(ア-3)、(アー4))が記載されているから、(ア-1)のハードバター組成物に照らすと、甲第1号証には、以下の発明が記載されている。

「(1)、以下の(a)?(d)からなるトリグリセリド成分85%(重量基準、以下同じ)以上と15%未満の非トリグリセリド成分から成り、且つ下記の固体脂含有率を有するハードバター組成物、とカカオ脂とを任意の割合で混合した固型チョコレート。
(a)、5%以下のトリ飽和グリセリド、
(b)、20?65%の、一分子内に1個の不飽和結合を有するトリグリセリド、但し該グリセリド中、その重量に基づいて、
○1(「○内に数字の1、以下同じ。)、2-オレオ-1,3-ジステアリンが50?95%、
○2、2-オレオ-1-パルミト-3-ステアリンが20%以下、
○3、2-オレオ-1,3-ジパルミチンが30%以下、
○4、1,2-飽和-3-不飽和グリセリドが20%以下、
(c)、30%以下の、一分子内に2個の不飽和結合を有するトリグリセリド、但し該グリセリド中、その重量に基づいて、
○1、1-ステアロ-2,3-ジオレインが40%以下、
(d)、10?70%の、一分子内に3個以上の不飽和結合を有するトリグリセリド。

固体脂含有率(SFI)
5℃:65%以下、
5℃と25℃の差:15%以下、
30℃:20?55%、
35℃:2?35%、
40℃:3%以下。」

(4)判断
ア 本件発明1について
(対比)
本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比する。
甲第1号証に記載された発明の「ハードバター組成物、とカカオ脂とを任意の割合で混合した固型チョコレート」について、具体的な実施例として「使用例1?6」(上記(ア-5))及び「使用例7及び8」(上記(ア-6))に、精製油脂(ハードバター組成物)33部又は20部に対して、それぞれカカオマスを13部又は35部含むものが記載されていることを参照すると、カカオマスの主要成分であるカカオ脂がトリグリセリドを含むことは技術常識であるから、チョコレートに含まれるカカオ脂の量が、チョコレートのトリグリド組成に影響を与えない量であるとはいえない。
したがって、甲第1号証に記載されたチョコレートのトリグリド組成は、「ハードバター組成物」のトリグリド組成とカカオ脂のトリグリセリド組成とからなるものであることは明らかである。
ここで、甲第1号証のチョコレートに用いられているカカオ脂のトリグリセリド組成は明らかでないから、「ハードバター組成物」のトリグリド組成が明らかであっても、チョコレートのトリグリセリド組成は明らかとならない。
さらに、甲第1号証に記載された「使用例1?6」及び「使用例7及び8」においても、用いられているカカオマスのトリグリド組成が明らかでないから、チョコレートのトリグリセリド組成は明らかでない。
そうすると、本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1では、「油脂中に40?90質量%のXOX、3.1?10質量%のXXX、及び0.6?9.9質量%のUUUを含み、前記XOXは少なくともStOStを含み、前記StOStの含量は油脂中に35?70質量%である」のに対し、甲第1号証記載の発明では、トリグリセリド組成が不明である点。

<相違点1についての判断>
上記相違点1は、明らかに実質的な相違点であるから、本件発明1は甲第1号証に記載された発明ではない。
そして、甲第1号証においても、耐熱性の向上と通常温度の保型性を課題とするもの(上記(ア-2))であるが、そのために、チョコレートのXOX、XXX、UUU及びStOStの含有量をどのように調整するかについて、甲第1号証に記載も示唆もなく、他の文献にも示されていないから、上記相違点について当業者が容易に想到し得たとはいえない。
また、本件発明1は、上記相違点1に係る事項を有することで、耐熱性チョコレートにおいて「良好な口どけ及びブルーム耐性を有する」(【0010】)という顕著な効果を奏するものである。

<小括>
したがって、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当せず、上記甲第1号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでなく、取り消されるべきものでない。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を特定するための事項をすべて含み、更に他の事項を付加したものに相当するから、本件発明2と甲第1号証に記載された発明とは、少なくとも上記<相違点1>の点で相違する。
そして、上記<相違点1>については、上記<相違点1についての判断>で検討したのと同じ理由により、当業者が容易に想到し得たとはいえない。よって、本件発明2は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当せず、甲第1号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでなく、取り消されるべきものでない。

ウ 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1を特定するための事項をすべて含み、更に他の事項を付加したものに相当するから、本件発明3と甲第1号証に記載された発明とは、少なくとも上記<相違点1>の点で相違する。
そして、上記<相違点1>については、上記<相違点1についての判断>で検討したのと同じ理由により、当業者が容易に想到し得たとはいえない。よって、本件発明3は、甲第1号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでなく、取り消されるべきものでない。

エ 本件発明4について
甲第1号証には、甲第1号証記載の発明である固型チョコレートの製造方法が記載されている。
そうすると、本件発明4と甲第1号証に記載された発明の製造方法とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点2>
本件発明1では、「油脂中に40?90質量%のXOX、1?10質量%のXXX、及び0.6?9.9質量%のUUUを含み、前記XOXは少なくともStOStを含み、前記StOStの含量は油脂中に35?70質量%である」のに対し、甲第1号証記載の発明の製造方法では、トリグリセリド組成が不明である点。

<相違点2についての判断>
甲第1号証においても、耐熱性の向上と通常温度の保型性を課題とするもの(上記(ア-2))であるが、そのために、チョコレートのXOX、XXX、UUU及びStOStの含有量をどのように調整するかについて、甲第1号証に記載も示唆もなく、他の文献にも示されていないから、上記相違点2について当業者が容易に想到し得たとはいえない。
また、本件発明4は、上記相違点2に係る事項を有することで、耐熱性チョコレートにおいて「良好な口どけ及びブルーム耐性を有する」(【0010】)という顕著な効果を奏するものである。

<小括>
したがって、本件発明4は、甲第1号証記載の発明の製造方法に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでなく、取り消されるべきものでない。

オ 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は訂正事項により追加された「0.6?9.9質量%のUUUを含」むことについて、甲第1号証のチョコレートのUUUが充足する蓋然性が高いこと、及び耐熱性を考慮すると、UUUを少なくなるように調整することは容易である旨主張するが、上記のとおり、甲第1号証のチョコレートのトリグリセリド組成は不明であるから、特許異議申立人の主張は採用できない。

4.むすび
したがって、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂中に40?90質量%のXOX、3.1?10質量%のXXX、及び0.6?9.9質量%のUUUを含み、
前記XOXは少なくともStOStを含み、
前記StOStの含量は油脂中に35?70質量%である、
耐熱性テンパー型チョコレート。
(ただし、XOXはグリセロール骨格の1,3位に炭素数16以上の飽和脂肪酸(X)が、2位にオレイン酸(O)が結合したトリアシルグリセロールを示し、StOStは1,3-ジステアロイル-2-オレオイルグリセロールを示し、XXXは、炭素数16以上の飽和脂肪酸(X)が3個結合したトリアシルグリセロールを示す)
【請求項2】
油脂中に6?26質量%のXU2+UUUを含む請求項1に記載の耐熱性テンパー型チョコレート。
(ただし、XU2は炭素数16以上の飽和脂肪酸(X)1個と炭素数16以上の不飽和脂肪酸(U)2個とが結合したトリアシルグリセロールを示し、UUUは炭素数16以上の不飽和脂肪酸(U)が3個結合したトリアシルグリセロールを示し、XU2+UUUはXU2及びUUUの合計量を示す)
【請求項3】
油脂中に0.1?5質量%のP2Stを含む請求項1又は2に記載の耐熱性テンパー型チョコレート。
(ただし、P2Stはパルミチン酸2個とステアリン酸1個とが結合したトリアシルグリセロールを示す)
【請求項4】
油脂中に40?90質量%のXOX、1?10質量%のXXX、及び0.6?9.9質量%のUUUを含み、
前記XOXは少なくともStOStを含み、
前記StOStの含量は油脂中に35?70質量%である、融液状態にある34?39℃のチョコレート生地に、β型StOSt結晶を少なくとも含むシーディング剤を添加する添加工程を含む耐熱性テンパー型チョコレートの製造方法。
(ただし、XOXはグリセロール骨格の1,3位に炭素数16以上の飽和脂肪酸(X)が、2位にオレイン酸(O)が結合したトリアシルグリセロールを示し、StOStは1,3-ジステアロイル-2-オレオイルグリセロールを示し、XXXは、炭素数16以上の飽和脂肪酸(X)が3個結合したトリアシルグリセロールを示す)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-09-12 
出願番号 特願2012-243117(P2012-243117)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A23G)
P 1 651・ 121- YAA (A23G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小石 真弓  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 佐々木 正章
紀本 孝
登録日 2015-06-05 
登録番号 特許第5756074号(P5756074)
権利者 日清オイリオグループ株式会社
発明の名称 耐熱性チョコレート及び耐熱性チョコレートの製造方法  
代理人 正林 真之  
代理人 正林 真之  

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