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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  A01N
管理番号 1322297
異議申立番号 異議2016-700901  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-21 
確定日 2016-11-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第5892136号発明「冷却水系の殺藻方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5892136号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
本件特許第5892136号の請求項1および2に係る特許についての出願は、平成25年9月24日に特許出願され、平成28年3月4日に特許権の設定登録がされ、同年同月23日に特許公報が発行され、その後、その特許に対し、平成28年9月21日に特許異議申立人 龍原 友二(以下、「特許異議申立人」という)により特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
特許第5892136号の請求項1および2に係る特許は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1および2に記載された事項により特定されるとおりの以下のものである(以下、それぞれ「本件発明1」および「本件発明2」という。)。

「 【請求項1】
クロロスルファミン酸および/またはクロロスルファミン酸塩により抗菌処理されている冷却水系において、珪藻類、緑藻類、藍藻類を少なくとも含む藻類が発生したときに、更にイソチアゾロン系化合物を該冷却水系に添加する冷却水系の殺藻方法であって、
該抗菌処理されている冷却水系のクロロスルファミン酸および/またはクロロスルファミン酸塩由来の残留塩素濃度が0.01?50mg-Cl_(2)/Lであり、
該藻類が発生したときの該冷却水系のクロロスルファミン酸および/またはクロロスルファミン酸塩由来の残留塩素濃度を0.5?20mg-Cl_(2)/Lに調整すると共に、イソチアゾロン系化合物を2?1000mg/L添加することを特徴とする冷却水系の殺藻方法。
【請求項2】
請求項1において、前記冷却水系におけるクロロスルファミン酸および/またはクロロスルファミン酸塩の残留塩素濃度が0.5mg-Cl_(2)/L以上であることを特徴とする冷却水系の殺藻方法。」

3 特許異議申立の概要
特許異議申立人は、証拠として下記の甲第1?5号証を提出(主たる証拠として甲第1号証及び従たる証拠として下記の甲第2号証ないし甲第5号証を提出)して、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、又は甲第1号証に記載された発明及び甲第2?5号証に記載された技術的事項から容易に発明することができたものであり、請求項2に係る発明も、甲第1号証に記載された発明であり、又は甲第1号証に記載された発明及び甲第2?5号証に記載された技術的事項から容易に発明することができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきである旨主張している。


甲第1号証:特開2012-36108号公報
甲第2号証:特開2009-84163号公報
甲第3号証:特開2010-201313号公報
甲第4号証:米国特許第4241214号明細書
甲第5号証:特開平5-221813号公報

4 甲号証の記載
(1)甲第1号証
本件出願前頒布された刊行物であることが明らかな甲第1号証には、以下の記載がある。
(1a)「【請求項1】
開放循環冷却水系の冷却水に対して、ハロゲン系酸化物による処理を24時間に1時間以上行い、かつ、
有機系殺菌剤による処理を30日間に1回以上行う
ことを特徴とする開放循環冷却水系の処理方法。
【請求項2】
前記ハロゲン系酸化物による処理が、水中で遊離塩素を生成する物質を前記冷却水に添加し、前記冷却水中の酸化力を遊離残留塩素濃度として0.01mg/L以上5mg/L以下の範囲に維持する処理であることを特徴とする請求項1に記載の開放循環冷却水系の処理方法。
【請求項3】
前記ハロゲン系酸化物による処理が、前記冷却水中の酸化力を遊離残留塩素濃度として0.01mg/L以上1mg/L以下の範囲に維持する処理であり、かつ、該ハロゲン系酸化物による処理を常時行うことを特徴とする請求項2に記載の開放循環冷却水系の処理方法。
【請求項4】
前記水中で遊離塩素を生成する物質が、次亜ハロゲン酸塩、ハロゲン化イソシアヌル酸、ハロゲン化ヒダントインから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の開放循環冷却水系の処理方法。
【請求項5】
前記ハロゲン系酸化物による処理が、水中で結合塩素を生成する物質を前記冷却水に添加し、前記冷却水中の酸化力を全残留塩素濃度として1mg/L以上100mg/L以下の範囲に維持する処理であることを特徴とする請求項1に記載の開放循環冷却水系の処理方法。
・・・
【請求項7】
前記水中で結合塩素を生成する物質が、クロラミン類、及び、次亜ハロゲン酸塩とスルファミン酸塩とを反応させて得られる安定化次亜ハロゲン酸塩から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の開放循環冷却水系の処理方法。
【請求項8】
前記有機系殺菌剤による処理が、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、及び、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンから選択される少なくとも1種のイソチアゾリン系化合物を、前記冷却水系の保有水量に対する添加濃度が、該イソチアゾリン系化合物の有効成分濃度として1mg/L以上20mg/L以下となるように前記冷却水系に添加する処理であり、かつ、
該有機系殺菌剤による処理を、2日間ないし30日間に1回行う
ことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の開放循環冷却水系の処理方法。
・・・」(特許請求の範囲)

(1b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、レジオネラ属を確実に不検出レベルに殺菌、抑制することができ、しかも薬剤耐性菌や薬剤耐性を持った藻類が繁殖しにくい開放循環冷却水系の処理方法に関する。」

(1c)「【0009】
従って、レジオネラ属を確実に不検出レベルに殺菌、抑制することができ、しかも薬剤耐性菌や薬剤耐性を持った藻類が繁殖しにくい開放循環冷却水系の処理方法が求められていた。」

(1d)「【0011】
本発明は、上記問題を解決する、すなわち、レジオネラ属を確実に不検出レベルに殺菌、抑制することができ、しかも薬剤耐性菌や薬剤耐性を持った藻類が繁殖しにくい開放循環冷却水系の処理方法を提供することを目的とする。」

(1e)「【0024】
さらに、ハロゲン系酸化物として、水中で結合塩素を生成する物質を使用することで、冷却水中に酸化力を維持することが容易となり、このとき、冷却水中の酸化力を全残留塩素濃度として1mg/L以上100mg/L以下の範囲に24時間に1時間以上維持することで、レジオネラ属菌繁殖の温床となる水系内のバイオフィルムを、より効果的に抑制することができる。また、薬剤耐性菌や薬剤耐性を持った藻類の繁殖を、より有効に抑えることができる。
【0025】
加えて、冷却水中の酸化力を全残留塩素濃度として1mg/L以上10mg/L以下の範囲に常時維持することで、水系で用いられる機器などの軟鋼や銅などの金属に対する腐食性をより効果的に防ぎながら、レジオネラ属菌の殺菌と、耐性菌、耐性藻類の繁殖抑制を可能とする。」

(1f)「【0030】
本発明において、ハロゲン系酸化物としては、水中で酸化力を示すハロゲン系酸化物であれば良く、具体的には、水中で遊離塩素を生成する物質及び水中で結合塩素を生成する物質から選択される少なくとも1種の物質を用いる。
・・・
【0034】
また、水中で結合塩素を生成する物質として、予めアンモニアが存在している水系に次亜ハロゲン酸塩を添加して、水系中でクロラミン類を生成させたり、予めスルファミン酸が存在している水系に次亜ハロゲン酸塩を添加して、水系中で安定化次亜ハロゲン酸塩を生成させても良く、この場合も本発明に含まれる。
【0035】
ここで、次亜ハロゲン酸塩などの水中で遊離塩素を生成する物質の場合、冷却水中の有機物などと反応して速やかに分解してしまうため、有効濃度を一定レベルに維持するのが難しく、その結果、濃度低下のために十分な微生物抑制効果が得られなかったり、あるいは、過剰添加により重要な機器に腐食が生じたりするおそれがある。一方、水中で結合塩素を生成する物質、特に、次亜ハロゲン酸塩とスルファミン酸塩とを反応させて得られる安定化次亜ハロゲン酸塩は、冷却水中での分解速度が遅く、その濃度変化が少ないので、有効濃度の維持が容易であり、結果として安定した効果が得られるので好ましい。」

(1g)「【0052】
<処理条件3(ハロゲン系酸化物による処理と有機系殺菌剤(イソチアゾリン系化合物)による処理とを併用)>
次亜塩素酸ナトリウム7重量%とスルファミン酸ナトリウム20重量%とを含有する安定化次亜塩素酸ナトリウム製剤を、冷却水中の酸化力が全残留塩素濃度として1?2mg/Lを常時維持するように添加し、かつ、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンを10重量%、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンを3重量%それぞれ含有するイソチアゾリン製剤を、7日ごとに1回、冷却水系の保有水量に対する添加濃度が30mg/L(有効成分の合計濃度として3.9mg/L)となるように添加した。このとき、イソチアゾリン製剤添加直前、イソチアゾリン製剤添加1日後、及び、イソチアゾリン製剤添加4日後の週3回、冷却水中のレジオネラ属菌数を測定した。結果を図1に示す。」

(1h)「【0055】
これら図1及び図2より本発明に係る開放循環冷却水系の処理方法によれば、レジオネラ属菌を効果的に抑制し、不検出とすることができることが判る。なお、各処理条件による試験終了時(試験開始から1ヶ月後)に冷却塔を観察したところ、上記処理条件1では、冷却塔下部水槽にピンク色のバイオフィルム(メチロバクテリウムと推定)の付着が、処理条件2では、冷却塔上部水槽に粒状緑藻の付着が、処理条件4では、冷却塔充填材にカビを主体とするバイオフィルムの付着がそれぞれ認められた。一方、処理条件3及び処理条件5では、各処理条件で処理した1ヶ月間、冷却塔は清浄な状態が保たれた。」

(2)甲第2号証
本件出願前頒布された刊行物であることが明らかな甲第2号証には、以下の記載がある。
(2a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却水系、紙パルププロセス水系、集塵水系、スクラバー水系、噴水系などの各種水系に、酸化剤系殺菌殺藻(殺菌及び/又は殺藻を意味する。)剤とその安定化剤とを添加して殺菌殺藻処理するに際し、上記安定化剤を有効活用し、その使用量を低減することにより、該安定化剤由来の窒素分及びCOD分を低減し得る、水系の殺菌殺藻方法に関するものである。」

(2b)「【0004】
このような次亜塩素酸塩などの塩素系酸化剤の分解を抑制するために、次亜塩素酸塩、ベンゾトリアゾールやトリルトリアゾール及びスルファミン酸塩を含有し、pHを13以上に調整することで、有効塩素成分を安定化したものを水系に添加する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
次亜塩素酸塩にスルファミン酸塩を添加すると、N-モノクロロスルファミン酸塩若しくはN,N-ジクロロスルファミン酸塩を形成し、有効塩素成分が安定化される。
しかし、対象水系のスライムが多い場合、あるいは紫外線照射が強かったり、高温条件下では、安定化次亜塩素酸塩の分解が激しく、安定化剤のスルファミン酸塩の使用量を多くする必要がある。安定化次亜塩素酸塩が分解した際に、次亜塩素酸塩は消費されるが、スルファミン酸塩は水系内に残留する。その結果、残留したスルファミン酸塩が系外にブローされると、窒素分及びCOD分の規制に影響を及ぼす。
また、これまで、安定化次亜塩素酸塩溶液を調製して水系に添加する場合、次亜塩素酸塩溶液とスルファミン酸塩溶液を、次亜塩素酸塩とスルファミン酸塩とが等モル比になるように、ラインで混合して安定化次亜塩素酸塩溶液を調製することがよく行われている。この場合、両成分を等モル比でライン混合できる特殊な制御装置が必要となる。」

(2c)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下になされたもので、対象水系に、酸化剤系殺菌殺藻剤とその安定化剤とを添加して、殺菌殺藻処理するに際し、上記安定化剤を有効活用し、その使用量を低減することにより、該安定化剤由来の窒素分及びCOD分を低減し得ると共に、前記のような特殊なライン混合用制御装置を必要としない、殺菌殺藻方法を提供することを目的とするものである。」

(2d)「【0012】
次亜塩素酸イオンとスルファミン酸は、次式のように反応して、N-モノクロロスルファミン酸イオン又はN,N-ジクロロスルファミン酸イオンを形成して塩素系酸化剤の有効成分を安定化する。
HClO+H_(2)NSO_(3)^(-)→HClNSO_(3)^(-)+H_(2)O
2HClO+H_(2)NSO_(3)^(-)→Cl_(2)NSO_(3)^(-)+2H_(2)O
モノ又はジクロロスルファミン酸イオンは、遊離の塩素イオンに比べて殺菌効果は弱い。」

(3)甲第3号証
本件出願前頒布された刊行物であることが明らかな甲第3号証には、以下の記載がある。
(3a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、原水を第1の逆浸透(RO)膜分離装置で処理して得られた濃縮水を第2のRO膜分離装置で処理する逆浸透膜分離方法に係り、特に、第1のRO膜分離装置の給水にスルファミン酸化合物を含む結合塩素系酸化剤(以下「クロロスルファミン酸塩系酸化剤」と称す場合がある。)の存在下に膜分離処理して膜汚染を防止すると共に、第2のRO膜分離装置の給水に還元剤を添加して濃縮水中の酸化剤を適度に還元除去して、濃縮水中に濃縮された酸化剤による第2のRO膜分離装置のRO膜の膜劣化を防止した上で、第2のRO膜分離装置においても膜汚染を防止する方法に関する。」

(3b)「【0013】
本発明は上記従来の問題点を解決するものであって、第1のRO膜分離装置の給水にクロロスルファミン酸塩系酸化剤を添加して膜分離処理し、この第1のRO膜分離装置の濃縮水を第2のRO膜分離装置で膜分離処理するに当たり、第1のRO膜分離装置の濃縮水中に濃縮された酸化剤による第2のRO膜分離装置の膜劣化を防止した上で、第2のRO膜分離装置においても酸化剤による微生物の殺菌・増殖抑制効果を有効に発揮させて膜汚染を防止する逆浸透膜分離方法を提供することを目的とする。」

(3c)「【0022】
本発明で用いるクロロスルファミン酸塩系酸化剤とは、塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物、或いは塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とからなる結合塩素剤を含むものである。」

(3d)「【0028】
次亜塩素酸塩等の塩素系酸化剤とスルファミン酸塩等のスルファミン酸化合物を混合すると、これらが結合して、クロロスルファミン酸塩を形成して安定化し、クロラミンのようなpHによる解離性の差、それによる遊離塩素濃度の変動を生じることなく、水中で安定した遊離塩素濃度を保つことが可能となる。」

(3e)「【0040】
本発明で用いるクロロスルファミン酸塩系酸化剤は例えば、次のような配合とすることが好ましい。
(A) 有効塩素濃度1?8重量%、好ましくは3?6重量%の塩素系酸化剤と、1.5?9重量%、好ましくは4.5?8重量%のスルファミン酸化合物を含む、pH≧12の水溶液
(B) 上記(A)に、更に0.05?3.0重量%のアゾール類、1.5?3.0重量%のアニオン性ポリマー、0.5?4.0重量%のホスホン酸類の1種又は2種以上を含む、pH≧12の水溶液
なお、上記(A),(B)において、pHはアルカリ剤の添加により調整される。」

(3f)「【0056】
工水には、遊離塩素系酸化剤(NaClO)を2mg/L添加し、濾過水槽2の出口水には還元剤(NaHSO_(3))を2mg/L添加して残留塩素を還元除去した。
また、保安フィルター4の前段において、第1のRO膜分離装置5の給水に、次亜塩素酸ナトリウム2重量%(有効塩素濃度として)、スルファミン酸8重量%、及び水酸化ナトリウム1重量%を含むpH13の水溶液からなるクロロスルファミン酸塩系酸化剤を、給水中のクロロスルファミン酸塩系酸化剤濃度が20mg/Lになるように添加して、水回収率80%でRO膜分離処理を行った。
また、濃縮水槽9においてORPを常時測定し、予め求めておいた関係式から、第2のRO膜分離装置10に導入される水のORPが300mVとなるように、濃縮水槽9から第2のRO膜分離装置10への給水配管に還元剤(NaHSO_(3))の添加を行った。この第2のRO膜分離装置10は水回収率65%でRO膜分離処理した。」

(4)甲第4号証
本件出願前頒布された刊行物であることが明らかな甲第4号証には、和訳にして、以下の記載がある。
(4a)「イソチアゾロン系化合物が殺菌剤、殺藻剤として有用である。」(ABSTRACT)

(5)甲第5号証
本件出願前頒布された刊行物であることが明らかな甲第5号証には、以下の記載がある。
(5a)「【0002】2.発明の分野
本発明は、3-イソチアゾロン類の臭素酸塩安定化組成物、それらの製造方法、及び生物類の抑制におけるそれらの使用に関する。
【0003】3.従来技術の説明
3-イソチアゾロン類には、微生物によって引き起こされる腐敗を防止するための殺微生物剤として、そのような腐敗にさらされる数多くの水性若しくは非水性製品についての大きな工業上の関心が生じている。3-イソチアゾロン類は、官能基の適当な選択によって殺微生物剤(但し、本明細書で用いている「殺微生物剤」は、殺細菌剤、殺菌剤及び殺藻類剤が含まれ、「殺微生物活性」という用語は細菌、菌類及び藻類などの微生物の成長の排除及び抑制又は妨害の両方を含む意味で用いている)として高い効果があり、幅広い用途に有用である。しかし、イソチアゾロンは長期間保存の実際の条件下においては不安定であるので、安定化させるマトリクスへの添加前又は添加後のいずれの保存においてもその効能が減少することが早くから分かっている。研究の初期からイソチアゾロン化合物と共に用いてその安定性を改善するような手段が求められている。」

(5b)「【0007】しかし、ある用途においては、揮発性、水の存在下や高熱下における分解、高コスト、潜在的な毒性などの点から有機安定剤の添加を避けることが望ましい。ホルムアルデヒドは発癌性の疑いがあり、人間の皮膚や肺と接触する可能性があるような用途にはホルムアルデヒドを使用しないことが望ましい。
【0008】パンや小麦粉改良剤として、製パン業界で臭素酸ナトリウムや臭素酸カリウムを使用することが知られている(メルクインデックス11版参照)。
【0009】発明の要約
本発明は、金属硝酸塩類及び有機安定剤類を使用しない3-イソチアゾロン類用安定化系を提供することを目的とする。また、イソチアゾロン類を殺微生物剤として使用する系において、他の成分への干渉を避けるために低レベルの安定剤を使用する、安定化された3-イソチアゾロンを提供することを目的とする。」

5 甲第1号証に記載された発明
上記摘記事項(1a)には、開放循環冷却水系の冷却水に対して、水中で結合塩素を生成する物質を前記冷却水に添加し、前記冷却水中の酸化力を全残留塩素濃度として1mg/L以上100mg/L以下の範囲に維持する、ハロゲン系酸化物による処理を24時間に1時間以上行い、かつ、有機系殺菌剤による処理を30日間に1回以上行う開放循環冷却水系の処理方法が記載され、上記摘記事項(1e)には、次亜ハロゲン酸塩とスルファミン酸塩とを反応させて得られる安定化次亜ハロゲン酸塩は、冷却水中での分解速度が遅く、その濃度変化が少ないので、有効濃度の維持が容易で、安定した効果が得られるので好ましいことが記載され、上記摘記事項(1g)には、ハロゲン系酸化物による処理と有機系殺菌剤としてのイソチアゾリン系化合物による処理とを併用した例として、次亜塩素酸ナトリウム7重量%とスルファミン酸ナトリウム20重量%とを含有する安定化次亜塩素酸ナトリウム製剤を、冷却水中の酸化力が全残留塩素濃度として1?2mg/Lを常時維持するように添加し、かつ、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンを10重量%、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンを3重量%それぞれ含有するイソチアゾリン製剤を、7日ごとに1回、冷却水系の保有水量に対する添加濃度が30mg/L(有効成分の合計濃度として3.9mg/L)となるように添加したことが記載されている。

したがって、甲第1号証には、「開放循環冷却水系の冷却水に対して、ハロゲン系酸化物による処理を24時間に1時間以上行い、かつ、有機系殺菌剤による処理を30日間に1回以上行う開放循環冷却水系の処理方法として、ハロゲン系酸化物として、次亜塩素酸ナトリウム7重量%とスルファミン酸ナトリウム20重量%とを含有する安定化次亜塩素酸ナトリウム製剤を全残留塩素濃度として1?2mg/Lを常時維持するように添加し、有機系殺菌剤として、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンを10重量%、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンを3重量%それぞれ含有するイソチアゾリン製剤を7日間に1回、有効成分の合計濃度として3.9mg/Lとなるように添加する方法。」(以下、「甲1発明」という。)が開示されているといえる。

6 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明の対比
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「開放循環冷却水系の冷却水に対して、次亜塩素酸ナトリウム7重量%とスルファミン酸ナトリウム20重量%とを含有する安定化次亜塩素酸ナトリウム製剤を全残留塩素濃度として1?2mg/Lを常時維持するように添加」することは、「ハロゲン系酸化物として、水中で結合塩素を生成する物質を使用することで、冷却水中に酸化力を維持することが容易となり、このとき、冷却水中の酸化力を全残留塩素濃度として1mg/L以上100mg/L以下の範囲に24時間に1時間以上維持することで、レジオネラ属菌繁殖の温床となる水系内のバイオフィルムを、より効果的に抑制することができる。」(摘記事項(1e)との記載から、冷却水が安定化次亜塩素酸ナトリウム製剤の添加によって抗菌処理されていることは明らかであるため、本件発明1の「抗菌処理されている冷却水系のクロロスルファミン酸および/またはクロロスルファミン酸塩由来の残留塩素濃度が0.01?50mg-Cl_(2)/Lであ」ることと、「抗菌処理されている冷却水系の残留塩素濃度が0.01?50mg-Cl_(2)/Lである」点において、一致している。
そして、甲1発明の「5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン」「2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン」は、「イソチアゾロン系化合物」であり、甲1発明の「イソチアゾリン製剤を・・・有効成分の合計濃度として3.9mg/Lとなるように添加する」ことは、本件発明1の「イソチアゾロン系化合物を2?1000mg/L添加する」ことに該当する。
さらに、甲1発明の「開放循環冷却水系の冷却水に対して」の「ハロゲン系酸化物による処理」「方法」は、本件発明1の「冷却水系の殺藻方法」と、冷却水系の処理方法である点において、一致している。

したがって、本件発明1と甲1発明とは、「抗菌処理されている冷却水系において、更にイソチアゾロン系化合物を該冷却水系に添加する冷却水系の処理方法であって、該抗菌処理されている冷却水系の残留塩素濃度が0.01?50mg-Cl_(2)/Lであり、イソチアゾロン系化合物を2?1000mg/L添加する冷却水系の処理方法。」である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:抗菌処理に関して、本件発明1においては、クロロスルファミン酸および/またはクロロスルファミン酸塩により抗菌処理しているのに対して、甲1発明においては、ハロゲン系酸化物として、次亜塩素酸ナトリウムとスルファミン酸ナトリウムとを含有する安定化次亜塩素酸ナトリウム製剤を用いて抗菌処理している点

相違点2:冷却水系の処理方法に関して、本件発明1では、珪藻類、緑藻類、藍藻類を少なくとも含む藻類が発生したときの冷却水系の殺藻方法であるのに対して、甲1発明は、冷却水系を処理はしているが、珪藻類、緑藻類、藍藻類を少なくとも含む藻類が発生したときの殺藻方法ではない点

相違点3:イソチアゾロン系化合物の添加のタイミングと処理に関して、本件発明1では、珪藻類、緑藻類、藍藻類を少なくとも含む藻類が発生したときに、冷却水系のクロロスルファミン酸および/またはクロロスルファミン酸塩由来の残留塩素濃度を0.5?20mg-Cl_(2)/Lに調整すると共に、イソチアゾロン系化合物を2?1000mg/L添加するのに対して、甲1発明では、安定化次亜塩素酸ナトリウム製剤を全残留塩素濃度として1?2mg/Lを常時維持するように添加し、7日間に1回、有効成分の合計濃度として3.9mg/Lとなるように添加する点

相違点の判断
以下、相違点について検討する。
(ア)相違点1の判断について

甲1発明のハロゲン系酸化物として、次亜塩素酸ナトリウムとスルファミン酸ナトリウムとを含有する安定化次亜塩素酸ナトリウム製剤を用いることは、本件発明1のクロロスルファミン酸および/またはクロロスルファミン酸塩を用いることとは、化合物自体が相違しており、「次亜塩素酸ナトリウム」と「スルファミン酸ナトリウム」とを含有することから「安定化次亜ハロゲン酸塩」が反応によって得られるとはいえるものの(摘記事項(1a)請求項7の記載)、甲1発明の「安定化次亜ハロゲン酸塩」との特定事項が、「クロロスルファミン酸」および/または「クロロスルファミン酸塩」を意味していて、記載されているに等しいとまではいえず、実質的な相違点であるといえる。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明とはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するものとはいえない。

次に、相違点1について、当業者が容易に想到するものであるかを検討する。
甲第2号証には、「次亜塩素酸塩にスルファミン酸塩を添加すると、N-モノクロロスルファミン酸塩若しくはN,N-ジクロロスルファミン酸塩を形成し、有効塩素成分が安定化される。」(摘記事項(2b))(下線は当審にて追加、以下同様。)との記載があり、甲第3号証には、「次亜塩素酸塩等の塩素系酸化剤とスルファミン酸塩等のスルファミン酸化合物を混合すると、これらが結合して、クロロスルファミン酸塩を形成して安定化し、クロラミンのようなpHによる解離性の差、それによる遊離塩素濃度の変動を生じることなく、水中で安定した遊離塩素濃度を保つことが可能となる。」(摘記事項(3d))との記載があり、甲1発明のハロゲン系酸化物として、次亜塩素酸ナトリウムとスルファミン酸ナトリウムを含有する安定化次亜塩素酸ナトリウム製剤は、当業者であれば、甲第2号証や甲第3号証に記載されるように、次亜塩素酸塩にスルファミン酸塩を添加してクロロスルファミン酸塩を形成しているものであると理解できる。
したがって、甲1発明の次亜塩素酸ナトリウムとスルファミン酸ナトリウムとを含有する安定化次亜塩素酸ナトリウム製剤との特定を、上記理解に基づき、結果として、クロロスルファミン酸塩との特定に変更することは、容易になし得ることであるといえる。

(イ)相違点2の判断について
甲1発明は、開放循環冷却水系の冷却水に対して、ハロゲン系酸化物による処理と有機系殺菌剤による処理を特定期間に特定の頻度で行う処理方法であって、上記摘記事項(1b)の「本発明は、レジオネラ属を確実に不検出レベルに殺菌、抑制することができ、しかも薬剤耐性菌や薬剤耐性を持った藻類が繁殖しにくい開放循環冷却水系の処理方法に関する。」、上記摘記事項(1c)の「レジオネラ属を確実に不検出レベルに殺菌、抑制することができ、しかも薬剤耐性菌や薬剤耐性を持った藻類が繁殖しにくい開放循環冷却水系の処理方法が求められていた。」、上記摘記事項(1d)の「レジオネラ属を確実に不検出レベルに殺菌、抑制することができ、しかも薬剤耐性菌や薬剤耐性を持った藻類が繁殖しにくい開放循環冷却水系の処理方法を提供することを目的とする。」との記載からみて、レジオネラ属を確実に不検出レベルに殺菌、抑制することと薬剤耐性菌や「薬剤耐性を持った藻類」が繁殖しにくい冷却水の処理方法を提供することを目的とするものであって、
一旦発生した「珪藻類、緑藻類、藍藻類を少なくとも含む藻類」を死滅させることを目的とする殺藻方法に関しては、対象とする藻類の記載も具体的殺藻手段についても記載がない。
よって、甲1発明は、珪藻類、緑藻類、藍藻類を少なくとも含む藻類が発生したときの殺藻方法であるとはいえない。
したがって、相違点2は、実質的なものであり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明とはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するものとはいえない。

次に相違点2について、当業者が容易に想到するものであるかどうか検討する。
甲第4号証には、「イソチアゾロン系化合物が殺菌剤、殺藻剤として有用である」との記載(摘記事項(4a))、甲第5号証には、「3-イソチアゾロン類は、官能基の適当な選択によって殺微生物剤(但し、本明細書で用いている「殺微生物剤」は、殺細菌剤、殺菌剤及び殺藻類剤が含まれ、「殺微生物活性」という用語は細菌、菌類及び藻類などの微生物の成長の排除及び抑制又は妨害の両方を含む意味で用いている)として高い効果があり、幅広い用途に有用である。」(摘記事項(5a))との記載があり、イソチアゾロン系化合物に殺菌剤としての有用性とともに殺藻剤としての一応の有用性があることを示唆する記載は認められる。
しかしながら、甲第4号証においても、甲第5号証においても、具体的に殺藻剤としてどのように使用し、どのような効果を生じるかに関しては具体的な記載がなく、甲第5号証にイソチアゾロン系化合物の安定性を検討した記載があるだけである。

そして、その甲第5号証には、「イソチアゾロンは長期間保存の実際の条件下においては不安定であるので、安定化させるマトリクスへの添加前又は添加後のいずれの保存においてもその効能が減少することが早くから分かっている。研究の初期からイソチアゾロン化合物と共に用いてその安定性を改善するような手段が求められている。」(摘記事項(5a))との記載があるように、安定性や結果としての機能の発現に関しては、工夫が必要であることが示され、金属臭素酸塩の添加を前提にする記載がある。

したがって、クロロスルファミン酸および/またはクロロスルファミン酸塩により抗菌処理されている冷却水系において、珪藻類、緑藻類、藍藻類を少なくとも含む藻類が発生したときに、イソチアゾロン系化合物が添加されたからといって、実際に「珪藻類、緑藻類、藍藻類を少なくとも含む藻類」という藻類に対する殺藻剤として機能することをこれらの証拠が示唆するとはいえない。

また、甲第1号証には、珪藻類、緑藻類、藍藻類を少なくとも含む藻類が発生したときの対処に関して何ら記載がないのであるから、甲第4号証、甲第5号証の技術的事項を組み合わせる動機付けもない。

さらに、甲第2号証には、酸化剤系殺菌殺藻剤に関する記載はあるものの(摘記事項(2a))、藻類の増殖がスライムやスラッジの発生原因であるとの認識のもと、増殖の抑制に関して記載があるだけで(摘記事項(2b))具体的に、珪藻類、緑藻類、藍藻類を少なくとも含む藻類が発生したときの対処に関して何ら記載がない。
そして、甲第2号証、甲第3号証には、イソチアゾロン系化合物に関する記載も、それを用いた殺藻方法に関する記載もまったくなく、それらの証拠を検討しても、甲1発明を、珪藻類、緑藻類、藍藻類を少なくとも含む藻類が発生したときの殺藻方法に変更することはできない。

したがって、相違点2は、甲1発明から甲第1?5号証の記載を参酌しても、当業者が容易に想到するものとはいえない。

(ウ)相違点3の判断について
甲1発明は、ハロゲン系酸化物として、安定化次亜塩素酸ナトリウム製剤を全残留塩素濃度として1?2mg/Lを常時維持するように添加し、有機系殺菌剤として、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンを10重量%、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンを3重量%それぞれ含有するイソチアゾリン製剤を7日間に1回、有効成分の合計濃度として3.9mg/Lとなるように添加するものであって、本件発明1の珪藻類、緑藻類、藍藻類を少なくとも含む藻類が発生したときに、冷却水系のクロロスルファミン酸および/またはクロロスルファミン酸塩由来の残留塩素濃度を0.5?20mg-Cl_(2)/Lに調整すると共に、イソチアゾロン系化合物を2?1000mg/L添加することとは、イソチアゾロン系化合物の添加のタイミングと処理内容が相違しており、その相違は、実質的なものである。
したがって、相違点3は、実質的なものであり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明とはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するものとはいえない。

さらに、相違点3について当業者が容易に想到し得るものか検討する。
甲1発明は、相違点1で述べたとおり、レジオネラ属を確実に不検出レベルに殺菌、抑制することができ、しかも薬剤耐性菌や薬剤耐性を持った藻類が繁殖しにくい開放循環冷却水系の処理方法であるので、甲1発明をそのような珪藻類、緑藻類、藍藻類を少なくとも含む藻類が発生したときの殺藻方法に変更する示唆や動機付けはもともとない。

甲1発明においては、イソチアゾロン系化合物の添加のタイミンングは、藻類の発生自体検出していないのであるから、珪藻類、緑藻類、藍藻類を少なくとも含む藻類の発生とは関係なく、一定間隔で添加しているだけである。

また、珪藻類、緑藻類、藍藻類を少なくとも含む藻類の発生を前提としていないのであるから、甲1発明の7日間に1回、有効成分の合計濃度として3.9mg/Lとなるように添加することは、藻類の発生していない状態で、薬剤耐性菌や薬剤耐性を持った藻類が繁殖しにくい状態を保つために設定されたものであって、珪藻類、緑藻類、藍藻類を少なくとも含む藻類が発生したときに、どの程度のイソチアゾロン系化合物を添加すればよいかを示唆するものとはいえない。

さらに、甲第2号証?甲第5号証の記載を参酌しても、珪藻類、緑藻類、藍藻類を少なくとも含む藻類が発生したときのタイミングで、冷却水系のクロロスルファミン酸および/またはクロロスルファミン酸塩由来の残留塩素濃度を0.5?20mg-Cl_(2)/Lに調整すると共に、イソチアゾロン系化合物を併用添加することに変更することは示唆されていないし、動機づけもない。

(エ)効果について
本願明細書【0008】に示されるように、クロロスルファミン酸(塩)とイソチアゾロン系化合物を併用することで、殺藻効果が格段に優れ、【0040】?【0047】に示されるように、藻類発生時にイソチアゾロン系化合物を併用添加することで、クロロスルファミン酸(塩)による抗菌処理を行っている冷却水系において発生した藻類を効果的に死滅させて除去するという顕著な効果を奏しているのである。

(オ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書10頁27行?11頁2行において、殺藻剤として公知であるから、藻類が発生したときに、イソチアゾロン系化合物を冷却水系に添加することは格別困難でない旨主張している。

しかしながら、一応殺藻剤としての有用性が知られている化合物であるからといって、その藻類の対象、特定の殺菌剤を添加された冷却水に対する添加という場面であること、一旦藻類が発生させた場面で適用することを含めた条件が特定されていないことを考慮すると、その場面におけるイソチアゾロン系化合物の添加濃度も特定することはできないし、安定性に問題のある殺藻剤の効果が実際に生じるかどうかも不明である。

したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、甲1発明及び甲第2?5号証記載の技術的事項から、本件発明1が、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(2)本件発明2について
ア 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1において、「冷却水系におけるクロロスルファミン酸および/またはクロロスルファミン酸塩の残留塩素濃度が0.5mg-Cl_(2)/L以上」であると更に特定し、残留塩素濃度の下限を限定した発明である。

イ 対比・判断
本件発明2は、本件発明1を限定したものであるから、(1)で検討したとおり、本件発明1が甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?5号証の技術的事項から、当業者が容易に発明することができたものとはいえない以上、甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?5号証の技術的事項から、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

7 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び2の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-11-17 
出願番号 特願2013-197153(P2013-197153)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A01N)
P 1 651・ 113- Y (A01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 金 公彦  
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 瀬良 聡機
木村 敏康
登録日 2016-03-04 
登録番号 特許第5892136号(P5892136)
権利者 栗田工業株式会社
発明の名称 冷却水系の殺藻方法  
代理人 重野 剛  

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