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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F01K
管理番号 1322306
異議申立番号 異議2016-700419  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-05-12 
確定日 2016-11-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第5843391号発明「廃棄物発電システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5843391号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5843391号の請求項1ないし6に係る特許(以下、「請求項1ないし6に係る特許」という。また、請求項毎に「請求項1に係る特許」などという。)についての出願(以下、「本件出願」という。)は、平成23年12月14日に特許出願され、平成27年11月27日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成28年5月12日に特許異議申立人 吉田 真理奈(以下、単に「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
請求項1ないし6に係る特許に係る発明(以下、順に「本件発明1」ないし「本件発明6」という。)は、それぞれ、本件出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「本件特許明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体を熱媒体として燃焼炉の燃焼熱を回収する第一熱交換器と、前記第一熱交換器からの熱媒体の熱により蒸発可能な低沸点のタービン作動用熱媒体を加熱する第一中間熱交換器と、前記第一中間熱交換器からの熱媒体を作動用熱媒体として発電をする第一タービン発電ユニットと、熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体を熱媒体として浄化処理装置の下流に於いて排ガスの熱を回収する第二熱交換器と、前記第二熱交換器からの熱媒体の熱により蒸発可能な低沸点のタービン作動用熱媒体を加熱する第二中間熱交換器と、前記第二中間熱交換器からの熱媒体を作動用熱媒体として発電をする第二タービン発電ユニットとを備えた廃棄物発電システム。
【請求項2】
第一熱交換器を、燃焼炉の燃焼室に設けた熱交換管及びその下流の排ガス通路に設けた熱交換管を備え、熱媒体を熱媒体油とする熱交換器とした請求項1に記載の廃棄物発電システム。
【請求項3】
燃焼炉の燃焼室に設けた熱交換管を、直列配管方式により燃焼室壁面に沿ってスパイラル状に配列した熱交換管又は直列配管方式により燃焼室壁面に沿って縦向きに配列した熱交換管とした請求項2に記載の廃棄物発電システム。
【請求項4】
第一タービン発電ユニット及び第二タービン発電ユニットの作動用熱媒体を、前記第一熱交換器及び前記第二熱交換器からの熱媒体の熱により蒸発可能な低沸点の代替フロン(HFC-R245fa)とした請求項1に記載の廃棄物発電システム。
【請求項5】
第二熱交換器の熱回収用の熱媒体を熱媒体油とした請求項1に記載の廃棄物発電システム。
【請求項6】
燃焼炉を、ストーカ式ごみ焼却炉、流動層式ごみ焼却炉、ごみ溶融処理炉又はごみガス化処理炉の何れかとした請求項1に記載の廃棄物発電システム。」

第3 取消理由の概要
当審において、請求項1ないし6に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1 請求項1に係る特許について
(1)引用文献1(甲第1号証:特開平10-317918号公報)(及び周知技術1)により、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)引用文献2(甲第2号証:特開2010-174845号公報)(及び周知技術1)により、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)引用文献3(甲第3号証:特開2004-346804号公報)(及び周知技術1)により、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(4)引用文献4(甲第4号証:特開2009-270754号公報)により、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

2 請求項2に係る特許について
引用文献1ないし4並びに周知技術1及び2により、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

3 請求項3に係る特許について
引用文献1ないし4並びに周知技術1及び2により、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

4 請求項4に係る特許について
引用文献1ないし4及び周知技術1ないし4により、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

5 請求項5に係る特許について
引用文献1ないし4及び周知技術1ないし4により、請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

6 請求項6に係る特許について
引用文献1ないし4及び周知技術1ないし4により、請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

第4 当審の判断
第4-1 引用文献1ないし4について
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
本件出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1には、「可燃物からのエネルギ回収方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は可燃物からのエネルギ回収方法に係り、特に廃棄物や石炭等の可燃物を燃焼させ、燃焼時に発生する熱を回収して発電を行うことにより可燃物からエネルギを回収する方法に関する。」(段落【0001】)

イ 「【0009】本発明で用いる廃棄物としては、都市ゴミ、固形化燃料(RDF)、スラリー化燃料(SWM)、バイオマス廃棄物、プラスチック廃棄物(含FRP)、自動車廃棄物(シュレッダーダスト、廃タイヤ)、家電廃棄物、特殊廃棄物(医療廃棄物等)、下水汚泥、し尿、高濃度廃液、産業スラッジといった発熱量、水分率、形状が大きく異なる廃棄物と低品位石炭を用いることができるが、これらを適当に組合せることも可能である。
【0010】ここで、固形化燃料、RDF(Rufuse-Derived Fuel) は、都市ごみを破砕選別後生石灰を添加し圧縮成形したものである。スラリー化燃料、SWM(Solid Water Mixture) は、都市ごみを破砕後水スラリー化し、高圧下で水熱分解により油化したものである。またFRPは、繊維強化プラスチックのことであり、低品位石炭は、石炭化度の低い褐炭、亜炭、泥炭、もしくは選炭時にでるボタのようなものである。
【0011】上述の廃棄物は焼却炉1に投入されて焼却される。焼却時に発生した排ガスは、焼却炉1に設置された廃熱回収器2に導かれ、この廃熱回収器2内を流れる媒体(水)との間で熱交換を行う。廃熱回収器2より排出された排ガスは集塵設備および煙突を介して大気に放出される。なお、廃熱回収器2内を流れる媒体は、空気であってもよい。
【0012】一方、廃熱回収器2内で熱交換を行って温水又は蒸気となった媒体は、蒸気発生器10を経由して温水又は水となって廃熱回収器2に戻る。廃熱回収器2内での熱交換により生成された温水又は蒸気は、その一部が蒸気発生器10の上流又は下流から抜き出され場内での使用に供される(A又はBで図示)。
【0013】本発明は、廃熱回収器2で生成された温水又は蒸気の熱回収に低沸点成分を含んだ多成分混合物を作動流体として使用した熱サイクル(以下、多成分混合流体熱サイクルという)を利用することにより、システム全体の熱効率を改善しようとするものである。低沸点成分を含んだ多成分混合物として、例えば、アンモニアと水の混合物を使用すると、アンモニア濃度約80wt%、圧力25kg/cm2abs の場合、約70℃で蒸気を発生させることができる。このように、低沸点成分を含んだ多成分混合流体熱サイクルによれば、低温度でありながら高圧で発電に十分使用できる蒸気をタービンに導き、発電機により発電することができる上、更に混合流体の特質を活かして、サイクル内で熱回収を効率的に行うことができるため、高効率の発電が行える。熱サイクル内に設けられた凝縮再生システムでは、熱サイクル内に投入された熱を可能な限り有効に使用するため、作動流体間で熱交換を行ったり、また作動流体の濃度変化を行ったりする。
【0014】多成分混合流体熱サイクルHcは、図2に示すように、蒸気発生器10、発電機19を駆動するタービン11、ポンプ13、再生器等の熱交換器15A,15B、凝縮器16から構成される。破線で囲まれた符号21の部分は、凝縮再生システムである。
【0015】上述の多成分混合流体熱サイクルHcの構成において、まず、多成分混合流体が蒸気発生器10に入り、熱源の熱、即ち、廃熱回収器2で生成された温水又は蒸気が保有する熱により混合蒸気となった後、タービン11で膨張して発電機19を回して仕事をする。タービン排気の熱は、2つの熱交換器15A,15B内で凝縮器16により凝縮した多成分混合流体の一部の加熱に使用され、タービン排気は温度低下して行く。凝縮器16および熱交換器15Bを出た多成分混合流体は蒸気発生器10に流入する流れと熱交換器15Aに流入する二つの流れに分かれる。熱交換器15Aに流入した流体は、熱交換器15Aを通った後、蒸気発生器10に戻る。」(段落【0009】ないし【0015】)

ウ 「【0020】図4は本発明の第2実施例を示す図である。本実施例においては、焼却炉1に設けられた廃熱回収器2で発生した温水又は蒸気は、場内で使用される(Cで示す)。そして、廃熱回収器2を出た排ガスは、後段の廃熱回収器5に導かれ、この廃熱回収器5内を流れる媒体(水)との間で熱交換を行う。廃熱回収器5より排出された排ガスは集塵設備等を介して大気に放出される。
【0021】一方、廃熱回収器5内で熱交換を行って温水又は蒸気となった媒体は、蒸気発生器10を経由して温水又は水となって廃熱回収器5に戻る。蒸気発生器10および多成分混合流体熱サイクルHcの構成は、図2に示す例と同様の構成であり、その作動原理も同様であるため、説明を省略する。」(段落【0020】及び【0021】)

(2)引用発明1A及び1B
上記(1)並びに図1及び2から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1A」という。)が記載されている。
「水を熱媒体として焼却炉1の燃焼熱を回収する廃熱回収器2と、
廃熱回収器2からの温水の熱により蒸発可能な低沸点の多成分混合流体を加熱する蒸気発生器10と、
蒸気発生器10からの低沸点の多成分混合流体を作動用熱媒体として発電をするタービン11及び発電機19と、
を備えたエネルギ回収設備。」

また、上記(1)及び図4から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1B」という。)が記載されている。
「水を熱媒体として廃熱回収器2を出た排ガスの熱を回収する廃熱回収器5と、
廃熱回収器5からの温水の熱により蒸発可能な低沸点の多成分混合流体を加熱する蒸気発生器10と、
蒸気発生器10からの低沸点の多成分混合流体を作動用熱媒体として発電をするタービン11及び発電機19と、
を備えたエネルギ回収設備。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
本件出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献2には、「焼却炉の排ガスによる排熱発電方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は、下水汚泥焼却炉やごみ焼却炉などの焼却炉から排出される高温の排ガスの保有熱を利用した排熱発電方法に関するものである。」(段落【0001】)

イ 「【0014】
以下に本発明の実施形態を示す。
図1において1は焼却炉であり、この実施形態では下水汚泥脱水ケーキを焼却するための流動焼却炉である。しかし本発明において流動炉1はこれに限定されるものではなく、ごみ焼却炉であってもよい。その排ガスは通常は800?850℃程度の高温排ガスである。2はこの高温排ガスが導入される流動空気予熱器であり、流動空気を例えば650℃に予熱して炉底部の分散管に供給している。焼却炉1が流動炉でない場合には流動空気予熱器2は省略される。
【0015】
流動空気予熱器2の後段には白煙防止空気予熱器3が設置されている。この白煙防止空気予熱器3は煙突から放出される排ガス中の水蒸気が白煙として見えることを防止する白煙防止空気を得るための熱交換器であり、約300℃の加熱空気(白煙防止空気)が得られる。一方、排ガスは白煙防止空気予熱器3を通過すると250?400℃にまで温度が低下し、次の集塵機4に導かれてダストを除去される。
【0016】
集塵機4はこの実施形態では耐熱性に優れたセラミック集塵機であり、白煙防止空気予熱器3を通過した250?400℃の排ガスをそのまま集塵することができる。しかし集塵機4としてはバグフィルタを使用することもでき、その場合にはその前段に冷却塔を配置してバグフィルタの耐熱温度まで降温することが必要である。集塵機4における排ガスの温度降下は小さく、排ガスは200?400℃で次の排煙洗浄塔5に入る。
【0017】
排煙洗浄塔5は塔の下部から排ガスを導入し、上部のノズル6から散水される水と接触させることによって排ガス中のNO_(X),SO_(X)等の成分を除去する装置である。従来と同様に、塔内水はポンプ7によりノズル6に送水されて循環使用される。この実施形態の排煙洗浄塔5は塔の上部に煙突8が接続されており、塔内で洗浄された排ガスは煙突8から放出される。なお排煙洗浄塔5と煙突8との中間部分には複数段の棚板部9が形成されており、その上部から給水された清浄水と排ガスとを十分に接触させることにより、水洗が十分に行われるように工夫されている。
【0018】
この排煙洗浄塔5においては排ガスが水と接触するため、200?400℃の排ガスの保有熱の大半は水側に移動し、前記したように排煙洗浄塔5から排出される洗煙排水は60?70℃の温水となる。本発明ではこの洗煙排水の保有熱を利用して排熱発電を行うのであるが、これとともに約300℃の白煙防止空気の保有熱をも利用する。
【0019】
このため本実施形態においては、排煙洗浄塔5から出る洗煙排水を排水加熱器10に導き、約300℃の白煙防止空気との熱交換によって昇温させたうえ、排熱発電システム20に供給している。その昇温幅は設備や運転方法によって様々であるが、通常は5?15℃の範囲である。このように白煙防止空気を洗煙排水の昇温に用いることは従来に例がない。排水加熱器10を通過した白煙防止空気は100℃以上の温度を保持しているので、煙突8に送られて白煙防止空気としての本来の機能を発揮することができる。なお洗煙排水の昇温量を増加させようとすると排水加熱器10を通過した白煙防止空気の温度が低下するが、100℃程度まで低下しても、大気温度が20℃、湿度100%の気候条件においては白煙は生じないが、冬場の条件である大気温度が0℃、湿度100%では、白煙が生じる。ただし、白煙の発生について法的規制は無く、冬場でもこの条件となるのは、数日程度である。
【0020】
このようにして白煙防止空気との熱交換によって昇温された洗煙排水は70?85℃程度の温水となり、排熱発電システム20に供給される。排熱発電システム20としては、アンモニアまたはフロンもしくはアンモニア/水混合流体を作動流体とする温度差発電システムを用いることが好ましい。このような温度差発電システム自体は、例えば佐賀大学の出願に係る特開平7-91361号公報に記載のように既に知られたものであり、例えば比較的温度の高い表層海水と深層の冷海水との温度差を利用した温度差発電を行うことができるシステムである。
【0021】
この排熱発電システム20は、図1中に示すように蒸発器21と蒸気タービン22と凝縮器23と循環ポンプ24とを備え、アンモニアまたはフロンもしくはアンモニア/水混合流体のような低沸点流体を作動流体として循環させる。高温熱源である洗煙排水が蒸発器21に供給されて作動流体を加熱して蒸発させ、その蒸気によって蒸気タービン22を回転させて発電機25により発電する。蒸気タービン22を通過した作動流体は凝縮器23において低温熱源である冷却水により冷却されて液化し、循環ポンプ24により再び蒸発器21に戻るクローズドサイクルを繰り返す。
【0022】
発電量を決定する蒸気タービン22の出力は、いうまでもなく高温熱源と低温熱源との温度差が大きいほど増加する。このため後記する実施例のデータに示すように、本発明により洗煙排水を昇温することによって、昇温しない場合よりも発電量を50?60%程度増加させることができる。また低温熱源である冷却水としては常温の水を用いることができる。凝縮器23を通過した冷却水は清浄水であり、排煙洗浄塔5の上部に給水することによって使用水量を抑制することができる。なお冷却水も凝縮器23により加温されることとなるため、排煙洗浄塔5への給水に利用すれば塔内温度の上昇に寄与し、洗煙排水の温度を高める効果がある。
【0023】
上記した第1の実施形態においては、白煙防止空気の保有熱によって排煙洗浄塔5から排出される洗煙排水を昇温させたうえで排熱発電システム20に供給した。しかし図2に示す第2の実施形態に示すように、排熱発電システム20中に熱交換器26を設け、白煙防止空気の保有熱によって作動流体を昇温させるようにしてもよい。この場合、熱交換器26を循環ポンプ24と蒸発器21との間に設け、液体状態にある作動流体を加熱するようにしても、あるいは熱交換器26を蒸発器21と蒸気タービン22との間に設け、作動流体の蒸気を加熱するようにしてもよい。」(段落【0014】ないし【0023】)

(2)引用発明2
上記(1)及び図2から、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「白煙防止空気を熱媒体として焼却炉1の燃焼熱を回収する白煙防止空気予熱器3と、
白煙防止空気予熱器3からの白煙防止空気の熱により蒸発可能なフロンを加熱する熱交換器26と、
熱交換器26からのフロンを作動用熱媒体として発電をする蒸気タービン22及び発電機25と、
水を熱媒体として排ガスの熱を回収する排煙洗浄塔5と、
排煙洗浄塔5からの水(洗煙排水)の熱により蒸発可能なフロンを加熱する蒸発器21と、
蒸発器21からのフロンを作動用熱媒体として発電をする前記した蒸気タービン22及び発電機25と、
を備えた排熱発電システム。」

3 引用文献3について
(1)引用文献3の記載事項
本件出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献3には、「ガス化改質焼却施設の発電システム」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱エネルギーを用いて発電する発電システム、特にガス化改質焼却施設で生じた熱を利用可能な発電システムに関する。」(段落【0001】)

イ 「【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のガス化改質焼却施設の発電システムの好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るガス化改質焼却施設の発電システムの要部構成を示すブロック図である。尚、図に実線にて示す矢印は、ガスと、流体からなる媒体によって伝えられる熱との各移動経路を構成する主要な配管の設置箇所及び移動方向を示している。また、同図の一点鎖線は、制御信号が伝送される主な信号線を示している。
図において、本実施形態の発電システムは、ゴミなどの廃棄物(被処理物)をガス化溶融する焼却炉1と、この焼却炉1で生成されたガスを流体を用いて急冷するガス急冷装置2と、この急冷装置2で急冷されたガスを所定の組成比のガスに精製するガス精製装置3と、ガスを急冷した後の上記流体から熱を回収するガス熱回収装置4とを備えている。
【0011】
また、上記発電システムには、焼却炉1の上部及び下部側の炉壁内に設けられた冷却管(ウォータジャケット)5a1、5b1をそれぞれ有し、これらの管内を循環する流体によって焼却炉1を冷却する例えば二つの第1及び第2冷却装置5a、5bと、これら冷却装置5a、5bで使用された後の流体から熱を回収する炉熱回収装置6a、6bとが設けられている。
また、発電システムは、ガス精製装置3からのガスを用いて発電する第1発電装置7と、この発電装置7から排出される排ガスの熱を回収する発電熱回収装置8と、ガス熱、炉熱、及び発電熱回収装置4、6a、6b、8が回収した熱を利用して発電する第2発電装置11とを備えており、上記焼却炉1で生じたガス及び熱を極力有効的に活用して発電するようになっている。さらに、このシステムには、第2発電装置11から出される流体の温度を計測する温度センサ13の計測値を基に発電熱回収装置8と第2発電装置11との間に設置された制御弁10の駆動制御を行う制御装置12が設けられており、この制御装置12が混合器9にて混合されたガス熱及び炉熱回収装置4、6a、6bからの比較的低温の回収熱に対する発電熱回収装置8からの比較的高温の回収熱の供給割合を調整することによって第2発電装置11での発電効率をより確実に向上できるようになっている。
【0012】
ここで、上記発電システムの詳細な構成例を示す図2?図4も参照して、当該システムの各部をさらに具体的に説明する。尚、図2?図4では、それら図面上で分離された配管について、A乃至Fの同じ符号を用いて互いに接続される配管接続箇所を示している。
図2に示すように、上記焼却炉1には、上記被処理物を圧縮する圧縮プレス部14と、このプレス部14で圧縮された被処理物を乾燥しつつ、ガス化を行うガス化チャンネル部16とがこの順番で接続されており、一定量の被処理物が当該焼却炉1で逐次処理されるようになっている。
詳細にいえば、圧縮プレス部14には、同図の両矢印S方向に移動自在に構成されたプレス部材14bが設けられており、プレス部材14bは投入口14aから投入された上記被処理物を一定量毎に圧縮し、この被処理物内に含まれた空気を排除して当該被処理物内での伝熱効率を高めた状態でガス化チャンネル部16側に移動させる。また、ガス化チャンネル部16は、熱風発生炉15から供給される熱風を用いて圧縮プレス部14からの圧縮された被処理物を例えば600℃程度に加熱することにより、当該被処理物の乾燥及びガス化を行う。また、このような高温によって被処理物が加熱されることから、当該被処理物に含まれた比較的融点が低い物質、例えばプラスチックが熱分解され、カーボン化された状態で、被処理物はガス化チャンネル部16から焼却炉1内に順次押し出されて送られる。
【0013】
また、上記焼却炉1は、その上部側及び下部側にそれぞれ設けられた高温反応炉1a、溶融炉1b及び均質化炉1cを具備したものであり、図に例示する三つの酸素バーナー17a、17b、17cから供給される酸素によって焼却炉1内の各部の加熱温度が所定温度で保持されている。
詳細には、高温反応炉1aでは、その加熱温度が酸素バーナー17aからの酸素によって1000?1200℃程度で保持されており、上記被処理物に含まれた可燃物を熱分解しガス化する。さらに、高温反応炉1aは、熱分解ガスを所定時間(例えば2秒)以上、上記加熱温度で熱することによって当該ガス中の炭素重合体をクラッキングしてガス改質できるよう構成されており、熱分解ガス中のダイオキシンやタールなどの有害物質を熱分解したガスを焼却炉1からのガスとして上記ガス急冷装置2に送るようになっている。
【0014】
また、高温反応炉1aと均質化炉1cとの間の溶融炉1b内部は、酸素バーナー17bからの酸素によって2000℃程度の高温で保持されており、被処理物に含まれた瓦礫(石材)や金属などの不燃物を溶融するようになっている。
また、均質化炉1cでは、その加熱温度が酸素バーナー17cからの酸素によって1600℃程度で保持されており、石材などを主成分とする溶融スラグと金属を主成分とする溶融メタルとを、その溶融状態を維持しつつ、互いに分離させた状態(均質化した状態)で貯留できるように構成されている。尚、均質化炉1cは、図示しないスラグ/メタル回収装置が連結可能に構成されており、この回収装置が回収したスラグを例えばコンクリート骨材に利用できるとともに、同装置が回収したメタルを金属原料として再資源化できるようになっている。
【0015】
また、焼却炉1は、ポンプ18、19の駆動力によって上記第1及び第2冷却装置5a、5bの冷却管5a1、5b1(図1)内を流れる冷却水により適切に冷却されるようになっており、上記の各加熱温度が容易に均一化及び安定化されるとともに、当該焼却炉1の炉壁に熱劣化が発生するのを極力抑えられるようになっている。また、ポンプ18、19を駆動源とする上記冷却水からなる流体の循環系は、後に詳述するように、対応する炉熱回収装置6a、6bでの高温側の一次循環系を構成している。
尚、上記の説明以外に、焼却炉1の炉壁外面に対向配置された冷却管を当該焼却炉1を冷却する冷却装置として使用することもできる。
【0016】
上記ガス急冷装置2は、焼却炉1からのガスに対して流体からなる冷却媒体を多量に直接噴霧可能な急速冷却塔により構成されており、1200℃程度の上記ガスを60?70℃程度に急冷することによってダイオキシン等の有害物質が再合成されるのを防ぐようになっている。また、ガス急冷装置2で急冷されたガスは、ガス精製装置3に含まれた酸洗浄塔3a及びアルカリ洗浄塔3b(図3)に順次送られて、そのガス中のアルカリ成分及び酸性成分がそれぞれ除去され、例えば水素ガス、一酸化炭素ガス、及び二酸化炭素ガスからなるクリーンで高カロリーな上記ガスに精製される。
また、ガス急冷装置2と酸洗浄塔3aとの間には、急冷後のガスが移動するガス配管(図に白抜き矢印にて図示)だけでなく、上記冷却媒体が流れる液体用の配管(図に実線の矢印にて図示)が設けられており、酸洗浄塔3a内で噴霧されることでガスの重金属処理に用いられる酸性溶液(例えばHCL)を、ガス急冷装置2でのガスの急冷処理に用いる上記冷却媒体と兼用するようになっている。また、酸洗浄塔3aには、上記急冷処理及び重金属処理を行うことでガスから析出させた亜鉛、鉛などの重金属及び残留炭素を沈殿させる沈殿槽25が繋がれており、この槽25で沈殿させた重金属を適宜回収して上記媒体から除去できるようになっている。
【0017】
上記ガス熱回収装置4は、ガス急冷装置2内を通る高温側の一次循環系と、この一次循環系から熱が伝えられる低温側の二次循環系とが接続される熱交換器を用いて構成されている。詳細には、この熱回収装置4での一次循環系は、ポンプ26の駆動力によって上記酸性溶液からなる冷却媒体をガス急冷装置2、酸洗浄塔3a、及び沈殿槽25を経て当該装置4内に順次流している。これにより、上記冷却媒体は、ガス急冷装置2でガスを急冷することによって20℃程度昇温された後、熱回収装置4に供給される。
また、熱回収装置4での二次循環系には、上記混合器9及び第2発電装置11(図4)を経て低温タンク20に至る配管が含まれており、温められた水を第2発電装置11に供給することによって熱回収装置4からの回収熱が当該発電装置11に与えられる。また、この二次循環系は、上記タンク20に適宜補給される40℃程度の水を第2発電装置11側に熱を伝える媒体として利用したものであり、ポンプ24の駆動力によって上記タンク20から当該装置4に流入させている。そして、この熱回収装置4は、一次循環系を流れる冷却媒体の熱によって二次循環系の水温を10℃程度温めることにより、ガスを急冷した後の冷却媒体から熱を回収する。
【0018】
上記炉熱回収装置6a、6bは、ガス熱回収装置4と同様に、高温側の一次循環系と低温側の二次循環系とが接続され、一次循環系から二次循環系に熱を伝達する熱交換器を用いて構成されている。詳細には、これらの熱回収装置6a、6bでの各一次循環系は、焼却炉1を冷却する第1及び第2冷却装置5a、5bでの冷却水の循環系と共用されたものであり、焼却炉側の熱により5℃程度上昇された冷却水を当該装置6a、6bに供給している。
また、これらの熱回収装置6a、6bでの各二次循環系は、上記ガス熱回収装置4での二次循環系の配管等を一部共用したものであり、低温タンク20からの水をポンプ22、23の駆動力により対応する装置6a、6b内に流入させている。そして、各熱回収装置6a、6bは、一次循環系を流れる冷却水の熱によって二次循環系の水温を10℃程度温めることにより、焼却炉1を冷却した後の冷却水から熱を回収する。また、これらの二次循環系には、熱回収装置6a、6bで温められた水を合流させる高温タンク21が含まれており、このタンク21を経て混合器9に送られてガス熱回収装置4で温められた水と混合された後、第2発電装置11に供給されることで炉熱回収装置6a、6bの回収熱が第2発電装置11に与えられる。
【0019】
図3に示すように、上記アルカリ洗浄塔3bでは、NaOHを含んだアルカリ性溶液が使用されており、この溶液がポンプ28の駆動力によって当該洗浄塔3b内に噴霧されている。これにより、アルカリ洗浄塔3bでは、酸洗浄塔3aから送られてくるガスに残存する酸性ガス(塩化水素ガス等)を中和除去する脱酸性処理が行われ、ガス精製装置3は、焼却炉1のガスから上記ガスに精製する。上記第1発電装置7は、調整弁29を介してアルカリ洗浄塔3bに連結されており、ガス精製装置3からのガスの供給量が調整弁29で適切に調整されて、与えられるようになっている。また、この第1発電装置7は、ガスエンジン7aと、このエンジン7aに連結された発電機7bとを備えたものであり、ガスエンジン7aが上記ガスを燃料として使用することによって発電機7bを駆動し電力を発生させている。また、ガスエンジン7aは、ガス配管によって発電熱回収装置8に接続されており、当該エンジン7aがガスを燃料として使用することで生じた排出ガスを発電熱回収装置8に逐次送るようになっている。
【0020】
上記発電熱回収装置8は、ガスエンジン7aからの排出ガスにより蒸気を発生するボイラーを用いて構成されている。具体的には、この熱回収装置8には、熱を伝達する媒体としての水がポンプ31の駆動力で流される配管が設けられており、上記ボイラーが500℃前後の上記排出ガスの熱を用いて上記配管内の水を170℃程度の高温の飽和蒸気にすることにより、熱回収装置8は第1発電装置7で生じた熱を回収する。また、熱回収装置8は、その発生させた蒸気によって混合器9から第2発電装置11(図4)側に送出された水の温度を上昇させるように、上記制御弁10を介して混合器9と第2発電装置11との間の上記ガス熱及び炉熱回収装置4、6a、6bの二次循環系に含まれた配管に接続されている。この配管には、ポンプ31に接続された分岐配管が連結されており、上記二次循環系を流れる水が発電熱回収装置8で使用されるようになっている。
また、発電熱回収装置8が生成した蒸気の一部は、塩製造用加熱器30に供給されており、アルカリ洗浄塔3b内で生成される中和溶液に含まれた塩分の析出処理に利用されている。さらに、加熱器30に与えられた蒸気は、当該加熱器30に付帯する復水器(図示せず)により水に戻された後、ポンプ31によって再び上記ボイラー側に流されるようになっている。
【0021】
また、上記二次循環系に含まれた配管の途中には、開閉弁34、35が設けられており、開閉弁34に繋がれた熱交換器33を有するクーリングタワー32が必要に応じて当該循環系に接続されるようになっている。詳細には、開閉弁34及び35は、第2発電装置11が運転しているときはそれぞれ閉状態及び開状態とされており、混合器9から第2発電装置11への二次循環系での水の流れを許容している。そして、第2発電装置11が停止したときに、開閉弁34及び35はそれぞれ閉状態及び開状態から自動的に開状態及び閉状態に切り換えられてクーリングタワー32が二次循環系に接続される。この結果、開閉弁35が停止中の第2発電装置11に混合器9から送られた水が流れ込むのを阻止する。また、混合器9から送られた水は、開閉弁34を経て熱交換器33に送られ、この熱交換器33にてクーリングタワー32内を流れる冷却水により冷やされた後、上記低温タンク20(図2)に還流される。これにより、上記二次循環系での水循環経路が自動的に確保されることとなり、当該二次循環系での水温が上昇するのを確実に阻止することができ、よって例えば炉熱回収装置6aで熱交換を行う一次循環系に含まれた第1冷却装置5aでの冷却効率の低下を防ぐことができる。
【0022】
上記第2発電装置11には、図4を参照して、上記二次循環系に直接的に接続されるとともに、この循環系を流れる水よりも沸点が低い熱伝達媒体(例えばアンモニア水溶液)を蒸発させる蒸発器36が設けられている。この蒸発器36は、二次循環系の水によって伝えられたガス熱、炉熱、及び発電熱回収装置4、6a、6b、8の回収熱を用いて、ポンプ46により逐次流入される熱伝達媒体を加熱しており、蒸気(気相分)と液体(液相分)とが混在した状態の熱伝達媒体を蒸気分離器37に送出する。蒸気分離器37は、蒸発器36からの熱伝達媒体の蒸気と液体とを分離し、同軸多段タービンである第1及び第2タービン38、39に分離した蒸気を順次送ることにより、これらタービン38、39に連結された発電機40が駆動され、第2発電装置11が発電するようになっている。具体的にいえば、第1タービン38には、蒸気分離器37からの蒸気が直接的に流入するようになっており、この流入した蒸気によってタービン38は発電機40を駆動する。また、タービン38を動かした後の蒸気の一部は、第2タービン39に送られて当該タービン39及び発電機40を駆動する。」(段落【0010】ないし【0022】)

(2)引用発明3
上記(1)及び図1ないし4から、引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。

「水を熱媒体として燃焼炉1の燃焼熱を回収する冷却管5a1と、
冷却管5a1からの温水の熱により蒸発可能な沸点が低いタービン作動用熱媒体を加熱する蒸発器36と、
蒸発器36からの熱媒体を作動用熱媒体として発電をするタービン38,39及び発電機40と、
水を熱媒体としてガス精製装置3の一部である酸洗浄塔3aの下流に於いて排ガスの熱を回収するガス熱回収装置4と、
ガス熱回収装置4からの酸性溶液(例えばHCL)の熱により蒸発可能な沸点が低いタービン作動用熱媒体を加熱する蒸発器36と、
蒸発器36からの熱媒体を作動用熱媒体として発電をするタービン38,39及び発電機40と、
を備えたガス化改質焼却施設の発電システム。」

4 引用文献4について
(1)引用文献4の記載事項
本件出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献4には、「廃液の燃焼方法及びその燃焼装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は、廃液の燃焼方法及びその燃焼装置に係り、例えば有機物や有害物質を含有するためにそのまま排出することができない廃液を燃焼させて無害化処理するための廃液の燃焼方法および燃焼装置に関するものである。」(段落【0001】)

イ 「【0032】
(廃液の燃焼装置の基本的構成)
図1は、本発明の廃液の燃焼装置の実施形態例を示すものである。
燃焼炉1は縦型円筒状をなし、その頂部中央には助燃バーナー(たとえばボルテックスバーナー)2が設けられていて、この助燃バーナー2からは灯油等の補助燃料Fが燃焼用空気(図示せず)によって下向きに燃焼炉1内に噴射されて燃焼させられるとともに、この助燃バーナー2の周りの燃焼炉1の肩部には、廃液Wを燃焼炉1内に噴霧する複数(ただし、図1には1つしか描かれていない)のノズル3…が周方向に等間隔に、かつ円筒状をなす燃焼炉1の中心線に向けて斜め下向きに設けられている。 これらのノズル3…から燃焼炉1内に噴霧された廃液Wが、上記助燃バーナー2の補助燃料Fの燃焼によって燃焼させられる。
【0033】
また、この燃焼によって生じた排ガスは、燃焼炉1の下部に移行し、燃焼炉1のダウンカマー1Aを通って、冷却溶解水CWを収容した冷却槽4中に噴出され、燃焼排ガスと冷却溶解水CWとの直接接触が図られる。冷却槽4は、中央周辺にリング堰4Aが形成され、ダウンカマー1Aの先端を噴出された排ガスは、矢印線で示すように、冷却溶解水CWを巻き上げながらリング堰4Aを乗り越える。かかる激しい気液の混相流は、集塵機能及び撹拌機能を発揮し、排ガスに同伴されたダスト成分及び溶融流下した塩類の大部分が捕捉され、溶解され、アルカリ液のオーバーフロー4Bとして装置外へ排出され、適宜の処理を受ける。
溶解液と分離した湿ガスGは、後に説明するように、低位熱蒸発器20の加熱源として利用される。
【0034】
他方、燃焼炉1の内壁部分5Aには耐火材よりなる内張りがなされている一方、この耐火物に接する外壁5部分は二重壁のジャケット構造とされて内部に燃焼炉1の下部から上部に至る空間5Bが形成されており、この空間5Bには燃焼炉1の外部に備えられた冷却手段6によって冷却水C、すなわち水が供給されて通水され、冷却手段6との間で循環可能とされている。この冷却手段6は、上記外壁5のジャケットに供給された冷却水Cの液面レベルよりも高い位置に設けられて燃焼炉1との間で循環させられる冷却水Cを保持するヘッドタンク7と、このヘッドタンク7から燃焼炉1に冷却水Cを供給するポンプ8とを備えたものであり、ヘッドタンク7に保持された冷却水Cはポンプ8によって燃焼炉1の外壁5がなすジャケット構造の前記空間5Bに流通させられ、内壁部分5Aの上記耐火物を冷却する代わりに自身は加熱されてヘッドタンク7へと返送され、循環させられる。
【0035】
そして、本実施形態ではこの冷却手段6のヘッドタンク7に、こうして燃焼炉1から返送されて該燃焼炉1の耐火物を冷却する代わりに加熱されることにより発生した冷却水Cの蒸気Sは、蒸気回収管10を通って、中位熱蒸発器21の加熱源とされる。
【0036】
このように構成された廃液Wの燃焼装置および該装置を用いた廃液Wの燃焼方法においては、この廃液Wが供給されて燃焼させられる燃焼炉1の外壁5に冷却水Cが通水されて該燃焼炉1が冷却されるため、その内壁部分の耐火物の浸食が抑えられるのは勿論のこと、こうして燃焼炉1を冷却した後の加熱された冷却水Cが上記回収手段9によってヘッドタンク7から蒸気Sとして回収される。
【0037】
ヘッドタンク7から回収された冷却水Cの蒸気Sすなわち水蒸気は、気体であるために伝熱係数が大きく、従ってこれを中位熱蒸発器21の熱源として利用する場合において熱交換効率を高めることが可能となる。従って、上記構成の廃液Wの燃焼装置および燃焼方法によれば、燃焼炉1において廃液Wの燃焼によって生じたエネルギーをより効率的に利用することが可能となり、CO_(2)の発生量の削減にも貢献することが可能となる。
【0038】
この実施の形態では、冷却水Cの蒸気Sを中位熱蒸発器21の加熱源としたが、この例に代えて、特許第3394085公報に記載のように、ジベンジルトルエンや高分子オイルなどの熱媒体を、中位熱蒸発器21の加熱源とすることもできる。」(段落【0032】ないし【0038】)

(2)引用発明4
上記(1)及び図1ないし3から、引用文献4には次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されている。

「ジベンジルトルエンや高分子オイルを熱媒体として燃焼炉1の燃焼熱を回収する二重壁のジャケット構造部と、
二重壁のジャケット構造部からの熱媒体の熱により蒸発可能な低沸点のHFC系冷媒を加熱する中位熱蒸発器21と、
中位熱蒸発器21からの熱媒体を作動用熱媒体として発電をする膨張タービン22及び発電機23と、
冷却溶解水CWを熱媒体として、排ガスに同伴されたダスト成分等を捕捉するとともに排ガスの熱を回収する冷却槽4と、
冷却槽4からの熱媒体の熱により蒸発可能な低沸点のHFC系冷媒を加熱する低位熱蒸発器20と、
低位熱蒸発器20からの熱媒体を作動用熱媒体として発電をする膨張タービン22及び発電機23と、
を備えた廃液の燃焼装置。」

第4-2 対比・判断
1 本件発明1と引用発明1Aとの対比・判断
(1)対比
本件発明1と引用発明1Aとを、その機能、構成又は技術的意義を考慮して対比する。
引用発明1Aにおける「焼却炉1」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1における「燃焼炉」に相当し、以下同様に、「廃熱回収器2」は「第一熱交換器」に、「温水」は「(第一熱交換器からの)熱媒体」に、「多成分混合流体」は「タービン作動用熱媒体」及び「(第一中間熱交換器からの)熱媒体」に、「蒸気発生器10」は「第一中間熱交換器」に、「タービン11及び発電機19」は「第一タービン発電ユニット」に、「エネルギ回収設備」は「廃棄物発電システム」に、それぞれ、相当する。
また、本件発明1における「水」は、「熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体」に、「液体」という限りにおいて相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明1Aとは、
「液体を熱媒体として燃焼炉の燃焼熱を回収する第一熱交換器と、
第一熱交換器からの熱媒体の熱により蒸発可能な低沸点のタービン作動用熱媒体を加熱する第一中間熱交換器と、
第一中間熱交換器からの熱媒体を作動用熱媒体として発電をする第一タービン発電ユニットと、
を備えた廃棄物発電システム。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
(ア)「液体」に関して、本件発明1においては、「熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体」を熱媒体とするのに対し、引用発明1Aにおいては、「水」を熱媒体とする点(以下、「相違点1」という。)。

(イ)本件発明1においては、「熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体を熱媒体として浄化処理装置の下流に於いて排ガスの熱を回収する第二熱交換器と、前記第二熱交換器からの熱媒体の熱により蒸発可能な低沸点のタービン作動用熱媒体を加熱する第二中間熱交換器と、前記第二中間熱交換器からの熱媒体を作動用熱媒体として発電をする第二タービン発電ユニットとを備えた」のに対し、引用発明1Aにおいては、そのような第二熱交換器、第二中間熱交換器及び第二タービン発電ユニットを備えたかどうか明らかでない点(以下、「相違点2」という。)。

(2)判断
(ア)本件発明1の技術的意義について
本件特許明細書によれば、本件発明1は、
「本願発明は、従前の廃棄物発電(排熱利用発電)、特に蒸気タービンとガスタービンの組合せに係る複合発電システムにおける上述の如き問題、即ち、イ、熱回収効率を上げるために、プラントシステムが複雑化することになり、運転・補修が難しくなると共に、プラントの運転の安定性が相対的に低下すること、ロ、蒸気条件の高温・高圧化に伴ってより高耐食性の構造材を必要とすることになり、プラント建設費が大幅に高騰し、其の低減が図れないこと、ハ、プラントシステムが複雑となることにより、一部の事故が容易にシステム全体に波及して主業務であるごみ焼却処理に滞りを生じ易いこと、等の問題を解決せんとするものであり、300℃程度の高温下で相変化を生じない熱媒体(例えば熱媒体油や溶融塩等)を用いて燃焼炉(ごみ焼却炉)燃焼室からの熱回収を行なうと共に、発電用タービンの作動媒体として蒸気に代えて低沸点熱媒体を使用することにより、系の低圧力化による機器・装置の製造コストや運転・補修費の引下げを図ると共に、排熱回収効率の向上及び発電効率の向上を可能とした新規な廃棄物発電システムを提供するものである。
また、本願発明は、発電用タービンの作動媒体として低沸点の熱媒体を用いると共に、当該低沸点熱媒体により直接に燃焼炉燃焼室の熱回収や排ガス熱の回収を行うことにより、機器・装置の製造コストや運転・補修費の一層の引下げ及び排熱回収効率や発電効率の一層の向上を可能とした廃棄物発電システムを提供せんとするものである。」(本件特許明細書の段落【0011】及び【0012】)
ということを課題とし、本件発明1の発明特定事項を備えることにより、
「本発明では、燃焼炉燃焼室の熱の回収媒体として、熱授受により300℃までは相変化を起こさない熱媒体油をもちいているため、熱交換器等の設計圧力値が大幅に低くなり、結果として熱交換器類の製造コストの引き下げが可能となる。
また、従前の廃熱回収ボイラのように蒸気ドラム等の高圧力機材が全く不要となり、製造コストやメンテナンス費用の大幅な削減が可能となる。更に、従前の廃棄物発電のように蒸気タービンを使用しないので、発電設備のイニシャルコストやメンテナンス費用が削減できる。
また、本発明では、発電システムの作動用媒体として低沸点の熱媒体を使用しているため、熱交換器に於ける熱伝達率が大幅に向上し、熱交換器の小型化及び熱回収効率の向上が可能となる。更に、本発明では、排ガス浄化装置の下流側に於いても排熱回収を行っているため、熱回収効率が従前の複合発電システムの場合に比較して約10%程度高まり、これにより総合的な発電効率も約10%程度向上する。」(本件特許明細書の段落【0018】及び【0019】)
という作用効果を奏するものである。

(イ)相違点1について
上記(ア)の記載を踏まえれば、本件発明1における「熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体」とは、「300℃程度の高温下で相変化を生じない熱媒体(例えば熱媒体油や溶融塩等)」を意味しているといえる。
それに対し、引用発明1Aにおいては、熱媒体として水を用いているため、「300℃程度の高温下で相変化を生じない熱媒体(例えば熱媒体油や溶融塩等)」とは異なり、「熱交換器等の設計圧力値が大幅に低くなり、結果として熱交換器類の製造コストの引き下げが可能となる」という、本件発明1の作用効果を期待することができない。
なお、本件発明1における熱媒体と、引用発明1Aにおける熱媒体の相違は、本件発明1においては、燃焼炉1の内部に第1熱交換器2の熱交換管2aが設けられている(したがって熱交換管2aは非常に高温に加熱される)のに対し、引用発明1Aにおいては、廃棄物焼却炉1の外部に排熱回収器の熱回収部2が設けられている(したがって熱回収部2はあまり高温には加熱されない)ことに起因すると考えられる。
そうすると、「300℃程度の高温下で相変化を生じない熱媒体(例えば熱媒体油や溶融塩等)」が周知技術であったとしても、引用発明1における熱媒体である水を、本件発明1における「熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体」に置換する動機づけはないから、引用発明1Aに基づいて、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を相当することは、当業者といえども容易とはいえない。

(ウ)相違点2について
引用文献1には、上記引用発明1B(引用文献1における図4の実施例)も記載されている。
ここで、引用発明1Bにおける「廃熱回収器2」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1における「第一熱交換器」に相当し、以下同様に、「廃熱回収器5」は「第二熱交換器」に、「温水」は「熱媒体」に、「多成分混合流体」は「タービン作動用熱媒体」及び「熱媒体」に、「蒸気発生器10」は「第二中間熱交換器」に、「タービン11及び発電機19」は「第二タービン発電ユニット」に、「エネルギ回収設備」は「廃棄物発電システム」に、それぞれ、相当する。
また、引用発明1Bにおける「水」は、「液体」という限りにおいて、「熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体」に相当する。
そうすると、引用発明1Bは、本件発明1の用語を用いて、
「液体を熱媒体として第一熱交換器を出た排ガスの熱を回収する第二熱交換器と、
第二熱交換器からの熱媒体の熱により蒸発可能な低沸点のタービン作動用熱媒体を加熱する第二中間熱交換器と、
第二中間熱交換器からの熱媒体を作動用熱媒体として発電をする第二タービン発電ユニットと、
を備えた廃棄物発電システム。」
と言い換えることができる。
そして、引用文献1における図4の記載から、引用発明1Aに引用発明1Bを組み合わせることができる。
しかしながら、引用発明1Aに引用発明1Bを組み合わせたとしても、本件発明1において「浄化処理装置の下流に於いて」排ガスの熱を回収する第二熱交換器という発明特定事項を得ることができない。
そして、本件発明1は、浄化処理装置を第二熱交換器の上流に設けることにより、以下のような作用効果を奏する。
「本件特許発明は、廃棄物発電システムに係る発明であり、通常の廃棄物発電では排ガスの浄化処理装置を設けなければ排ガスを大気に放出できませんので、排ガスの浄化処理装置は必須となります。
そして、本件特許発明は、廃棄物燃焼炉での発電効率の向上を目的としておりその目的を達成するために、排ガスの浄化処理装置の上流側と下流側の両方から廃熱を回収する必要があります。その理由は、(イ)廃棄物の燃焼排ガスには酸性成分やNOx等の有害成分を含んでおり、これら有害成分を燃焼排ガス中から除去する必要があること、(ロ)燃焼排ガス温度が高すぎると高温腐食の原因となったり、排ガスの浄化処理装置の運転に支障をきたすこと(たとえば、排ガスの浄化処理装置としてバグフィルタを使用する場合、例えば220℃以上になると、フィルタの焼損などが生じます。)、(ハ)排ガス温度が低すぎて酸露点以下になると低温腐食を生じるため、酸性ガスが多量に残存している状態での熱回収には限界があること、等です。
そのため、本件特許発明は、排ガス処理を行うのに適切な温度範囲になるように排ガス中の熱を回収し得る第一熱交換器と、排ガス処理後(低温腐食の原因を除去した後)に更に熱回収する第二熱交換器の双方の(排ガスを熱源とするが、それぞれ異なる系統の)熱交換器で回収した熱を利用して、それぞれに適した(それぞれの熱により蒸発可能な)タービン作動用熱媒体を加熱して各系統の其々のタービン発電に供給します。本件特許発明は、このような排ガスの浄化と熱回収との関係によって、発電効率の飛躍的な向上を可能としています。」(平成28年10月24日付け意見書)
すなわち、本件発明1は、浄化処理装置を第二熱交換器の上流に設けることにより、燃焼排ガスから酸性成分やNOx等の有害成分を除去することができ、それにより、第二熱交換器の低温腐食を抑制することができるという、特有の作用効果を奏するものである。
これらのことから、引用発明1Aに引用発明1Bを組み合わせたとしても、「浄化処理装置の下流に於いて」排ガスの熱を回収する第二熱交換器という発明特定事項が得られず、上記発明特定事項は単なる設計事項であるともいうことができない。
よって、引用発明1Aにおいて、相違点2に係る発明特定事項を得ることは、当業者といえども容易とはいえない。

(エ)小括
上記(ア)ないし(ウ)から、本件発明1は、引用発明1A及び1Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本件発明1と引用発明2との対比・判断
(1)対比
本件発明1と引用発明2とを、その機能、構成又は技術的意義を考慮して対比する。
引用発明2における「焼却炉1」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、「燃焼炉」に相当し、以下同様に、「白煙防止空気予熱器3」は「第一熱交換器」に、「フロン」は「低沸点のタービン作動用熱媒体」及び「(第一中間熱交換器からの)熱媒体」及び「(第二中間熱交換器からの)熱媒体」に、「熱交換器26」は「第一中間熱交換器」に、「水」は「熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体」に、「排煙洗浄塔5」は「第二熱交換器」に、「水(洗煙排水)」は「熱媒体」に、「蒸発器21」は「第二中間熱交換器」に、それぞれ、相当する。
また、引用発明2における「白煙防止空気」は、本件発明1における「熱交換管」を流通するものではないが、相変化を起こさないから、「相変化を起こさない流体」という限りにおいて、本件発明における「熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体」に相当するとともに、「(白煙防止空気予熱器3からの)熱媒体」に相当する。
また、引用発明2における「蒸気タービン22及び発電機25」は、「第一タービン発電ユニット」に相当するとともに、「タービン発電ユニット」という限りにおいて、「第二タービン発電ユニット」に相当する。
してみると、本件発明1と引用発明2とは、
「相変化を起こさない流体を熱媒体として燃焼炉の燃焼熱を回収する第一熱交換器と、
第一熱交換器からの熱媒体の熱により蒸発可能な低沸点のタービン作動用熱媒体を加熱する第一中間熱交換器と、
第一中間熱交換器からの熱媒体を作動用熱媒体として発電をする第一タービン発電ユニットと、
熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体を熱媒体として排ガスの熱を回収する第二熱交換器と、
第二熱交換器からの熱媒体の熱により蒸発可能な低沸点のタービン作動用熱媒体を加熱する第二中間熱交換器と、
第二中間熱交換器からの熱媒体を作動用熱媒体として発電をするタービン発電ユニットと、
を備えた排熱発電システム。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
(ア)「相変化を起こさない流体」に関して、本件発明1においては、「熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体」であるのに対し、引用発明2においては、「白煙防止空気」である点(以下、「相違点3」という。)。

(イ)「タービン発電ユニット」に関して、本件発明1においては「第一タービン発電ユニット」及び「第二タービン発電ユニット」を備えるのに対し、引用発明2においては、「蒸気タービン22及び発電機25」を備える点(以下、「相違点4」という。)

(2)判断
(ア)本件発明1の技術的意義について
上記1(2)(ア)のとおり。

(イ)相違点3について
上記1(2)(ア)の記載を踏まえれば、本件発明1における「熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体」とは、「300℃程度の高温下で相変化を生じない熱媒体(例えば熱媒体油や溶融塩等)」を意味しているといえる。
それに対し、引用発明2においては、熱媒体として「白煙防止空気」を用いているため、「熱交換器等の設計圧力値が大幅に低くなり、結果として熱交換器類の製造コストの引き下げが可能となる」という、本件発明1の作用効果を期待することができない。
また、上記1(2)(イ)と同様に、「300℃程度の高温下で相変化を生じない熱媒体(例えば熱媒体油や溶融塩等)」が周知技術であったとしても、引用発明2における熱媒体である水を、本件発明1における「熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体」に置換する動機づけはないから、引用発明2に基づいて、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項に想到することは、当業者といえども容易とはいえない。

(ウ)相違点4について
引用発明2においては、「蒸気タービン22及び発電機25」が1組しか設けられておらず、これを、本件発明1のように「第一タービン発電ユニット」及び「第二タービン発電ユニット」の2組のタービン発電ユニットとすると、コストの上昇が見込まれるから、阻害要因があるといえる。
してみると、引用発明2に基づいて、相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

(エ)小括
上記(ア)ないし(ウ)から、本件発明1は、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本件発明1と引用発明3との対比・判断
(1)対比
本件発明1と引用発明3とを、その機能、構成又は技術的意義を考慮して対比する。
引用発明3における「焼却炉1」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1における「燃焼炉」に相当し、以下同様に、「冷却管5a1」は「第一熱交換器」に、「温水」は「(第一熱交換器からの)熱媒体」に、「沸点が低い」は「低沸点の」に、「タービン作動用熱媒体」は「タービン作動用熱媒体」に、「ガス精製装置3の一部である酸洗浄塔3a」は「浄化処理装置」に、「ガス熱回収装置4」は「第二熱交換器」に、「(ガス熱回収装置4からの)酸性溶液」は「(第二熱交換器からの)熱媒体」に、「ガス化改質焼却施設の発電システム」は「廃棄物発電システム」に、それぞれ、相当する。
また、引用発明3における「水」は、「液体」という限りにおいて、本件発明1における「熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体」に相当する。
また、引用発明3における「蒸発器36」は、本件発明1における「第一中間熱交換器」に相当するとともに、「中間熱交換器」という限りにおいて、本件発明1における「第二中間熱交換器」に相当する。
同様に、引用発明3における「タービン38,39及び発電機40」は、本件発明1における「第一タービン発電ユニット」に相当するとともに、「タービン発電ユニット」という限りにおいて、本件発明1における「第二タービン発電ユニット」に相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明3とは、
「液体を熱媒体として燃焼炉の燃焼熱を回収する第一熱交換器と、
第一熱交換器からの熱媒体の熱により蒸発可能な低沸点のタービン作動用熱媒体を加熱する第一中間熱交換器と、
第一中間熱交換器からの熱媒体を作動用熱媒体として発電をする第一タービン発電ユニットと、
液体を熱媒体として浄化処理装置の下流に於いて排ガスの熱を回収する第二熱交換器と、
第二熱交換器からの熱媒体の熱により蒸発可能な低沸点のタービン作動用熱媒体を加熱する中間熱交換器と、
中間熱交換器からの熱媒体を作動用熱媒体として発電をするタービン発電ユニットと、
を備えた廃棄物発電システム。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
(ア)「液体」に関して、本件発明1においては、「熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体」を熱媒体とするのに対し、引用発明3においては、「水」を熱媒体とする点(以下、「相違点5」という。)。

(イ)「中間熱交換器」及び「タービン発電ユニット」に関して、本件発明1においては、「第一中間熱交換器」及び「第二中間熱交換器」並びに「第一タービン発電ユニット」及び「第二タービン発電ユニット」を備えるのに対し、引用発明3においては、「蒸発器36」並びに「タービン38,39及び発電機40」を備える点(以下、「相違点6」という。)。

(2)判断
(ア)本件発明1の技術的意義について
上記1(2)(ア)のとおり。

(イ)相違点5について
上記1(2)(ア)の記載を踏まえれば、本件発明1における「熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体」とは、「300℃程度の高温下で相変化を生じない熱媒体(例えば熱媒体油や溶融塩等)」を意味しているといえる。
それに対し、引用発明3においては、熱媒体として「水」を用いているため、「熱交換器等の設計圧力値が大幅に低くなり、結果として熱交換器類の製造コストの引き下げが可能となる」という、本件発明1の作用効果を期待することができない。
また、上記1(2)(イ)と同様に、「300℃程度の高温下で相変化を生じない熱媒体(例えば熱媒体油や溶融塩等)」が周知技術であったとしても、引用発明3における熱媒体である水を、本件発明1における「熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体」に置換する動機づけはないから、引用発明3に基づいて、相違点5に係る本件発明1の発明特定事項に想到することは、当業者といえども容易とはいえない。

(ウ)相違点6について
引用発明3においては、「蒸発器36」並びに「タービン38,39及び発電機40」設けられている。これを、本件発明1のように「第一タービン発電ユニット」及び「第二タービン発電ユニット」の2組のタービン発電ユニットとすると、コストの上昇が見込まれるから、阻害要因があるといえる。
してみると、引用発明3に基づいて、相違点6に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)から、本件発明1は、引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 本件発明1と引用発明4との対比・判断
(1)対比
本件発明1と引用発明4とを、その機能、構成又は技術的意義を考慮して対比する。
引用発明4における「焼却炉1」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1における「燃焼炉」に相当し、以下同様に、「二重壁のジャケット構造部」は「第一熱交換器」に、「HFC系冷媒」は「タービン作動用熱媒体」に、「中位熱蒸発器21」は「第一中間熱交換器」に、「冷却槽」は「第二熱交換器」に、「低位熱蒸発器20」は「第二中間熱交換器」に、「廃液の燃焼装置」は「廃棄物発電システム」に、それぞれ、相当する。

また、引用発明4における「ジベンジルトルエンや高分子オイル」は、「液体」という限りにおいて、本件発明1における「熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体」に相当し、同様に、「冷却溶解水CW」は、「液体」という限りにおいて、本件発明1における「熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体」に相当する。

また、引用発明4における「膨張タービン22及び発電機23」は、本件発明1における「第一タービン発電ユニット」に相当するとともに、「タービン発電ユニット」という限りにおいて、本件発明1における「第二タービン発電ユニット」に相当する。

また、引用発明4における「排ガスに同伴されたダスト成分等を捕捉するとともに」は、「浄化処理装置と関連して」という限りにおいて、本件発明1における「浄化処理装置の下流に於いて」に相当する。

そうすると、本件発明1と引用発明4とは、
「液体を熱媒体として燃焼炉の燃焼熱を回収する第一熱交換器と、
第一熱交換器からの熱媒体の熱により蒸発可能な低沸点のタービン作動用熱媒体を加熱する第一中間熱交換器と、
第一中間熱交換器からの熱媒体を作動用熱媒体として発電をする第一タービン発電ユニットと、
液体を熱媒体として、浄化処理装置と関連して排ガスの熱を回収する第二熱交換器と、
第二熱交換器からの熱媒体の熱により蒸発可能な低沸点のタービン作動用熱媒体を加熱する第二中間熱交換器と、
第二中間熱交換器からの熱媒体を作動用熱媒体として発電をするタービン発電ユニットと、
を備えた廃棄物発電システム。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
(ア)「液体」に関して、本件発明1においては、「熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体」を熱媒体とするのに対し、引用発明4においては、「ジベンジルトルエンや高分子オイル」及び「冷却溶解水CW」を熱媒体とする点(以下、「相違点7」という。)。

(イ)「タービン発電ユニット」に関して、本件発明1においては「第一タービン発電ユニット」及び「第二タービン発電ユニット」を備えるのに対し、引用発明4においては、「膨張タービン22及び発電機23」を備える点(以下、「相違点8」という。)。

(ウ)「浄化処理装置と関連して」に関して、本件発明1における「浄化処理装置の下流に於いて」であるのに対し、引用発明4においては、「排ガスに同伴されたダスト成分等を捕捉するとともに」である点(以下、「相違点9」という。)。

(2)判断
(ア)本件発明1の技術的意義について
上記1(2)(ア)のとおり。

(イ)相違点7について
上記1(2)(ア)の記載を踏まえれば、本件発明1における「熱交換管内の温度で相変化を起こさない液体」とは、「300℃程度の高温下で相変化を生じない熱媒体(例えば熱媒体油や溶融塩等)」を意味しているといえる。
それに対し、引用発明4においては、熱媒体として「ジベンジルトルエンや高分子オイル」を用いており、「ジベンジルトルエン」の沸点は391℃であるから、「300℃程度の高温下で相変化を生じない熱媒体(例えば熱媒体油や溶融塩等)」であるといえる。
したがって、上記相違点7は、実質的な相違点ではないといえる。

(ウ)相違点8について
引用発明4においては、「膨張タービン22及び発電機23」が1組しか設けられておらず、これを、本件発明1のように「第一タービン発電ユニット」及び「第二タービン発電ユニット」の2組のタービン発電ユニットとすると、コストの上昇が見込まれるから、阻害要因があるといえる。
してみると、引用発明4に基づいて、相違点8に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

(エ)相違点9について
引用発明4においては、「排ガスに同伴されたダスト成分等を捕捉するとともに排ガスの熱を回収する冷却槽4」を備えており、すなわち、浄化処理装置と熱交換器とが一体となっている。
これに対し、上記1(2)(ウ)で述べたように、本件発明1は、浄化処理装置を第二熱交換器の上流に設けることにより、燃焼排ガスから酸性成分やNOx等の有害成分を除去することができ、それにより、第二熱交換器の低温腐食を抑制することができるという、特有の作用効果を奏するものである。
そうすると、引用発明4からは、「浄化処理装置の下流に於いて」排ガスの熱を回収する第二熱交換器という発明特定事項が得られず、上記発明特定事項は単なる設計事項であるということもできない。
よって、引用発明4において、相違点9に係る発明特定事項を得ることは、当業者といえども容易とはいえない。

(オ)小括
上記(ア)ないし(エ)から、本件発明1は、引用発明4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

5 まとめ
上記1ないし4から、本件発明1は、引用発明1A及び1B並びに引用発明2ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当するものではない。

6 本件発明2ないし6について
本件発明2ないし6は、本件発明1の発明特定事項をすべて備え、さらに限定を加えたものであるから、本件発明1と同様に、引用発明1A及び1B並びに引用発明2ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、請求項2ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当するものではない。

7 まとめ
以上のとおりであるから、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、特許法第113条第2号に該当するものではない。


第5 結語
上記第4のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-11-16 
出願番号 特願2011-272907(P2011-272907)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (F01K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 橋本 敏行  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 槙原 進
金澤 俊郎
登録日 2015-11-27 
登録番号 特許第5843391号(P5843391)
権利者 株式会社タクマ
発明の名称 廃棄物発電システム  
代理人 谷田 龍一  
代理人 杉本 丈夫  
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