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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) E02D |
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管理番号 | 1322336 |
判定請求番号 | 判定2016-600044 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2016-09-09 |
確定日 | 2016-12-09 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4138426号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号物件説明書及び改修プロセス説明図面に示す「仮設構造」は、特許第4138426号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨 本件判定の請求の趣旨は、イ号物件説明書に示す仮設構造(以下「イ号物件」という。)は、特許第4138426号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 なお、判定請求書の「5.請求の趣旨」には、判定を求める本件特許の請求項は特定されていないが、「6.請求の理由」の「(3)本件特許発明の説明」に、「本件特許発明は、以下に示す特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。」(3頁8ないし9行)と記載されていることから、本件判定の趣旨を上記のとおり認定した。 第2 本件特許発明 本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(当審において、構成要件ごとに分説し、記号AないしDを付した。以下「構成要件A」などという。)。 「A 既設鉄塔最下パネルの複数の隅部に配設され基礎体および該基礎体上に設置された柱体コンクリート内に埋設された山形鋼の基礎立上り部材を補強するための鉄塔の基礎構造において、 B 既設鉄塔の中心線と直交する面の前記基礎体の両側に杭基礎を設置するとともに、 C これら杭基礎と前記基礎体上の柱体コンクリートの上端部分を撤去して露出した基礎立上り部材との間に補強部材を渡設したことを特徴とする D 鉄塔の基礎構造。」 第3 イ号物件 判定請求書(2頁20ないし23行)の記載によると、本件判定請求書に添付された「イ号物件説明書」及び「改修プロセス説明図面」は、請求人と被請求人との間で合意されたものであると認められるところ、「イ号物件説明書」はイ号物件を次のとおり特定している(丸付き数字は角括弧付き数字に置き換えた。)。 「a.鉄塔の基礎(基礎床板部及び基礎柱体部)において、別紙改修プロセス説明図面の改修プロセス[1]から[6]によって改修する際、平面視略4角形のコンクリート製の基礎床板部上に立設されたコンクリート製の基礎柱体部にその下部を包囲されつつ、基礎床板部に埋設される4本の山形鋼からなる各主柱の全応力を、基礎に代わり工事予定期間に応じて支持しうるだけの耐久性能を有する仮設構造。 b.基礎床板部に埋設される4本の各主柱を中心として、基礎床板部外側の対称位置に、各主柱の全応力を工事予定期間に応じて支持しうるだけの耐久性能を有する2本の仮杭が打設されている。 c.2本の仮杭の上端に、少なくとも基礎柱体部の上部を含む、後記治具の連結に必要最小限の範囲で旧基礎を解体することにより露出させた4本の各主柱の下部との間を連結する、各主柱の全応力を工事予定期間に応じて支持しうるだけの耐久性能を有する治具が架設されている。 d.前記治具の架設された状態で、各主柱を取り巻く基礎床板部の各隅部が解体され、新たに各主柱の周囲に複数本の本杭が打ち込まれた上、各本杭及び主柱の周囲にコンクリートを打設して、各主柱毎に個別の新基礎本体部が形成され、その段階で各治具と仮杭との架設が解除されて各治具が取り払われる仮設構造。」 また、「改修プロセス説明図面」は、次のものである。 ![]() 第4 属否の検討 1 構成要件A及びDについて (1)「鉄塔の基礎構造」について 広辞苑(第五版)には、「基礎」の意味について、「その上に建物を建てたり大きな装置を設置したりするためにすえる土台。いしずえ。」と記載されている。また、「構造」の意味について、「いくつかの材料を組み合せてこしらえられたもの。また、そのしくみ。くみたて。」と記載されている(乙第3号証を参照。)。これらのことからすると、「鉄塔の基礎構造」とは、「その上に鉄塔を設置するためにすえる土台であって、いくつかの材料を組み合せてこしらえられたもの」と解することができる。 そして、イ号物件の「仮設構造」は、「基礎床板部に埋設される4本の各主柱を中心として、基礎床板部外側の対称位置」に「打設」される「2本の仮杭」と、「2本の仮杭の上端」に「架設」され、「鉄塔」の「4本の各主柱の下部との間を連結する」「治具」とからなり、「各主柱を取り巻く基礎床板部の各隅部が解体され」た後、「各主柱毎に個別の新基礎本体部が形成され」るまでの間、「各主柱の全応力を、基礎に代わり」「支持」するものであって、当該工事期間中は「その上に鉄塔が設置された土台」として機能することは明らかであるから、「鉄塔の基礎構造」に該当する。 (2)「基礎立上り部材」及び「基礎体および該基礎体上に設置された柱体コンクリート」について イ号物件の「4本の山形鋼からなる各主柱」は、本件特許発明の構成要件Aの「既設鉄塔最下パネルの複数の隅部に配設され」る「山形鋼の基礎立上り部材」に該当する。 そして、イ号物件の「各主柱」が埋設される「平面視略4角形のコンクリート製の基礎床板部」及び「基礎床板部上に立設されたコンクリート製の基礎柱体部」は、本件特許発明の構成要件Aの「基礎立上り部材」が埋設された「基礎体」及び「該基礎体上に設置された柱体コンクリート」に、それぞれ該当する。 (3)「基礎体および柱体コンクリート内に埋設された基礎立上り部材を補強する」ことについて 広辞苑(第五版)には、「補強」の意味について、「弱点や不足をおぎなって強くすること。」と記載されている(乙第1号証を参照。)。 また、本件特許の明細書には次の記載がある。 「本発明は、送電用鉄塔等の増容量化に対応させて鉄塔を増強する工事等に適用されるもので、既設鉄塔最下パネルの複数の隅部に配設され基礎体に埋設された山形鋼の基礎立上り部材を補強するための鉄塔の基礎構造に関する。」(段落【0001】) 「本発明は、前記従来の基礎構造の課題を解決して、既設基礎コンクリートのはつり作業を軽減して、配筋接合等を不要とするとともに、殆どの基礎応力を新設基礎にて負担が可能でありながら、構成部材の軽量化が可能で、運搬も容易な鉄塔の基礎構造を提供することを目的とする。」(段落【0007】) 「本発明によれば、……既設の基礎体への補強および干渉を伴うことなく新設の杭基礎の設置が可能になるとともに、既設の基礎立上り部材にかかる基礎応力の全てあるいはその大半を、補強部材を介して既設基礎体の両側の杭基礎に均等に負担させることが可能となる。」(段落【0018】) これらのことからすると、本件特許発明の構成要件Aの「基礎構造」が「基礎体および該基礎体上に設置された柱体コンクリート内に埋設された山形鋼の基礎立上り部材を補強する」とは、既設の基礎である「基礎体」及び「柱体コンクリート」内に埋設された「基礎立上り部材」にかかる基礎応力を新設の基礎である「基礎構造」にて負担することにより、既設の基礎の強度不足を補うことを意味すると解される。 これに対し、イ号物件の「仮設構造」は、「各主柱を取り巻く基礎床板部の各隅部が解体され」た後、「各主柱毎に個別の新基礎本体部が形成され」るまでの間、「各主柱の全応力を、基礎に代わり」「支持」するものであって、「仮設構造」の設置後は、「各主柱を取り巻く基礎床板部の各隅部」は速やかに「解体され」るべきものであり、「各主柱毎に個別の新基礎本体部が形成され」た後は、「仮設構造」は速やかに取り払われるべきものである。 してみると、イ号物件の「仮設構造」は、基礎に代わり工事期間に渡って鉄塔を支持するものであって、「基礎柱体部にその下部を包囲されつつ、基礎床板部に埋設される4本の山形鋼からなる各主柱」を補強するためのものとはいえないから、本件特許発明の構成要件Aの「基礎体および該基礎体上に設置された柱体コンクリート内に埋設された山形鋼の基礎立上り部材を補強するため」のものに該当しない。 なお、請求人は、判定請求書(5頁6ないし11行))において、イ号物件の「仮設構造」は、新基礎が形成されるまでの工事期間は鉄塔の基礎として機能し、「各主柱の全応力」を支持するものであるから、本件特許発明の構成要件Aの「基礎立上り部材を補強するための鉄塔の基礎構造」に該当する旨主張するが、本件特許発明の構成要件Aの「鉄塔の基礎構造」は、「基礎立上り部材の全応力」を支持するものであったとしても、あくまで基礎体及び柱体コンクリート内に埋設された基礎立上り部材を補強するためのものであって、既存の基礎(基礎体及び柱体コンクリート)を解体撤去することは想定していないから、請求人の主張は採用できない。 (4)小括 以上のとおりであるから、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Dを充足するが、本件特許発明の構成要件Aを充足しない。 2 構成要件Bについて 上記1(1)で検討したとおり、イ号物件の「仮設構造」は、「鉄塔の基礎構造」に該当するから、同様にイ号物件の「仮杭」は、本件特許発明の構成要件Bの「杭基礎」に該当する。 そして、イ号物件の「基礎床板部に埋設される4本の各主柱を中心として、基礎床板部外側の対称位置に」、「2本の仮杭が打設されている」は、本件特許発明の構成要件Bの「既設鉄塔の中心線と直交する面の前記基礎体の両側に杭基礎を設置する」に該当する。 よって、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Bを充足する。 3 構成要件Cについて イ号物件の「仮杭」が、本件特許発明の構成要件Cの「杭基礎」に該当することは、上記2のとおりである。 本件特許発明の構成要件Cの「柱体コンクリートの上端部分を撤去」することの技術的意義は、「杭基礎」と「露出した基礎立上り部材との間に補強部材を渡設」することであることを踏まえると、本件特許発明の構成要件Cの「柱体コンクリートの上端部分を撤去」するとは、柱体コンクリートの上端部分のみを撤去することを意味すると解される。 これに対し、イ号物件の「少なくとも基礎柱体部の上部を含む、後記治具の連結に必要最小限の範囲で旧基礎を解体する」は、基礎柱体部の上部以外の旧基礎をも解体するものである。 したがって、イ号物件の「2本の仮杭の上端に、少なくとも基礎柱体部の上部を含む、後記治具の連結に必要最小限の範囲で旧基礎を解体することにより露出させた4本の各主柱の下部との間を連結する」「治具が架設されている」は、本件特許発明の構成要件Cの「杭基礎と前記基礎体上の柱体コンクリートの上端部分を撤去して露出した基礎立上り部材との間に補強部材を渡設した」に該当しない。 よって、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Cを充足しない。 第5 むすび 以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の構成要件AないしCを充足しないから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
判定日 | 2016-12-01 |
出願番号 | 特願2002-280600(P2002-280600) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(E02D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 本郷 徹 |
特許庁審判長 |
前川 慎喜 |
特許庁審判官 |
赤木 啓二 中田 誠 |
登録日 | 2008-06-13 |
登録番号 | 特許第4138426号(P4138426) |
発明の名称 | 鉄塔の基礎構造 |
代理人 | 久門 保子 |
代理人 | 久門 享 |
代理人 | 久門 保子 |
代理人 | 湯浅 正彦 |
代理人 | 久門 享 |
代理人 | 湯浅 知子 |