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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C09K
管理番号 1322554
審判番号 不服2014-13229  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-08 
確定日 2016-03-17 
事件の表示 特願2013-551454「液晶組成物及びこれを用いた液晶表示素子」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月18日国際公開、WO2014/141365〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、2013年3月11日の国際出願日にされたものとみなされる国際特許出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成25年11月 7日 手続補正書
同日 早期審査に関する事情説明書
平成25年12月20日付け 拒絶理由通知
平成26年 3月10日 意見書・手続補正書
平成26年 3月31日付け 拒絶査定
平成26年 7月 8日 本件審判請求
同日 手続補正書
平成26年 7月15日付け 手続補正指令
平成26年 8月21日 手続補正書(審判請求理由補充書)
平成26年 8月26日付け 前置審査移管
平成26年 9月11日付け 前置報告書
平成26年 9月19日付け 前置審査解除

第2 平成26年 7月 8日付け手続補正の却下の決定

<決定の結論>
平成26年 7月 8日付けの手続補正を却下する。

<決定の理由>
I.補正の内容
上記平成26年7月8日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲につき下記のとおり補正することを含むものである。

1.本件補正前(平成26年3月10日付け手続補正後のもの)
「【請求項1】
下記式(i):
【化1】


で表される化合物と、
下記式(28.5):
【化2】


で表される化合物と、
下記一般式(I-1-2):
【化3】


(前記一般式(I-1-2)中、R^(12)は、炭素原子数1?5のアルキル基、炭素原子数1?5のアルコキシ基、又は炭素原子数2?5のアルケニル基を表す。)で表される少なくとも1種の化合物と、
下記一般式(ii):
【化4】


(前記一般式(ii)中、R^(iia)は炭素原子数2?5のアルケニル基を表し、R^(iib)は炭素原子数1?5のアルキル基または炭素原子数1?4のアルコキシ基を表す。)で表される少なくとも1種の化合物と、を含有する液晶組成物において、
液晶組成物の総質量に対する、前記一般式(I-1-2)で表される化合物の含有量が23?49質量%であり、
液晶組成物内に塩素原子を有する化合物を含有しないことを特徴とする液晶組成物。
【請求項2】(省略)
【請求項3】
下記一般式(M):
【化6】


前記式中、
R^(M1)は、炭素原子数1?8のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の少なくとも2個の-CH_(2)-は、それぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-によって置換されていてもよく、
PMは、0、1、2、3又は4を表し、
C^(M1)及びC^(M2)は、それぞれ独立して、
(d) 1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH_(2)-又は隣接していない少なくとも2個の-CH_(2)-は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、及び、
(e) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない少なくとも2個の-CH=は-N=に置き換えられてもよい)、
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(d)と基(e)は、それぞれ独立して、シアノ基又はフッ素原子で置換されていても良く、
K^(M1)及びK^(M2)は、それぞれ独立して、単結合、-CH_(2)CH_(2)-、-(CH_(2))_(4)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)O-、-COO-、-OCO-又は-C≡C-を表し、
PMが2、3又は4であってK^(M1)が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていても良く、PMが2、3又は4であってC^(M2)が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていても良く、
X^(M1)及びX^(M3)は、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表し、
X^(M2)は、水素原子、フッ素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基又は2,2,2-トリフルオロエチル基を表すが、前記式(i)で表される化合物および前記式(28.5)で表される化合物を除く、
で表される少なくとも1種の化合物を更に含有する、請求項1に記載の液晶組成物。
(【請求項2】及び【請求項4】ないし【請求項19】は補正されていないので省略する。)」
(以下、項番に従い「旧請求項1」?「旧請求項19」という。)

2.本件補正後
「【請求項1】
下記式(i):
【化1】


で表される化合物と、
下記式(28.5):
【化2】


で表される化合物と、
下記一般式(I-1-2):
【化3】


(前記一般式(I-1-2)中、R^(12)は、炭素原子数1?5のアルキル基、炭素原子数1?5のアルコキシ基、又は炭素原子数2?5のアルケニル基を表す。)で表される少なくとも1種の化合物と、
下記一般式(ii):
【化4】


(前記式(ii)中、R^(iia)は炭素原子数2?5のアルケニル基を表し、R^(iib)は炭素原子数1?5のアルキル基または炭素原子数1?4のアルコキシ基を表す。)で表される少なくとも1種の化合物と、
下記一般式(X):
【化5】


(前記一般式(X)中、X^(101)?X^(104)は、それぞれ独立して、フッ素原子又は水素原子を表し、Y^(10)はフッ素原子、塩素原子、又は-OCF_(3)を表し、
Q^(10)は単結合又は-CF_(2)O-を表し、
R^(10)は炭素原子数1?5のアルキル基、炭素原子数2?5のアルケニル基又は炭素原子数1?4のアルコキシ基を表し、
A^(101)及びA^(102)は、それぞれ独立して、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-フェニレン基、又は、下記式で示される何れか一つの基を表すが、1,4-フェニレン基上の水素原子はフッ素原子によって置換されていてもよい。
【化6】


で表される化合物と、を含有する液晶組成物において、
液晶組成物の総質量に対する、前記一般式(I-1-2)で表される化合物の含有量が23?49質量%であり、
液晶組成物内に塩素原子を有する化合物を含有しないことを特徴とする液晶組成物。
ただし、下記一般式(E)で表される化合物を含有する液晶組成物を除く。
【化7】


(式中、
R^(E)は、H、または、ハロゲン化または無置換の1?15個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基であり、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH_(2)基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接連結しないようにして、-C≡C-、-CH=CH-、-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、
X^(E)は、F、Cl、OCF_(3)、OCHF_(2)、OCH=CF_(2)、OCF=CF_(2)、OCHFCF_(3)、OCF_(2)CFHCF_(3)、CH_(3)、C_(2)H_(5)またはn-C_(3)H_(7)であり、
L^(3)およびL^(4)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFである。)
【請求項2】(省略)
【請求項3】
下記一般式(M):
【化9】


前記式中、
R^(M1)は、炭素原子数1?8のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の少なくとも2個の-CH_(2)-は、それぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-によって置換されていてもよく、
PMは、0、1、2、3又は4を表し、
C^(M1)及びC^(M2)は、それぞれ独立して、
(d) 1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH_(2)-又は隣接していない少なくとも2個の-CH_(2)-は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、及び、
(e) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない少なくとも2個の-CH=は-N=に置き換えられてもよい)、
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(d)と基(e)は、それぞれ独立して、シアノ基又はフッ素原子で置換されていても良く、
K^(M1)及びK^(M2)は、それぞれ独立して、単結合、-CH_(2)CH_(2)-、-(CH_(2))_(4)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)O-、-COO-、-OCO-又は-C≡C-を表し、
PMが2、3又は4であってK^(M1)が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていても良く、PMが2、3又は4であってC^(M2)が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていても良く、
X^(M1)及びX^(M3)は、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表し、
X^(M2)は、水素原子、フッ素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基又は2,2,2-トリフルオロエチル基を表すが、前記式(i)で表される化合物、前記式(28.5)で表される化合物および前記一般式(X)で表される化合物を除く、
で表される少なくとも1種の化合物を更に含有する、請求項1に記載の液晶組成物。
(【請求項2】及び【請求項4】ないし【請求項19】は補正されていないので省略する。)」
(以下、項番に従い「新請求項1」?「新請求項19」といい、それらを併せて「新請求項」ということがある。)

II.補正事項に係る検討

1.補正の目的の適否
本件補正は、上記I.のとおり、特許請求の範囲に係る補正事項を含むので、特許法第17条の2第5項各号に掲げる事項を目的とするものか否かにつき検討する。
本件補正では、旧請求項1に対して、同項を引用する旧請求項3における更に使用される成分である「一般式(M)」で表される化合物として明細書において例示されている([0546])「一般式(X)」で表される化合物の使用・含有を発明特定事項として付加した上で、「一般式(M)」で表される化合物のうち「一般式(E)」を含有する場合を除外することによって限定して、新請求項1としているものと認められる。
また、本件補正では、上記新旧請求項1の補正に伴い、旧請求項3において、更に使用される成分である「一般式(M)」で表される化合物として「一般式(X)」で表される化合物を使用する場合を除外しているものと認められる。
さらに、旧請求項2及び4ないし19については、新旧の請求項1又は3を引用する引用関係については変化させずに新請求項2及び4ないし19としている。
してみると、新請求項1ないし19に係る各発明は、旧請求項1ないし19に係る各発明との間で、解決しようとする課題及び産業上の利用分野をそれぞれ一にするものであることが明らかであるから、旧請求項1ないし19から新請求項1ないし19とする本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものといえる。

2.独立特許要件
上記1.のとおり、上記特許請求の範囲に係る手続補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、新請求項1に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かにつき検討する。(なお、当該検討にあたり、本件補正により補正された本願明細書を「本願補正明細書」という。)

(1)新請求項に係る発明
新請求項1に係る発明は、新請求項1に記載された事項で特定されるとおりのものであり、再掲すると、以下のとおりの記載事項により特定されるものである。
「下記式(i):
【化1】


で表される化合物と、
下記式(28.5):
【化2】


で表される化合物と、
下記一般式(I-1-2):
【化3】


(前記一般式(I-1-2)中、R^(12)は、炭素原子数1?5のアルキル基、炭素原子数1?5のアルコキシ基、又は炭素原子数2?5のアルケニル基を表す。)で表される少なくとも1種の化合物と、
下記一般式(ii):
【化4】


(前記式(ii)中、R^(iia)は炭素原子数2?5のアルケニル基を表し、R^(iib)は炭素原子数1?5のアルキル基または炭素原子数1?4のアルコキシ基を表す。)で表される少なくとも1種の化合物と、
下記一般式(X):
【化5】


(前記一般式(X)中、X^(101)?X^(104)は、それぞれ独立して、フッ素原子又は水素原子を表し、Y^(10)はフッ素原子、塩素原子、又は-OCF_(3)を表し、
Q^(10)は単結合又は-CF_(2)O-を表し、
R^(10)は炭素原子数1?5のアルキル基、炭素原子数2?5のアルケニル基又は炭素原子数1?4のアルコキシ基を表し、
A^(101)及びA^(102)は、それぞれ独立して、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-フェニレン基、又は、下記式で示される何れか一つの基を表すが、1,4-フェニレン基上の水素原子はフッ素原子によって置換されていてもよい。
【化6】


で表される化合物と、を含有する液晶組成物において、
液晶組成物の総質量に対する、前記一般式(I-1-2)で表される化合物の含有量が23?49質量%であり、
液晶組成物内に塩素原子を有する化合物を含有しないことを特徴とする液晶組成物。
ただし、下記一般式(E)で表される化合物を含有する液晶組成物を除く。
【化7】


(式中、
R^(E)は、H、または、ハロゲン化または無置換の1?15個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基であり、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH_(2)基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接連結しないようにして、-C≡C-、-CH=CH-、-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、
X^(E)は、F、Cl、OCF_(3)、OCHF_(2)、OCH=CF_(2)、OCF=CF_(2)、OCHFCF_(3)、OCF_(2)CFHCF_(3)、CH_(3)、C_(2)H_(5)またはn-C_(3)H_(7)であり、
L^(3)およびL^(4)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFである。)」
(以下、「本件補正発明」という。)

(2)検討
しかるに、本件補正発明については、下記の理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

・本件補正発明は、本願の出願前に当業者が日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではない。



引用刊行物:
1.特表2010-501688号公報(原査定における「引用文献1」)
2.国際公開2010/131614号(原審における「引用文献2」)
(以下、上記「1.」を「引用例」といい、上記「2.」を「周知例」という。)

ア.各刊行物に記載された事項
上記各刊行物には、それぞれ以下の事項が記載されている。

(ア)引用例(特表2010-501688号公報)
上記引用例には、以下の(a-1)ないし(a-12)の事項が記載されている。

(a-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの1種類以上の化合物を含むことを特徴とする液晶媒体。
【化1】


(式中、
R^(0)は、1?15個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし、また、これらの基の1個以上のCH_(2)基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接つながらないようにして、-C≡C-、-CF_(2)O-、-CH=CH-、
【化2】(式は省略)
-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子はハロゲン原子によって置き換えられていてもよく、および
X^(0)は、F、Cl、CN、SF_(5)、SCN、NCS、6個までのC原子を有するハロゲン化されたアルキル基、ハロゲン化されたアルケニル基、ハロゲン化されたアルコキシ基またはハロゲン化されたアルケニルオキシ基を表す。)
【請求項2】
式IIおよび/またはIIIの1種類以上の化合物を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶媒体。
【化3】


【化4】


(式中、
Aは、1,4-フェニレンまたはトランス-1,4-シクロヘキシレンを表し、
aは、0または1を表し、
R^(3)は、2?9個のC原子を有するアルケニルを表し、および
R^(4)は、請求項1中のR^(0)に対して示される意味を有する。)
【請求項3】
以下の式から選択される1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。
【化5】


(式中、R^(3a)およびR^(4a)は、それぞれ互いに独立に、H、CH_(3)、C_(2)H_(5)またはC_(3)H_(7)を表し、およびalkylは、1?8個のC原子を有する直鎖のアルキル基を表す。)
【請求項4】
以下の式から選択される1種類以上の化合物を更に含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【化6】


(式中、R^(0)およびX^(0)は、請求項1中で示される意味を有し、および
Y^(1?4)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表し、
Z^(0)は、-C_(2)H_(4)-、-(CH_(2))_(4)-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C_(2)F_(4)-、-CH_(2)CF_(2)-、-CF_(2)CH_(2)-、-CH_(2)O-、-OCH_(2)-、-COO-、-CF_(2)O-または-OCF_(2)-を表し、式VおよびVI中では単結合も表し、および
rは、0または1を表す。)
【請求項5】
以下の式から選択される1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【化7】


(式中、R^(0)およびX^(0)は、請求項1中で示される意味を有する。)
【請求項6】
以下の式から選択される1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【化8】


(式中、R^(0)およびX^(0)は、請求項1中で示される意味を有する。)
【請求項7】
以下の式から選択される1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【化9】


(式中、R^(0)およびX^(0)は、請求項1中で示される意味を有する。)
【請求項8】
以下の式から選択される1種類以上の化合物を更に含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【化10】


(式中、
R^(1)およびR^(2)は、それぞれ互いに独立に、9個までのC原子を有するn-アルキル、アルコキシ、オキサアルキル、フルオロアルキルまたはアルケニルを表し、およびY^(1)は、HまたはFを表す。)
【請求項9】
以下の式から選択される1種類以上の化合物を更に含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【化11】


(式中、R^(0)、X^(0)、Y^(1)およびY^(2)は、請求項1および4中で示される意味を有する。)
【請求項10】
1?25重量%の式Iの化合物と、
25?80重量%の式IIおよび/またはIIIの化合物と、
5?40重量%の式XIIの化合物と
を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【請求項11】
1種類以上のUV安定化剤および/または抗酸化剤を更に含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【請求項12】
電気光学的目的のための請求項1から11のいずれか一項に記載の液晶媒体の使用。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の液晶媒体を含有する電気光学的液晶ディスプレイ。
【請求項14】
式Iの1種類以上の化合物を、請求項2から10のいずれか一項に記載の1種類以上の化合物と、または更なる液晶化合物および/または添加剤と混合することを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の液晶媒体を調製する方法。」
(a-2)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶媒体(LC媒体)、電気光学的目的のためのそれらの使用、およびこの媒体を含有するLCディスプレイに関する。」
(a-3)
「【背景技術】
・・(中略)・・
【0003】
液晶材料としては、良好な化学的および熱的安定性を有すると共に、電界および電磁線放射に対しても優れた安定性を有することが必要である。更に、液晶材料は低粘度であり、セル中で、アドレス時間が短く、閾電圧が低くおよびコントラストが高いものでなければならない。
【0004】
液晶材料は、更に、通常の動作温度において、即ち、室温より上および下の出来る限り広い範囲において、適切な中間相、例えば上記のセル用のネマチックまたはコレステリック中間相を有していなければならない。液晶は一般に複数成分の混合物として使用されるため、成分が互いに容易に混和することが重要である。導電性、誘電異方性および光学異方性などの更なる特性は、セルの型および用途分野に応じて、種々の要求を満足しなければならない。例えば、ツイストネマチック構造を有するセル用の材料は、正の誘電異方性および低い導電率を有していなければならない。
【0005】
例えば、個々のピクセルのスイッチングのために集積非線形素子を有するマトリックス型液晶ディスプレイ(MLCディスプレイ)については、大きな正の誘電異方性、広いネマチック相、比較的小さな複屈折率、非常に高い比抵抗、優れたUVおよび温度安定性、および低い蒸気圧を有する媒体が望まれる。
【0006】
この型のマトリックス型液晶ディスプレイは既知である。それぞれのピクセルを個々にスイッチングするために使用できる非線形素子の例は、アクティブ素子(即ち、トランジスター)である。そして使用される用語「アクティブマトリックス」は、2つの区別される型に分けられる。
【0007】
1.基板としてのシリコンウエハー上のMOS(Metal Oxide Semiconductor、金属酸化物半導体)または他のダイオード。
【0008】
2.基板としてのガラス板上の薄膜トランジスター(Thin-Film Transistor、TFT)。
・・(中略)・・
【0016】
テレビおよびビデオに応用するために、応答時間が短いディスプレイが必要である。そのような短い応答時間は、特に低い値の粘度、特に回転粘度γ1を有する液晶媒体を使用することで達成できる。しかしながら、希釈添加剤は一般に透明点を低下させ、よって媒体の動作温度範囲が減少する。
【0017】
よって、非常に高い比抵抗を有すると同時に、広い動作温度範囲、低温でも短い応答時間および低い閾電圧を有しており、これらの不都合を有していないか、有していたとしてもより少ない程度であるMLCディスプレイが引き続き強く要求されている。
【0018】
TN(Schadt-Helfrich)セルの場合、セル中で次の利点を容易にする媒体が望まれる:
-広げられたネマチック相範囲(特に、低い温度までの)、
-極度に低い温度でのスイッチ能力(屋外用途、自動車、航空電子工学)、
-紫外線照射に対する増大された抵抗(より長い寿命)、
-低い閾電圧。
【0019】
先行技術から入手可能な媒体では、これらの利点を、同時に他のパラメーターを保持しながら達成することはできない。
【0020】
スーパーツイスト型(STN)セルの場合には、より大きな時分割駆動および/またはより低い閾電圧および/またはより広いネマチック相範囲(特に、低温において)を可能にする媒体が望まれる。この目的のために、利用可能なパラメーターの範囲(透明点、スメクチック-ネマチック相転移または融点、粘度、誘電パラメーター、弾性パラメーター)を一層広げることが、至急望まれている。
【0021】
特に、テレビおよびビデオ用途(例えば、LCD TV、モニター、PDA、ノート型パソコン、ゲーム器コンソール)用のLCディスプレイの場合、応答時間が著しく短縮されていることが望まれる。理論的にはLCセル中のLC媒体の層厚d(「cellap」)を低減すると結果として応答時間がより速くなるが、光学遅延(d・Δn)を確実に適切とするためには高い複屈折率Δnを有するLC媒体が必要となる。しかしながら、従来技術より既知の高い複屈折率のLC材料は一般に同時に回転粘度も高く、応答時間に悪影響を有することとなる。従って、速い応答時間、低い回転粘度および高い複屈折率を同時に有するLC媒体に対する要求がある。」
(a-4)
「【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、特にこの型のMLC、TN、STN、FFSまたはIPSディスプレイ用で、上で示される望ましい特性を有し、上記の不具合を示さないか、示しても低減されている媒体を提供する目的に基づいている。特に、LC媒体は、速い応答時間および低い回転粘度と同時に高い複屈折率を有していなければならない。加えて、LC媒体は、高い透明点、高い誘電異方性および低い閾電圧を有していなければならない。」
(a-5)
「【0029】
驚くべきことに、式Iの化合物を含むLC媒体は低い回転粘度γ_(1)および高い複屈折率Δn、ならびに速い応答時間、低い閾電圧、高い透明点、高い正の誘電異方性および広いネマチック相範囲を同時に有することが見出された。
【0030】
式Iの化合物は、広範囲の用途分野を有する。置換基の選択に応じて、それらは液晶媒体を主に構成する基礎材料となり得るが、例えば、この型の誘電体の誘電的および/または光学的異方性を修正したり、および/またはそれの閾電圧および/または粘度を最適なものとするために、他に分類される化合物からの液晶基礎材料を式Iの化合物に加えることもできる。
【0031】
式Iの好ましい化合物を下に述べる。
【0032】
【化3】


式中、R^(0)は上において示される意味を有し、好ましくは、直鎖のアルキルを表す。R^(0)が好ましくはC_(2)H_(5)、n-C_(3)H_(7)またはn-C_(5)H_(11)を表す式I-1およびI-2の化合物が特に好ましい。
【0033】
純粋な状態で、式Iの化合物は無色であり、電気光学的な使用のために好ましい温度範囲で液晶中間相を形成する。それらは、化学的に、熱的に、および光に対して安定である。」
(a-6)
「【0042】
-媒体は、式IIおよび/またはIIIの1種類以上の化合物を更に含む。
【0043】
【化4】


式中、
Aは、1,4-フェニレンまたはトランス-1,4-シクロヘキシレンを表し、
aは、0または1であり、および
R^(3)は、2?9個のC原子を有するアルケニルを表し、
および、R^(4)は式I中のR^(0)について示される意味を有し、好ましくは1?12個のC原子を有するアルキルまたは2?9個のC原子を有するアルケニルを表す。
【0044】
-式IIの化合物は、好ましくは以下の式から選択される。
【0045】
【化5】


式中、R^(3a)およびR^(4a)は、それぞれ互いに独立に、H、CH_(3)、C_(2)H_(5)またはC_(3)H_(7)を表し、およびalkylは、1?8個のC原子を有する直鎖のアルキル基を表す。特に好ましくは、式IIaおよびIIfの化合物、その中で特に式中R^(3a)がHまたはCH_(3)を表すもの、および式IIcの化合物、その中で特に式中R^(3a)およびR^(4a)がH、CH_(3)またはC_(2)H_(5)を表すものである。」
(a-7)
「【0048】
-媒体は、以下の式から選択される1種類以上の化合物を更に含む。
【0049】
【化7】


式中、
R^(0)およびX^(0)は、式I中で示される意味を有し、および
Y^(1?4)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表し、
Z^(0)は、-C_(2)H_(4)-、-(CH_(2))_(4)-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C_(2)F_(4)-、-CH_(2)CF_(2)-、-CF_(2)CH_(2)-、-CH_(2)O-、-OCH_(2)-、-COO-、-CF_(2)O-または-OCF_(2)-を表し、式VおよびVI中では単結合も表し、および
rは、0または1を表す。
【0050】
-式IVの化合物は、好ましくは以下の式から選択される。
【0051】
【化8】


式中、R^(0)およびX^(0)は、上で示される意味を有する。式IV中、R^(0)は、好ましくは、1?8個のC原子を有するアルキルを表し、X^(0)は、好ましくは、F、Cl、OCHF_(2)またはOCF_(3)を表す。
【0052】
-式Vの化合物は、好ましくは、以下の式より選択される。
【0053】
【化9】


式中、R^(0)およびX^(0)は、上で示される意味を有する。式V中、R^(0)は、好ましくは、1?8個のC原子を有するアルキルを表し、X^(0)は、好ましくは、Fを表す。
【0054】
-媒体は、式VI-1の1種類以上の化合物を含む。
【0055】
【化10】


特に好ましくは、以下の式から選択されるものである。
【0056】
【化11】


式中、R^(0)およびX^(0)は、上で示される意味を有する。式VI中、R^(0)は、好ましくは、1?8個のC原子を有するアルキルを表し、X^(0)は、好ましくはF、更にはOCF_(3)を表す。
【0057】
-媒体は、式VI-2の1種類以上の化合物を含む。
【0058】
【化12】


特に好ましくは、以下の式から選択されるものである。
【0059】
【化13】


式中、R^(0)およびX^(0)は、上で示される意味を有する。式VI中、R^(0)は、好ましくは、1?8個のC原子を有するアルキルを表し、X^(0)は、好ましくは、Fを表す。
【0060】
-媒体は好ましくはZ^(0)が-CF_(2)O-、-CH_(2)CH_(2)または-COO-を表す式VIIの1種類以上の化合物を含み、特に好ましくは、以下の式から選択されるものである。
【0061】
【化14】


式中、R^(0)およびX^(0)は、上で示される意味を有する。式VII中、R^(0)は、好ましくは、1?8個のC原子を有するアルキルを表し、X^(0)は、好ましくはF、更にはOCF_(3)を表す。」
(a-8)
「【0078】
-媒体は、以下の式の1種類以上の化合物を更に含む。
【0079】
【化25】


式中、R^(1)およびR^(2)は、それぞれ互いに独立に、それぞれ9個までのC原子を有するn-アルキル、アルコキシ、オキサアルキル、フルオロアルキルまたはアルケニルを表し、好ましくは、それぞれ互いに独立に、1?8個のC原子を有するアルキルを表す。Y^(1)は、HまたはFを表す。
【0080】
式XIIの好ましい化合物は、下式の化合物である。
【0081】
【化26】


式中、
alkylおよびalkyl^(*)は、それぞれ互いに独立に、1?6個のC原子を有する直鎖のアルキル基を表し、および
alkenylおよびalkenyl^(*)は、それぞれ互いに独立に、2?6個のC原子を有する直鎖のアルケニル基を表す。」
(a-9)
「【0098】
-媒体は、好ましくは、式Iの1種類、2種類または3種類の化合物を含む。
【0099】
-媒体は、式I、II、III、V、VI-1、VI-2、XII、XIII、XIVおよびXVIから選択される化合物を含む。
【0100】
-媒体は、好ましくは、式VI-1の1種類以上の化合物を含む。
【0101】
-媒体は、好ましくは、式VI-2の1種類以上の化合物を含む。
【0102】
-媒体は、好ましくは、式Iの化合物を1?25重量%、好ましくは1?20重量%、特に好ましくは2?15重量%含む。
【0103】
-混合物全体における式II?XXIIの化合物の割合は、好ましくは、20?99重量%である。
【0104】
-媒体は、好ましくは、式IIおよび/またはIIIの化合物を25?80重量%、特に好ましくは30?70重量%含む。
【0105】
-媒体は、好ましくは、式Vの化合物を5?40重量%、特に好ましくは10?30重量%含む。
【0106】
-媒体は、好ましくは、式VI-1の化合物を3?30重量%、特に好ましくは6?25重量%含む。
【0107】
-媒体は、好ましくは、式VI-2の化合物を2?30重量%、特に好ましくは4?25重量%含む。
【0108】
-媒体は、式XIIの化合物を5?40重量%、特に好ましくは10?30重量%含む。
【0109】
-媒体は、好ましくは、式XIIIの化合物を1?25重量%、特に好ましくは2?15重量%含む。
【0110】
-媒体は、好ましくは、式XIVの化合物を5?45重量%、特に好ましくは10?35重量%含む。
・・(中略)・・
【0112】
たとえ比較的少ない量であっても式Iの化合物を、従来の液晶材料、しかしながら特に式II?XXIIの1種類以上の化合物と混合することにより、結果として光安定性が著しく増加し複屈折率の値が低くなり、同時に低いスメクチック-ネマチック転移温度を有する広範囲のネマチック相が観測され、貯蔵寿命が改良されることが判明した。同時に、混合物は、非常に低い閾電圧およびUVに曝露した際に非常に優れるVHRの値を示す。
【0113】
用語「アルキル(alkyl)」または「アルキル^(*)(alkyl^(*))」は、本出願において、1?7個の炭素原子を有する直鎖および分岐のアルキル基を包含し、特にメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチルの直鎖基である。1?6個の炭素原子を有する基が、一般に好ましい。
【0114】
用語「アルケニル(alkenyl)」または「アルケニル^(*)(alkenyl^(*))」は、本出願において、2?7個の炭素原子を有する直鎖および分岐のアルケニル基を包含し、特に直鎖基である。好ましいアルケニル基は、C_(2)-C_(7)-1E-アルケニル、C_(4)-C_(7)-3E-アルケニル、C_(5)-C_(7)-4-アルケニル、C_(6)-C_(7)-5-アルケニルおよびC_(7)-6-アルケニル、特にC_(2)-C_(7)-1E-アルケニル、C_(4)-C_(7)-3E-アルケニルおよびC_(5)-C_(7)-4-アルケニルである。特に好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E-プロペニル、1E-ブテニル、1E-ペンテニル、1E-ヘキセニル、1E-ヘプテニル、3-ブテニル、3E-ペンテニル、3E-ヘキセニル、3E-ヘプテニル、4-ペンテニル、4Z-ヘキセニル、4E-ヘキセニル、4Z-ヘプテニル、5-ヘキセニル、6-ヘプテニルなどである。5個までの炭素原子を有する基が、一般に好ましい。
・・(中略)・・
【0117】
R^(0)およびX^(0)の意味を適切に選択することにより、アドレス時間、閾電圧、透過特性曲線の急峻性などを所望の様式に修正することができる。例えば、1E-アルケニル基、3E-アルケニル基、2E-アルケニルオキシ基などは、アルキルまたはアルコキシ基と比較して、一般により短いアドレス時間、ネマチック性向の改善、および弾性定数k_(33)(ベンド)とk_(11)(スプレイ)のより高い比率を結果として与える。4-アルケニル基、3-アルケニル基などは、アルキルおよびアルコキシ基と比較して、一般に低い閾電圧およびより低い値のk_(33)/k_(11)を与える。本発明による混合物は、高いk_(1)値で特に特徴付けられ、よって、先行技術からの混合物より極めて速い応答時間を有する。
【0118】
上述の式の化合物の最適な混合比は、所望の特性、上述の式の成分の選択、および存在する場合もある他の成分の選択に、実質的に依存する。
【0119】
上で示される範囲内での適切な混合比は、場合ごとに容易に決めることができる。
【0120】
本発明による混合物中の上述の式の化合物の総量は、決定的なものではない。従って、混合物は、様々な特性の最適化のために、1種類以上の更なる成分を含むことができる。しかしながら、上述の式の化合物の総濃度が高くなるほど、混合物の特性の好ましい改良の観測される効果は、一般に大きくなる。
【0121】
特に好ましい実施形態において、本発明による媒体は、X^(0)が、F、OCF_(3)、OCHF_(2)、OCH=CF_(2)、OCF=CF_(2)またはOCF_(2)-CF_(2)Hである式IV?VIIIの化合物を含む。式Iの化合物との好ましい相乗効果により、特に有利な特性が結果として得られる。特に、式I、VおよびVIの化合物を含む混合物は、閾電圧が低いことで特徴付けられる。」
(a-10)
「【0125】
本発明による混合物は、例えば、PDA、ノート型パソコン、LCDテレビおよびモニターなどの携帯用途およびΔnの高いTFT用途に特に好適である。
【0126】
本発明による液晶混合物は、-20℃まで、好ましくは-30℃まで、特に好ましくは-40℃までネマチック相を保持し、70℃以上、好ましくは75℃以上の透明点を有し、同時に、90mPa・s以下、特に好ましくは70mPa・s以下の回転粘度γ_(1)を達成でき、速い応答時間を達成する優れたMLCディスプレイが可能となる。
【0127】
本発明による液晶混合物の誘電異方性Δεは、好ましくは+3以上、特に好ましくは+4以上である。加えて、混合物は低い動作電圧で特徴付けられる。本発明による液晶混合物の閾電圧は、好ましくは2.0V以下である。本発明による液晶混合物の複屈折率Δnは、好ましくは0.11以上、特に好ましくは0.12以上である。
【0128】
本発明による液晶混合物のネマチック相の範囲は、好ましくは少なくとも90°の幅であり、特には少なくとも100°である。この範囲は、好ましくは、少なくとも-25℃から+70℃に及んでいる。」
(a-11)
「【0138】
本出願中および下の例中において、液晶化合物の構造は略号で示されており、化学式への変換は下の表AおよびBに従って行われる。全ての基C_(n)H_(2n+1)およびC_(m)H_(2m+1)は、nおよびm個のC原子をそれぞれ有する直鎖のアルキル基であり、n、mおよびkは整数で、好ましくは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12を表す。表B中のコードは、それ自体で明らかである。表A中には、親構造にかかわる略号のみが示されている。それぞれの場合において、この親構造の略号の後に、ダッシュにより分離されて、置換基R^(1*)、R^(2*)、L^(1*)およびL^(2*)のためのコードが続く。
【0139】
【表1】


好ましい混合物成分を、表Aおよび表Bに示す。
【0140】
【表2】


【0141】
【表3】


【0142】
【表4】


【0143】
【表5】


【0144】
【表6】
・・(中略)・・


【0145】
【表7】


【0146】
・・(中略)・・
式Iの化合物に加え、少なくとも1、2、3または4種類以上の表Bからの化合物を含む液晶混合物が特に好ましい。」
(a-12)
「【実施例】
【0154】
以下の例は、制限することなく、本発明を説明するものである。
【0155】
上および下において、パーセンテージのデータは重量パーセントである。温度は全て摂氏度で示される。m.p.は融点を表わし、cl.p.は透明点を表わす。更に、Cは結晶状態、Nはネマチック相、Sはスメクティック相、およびIは等方相を表す。これらの記号間のデータは転移温度を表す。更に、
-Δnは589nmおよび20℃における光学異方性を表わし、
-γ_(1)は20℃における回転粘度(mPa・s)を表わし、
-V_(10)は透過(基板表面に垂直な視角)が10%となる電圧(V)を表し(閾電圧)、
-Δεは20℃および1kHzにおける誘電異方性(Δε=ε_(?)ε-ε_(⊥)、ここでε_(?)は分子の長軸に平行な誘電率、ε_(⊥)はそれに垂直な誘電率を表す)を表す。
【0156】
電気光学的データは、特に別に示さない限り、20℃において第1次極小(即ち、0.5μmのd・Δn値)でTNセル中において測定する。光学的データは、特に別に示さない限り、20℃で測定する。全ての物理的特性は、「メルク液晶、液晶の物理的特性」1997年11月、ドイツ国メルク社に従って測定され、、特に別に示さない限り、20℃の温度を適用する。
・・(中略)・・
【0158】
・・(中略)・・
<例1>
【0159】
【表15】


混合物は事実上同じ複屈折率および事実上同じ透明点と共に、比較例1からの混合物より低い粘度を有する。
【0160】
<例2>
【0161】
【表16】


混合物は事実上同じ複屈折率および事実上同じ透明点と共に、比較例1からの混合物より低い粘度を有する。
・・(中略)・・
【0163】
・・(中略)・・
<例3>
【0164】
【表18】


混合物は事実上同じ複屈折率と共に、比較例2からの混合物より低い粘度、より高い透明点およびより低い閾電圧を有する。
【0165】
<例4>
【0166】
【表19】


<例5>
【0167】
【表20】


<例6>
【0168】
【表21】


<例7>
【0169】
【表22】


<例8>
【0170】
【表23】


<例9>
【0171】
【表24】


<例10>
【0172】
【表25】


<例11>
【0173】
【表26】


<例12>
【0174】
【表27】


<例13>
【0175】
【表28】


<例14>
【0176】
【表29】


<例15>
【0177】
【表30】


<例16>
【0178】
【表31】


<例17>
【0179】
【表32】


<例18>
【0180】
【表33】


<例19>
【0181】
【表34】


<例20>
【0182】
【表35】


<例21>
【0183】
【表36】


<例22>
【0184】
【表37】


<例23>
【0185】
【表38】


<例24>
【0186】
【表39】


<例25>
【0187】
【表40】


<例26>
【0188】
【表41】


<例27>
【0189】
【表42】


<例28>
【0190】
【表43】


<例29>
【0191】
【表44】


<例30>
【0192】
【表45】


<例31>
【0193】
【表46】


<例32>
【0194】
【表47】


<例33>
【0195】
【表48】




(イ)周知例(国際公開2010/131614号)
周知例には、以下の(b-1)ないし(b-6)の事項が記載されている。

(b-1)
「[請求項1]第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、第三成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第四成分として式(4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、液晶組成物の全重量に基づいて、第三成分の割合が5重量%から80重量%の範囲であり、そしてネマチック相を有する液晶組成物。


ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;
R^(2)およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;
Z^(1)、Z^(2)、Z^(3)、およびZ^(4)は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;
Z^(5)は単結合またはエチレンであり;
X^(1)、X^(2)、X^(3)、X^(4)、X^(5)、およびX^(6)は独立して、水素またはフッ素であり;
Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシであり;
式(1)において、Z^(1)およびZ^(2)の少なくとも一方はジフルオロメチレンオキシである。
[請求項2]第一成分が式(1-1)から式(1-3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物であり、第三成分が式(3-1)および式(3-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物であり、そして第四成分が式(4-1)および式(4-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1に記載の液晶組成物。


ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;
R^(4)、R^(5)、およびR^(6)は独立して、炭素数1から12のアルキル、または炭素数1から12のアルコキシであり;
R^(7)は独立して、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;
Z^(4)は、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;
X^(1)、X^(2)、X^(5)、およびX^(6)は独立して、水素またはフッ素であり;
Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである。
[請求項3]第一成分が式(1-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物であり、第三成分が式(3-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物であり、そして第四成分が式(4-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項2に記載の液晶組成物。
[請求項4]第三成分が、式(3-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項2または3に記載の液晶組成物。
[請求項5]第四成分が式(4-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項2から4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[請求項6]液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の割合が5重量%から80重量%の範囲であり、第二成分の割合が5重量%から80重量%の範囲であり、そして第四成分の割合が10重量%から85重量%の範囲である請求項1から5のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[請求項7]第五成分として式(5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、R^(2)およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;
Z^(6)およびZ^(7)は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;
環A、環B、および環Cは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり;
mは、0、1または2であり;
mが0のとき、環Bは1,4-フェニレンまたは2-フルオロ-1,4-フェニレンである。
[請求項8]第五成分が式(5-1)から式(5-9)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項7に記載の液晶組成物。


ここで、R^(2)およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
[請求項9]第五成分が式(5-5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項8に記載の液晶組成物。
[請求項10]第五成分が、式(5-3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(5-5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項8に記載の液晶組成物。
[請求項11]第五成分が、式(5-5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(5-9)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項8に記載の液晶組成物。
[請求項12]第五成分の割合が5重量%から75重量%の範囲である請求項7から11のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[請求項13]第六成分として式(6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項1から12のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;
環Dは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ピリミジンであり;
Z^(6)は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;
X^(1)およびX^(2)は独立して、水素またはフッ素であり;
Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシであり;
nは1、2、または3であり;
nが2のとき、2つのZ6は独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり、
nが3のとき、3つの環Dのうち少なくとも2つの環Dは独立して、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ピリミジンである。
[請求項14]第六成分が式(6-1)から式(6-12)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項13に記載の液晶組成物。


ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。
[請求項15]第三成分が式(6-9)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項14に記載の液晶組成物。
[請求項16]第三成分が式(6-10)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項14に記載の液晶組成物。
[請求項17]第三成分が式(6-12)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項14に記載の液晶組成物。
[請求項18]第三成分が、式(6-9)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(6-12)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項14に記載の液晶組成物。
[請求項19]液晶組成物の全重量に基づいて、第六成分の割合が5重量%から50重量%の範囲である請求項13から18のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[請求項20]ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃)が0.08以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃)が2以上である請求項1から19のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[請求項21]請求項1から20のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
[請求項22]液晶表示素子の動作モードが、TNモード、OCBモード、IPSモード、またはPSAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である請求項21に記載の液晶表示素子。」(59頁?68頁、「請求の範囲」)
(b-2)
「技術分野
[0001]本発明は、主としてAM(active matrix)素子などに適する液晶組成物およびこの組成物を含有するAM素子などに関する。特に、誘電率異方性が正の液晶組成物に関し、この組成物を含有するTN(twisted nematic)モード、OCB(optically compensated bend)モード、IPS(in-plane switching)モードまたはPSA(Polymer sustained alignment)モードの素子に関する。」(1頁3行?9行)
(b-3)
「背景技術
・・(中略)・・
[0003]これらの素子は適切な特性を有する液晶組成物を含有する。この液晶組成物はネマチック相を有する。良好な一般的特性を有するAM素子を得るには組成物の一般的特性を向上させる。2つの一般的特性における関連を下記の表1にまとめる。組成物の一般的特性を市販されているAM素子に基づいてさらに説明する。ネマチック相の温度範囲は、素子の使用できる温度範囲に関連する。ネマチック相の好ましい上限温度は70℃以上であり、そしてネマチック相の好ましい下限温度は-10℃以下である。組成物の粘度は素子の応答時間に関連する。回転粘度も粘度と同様である。素子で動画を表示するためには短い応答時間が好ましい。したがって、組成物における小さな粘度が好ましい。低い温度における小さな粘度はより好ましい。
[0004]


[0005]組成物の光学異方性は、素子のコントラスト比に関連する。組成物の光学異方性(Δn)と素子のセルギャップ(d)との積(Δn×d)は、コントラスト比を最大にするように設計される。適切な積の値は動作モードの種類に依存する。TNのようなモードの素子では、適切な値は約0.45μmである。この場合、小さなセルギャップの素子には大きな光学異方性を有する組成物が好ましい。組成物における大きな誘電率異方性は素子における低いしきい値電圧、小さな消費電力と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、大きな誘電率異方性が好ましい。組成物における大きな比抵抗は、素子における大きな電圧保持率と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、初期段階において室温だけでなく高い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。長時間使用したあと、室温だけでなく高い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。紫外線および熱に対する組成物の安定性は、液晶表示素子の寿命に関する。これらの安定性が高いとき、この素子の寿命は長い。このような特性は、液晶プロジェクター、液晶テレビなどに用いるAM素子に好ましい。
[0006]TNモードを有するAM素子においては正の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。・・(中略)・・
[0008]望ましいAM素子は、使用できる温度範囲が広い、応答時間が短い、コントラスト比が大きい、しきい値電圧が低い、電圧保持率が大きい、寿命が長い、などの特性を有する。1ミリ秒でもより短い応答時間が望ましい。したがって、組成物の望ましい特性は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などである。」(1頁10行?4頁5行)
(b-4)
「発明が解決しようとする課題
[0009]本発明の1つの目的は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。他の目的は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の目的は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。別の目的は、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、紫外線に対する高い安定性などを有する組成物であり、そして短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子である。」(4頁7行?16行)
(b-5)
「[0038]本発明の組成物を次の順で説明する。第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物に及ぼす主要な効果を説明する。第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分化合物の好ましい割合およびその根拠を説明する。第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。第五に、成分化合物の具体的な例を示す。第六に、組成物に混合してもよい添加物を説明する。第七に、成分化合物の合成法を説明する。最後に、組成物の用途を説明する。
・・(中略)・・
[0041]第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類であり、0(ゼロ)は、値がほぼゼロであることを意味する。
[0042]


[0043]成分化合物を組成物に混合したとき、成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。
化合物(1)は誘電率異方性を上げ、そして光学異方性を上げる。
化合物(2)は誘電率異方性を上げ、そして光学異方性を下げる。
化合物(3)は誘電率異方性を上げ、そして上限温度を上げる。
化合物(4)は上限温度を上げ、そして、下限温度を下げ、または粘度を下げる。
化合物(5)は下限温度を下げ、そして粘度を下げ、または光学異方性を最適にする。
化合物(6)は下限温度を下げ、そして誘電率異方性を上げる。
[0044]第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分化合物の好ましい割合およびその根拠を説明する。組成物における成分の組み合わせは、
第一成分+第二成分+第三成分+第四成分、
第一成分+第二成分+第三成分+第四成分+第五成分、
第一成分+第二成分+第三成分+第四成分+第五成分+第六成分、および
第一成分+第二成分+第三成分+第四成分+第六成分、である。
・・(中略)・・
[0048]第四成分の好ましい割合は、上限温度を上げるために約10重量%以上であり、下限温度を下げるために約85重量%以下である。さらに好ましい割合は約10重量%から約40重量%の範囲である。特に好ましい割合は約15重量%から約30重量%の範囲である。
・・(中略)・・
[0051]第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。
R^(1)は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR^(1)は紫外線または熱に対する安定性などを上げるために、炭素数1から12のアルキルである。
R^(2)およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR^(2)およびR^(3)は、上限温度を上げるため、および粘度を下げるために、炭素数1から12のアルキルである。
R^(4)、R^(5)、およびR^(6)は独立して、炭素数1から12のアルキル、または炭素数1から12のアルコキシである。好ましいR^(4)、R^(5)、およびR^(6)は、上限温度を上げるため、および粘度を下げるために、炭素数1から12のアルキルである。
R^(7)は独立して、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR^(7)は光学的異方性を上げるために炭素数2から12のアルケニルである。
[0052]好ましいアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルである。さらに好ましいアルキルは、粘度を下げるためにエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘプチルである。
[0053]好ましいアルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、またはヘプチルオキシである。粘度を下げるために、さらに好ましいアルコキシは、メトキシまたはエトキシである。
[0054]好ましいアルケニルは、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、または5-ヘキセニルである。さらに好ましいアルケニルは、粘度を下げるためにビニル、1-プロペニル、3-ブテニル、または3-ペンテニルである。これらのアルケニルにおける-CH=CH-の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。粘度を下げるためなどから1-プロペニル、1-ブテニル、1-ペンテニル、1-ヘキセニル、3-ペンテニル、3-ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランスが好ましい。2-ブテニル、2-ペンテニル、2-ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシスが好ましい。これらのアルケニルにおいては、分岐よりも直鎖のアルケニルが好ましい。
[0055]任意の水素がフッ素で置き換えられたアルケニルの好ましい例は、2,2-ジフルオロビニル、3,3-ジフルオロ-2-プロペニル、4,4-ジフルオロ-3-ブテニル、5,5-ジフルオロ-4-ペンテニル、または6,6-ジフルオロ-5-ヘキセニルである。さらに好ましい例は、粘度を下げるために、2,2-ジフルオロビニル、または4,4-ジフルオロ-3-ブテニルである。
[0056]環A、環B、および環Cは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり、mが0のとき、環Bは1,4-フェニレンまたは2-フルオロ-1,4-フェニレンであり、mが2である時の2つの環Cは同じであっても、異なってもよい。2-フルオロ-1,4-フェニレンおよび2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンは、それぞれ両方の向きのどちらでもよい。好ましい環A、環Bおよび環Cは、粘度を下げるために1,4-シクロへキシレン、または光学異方性を上げるために1,4-フェニレンである。
環Dは、1,4-シクロへキシレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ピリミジンであり、nが2または3のとき、そのうちの任意の2つの環Dは同じであっても、異なってもよく、nが3のとき、少なくとも2つの環Dは独立して、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ピリミジンである。1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、および2,5-ピリミジンは、それぞれ両方の向きのどちらでもよい。好ましい環Dは、光学異方性を上げるために1,4-フェニレンである。
[0057]Z^(1)、Z^(2)、Z^(3)、およびZ^(4)は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシである。好ましいZ^(1)、Z^(2)、Z^(3)、およびZ^(4)はそれぞれ、粘度を下げるために単結合であり、下限温度を下げるためにエチレンであり、誘電率異方性を上げるために、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシである。特に、Z^(2)はジフルオロメチレンオキシが好ましく、Z^(4)は単結合が好ましい。
Z^(5)は単結合またはエチレンである。好ましいZ^(5)は粘度を下げるために単結合であり、下限温度を下げるためにエチレンである。
Z^(6)およびZ^(7)は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり、nが2または3のとき、そのうちの任意の2つのZ^(6)は同じであっても、異なってもよく、nが2のとき、Z^(6)は独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシである。好ましいZ^(6)およびZ^(7)は粘度を下げるために単結合であり、下限温度を下げるためにエチレンであり、上限温度をあげるためにカルボニルオキシである。
[0058]X^(1)、X^(2)、X^(3)、X^(4)、X^(5)、およびX^(6)は独立して、水素またはフッ素である。好ましいX^(1)、X^(2)、X^(3)、X^(4)、X^(5)、およびX^(6)は誘電率異方性を上げるためにフッ素であり,上限温度を上げるために水素である。
[0059]Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである。好ましいY^(1)は、下限温度を下げるためにフッ素である。
[0060]mは、0、1、または2である。好ましいmは、粘度を下げるために0であり,上限温度を上げるために2である。
[0061]nは、1、2、または3である。好ましいnは、下限温度を下げるために1であり,上限温度を上げるために3である。
[0062]第五に、成分化合物の具体的な例を示す。下記の好ましい化合物において、R^(8)は、炭素数1から12の直鎖のアルキルまたは炭素数1から12の直鎖のアルコキシである。R^(9)、R^(10)、およびR^(11)は独立して、炭素数1から8を有する直鎖のアルキルまたは炭素数1から8を有する直鎖のアルコキシである。R^(12)は、炭素数2から8の直鎖のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から8のアルケニルである。R^(13)およびR^(14)は独立して、炭素数1から12の直鎖のアルキル、炭素数1から12の直鎖のアルコキシ、または炭素数2から12の直鎖のアルケニルである。これらの化合物において1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。
[0063]好ましい化合物(1)は、化合物(1-1-1)から化合物(1-3-1)である。さらに好ましい化合物(1)は、化合物(1-1-1)から化合物(1-1-3)である。特に好ましい化合物(1)は、化合物(1-1-1)、および化合物(1-1-3)である。好ましい化合物(2)は、化合物(2-1)から化合物(2-3)である。さらに好ましい化合物(2)は、化合物(2-1)、および化合物(2-3)である。特に好ましい化合物(2)は、化合物(2-1)である。好ましい化合物(3)は、化合物(3-1-1)から化合物(3-2-2)である。さらに好ましい化合物(3)は、化合物(3-1-1)および化合物(3-2-1)である。特に好ましい化合物(3)は、化合物(3-1-1)である。好ましい化合物(4)は、化合物(4-1-1)から化合物(4-2-1)である。さらに好ましい化合物(4)は、化合物(4-1-1)である。好ましい化合物(5)は、化合物(5-1-1)から化合物(5-9-1)である。さらに好ましい化合物(5)は、化合物(5-3-1)から化合物(5-5-1)および化合物(5-9-1)である。特に好ましい化合物(5)は、化合物(5-3-1)、化合物(5-5-1)、および化合物(5-9-1)である。好ましい化合物(6)は、化合物(6-1-1)から化合物(6-12-1)である。さらに好ましい化合物(6)は、化合物(6-1-1)、化合物(6-4-1)、および化合物(6-9-1)から化合物(6-12-1)である。特に好ましい化合物(6)は、化合物(6-9-1)から化合物(6-12-1)である。
[0064]


[0065]


[0066]


[0067]


[0068]


[0069]
・・(中略)・・


」(17頁4行?27頁末行)
(b-6)
「[0079]最後に、組成物の用途を説明する。大部分の組成物は、約-10℃以下の下限温度、約70℃以上の上限温度、そして約0.07から約0.20の範囲の光学異方性を有する。この組成物を含有する素子は大きな電圧保持率を有する。この組成物はAM素子に適する。この組成物は透過型のAM素子に特に適する。成分化合物の割合を制御することによって、またはその他の液晶性化合物を混合することによって、約0.08から約0.25の範囲の光学異方性を有する組成物、さらには約0.10から約0.30の範囲の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。この組成物は、ネマチック相を有する組成物としての使用、光学活性な化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用が可能である。
[0080]この組成物はAM素子への使用が可能である。さらにPM素子への使用も可能である。この組成物は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VA、PSAなどのモードを有するAM素子およびPM素子への使用が可能である。TN、OCBまたはIPSモードを有するAM素子への使用は特に好ましい。これらの素子が反射型、透過型または半透過型であってもよい。透過型の素子への使用は好ましい。非結晶シリコン-TFT素子または多結晶シリコン-TFT素子への使用も可能である。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)型の素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)型の素子にも使用できる。」(31頁6行?25行)

イ.検討

(ア)引用例に記載された発明
上記引用例には、「式Iの1種類以上の化合物を含むことを特徴とする液晶媒体」(摘示(a-1)の【請求項1】参照)が記載されると共に、「式IIおよび/またはIIIの1種類以上の化合物を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶媒体」(摘示(a-1)の【請求項2】参照)、「式IV」、「式V」、「式VI」及び「式VII」を含む「以下の式から選択される1種類以上の化合物を更に含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶媒体」(摘示(a-1)の【請求項4】参照)、「1?25重量%の式Iの化合物と、25?80重量%の式IIおよび/またはIIIの化合物とを含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の液晶媒体」(摘示(a-1)の【請求項10】参照)及び「請求項1から11のいずれか一項に記載の液晶媒体を含有する電気光学的液晶ディスプレイ」(摘示(a-1)の【請求項13】参照)もそれぞれ記載されている。
そして、引用例には、上記「式II」で表される化合物として、「式IIa」及び「式IIf」を含む「以下の式から選択される1種類以上の化合物を含むこと」(摘示(a-1)の【請求項3】参照)並びに上記「式VI」で表される化合物として、「式VI-2a」を含む「以下の式から選択される1種類以上の化合物を含むこと」(摘示(a-1)の【請求項7】参照)もそれぞれ記載されている。
また、引用例には、上記液晶媒体が、高い正の誘電異方性を有し、その液晶媒体を含有する液晶ディスプレイにおいて、TFT型のもの、すなわちアクティブマトリックス型のディスプレイを構成するのに好適であることも記載されている(摘示(a-3)の【0006】ないし【0008】、摘示(a-5)の【0029】及び摘示(a-10)の【0125】など参照)。
さらに、引用例には、「式I」で表される化合物の具体例である「CPGU-2-OT」なる化合物、「式II」で表される化合物の具体例である「CCP-V-1」、「CC-3-V1」及び「CC-3-V」なる各化合物の混合物並びに「式VI」で表される化合物の具体例である「PUQU-3-F」などのZ^(0)が-CF_(2)O-である化合物の混合物をそれぞれ含有する上記液晶媒体の具体的実験例が記載されており(摘示(a-12)の「<例2>」参照)、そのほか、「式VII」で表される化合物の具体例である「CCQU-5-F」なる化合物を、「CC-3-V」なる化合物及び「CCP-V-1」なる化合物を含む液晶媒体などに更に添加使用してなる液晶媒体の具体的実験例についても記載されている(摘示(a-12)の「<例32>」及び「<例5>」等参照)。
してみると、引用例には、上記摘示(a-1)ないし(a-12)の記載からみて、
「「CPGU-2-OT」などの式Iで表される1種類以上の化合物又はその混合物、
「CC-3-V」などの式IIaで表される化合物及び「CCP-V-1」などの式IIfで表される化合物などの式IIで表される1種類以上の化合物又はそれらの混合物、
「PUQU-3-F」などの式VI-2aで表される化合物などの式VIで表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物又はその混合物、
及び
「CCQU-5-F」などの式VIIで表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物又はその混合物を含有し、
液晶組成物の全重量に基づいて、1?25重量%の式Iの化合物と、25?80重量%の式IIの化合物とを含む、正の誘電異方性を有する液晶媒体。


(式中、
R^(0)は、1?15個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし、また、これらの基の1個以上のCH_(2)基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接つながらないようにして、-C≡C-、-CF_(2)O-、-CH=CH-、-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子はハロゲン原子によって置き換えられていてもよく、および
X^(0)は、F、Cl、CN、SF_(5)、SCN、NCS、6個までのC原子を有するハロゲン化されたアルキル基、ハロゲン化されたアルケニル基、ハロゲン化されたアルコキシ基またはハロゲン化されたアルケニルオキシ基を表す。)


(式中、
Aは、1,4-フェニレンまたはトランス-1,4-シクロヘキシレンを表し、
aは、0または1を表し、
R^(3)は、2?9個のC原子を有するアルケニルを表し、および
R^(4)は、請求項1中のR^(0)に対して示される意味を有する。)


(式中、R^(0)およびX^(0)は、請求項1中で示される意味を有し、および
Y^(1?4)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表し、
Z^(0)は、-C_(2)H_(4)-、-(CH_(2))_(4)-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C_(2)F_(4)-、-CH_(2)CF_(2)-、-CF_(2)CH_(2)-、-CH_(2)O-、-OCH_(2)-、-COO-、-CF_(2)O-または-OCF_(2)-を表し、式VおよびVI中では単結合も表し、およびrは、0または1を表す。)」
に係る発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものといえる。

(イ)対比・検討

(イ-1)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、それぞれ、
(a)引用発明における「式I・・で表される化合物」は、本件補正発明の「一般式(X)」で表される化合物における「X^(101)、X^(103)及びX^(104)がフッ素原子でX^(102)が水素原子であり、Y^(10)はフッ素原子、塩素原子、又は-OCF_(3)であり、Q^(10)が単結合、R^(10)は炭素原子数1?5のアルキル基、炭素原子数2?5のアルケニル基又は炭素原子数1?4のアルコキシ基であり、A^(101)が1,4-シクロヘキシレン基、A^(102)が1,4-フェニレン基である」場合に相当し、
(b)引用発明における「「CC-3-V」などの式IIaで表される化合物」は、その「R^(3a)」基が「H」(水素原子)であり「alkyl」基が「炭素原子数1?5の直鎖のアルキル基である」場合において、本件補正発明の「一般式(I-1-2)」で表される化合物に相当し、
(c)引用発明における「「CCP-V-1」などの式IIfで表される化合物」は、その「R^(3a)」基が「H、CH_(3)、C_(2)H_(5)またはC_(3)H_(7)」であり、「alkyl」基が「炭素原子数1?5の直鎖のアルキル基である」場合において、本件補正発明の「一般式(ii)で表される化合物」に相当し、
(d)引用発明における「「PUQU-3-F」などの式VI-2aで表される化合物」は、その「R^(0)」基がn-プロピル基で「X^(0)」基が「F」(フッ素原子)である(すなわち「PUQU-3-F」なる化合物)場合において、本件補正発明における「式(i)で表される化合物」に相当し、
及び
(e)引用発明における「「CCQU-5-F」などの式VIIで表される化合物」は、その「R^(0)」基がn-ペンチル基であり、「X^(0)」基、「Y^(1)」基及び「Y^(2)」基がいずれも「F」(フッ素原子)であり、「Z^(0)」基が「-CF_(2)O-」基である場合において、本件補正発明における「式(28.5)で表される化合物」に相当する。
そして、引用発明における「正の誘電異方性を有する液晶媒体」は、本件補正発明における「液晶組成物」に相当することも明らかである。
してみると、本件補正発明と引用発明とは、
「下記式(i):
【化1】


で表される化合物と、
下記式(28.5):
【化2】


で表される化合物と、
下記一般式(I-1-2):
【化3】


(前記一般式(I-1-2)中、R^(12)は、炭素原子数1?5のアルキル基を表す。)で表される少なくとも1種の化合物と、
下記一般式(ii):
【化4】


(前記式(ii)中、R^(iia)は炭素原子数2?5のアルケニル基を表し、R^(iib)は炭素原子数1?5のアルキル基を表す。)で表される少なくとも1種の化合物と、
下記一般式(X):
【化5】


(前記一般式(X)中、X^(101)、X^(103)及びX^(104)がフッ素原子でX^(102)が水素原子であり、Y^(10)はフッ素原子、塩素原子、又は-OCF_(3)であり、Q^(10)が単結合、R^(10)は炭素原子数1?5のアルキル基、炭素原子数2?5のアルケニル基又は炭素原子数1?4のアルコキシ基であり、A^(101)が1,4-シクロヘキシレン基、A^(102)が1,4-フェニレン基である。)
で表される化合物と、を含有する液晶組成物」
の点で一致し、下記の3点で相違する。

相違点1:本件補正発明では、「液晶組成物の総質量に対する、前記一般式(I-1-2)で表される化合物の含有量が23?49質量%であ」るのに対して、引用発明では、「25?80重量%の式IIの化合物・・を含む」点
相違点2:本件補正発明では、「液晶組成物内に塩素原子を有する化合物を含有しない」のに対して、引用発明では、「塩素原子を有する化合物」の含有の有無につき特定されていない点
相違点3:本件補正発明では、「ただし、下記一般式(E)で表される化合物を含有する液晶組成物を除く。
【化7】


(式中、
R^(E)は、H、または、ハロゲン化または無置換の1?15個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基であり、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH_(2)基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接連結しないようにして、-C≡C-、-CH=CH-、-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、
X^(E)は、F、Cl、OCF_(3)、OCHF_(2)、OCH=CF_(2)、OCF=CF_(2)、OCHFCF_(3)、OCF_(2)CFHCF_(3)、CH_(3)、C_(2)H_(5)またはn-C_(3)H_(7)であり、
L^(3)およびL^(4)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFである。)」のに対して、引用発明では、当該「一般式(E)で表される化合物」の含有の有無につき特定されていない点

(イ-2)各相違点に係る検討

(a)相違点1について
上記相違点1につき検討すると、上記引用例には、式IIで表される化合物として、「特に好ましくは、式IIaおよびIIfの化合物、その中で特に式中R^(3a)がHまたはCH_(3)を表すもの・・である」旨記載されており(摘示(a-6)【0045】)、具体例として、「CC-3-V」の25?45%程度と「CCP-V-1」の5?16%程度とを組み合わせて含有する液晶媒体についても記載されている(摘示(a-12)の各例参照)から、引用発明において「25?80重量%の式IIの化合物を含む」ものを構成するにあたり、上記引用例の記載に基づいて、「式IIa」の化合物を25?45重量%の範囲で含有させることは、当業者が適宜なし得ることと認められる。
また、上記周知例にも記載されている(特に、摘示(b-5)の[0041]?[0043]参照)とおり、本件補正発明でいう「式(I-1-2)で表される化合物」に相当する「化合物(4)」を使用した場合、液晶組成物の「(ネマチック相)上限温度を上げ、そして、(ネマチック相)下限温度を下げ、または粘度を下げる」ことは、当業者の周知技術であり、液晶組成物の粘度が低下することにより、表示素子の高速応答性が改善されることも、当業者の周知技術であるものと認められる。
してみると、引用発明において、液晶組成物の粘度の低減化により表示素子の高速応答性を改善することを意図し、上記当業者の周知技術に基づき、本件補正発明でいう「式(I-1-2)で表される化合物」を増量された適宜量、例えば23?49質量%の範囲で使用することは、当業者が適宜なし得ることである。

(b)相違点2について
上記相違点2につき検討すると、引用例には、引用発明の液晶組成物につき、塩素原子を有する化合物の使用が、その構成に欠くことができない技術事項であること又は特に好適であることを認識することができる記載又は示唆が存するものとは認められない。
してみると、引用発明において、塩素原子を有する化合物を使用しない態様が包含されることは自明であるから、上記相違点2については、実質的な相違点であるとはいえない。
(なお、本件補正発明において、「一般式(X)」で表される化合物として、塩素原子を有する液晶化合物を使用することが発明特定事項とされており、上記相違点2に係る事項との対応関係も不明である。)

(c)相違点3について
上記相違点3につき検討すると、引用例には、引用発明の液晶組成物につき、本件補正発明でいう「一般式(E)」で表される化合物の使用が、その構成に欠くことができない技術事項であること又は特に好適であることを認識することができる記載又は示唆が存するものとは認められない。
してみると、引用発明において、「一般式(E)」で表される化合物を使用しない態様が包含されることは自明であるから、上記相違点3についても、実質的な相違点であるとはいえない。

(イ-3)本件補正発明の効果について
本件補正発明の効果につき、本願補正明細書の記載([0009]など)に基づき検討すると、本件補正発明が解決すべき課題は、Δεが正の液晶組成物であって、広い温度範囲の液晶層を有し、粘性が小さく、低温での溶解性が良好で、比抵抗や電圧保持率が高く、熱や光に対して安定な液晶組成物及びそれを用いた液晶表示素子の提供にあるものと認められるから、本件補正発明の効果は、液晶組成物において、上記の各物性に優れることであるものと認められる。
しかしながら、引用発明の液晶組成物についても、速い応答時間、低い回転粘度、高い複屈折率、高い透明点、高い誘電異方性及び低い閾電圧をいずれも達成するものである(摘示(a-4)参照)から、引用発明と本件補正発明との間に効果上の有意な差異が存するものとは認められない。
また、液晶組成物の組成物全体の物性は、その組成物を構成する構成成分(液晶化合物及びその他の成分)の種別、成分数及びそれらの組成比により決定されることが当業者に自明であるところ、本件補正発明では、少なくとも5種の(一般)構造を有する液晶化合物を含むこと及びその内の1種の成分(一般式(I-1-2)で表される化合物)の組成比範囲(23?49質量%)につき発明特定事項とされるのみであり、これら構成成分の内どの成分を主たる成分とするかさえも特定されていないのであるから、当該発明特定事項で特定されるのみである本件補正発明が、常に上記各物性につき、引用発明を含めた従来技術に比して優れるとすべき技術的根拠等が存するものとも認められない。
したがって、本件補正発明が、引用発明の効果に比して、格別顕著な効果を奏するものと認めることはできない。

(イ-4)小括
以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明(及び当業者の周知技術)に基づき当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

(ウ)小括
以上のとおり、本件補正発明は、上記引用発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではない。

(3)独立特許要件に係る検討のまとめ
よって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

III.補正の却下の決定のまとめ
以上のとおり、上記手続補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項に違反する補正事項を含むものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願について

1.本願に係る発明
平成26年7月8日付け手続補正は上記第2のとおり却下されたので、本願に係る発明は、平成23年6月10日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明は、再掲すると、以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
下記式(i):
【化1】


で表される化合物と、
下記式(28.5):
【化2】


で表される化合物と、
下記一般式(I-1-2):
【化3】


(前記一般式(I-1-2)中、R^(12)は、炭素原子数1?5のアルキル基、炭素原子数1?5のアルコキシ基、又は炭素原子数2?5のアルケニル基を表す。)で表される少なくとも1種の化合物と、
下記一般式(ii):
【化4】


(前記一般式(ii)中、R^(iia)は炭素原子数2?5のアルケニル基を表し、R^(iib)は炭素原子数1?5のアルキル基または炭素原子数1?4のアルコキシ基を表す。)で表される少なくとも1種の化合物と、を含有する液晶組成物において、
液晶組成物の総質量に対する、前記一般式(I-1-2)で表される化合物の含有量が23?49質量%であり、
液晶組成物内に塩素原子を有する化合物を含有しないことを特徴とする液晶組成物。」
(以下、「本願発明」という。)

2.原審の拒絶査定の内容
原審において、平成23年4月7日付け拒絶理由通知書で以下の内容を含む拒絶理由が通知され、当該拒絶理由が解消されていない点をもって下記の拒絶査定がなされた。

<拒絶理由通知>
「 理 由
・・(中略)・・
2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

<理由1,2について>
請求項1-48 文献1-4
(備考)
文献1-4には、本願所定の、一般式(i)で表される化合物、一般式(ii)で表される化合物、一般式(28.5)で表される化合物、一般式(2.2)で表される化合物、一般式(M)で表される化合物及び一般式(L)で表される化合物を含有する液晶組成物、該組成物を使用してなる液晶表示素子、液晶ディスプレイが開示されている(文献1;特許請求の範囲、実施例(特に、例5,32)等、文献2;請求の範囲、実施例(特に、実施例5)等、文献3;特許請求の範囲、実施例(特に、例6)等、文献4;特許請求の範囲、実施例(特に、例M8)等)。
よって、請求項1-33、37-43及び46-48に係る発明は、文献1-4に記載された発明であるか、そうでないとしても、同文献より、当業者が容易に想到できたものである。
また、文献1-4には、本願の一般式(l-7)、(8.1)、(2.5)、(62.1)又は(62.3)で表される化合物を含有する液晶組成物は具体的には記載されていないが、文献1-4には、液晶組成物に含有しうる化合物として、上記化合物を包含する一般式が記載されているから、本願の所期の効果を得ることを目的として、液晶組成物に上記化合物を含有させることに格別の困難性はない。そして、本願の実施例等を参酌してもみても、その効果も、文献1-4記載の発明から当業者が予測可能な範囲内のものにすぎない。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特表2010-501688号公報
2.国際公開第2010/131614号
3.特表2012-516920号公報
4.特開2011-117062号公報」

<拒絶査定>
「この出願については、平成25年12月20日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
文献1、3及び4には、本願所定の、一般式(i)で表される化合物、一般式(ii)で表される化合物、一般式(28.5)で表される化合物、一般式(2.2)で表される化合物、一般式(M)で表される化合物及び一般式(L)で表される化合物を含有する液晶組成物、該組成物を使用してなる液晶表示素子、液晶ディスプレイが開示されている(文献1;特許請求の範囲、実施例(特に、例5,32)等、文献3;特許請求の範囲、実施例(特に、例6)等、文献4;特許請求の範囲、実施例(特に、例M8)等)。
・・(中略)・・
そうすると、文献1、3及び4記載の液晶組成物において、所望の特性を求めて、本願の一般式(I-1-2)で表される化合物の含有量を適宜好適化することに格別の困難性はない。そして、本願の発明の詳細な説明を参酌してみても、これらの構成を採用することにより、当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するとまでは認められない。

以上のとおりであるから、出願人の主張は採用できず、本願請求項1-19に係る発明は、依然として、先の拒絶理由で引用した文献1、3及び4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。」

3.当審の判断
当審は、本願は、以下の理由により、拒絶すべきものと判断する。
以下、詳述する。

(1)上記「理由2」について
引用文献:
1.特表2010-501688号公報(上記第2で引用した「引用例」である。引き続き「引用例」という。)
2.国際公開2010/131614号(上記第2で引用した「周知例」である。引き続き「周知例」という。)

ア.引用例等に記載された事項及び発明
上記引用例には、上記第2のII.2.(2)ア.(ア)の(a-1)ないし(a-12)として摘示した事項が記載されており、上記第2のII.2.(2)イ.(ア)で示した「引用発明」が記載されている。
また、上記周知例には、上記第2のII.2.(2)ア.(イ)の(b-1)ないし(b-6)として摘示した事項が記載されている。

イ.対比・検討

(ア)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、以下の2点で相違し、その余で一致することが明らかである。

相違点1’:本願発明では、「液晶組成物の総質量に対する、前記一般式(I-1-2)で表される化合物の含有量が23?49質量%であ」るのに対して、引用発明では、「25?80重量%の式IIの化合物・・を含む」点
相違点2’:本願発明では、「液晶組成物内に塩素原子を有する化合物を含有しない」のに対して、引用発明では、「塩素原子を有する化合物」の含有の有無につき特定されていない点

(イ)各相違点に係る検討
上記相違点1’及び2’は、いずれも上記第2のII.2.(2)イ.(イ)(イ-1)で示した相違点1及び2とそれぞれ同一の事項である。
してみると、上記相違点1’及び2’は、いずれも上記第2のII.2.(2)イ.(イ)(イ-2)の(a)及び(b)で説示した相違点1及び2に係る理由と同一の理由により、相違点1’については当業者が適宜なし得ることであり、相違点2’については実質的な相違点でない。

(ウ)本願発明の効果について
本願発明の効果につき、本願明細書の記載([0009]など)に基づき検討すると、本願発明が解決すべき課題は、Δεが正の液晶組成物であって、広い温度範囲の液晶層を有し、粘性が小さく、低温での溶解性が良好で、比抵抗や電圧保持率が高く、熱や光に対して安定な液晶組成物及びそれを用いた液晶表示素子の提供にあるものと認められるから、本願発明の効果は、液晶組成物において、上記の各物性に優れることであるものと認められる。
しかしながら、引用発明の液晶組成物についても、速い応答時間、低い回転粘度、高い複屈折率、高い透明点、高い誘電異方性及び低い閾電圧をいずれも達成するものである(摘示(a-4)参照)から、引用発明と本願発明との間に効果上の有意な差異が存するものとは認められない。
また、液晶組成物の組成物全体の物性は、その組成物を構成する構成成分(液晶化合物及びその他の成分)の種別、成分数及びそれらの組成比により決定されることが当業者に自明であるところ、本願発明では、少なくとも5種の(一般)構造を有する液晶化合物を含むこと及びその内の1種の成分(一般式(I-1-2)で表される化合物)の組成比範囲(23?49質量%)につき発明特定事項とされるのみであり、これら構成成分の内どの成分を主たる成分とするかさえも特定されていないのであるから、当該発明特定事項で特定されるのみである本願発明が、常に上記各物性につき、引用発明を含めた従来技術に比して優れるとすべき技術的根拠等が存するものとも認められない。
したがって、本願発明が、引用発明の効果に比して、格別顕著な効果を奏するものと認めることはできない。

(エ)小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

ウ.検討のまとめ
よって、本願発明は、引用発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではない。

(3)当審の判断のまとめ
以上を総合すると、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条の規定により、特許を受けることができるものではないから、その余につき検討するまでもなく、本願は、同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶すべきものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願は、特許法第49条第2号の規定に該当し、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-12 
結審通知日 2016-01-19 
審決日 2016-02-01 
出願番号 特願2013-551454(P2013-551454)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C09K)
P 1 8・ 121- Z (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 恵理  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 岩田 行剛
橋本 栄和
発明の名称 液晶組成物及びこれを用いた液晶表示素子  
代理人 高橋 詔男  
代理人 鈴木 三義  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  
代理人 志賀 正武  

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