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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60R 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B60R |
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管理番号 | 1322589 |
審判番号 | 不服2015-20511 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-11-17 |
確定日 | 2016-12-06 |
事件の表示 | 特願2015-512248号「移動体状態通知装置、サーバ装置および移動体状態通知方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月23日国際公開、WO2014/170987、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年4月18日を国際出願日とする出願であって、平成27年3月19日に手続補正書が提出され、平成27年6月9日付けで拒絶理由が通知され、平成27年7月29日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年8月13日付けで拒絶査定がされ、平成27年11月17日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において平成28年8月4日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成28年9月27日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成28年9月27日提出の手続補正により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1ないし13に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明13」という。)は以下のとおりである。 「 【請求項1】 移動体に搭載され、出力部を介して前記移動体の状態を通知する移動体状態通知装置に おいて、 前記移動体の各種状態を示す移動体情報を取得する移動体情報取得部と、 前記移動体情報取得部が取得した前記移動体情報が示す前記移動体の各種状態の内容を総合的に評価して前記移動体の全体的な状態を判定する状態判定部と、 前記状態判定部が判定した前記移動体の全体的な状態を前記出力部に出力して通知する通知処理部とを備え、 前記状態判定部は、前記総合的な評価に用いられた前記移動体の各種状態のうちから緊急に通知すべき状態を判定し、 前記通知処理部は、通知対象のユーザに応じて前記移動体の全体的な状態の通知と前記移動体の各種状態の通知とを切り替えるとともに、前記総合的な評価に用いられた前記移動体の各種状態のうちから緊急に通知すべき状態があると前記状態判定部が判定したとき、前記移動体の全体的な状態の通知と前記緊急に通知すべき状態を含む各種状態の通知とを切り替えることを特徴とする移動体状態通知装置。 【請求項2】 前記通知処理部は、前記移動体の全体的な状態または前記移動体の各種状態を、文字、色、形状、パターン、キャラクタおよび音声の少なくとも一つを用いて感覚的に表現して通知することを特徴とする請求項1記載の移動体状態通知装置。 【請求項3】 前記通知処理部は、ユーザ操作に応じて前記移動体の全体的な状態の通知と前記移動体の各種状態の通知とを切り替えることを特徴とする請求項1記載の移動体状態通知装置。 【請求項4】 前記状態判定部は、前記移動体の移動時間または移動距離に基づいて前記移動体の乗員の負荷状態を判定し、 前記通知処理部は、前記状態判定部が判定した前記乗員の負荷状態に応じて、前記移動体の全体的な状態の通知と前記移動体の各種状態の通知とを切り替えることを特徴とする請求項1記載の移動体状態通知装置。 【請求項5】 前記状態判定部は、前記移動体情報として取得された前記移動体の位置情報に基づいて前記移動体が位置する場所を判定し、 前記通知処理部は、前記状態判定部が判定した前記移動体が位置する場所に応じて前記移動体の全体的な状態の通知と前記移動体の各種状態の通知とを切り替えることを特徴とする請求項1記載の移動体状態通知装置。 【請求項6】 前記移動体内部の各種状態を示す移動体内部情報を取得する移動体内部情報取得部と、 前記移動体周辺の各種状態を示す移動体外部情報を取得する移動体外部情報取得部とを備え、 前記状態判定部は、前記移動体情報取得部が取得した前記移動体情報が示す前記移動体の各種状態、前記移動体内部情報取得部が取得した前記移動体内部情報が示す前記移動体内部の各種状態および前記移動体外部情報取得部が取得した前記移動体外部情報が示す前記移動体周辺の各種状態の内容を総合的に評価して前記移動体の全体的な状態を判定することを特徴とする請求項1記載の移動体状態通知装置。 【請求項7】 前記状態判定部は、前記移動体内部情報として取得された前記移動体の乗員の生体情報に基づいて、前記乗員の負荷状態を判定し、 前記通知処理部は、前記状態判定部が判定した前記移動体の乗員の負荷状態に応じて、 前記移動体の全体的な状態の通知と前記移動体の各種状態の通知とを切り替えることを特徴とする請求項6記載の移動体状態通知装置。 【請求項8】 前記状態判定部は、前記移動体内部の各種状態または前記移動体周辺の各種状態に異常があるか否かを判定し、 前記通知処理部は、前記移動体内部の各種状態または前記移動体周辺の各種状態に異常があると判定された場合に、前記移動体が危険な状態であることを感覚的に表現して通知することを特徴とする請求項6記載の移動体状態通知装置。 【請求項9】 携帯端末と通信を行う携帯端末通信部を備え、 前記通知処理部は、前記携帯端末通信部を介して前記携帯端末に通知を行うことを特徴とする請求項1記載の移動体状態通知装置。 【請求項10】 前記通知処理部は、前記携帯端末通信部を介して前記携帯端末から文字、色、形状、パターン、キャラクタおよび音声の少なくとも一つを取得して、前記移動体の状態を感覚的に表現した通知を行うことを特徴とする請求項9記載の移動体状態通知装置。 【請求項11】 前記通知処理部は、前記携帯端末通信部を介して前記携帯端末で編集された情報を受信して前記出力部で通知することを特徴とする請求項9記載の移動体状態通知装置。 【請求項12】 サーバ装置と通信を行うサーバ通信部を備え、 前記通知処理部は、前記サーバ通信部を介して前記サーバ装置から文字、色、形状、パターン、キャラクタおよび音声の少なくとも一つを取得して、前記移動体の状態を感覚的に表現した通知を行うことを特徴とする請求項1記載の移動体状態通知装置。 【請求項13】 移動体状態通知装置の出力部を介して移動体の状態を通知させる移動体状態通知方法において、 状態判定部が、前記移動体状態通知装置から取得された移動体情報が示す前記移動体の各種状態の内容を総合的に評価して前記移動体の全体的な状態を判定するステップと、前記総合的な評価に用いられた前記移動体の各種状態のうちから緊急に通知すべき状態を判定するステップとを備え、 通知処理部が、前記判定された前記移動体の全体的な状態を前記出力部に出力して通知し、前記移動体の全体的な状態の通知と前記移動体の各種状態の通知とを切り替えるステップとして、 通知対象のユーザに応じて前記移動体の全体的な状態の通知と前記移動体の各種状態の通知とを切り替える第1のステップと、前記総合的な評価に用いられた前記移動体の各種状態のうちから緊急に通知すべき状態があると判定されたとき、前記移動体の全体的な状態の通知と前記緊急に通知すべき状態を含む各種状態の通知とを切り替える第2のステップとを備えたことを特徴とする移動体状態通知方法。」 第3 原査定の理由について 1.原査定の理由の概要 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (刊行物等については刊行物等一覧参照) ・請求項 1-4,7,9,14,15 ・刊行物等 刊行物1には、移動体状態通知装置において、移動体の全体的な状態(運転の評価結果)及び各種状態(運転に関する各種情報)のそれぞれを示す表示が、画面切換の表示部を運転者が触ることによって切り換えられていることが開示若しくは示唆されている(例えば段落[0008],[0025],[0026],[0059],図2-8等参照)。 また刊行物1の段落[0025]には「…予め設定された特定の運転状態を判定し、この特定の運転状態である場合に運転指導情報を表示装置13に表示したり音声警報装置14により警報する運転指導手段16とを備えて構成される。と記載され、同刊行物1の段落[0063]には「運転指導手段16は、運転状態検出手段10にて検出された運転状態に対して、環境や安全などの面において良い運転状態となるように、運転者にどのように運転操作を行なえば良いかアドバイスするものである。この運転指導手段16は、予め設定されている特定の運転状態及びこの特定運転状態に対する運転指導情報を記憶している。そして、運転状態検出手段10により検出される運転情報を入力して、検出された運転情報に基づく運転状態が特定の運転状態に該当するか否かを判断して、特定の運転状態に該当すると判断すると、その特定運転状態に対する運転指導情報を表示装置13に表示させるとともに音声警報装置14により警報させて運転者に連絡する。ここで、特定の運転状態とは、例えば環境や安全などの面において劣悪で、改善を要する運転状態である。」と記載されている。そして上記警報は、一般的に、緊急に通知すべき状態に発報されるものであるから、上記「特定の運転状態」は、本願の「緊急に通知すべき状態」に対応すると解するのが相当である。これらの記載事項から、刊行物1には、所定の条件として総合的な評価に用いられた移動体の各種状態のうちから緊急に通知すべき状態があると判定したとき緊急に通知すべき状態を含む各種状態の通知をすることは開示若しくは示唆されている。 刊行物2には、任意の状態(ワーニング等)の発生に応じて表示内容を自動的に切り換えるという技術思想が開示若しくは示唆されている(例えば段落[0018],図3等参照)。 そして刊行物1,2に記載のものは、緊急に通知すべき状態があると判定したとき緊急に通知すべき状態を含む各種状態の通知をするという共通の機能を有するものであるから、刊行物1に記載の移動体状態通知装置において、刊行物2に記載の技術思想を参照して、所定の条件として総合的な評価に用いられた移動体の各種状態のうちから緊急に通知すべき状態があると状態判定部が判定したとき、移動体の全体的な状態の通知と緊急に通知すべき状態を含む各種状態の通知とを切り替えることに格別の困難性があるとは認められない。またこの適用を阻害する特段の事情も見当たらない。 よって、請求項1-4,7,9,14,15に係る発明は、刊行物1,2に記載の技術思想から当業者が容易になし得たものである。 出願人は、上記手続補正書において、独立項である請求項1,14,15に係る発明について、「状態判定部は、総合的な評価に用いられた移動体の各種状態のうちから緊急に通知すべき状態を判定し、通知処理部は、所定の条件として総合的な評価に用いられた移動体の各種状態のうちから緊急に通知すべき状態があると状態判定部が判定したとき、移動体の全体的な状態の通知と緊急に通知すべき状態を含む各種状態の通知とを切り替える」と特定し、上記意見書において、要するに、上記拒絶理由通知書で通知した刊行物1-6には上記発明特定事項が開示も示唆もされていないから、請求項1-15に係る発明は、刊行物1-6に記載の事項から当業者が容易に想到し得ない旨主張している。 しかしながら請求項1,14,15に係る発明は、上記のとおり、刊行物1,2に記載の技術思想から当業者が容易になし得たものであるから、出願人の上記意見書による主張は採用できない。なお、請求項2-13に係る発明についても同様である。 ・請求項 5,6,8 ・刊行物等 1,3,4 ・備考 刊行物1の認定については、上記記載を参照のこと。 移動体状態通知装置の技術分野において、運転者の負荷を低減するため、道路状況や車速等の走行状態等に基づいて運転者にかかる運転負荷を検出し、運転負荷が高いときに表示メニューを少なくすることは、従来より周知である(必要ならば、刊行物3の段落[0002]、刊行物4の請求項1,段落[0006]-[0009]等参照)。 刊行物1に記載の移動体状態通知装置においても、運転者の負荷を低減することは考慮してしかるべき事項であるから、上記周知の技術を参照して、運転者の負荷に応じて表示形態を切り換えることに格別の困難性があるとは認められない。 ・請求項 10-13 ・刊行物 1,5,6 ・備考 刊行物1の認定については、上記記載を参照のこと。 移動体状態通知装置の技術分野において、運転者の監視負担を軽減するため、車両の情報を携帯端末あるいはサーバ通信部に通信することは、従来より周知である(必要ならば、刊行物5の段落[0037],図1、刊行物6の段落[0011],[0019]等参照)。 刊行物1に記載の移動体状態通知装置においても、運転者の監視負担を軽減することは考慮してしかるべき事項であるから、上記周知の技術を参照して、車両の情報を携帯端末あるいはサーバ通信部に通信することに格別の困難性があるとは認められない。 <刊行物等一覧> 刊行物1.特開2000-247162号公報 刊行物2.特開2012-230589号公報 刊行物3.特開2007-261432号公報(周知技術を示す文献) 刊行物4.特開2004-249834号公報(周知技術を示す文献) 刊行物5.特開2005-346265号公報(周知技術を示す文献) 刊行物6.特開2013-025652号公報(周知技術を示す文献) 2.原査定の理由の判断 (1)刊行物1の記載事項 図1ないし図8並びに【特許請求の範囲】の【請求項1】、段落【0025】、【0026】及び【0059】ないし【0065】等の記載からみて、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「車両に搭載され、表示装置13を介して車両の運転状態の評価結果を運転者に連絡する車両用運転状態評価装置において、 車両の運転状態を表す運転情報を検出する運転状態検出手段10と、 運転状態検出手段10が検出した運転情報が表す車両の運転状態の内容を総合評価して、車両の運転者自身の運転操作による運転状態を判定する運転状態評価手段12とを備え、 表示装置13に表示される車両の運転状態の評価結果をナビゲーション情報、走行距離や走行時間、燃料消費率、走行可能距離及び地位情報などの各表示画面に切換可能である車両用運転状態評価装置。」 (2)刊行物2の記載事項 図1ないし図6並びに【特許請求の範囲】の【請求項1】及び段落【0018】等の記載からみて、刊行物2には以下の技術(以下、「刊行物2の技術」という。)が記載されている。 「第一、第二のディスプレイ装置3、4において、報知、警告を行うワーニング機能などの機能を備えており、第一、第二のディスプレイ装置3、4はそれぞれ、任意の状態の発生に応じて各種機能の動作状態や各種機能に基づく情報などの複数の表示項目をユーザーの設定に関わらず自動的に切り換えて表示する表示エリアを有する技術。」 (3)刊行物3の記載事項 段落【0002】等の記載からみて、刊行物3には以下の技術(以下、「刊行物3の技術」という。)が記載されている。 「ナビゲーション装置から入力される道路状況や、車速等の走行状況に基づいて運転者にかかる運転負荷を検出し、運転負荷が高いときには表示メニューを少なくしてナビゲーション装置に対する対応負荷を軽減する技術。」 (4)刊行物4の記載事項 【特許請求の範囲】の【請求項1】及び段落【0006】ないし【0009】等の記載からみて、刊行物4には以下の技術(以下、「刊行物4の技術」という。)が記載されている。 「運転負荷検出手段にて検出された運転負荷に応じてモードを設定し、当該モードに対応してメニュー作成手段にて作成されたメニュー情報を用いてメニュー項目を表示すると共に、設定したモードに応じて表示するメニュー項目の表示形態を変更する技術。」 (5)刊行物5の記載事項 段落【0037】等の記載からみて、刊行物5には以下の技術(以下、「刊行物5の技術」という。)が記載されている。 「携帯端末12は、webブラウザを有しており、入出力部56への入力操作により通信ネットワークを介して外部のwebサーバーに蓄積されたファイルやデータを閲覧可能であり、センタ14の提供する各種の情報例えばアクチュエータ50による車両操作を要求するためのweb画面を取得可能である技術。」 (6)刊行物6の記載事項 段落【0011】及び【0019】等の記載からみて、刊行物6には以下の技術(以下、「刊行物6の技術」という。)が記載されている。 「表示制御装置が、車両の運転席前方に設置された車両用計器からなる表示装置10と、表示装置10と無線通信可能なスマートフォンからなる携帯端末20とを備える技術。」 (7)対比・判断 本願発明1と引用発明とを対比すると、 引用発明における「車両」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明1における「移動体」に相当し、以下同様に、「表示装置13」は「出力部」に、「運転状態」は「状態」あるいは「各種状態」に、「車両の運転状態の評価結果を運転者に連絡する」は「移動体の状態を通知する」に、「車両用運転状態評価装置」は「移動体状態通知装置」に、「表す」は「示す」に、「運転情報」は「移動体情報」に、「検出する」は「取得する」に、「運転状態検出手段10」は「移動体情報取得部」に、「運転情報」は「移動体情報」に、「総合評価」は「総合的に評価」に、「車両の運転者自身の運転操作による運転状態」は「移動体の全体的な状態」に、「運転状態評価手段12」は「状態判定部」に、それぞれ相当する。 よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「移動体に搭載され、出力部を介して前記移動体の状態を通知する移動体状態通知装置において、 前記移動体の各種状態を示す移動体情報を取得する移動体情報取得部と、 前記移動体情報取得部が取得した前記移動体情報が示す前記移動体の各種状態の内容を総合的に評価して前記移動体の全体的な状態を判定する状態判定部と、 を備えた移動体状態通知装置。」 [相違点] 本願発明1においては、「状態判定部が判定した移動体の全体的な状態を出力部に出力して通知する通知処理部とを備え、状態判定部は、総合的な評価に用いられた移動体の各種状態のうちから緊急に通知すべき状態を判定し、通知処理部は、通知対象のユーザに応じて移動体の全体的な状態の通知と移動体の各種状態の通知とを切り替えるとともに、総合的な評価に用いられた移動体の各種状態のうちから緊急に通知すべき状態があると状態判定部が判定したとき、移動体の全体的な状態の通知と緊急に通知すべき状態を含む各種状態の通知とを切り替える」のに対して、引用発明においては、表示装置13に表示される車両の運転状態の評価結果をナビゲーション情報、走行距離や走行時間、燃料消費率、走行可能距離及び地位情報などの各表示画面に切換可能である点(以下、「相違点」という。)。 上記相違点について検討する。 [相違点について] 刊行物2の技術は、「第一、第二のディスプレイ装置3、4において、報知、警告を行うワーニング機能などの機能を備えており、第一、第二のディスプレイ装置3、4はそれぞれ、任意の状態の発生に応じて各種機能の動作状態や各種機能に基づく情報などの複数の表示項目をユーザーの設定に関わらず自動的に切り換えて表示する表示エリアを有する技術。」である。 しかしながら、刊行物2の技術は、上記相違点に係る本願発明1における「通知対象のユーザに応じて移動体の全体的な状態の通知と移動体の各種状態の通知とを切り替えるとともに、総合的な評価に用いられた移動体の各種状態のうちから緊急に通知すべき状態があると状態判定部が判定したとき、移動体の全体的な状態の通知と緊急に通知すべき状態を含む各種状態の通知とを切り替える」、「通知処理部」(以下、まとめて単に「通知処理部」という。)を開示するものではない。 さらに、刊行物3の技術ないし刊行物6の技術のいずれも、上記相違点に係る本願発明1における「通知処理部」を開示するものではない。 また、原査定の理由において引用された刊行物1ないし6に加えて、前置報告書において新たに引用された特開2004-126354号公報(以下、「刊行物7」という。)及び特開2006-335231号公報(以下、「刊行物8」という。)について検討すると、刊行物7は、車載表示装置が、運転者用画像と搭乗者用の画像とに切換え可能であって、運転者には最小限の画像表示を行い、他の搭乗者にはできるだけ多くの情報を多彩な表現で画像表示することに関するものであり(刊行物7、段落【0026】及び【0027】参照)、刊行物8は、運転席、助手席、後部座席にそれぞれ設けられた車載ディスプレイにおいて、運転支援情報は、全てのディスプレイにおいて表示可能とし、アプリケーション情報について、車両の走行中は運転席及び助手席におけるディスプレイでの表示を禁止することに関する(刊行物8、段落【0024】参照)ものであるが、これら刊行物7及び刊行物8においても、上記相違点に係る本願発明1における「通知処理部」については記載されていない。 したがって、引用発明及び刊行物2の技術ないし刊行物6の技術並びに刊行物7及び刊行物8に記載された事項に基いて相違点に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことであるとすることはできない。 (8)小括 そうすると、引用発明及び刊行物2の技術ないし刊行物6の技術並びに刊行物7及び刊行物8に記載された事項に基いて相違点に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことであるとすることはできないのであるから、本願発明1は、引用発明及び刊行物2の技術ないし刊行物6の技術並びに刊行物7及び刊行物8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 また、請求項2ないし12は、請求項1の記載を直接的あるいは間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されており、本願発明2ないし12は、本願発明をさらに限定したものであって、本願発明1の発明特定事項の全てを備えるものであるから、同様に、引用発明及び刊行物2の技術ないし刊行物6の技術並びに刊行物7及び刊行物8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 さらに、本願発明13は、本願発明1のカテゴリーを変更したものであるから、本願発明1と同様に、引用発明及び刊行物2の技術ないし刊行物6の技術並びに刊行物7及び刊行物8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について 1.当審拒絶理由 「 本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (1)請求項1の記載「第1の前記所定の条件として通知対象のユーザに応じて・・・切り替えるとともに、」において、「第1の前記所定条件」とは具体的にどのような条件であるのか不明であるため、どのような場合に、「通知対象のユーザに応じて・・・切り替える」のか不明である。 (2)請求項13の記載「第1の前記所定の条件として通知対象のユーザに応じて・・・切り替える第1のステップ」において、「第1の前記所定条件」とは具体的にどのような条件であるのか不明であるため、どのような場合に、「通知対象のユーザに応じて・・・切り替える」のか不明である。 このため、請求項1及び請求項13並びに請求項1を直接的及び間接的に引用する請求項2ないし12に係る発明は明確でない。」 2.当審拒絶理由の判断 平成28年9月27日提出の手続補正書によって、本願の請求項1ないし13は、上記「第2 本願発明」に示したとおりに補正された。 上記補正により、請求項1の記載において、「前記通知処理部は、所定の条件に応じて前記移動体の全体的な状態の通知と前記移動体の各種状態の通知とを切り替え、」、「第1の前記所定の条件として」及び「第2の前記所定の条件として」が削除され、請求項3の記載において、「前記ユーザ操作」から「前記」が削除され、請求項13の記載において、「所定の条件に応じて」、「第1の前記所定の条件として」及び「第2の前記所定の条件として」が削除された。 このことにより、上記1.(1)及び(2)の拒絶理由は何れも解消した。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-11-21 |
出願番号 | 特願2015-512248(P2015-512248) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B60R)
P 1 8・ 537- WY (B60R) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 山村 秀政 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
三島木 英宏 松下 聡 |
登録日 | 2016-12-22 |
登録番号 | 特許第6062043号(P6062043) |
発明の名称 | 移動体状態通知装置、サーバ装置および移動体状態通知方法 |
代理人 | 濱田 初音 |
代理人 | 河村 秀央 |
代理人 | 田澤 英昭 |
代理人 | 辻岡 将昭 |
代理人 | 中島 成 |
代理人 | 坂元 辰哉 |