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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する H01F
管理番号 1322594
審判番号 訂正2016-390120  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2016-09-20 
確定日 2016-12-08 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5961814号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5961814号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔3、5〕について訂正することを認める。 
理由 第1.手続の経緯

本件特許第5961814号は、平成23年10月31日(優先権主張 平成22年11月18日)の出願であって、平成27年11月5日付け及び平成28年3月16日付けでそれぞれ手続補正がなされ、平成28年7月8日に特許権の設定登録がなされたものである。

そして、本件訂正審判は、平成28年9月20日に請求されたものである。

第2.請求の趣旨

本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第5961814号の明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3及び5について訂正することを求めるものである。

第3.訂正の内容

本件訂正の内容は、以下のとおりである。

1.請求項3、5からなる一群の請求項に係る訂正
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3に
「複数の絶縁体層と、前記絶縁体層に形成された第1の渦巻き状導体および第2の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第1のコイルと、前記絶縁体層に形成された第3の渦巻き状導体および第4の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第2のコイルとを備え、前記第1の渦巻き状導体、第3の渦巻き状導体、第2の渦巻き状導体、第4の渦巻き状導体の順に積層するとともに、前記第2の渦巻き状導体と前記第3の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数を、前記第1の渦巻き状導体と前記第2の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数、前記第3の渦巻き状導体と前記第4の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数より多くし、前記第2の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との距離を、前記第1の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との距離、および前記第2の渦巻き状導体と第4の渦巻き状導体との距離より大きくしたコモンモードノイズフィルタ。」
とあるのを、
「複数の絶縁体層と、前記絶縁体層に形成された第1の渦巻き状導体および第2の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第1のコイルと、前記絶縁体層に形成された第3の渦巻き状導体および第4の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第2のコイルとを備え、前記第1の渦巻き状導体、第3の渦巻き状導体、第2の渦巻き状導体、第4の渦巻き状導体の順に積層するとともに、前記第2の渦巻き状導体と前記第3の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数を、前記第1の渦巻き状導体と前記第3の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数、前記第2の渦巻き状導体と前記第4の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数より多くし、前記第2の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との距離を、前記第1の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との距離、および前記第2の渦巻き状導体と第4の渦巻き状導体との距離より大きくしたコモンモードノイズフィルタ。」
と訂正する。

(2)訂正事項2
願書に添付した明細書の段落【0011】に記載された
「本発明の請求項3に記載の発明は、複数の絶縁体層と、前記絶縁体層に形成された第1の渦巻き状導体および第2の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第1のコイルと、前記絶縁体層に形成された第3の渦巻き状導体および第4の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第2のコイルとを備え、前記第1の渦巻き状導体、第3の渦巻き状導体、第2の渦巻き状導体、第4の渦巻き状導体の順に積層するとともに、前記第2の渦巻き状導体と前記第3の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数を、前記第1の渦巻き状導体と前記第2の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数、前記第3の渦巻き状導体と前記第4の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数より多くし、前記第2の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との距離を、前記第1の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との距離、および前記第2の渦巻き状導体と第4の渦巻き状導体との距離より大きくしたもので、この構成によれば、第2の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との間の浮遊容量を低減できるため、浮遊容量によって特性インピーダンスが低下するのを防止でき、これにより、規定の特性インピーダンスが得られるという作用効果を有するものである。」
とあるのを、
「本発明の請求項3に記載の発明は、複数の絶縁体層と、前記絶縁体層に形成された第1の渦巻き状導体および第2の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第1のコイルと、前記絶縁体層に形成された第3の渦巻き状導体および第4の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第2のコイルとを備え、前記第1の渦巻き状導体、第3の渦巻き状導体、第2の渦巻き状導体、第4の渦巻き状導体の順に積層するとともに、前記第2の渦巻き状導体と前記第3の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数を、前記第1の渦巻き状導体と前記第3の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数、前記第2の渦巻き状導体と前記第4の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数より多くし、前記第2の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との距離を、前記第1の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との距離、および前記第2の渦巻き状導体と第4の渦巻き状導体との距離より大きくしたもので、この構成によれば、第2の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との間の浮遊容量を低減できるため、浮遊容量によって特性インピーダンスが低下するのを防止でき、これにより、規定の特性インピーダンスが得られるという作用効果を有するものである。」
と訂正する。

第4.当審の判断

1.訂正事項1について

(1)訂正の目的について
訂正事項1に係る訂正は、平成28年3月16日付けの手続補正において、特許請求の範囲の請求項3の記載ついて、明細書の段落【0036】に記載されているように、「・・前記第2の渦巻き状導体と前記第3の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数を、前記第1の渦巻き状導体と前記第3の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数、前記第2の渦巻き状導体と前記第4の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数より多くし・・」とすべきところを、「・・前記第2の渦巻き状導体と前記第3の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数を、前記第1の渦巻き状導体と前記第2の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数、前記第3の渦巻き状導体と前記第4の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数より多くし・・」と誤記してしまった(「第2」と「第3」が入れ替わっている)のを正しい記載に訂正するものである。
ここで、出願当初においては、明細書の段落【0036】等においても「第2」と「第3」が入れ替わった記載となっていた(なお、平成27年11月5日付け手続補正において正しい記載に補正された)が、例えば出願当初の明細書の段落【0041】?【0042】の記載、及び図4、図5によれば、第2の渦巻き状導体13と第3の渦巻き状導体15との「距離D」を、「距離d1」および「距離d2」より大きくするという技術事項を理解することができるところ、特に図4、図5によれば、「距離d1」についは、第1の渦巻き状導体12と第2の渦巻き状導体13との距離ではなく、正しくは第1の渦巻き状導体12と第3の渦巻き状導体15との距離であり、「距離d2」については、第3の渦巻き状導体15と第4の渦巻き状導体16との距離ではなく、正しくは第2の渦巻き状導体13と第4の渦巻き状導体16との距離である。
よって、特許請求の範囲の請求項3の上記記載について、正しくは「・・前記第2の渦巻き状導体と前記第3の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数を、前記第1の渦巻き状導体と前記第3の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数、前記第2の渦巻き状導体と前記第4の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数より多くし・・」と記載されるべきものであることは技術的にみても明らかなことである。

したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものであるといえる。

(2)新規事項の有無について
訂正事項1に係る訂正は、上記(1)で指摘したとおり誤記の訂正を目的とするものであり、明細書又は図面に記載されていたといえる事項であるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであること、すなわち新規事項を追加するものではないことは明らかである。

したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1に係る訂正は、上記(1)で指摘したとおり誤記の訂正を目的とするものであり、かかる訂正によって特許請求の範囲の内容が実質的に変更されるものではないことは明らかであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)独立特許要件について
訂正前の特許請求の範囲の請求項3、5に係る発明は拒絶理由を発見しないとして特許されたものであり、また、上記(1)(3)で指摘したとおり、訂正事項1に係る訂正は、誤記の訂正を目的とするものであって特許請求の範囲の内容が実質的に変更されるものではなく、新たな拒絶理由が生じるものでもないから、訂正後の特許請求の範囲の請求項3、5に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができる。

したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。

2.訂正事項2について

訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の訂正(上記訂正事項1に係る訂正)に対応して、当該特許請求の範囲の記載との整合を図るために明細書の記載を訂正するものであって、上記訂正事項1と同様、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものであるといえ、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するものであることは明らかである。

第5.むすび

以上のとおり、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
コモンモードノイズフィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器に使用されるコモンモードノイズフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のコモンモードノイズフィルタは、図10に示すように、積層された複数の絶縁体層1a?1gに形成された第1のコイル2と第2のコイル3とを有し、第1のコイル2は第1、第2の渦巻き状導体4a,4bを接続して構成され、第2のコイル3は第3、第4の渦巻き状導体5a,5bを接続して構成され、さらに、第1のコイル2を構成する渦巻き状導体4a,4bと第2のコイル3を構成する渦巻き状導体5a,5bを交互に配置した構成となっていた。また、最下面に設けられた絶縁体層1aと最上面に設けられた絶縁体層1gは磁性材料で構成され、他の絶縁体層1b?1fは非磁性材料で構成されていた。そして、第1の渦巻き状導体4aと第3の渦巻き状導体5aとを磁気結合させ、かつ第2の渦巻き状導体4bと第4の渦巻き状導体5bとを磁気結合させて、コモンモードノイズを除去するようにしていた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-373810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の高速デジタル信号伝送においては、信号の高速化に伴い伝送線路及びそこに使用される部品に対して、信号の反射、損失等によりデジタル信号が劣化しないようにインピーダンス整合が必要となっている。伝送線路の伝送インピーダンスを規定する量として、特性インピーダンスが規定されており、USBでは90Ω、HDMIでは100Ωが規定されている。
【0006】
しかしながら、上記した従来のコモンモードノイズフィルタにおいては、図11に示すように、互いに異なるコイルを構成する第3の渦巻き状導体5aと第2の渦巻き状導体4bとが積層方向に隣り合っているため、第3の渦巻き状導体5aと第2の渦巻き状導体4bとの間で浮遊容量C0が発生し、これにより、この浮遊容量C0によって特性インピーダンスが低下するため、各通信規格に応じた規定の特性インピーダンスが得られない場合があるという課題を有していた。なお、図11は、図10に示した従来のコモンモードノイズフィルタにおける等価回路で、各渦巻き状導体の積層方向の位置関係を示したものである。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、規定の特性インピーダンスを得ることができるコモンモードノイズフィルタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0009】
本発明の請求項1に記載の発明は、複数の絶縁体層と、前記絶縁体層に形成された第1の渦巻き状導体および第2の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第1のコイルと、前記絶縁体層に形成された第3の渦巻き状導体および第4の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第2のコイルとを備え、前記第1の渦巻き状導体、第3の渦巻き状導体、第2の渦巻き状導体、第4の渦巻き状導体の順に積層するとともに、前記第1、第3の渦巻き状導体の線幅より前記第2、第4の渦巻き状導体の線幅が細くなるようにしたもので、この構成によれば、第2の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との対向面積を狭くすることができるため、第2の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との間の浮遊容量を低減でき、これにより、浮遊容量によって特性インピーダンスが低下するのを防止でき、さらに、コイルのインダクタンス値を大きくすることができるため、特性インピーダンスを高くすることができ、これらの結果、規定の特性インピーダンスが得られるという作用効果を有するものである。
【0010】
本発明の請求項2に記載の発明は、複数の絶縁体層と、前記絶縁体層に形成された第1の渦巻き状導体および第2の渦巻き状導体からなる第1のコイルと、前記絶縁体層に形成された第3の渦巻き状導体および第4の渦巻き状導体からなる第2のコイルとを備え、前記第1の渦巻き状導体、第3の渦巻き状導体、第2の渦巻き状導体、第4の渦巻き状導体の順に積層するとともに、第3の渦巻き状導体と第2の渦巻き状導体との間の絶縁体層の誘電率を他の絶縁体層の誘電率より低くしたもので、この構成によれば、第2の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との間の浮遊容量を低減できるため、浮遊容量によって特性インピーダンスが低下するのを防止でき、これにより、規定の特性インピーダンスが得られるという作用効果を有するものである。
【0011】
本発明の請求項3に記載の発明は、複数の絶縁体層と、前記絶縁体層に形成された第1の渦巻き状導体および第2の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第1のコイルと、前記絶縁体層に形成された第3の渦巻き状導体および第4の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第2のコイルとを備え、前記第1の渦巻き状導体、第3の渦巻き状導体、第2の渦巻き状導体、第4の渦巻き状導体の順に積層するとともに、前記第2の渦巻き状導体と前記第3の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数を、前記第1の渦巻き状導体と前記第3の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数、前記第2の渦巻き状導体と前記第4の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数より多くし、前記第2の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との距離を、前記第1の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との距離、および前記第2の渦巻き状導体と第4の渦巻き状導体との距離より大きくしたもので、この構成によれば、第2の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との間の浮遊容量を低減できるため、浮遊容量によって特性インピーダンスが低下するのを防止でき、これにより、規定の特性インピーダンスが得られるという作用効果を有するものである。
【0012】
本発明の請求項4に記載の発明は、複数の絶縁体層と、前記絶縁体層に形成された第1の渦巻き状導体および第2の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第1のコイルと、前記絶縁体層に形成された第3の渦巻き状導体および第4の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第2のコイルとを備え、前記第1のコイルを構成する第1の渦巻き状導体と第2の渦巻き状導体との間に、前記第2のコイルを構成する第3の渦巻き状導体、第4の渦巻き状導体を積層したもので、この構成によれば、積層方向に隣り合う第3の渦巻き状導体と第4の渦巻き状導体が同一コイルを構成しているため、積層方向に隣り合うこれらの渦巻き状導体が同電位となり、これにより、積層方向に隣り合う渦巻き状導体間で浮遊容量は発生しないため、浮遊容量によって特性インピーダンスが低下するのを防止でき、規定の特性インピーダンスが得られるという作用効果を有するものである。
【0013】
本発明の請求項5に記載の発明は、特に、第1、第2のコイルの下方と上方に設けられた絶縁体層、および第2の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との間に設けられた絶縁体層を磁性材料で構成し、他の絶縁体層を非磁性材料で構成したもので、この構成によれば、磁気結合する第1の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との間、第2の渦巻き状導体と第4の渦巻き状導体との間を非磁性材料で構成し、これらの上下を磁性材料で構成しているため、コモンモードインピーダンスを大きくすることができ、これにより、多くのコモンモードノイズを除去できるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明のコモンモードノイズフィルタは、第1の渦巻き状導体、第3の渦巻き状導体、第2の渦巻き状導体、第4の渦巻き状導体の順に積層するとともに、前記第1、第3の渦巻き状導体の線幅より前記第2、第4の渦巻き状導体の線幅が細くなるようにしているため、第2の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との間の浮遊容量を低減でき、これにより、第2の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との対向面積を狭くすることができるため、浮遊容量によって特性インピーダンスが低下するのを防止でき、さらに、コイルのインダクタンス値を大きくすることができるため、特性インピーダンスを高くすることができ、これらの結果、規定の特性インピーダンスが得られるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【図2】同コモンモードノイズフィルタの斜視図
【図3】同コモンモードノイズフィルタの等価回路図
【図4】本発明の実施の形態2におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【図5】同コモンモードノイズフィルタの等価回路図
【図6】本発明の実施の形態3におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【図7】同コモンモードノイズフィルタの等価回路図
【図8】同コモンモードノイズフィルタと従来のコモンモードノイズフィルタとの特性インピーダンスを比較した図
【図9】同コモンモードノイズフィルタの他の例を示す分解斜視図
【図10】従来のコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【図11】同コモンモードノイズフィルタの等価回路図
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1、2に記載の発明について説明する。
【0017】
図1は本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図、図2は同コモンモードノイズフィルタの斜視図である。
【0018】
本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタは、図1、図2に示すように、第1?第5の絶縁体層11a?11eと、第1の絶縁体層11aに形成された第1の渦巻き状導体12および第3の絶縁体層11cに形成された第2の渦巻き状導体13からなる第1のコイル14と、第2の絶縁体層11bに形成された第3の渦巻き状導体15および第4の絶縁体層11dに形成された第4の渦巻き状導体16からなる第2のコイル17とを備え、前記第1の渦巻き状導体12、第3の渦巻き状導体15、第2の渦巻き状導体13、第4の渦巻き状導体16の順に積層するとともに、第2、第4の渦巻き状導体13,16の線幅を第1、第3の渦巻き状導体12,15の線幅より細くなるようにしたものである。さらに、第1の渦巻き状導体12の線幅と第3の渦巻き状導体15の線幅を略同一とし、かつ第2の渦巻き状導体13の線幅と第4の渦巻き状導体16の線幅とを略同一としている。
【0019】
そして、第1の渦巻き状導体12と第3の渦巻き状導体15とを磁気結合させ、さらに第2の渦巻き状導体13と第4の渦巻き状導体16とを磁気結合させて、コモンモードノイズを除去するようにしている。
【0020】
上記構成において、第1?第5の絶縁体層11a?11eは、下から第1の絶縁体層11a、第2の絶縁体層11b、第3の絶縁体層11c、第4の絶縁体層11d、第5の絶縁体層11eの順に積層され、また、Cu-Znフェライト、ガラスセラミック等の非磁性材料によりシート状に構成されている。
【0021】
さらに、前記第1?第4の渦巻き状導体12,13,15,16は、それぞれ銀等の導電材料を渦巻き状にめっきまたは印刷することにより形成されている。そして、第1の渦巻き状導体12は第1の絶縁体層11aの上面、第2の渦巻き状導体13は第3の絶縁体層11cの上面、第3の渦巻き状導体15は第2の絶縁体層11bの上面、第4の渦巻き状導体16は第4の絶縁体層11dの上面にそれぞれ形成されている。すなわち、第1のコイル14を構成する渦巻き状導体と第2のコイル17を構成する渦巻き状導体を交互に積層されている。ここで、上面視にて第1の渦巻き状導体12と第3の渦巻き状導体15の一部を略同じ位置に配置し、巻き方向も同一方向としている。同様に、上面視にて第2の渦巻き状導体13と第4の渦巻き状導体16の一部を略同じ位置に配置し、巻き方向も同一方向としている。さらに、第1、第3の渦巻き状導体12,15の線幅より第2、第4の渦巻き状導体13,16の線幅が細くなるようにしている。このとき、第1の渦巻き状導体12の線幅と第3の渦巻き状導体15の線幅は略同一で、かつ第2の渦巻き状導体13の線幅と第4の渦巻き状導体16の線幅は略同一となっている。
【0022】
また、第1の渦巻き状導体12と第2の渦巻き状導体13とは、第2の絶縁体層11b、第3の絶縁体層11cにそれぞれ形成された2つの第1のビア電極18を介して互いに接続され、第1のコイル14が構成される。さらに、第3の渦巻き状導体15と第4の渦巻き状導体16とは、第3の絶縁体層11c、第4の絶縁体層11dに形成された2つの第2のビア電極19を介して互いに接続され、第2のコイル17が構成される。
【0023】
なお、第1のビア電極18はそれぞれ上面視にて同じ位置に設けられ、第2のビア電極19もそれぞれ上面視にて同じ位置に設けられている。また、第1のビア電極18、第2のビア電極19は、絶縁体層の所定の箇所に、レーザで孔あけ加工をし、この孔に銀を充填して形成する。
【0024】
そして、第1の絶縁体層11aの下面、第5の絶縁体層11eの上面に、それぞれ第6の絶縁体層20が設けられているもので、この第6の絶縁体層20は、シート状に構成され、Ni-Cu-Znフェライト等の磁性材料で形成されている。また、第1?第6の絶縁体層11a?11e、20の枚数は、図1に示された枚数に限られるものではない。なお、第1の絶縁体層11a、第3の絶縁体層11c、第5の絶縁体層11eを磁性材料で構成すれば、非磁性の絶縁体層と磁性の絶縁体層を交互に形成することになり、これにより、両者の収縮率が異なっても焼成するときにクラックが生じるのを防止できる。
【0025】
そして、上記した構成により、コモンモードノイズフィルタの本体部21が形成される。また、この本体部21の両側面には、第1?第4の外部電極22?25が設けられ、そしてこの第1?第4の外部電極22?25はそれぞれ第1?第4の渦巻き状導体12,13,15,16と接続されている。さらに、前記第1?第4の外部電極22?25は、本体部21の端面に銀を印刷することにより形成され、またこれらの表面にめっきによってニッケルめっき層を形成するとともに、このニッケルめっき層の表面にめっきによってすずやはんだ等の低融点金属めっき層を形成する。
【0026】
図3は、上記した本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタの等価回路図である。
【0027】
図3からも明らかなように、第1の外部電極22および第3の外部電極24から入ってくるコモンモードノイズに対して、第1の渦巻き状導体12と第3の渦巻き状導体15とが磁気結合し、かつ第2の渦巻き状導体13と第4の渦巻き状導体16とが磁気結合し、コモンモードノイズを除去できる。なお、各渦巻き状導体の積層方向の位置関係を示した等価回路は図11に示したものと同じである。
【0028】
上記したように本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタにおいては、第1の渦巻き状導体12、第3の渦巻き状導体15、第2の渦巻き状導体13、第4の渦巻き状導体16の順に積層するとともに、第1、第3の渦巻き状導体12,15の線幅より第2、第4の渦巻き状導体13,16の線幅が細くなるようにしているため、第2の渦巻き状導体13と第3の渦巻き状導体15との対向面積を小さくすることができ、これにより、第2の渦巻き状導体13と第3の渦巻き状導体15との間の浮遊容量を低減できるため、浮遊容量によって特性インピーダンスが低下するのを防止でき、さらに、コイルのインダクタンス値を大きくすることができるため、特性インピーダンスを高くすることができ、これらの結果、規定の特性インピーダンスが得られるという効果が得られるもの
である。
【0029】
ここで、近年の高速差動信号データ伝送に用いられている伝送線路の特性インピーダンスは、一般に、USB2.0で90Ω±15%(76.5Ω?103.5Ω)、HDMIで100Ω±15%(85Ω?115Ω)となるように要求されている。すなわち、この伝送線路上に配置されるコモンモードノイズフィルタにおいても特性インピーダンスが前述の規定の範囲内であれば信号の反射、損失が少なく信号の劣化が防げる。そして、特性インピーダンスは√(L/C)に比例する(Lは伝送線路の単位長さあたりのコイルのインダクタンス値、Cは単位長さあたりコイル間の容量)ため、従来のように2つのコイル間の浮遊容量が大きい場合は、特性インピーダンスが低下し、上記の規定の範囲より低くなる場合がある。これに対し、本発明では、第1、第3の渦巻き状導体12,15の線幅より第2、第4の渦巻き状導体13,16の線幅を細くし、第2の渦巻き状導体13と第3の渦巻き状導体15との対向面積を小さくすることによって、第2の渦巻き状導体13と第3の渦巻き状導体15との間(第1のコイル14と第2のコイル17との間)の浮遊容量を低減するのと同時に、第1のコイル14と第2のコイル17のそれぞれの一部の線幅を狭くすることによって、第1のコイル14と第2のコイル17のそれぞれのインダクタンス値を大きくしている。すなわち、Cを小さく、Lを大きくして、特性インピーダンスを高くしている。
【0030】
なお、上記構成において、第1、第3の渦巻き状導体12,15の線幅より第2、第4の渦巻き状導体13,16の線幅が細い、というのは、第1?第4の渦巻き状導体12,13,15,16の線幅がすべて略同一の場合に対して、第2、第4の渦巻き状導体13,16のみの線幅を細くなるように変更したことをいう。したがって、第2、第4の渦巻き状導体13,16のみの線幅を細くすれば、第1?第4の渦巻き状導体12,13,15,16の線幅がすべて略同一の場合より、第2の渦巻き状導体13と第3の渦巻き状導体15との対向面積が小さくなり、浮遊容量を低減できる。
【0031】
このとき、線幅を細くするのは、第2、第4の渦巻き状導体13,16のみではなく第1、第3の渦巻き状導体12,15のみであってもよい。この場合、第1のコイル14を構成する第1の渦巻き状導体12と第2の渦巻き状導体13のうち一方、第2のコイル17を構成する第3の渦巻き状導体15と第4の渦巻き状導体16のうち一方の線幅を細くするようにする。第1のコイル14のインピーダンス、直流抵抗値と第2のコイル17のインピーダンス、直流抵抗値を整合させる必要があるためである。
【0032】
なお、上記本発明の実施の形態1において、第3の渦巻き状導体15と第2の渦巻き状導体13との間の絶縁体層11cの誘電率を他の絶縁体層の誘電率より低くすれば、第2の渦巻き状導体13と第3の渦巻き状導体15との間の浮遊容量を低減できるため、浮遊容量によって特性インピーダンスが低下するのを防止でき、より確実に規定の特性インピーダンスが得られる。
【0033】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項3に記載の発明について説明する。
【0034】
図4は本発明の実施の形態2におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図である。なお、この本発明の実施の形態2においては、上記した本発明の実施の形態1と同様の構成を有するものについては、同一符号を付しており、その説明は省略する。
【0035】
本発明の実施の形態2が上記した本発明の実施の形態1と相違する点は、図4に示すように、第2の渦巻き状導体13と第3の渦巻き状導体15との距離を、第1の渦巻き状導体12と第3の渦巻き状導体15との距離、および第2の渦巻き状導体13と第4の渦巻き状導体16との距離より大きくした点である。
【0036】
このとき、少なくとも第2?第4の絶縁体層11b?11dの厚みを略同じにし、第2の渦巻き状導体13と第3の渦巻き状導体15との間の第3の絶縁体層11cの枚数を、第1の渦巻き状導体12と第3の渦巻き状導体15との間の第2の絶縁体層11bの枚数、第2の渦巻き状導体13と第4の渦巻き状導体16との間の第4の絶縁体層11dの枚数より多くしている。
【0038】
なお、実施の形態2では、必ずしも第1?第4の渦巻き状導体12,13,15,16の線幅を異なるようにする必要はない。
【0039】
そして、この本発明の実施の形態2においては、図3に示した回路と同じ等価回路となり、第1の外部電極22および第3の外部電極24から入ってくるコモンモードノイズに対して、第1の渦巻き状導体12と第3の渦巻き状導体15とが磁気結合し、かつ第2の渦巻き状導体13と第4の渦巻き状導体16とが磁気結合し、コモンモードノイズを除去できる。
【0040】
また、図5は、本発明の実施の形態2における等価回路で各渦巻き状導体の積層方向の位置関係を示したものである。
【0041】
上記した実施の形態2においては、図4、図5に示すように、第2の渦巻き状導体13と第3の渦巻き状導体15との距離Dを、第1の渦巻き状導体12と第3の渦巻き状導体15との距離d1より大きく、かつ第2の渦巻き状導体13と第4の渦巻き状導体16との距離d2より大きくしているため、第2の渦巻き状導体13と第3の渦巻き状導体15との間隔を広くでき、これにより、第2の渦巻き状導体13と第3の渦巻き状導体15との間の浮遊容量を低減できるため、浮遊容量によって特性インピーダンスが低下するのを防止でき、規定の特性インピーダンスが得られるという効果が得られるものである。
【0042】
また、第1の渦巻き状導体12と第3の渦巻き状導体15との間隔、第2の渦巻き状導体13と第4の渦巻き状導体16との間隔を狭くすることができるため、第1の渦巻き状導体12と第3の渦巻き状導体15との磁気結合、第2の渦巻き状導体13と第4の渦巻き状導体16との磁気結合を強めることができ、これにより、より多くのコモンモードノイズを除去できる。
【0043】
(実施の形態3)
以下、実施の形態3を用いて、本発明の特に請求項4、5に記載の発明について説明する。
【0044】
図6は本発明の実施の形態3におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図である。なお、この本発明の実施の形態3においては、上記した本発明の実施の形態1と同様の構成を有するものについては、同一符号を付しており、その説明は省略する。
【0045】
本発明の実施の形態3が上記した本発明の実施の形態1と相違する点は、図6に示すように、第1のコイル14を構成する渦巻き状導体と第2のコイル17を構成する渦巻き状導体を交互に積層するのではなく、第1のコイル14を構成する第1の渦巻き状導体12と第2の渦巻き状導体13との間に、第2のコイル17を構成する第3の渦巻き状導体15、第4の渦巻き状導体16を積層した点である。
【0046】
このとき、第1の渦巻き状導体12と第2の渦巻き状導体13とは、第2の絶縁体層11b?第4の絶縁体層11dにそれぞれ形成された3つの第1のビア電極18を介して互いに接続し、第1のコイル14を構成する。さらに、第3の渦巻き状導体15と第4の渦巻き状導体16とは、第3の絶縁体層11cに形成された1つの第2のビア電極19を介して互いに接続し、第2のコイル17を構成する。
【0047】
なお、実施の形態3でも、必ずしも第1?第4の渦巻き状導体12,13,15,16の線幅を異なるようにする必要はない。
【0048】
そして、この本発明の実施の形態3においても、図3に示した回路と同じ等価回路となり、第1の外部電極22および第3の外部電極24から入ってくるコモンモードノイズに対して、第1の渦巻き状導体12と第3の渦巻き状導体15とが磁気結合し、かつ第2の渦巻き状導体13と第4の渦巻き状導体16とが磁気結合し、コモンモードノイズを除去できる。
【0049】
また、図7は、本発明の実施の形態3における等価回路で各渦巻き状導体の積層方向の位置関係を示したものである。
【0050】
上記した実施の形態3においては、図7に示すように、積層方向に隣り合う第3の渦巻き状導体15と第4の渦巻き状導体16が同一コイル17を構成しているため、積層方向に隣り合うこれらの渦巻き状導体15,16が同電位となり、これにより、積層方向に隣り合う渦巻き状導体15,16間で浮遊容量は発生しないため、浮遊容量によって特性インピーダンスが低下するのを防止でき、規定の特性インピーダンスが得られるという効果が得られるものである。
【0051】
図8は、本発明の実施の形態3におけるコモンモードノイズフィルタと従来のコモンモードノイズフィルタとの特性インピーダンスを比較した図である。なお、伝送線路としてUSB2.0を用い、その特性インピーダンスの規定値は90Ω±15%である。
【0052】
図8から明らかなように、本発明の特性インピーダンスが従来の特性インピーダンスより高くなり、そして、一般に使用される伝送信号の周波数100MHz?1GHzにおいては、従来の特性インピーダンスでは規定値を外れる場合があるが、本発明の特性インピーダンスでは規定値を外れることはないことが分かる。
【0053】
また、図9に示すように、第1の渦巻き状導体12の下方と第2の渦巻き状導体13の上方に設けられた第6の絶縁体層20、および第3の渦巻き状導体15と第4の渦巻き状導体16との間に設けられた第3の絶縁体層11cと、第1の絶縁体層11a、第5の絶縁体層11eを磁性材料で構成し、他の絶縁体層11b,11dを非磁性材料で構成すれば、磁気結合する第1の渦巻き状導体12と第3の渦巻き状導体15との間、第2の渦巻き状導体13と第4の渦巻き状導体16との間を非磁性材料で構成し、これらの上下を磁性材料で構成できるため、コモンモードインピーダンスを大きくすることができ、これにより、多くのコモンモードノイズを除去できる。
【0054】
なお、図9に示すように、非磁性材料で構成された第2、第4の絶縁体層11b,11dにおける、第2、第3の渦巻き状導体13,15の渦巻きの内側にそれぞれ磁性材料からなる磁性部26を、上面視にて互いに同じ位置になるように設けるようにしてもよい。これにより、第1のコイル14と第2のコイル17の間を交差する磁界を強めることができるため、第1のコイル14、第2のコイル17のコモンモード成分のインピーダンスを大きくすることができる。
【0055】
そして、磁性部26は、第2、第4の絶縁体層11b,11dの所定の箇所に、レーザで孔あけ加工をし、この孔にNi-Cu-Znフェライト等の磁性材料を充填して形成する。また、第1のビア電極18、第2のビア電極19および磁性部26は互いに上面視にて接触しないようにする。
【0056】
このとき、第2の絶縁体層11bと第4の絶縁体層11dは、同じ非磁性材料で構成され、かつ第1のビア電極18、磁性部26の形成箇所が同じであるため、それぞれを別々に作製する必要はなく、これにより、生産性を向上させることができる。また、磁性部26は、図6に示したコモンモードノイズフィルタの非磁性材料で構成された絶縁体層に形成してもよい。
【0057】
なお、上記した本発明の実施の形態1?3においては、第1のコイル14、第2のコイルと17をそれぞれ1つ設けたものについて説明したが、2つ以上設けてアレイタイプとしてもよい。
【0058】
また、第1、第2のコイル14,17をそれぞれ構成する渦巻き状導体を2つとし、4つの渦巻き状導体を積層したものについて説明したが、第1、第2のコイル14,17をそれぞれ構成する渦巻き状導体を3つ以上とし、6つ以上の渦巻き状導体を積層するようにしてもよい。この場合も、上記実施の形態1?3と同様の構成を採用すれば、規定の特性インピーダンスが得られるという効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係るコモンモードノイズフィルタは、規定の特性インピーダンスが得られるという効果を有するものであり、特にデジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器のノイズ対策として使用されるコモンモードノイズフィルタ等において有用となるものである。
【符号の説明】
【0060】
11a?11e 第1?第5の絶縁体層
12 第1の渦巻き状導体
13 第2の渦巻き状導体
14 第1のコイル
15 第3の渦巻き状導体
16 第4の渦巻き状導体
17 第2のコイル
20 第6の絶縁体層
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層と、前記絶縁体層に形成された第1の渦巻き状導体および第2の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第1のコイルと、前記絶縁体層に形成された第3の渦巻き状導体および第4の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第2のコイルとを備え、前記第1の渦巻き状導体、第3の渦巻き状導体、第2の渦巻き状導体、第4の渦巻き状導体の順に積層するとともに、前記第1、第3の渦巻き状導体の線幅より前記第2、第4の渦巻き状導体の線幅が細くなるようにしたコモンモードノイズフィルタ。
【請求項2】
複数の絶縁体層と、前記絶縁体層に形成された第1の渦巻き状導体および第2の渦巻き状導体からなる第1のコイルと、前記絶縁体層に形成された第3の渦巻き状導体および第4の渦巻き状導体からなる第2のコイルとを備え、前記第1の渦巻き状導体、第3の渦巻き状導体、第2の渦巻き状導体、第4の渦巻き状導体の順に積層するとともに、第3の渦巻き状導体と第2の渦巻き状導体との間の絶縁体層の誘電率を他の絶縁体層の誘電率より低くしたコモンモードノイズフィルタ。
【請求項3】
複数の絶縁体層と、前記絶縁体層に形成された第1の渦巻き状導体および第2の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第1のコイルと、前記絶縁体層に形成された第3の渦巻き状導体および第4の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第2のコイルとを備え、前記第1の渦巻き状導体、第3の渦巻き状導体、第2の渦巻き状導体、第4の渦巻き状導体の順に積層するとともに、前記第2の渦巻き状導体と前記第3の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数を、前記第1の渦巻き状導体と前記第3の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数、前記第2の渦巻き状導体と前記第4の渦巻き状導体との間の前記絶縁体層の枚数より多くし、前記第2の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との距離を、前記第1の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との距離、および前記第2の渦巻き状導体と第4の渦巻き状導体との距離より大きくしたコモンモードノイズフィルタ。
【請求項4】
複数の絶縁体層と、前記絶縁体層に形成された第1の渦巻き状導体および第2の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第1のコイルと、前記絶縁体層に形成された第3の渦巻き状導体および第4の渦巻き状導体を直列に接続することによって構成された第2のコイルとを備え、前記第1のコイルを構成する第1の渦巻き状導体と第2の渦巻き状導体との間に、前記第2のコイルを構成する第3の渦巻き状導体、第4の渦巻き状導体を積層したコモンモードノイズフィルタ。
【請求項5】
第1、第2のコイルの下方と上方に設けられた絶縁体層、および第2の渦巻き状導体と第3の渦巻き状導体との間に設けられた絶縁体層を磁性材料で構成し、他の絶縁体層を非磁性材料で構成した請求項1?3のいずれかに記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項6】
第1、第2のコイルの下方と上方に設けられた絶縁体層、および第3の渦巻き状導体と第4の渦巻き状導体との間に設けられた絶縁体層を磁性材料で構成し、他の絶縁体層を非磁性材料で構成した請求項4に記載のコモンモードノイズフィルタ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-11-11 
結審通知日 2016-11-15 
審決日 2016-11-28 
出願番号 特願2011-238362(P2011-238362)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (H01F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小池 秀介堀 拓也  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 井上 信一
関谷 隆一
登録日 2016-07-08 
登録番号 特許第5961814号(P5961814)
発明の名称 コモンモードノイズフィルタ  
代理人 鎌田 健司  
代理人 前田 浩夫  
代理人 鎌田 健司  
代理人 前田 浩夫  

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