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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H03F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H03F |
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管理番号 | 1322606 |
審判番号 | 不服2015-19834 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-11-04 |
確定日 | 2017-01-04 |
事件の表示 | 特願2013-220918「汎用オーディオ電力増幅器」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月23日出願公開、特開2014- 14195、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成23年(2011年)2月11日(パリ条約による優先権主張 2010年3月4日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2012-556086号の一部を新たに特許出願したものであって、手続の概要は以下のとおりである。 平成25年10月24日 特許出願 平成26年 7月25日 拒絶理由通知 平成26年10月17日 意見書、手続補正書 平成27年 3月11日 拒絶理由通知 平成27年 6月11日 意見書、手続補正書 平成27年 8月11日 拒絶査定 平成27年11月 4日 審判請求、手続補正書 平成28年 1月29日 前置報告 平成28年 8月31日 拒絶理由通知 平成28年10月18日 意見書、手続補正書 第2.特許請求の範囲の記載 本願の特許請求の範囲の記載は、平成28年10月18日付けの手続補正書の特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 第1および第2の増幅ユニットであって、それぞれの増幅ユニットが、コマンド信号入力と増幅された信号出力とを有するD級スイッチング電圧増幅器 と、前記電圧増幅器の前記コマンド信号入力に結合された電流補償コマンド信号出力を有する電流補償器と、出力インダクタにおいて測定された電流の測定値を前記電流補償器の加算入力にフィードバックする内側電流フィードバックループとを備える増幅ユニットと、 同期出力整流器を有する4象限電源であって、前記第1および第2の増幅ユ ニットに電力を提供する4象限電源と、 前記第1および第2の増幅ユニットの間に位置する第1の制御信号経路で あって、前記第1の増幅ユニットの電圧補償コマンド信号出力を前記第2の増幅ユニットの前記電流補償器の前記加算入力に提供する、第1の制御信号経路と、 前記第1および第2の増幅ユニットへの信号入力を提供し、前記第1および第2の増幅ユニットが2つのモードの各々で動作可能なように、前記第1および第2の増幅ユニットを制御する制御電子装置と、 を備え、前記2つのモードは、 前記第1の増幅ユニットが第1の信号を増幅し、 前記第2の増幅ユニットが前記第1の制御信号経路を介して前記第1の信号を増幅し、 前記第1および第2の増幅ユニットの前記増幅された信号出力が第1の共通負荷の単一の端子を並列に駆動する、第1のモードと、 前記第1の増幅ユニットが第1の信号を増幅し、 前記第2の増幅ユニットが前記第1の信号の反転を増幅し、 前記第1および第2の増幅ユニットの前記増幅された信号出力がブリッジ接続された負荷構成における第1の共通負荷の相反する端子を駆動する、第2 のモードと、 を備えるオーディオ電力増幅器。 【請求項2】 前記制御電子装置は、前記第1の増幅ユニットが第1の信号を増幅し第1の負荷を駆動するとともに前記第2の増幅ユニットが第2の信号を増幅し第2の負荷を駆動する第3のモードで、前記第1および第2の増幅ユニットが動作可能なように、前記第1および第2の増幅ユニットに信号入力を提供するとともに前記第1および第2の増幅ユニットを制御する、請求項1に記載のオーディオ電力増幅器。 【請求項3】 前記第1および第2の増幅ユニットとは実質的に同一である第3および第4の増幅ユニットと、 前記第3および第4の増幅ユニットの間に位置する第2の制御信号経路で あって、前記第3の増幅ユニットの電圧補償コマンド信号出力を前記第4の増幅ユニットの電流補償器の加算入力に提供する、第2の制御信号経路とを備え、 前記制御電子装置は、前記第3および第4の増幅ユニットへの信号入力を提供し、前記第3および第4の増幅ユニットが2つのモードの各々で動作可能なように、前記第3および第4の増幅ユニットを制御し、前記2つのモードは、 前記第3の増幅ユニットが第2の信号を増幅し、 前記第4の増幅ユニットが前記第2の制御信号経路を介して前記第2の信号を増幅し、 前記第3および第4の増幅ユニットの前記増幅された信号出力が第2の共通負荷の単一の端子を並列に駆動する、第1のモードと、 前記第3の増幅ユニットが第2の信号を増幅し、 前記第4の増幅ユニットが前記第2の信号の反転を増幅し、 前記第3および第4の増幅ユニットの前記増幅された信号出力がブリッジ接続された負荷構成における第2の共通負荷の前記相反する端子を駆動する、第2のモードと、 を備える請求項1に記載のオーディオ電力増幅器。 【請求項4】 前記制御電子装置は、前記第3の増幅ユニットが第3の信号を増幅し第3の負荷を駆動するとともに前記第4の増幅ユニットが第4の信号を増幅し第4の負荷を駆動する第3のモードで、前記第3および第4の増幅ユニットが動作可能なように、前記第3および第4の増幅ユニットに信号入力を提供するとともに前記第3および第4の増幅ユニットを制御する、請求項3に記載のオーディオ電力増幅器。 【請求項5】 前記制御電子装置は、 前記第1の増幅ユニットが前記第1の信号を増幅し、前記第2の増幅ユニットが前記第1の制御信号経路を介して前記第1の信号を増幅し、前記第1および第2の増幅ユニットの前記増幅された信号出力がブリッジ接続された負荷構成における前記第1の共通負荷の一方の端子を並列に駆動し、 前記第3の増幅ユニットが前記第1の信号の反転を増幅し、前記第4の増幅ユニットが前記第2の制御信号経路を介して前記第1の信号の反転を増幅し、前記第3および第4の増幅ユニットの前記増幅された信号出力がブリッジ接続された負荷構成における前記第1の共通負荷のもう一方の端子を並列に駆動する第4のモードで、前記第1乃至第4の増幅ユニットが動作可能なように、前記第1乃至第4の増幅ユニットに信号入力を提供するとともに前記第1乃至第4の増幅ユニットを制御する、請求項3に記載のオーディオ電力増幅器。 【請求項6】 前記同期出力整流器は、MOSFETからなる、請求項1に記載のオーディオ電力増幅器。 【請求項7】 前記第1の制御信号経路は、前記制御電子装置によって制御されるスイッチからなる、請求項5に記載のオーディオ電力増幅器。 【請求項8】 前記D級スイッチング電圧増幅器はそれぞれが、変調器と、ゲートドライバと、1対のトランジスタと、前記トランジスタのソース端子とドレイン端子の間に結合された1対のダイオードとからなる、請求項1に記載のオーディオ電力増幅器。 【請求項9】 前記トランジスタはMOSFETからなり、前記ダイオードは前記MOSFETに固有である、請求項8に記載のオーディオ電力増幅器。 【請求項10】 同期出力整流器を有する4象限電源と、 前記電源から電力を受ける増幅ユニットであって、前記増幅ユニットがコマンド信号入力と増幅された信号出力とを有するD級スイッチング電圧増幅器と、前記電圧増幅器の前記コマンド信号入力に結合された電流補償コマンド信号出力を有する電流補償器と、出力インダクタにおいて測定された電流の測定値を前記電流補償器の加算入力にフィードバックする内側電流フィードバックループとを備える増幅ユニットと、 前記増幅ユニットと他の増幅ユニットの間に位置する制御信号経路であって、前記増幅ユニットの電圧補償コマンド信号出力を前記他の増幅ユニットの前記電流補償器の前記加算入力に提供する、制御信号経路と、 前記増幅ユニットへの信号入力を提供し、前記増幅ユニットが信号を増幅し、ハーフブリッジ構成における負荷を駆動することが動作可能なように、前記増幅ユニットを制御する制御電子装置と、 を備え 前記D級スイッチング電圧増幅器が、変調器と、ゲートドライバと、1対のトランジスタと、前記トランジスタのソース端子とドレイン端子の間に結合された1対のダイオードとからなる、オーディオ電力増幅器。 【請求項11】 前記同期出力整流器は、MOSFETからなる、請求項10に記載のオーディオ電力増幅器。 【請求項12】 前記トランジスタはMOSFETからなり、前記ダイオードは前記MOSFETに固有である、請求項10に記載のオーディオ電力増幅器。」 第3.当審の拒絶理由 平成28年8月31日付けで通知した当審の拒絶理由の概要は、特許請求の範囲の請求項の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないというものである。 上記「第2.特許請求の範囲の記載」に記載した、特許請求の範囲の各請求項に係る発明は、補正によって発明の詳細な説明に記載されたものとな り、当審の拒絶理由は解消した。 したがって、特許請求の範囲の記載に不備はないので、本願の請求項1-12に係る発明は、平成28年10月18日付けの手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項によって特定されるとおりのものである。 第4.原査定の理由の概要 原査定の理由となった平成27年3月11日付けで通知された拒絶理由の概要は、本願の請求項1-12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1-11に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 引用文献1-11及び備考として記載された具体的な理由は以下のとおりである。 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開2004-215371号公報 2.特表2009-528011号公報 3.特開2002-151978号公報 4."Data sheet, TAS5142 Stereo Digital Amplifier Power Stage, SLES126B" ,[online online ],2005年 5月,Texas Instruments ,[平成26年7月24日検索],インターネット<URL:http://www.ti.com/lit/ds/symlink/tas5142.pdf> 5.実願昭47-109959号(実開昭49-066338号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム 6.実願昭58-140747号(実開昭60-047316号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム 7.特開2009-253524号公報 8.実願昭60-120907号(実開昭62-030414号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム 9.特開昭49-046701号公報 10.特表2004-538694号公報 11.特開2008-283462号公報 「 備 考 引用文献1?3の全体の記載を参照。 引用文献1の図4のものは、図6?図7を参照して説明されている従来技術のように、デジタルアンプ部の電源回路として用いられるものである。 引用文献1に記載されている各実施の形態のものは、ポンピング動作による悪影響を除去することができるものであり、引用文献1には、第0011段落、第0014?0015段落のような説明が記載されている。 引用文献2の図12?図14の各図のものは、D級アンプの電力供給装置として用いられるものであり、ポンピングを除去又は低減するものである。 引用文献1には、その図4のものが4象限電源であるとの明示的な記載はないが、図4に図示されている構成及び各「スイッチング素子」の導通状態についての説明、特に、「出力トランス19」の二次側の回路の構成及び各「スイッチング素子」の導通状態についての説明からみれば、その図4のものは4象限電源であるといえる。 また、引用文献2には、図12?図14の各図に示されるものが4象限電源であるとの明示的な記載はないが、図12?図14の各図に図示されている構成及び図15に図示されている制御信号のタイミングからみれば、引用文献2の図12?図1の各図に示されるものは4象限電源であるといえる。 仮に、そこまでいえないとしても、引用文献3を参照すれば、引用文献1の図4のものを4象限電源として動作するように変更すること、引用文献2の図11?図14の各図のものを4象限電源として動作するように変更することは、当業者であれば適宜なし得ることである。 引用文献3には、双方向に電流を流し得る同期整流回路を採用した絶縁型DC-DCコンバータをPWM電力増幅器の電源として採用するようにした技術思想が記載されている。特に、引用文献2には、図1に示される回路構成、第0008?0010段落のような説明が記載されている。 複数の増幅器を用意しておき、シングルエンド増幅による複数チャンネルの増幅、並列接続による増幅、BTL接続による増幅、並列接続及びBTL接続による増幅のような様々な増幅形態のうちのいくつかを選択できるように構成することは、周知である。例えば、引用文献4?9を参照。 デジタルアンプ、D級アンプの構成としては、引用文献10?11記載のもののような構成が知られいている。 よって、請求項1?12に係る発明は、引用文献1?11に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。」 第5.当審の判断 1.引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。 (1)「 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は出力が電源から絶縁されたPWM電力増幅器に関するものであ る。 【0002】 【従来の技術】 PWM電力増幅器の従来の課題の一つは増幅器本体ではなく電源部分に あった。PWM電力増幅器自体は小型軽量であるが電源部分まで含めると必ずしも小型軽量ではなかった。電源部分は与えられた電源電圧を増幅器に必要な電圧に変換する機能を持つ。また増幅器の出力を電源から絶縁する機能も持つ。後者は必須機能ではないが増幅器の出力が電源から絶縁されていると出力の任意の一方の端子を接地する、あるいは他の電圧源に接続できるので有用性が高まる。商用交流電源を使う場合、商用周波数(50/60H z)の変圧器を使うと簡単に上記機能を実現できるが変圧器等が大型にな る。スイッチング電源を使えば小型にできるが増幅器本体よりもむしろ電源部分によって回路規模が増える。またスイッチングノイズの増大、電源部分のスイッチングと増幅器本体のスイッチングの干渉という問題が発生する。電池電源の場合は電池の電圧と、出力に必要な電圧とが異なる場合が多いのでDC-DCコンバータの採用が望まれるが、DC-DCコンバータもス イッチング電源の一種なのでやはり上記問題が避けられない。多数の電池を直列接続して所望の電圧を用意する例も多い。結局、与えられた電源を電圧変換も絶縁もすることなく直接にスイッチングする構成が可能な用途以外ではPWM電力増幅器の利点は活かされなかった。」 (2)「 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 出力が電源から絶縁されたPWM電力増幅器を電源部分まで含めて小型化する。 【0006】 【課題を解決するための手段】 双方向に電流を流し得る同期整流回路を採用した絶縁型DC-DCコン バータに、このコンバータのスイッチング信号と同期した搬送波信号で動作するPWM電力増幅器を接続する。 【0007】 同期整流回路はMOSFETなどダイオード以外のオンオフ可制御素子を使った整流回路である。交流電圧に同期させてゲートを駆動するため同期整流の名がある。ダイオードを使った整流回路よりオン電圧が小さく損失を小さくできる特長があり、特に出力電圧の低い直流電源装置によく採用されている。またMOSFETを使った同期整流回路には双方向に電流を流し得るという特徴もある。この特徴はダイオードにはないもので扱い難い性質とみなされる場合もあった。本発明では後者の性質を利用することで平滑コンデンサの小容量化とスナバ回路の簡潔化を可能にしている。 【0008】 絶縁型DC-DCコンバータにおいて変圧器の二次側の整流回路に同期整流回路を採用し双方向の電流が流れ得るようにすると、負荷からの逆流電流は変圧器の一次側に移ることができる。一次側スイッチング回路をプッシュプルまたはハーフブリッジ型とし、デューティーサイクルを完全に50%でふたつのスイッチを交互にオンオフさせると変圧器には正負対称の方形波が入力され、二次側で整流した波形は平滑コンデンサなしでも完全な直流となる。しかも常に一次二次共にどれかのスイッチが導通しているので負荷からの逆流電流もまた常に一次側に移ることができる。この理想的な条件では平滑コンデンサなしでも逆流電流による直流電圧の上昇は発生しない。実際にはデッドタイム等のため完全に50%のデューティーサイクルは実現でき ず、わずかな電圧の落ち込みと一次二次間非導通の期間が発生する。平滑コンデンサはこのわずかな期間の電圧保持ができれば十分である。」 したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 双方向に電流を流し得る同期整流回路を採用し、負荷からの逆流電流は変圧器の一次側に移ることができる絶縁型DC-DCコンバータに接続した、PWM電力増幅器。 2.対比 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と、引用発明とを対比する。 引用発明はPWM電力増幅器であるから、本願発明の「D級スイッチング電圧増幅器」と同様のものを備える増幅ユニットを有するといえ、電力増幅器である点で共通する。 引用発明の「絶縁型DC-DCコンバータ」は、「双方向に電流を流し得る同期整流回路を採用し、負荷からの逆流電流は変圧器の一次側に移ることができる」ものであるから、本願発明の「同期出力整流器を有する4象限電源」に対応し、「PWM電力増幅器」に接続されるので、本願発明と同様 に、「増幅ユニットに電力を提供する」ものであることは明らかである。 したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、以下の点で一致し、また相違する。 (1)一致点 増幅ユニットであって、コマンド信号入力と増幅された信号出力とを有するD級スイッチング電圧増幅器を備える増幅ユニットと、 同期出力整流器を有する4象限電源であって、前記増幅ユニットに電力を提供する4象限電源と、 を備える電力増幅器。 (2)相違点1 「増幅ユニット」が、本願発明は「第1および第2の増幅ユニットであっ て」とするものであり、「D級スイッチング電圧増幅器」のほかに、「前記 電圧増幅器の前記コマンド信号入力に結合された電流補償コマンド信号出力を有する電流補償器と、出力インダクタにおいて測定された電流の測定値を前記電流補償器の加算入力にフィードバックする内側電流フィードバック ループ」を備えるものであるのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。 (3)相違点2 本願発明は、「第2の増幅ユニット」の「電流補償器」に関連して、「前 記第1および第2の増幅ユニットの間に位置する第1の制御信号経路であっ て、前記第1の増幅ユニットの電圧補償コマンド信号出力を前記第2の増幅ユ ニットの前記電流補償器の前記加算入力に提供する、第1の制御信号経路」を備えるのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。 (4)相違点3 本願発明は、「第1の制御信号経路」に関連して、「前記第1および第2の増幅ユニットへの信号入力を提供し、前記第1および第2の増幅ユニットが2つのモードの各々で動作可能なように、前記第1および第2の増幅ユニットを制御する制御電子装置と、 を備え、前記2つのモードは、 前記第1の増幅ユニットが第1の信号を増幅し、 前記第2の増幅ユニットが前記第1の制御信号経路を介して前記第1の信号を増幅し、 前記第1および第2の増幅ユニットの前記増幅された信号出力が第1の共通負荷の単一の端子を並列に駆動する、第1のモードと、 前記第1の増幅ユニットが第1の信号を増幅し、 前記第2の増幅ユニットが前記第1の信号の反転を増幅し、 前記第1および第2の増幅ユニットの前記増幅された信号出力がブリッジ接続された負荷構成における第1の共通負荷の相反する端子を駆動する、第2のモードと、 を備える」とするのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。 (5)相違点4 電力増幅器が、本願発明は、「オーディオ電力増幅器」であるのに対し て、引用発明ではオーディオとの特定がない点。 3.相違点の判断 上記相違点について検討する。 本願発明は、負荷の単一の端子を並列に駆動する「第1のモード」におい て、「第1の制御信号経路」を介して信号を増幅するものであり、「第1の制御信号経路」は、「電流補償器」に関連したものであるから、出力インダクタにおいて測定された電流の測定値を電流補償器の加算入力にフィードバックする「内側電流フィードバックループ」に配慮して、「第1のモード」の動作が行われるものといえる。 「第4.原査定の理由の概要」に示したように、平成27年3月11日付けで通知された拒絶理由には、 「 複数の増幅器を用意しておき、シングルエンド増幅による複数チャンネルの増幅、並列接続による増幅、BTL接続による増幅、並列接続及びBTL接続による増幅のような様々な増幅形態のうちのいくつかを選択できるように構成することは、周知である。例えば、引用文献4?9を参照。 デジタルアンプ、D級アンプの構成としては、引用文献10?11記載のもののような構成が知られいている。」 と記載された引用文献4-11が引用されている。 仮に、負荷の単一の端子を並列に駆動するモードと、ブリッジ接続された負荷構成における共通負荷の相反する端子を駆動するモードとの、2つの モードの各々で動作可能なように、増幅ユニットを制御することが、引用発明において可能であるとしても、出力インダクタにおいて測定された電流の測定値をフィードバックすることについて、上記引用文献4-11には記載も示唆もない。 また、引用文献1及び2には、デジタルアンプの電源回路に関する発明が記載されているが、出力インダクタにおいて測定された電流の測定値を フィードバックすることについては記載も示唆もない。 したがって、引用発明において、「内側電流フィードバックループ」に関する特定のある相違点1、及びそれに関連する相違点2、3を本願発明のようにすることは、当業者が容易にできることとはいえないから、相違点4について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 また、請求項2-9は請求項1を引用するものであり、請求項10は、請求項1と同様の「内側電流フィードバックループ」に関する特定と、「第1の制御信号経路」に対応する「制御信号経路」の特定がなされており、請求項11及び12は請求項10を引用するものであるから、それらの請求項に係る発明も本願発明と同様に、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 第5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1-12に係る発明は、引用文献1-11に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-12-19 |
出願番号 | 特願2013-220918(P2013-220918) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H03F)
P 1 8・ 537- WY (H03F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 白井 孝治 |
特許庁審判長 |
北岡 浩 |
特許庁審判官 |
山本 章裕 加藤 恵一 |
発明の名称 | 汎用オーディオ電力増幅器 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 阿部 達彦 |
代理人 | 村山 靖彦 |