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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06T
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06T
管理番号 1322637
審判番号 不服2016-9129  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-20 
確定日 2017-01-04 
事件の表示 特願2014-247759「画像処理装置、画像処理方法及びコンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月20日出願公開、特開2016-110416、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年12月8日の出願であって、平成27年12月24日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月26日付けで手続補正がされ、平成28年3月14日付けで拒絶査定がされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として、平成28年6月20日付けで請求された拒絶査定不服審判であり、請求と同時に手続補正がされ、その後、当審において、平成28年8月24日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成28年10月28日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成28年10月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される以下のものと認められる。
なお、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)のA?Jについては、説明のために当審にて付したものである。
(以下、「構成A」、・・・、「構成J」という。)
「【請求項1】
A マトリクス状に配列した複数の画素からなる一連の複数の画像を取得する手段と、
B 取得された複数の画像に撮影されている人物の顔及び該顔内の器官の領域を特定する特定手段とを備え、
C 予め記憶されているリップ、チーク、カラーコンタクト、アイライン、又はつけまつげの写真画像である化粧用画像を前記特定手段により特定された領域に重畳させる画像処理装置において、
D 前記複数の画像夫々について、該画像に写っている人物が複数である場合、複数の顔領域に対し、前記特定手段が特定した領域に基づき、該特定した領域に対応する化粧用画像の前記画像上の位置、大きさ、又は角度を決定する決定手段と、
E 該決定手段が決定した大きさ又は角度に基づき、前記特定した領域に対応する化粧用画像の一部又は全部を拡縮又は回転して変形する変形手段と、
F 前記決定手段が決定した位置及び前記変形手段で変形された化粧用画像を記憶する手段と、
G 複数の人物からの個別の操作を受け付ける画面上にて夫々、前記複数の画像の内の1つの画像毎に、前記化粧用画像の重畳対象として画像内で特定された複数の人物の顔の領域の内の1つを個別に選択するか、前記複数の人物の顔の領域全てとするかの選択を受け付ける個別/全部選択手段と、
H 該個別/全部選択手段にて個別に選択することが選択された場合に、前記1つの画像に写っている前記複数の顔領域の内、重畳対象とする顔領域を1つずつ切り替える切替手段と、
I 前記個別/全部選択手段にて受け付けた選択に応じて全ての顔領域又は前記切替手段により切り替えられた1つの重畳対象の顔領域に対し、前記決定手段により決定した位置に、変形された化粧用画像を重畳させる重畳手段と
J を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記重畳手段により前記化粧用画像が重畳された後、前記複数の画像の内のいずれか1つの画像に対して前記個別/全部選択手段にて再度選択を受け付け、
該個別/全部選択手段にて異なる選択を受け付けた場合、該異なる選択に応じて1又は複数の領域に対し、前記重畳手段により化粧用画像を再重畳させる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
取得された画像及び重畳される画像を表示する表示手段と、
重畳された後の前記化粧用画像を、ボリュームの多少、透明度、濃淡、明暗、又は混色割合を複数段階に変更させ、段階順に前記表示手段に表示させ、表示させた複数段階の前記化粧用画像から何れかの選択を受け付ける選択手段と
を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記化粧用画像のボリュームの多少、透明度、濃淡、明暗、又は混色割合を複数段階に変更させて夫々記憶しておく段階別画像記憶手段を備え、
前記選択手段は、記憶してある複数段階の化粧用画像を段階順に前記段階別画像記憶手段から取得して表示する
ことを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
マトリクス状に配列した複数の画素からなる一連の複数の画像を取得し、取得した複数の画像に撮影されている人物の顔及び該顔内の器官の領域を特定し、予め記憶されているリップ、チーク、カラーコンタクト、アイライン、又はつけまつげの写真画像である化粧用画像を特定された領域に重畳させる画像処理方法において、
前記複数の画像夫々について、該画像に写っている人物が複数である場合、複数の顔領域における特定された領域に基づき、該特定された領域に対応する化粧用画像の前記画像上の位置、大きさ、又は角度を決定するステップ、
決定された大きさ又は角度に基づき、前記特定された領域に対応する化粧用画像の一部又は全部を拡縮又は回転するステップ、
決定された位置、及び、拡縮又は回転された前記化粧用画像を記憶するステップ、
複数の人物からの個別の操作を受け付ける画面上にて夫々、前記複数の画像の内の1つの画像毎に、前記化粧用画像の重畳対象として画像内で特定された複数の人物の顔の領域の内の1つを個別に選択するか、前記複数の人物の顔の領域全てとするかの選択を受け付ける個別/全部選択ステップ、
該個別/全部選択ステップにて個別に選択することが選択された場合に、前記1つの画像に写っている前記複数の顔領域の内、重畳対象とする顔領域を1つずつ切り替える操作を受け付けるステップ、並びに、
前記個別/全部選択ステップにて受け付けた選択に応じて全ての顔領域又は切り替えられた1つの重畳対象の顔領域に対し、決定された位置に、拡縮又は回転された化粧用画像を重畳させるステップ
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
コンピュータに、マトリクス状に配列した複数の画素からなる一連の複数の画像を取得させ、取得された複数の画像に撮影されている人物の顔及び該顔内の器官の領域を特定させ、予め記憶されているリップ、チーク、カラーコンタクト、アイライン、又はつけまつげの写真画像である化粧用画像を特定された領域に重畳させるコンピュータプログラムにおいて、
前記コンピュータに、
前記複数の画像夫々について、該画像に写っている人物が複数である場合、複数の顔領域における特定された領域に基づき、該特定された領域に対応する化粧用画像の前記画像上の位置、大きさ、又は角度を決定するステップ、
決定された大きさ又は角度に基づき、前記特定された領域に対応する化粧用画像の一部又は全部を拡縮又は回転するステップ、
決定された位置、および、拡縮又は回転された前記化粧用画像を記憶するステップ、
複数の人物からの個別の操作を受け付ける画面上にて夫々、前記複数の画像の内の1つの画像毎に、前記化粧用画像の重畳対象として画像内で特定された複数の人物の顔の領域の内の1つを個別に選択するか、前記複数の人物の顔の領域全てとするかの選択を受け付ける個別/全部選択ステップ、
該個別/全部選択ステップにて個別に選択することが選択された場合に、前記1つの画像に写っている前記複数の顔領域の内、重畳対象とする顔領域を1つずつ切り替える操作を受け付けるステップ、並びに、
前記個別/全部選択ステップにて受け付けた選択に応じて全ての顔領域又は切り替えられた1つの重畳対象の顔領域に対し、決定された位置に、拡縮又は回転された化粧用画像を重畳させるステップ
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。」

第3 拒絶査定(以下、「原査定」という。)の理由について
1.原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用例1.特開2007-257165号公報
引用例2.特開2013-186801号公報
引用例3.特開2012-181688号公報
引用例4.特開2012-098808号公報
引用例5.特開2014-211642号公報

2.原査定の理由の判断
原査定の備考欄では、出願当初の請求項1に出願当初の請求項4の構成を追加した平成28年2月26日付け手続補正後の請求項1に係る発明に対して、出願当初の請求項4に対する拒絶理由通知に引用された引用例5に関する出願人の意見書における主張に対しての反論が記載されていることから、手続補正後の請求項1に対しては、引用例5を主引例として判断することが妥当であると認められるので、以下では、引用例5を主引例として検討することとする。

(1)引用例の記載事項
(1-1)引用例5
原査定の拒絶の理由に引用例5として引用された特開2014-211642号公報には、「写真撮影編集機、写真撮影編集機の処理方法、並びにプログラム」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

【0010】
本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、利用者にとってより満足度の高い画像を提供することができるようにするとともに、その画像に対する編集の指示をより簡便に行えるようにすることができるようにするものである。

【発明の効果】
【0029】
本技術の一側面によれば、利用者にとってより満足度の高い画像を提供することができるようにするとともに、その画像に対する編集の指示をより簡便に行えるようになる。また、利用者によっては、多くの画像処理を行うことを面倒に感じることがあるが、本技術によれば、撮影画像に多くの画像処理を施す指示を簡便に出すことができ、画像処理が施された撮影画像を確認しながら行えるようになるため、利用者が面倒に感じることなく、画像処理を行え、利用者の満足度を増すことが可能となる。

【0034】
写真シール作成装置1が提供するゲームで遊ぶ利用者は、代金を投入し、自身が被写体となって撮影を行い、撮影によって得られた撮影画像の中から選択した編集対象の画像に対して、手書きの線画やスタンプ画像を合成する編集機能を用いて編集を行うことにより、撮影画像を彩り豊かな画像にする。利用者は、編集済みの画像が印刷されたシール紙を受け取って一連のゲームを終了させることになる。

【0154】
[撮影処理の例]
次に、図18、図19のフローチャートを参照して、上述した写真シール作成ゲームの一連の処理におけるステップS2の撮影処理の流れの例を説明する。

【0159】
撮影タイミングになったとき、ステップS35において、撮影画像取得部314は、カメラ91を制御して下カメラアップ撮影を行い、静止画像である撮影画像(下カメラアップ画像)を取得する。

【0163】
図18のフローチャートに戻り、ステップS36の後、ステップS37において、進行制御部311は、撮影を所定回数繰り返し行ったか否かを判定する。ステップS37において撮影を所定回数行っていないと判定された場合、処理はステップS33に戻り、上述の処理を繰り返し行う。具体的には、3回の下カメラアップ撮影が行われるまで、上述の処理が繰り返される。

【0187】
図19のステップS53において、撮影パラメータ設定部312は、撮影画像に写る利用者の目のサイズや明るさなどの選択に用いられる選択画面を、タッチパネルモニタ93に表示させ、目のサイズや明るさなどを変更する変更処理を実行する。このステップS53において実行される変更処理については、図29のフローチャートを参照して後述する。

【0212】
[目のサイズや明るさの変更に関する変更処理について]
図29のフローチャートを参照し、図19のステップS53において実行される目のサイズや明るさの変更に関する変更処理について説明する。図29を参照して説明する変更処理は、ここでは変更処理1と記述する。

【0220】
なおここでは、目の大きさや明るさの変更が行われるとして説明を続けるが、顔の大きさ、髪の毛の色、化粧の濃淡、肌の色なども変更できるようにしても良い。複数の変更が行えるように構成した場合については、後述する。
【0221】
なお、目の大きさ、明るさ、顔の大きさ、髪の毛の色、化粧の濃淡、肌の色などの画像処理は、それぞれ顔の部位が認識され、その部分に対する処理が施されることで実現される。例えば、目の大きさは、撮影された利用者の顔の領域から、目の領域を抽出し、その目の領域を拡大または縮小することで、目の大きさが変更される。
【0222】
また、顔の領域を抽出するようにした場合、その抽出した顔の領域を変更することで、顔の大きさを変更することができる。また、顔の領域から、さらに髪の領域を抽出し、その抽出した領域内の色を変更することで、髪の毛の色を変更することができる。
【0223】
さらに、同じように、頬、額、鼻、顎といった領域を抽出するし、それぞれの領域内の色を、適切な色に変更することで、肌の色を調整することができる。この際、同一の調整を行うよりも個別に異なる調整が行われるのがよい。例えば、利用者により肌の色は黒めと指示されたときに、抽出された全領域を同様に黒くするのではなく、それぞれの部位に応じた黒色に変更される方が、より良い。
【0224】
また、化粧の濃淡も、頬を抽出し、その領域に頬紅を濃くまたは薄く塗る、目を抽出しアイラインを濃く入れる、または薄く入れるなどすることで行われる。また、明るさは、画像全体の明るさを調整する場合、画像全体の色合いを変更することで行われる。
【0225】
このように、利用者が所望した画像処理は、撮影画像内の対応する部分毎に行われる。

【0238】
[目のサイズや明るさの変更に関する変更処理2について]
次に、目のサイズや明るさを決定するときの他の処理(ここでは、第2の変更処理と記述する)について説明する。図31は、第2の変更処理について説明するためのフローチャートである。ステップS201において、撮影パラメータ設定部312は、撮影画像に写る利用者の目のサイズと明るさの選択に用いられる目サイズ、明るさ選択画面を、タッチパネルモニタ93に表示させる。
【0239】
図32は、利用者自身が写されている撮影画像を使用して、被写体の目のサイズと明るさを一画面で選択することができる選択画面の例を示す図である。また、図32に示した選択画面は、それぞれの撮影画像に対して個別に目のサイズなどを設定できるように構成されている。
【0240】
図32に示した選択画面は、図30に示した選択画面と基本的な構成は同様である。すなわち、図32に示した選択画面には、撮影の結果得られた撮影画像551が表示される。例えば、撮影を6回行ったときには、6枚の撮影画像が得られており、選択画面では、6枚の撮影画像551-1乃至551-6が、画面の上側に表示される。撮影画像551-1乃至551-6は、撮影されたままの画像であるが、目のサイズなどの変更が指示された後は、その指示に基づく変更が施された画像とされる。
【0241】
選択画面の下側には、3つの目サイズ選択ボタン552-1乃至552-3が図中右側から順に表示される。これらの目サイズを変更するための目サイズ選択ボタン552-1乃至552-3の下側には明るさを選択するための明るさ選択ボタン553-1乃至553-5が表示されている。5つの明るさ選択ボタン553-1乃至553-5は、図中右側から順に表示され、明るさの異なるモデルがそれぞれ表示されている。
【0242】
“OK”との表記がされた決定ボタン554は、目の大きさや明るさの変更を確定するときに操作されるボタンである。
【0243】
図32に示した選択画面には、さらにアンカー555が表示されている。アンカー555は、変更対象とされている画像上に表示される。図32に示した例では、撮影画像551-1上に、アンカー555が位置している。アンカー555が位置している撮影画像(図32の例の場合、撮影画像551-1)が編集対象とされ、例えば、目サイズ選択ボタン552-3が操作されたときには、撮影画像551-1内の利用者の目が、大きな目に変更され、利用者に提示される。
【0244】
利用者は、アンカー555が位置している画像を見ることで、変更後の画像を確認することができる。さらに確認を行いやすいように、アンカー555が位置する撮影画像は、拡大されて表示されるようにしても良い。例えば、図33に示すように、アンカー555が、撮影画像551-1に位置しているときには、その撮影画像551-1が拡大された拡大画像561が、画面中央に表示され、他の画像に重畳された状態で表示される。
【0245】
このように拡大画像561を利用者に提示することで、利用者は、変更された目のサイズや明るさなどを確認しやすくなる。ここでは、このような拡大画像561が表示されるとして説明を続ける。
【0246】
なお、拡大画像561は、中央に表示が限定されるのではなく、選択された撮影画像551(アンカー555が位置している撮影画像551)の下側などの近傍に表示されるようにしても良い。またその際、重畳されて表示されても良いし、重畳している部分が無い状態で表示されても良い。さらに、拡大画像561が表示される専用の領域を選択画面内に設け、その領域に、拡大画像561が表示されるようにしても良い。
【0247】
図31のフローチャートの説明に戻り、ステップS201において、図32に示したような撮影画像に写る利用者の目のサイズと明るさの選択に用いられる選択画面が、タッチパネルモニタ93に表示される。なお、デフォルトの画面として、図32に示した選択画面が表示され、利用者が、撮影画像551-1乃至551-6のなかから、いずれかの撮影画像551を選択すると、図33に示したように拡大画像561が表示されるようにしても良い。この場合、ステップS201においては、図32に示したような選択画面が表示される。
【0248】
または、図33に示したような選択画面が、デフォルトの画面として表示されるようにしても良い。この場合、ステップS201においては、図33に示したような選択画面が表示される。デフォルトの選択画面において拡大画像531は、左端に位置する撮影画像551-1、中央に位置する撮影画像551-3、または右端に位置する撮影画像551-6が拡大された画像とされる。
【0249】
ステップS202において、変更対象の画像が選択されたか否かが判定される。変更対象の画像が選択されたと判定された場合、処理はステップS203に進められる。ステップS203において、選択された撮影画像551の拡大画像561が選択画面上に表示される。
【0250】
なおここでは、1枚ずつ選択され、1枚ずつ処理が施される例を示して説明を続けるが、複数枚選択できるようにし、選択された複数枚の画像に対して目のサイズの変更や明るさの変更が施されるようにしても良い。
【0251】
ステップS204において、目サイズの選択ボタンが操作されたか否かが判定される。このステップS204乃至S211までの処理は、図29に示したフローチャートのステップS152乃至S159と同様に行われるので、その詳細な説明は省略する。ただし、以下の点が異なるため、異なる部分について説明を加える。
【0252】
ステップS205において、撮影画像の目のサイズを変更するが、この場合、拡大画像561とその拡大画像561として表示されている撮影画像511の被写体の目のサイズのみが変更される。図29を参照して説明した変更においては、一括して6枚の撮影画像の目のサイズが変更されるとして説明したが、図32または図33を参照して説明した変更においては、変更対象とされている1枚の撮影画像の目のサイズが変更される。
【0253】
同様に、ステップS208において、撮影画像の明るさを変更するが、拡大画像561とその拡大画像561として表示されている撮影画像511の明るさのみが変更され、変更対象とされていない他の撮影画像は、変更されない。
【0254】
このように、第2の変更処理においては、1枚ずつ目のサイズや明るさが変更できるように処理される。利用者は、1枚ずつ好みの目のサイズや明るさに撮影画像を変更でき、満足する画像を得ることができるようになる。

【0288】
[目のサイズや明るさの変更に関する変更処理5について]
次に、目のサイズや明るさを決定するときの他の処理(ここでは、第5の変更処理と記述する)について説明する。第1乃至第4の変更処理においては、撮影画像内の被写体(利用者)が、複数人であっても、個別に目のサイズや明るさが設定されるのではなく、同じ変更が、複数の被写体に施される例を挙げて説明した。
【0289】
第5の変更処理として、複数の被写体が撮影されたときには、それぞれの被写体に対して、異なる変更を施すことが可能としたときを例に挙げて説明する。ここでは、2人の利用者が被写体として撮影された場合を例に挙げて説明する。また、第1乃至第4の変更処理においては、目のサイズと顔の明るさを変更する場合を例に挙げて説明したが、その他の変更も行えるため、第5の変更処理としては、目のサイズと顔の明るさの変更に加え、ヘアカラーと顔の大きさの変更も行える場合を例に挙げて説明する。
【0290】
図38、図39は、第5の変更処理について説明するためのフローチャートである。ステップS501において、顔の切り出しが行われる。そして、ステップS502において、撮影パラメータ設定部312は、選択画面を、タッチパネルモニタ93に表示させる。
【0291】
例えば、撮影された撮影画像が6枚あるとき、その6枚の撮影画像のうちの所定の1枚が選択され、その選択された撮影画像から、被写体の顔の部分が切り出される。これは、図40に示す選択画面を表示させるために行われる。図40に示した選択画面について説明する。
【0292】
選択画面の上部には、被写体画像表示部701と被写体画像表示部702が設けられている。被写体画像表示部701,702に表示される画像は、ステップS501の処理で所定の撮影画像から切り出された被写体の画像である。なお、被写体が切り出される画像自体も利用者が選択できるようにしても良い。例えば、図37などに示したように、撮影画像651-1乃至651-6を利用者に提示し、利用者が選択した撮影画像651から、被写体が切り出され、被写体画像表示部701と被写体画像表示部702にそれぞれ表示されるようにしても良い。
【0293】
被写体画像表示部701の下側には、被写体画像表示部701に表示されている被写体の目の大きさや明るさなどを変更するための選択ボタンが表示されている選択ボタン表示部703が設けられている。同様に、被写体画像表示部702の下側には、被写体画像表示部702に表示されている被写体の目の大きさや明るさなどを変更するための選択ボタンが表示されている選択ボタン表示部704が設けられている。
【0294】
選択ボタン表示部703内の選択ボタンと、選択ボタン表示部704内の選択ボタンは、同様なので、ここでは、選択ボタン表示部703内の選択ボタンについて説明を加える。まず、選択ボタン表示部703の上部には、3つの目サイズ選択ボタン711-1乃至711-3が図中右側から順に表示される。これらの目サイズを変更するための目サイズ選択ボタン711-1乃至711-3の下側には明るさを選択するための明るさ選択ボタン712-1乃至712-5が表示されている。
【0295】
明るさ選択ボタン712-1乃至712-5の下側には、ヘアカラーを選択するためのヘアカラー選択ボタン713-1乃至713-5が表示されている。ヘアカラー選択ボタン713-1乃至713-5は、図中右側から順に、濃い色のヘアカラーから薄い色のヘアカラーに変更するボタンとされている。
【0296】
ヘアカラー選択ボタン713-1乃至713-5の下側には、顔の大きさを選択するための顔サイズ選択ボタン714-1乃至714-3が表示されている。顔サイズ選択ボタン714-1乃至714-3は、図中右側から順に、自然な顔サイズ、小顔、小顔よりもさらに小顔(極小)に変更するボタンとされている。
【0297】
“OK”との表記がされた決定ボタン515は、目の大きさなどの変更を確定するときに操作されるボタンである。このような構成の選択ボタン表示部703と同様のボタンとボタン配置を有する選択ボタン表示部704が、被写体画像表示部702に表示されている利用者用にも表示される。
【0298】
このような選択画面が、ステップS502(図38)において表示されると、ステップS503に処理が進められる。なお、ステップS503以降の処理は、選択ボタン表示部703内の選択ボタンが操作されたときと、選択ボタン表示部704内の選択ボタンが操作されたときとで、それぞれ独立して行われる。ここでは、選択ボタン表示部703内の選択ボタンが操作された場合を例に挙げて説明する。
【0299】
ステップS503において、目サイズの選択ボタンが操作されたか否かが判定される。このステップS503乃至508までの処理は、図29に示したフローチャートのステップS152乃至S159と同様に行われるので、その詳細な説明は省略する。ただし、以下の点が異なるため、異なる部分について説明を加える。
【0300】
ステップS504において、撮影画像の目のサイズを変更するが、この場合、被写体画像表示部701に表示されている被写体と、全ての撮影画像に含まれる該被写体と同一の被写体の目のサイズを変更する。顔認証により、目の大きさなどの顔の特徴を判別し、被写体画像表示部701または被写体画像表示部702のそれぞれに表示されている被写体を抽出するようにしても良い。
【0301】
なお、全ての撮影画像に対する変更は、決定ボタン515が操作された時点で行われるようにしても良い。すなわち後述するステップS516における処理で、全ての撮影画像に対する変更が行われるようにしても良い。
【0302】
同様に、ステップS507において、撮影画像の明るさを変更するが、この場合、被写体画像表示部701と、表示はされていないが、この被写体画像表示部701に表示されている被写体を含む全ての撮影画像の被写体の明るさが変更される。
【0303】
このように目のサイズや明るさが変更されると同様に、ヘアカラーや顔サイズも変更される。まず、ステップS509(図39)において、へアカラーの選択ボタンが操作されたか否かが判定される。すなわち、ステップS509において、利用者が、選択画面のヘアカラー選択ボタン713-1乃至713-5のいずれかに対する操作(タッチ)を行ったか否かが判定される。ステップS509において、ヘアカラー選択ボタン713-1乃至713-5のいずれかに対する操作(タッチ)が行われたと判定された場合、ステップS510に処理が進められる。
【0304】
ステップS510において、撮影パラメータ設定部312は、タッチパネルモニタ93から供給された情報に基づいて、ヘアカラーの色を選択する。ステップS510において、利用者により選択されたヘアカラーの色に、被写体画像表示部701に表示されている被写体の画像が変更される。表示はされていないが、この被写体画像表示部701に表示されている被写体を含む全ての撮影画像の被写体のヘアカラーが変更される。
【0305】
ステップS511において、撮影パラメータ設定部312は、ヘアカラーを変更した画像を被写体画像表示部701に表示し、ヘアカラーの変更結果を利用者に確認させる。このようなヘアカラーに関する処理が行われるか、またはステップS509において、ヘアカラー選択ボタン713-1乃至713-5のいずれも操作されていないと判定された場合、ステップS512に処理が進められる。
【0306】
ステップS512において、利用者が、選択画面の顔サイズ選択ボタン714-1乃至714-3のいずれかに対する操作(タッチ)を行ったか否かが判定される。ステップS512において、顔サイズ選択ボタン714-1乃至714-3のいずれかに対する操作(タッチ)が行われたと判定された場合、ステップS513に処理が進められる。
【0307】
ステップS513において、撮影パラメータ設定部312は、タッチパネルモニタ93から供給された情報に基づいて、顔のサイズを選択する。ステップS513において、撮影パラメータ設定部312は、利用者により選択された顔のサイズの被写体になるように、被写体画像表示部701に表示されている被写体の画像を変更する。表示はされていないが、この被写体画像表示部701に表示されている被写体を含む全ての撮影画像の被写体の顔のサイズが変更される。
【0308】
ステップS514において、撮影パラメータ設定部312は、顔のサイズを変更した被写体画像表示部701に表示し、顔サイズの変更結果を利用者に確認させる。このような顔サイズに関する処理が行われるか、またはステップS512において、顔サイズ選択ボタン714-1乃至714-3のいずれも操作されていないと判定された場合、ステップS515に処理が進められる。
【0309】
ステップS515において、撮影パラメータ設定部312は、決定ボタン715が操作されたか否かをタッチパネルモニタ93から供給された情報に基づいて判定し、操作されていないと判定した場合、ステップS503(図38)に戻り、上述の処理を繰り返す。
【0310】
一方、ステップS515において、決定ボタン715が操作されたと判定された場合、ステップS516において、撮影パラメータ設定部312は、被写体の目のサイズ、明るさ、ヘアカラー、顔のサイズを決定し、決定した各種の変更に関わる情報を記憶部202などに記憶させて保存する。
【0311】
ステップS516の処理が終了すると、撮影処理は終了され、処理は図17のステップS2に戻る。なお、目サイズ選択処理および明るさ選択処理は、撮影処理においてではなく、編集空間において行われる編集処理において実行されるようにしてもよい。
【0312】
なお、第1乃至第4の変更処理においても、ヘアカラーや顔サイズを変更するヘアカラー選択ボタン713や顔サイズ選択ボタン714と同様のボタン、または同様の機能を有する設定部を設けることで、第5の変更処理と同じく、ヘアカラーや顔サイズを変更することが可能である。

上記記載(特に、下線で示した記載。なお、下線は当審が付したものである。)及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、引用例5には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。
なお、引用発明のa?fについては、説明のために当審にて付したものである。(以下、「構成a」、・・・、「構成f」という。)

a カメラを制御して、撮影を所定回数行い、撮影画像を取得し、
b 撮影された利用者の顔の領域を抽出し、さらに、目、髪、頬、額、鼻、顎の領域を抽出し、
c 目の領域について拡大又は縮小によって目の大きさを変更し、
髪、頬、額、鼻、顎の領域について領域内の色を適切な色に変更し、
頬に頬紅を塗り、目にアイラインを入れることにより化粧を行うことにより、
利用者が所望する画像処理を行う写真撮影編集機において、
d 撮影を6回行って得られた6枚の撮影画像のうち、利用者が1枚を変更対象として選択し、目の大きさ、明るさ、ヘアカラー、顔サイズについて、変更対象として選択された1枚の撮影画像の変更したい箇所を選択し、変更したい箇所に変更を施し、複数人であっても、同じ変更が施される第2の変更処理と、
e 撮影を6回行って得られた6枚の撮影画像のうち、利用者が1枚を選択し、選択された撮影画像から、顔の部分を切り出し、切り出された被写体の画像を表示し、目の大きさ、明るさ、ヘアカラー、顔サイズについて、それぞれの被写体に対して、変更したい箇所を選択し、変更したい箇所に変更を施し、該被写体と、全ての撮影画像に含まれる該被写体と同一の被写体について変更する第5の変更処理
f を含む写真撮影編集機。

(1-2)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用例1として引用された特開2007-257165号公報には、被験者の顔画像を取得し、肌、眉、目、唇領域の形状を取得し、肌、眉、目の形状と位置に基づいて、Tゾーンやコントロールカラーやアイシャドウ等のパターンが被験者に適合するように自動制御され、化粧アイテムごとのシミュレーション画像用パターンを順次重ね、化粧顔のシミュレーション画像を形成するメイクアップシミュレーションシステムが記載されている(段落0007、0008、0020、0033?0043を参照。)

(1-3)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用例2として引用された特開2013-186801号公報には、撮影画像から顔画像を検出し、顔画像から顔器官を検出し、顔器官の位置及び大きさに基づいて、顔器官に応じた実際のメイクの状態であるメイク支援情報を重ね合わせる画像処理装置が記載されている(請求項1、請求項2、段落0014、0015、0018?0022、0026、0027を参照。)

(1-4)引用例3
原査定の拒絶の理由に引用例3として引用された特開2012-181688号公報には、撮像画像の顔、顔パーツを認識し、顔パーツの位置、姿勢に対応させて化粧画像を変形させ、化粧画像をユーザの顔パーツに重畳する情報処理装置が記載されている(段落0024、0025、0028、0036、0039?0049を参照。)。

(1-5)引用例4
原査定の拒絶の理由に引用例4として引用された特開2012-98808号公報には、顔画像を検出し、目、口、鼻等の顔の器官の特徴を検出し、メーキャップ基本形状を各特徴に応じて、大きさや形状を調整し、合成する画像処理装置が記載されている(段落0043?0045、0049、0051、0059、0062?0064、0081、0095、0104を参照。)

(2)対比
本願発明と引用発明を対比する。

(2-1)本願発明の構成Aについて
引用発明の構成aの「撮影画像」は、カメラを制御して撮影されたものであるから、本願発明の構成Aの「マトリクス状に配列した複数の画素からなる」「画像」に相当し、引用発明の構成aは「撮影回数を所定回数行」うことから、取得された「撮影画像」は、本願発明の構成Aのように、「一連の複数の画像」である。したがって、引用発明の構成aは、本願発明の構成Aに相当する。

(2-2)本願発明の構成Bについて
引用発明の構成bの「目、髪、頬、額、鼻、顎」は、本願発明の「顔内の器官」に相当し、「顔の領域を抽出」及び「目、髪、頬、額、鼻、顎の領域を抽出」するためには、当該領域がどこであるかを特定する必要があるので、本願発明の構成Bのように、「取得された複数の画像に撮影されている人物の顔及び該顔内の器官の領域を特定する特定手段とを備え」ているものである。

(2-3)本願発明の構成Cについて
引用発明の構成cは、
「目の領域について拡大又は縮小によって目の大きさを変更し、
髪、頬、額、鼻、顎の領域について領域内の色を適切な色に変更し、
頬に頬紅を塗り、目にアイラインを入れることにより化粧を行うことにより、
利用者が所望する画像処理を行う」
構成を含むものであるが、撮影画像に対して、目の大きさや色を変更したり、頬紅を塗るとかアイラインを入れることにより化粧を行うということは、顔の領域の一部の領域の大きさや色を異なる大きさや色に変更することであるから、本願発明の構成Cのように、「予め記憶されているリップ、チーク、カラーコンタクト、アイライン、又はつけまつげの写真画像である化粧用画像を前記特定手段により特定された領域に重畳させる」ものではないが、特定された領域に画像処理を行うという点で共通するものである。
また、引用発明の構成cの「写真撮影編集機」は、「画像処理を行う」ものであるから、本願発明の構成Cの「画像処理装置」に相当する。
したがって、引用発明の構成cと、本願発明の構成Cは、「前記特定手段により特定された領域に画像処理を行う画像処理装置」という点で共通する。

(2-4)本願発明の構成D?構成Fについて
引用発明は、上記(2-2)で検討したように、本願発明の構成Bのように、「取得された複数の画像に撮影されている人物の顔及び該顔内の器官の領域を特定する特定手段」を備えるものであるが、当該特定手段が特定した領域に基づき、化粧用画像の位置、大きさ、角度を決定し、化粧用画像を拡縮又は回転して変形し、変形された化粧用画像を記憶するものではなく、引用発明は、本願発明の構成D、構成E、構成Fに対応する構成を有しない。

(2-5)本願発明の構成Gについて
引用発明は、構成eの「第5の変更処理」、構成dの「第2の変更処理」という複数の変更処理を含むものであり、構成eの「第5の変更処理」は、各被写体の顔の領域に対して、個別に変更しているものであるから、「画像内で特定された複数の人物の顔の領域の内の1つを個別に選択する」点で、本願発明の構成Gと共通し、構成dの「第2の変更処理」は、各被写体の顔の領域に対して、同じ変更が施されるものであるから、「複数の画像の内の1つの画像毎に、」化粧させる「対象として画像内で特定された」「複数の人物の顔の領域全てとする」点で共通するといえる。

しかし、引用発明の構成eの「第5の変更処理」は、全ての撮影画像に含まれる同一の被写体について変更するものであるから、本願発明の構成Gのように、「複数の画像の内の1つの画像毎に、」「画像内で特定された複数の人物の顔の領域の内の1つを個別に選択する」構成を有しておらず、さらに、引用発明は、「第2の変更処理」と「第5の変更処理」のいずれを選択するかを受け付ける選択手段を有するものではなく、引用発明は、本願発明の構成Gに対応する「個別/全部選択手段」を有しない。

(2-6)本願発明の構成H、構成Iについて
上記(2-5)で検討したように、引用発明は、本願発明の構成G、すなわち、個別/全部選択手段を有する構成ではないため、該個別/全部選択手段での選択に応じて行う手段である本願発明の構成H、構成Iに対応する構成を有しない。

(2-7)本願発明の構成Jについて
上記(2-3)で検討したように、引用発明の「写真撮影編集機」は、「画像処理を行う」ものであるから、本願発明の「画像処理装置」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

[一致点]
マトリクス状に配列した複数の画素からなる一連の複数の画像を取得する手段と、
取得された複数の画像に撮影されている人物の顔及び該顔内の器官の領域を特定する特定手段とを備え、
前記特定手段により特定された領域に画像処理を行う画像処理装置。

[相違点1]
特定された領域に画像処理を行うことに関して、本願発明は、「予め記憶されているリップ、チーク、カラーコンタクト、アイライン、又はつけまつげの写真画像である化粧用画像を重畳させる」のに対し、引用発明は、「目の領域について拡大又は縮小によって目の大きさを変更し、髪、頬、額、鼻、顎の領域について領域内の色を適切な色に変更し、頬に頬紅を塗り、目にアイラインを入れることにより化粧を行うことにより、利用者が所望する画像処理を行う」ものである点。

[相違点2]
本願発明は、「前記複数の画像夫々について、該画像に写っている人物が複数である場合、複数の顔領域に対し、前記特定手段が特定した領域に基づき、該特定した領域に対応する化粧用画像の前記画像上の位置、大きさ、又は角度を決定する決定手段」を備えるのに対し、引用発明は、そのような「決定手段」を有しない点。

[相違点3]
本願発明は、「該決定手段が決定した大きさ又は角度に基づき、前記特定した領域に対応する化粧用画像の一部又は全部を拡縮又は回転して変形する変形手段」を備えるのに対し、引用発明は、そのような「変形手段」を有しない点。

[相違点4]
本願発明は、「前記決定手段が決定した位置及び前記変形手段で変形された化粧用画像を記憶する手段」を備えるのに対し、引用発明は、そのような「記憶する手段」を有しない点。

[相違点5]
本願発明は、「複数の人物からの個別の操作を受け付ける画面上にて夫々、前記複数の画像の内の1つの画像毎に、前記化粧用画像の重畳対象として画像内で特定された複数の人物の顔の領域の内の1つを個別に選択するか、前記複数の人物の顔の領域全てとするかの選択を受け付ける個別/全部選択手段」を備えるのに対し、引用発明は、そのような「個別/全部選択手段」を有していない点。

[相違点6]
本願発明は、「該個別/全部選択手段にて個別に選択することが選択された場合に、前記1つの画像に写っている前記複数の顔領域の内、重畳対象とする顔領域を1つずつ切り替える切替手段」を備えるのに対し、引用発明は、そのような「切替手段」を有していない点。

[相違点7]
本願発明は、「前記個別/全部選択手段にて受け付けた選択に応じて全ての顔領域又は前記切替手段により切り替えられた1つの重畳対象の顔領域に対し、前記決定手段により決定した位置に、変形された化粧用画像を重畳させる重畳手段」を備えるのに対し、引用発明は、そのような「重畳手段」を有していない点。

(3)判断
(3-1)相違点1?4について
上記相違点1に係る本願発明の「予め記憶されているリップ、チーク、カラーコンタクト、アイライン、又はつけまつげの写真画像である化粧用画像」は、相違点4に係る「記憶する手段」に記憶された化粧用画像のことであり、本願の記憶する手段に記憶された化粧用画像は、相違点2に係る「決定手段」が決定した大きさ又は角度に基づき、相違点3に係る「変形手段」で変形された化粧用画像である。

すなわち、本願発明は、要約すると、『決定手段、変形手段、記憶する手段を備え、決定手段が決定した大きさ又は角度に基づき、変形手段で変形され、記憶する手段に記憶された化粧用画像を顔の領域の画像に重畳させる』ものである。

一方、上記相違点1に係る引用発明の「目の領域について拡大又は縮小によって目の大きさを変更し、髪、頬、額、鼻、顎の領域について領域内の色を適切な色に変更し、頬に頬紅を塗り、目にアイラインを入れることにより化粧を行うことにより、利用者が所望する画像処理を行う」ことは、上記(2-3)で検討したように、顔の領域の画像の一部の領域の大きさや色を異なる大きさや色に変更することにより、画像処理を行うことである。

したがって、上記相違点1?4は、特定された領域に画像処理を行うことに関して、本願発明では、『決定手段、変形手段、記憶する手段を備え、決定手段が決定した大きさ又は角度に基づき、変形手段で変形され、記憶する手段に記憶された化粧用画像を顔の領域の画像に重畳させる』のに対し、引用発明では、『顔の領域の画像の一部の領域の大きさや色を異なる大きさや色に変更することにより、画像処理を行う』点で相違するものと要約することができる(以下、「相違点A」という。)。

上記相違点Aに関し、引用例1には、肌、眉、目の形状と位置に基づいて、Tゾーンやコントロールカラーやアイシャドウ等のパターンが被験者に適合するように自動制御され、パターンが順次重ねられる技術が記載され、
引用例2には、顔器官の位置及び大きさに基づいて、顔器官に応じた実際のメイクの状態であるメイク支援情報を重ね合わせる技術が記載され、
引用例3には、顔パーツの位置、姿勢に対応させて化粧画像を変形させ、化粧画像をユーザの顔パーツに重畳する技術が記載され、
引用例4には、目、口、鼻等の顔の器官の特徴を検出し、メーキャップ基本形状を各特徴に応じて、大きさや形状を調整し、合成する技術が記載されている。
したがって、引用例1?4には、ユーザの顔の器官の領域を特定し、当該人物の器官に合わせて大きさ等を変形した化粧用画像を重畳する技術が開示されているといえる。
ここで、ユーザの顔に重畳するのであるから、重畳した際に違和感を無くすために、化粧用画像として写真画像を使用することも、当業者が適宜なし得るものである。

すなわち、引用発明における『顔の領域の画像の一部の領域の大きさや色を異なる大きさや色に変更することにより、画像処理を行う』ことにおいて、引用例1?4に記載された技術を用いることにより、変更する箇所についての大きさ等を決定し、該決定に基づき変形し、変形した化粧用画像を顔の領域の画像に重畳させるようにすることに関しては、容易に想到し得ると判断できる。

しかしながら、本願発明の「決定手段」は、「前記複数の画像夫々について、該画像に写っている人物が複数である場合、複数の顔領域に対し、」決定するものであるから、取得した全ての画像の全ての人物に対して、化粧用画像の画像上の位置、大きさ、又は角度を決定するものである。

それに対し、引用発明における画像処理では、第2の変更処理のように、「変更対象として選択された1枚の撮影画像」において「複数人であっても、同じ変更が施される」場合には、当該選択された1枚の撮影画像内の全ての人物に対して、変更をするものであり、また、第5の変更処理のように、「切り出された被写体」において「全ての撮影画像に含まれる該被写体と同一の被写体について変更する」場合には、全ての撮影画像における当該切り出された被写体に対応する人物に対して、変更をするものである。
してみれば、第2の変更処理において選択されなかった撮影画像の人物や、第5の変更処理における切り出された被写体以外の人物のような、『変更する対象でなかった人物』については、何ら変更処理に係る制御を行わないものである。
したがって、引用発明に、引用例1?4に記載された技術を用いた場合を想定しても、『変更する対象の人物』についての化粧用画像の位置等を決定するのみであり、撮影画像に存在するが『変更する対象でなかった人物』についてまでも、化粧用画像の位置等を決定するような決定手段、すなわち、『取得した全ての画像の全ての人物』に対して決定する本願発明のような決定手段は、想定できないものである。

さらには、本願発明の「変形手段」についても、本願発明の決定手段が決定した大きさ又は角度に基づき、変形するものであり、『取得した全ての画像の全ての人物』に対して変形するものであって、本願発明の「記憶する手段」についても、本願発明の変形手段で変形された化粧用画像を記憶するものであり、『取得した全ての画像の全ての人物』に対しての変形された化粧用画像を予め記憶するものであるから、『変更する対象でなかった人物』を含む引用発明に、引用例1?4に記載された技術を用いた場合を想定しても、『取得した全ての画像の全ての人物』を対象とする「変形手段」や「記憶する手段」は、同様に、想定できないものである。

したがって、引用発明及び引用例1?4に記載された技術を勘案しても、上記相違点Aに係る構成を思い至ることは、論理に飛躍があり、容易に想到できるといえない。

(3-2)相違点5?7について
本願発明は、上記相違点5に係る「個別/全部選択手段」を備えることに起因して、当該個別/全部選択手段での選択に応じて行う手段である上記相違点6に係る「切替手段」、上記相違点7に係る「重畳手段」を備えているものである。
したがって、上記相違点5?7をまとめると、本願発明は、「個別/全部選択手段」を備え、当該個別/全部選択手段での選択に応じて行う手段である「切替手段」、「重畳手段」を備えるのに対し、引用発明は、そのような「個別/全部選択手段」、「切替手段」、「重畳手段」を有していない点で相違する(以下、「相違点B」という。)。

ここで、1つの文献中に複数の処理が開示されている場合に、それらのいずれの処理を行うかの選択手段を設ける程度のことは、周知の技術であるから、引用発明における「第2の変更処理」と「第5の変更処理」のいずれかを選択する選択手段を設ける程度のことは、当業者が容易に想到し得るものであるが、上記(2-5)で検討したように、「第5の変更処理」は、全ての撮影画像に含まれる同一の被写体について変更するものであるから、本願発明のように、「複数の画像の内の1つの画像毎に、」「画像内で特定された複数の人物の顔の領域の内の1つを個別に選択する」構成を有していないため、本願発明の「個別/全部選択手段」を想定することができず、さらには、当該個別/全部選択手段での選択に応じて行う手段である「切替手段」、「重畳手段」を想定することはできない。

そして、引用例1ないし4をみても、そのような「個別/全部選択手段」については、開示されておらず、更には、「切替手段」、「重畳手段」についても、開示されていない。

したがって、引用発明及び引用例1?4に記載された技術を勘案しても、上記相違点Bに係る構成を思い至ることは、論理に飛躍があり、容易に想到できるといえない。

(4)小活
したがって、本願発明は、当業者が引用発明及び引用例1?4に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項2?6に係る発明についても、上記相違点に係る構成を全て有しているものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明及び引用例1?4に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
理由1
この出願の請求項1?6に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物1.特開2014-211642号公報
刊行物2.特開2012-181688号公報
刊行物3.特開2012-98808号公報

理由2
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない。


(1)請求項1について
「予め記憶されている化粧用画像を特定された領域に重畳させる」という記載では、課題を解決しない構成を含むものとなり、発明の詳細な説明に記載された発明でなく、また、発明の詳細な説明との対応も明瞭でない。
請求項1の記載によれば、個別/全部選択手段の受け付けた選択に応じて、大きさや角度を決定し、決定した大きさや角度に基づいて変形し、重畳させるものであり、発明の詳細な説明に記載された発明でなく、また、発明の詳細な説明との対応も明瞭でない。

(2)請求項2について
「前記重畳手段」、「前記化粧用画像」、「前記画像」、「前記個別/選択手段」とあるが、対応する記載がなく、発明が明瞭でない。
また、請求項1を引用するのであれば、「個別/選択手段」は、「個別/全部選択手段」の誤記である。

(3)請求項3について
発明の詳細な説明では、「重畳される前」に、化粧用画像を、段階順又は逆順に前記表示手段に表示させているものではないため、発明の詳細な説明に記載された発明でなく、また、発明の詳細な説明との対応も明瞭でない。 発明の詳細な説明では、重畳されている画像を差し替える構成であり、発明の詳細な説明に記載された発明でなく、また、発明の詳細な説明との対応も明瞭でない。
「複数段階に変更させ」ることが、どの時点で行われているのかが明確でない。
「多少」とは、何が「多」いもしくは「少」ないことであり、具体的に、化粧用画像がどのような状態となっていることを指すのか不明である。
「段階順又は逆順」とあるが、それぞれどのような順序を指すのか不明である。

2.当審拒絶理由の判断
(1)理由1について
(1-1)刊行物の記載事項
当審拒絶理由に引用された刊行物1、2、3は、それぞれ、拒絶査定時の引用例5、3、4であり、その記載内容は、上記第3 2.(1)(1-1)(1-4)(1-5)のとおりである。

(1-2)対比・判断
本願発明と刊行物1に記載された発明の対比は、上記第3 2.(2)と同様であり、判断についても、上記第3 2.(3)と同様である。

(1-3)理由1についてのまとめ
したがって、本願発明は、当業者が刊行物1?3に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。
本願の請求項2?6に係る発明についても、本願発明と同様に、当業者が刊行物1?3に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。

(2)理由2について
(2-1)請求項1について
平成28年10月28日付け手続補正によって、請求項1は、「予め記憶されているリップ、チーク、カラーコンタクト、アイライン、又はつけまつげの写真画像である化粧用画像」が、「前記決定手段が決定した位置及び前記変形手段で変形された化粧用画像を記憶する手段」で記憶された「変形された化粧用画像」であり、「前記個別/全部選択手段にて受け付けた選択に応じて全ての顔領域又は前記切替手段により切り替えられた1つの重畳対象の顔領域に対し、前記決定手段により決定した位置に、変形された化粧用画像を重畳させる」構成となり、選択手段で処理の対象の顔領域が定められることが明確となったので、発明の詳細な説明に記載された発明となり、発明の詳細な説明との対応も明瞭となった。

(2-2)請求項2について
平成28年10月28日付け手続補正によって、請求項2は、請求項1を引用する発明となり、「個別/選択手段」は、「個別/全部選択手段」と補正され、発明が明瞭となった。

(2-3)請求項3について
平成28年10月28日付け手続補正によって、請求項3は、「重畳される前又は重畳された後」、「多少」、「段階順又は逆順」という記載が「重畳された後」、「ボリュームの多少」、「段階順」に補正され、それぞれの記載が明瞭となり、また、発明の詳細な説明に記載された発明となり、発明の詳細な説明との対応も明瞭となった。

よって、当審拒絶理由の理由2は解消した。

(3)まとめ
したがって、当審拒絶理由の理由1及び理由2は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-19 
出願番号 特願2014-247759(P2014-247759)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06T)
P 1 8・ 121- WY (G06T)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐田 宏史  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 渡辺 努
清水 正一
発明の名称 画像処理装置、画像処理方法及びコンピュータプログラム  
代理人 河野 英仁  
代理人 河野 登夫  

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