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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1322661
審判番号 不服2015-17787  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-30 
確定日 2016-12-08 
事件の表示 特願2013-208520「コンテナ用冷凍装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月16日出願公開、特開2015- 72103〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年10月3日の出願であって、平成26年12月17日付けで拒絶理由が通知され、それに対して平成27年2月17日に意見書の提出及び手続補正がなされ、平成27年6月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成27年9月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年2月17日の手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものであると認められる。
「 冷凍サイクルを行う冷媒回路(20)を備え、植物(15)が収納されるコンテナ(11)に取り付けられて該コンテナ(11)の庫内の空気を冷却するコンテナ用冷凍装置であって、
前記コンテナ(11)の庫内の酸素濃度を検知する酸素濃度検知部(51)と、
窒素濃度が外気よりも高く、酸素濃度が外気よりも低く且つ所定の目標濃度よりも高い混合気体を前記コンテナ(11)の庫内に供給する混合気体供給部(30)とを備え、
前記混合気体供給部(30)は、
前記酸素濃度検知部(51)で検知された酸素濃度が混合気体の酸素濃度よりも高い場合に、混合気体を前記コンテナ(11)の庫内に供給して、該コンテナ(11)の庫内の酸素濃度を混合気体の酸素濃度近傍まで下げ、前記コンテナ(11)の庫内の酸素濃度が混合気体の酸素濃度近傍まで下がってから、空気中の酸素を取り込んで二酸化炭素を放出する前記植物(15)の呼吸作用によって前記コンテナ(11)の庫内の酸素濃度が前記目標濃度まで下がるまでの間は混合気体の供給を停止する酸素濃度低減動作を行うように構成されていることを特徴とするコンテナ用冷凍装置。」

第3 原査定の理由
原査定である拒絶査定の理由は、1.特開平1-296940号公報(以下、「引用文献1」という。)、2.特開平5-180556号公報(以下、「引用文献2」という。)、3.特開昭61-25443号公報(以下、「引用文献3」という。)、4.特表平9-510288号公報(以下、「引用文献4」という。)、5.特開平2-84132号公報(以下、「引用文献5」という。)、6.特開2010-243071号公報(以下、「引用文献6」という。)、7.特開平4-41315号公報(以下、「引用文献7」という。)を引用し、本願請求項1及び2に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基いて、本願請求項3に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし5に記載された技術的事項に基いて、本願請求項4ないし6に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし6に記載された技術的事項に基いて、本願請求項7及び8に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

第4 引用文献
原査定の拒絶理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である、引用文献1ないし4には、それぞれ以下の記載がされている。

1.引用文献1
(1)「【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は青果物の貯蔵方法に関し、詳しくはPSA(Pressure Swing Adsorption)式窒素発生装置の吸着槽入口の圧力を調整することによって空気の酸素濃度を任意に設定できる装置(以下、酸素濃度可変空気発生装置と記す。)を用いて、環境ガスを制御することにより青果物の鮮度を保持する、低コストで安全な青果物の貯蔵方法に関するものである。
〔発明が解決しようとする課題〕
青果物は収穫後も生命活動を続けているが、栄養の補給が絶たれているため、自己消耗しながら呼吸している。このため、青果物は収穫後急速に鮮度が低下していく。従って、青果物の鮮度保持には何らかの方法で呼吸速度を低下させるのが効果的である。
一般的には、青果物の鮮度保持には温度を下げて呼吸を抑制するのが効果的である。さらに、青果物を低酸素、高二酸化炭素の環境で貯蔵すると、鮮度保持に極めて効果が高い。このように、低温で、さらにガス環境も制御する貯蔵方法をCA(Controlled Atmosphere)貯蔵と呼び、わが国でも主としてリンゴの貯蔵に利用されている。」(公報第1ページ右下欄第2行ないし第2ページ左上欄第4行)

(2)「 本発明を実施するに際し、第1図に示したごとく、主として酸素濃度可変空気発生装置1と貯蔵庫10が用いられる。酸素濃度可変空気発生装置1としては、例えばPSA式窒素ガス発生装置を改良したものが使用できる。すなわち、PSA式窒素ガス発生装置の吸着槽入口に調圧バルブ3を取り付け、このバルブを調整することで発生ガスの酸素濃度を制御できるようにした。また、吸着槽入口の圧力と酸素濃度との関係は第2図に示した通りである。なお、PSA式窒素ガス発生装置は、空気を原料としているので、空気の組成のうち、酸素濃度と窒素濃度だけが変化するものと考えてよい(酸素濃度を変化させた空気を以下、修整空気と記す)。」(公報第2ページ右上欄第5行ないし第18行)

(3)「 次に、酸素濃度を1?4%、二酸化炭素濃度を5%以下の範囲に制御して貯蔵する場合を例として、本発明による貯蔵方法を説明する。
まず、青果物を貯蔵庫に搬入する。貯蔵庫は当初、空気下の条件にあるから、酸素濃度21%、二酸化炭素濃度は0%、酸素以外は不活性ガス(ほとんどが窒素)と考えてよい。次に、貯蔵庫の酸素濃度を制御範囲の上限値である4%まで下げる。このためには、酸素濃度可変空気発生装置の圧力を調整して酸素濃度4%の修整空気で貯蔵庫全体の空気を置換してもよいし、酸素濃度1%程度の修整空気で酸素濃度が4%になるまで、貯蔵庫の酸素濃度をモニターしながら置換してもよく、貯蔵庫の酸素濃度が4%になったら装置の運転を止める。また、貯蔵中に青果物の呼吸作用によって酸素が消費され二酸化炭素が蓄積し、酸素濃度が制御範囲の下限値1%になるか、二酸化炭素濃度が上限値の5%に達したら、酸素濃度可変空気発生装置から最適濃度の酸素を含む修整空気で貯蔵庫内のガスを最適量置換して、貯蔵庫内の酸素と二酸化炭素の濃度を制御範囲内にもどす。」(公報第2ページ左下欄第3行ないし右下欄第3行)

(4)「貯蔵時の温度については、通常の青果物貯蔵において採用されている程度の低温であればよい。」(公報第3ページ右上欄第10行及び第11行)

(5)上記(2)の「なお、PSA式窒素ガス発生装置は、空気を原料としているので、空気の組成のうち、酸素濃度と窒素濃度だけが変化するものと考えてよい(酸素濃度を変化させた空気を以下、修整空気と記す)。」との記載事項、及びPSA式窒素ガス発生装置の原料は通常外気を用いていることから、PSA式窒素ガス発生装置が酸素濃度が低くなる運転を行うと、修整空気は、窒素濃度が外気よりも高く、酸素濃度が外気よりも低くなっているといえる。

(6)上記(3)の「酸素濃度可変空気発生装置の圧力を調整して酸素濃度4%の修整空気で貯蔵庫全体の空気を置換してもよいし、酸素濃度1%程度の修整空気で酸素濃度が4%になるまで、貯蔵庫の酸素濃度をモニターしながら置換してもよく、貯蔵庫の酸素濃度が4%になったら装置の運転を止める。」との記載事項より、貯蔵庫内の酸素濃度が修整空気よりも高い場合には、修整空気を前記貯蔵庫内に供給して、該貯蔵庫内の酸素濃度を修整空気の酸素濃度近傍にまで下げているといえる。

(7)上記(3)の「次に、酸素濃度を1?4%、二酸化炭素濃度を5%以下の範囲に制御して貯蔵する場合を例として」及び「貯蔵庫の酸素濃度が4%になったら装置の運転を止める。また、貯蔵中に青果物の呼吸作用によって酸素が消費され二酸化炭素が蓄積し、酸素濃度が制御範囲の下限値1%になるか、二酸化炭素濃度が上限値の5%に達したら、酸素濃度可変空気発生装置から最適濃度の酸素を含む修整空気で貯蔵庫内のガスを最適量置換して、貯蔵庫内の酸素と二酸化炭素の濃度を制御範囲内にもどす。」との記載事項より、PSA式窒素ガス発生装置は、貯蔵庫内の酸素濃度の目標濃度が1%であること及び当該目標の酸素濃度の1%よりも高い酸素濃度である4%になればPSA式窒素ガス発生装置の運転を止め、空気中の酸素を取り込んで二酸化炭素を放出する青果物の呼吸作用によって貯蔵庫内の酸素濃度が目標の酸素濃度である1%まで下がるまでの間は修整空気による貯蔵庫内のガスの置換を行わないようにしているといえる。

(8)上記(4)の「貯蔵時の温度については、通常の青果物貯蔵において採用されている程度の低温であればよい。」との記載事項からみて、貯蔵庫には、青果物を低温で貯蔵するために、貯蔵庫内の空気を冷却する貯蔵庫用冷凍装置が取り付けられていることが技術常識からして明らかである。

(9)上記(1)ないし(4)の記載事項並びに上記(5)ないし(8)の事項より、引用文献1には
「青果物が貯蔵される貯蔵庫に取り付けられて貯蔵庫内の空気を冷却する貯蔵庫用冷凍装置であって、
窒素濃度が外気よりも高く、酸素濃度が外気よりも低く且つ目標濃度(1%)よりも高い修整空気(4%)を前記貯蔵庫内に供給するPSA式窒素ガス発生装置とを備え、
前記PSA式窒素ガス発生装置は、
貯蔵庫内の酸素濃度が修整空気の酸素濃度よりも高い場合に、修整空気を前記貯蔵庫内のガスを修整空気で置換を行い該貯蔵庫内の酸素濃度を修整空気の酸素濃度近傍まで下げてから、空気中の酸素を取り込んで二酸化炭素を放出する前記青果物の呼吸作用によって前記貯蔵庫内の酸素濃度が前記目標濃度まで下がるまでの間は修整空気による貯蔵庫内のガスの置換を行わないように構成されている、貯蔵庫用冷凍装置。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

2.引用文献2
(1)「【0011】
【実施例】図1に本発明になる貯蔵装置の一実施例を示す。
【0012】図1において、貯蔵庫1は例えば生鮮食料品等の貯蔵物が貯蔵されており、庫内のガス濃度を一定値に保つため、扉(図示せず)のシール性を高められた気密構造となっている。又、貯蔵庫1では貯蔵物を低温で保存するため冷蔵装置(図示せず)が設けられている。貯蔵庫1には庫内のO_(2)濃度を検出するO_(2)センサ2と庫内のCO_(2)濃度を検出するCO_(2)センサ3とが接続されている。
【0013】4は制御回路、5は制御盤、6は修整ガス供給ユニットである。修整ガス供給ユニット6は修整ガス供給管路7を介して貯蔵庫1と接続されており、この管路7には質量流量計8、流量調整弁9、ガス供給弁10が設けられている。
【0014】11は庫内のガスを大気中に排出する排気管で、管路途中には排気弁12が設けられている。又、排気管11の端部にはサイレンサ13が接続されている。
【0015】制御回路4はO_(2)センサ2及びCO_(2)センサ3からの濃度検出信号に応じて制御盤5の操作により設定されたガス濃度を保つように修整ガス供給ユニット6及びガス供給弁10、排気弁9を制御する。従って、貯蔵庫1内の貯蔵物等の呼吸作用により庫内のO_(2)濃度、CO_(2)濃度が設定範囲から外れると、制御回路1はガス供給弁10及び排気弁12を開弁させ、庫内のガス濃度に応じた濃度割合の修整ガスを修整ガス供給ユニット6から貯蔵庫1へ供給するとともに、庫内の残存ガスを大気中に排気する。
【0016】O_(2)センサ2はサンプルガス供給管路14を介して貯蔵庫1と接続されている。15はサンプルガス還流管路で、O_(2)センサ2に導入されたガスを庫内へ還流する。
【0017】従って、貯蔵庫1内のガスはサンプルガス供給管路14を通ってO_(2)センサ2に供給されO_(2)濃度が検出され、サンプルガス還流管路15を介して庫内に還流する。そのため、O_(2)センサ2は常時庫内のO_(2)濃度を監視できると共に、貯蔵庫1内部はO_(2)濃度検出により気圧、ガス濃度割合が変化しないようになっている。
【0018】又、CO_(2)センサ3は貯蔵庫1に接続されたサンプルガス供給管路16とサンプルガス還流管路17との間に設けられており、管路16,17を通過したガスのCO_(2)濃度を測定する。
【0019】修整ガス供給ユニット6はPSA(Pressure Swing Adsorption)式の窒素発生装置を内蔵しており、後述するようにO_(2)ガスとN_(2)ガスとを所望の割合で混合した修整ガスを貯蔵庫1へ供給する。質量流量計8は例えばコリオリ式の質量流量計であり、修整ガス供給ユニット6から貯蔵庫1へ供給された修整ガスの流量を計測し、その積算流量値を出力する。
【0020】制御回路4は、制御盤5の操作により設定されたガス濃度が保持されるように修整ガス供給ユニット6からの供給量を制御するとともに、庫内のガスを置換するとき排気弁12及びガス供給弁10を開弁する。又、制御回路4はO_(2)センサ2からのO_(2)濃度検出信号及びCO_(2)センサ3からのCO_(2)濃度検出信号に基づいて庫内のガス濃度を算出し、修整ガス供給ユニット6を動作させるユニット駆動回路4Aと、貯蔵庫1の容積Vに応じた流量の修整ガスが貯蔵庫1に供給されるよう質量流量計8の流量計測値に基づいて流量調整弁9の弁開度を制御するガス供給回路4Bとを有する。」

(2)上記(1)の記載事項より、引用文献2には、「生鮮食品を貯蔵する貯蔵庫において、制御回路は庫内のO_(2)センサ及びCO_(2)センサからの濃度検出信号に応じて設定されたガス濃度を保つように修整ガス供給ユニットを制御する。」という技術的事項が記載されている。

3.引用文献3
(1)「2.特許請求の範囲
1.植物、果物及び野菜から選ばれた呼吸している多量の食料品をコンテナ内に装填する工程、前記の量の食料品の呼吸に必要なものより少ない酸素を外界空気からコンテナ内に拡散することができることを保証するのに充分な程度に、及びコンテナから拡散できるよりも呼吸の結果として前記の量の食料品による二酸化炭素生成を保証するのに充分な程度に、前記コンテナをシールする工程、
コンテナ雰囲気内の酸素レベルを低下させるために、窒素に富む気体によってコンテナをフラッシュする工程、そして
前記コンテナ内部の温度、二酸化炭素及び酸素レベルをモニターし、そして必要により、
(a)温度は前記モニターに応答して冷却により最適若しくは設定値又はその値の範囲に、
(b)酸素含量は前記モニターに応答してコンテナ内への外界空気の積極注入により最適若しくは設定値又はその値の範囲へ、そして
(c)二酸化炭素含量は前記モニターに応答してコンテナ内の雰囲気から二酸化炭素を吸収することにより最適若しくは設定値又はその値の範囲へと調整しながら、前記の呼吸している多量の食料品を含むコンテナを輸送する工程から成る、植物、果物及び野菜から選ばれた呼吸している多量の食料品の輸送方法。」(公報第1ページ左下欄第5行ないし右下欄第11行)

(2)上記(1)の記載事項より、引用文献3には、「呼吸する植物が充填されたコンテナ内の酸素レベルをモニタし、酸素レベルを設定の範囲内にするコンテナ。」の技術的事項が記載されている。

4.引用文献4
(1)「技術分野
本発明は、腐敗性(腐敗し易い)産物(以下、「生鮮食品」又は単に「産物」とも称する)を輸送し(又は輸送するために準備し)又は貯蔵する(貯蔵するために準備する)方法の改善に関し、そのような産物を輸送又は貯蔵するための装置、コンテナ及びパレット上載荷(パレット上に載せられた積荷)に関する。
技術背景
生鮮食品のような腐敗性産物は、道路、海上、鉄道及び空路等のいろいろな異なる手段を用いて輸送される。高価な生鮮食品の場合は、従来、冷凍だけでなく、冷凍とともに、あるいは冷凍に代えて、その産物の保存に最も適する制御された雰囲気を使用することに依存するのが一般的である。
ここで、「制御された雰囲気」とは、腐敗性産物の周りへの密封された又は制御可能な大気又は雰囲気(ガス)の吹込み、スクラビング(洗浄)等を意味し、通常、窒素、酸素、二酸化炭素及びエチレン等のガスのうちの少くとも1種類を(組成、濃度及び温度等に関して)制御することを伴う。
ここでいう「腐敗性産物」とは、貯蔵中、輸送のための準備中、及び、又は輸送中、老朽化(経時変化)を遅らせることによってその価値を維持する、又は高めることができるあらゆる産物を意味する。そのような産物としては、果物や野菜のような呼吸する食品、肉や魚のような非呼吸産物、及び、それらを用いて(他の添加物を加えて、又は加えないで)製造された混合産物又は組合せ産物等がある。」(公報第16ページ第3行ないし第23行)

(2)上記(1)の記載事項より、引用文献4には、「果物や野菜のような呼吸する食品の貯蔵中に、酸素濃度の制御を行うコンテナ。」の技術的事項が記載されている。

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その機能及び作用からみて、引用発明における「青果物」、「貯蔵」、「修整空気」及び「PSA式窒素ガス発生装置」は、それぞれ本願発明における「植物」、「収納」、「混合気体」及び「混合気体供給部」に相当する。
また、引用発明における「貯蔵庫」と、本願発明における「コンテナ」とは、「貯蔵庫」という限りにおいて一致している。
また、引用発明における「青果物が貯蔵される貯蔵庫に取り付けられて貯蔵庫内の空気を冷却する貯蔵庫用冷凍装置」と、本願発明における「植物(15)が収納されるコンテナ(11)に取り付けられて該コンテナ(11)の庫内の空気を冷却するコンテナ用冷凍装置」は、「植物が収納されるコンテナに取り付けられて該コンテナの庫内の空気を冷却するコンテナ用冷凍装置」であるという限りにおいて一致している。
また、引用発明における修整空気による貯蔵庫内のガスの「置換」は、貯蔵庫内の空気を排出し、修整空気を供給することであるから、本願発明における混合気体の「供給」に相当する。
また、引用発明における「酸素濃度が修整空気の酸素濃度よりも高い場合に、修整空気を前記貯蔵庫内のガスを修整空気で置換を行い該貯蔵庫内の酸素濃度を修整空気の酸素濃度近傍まで下げてから、空気中の酸素を取り込んで二酸化炭素を放出する前記青果物の呼吸作用によって前記貯蔵庫内の酸素濃度が前記目標濃度まで下がるまでの間は修整空気による貯蔵庫内のガスの置換を行わない」との態様は、本願発明における「コンテナの庫内の酸素濃度が混合気体の酸素濃度よりも高い場合に、混合気体を前記コンテナの庫内に供給して、該コンテナの庫内の酸素濃度を混合気体の酸素濃度近傍まで下げ、前記コンテナの庫内の酸素濃度が混合気体の酸素濃度近傍まで下がってから、空気中の酸素を取り込んで二酸化炭素を放出する前記植物の呼吸作用によって前記コンテナの庫内の酸素濃度が前記目標濃度まで下がるまでの間は混合気体の供給を停止する酸素濃度低減動作を行う」ことであるといえる。
よって、本願発明と引用発明とは、
「植物が収納される貯蔵庫に取り付けられて該貯蔵庫の庫内の空気を冷却する貯蔵庫用冷凍装置であって、
窒素濃度が外気よりも高く、酸素濃度が外気よりも低く且つ所定の目標濃度よりも高い混合気体を前記貯蔵庫の庫内に供給する混合気体供給部とを備え、
前記混合気体供給部は、
貯蔵庫の庫内の酸素濃度が混合気体の酸素濃度よりも高い場合に、混合気体を前記貯蔵庫の庫内に供給して、該貯蔵庫の庫内の酸素濃度を混合気体の酸素濃度近傍まで下げ、前記貯蔵庫の庫内の酸素濃度が混合気体の酸素濃度近傍まで下がってから、空気中の酸素を取り込んで二酸化炭素を放出する前記植物の呼吸作用によって前記貯蔵庫の庫内の酸素濃度が前記目標濃度まで下がるまでの間は混合気体の供給を停止する酸素濃度低減動作を行うように構成されている貯蔵庫用冷凍装置。」
である点で一致し、以下の2点で相違する。

(相違点)
1.相違点1
貯蔵庫用冷凍装置に関して、本願発明は、コンテナ用とされ、また、冷凍サイクルを行う冷媒回路(20)を備えているのに対して、引用発明の冷凍装置は、そのような特定がない点。

2.相違点2
酸素濃度低減動作を行うにあたって、本願発明は、庫内の酸素濃度を検知する酸素濃度検知部を備え、酸素濃度検知部で酸素濃度を検知しているのに対して、引用発明は貯蔵庫内の酸素濃度をどのようにして検知しているか明らかでない点。

第6 判断
上記相違点1及び2についてそれぞれ検討する。
1.相違点1について
コンテナにおいて呼吸する植物等を貯蔵することは、引用文献3及び4に記載されているとおり、周知の技術である。
また、青果物の貯蔵のために、冷凍サイクルを行う冷媒回路を備えた冷凍装置で貯蔵庫内を冷蔵することは、例を挙げるまでもなく周知の技術である。
よって、引用発明の貯蔵庫用冷凍装置に、上記各周知の技術を適用し、上記相違点1に係る本願発明のようにすることは、当業者であれば容易になし得たものである。

2.相違点2について
引用発明において、貯蔵庫の庫内の酸素濃度を所定の範囲内に制御するためには、当然にその酸素濃度を検知する必要があることは、当業者にとって明らかであるところ、生鮮食品を貯蔵する貯蔵庫において、O_(2)センサによってO_(2)の濃度を検出するものである引用文献2記載の技術的事項を適用して、上記相違点2に係る本願発明のようにすることは、当業者であれば容易になし得たものである。

よって、引用発明において、上記相違点1及び2に係る本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2ないし4記載の技術的事項及び上記技術常識から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2ないし4記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものである。

なお、審判請求人は、意見書の参考図(A)及び審判請求書の≪参考図≫(b)を用いて本願発明の作用として、庫内の酸素濃度が低下していく状態を図示し、本願発明と引用発明との差異について説明を行っている。
しかしながら、本願発明において特定されている酸素濃度の目標酸素濃度は一つのみであるところ、上記両参考図は、二つの酸素濃度の間に収まるように制御されるようになっており、本願発明の庫内の酸素濃度が低下していく状態を的確に示した図であるとは認められない。
よって、上記の両図に基く審判請求人の主張は特許請求の範囲に基いたものではなく、採用することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2ないし4記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-28 
結審通知日 2016-10-04 
審決日 2016-10-25 
出願番号 特願2013-208520(P2013-208520)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼藤 啓  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 莊司 英史
千壽 哲郎
発明の名称 コンテナ用冷凍装置  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  

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